(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】アフコシル化された抗FGFR2IIIB抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20221128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221128BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221128BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221128BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
C12P21/08
C12N5/10
C12N15/13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019194319
(22)【出願日】2019-10-25
(62)【分割の表示】P 2016531878の分割
【原出願日】2014-07-31
【審査請求日】2019-11-25
(32)【優先日】2013-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515302853
【氏名又は名称】ファイヴ プライム セラピューティクス インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ピアース, クリステン
(72)【発明者】
【氏名】パティル, ナムラタ
(72)【発明者】
【氏名】ブレナン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハンブルトン, ジュリー
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/054265(WO,A2)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2006年,Vol.103, No.11,pp.4005-4010
【文献】“Potelligent CHOK1SV Technology”, [online], 2013.6.18, LONZA, [2018.7.27 検索], インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20130618053 917/https://www.lonza.com/custom-manufacturing/development-technologies/ potelligent-chok1sv-technology.aspx>
【文献】mAb,2009年,Vol.1, Issue 3,pp.230-236
【文献】J. Immunol. Methods,2005年,Vol.306,pp.151-160
【文献】Clin. Cancer Res.,2007年,Vol.13, No.6,pp.1875-1882
【文献】J. Biol. Chem.,2002年,Vol.277, No.30,pp.26733-26740
【文献】Cancer Res.,2010年,Vol.70, Issue 11,pp.4481-4489
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗FGFR2IIIb抗体を含む
薬学的組成物であって、各抗FGFR2IIIb抗体が重鎖及び軽鎖を含み、
重鎖が
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、を含む重鎖可変領域を含み、かつ
軽鎖が
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3、を含む軽鎖可変領域を含み、
薬学的組成物中の抗FGFR2IIIb抗体の少なくとも95%がアフコシル化されており、前記抗体がヒトIgG1又はヒトIgG3の定常領域を含む、
薬学的組成物。
【請求項2】
抗FGFR2IIIb抗体を含む
薬学的組成物であって、各抗FGFR2IIIb抗体が重鎖及び軽鎖を含み、
重鎖が
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、を含む重鎖可変領域を含み、かつ
軽鎖が
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3、を含む軽鎖可変領域を含み、
前記抗FGFR2IIIb抗体がアフコシル化抗体を含み、
薬学的組成物中の抗FGFR2IIIb抗体の5%未満がフコシル化されている、
薬学的組成物。
【請求項3】
重鎖可変領域が、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の
薬学的組成物。
【請求項4】
軽鎖可変領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項5】
重鎖可変領域が、配列番号4のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の
薬学的組成物。
【請求項6】
重鎖が配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項7】
軽鎖が配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項8】
重鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖が配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項9】
検出不可能なフコシル化を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項10】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~9の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項11】
抗体が、キメラ抗体である、請求項1~10の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項12】
抗体が、ヒト化抗体である、請求項1~11の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項13】
抗体が、Asn297でのフコースを欠いている、請求項1~12の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項14】
抗体が、ヒトκ軽鎖定常領域を含む、請求項1~13の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項15】
抗体が、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項1~14の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項16】
アフコシル化抗体が、同一のアミノ酸配列を有するフコシル化抗FGFR2IIIb抗体と比較して、インビトロでの増強されたADCC活性を有する、請求項1~15の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項17】
アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体によるFGFR2IIIb発現標的細胞の特異的溶解よりも、少なくとも10パーセント高いFGFR2IIIb発現標的細胞の特異的溶解を引き起こす、請求項16に記載の
薬学的組成物。
【請求項18】
ADCC活性が、標的細胞としてFGFR2IIIbを発現するBa/F3細胞、及びエフェクター細胞として単離されたヒトPBMCを使用して決定される、請求項16又は17に記載の
薬学的組成物。
【請求項19】
アフコシル化抗体が、同一のアミノ酸配列を有するフコシル化抗FGFR2IIIb抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する、請求項1~18の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項20】
アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体よりも、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも17倍、又は少なくとも20倍高い親和性でFcガンマRIIIAに結合する、請求項19に記載の
薬学的組成物。
【請求項21】
FcガンマRIIIAに対する親和性が、表面プラズモン共鳴により決定される、請求項19又は20に記載の
薬学的組成物。
【請求項22】
FcガンマRIIIAが、FcガンマRIIIA(V158)及びFcガンマRIIIA(F158)から選択される、請求項19~21の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項23】
FcガンマRIIIAが、FcガンマRIIIA(V158)である、請求項22に記載の
薬学的組成物。
【請求項24】
アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が、FGFR2IIIbに結合するが、FGFR2IIIcに結合しない、請求項1~23の何れか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項25】
重鎖及び軽鎖を含むアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体であって、
重鎖が
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、を含む重鎖可変領域を含み、かつ
軽鎖が
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3、を含む軽鎖可変領域を含み、
前記抗体がヒトIgG1又はヒトIgG3の定常領域を含む、抗体。
【請求項26】
重鎖可変領域が、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、又は軽鎖可変領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、又はこれらの両方を含む、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
重鎖が配列番号2のアミノ酸配列を含むか、又は軽鎖が配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又はこれらの両方を含む、請求項25又は26に記載の抗体。
【請求項28】
請求項1~27の何れか一項に記載の抗FGFR2IIIb抗体をコードする核酸を含む宿主細胞であって、機能的アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子を欠いている、宿主細胞。
【請求項29】
CHO細胞である、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を作製するための方法であって、請求項28又は29に記載の宿主細胞を、抗FGFR2IIIb抗体をコードする核酸を発現するために適した条件下で培養することを含む、方法。
【請求項31】
アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を作製するための方法であって、請求項28又は29に記載の宿主細胞を、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を産生するために適した条件下で培養することを含む、方法。
【請求項32】
宿主細胞によって産生される抗FGFR2IIIb抗体を回収することを更に含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
宿主細胞により産生される抗FGFR2IIIb抗体の少なくとも95%が、アフコシル化されている、請求項30~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
宿主細胞によって産生される抗FGFR2IIIb抗体において、フコースが検出されない、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
フコシル化が、HPLC、キャピラリー電気泳動、又はMALDI-TOF質量分析を含む方法によって検出される、請求項33又は34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アフコシル化された抗FGFR2IIIb抗体が提供される。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞増殖因子(EGF)ファミリーメンバーは、様々な程度で異なるFGFRに結合する異なるFGFにより、4種のチロシンキナーゼ受容体である線維芽細胞増殖因子受容体1~4(FGFR1~4)、及びそれらのアイソフォームに結合する(Zhang et al., J. Biol. Chem. 281:15694, 2006)。ヒトFGFR2のタンパク質配列は、例えば、GenBank ローカス AF487553に提供されている。各EGFRは、3種の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(D1、D2及びD3)を含む細胞外ドメイン(ECD)、一回膜貫通へリックス、及び細胞内触媒キナーゼドメインからなる(Mohammadi et al., Cytokine Growth Factor Revs, 16:107, 2005)。D1及びD2の間のリンカーには、「アシッド・ボックス(acid box)」(AB)と呼ばれる隣接するアミノ酸の範囲がある。D1及びABを含む領域は、リガンドへの結合により緩和される、受容体の自己制御に関与すると考えられている。FGFは、主に受容体のD2及びD3における領域を介して受容体に結合する。FGFRは、様々なアイソフォームをもたらす、そのmRNAの複数の選択的スプライシングにより特徴づけられる(Ornitz et al., J. Biol. Chem. 271:15292, 1996; FGFR2及びそのアイソフォームについてSwiss-Prot P21802及びアイソフォームP21802-1からP21802-20も参照のこと)。とりわけ、3種全てのIgドメインを含むフォーム(αアイソフォーム)、又はD1を含まず、D2及びD3ドメインの2種のIgドメインのみを含むフォーム(βアイソフォーム)がある。FGFR1~FGFR3において、全てのフォームが、IIIaと示されるD3の前半部分を含むが、2つの代替的エクソンがD3の後半部分に使用されることができ、これにより、IIIb及びIIIcフォームが得られる。FGFR2について、これらは、それぞれFGFR2IIIb及びFGFR2IIIc(又は、単にFGFR2b及びFGFR2c)と示され;対応するベータフォームは、FGFR2(beta)IIIb及びFGFR2(beta)IIIcと示される。FGFR2IIIc(K-sam-Iとも示される)は、FGF1及びFGF2の両方によく結合するもののKGFファミリーメンバーには結合しないが、FGFR2(K-sam-IIとも示される)のFGFR2IIIbフォームは、FGF1及びKGFファミリーメンバー(FGF7、FGF10、及びFGF22)の両方に対し高親和性受容体である(Miki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:246, 1992)。実に、FGFR2IIIbが、KGFファミリーメンバーに対する唯一の受容体であり(Ornitz et al., 1996, op. cit.)、そのため、KGFRと示されている。
【0003】
FGFR及びそのアイソフォームは、様々な組織において、異なる発現をする。FGFR2IIIb(及び、FGFR1及びFGFR3のIIIbフォーム)は、上皮組織に発現するが、FGFRIIIcは、間葉組織に発現する(Duan et al., J. Biol. Chem. 267:16076, 1992; Ornitz et al., 1996, op. cit.)。これらの受容体の特定のFGFリガンドは、反対の発現パターンを有する。従って、FGF7(KGF)、FGF10、及びFGF22を含むKGFサブファミリーメンバーはFGFRIIIbのみに結合し(Zhang et al., op. cit.)、かつ、間葉組織に発現し、よって、上皮細胞のパラクラインエフェクターであってもよい。一方、FGF4サブファミリーメンバーFGF4~6は、FGFR2IIIcに結合し、かつ、上皮及び間葉系の両方において発現し、よって、オートクライン又はパラクライン機能の何れかを有していてもよい。FGFR2のアイソフォーム及びそのリガンドの発現パターンのために、FGFR2は、上皮-間葉相互作用における役割を果たし(Finch et al., Dev. Dyn. 203:223, 1995)、そのため、マウスにおけるFGFR2IIIbのノックアウトが、胚性の欠陥及び死亡を引き起こす(De Moerlooze et al., Development 127:483, 2000)。
【0004】
KGF(FGF7)及びKGFR(FGFR2IIIb)は、多くの膵臓がんにおいて、過剰発現しており(Ishiwata et al., Am. J. Pathol. 153: 213, 1998)、それらの共発現は、予後の悪さと相関している(Cho et al., Am. J. Pathol. 170:1964, 2007)。FGFR2遺伝子の体細胞変異は、子宮内膜(子宮)癌の大規模パネルの12%に見いだされ、様々な試験ケースにおいて、腫瘍細胞生存のために必須あった。2種の腫瘍において、FGFR2変異は、アペール症候群に関連する、同じS252W置換であることが見出された。FGFR2の増幅と過剰発現は、予後が著しく悪い、未分化型びまん性胃がんと関連し、低分子化合物によるFGFR2活性の阻害は、そのようながん細胞の増殖を強く阻害した (Kunii et al., Cancer Res. 68:2340, 2008; Nakamura et al., Gastroenterol. 131:1530, 2006)。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施態様において、抗FGFR2IIIb抗体が提供され、重鎖可変領域は:(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み;かつ軽鎖可変領域は:(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み;抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施態様において、抗体はAsn297でのフコースを欠いている。いくつかの実施態様において、複数の抗FGFR2IIIb抗体を含む組成物が提供され、組成物中の各抗FGFR2IIIb抗体の重鎖可変領域は:(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み;かつ組成物中の各抗FGFR2IIIb抗体の軽鎖可変領域は:(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み;組成物中の抗体の少なくとも95%がアフコシル化されている。いくつかの実施態様において、組成物は、抗体産生細胞株の上清であってもよい。いくつかの実施態様において、組成物は、緩衝化された組成物である。いくつかの実施態様において、重鎖可変領域ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、軽鎖可変領域ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、重鎖可変領域ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、重鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、軽鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、重鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、複数のアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を含む組成物が提供され、抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体と、FGFR2IIIbに対する結合について競合する。
【0006】
いくつかの実施態様において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はキメラ抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。本明細書に記載の任意の実施態様において、抗体は、κ軽鎖定常領域を含んでもよい。本明細書に記載の任意の実施態様において、抗体は、IgG1重鎖定常領域を含んでもよい。
【0007】
いくつかの実施態様において、抗体は、同じアミノ酸配列を有するフコシル化抗FGFR2IIIb抗体に比較して、インビトロでの増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体による特異的溶解よりも、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、又は少なくとも75パーセントポイント高い特異的溶解を引き起こす。いくつかの実施態様において、ADCC活性が、標的細胞としてFGFR2IIIbを発現するBa/F3細胞、及びエフェクター細胞として単離されたヒトPBMCを使用して決定される。
【0008】
いくつかの実施態様において、抗体は、同じアミノ酸配列を有するフコシル化抗FGFR2IIIb抗体に比較して、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体よりも、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも17倍、又は少なくとも20倍高い親和性でFcガンマRIIIAに結合する。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAは、表面プラズモン共鳴を使用して決定される。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAは、FcガンマRIIIA(V158)及びFcガンマRIIIA(F158)から選択される。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAは、FcガンマRIIIA(V158)である。
【0009】
本明細書に記載の任意の実施態様において、抗体は、FGFR2IIIbに結合してもよいが、FGFR2IIIcに結合なくてもよい。
【0010】
本明細書に記載の任意の実施態様において、複数のアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を含む組成物は、少なくとも95%のアフコシル化抗体を含む。本明細書に記載の任意の実施態様において、複数のアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を含む組成物は、フコシル化が非検出であってもよい。いくつかの実施態様において、フコースの存在は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動、又はMALDI-TOF質量分析を含む方法により決定されてもよい。
【0011】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗FGFR2IIIb抗体をコードする核酸を含む宿主細胞が提供され、宿主細胞は、機能的アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子を欠く。別の実施態様において、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0012】
いくつかの実施態様において、アフコシル化された抗FGFR2IIIb抗体を作製するための方法が提供される。いくつかの実施態様において、方法は、宿主細胞を、抗FGFR2IIIb抗体をコードする核酸を発現するために適した条件下で培養することを含み、宿主細胞は、機能的アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子を欠く。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を作製するための方法は、宿主細胞を、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を産生するために適した条件下で培養することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、宿主細胞によって産生される抗FGFR2IIIb抗体を回収することを更に含む。いくつかの実施態様において、宿主細胞によって産生される抗FGFR2IIIb抗体の少なくとも5%がフコースを含む。いくつかの実施態様において、宿主細胞によって産生される抗FGFR2IIIb抗体の少なくとも95%がフコースを欠く(例えば、アフコシル化されている)。いくつかの実施態様において、宿主細胞によって産生される抗FGFR2IIIb抗体において、フコース検出されない。いくつかの実施態様において、フコースの存在は、HPLC、キャピラリー電気泳動、又はMALDI-TOF質量分析を含む方法により検出される。
【0013】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む、薬学的組成物が提供される。
【0014】
いくつかの実施態様において、がんを処置する方法が提供される。いくつかの実施態様において、方法は、本明細書に記載のアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む、薬学的組成物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施態様において、がんは、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、及び食道がんから選択される。いくつかの実施態様において、がんは胃がんである。いくつかの実施態様において、がんはFGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)比が>3である。いくつかの実施態様において、がんはFGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含むがんは、FGFR2IIIcよりもFGFR2IIIbを多く過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含むがんは、標準化されたFGFR2IIIc発現レベルよりも、2倍、3倍、5倍、又は10倍高い標準化されたレベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施態様において、発現レベルは、GUSBに対し標準化されている。いくつかの実施態様において、がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施態様において、FGFR2IIIbの発現又は過剰発現は、IHCによって決定される。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の1+、2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHC染色は、実施例6に記載されるように、スコア付けされる。
【0015】
いくつかの実施態様において、がんを処置する方法は、白金剤、パクリタキセル、アブラキサン(ABRAXANE)(登録商標)、ドセタキセル、ゲムシタビン、カペシタビン、イリノテカン、エピルビシン、FOLFOX、FOLFIRI、ロイコボリン、フルオロウラシル、マイトマイシンC、及びドキソルビシン塩酸塩から選択される少なくとも1の追加の治療剤を投与することを更に含む。いくつかの実施態様において、白金剤は、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンから選択される。いくつかの実施態様において、がんの処置は、パクリタキセルを投与することを更に含む。いくつかの実施態様において、がんの処置は、シスプラチン、及び/又は5-FUを投与することを更に含む。
【0016】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む、薬学的組成物の使用が提供される。いくつかの実施態様において、そのような使用は、がんを有する個体におけるがんを処置するための使用である。いくつかの実施態様において、がんは、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、及び食道がんから選択される。いくつかの実施態様において、がんは胃がんである。いくつかの実施態様において、がんはFGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)比が>3である。いくつかの実施態様において、がんはFGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を有するがんは、FGFR2IIIcよりもFGFR2IIIbを多く過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を有するがんは、標準化されたFGFR2IIIc発現レベルよりも、2倍、3倍、5倍、又は10倍高い標準化されたレベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施態様において、発現レベルは、GUSBに対し標準化されている。いくつかの実施態様において、がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施態様において、FGFR2IIIbの発現又は過剰発現は、IHCによって決定される。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の1+、2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHC染色は、実施例6に記載されるように、スコア付けされる。
【0017】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む、がんを処置するための薬学的組成物が提供される。いくつかの実施態様において、がんは、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、及び食道がんから選択される。いくつかの実施態様において、がんは胃がんである。いくつかの実施態様において、がんはFGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)比が>3である。いくつかの実施態様において、がんはFGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を有するがんは、FGFR2IIIcよりもFGFR2IIIbを多く過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を有するがんは、標準化されたFGFR2IIIc発現レベルよりも、2倍、3倍、5倍、又は10倍高い標準化されたレベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施態様において、発現レベルは、GUSBに対し標準化されている。いくつかの実施態様において、がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施態様において、FGFR2IIIbの発現又は過剰発現は、IHCによって決定される。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の1+、2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHC染色は、実施例6に記載されるように、スコア付けされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aから1Cは、実施例3に記載された、FGFR2IIIb発現Ba/F3細胞に対する、アフコシル化αFGFR2bA及びフコシル化αFGFR2bFのADCC活性を示す。凡例において、「αFGFR2bF/FGFR2b」は、フコシル化αFGFR2bF抗体がFGFR2IIIb発現Ba/F3標的細胞に対して試験されたことを示す。
【
図2】
図2Aから2Dは、実施例4に記載されるように、10mg/kg(A及びB)、及び3mg/kg(C及びD)での、OCUM-2M胃がん異種移植モデルにおける、アフコシル化αFGFR2bA及びフコシル化αFGFR2bFの有効性を示す。
【
図3】
図3A及び3Bは、実施例4に記載されるように、OCUM-2M胃がん異種移植モデルにおける、アフコシル化αFGFR2bAの用量依存的有効性を示す。
【
図4】
図4A及び4Bは、実施例4に記載されるように、OCUM-2M胃がん異種移植モデルにおける、アフコシル化αFGFR2bA及びパクリタキセルの組合せ療法の有効性を示す。
【
図5】
図5A及び5Bは、実施例4に記載されるように、OCUM-2M胃がん異種移植モデルにおける、アフコシル化αFGFR2bA及び5-FU/シスプラチンの組合せ療法の有効性を示す。
【
図6】
図6A及び6Bは、実施例4に記載されるように、MFM-223乳がん異種移植モデルにおける、アフコシル化αFGFR2bAの有効性を示す。
【
図7】
図7は、実施例1に記載されるように、(A)ポテリジェント(Potelligent)(登録商標)CHOK1SV細胞及び(B)CHOK1SV細胞において産生されるαFGFR2b抗体のグリカンプロフィールを示す。
【
図8】
図8は、抗体に典型的に見出されるN-結合グリカンのスキーム図を示す。
【
図9】
図9は、αFGFR2bA又はαFGFR2bFの濃度増加に伴うBa/F3 FGF2b細胞のADCCを示す。アッセイは、実施例5に記載されるように、E:T比25:1で正常ヒトPBMCを用いて実施された。データは、LDH放出としてプロットされる。
【
図10】
図10は、αFGFR2bA又はαFGFR2bFの濃度増加に伴うOCUM-2M細胞のADCCを示す。アッセイは、E:T比25:1で正常ヒトPBMCを用いて実施された。実施例5に記載されている。データは特異的溶解パーセントでプロットされる。
【
図11】
図11Aから11Fは、実施例6に記載されるように、免疫組織化学を使用した腫瘍組織試料におけるFGFR2IIIbの検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
FGFR2IIIbに結合するアフコシル化抗体が提供される。いくつかの実施態様において、また、FGFR2IIIbに結合する抗体を形成することができるアフコシル化抗体の重鎖及び軽鎖が提供される。いくつかの実施態様において、1以上の特定の超可変領域(HVR)を含む、アフコシル化抗体、重鎖、及び軽鎖が提供される。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体に比較して、増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体に比較して、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体に比較して、FcガンマRIIIA(V158)に対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体に比較して、FcガンマRIIIA(F158)に対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合しない。
【0020】
FGFR2IIIbに結合する抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。抗体重鎖又は軽鎖をコードするポリヌクレオチドも、また、提供される。アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を発現する宿主細胞が提供される。FGFR2IIIbに対するアフコシル化抗体を使用した処置の方法が提供される。そのような方法は、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、及び食道がん等のがんを処置する方法を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において使用される章(section headings)は、体系化の目的のみのためであり、記載される主題を限定すると解釈されるものではない。
【0022】
本明細書において引用される、特許出願、特許公開公報、及びGenbankアクセッション番号を含む全ての引用文献は、各引用文献のその全体が、具体的に及び個々に本明細書に援用されることが示されるように、引用により本明細書に援用される。
【0023】
本明細書に記載、又は引用される技術及び手順は、通常よく理解され、一般的に当業者によって、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al.eds., (2003)); the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987)); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R. I. Freshney), ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995); 及び Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993); 及びこれらの改訂版に記載される、広く利用される従来法を使用して用いられる。
【0024】
I.定義
本明細書に別途定義されていない限り、本願発明に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当該技術分野の当業者に一般的に理解される意味を持つものとする。更に、文脈的に必須でない又は明記されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、そして、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0025】
本明細書に記載の本願発明の態様及び実施態様は、「からなる」及び/又は「基本的にからなる」態様及び実施態様を含む。本明細書で使用されるように、単数形の「a」、「an」及び「the」は、特に指示がない限り、複数への参照が含まれる。
【0026】
別途定義されていない限り、又は当業者にそのように理解されない限り、本出願において、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。複数従属請求項に関連し、「又は」の使用は、1以上の前出の独立又は従属請求項の引用を意味する。
【0027】
当業者により理解されるように、本明細書中の「およそ(約、about)」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に対する実施態様を含む(記載する)。例えば、「約X」との記載には「X」の記載が含まれる。
【0028】
用語「核酸分子」、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、区別なく用いられてもよく、かつ、核酸のポリマーを意味してもよい。そのような核酸のポリマーは、天然及び/又は非天然核酸を含んでもよく、かつ、DNA、RNA、及びPNAを含んでもよいが、これらに限定されない。「核酸配列」は核酸分子又はポリヌクレオチドを含む核酸の直鎖状配列を指す。
【0029】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すのに区別なく用いられ、最短の長さに限定されない。そのような、アミノ酸残基のポリマーは、天然又は非天然アミノ酸残基を含んでもよく、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、トリマー(trimer)、及び多量体を含んでもよいが、これらに限定されない。完全長タンパク質及びその断片の両方が、定義により含まれる。その用語は、例えば、グリコシル化、シアル酸付加、アセチル化、リン酸化、等のポリペプチドの発現後修飾も含む。更に、本願発明の目的のために、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する範囲で、天然型の配列に対する欠失、付加、置換(天然では通常保存的)等の修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異形成による意図的なものであってもよく、又は、タンパク質を産生する宿主の突然変異又はPCR増幅時のエラーによる偶発的なものであってもよい。
【0030】
「FGFR2IIIb」又は「FGFR2b」は、区別なく用いられ、線維芽細胞増殖因子受容体2IIIbスプライシングフォームを指す。例示的なヒトFGFR2IIIbは、2013年7月7日付GenBankアクセッション番号NP_075259.4に示される。非限定的な例示的成熟ヒトFGFR2IIIbアミノ酸配列は、配列番号1で示される。
【0031】
「FGFR2IIIc」又は「FGFR2c」は、区別なく用いられ、線維芽細胞増殖因子受容体2IIIcスプライシングフォームを指す。例示的なヒトFGFR2IIIcは、2013年7月7日付GenBankアクセッション番号NP_000132.3に示される。非限定的な例示的成熟ヒトFGFR2IIIcアミノ酸配列は、配列番号12で示される。
【0032】
用語「エピトープ」は、抗原結合分子(例えば、抗体の結合領域を含む、抗体、抗体断片、又はスキャフォールドタンパク質)が結合する、標的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、又は脂質等の抗原)における部位を指す。エピトープは、しばしば、アミノ酸、ポリペプチド、又は糖側鎖等の化学的に活性な表層の分子グループからなり、特定の三次元構造的特徴、並びに特定の電荷的特徴を有する。エピトープは、標的分子の、近接する残基又は並置された非近接の残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)の両方から形成され得る。三次構造的折りたたみにより形成されるエピトープは、典型的には、還元溶媒による処置で喪失するが、近接する残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)から形成されるエピトープは、典型的に、還元溶媒に対する曝露により得られる。エピトープは、少なくとも3、少なくとも5、又は8~10残基(例えば、アミノ酸、又はヌクレオチド)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、エピトープは、20残基長未満(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)、15残基長未満、又は12残基長未満である。2つの抗体が抗原に対する競合的結合を示す場合、それらは、ある抗原内の同一のエピトープに結合してもよい。
【0033】
「非直鎖状エピトープ」又は「立体構造エピトープ」は、そのエピトープに特異的な抗体が結合する、抗原性タンパク質内の、非近接のポリペプチド、アミノ酸、及び/又は糖を含む。
【0034】
「直鎖状エピトープ」は、そのエピトープに特異的な抗体が結合する、抗原性タンパク質内の、近接のポリペプチド、アミノ酸、及び/又は糖を含む。
【0035】
本明細書における用語「抗体」は最も広義に用いられ、様々な抗体構造を包含し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含むが、これらに限定されない。
【0036】
抗体との用語は、抗原に結合することが可能な断片である、例えばFv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、及び(Fab’)2等を含むが、これらに限定されない。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。パパイン処理は、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原を架橋することが可能なF(ab’)2断片を産生する。抗体との用語は、また、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び、マウス、ヒト、カニクイザル等の様々な種の抗体を含むが、これらに限定されない。
【0037】
用語「重鎖可変領域」は、重鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3、及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施態様において、重鎖可変領域は、また、少なくとも、FR1及び/又は少なくともFR4の一部を含む。
【0038】
用語「重鎖定常領域」は、少なくとも3つのCH1、CH2、及びCH3の重鎖定常ドメインを含む領域を指す。非限定的例示的重鎖定常領域は、γ、δ、及びαを含む。非限定的例示的重鎖定常領域は、ε及びμを含む。各重鎖定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体がIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体がIgD抗体であり、そして、α定常領域を含む抗体がIgA抗体である。更に、μ定常領域を含む抗体が、IgM抗体であり、そして、ε定常領域を含む抗体が、IgE抗体である。特定のアイソタイプは、サブクラスに更に分類され得る。例えば、IgG抗体は、IgG1(γ1定常領域を含む)、IgG2(γ2定常領域を含む)、IgG3(γ3定常領域を含む)、及びIgG4(γ4定常領域を含む)抗体を含むがこれらに限定されず;IgA抗体は、IgA1(α1定常領域を含む)及びIgA2(α2定常領域を含む)抗体を含むがこれらに限定されず;かつ、IgM抗体は、IgM1及びIgM2を含むがこれに限定されない。
【0039】
用語「重鎖」は、リーダー配列を有する又は有さない、少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。いくつかの実施態様において、重鎖は、少なくとも重鎖定常領域の一部を含む。用語「完全長重鎖」は、リーダー配列を有する又は有さない、重鎖可変領域、及び重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0040】
用語「軽鎖可変領域」は、軽鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3、及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施態様において、軽鎖可変領域は、また、少なくとも、FR1及び/又はFR4を含む。
【0041】
用語「軽鎖定常領域」は、軽鎖定常ドメインCLを含む領域を指す。非限定的例示的軽鎖定常領域は、λ及びκを含む。
【0042】
用語「軽鎖」は、リーダー配列を有する又は有さない、少なくとも軽鎖可変領域を含む、ポリペプチドを指す。いくつかの実施態様において、軽鎖は、少なくとも軽鎖定常領域の一部を含む。用語「完全長軽鎖」は、リーダー配列を有する又は有さない、軽鎖可変領域、及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0043】
用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変であるか、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般的に、天然型4鎖抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、及びVLに3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。HVRは、一般的に超可変ループ由来及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、配列可変性が最高であり、及び/又は抗原認識に関与している。典型的な超可変ループはアミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol.196:901-917 (1987)。典型的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、アミノ酸残基L1の24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、及びH3の95~102に生じる(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。超可変領域(HVR)、及び相補性決定領域(CDR)との用語は、本明細書において区別なく用いられ、抗原結合領域を形成する可変領域の部分を指すのに使用される。
【0044】
本明細書に記載の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来するアクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、又はそれはアミノ酸配列の変化を含み得る。いくつかの実施態様において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンのフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0045】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。いくつかの実施態様において、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。
【0046】
「親和性成熟」抗体は、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良をもたらす、その1以上の超可変領域(HVR)において1以上の改変を持つ抗体、及び/又は相補性決定領域(CDR)を指す。
【0047】
「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種から由来し、残りの重鎖及び/又は軽鎖は異なる起源又は種から由来する抗体を指す。いくつかの実施態様において、キメラ抗体は、第1の種(例えば、マウス、ラット、カニクイザル等)に由来する少なくとも1の可変領域、及び第2の種(例えば、ヒト、カニクイザル等)に由来する少なくとも1の定常領域を含む抗体を指す。いくつかの実施態様において、キメラ抗体は、少なくとも1のマウス可変領域、及び少なくとも1のヒト定常領域を含む。いくつかの実施態様において、キメラ抗体は、少なくとも1のカニクイザル可変領域、及び少なくとも1のヒト定常領域を含む。いくつかの実施態様において、キメラ抗体の全ての可変領域は、第1の種に由来し、かつキメラ抗体の全ての定常領域は第2の種に由来する。
【0048】
「ヒト抗体」は、非ヒト可変領域のフレームワーク領域における少なくとも1のアミノ酸が、ヒト可変領域に由来する対応するアミノ酸と置換された、抗体を指す。いくつかの実施態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1のヒト定常領域、又はその断片を含む。いくつかの実施態様において、ヒト化抗体は、Fab、scFv、(Fab’)2等である。
【0049】
「HVRグラフト化抗体(HVR-grafted antibody)」は、第1の種(非ヒト)の1以上の超可変領域(HVR)が、第2の種(ヒト)のフレームワーク領域(FR)にグラフトされたヒト化抗体を指す。
【0050】
「機能的Fc領域」は、天然型配列のFc領域の「エフェクター機能」を有している。例示的な「エフェクター機能」は、Fc受容体結合;C1q結合;CDC;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御等を含む。そのようなエフェクター機能は、通常、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合するためのFc領域を必要とし、様々なアッセイを用いて評価され得る。
【0051】
「天然型配列のFc領域」は、自然界に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然型配列のヒトFc領域は、天然型配列のヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ);天然型配列のヒトIgG2 Fc領域;天然型配列のヒトIgG3 Fc領域;及び天然型配列のヒトIgG4 Fc領域、並びにその自然発生的な変異体を含む。
【0052】
「変異Fc領域」は、少なくとも1のアミノ酸変異による、天然型配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。
【0053】
「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域と結合する受容体を示す。いくつかの実施態様において、FcγRは、天然型ヒトFcRである。更に、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合するものであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び代替的にスプライシングされたフォームも含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化型受容体」)及びFcγRIIB(「抑制型受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化型受容体FcγRIIAは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)をその細胞質ドメインに含み、抑制型受容体FcγRIIBは、免疫受容体チロシン抑制モチーフ(ITIM)を含む(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); 及び de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)に概説されている。将来的に同定されることになるものを含め、他のFcRは、本明細書においては用語「FcR」に包含される。
【0054】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、また、母親のIgGの胎児への輸送に関与する新生児受容体であるFcRnを含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) 及び Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)) and regulation of homeostasis of immunoglobulins)。FcRnへの結合の測定方法は、知られている(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004); 国際公開第2004/92219号(Hinton et al.)を参照)。
【0055】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例は以下のものを含む:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞の活性化。
【0056】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。特定の実施態様において、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、細胞障害性T細胞及び好中球を含む。エフェクター細胞は、例えば血液などの天然のソースから単離されてもよい。
【0057】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcRs)に結合した、分泌されたIgが、細胞傷害性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合し、続いてサイトトキシンによる標的細胞の殺傷することを可能にする、細胞障害の形態を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5500362号又は同第5821337号又は米国特許第6737056(Presta)に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイのための、有効なエフェクター細胞は、PBMC及びNK細胞を含む。代替的又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価され得る。Fc領域アミノ酸が改変された追加的抗体、及び増強された又は低下したADCC活性は、例えば、米国特許第7923538及び米国特許第7994290に記載されている。
【0058】
アッセイで使用されるそのような抗体及び親抗体の量が同一の場合、「増強されたADCC活性」を有する抗体は、親抗体と比較して、インビトロ又はインビボでADCCの媒介に関してより有効な抗体を指し、ここで、抗体及び親抗体は、少なくとも1の構造的態様において異なる。いくつかの実施態様において、抗体及び親抗体は、同一のアミノ酸配列を有するが、親抗体がフコシル化されているのに対し、抗体はアフコシル化されている。いくつかの実施態様において、ADCC活性は、本明細書に記載のインビトロのADCCアッセイを使用して決定されるが、例えば、動物モデル等の、他のアッセイ又はADCC活性を決定するための方法が企図される。いくつかの実施態様において、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIAに対する、増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対する、増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対する、増強された親和性を有する。
【0059】
「改変された」FcR結合親和性又はADCC活性を有する抗体は、親抗体に比較して、増強された又は低減されたFcR結合活性及び/又はADCC活性を有し、ここで、抗体及び親抗体は、少なくとも1の構造的態様において異なる。FcRに対し「増加した結合を示す」抗体は、少なくとも1のFcRに、親抗体よりも高い親和性で結合する。FcRに対し「低下した結合を示す」抗体は、少なくとも1のFcRに、親抗体よりも低い親和性で結合する。FcRに対し低下した結合を示す抗体は、FcRに対し、ほとんど検出できない、又は検出できない結合、例えば、天然型配列のIgG Fc領域と比較して0~20%の結合を有してもよい。
【0060】
「FcガンマRIIIAに対する増強された親和性」は、FcガンマRIIIAに対する、親抗体より高い親和性を有する抗体を指し(いくつかの例で、また、Cd16aを指す)、ここで、抗体及び親抗体は、少なくとも1の構造的態様において異なる。いくつかの実施態様において、抗体及び親抗体は、同一のアミノ酸配列を有するが、親抗体がフコシル化されているのに対し、抗体はアフコシル化されている。FcガンマRIIIAに対する親和性を決定するための、任意の好適な方法が、使用されてもよい。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAに対する親和性は、本明細書に記載の方法により決定される。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する抗体は、増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対する、増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対する、増強された親和性を有する。
【0061】
アフコシル化された抗体又は「フコースを欠く」抗体は、定常領域のグリコシル化においてフコースを欠いている、IgG1又はIgG3アイソタイプ抗体を指す。最大2Gal残基により終了される主要なフコシル化二分岐複合オリゴ糖グリコシル化のように、IgG1又はIgG3のグリコシル化はAsn297で生じる。いくつかの実施態様において、抗体はAsn297におけるフコースを欠いている。これらの構造は、末端Gal残基の量によって、G0、G1(α1,6又はα1,3)又はG2グリカン残基と規定される。例えば、Raju, T. S., BioProcess Int. 1: 44-53 (2003)を参照のこと。抗体FcのCHO型グリコシル化は、例えば、Routier, F. H., Glycoconjugate J. 14: 201-207 (1997)に記載されている。いくつかの実施態様において、非糖改変CHO宿主細胞において、組換えに技術により発現された抗体バッチの少なくとも85%がAsn297においてフコシル化される。複数の抗体を含む組成物を参照する場合、Asn297におけるフコースを含む、組成物中の抗体の<5%がアフコシル化されている場合に、抗体はアフコシル化されていると考えられる。フコースを測定する方法は、本明細書に記載の方法を含む、当該分野で周知の任意の方法を含む。いくつかの実施態様において、フコースは、実施例1に記載の方法により検出される。いくつかの実施態様において、フコースは、複数のアフコシル化抗体を含む組成物において不検出である。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗体は、増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗体は、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対する増強された親和性を有する。
【0062】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。標準的な補体の活性化経路は、補体系の第1成分(C1q)の、同起源の抗原に結合する抗体(適切なサブクラス)への結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されるCDCアッセイが実施されてもよい。改変Fc領域アミノ酸配列、及び増強又は低下したC1q結合能を有する抗体は、米国特許第6194551号、米国特許第7923538号、米国特許第7994290号及び国際公開第1999/51642号に記載される。また、例えば、Idusogie et al., J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照のこと。
【0063】
本明細書で使用される用語「実質的に類似」又は「実質的に同じ」は、当業者が、2以上の数値の間の差異が、前記値によって測定される生物学的特性という脈絡の中で、ほとんど又は全く生物学的及び/又は統計学的有意性がないと考えるであろうほどの、2以上の数値の間の十分に高い類似性を意味する。いくつかの実施態様において、2以上の実質的に類似する値は、約5%、10%、15%、20%、25%、又は50%の何れか未満で異なる。
【0064】
本明細書で使用される用語「実質的に低下した」又は「実質的に異なる」は、当業者が、2つの数値の間の差異が、前記値によって測定される生物学的特性という脈絡の中で、統計学的有意性を認めるほどの、2つの数値の間の十分に高い相違を意味する。いくつかの実施態様において、2つの実質的に異なる値は、約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の何れかより高く異なる。
【0065】
用語「リーダー配列」及び「シグナル配列」は、区別なく用いられ、哺乳動物細胞由来のポリペプチドの分泌を促進するポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基の配列を指す。リーダー配列は、成熟タンパク質を形成するとき、哺乳動物細胞由来のポリペプチドの移行に際し切断されてもよい。リーダー配列は、天然又は合成であってもよく、付着する相手のタンパク質に対し、異種性であっても同種性であってもよい。
【0066】
「天然型の配列」のポリペプチドは、自然界に見出されるポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。従って、天然型の配列のポリペプチドは、任意の動物に由来する、天然に存在するポリペプチドのアミノ酸配列を有し得る。そのような天然型の配列のポリペプチドは、自然界から単離され得、又は、組換え技術又は合成手段によって製造され得る。用語「天然型の配列」のポリペプチドは、特に、天然に存在する、短鎖化型又は分泌型のポリペプチド(例えば、細胞外ドメイン配列)、天然に存在する変異体フォーム(例えば、代替的にスプライシングされたフォーム)、及び天然に存在するポリペプチドの対立遺伝子変異体を包含する。
【0067】
ポリペプチドの「変異体」は、必要に応じ、配列をアライメントし、ギャップを挿入して、最大パーセントの配列同一性を達成した後、かつ、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮しない状態で、天然型の配列のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのような変異体は、例えば、ポリペプチドのN又はC末端で1以上のアミノ酸残基が付加され又は欠失しているポリペプチドを含む。いくつかの実施態様において、変異体は、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの実施態様において、変異体は、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの実施態様において、変異体は、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0068】
本明細書において、ペプチド、ポリペプチド、又は抗体配列に関し、「アミノ酸配列同一性のパーセンテージ(%)」及び「相同性」は、必要に応じ、配列をアライメントし、ギャップを挿入して、最大パーセントの配列同一性を達成した後、かつ、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮しない状態で、特定のペプチド又はポリペプチドにおけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性のパーセンテージを決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMEGALIGNTM(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0069】
アミノ酸置換は、ポリペプチドにおける1アミノ酸の、他のアミノ酸との置換を含んでもよいが、これに限定されない。保存的置換は、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示されている。より実質的な変更が、表1の「例示的置換」の見出しの下に与えられ、アミノ酸側鎖のクラスを参照して以下に更に説明される。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入することができ、その産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCC又はCDCの改善についてスクリーニングされた。
【0070】
アミノ酸は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe.
【0071】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを他のクラスに交換することを必要とするであろう。
【0072】
用語「ベクター」は、宿主細胞中で増幅され得るクローン化ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド(複数)を含むように操作されてもよいポリヌクレオチドを説明するために用いられる。ベクターは、以下の1以上の要素を含んでもよい:複製起点、目的のポリペプチドの発現を調節する、1以上の調節配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)、及び/又は1以上の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子、及び例えばβガラクトシダーゼのような、比色アッセイにおいて使用されてもよい遺伝子)。用語「発現ベクター」は、宿主細胞において、目的のポリペプチドを発現させるために使用されるベクターを指す。
【0073】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離されたポリヌクレオチドのレシピエントになってもよい、又はレシピエントになった、細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であってもよい。例示的な真核細胞は、霊長類又は非霊長類細胞等の哺乳動物細胞;酵母等の菌類細胞;植物細胞;及び昆虫細胞等を含む。非限定的例示的哺乳動物細胞は、NSO細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、及び293及びCHO細胞、及び、それらの改変細胞である、例えば、それぞれ293-6E及びDG44等の細胞を含むが、これらに限定されない。
【0074】
用語「単離された」は、典型的に共に自然界で見出される又は産生される少なくとも一部の成分から、分離された分子を指す。例えば、細胞が産生された細胞の、少なくとも一部の成分から分離された場合、ポリペプチドは「単離された」といえる。発現後に細胞により分泌されたポリペプチドの場合、ポリペプチドを産生する細胞からポリペプチドを含む上清を物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」ことと考えられる。同様に、ポリヌクレオチドは、自然界に典型的に見出される、より大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合、ゲノムDNA又はミトコンドリアDNA)の一部でない場合、又は、例えば、RNAポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチドを産生する細胞の少なくとも一部の成分から分離された場合、「単離された」という。従って、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」といってもよい。
【0075】
用語「個体」又は「対象」は、本明細書において区別なく用いられ、例えば、哺乳動物等の動物を指す。いくつかの実施態様において、哺乳動物の処置の方法を提供し、哺乳動物は、ヒト、げっ歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、実験哺乳動物、家畜哺乳動物、競技用哺乳動物、及び愛玩哺乳動物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、「個体」又は「対象」は、疾患又は障害の処置を必要とする個体又は対象を指す。
【0076】
「疾患」又は「障害」は、処置が必要とされる健康状態を指す。
【0077】
用語「がん」は、制御不能な細胞増殖、抑制不能な細胞成長、及びアポトーシスによる減少した細胞死に関連する悪性増殖性疾患を指す。いくつかの非限定的例示的がんは、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、及び食道がんから選択される。いくつかの実施態様において、がんはFGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)比が>3である。いくつかの実施態様において、FGFR2遺伝子増幅を含むがんは、FGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を有するがんは、FGFR2IIIcよりもFGFR2IIIbを多く過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含むがんは、標準化されたFGFR2IIIc発現レベルよりも、2倍、3倍、5倍、又は10倍より高い標準化されたレベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施態様において、発現レベルは、GUSBに対し標準化されている。いくつかの実施態様において、がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施態様において、胃がんはFGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施態様において、FGFR2遺伝子増幅を含む胃がんは、FGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含む胃がんは、FGFR2IIIcよりもFGFR2IIIbを多く過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含む胃がんは、標準化されたFGFR2IIIc発現レベルよりも、2倍、3倍、5倍、又は10倍より高い標準化されたレベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施態様において、発現レベルは、GUSBに対し標準化されている。いくつかの実施態様において、胃がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施態様において、過剰発現は、mRNA過剰発現である。いくつかの実施態様において、過剰発現は、タンパク質過剰発現である。
【0078】
用語「腫瘍」は、本明細書において、異常に高いレベルの増殖及び成長を示す細胞群を指すために用いられる。腫瘍は、良性、前悪性、又は悪性であってもよく;悪性腫瘍細胞は、がん性である。腫瘍細胞は、固形腫瘍又はリンパ性腫瘍(leukemic tumor)細胞であってもよい。用語「腫瘍成長」は、本明細書において、それに伴う腫瘍サイズの増加をもたらす腫瘍を含む1以上細胞による増殖又は成長を指すために使用される。
【0079】
本明細書において、「処置」は、有益な又は所望の臨床的結果を得るための手法である。本明細書において、「処置」は、ヒトを含む哺乳動物における疾患のための治療法の、任意の投与又は適用を包含する。本願発明の目的のために、有益な又は所望の臨床的結果は:1以上の症状の緩和、疾患の程度の低減、疾患の拡張の阻止又は遅延(例えば、肺又はリンパ節への転移等の、転移)、疾患の再発の阻止又は遅延、疾患の進行の遅延又は減速、病状の改善、疾患又は疾患の進行の阻止、疾患又はその進行の阻止又は減速、疾患進行の停止、及び寛解(部分寛解又は完全寛解に関わらず)、の任意の1以上を含むが、これらに限定されない。「処置」には、増殖関連疾患の病理学的帰結の低減も包含される。本願発明の方法は、処置の1以上の任意の態様を企図する。
【0080】
がんに関連し、用語「処置する」は、腫瘍細胞又はがん細胞の成長を阻害すること、腫瘍細胞またはがん細胞の複製を阻害すること、腫瘍の全体量を減少させること、及び、疾患に関連する1以上の症状を改善させること、の任意の1又は全てを含む。
【0081】
用語「阻害」又は「阻害する」は、任意の表現型特性の低下又は停止、又はその特性の発生率、程度、又は見込みの低下又は停止を指す。「低下する」又は「阻害する」ことは、活性、機能、及び/又は量を、参照と比較して、減少、低下、又は停止させることを指す。特定の実施態様において、「低下する」又は「阻害する」により、20%以上の全体的な低下をもたらす能力を意味する。別の実施態様において、「低下する」又は「阻害する」により、50%以上の全体的な低下をもたらす能力を意味する。更に別の実施態様において、「低下する」又は「阻害する」により、75%、85%、90%、95%又はそれ以上の全体的な低下をもたらす能力を意味する。
【0082】
本明細書において、「参照」は、比較のために使用される、任意の試料、標準、又はレベルを指す。参照は、健常及び/又は非疾患性試料から取得されてもよい。いくつかの実施例において、参照は、非処置試料から取得されてもよい。いくつかの実施例において、参照は、対象個体の非処置又は非疾患性試料から取得されてもよい。いくつかの実施例において、参照は、対象又は患者でない、1以上の健常個体から取得される。
【0083】
本明細書において、「疾患進行の遅延」は、その疾患(がん等の)の進行を妨げること、減速させること、遅らせること、抑制すること、及び/又は延期することを意味する。遅延は、疾患歴及び/又は処置される個体によって、異なる長さの時間であり得る。当業者に明白なように、十分な又は顕著な遅延は、事実上、個体が疾患を進行させない、阻止を含む。例えば、進行がん又は転移がん等の後期がんが、遅延されてもよい。
【0084】
本明細書において、「阻止すること」は、疾患に罹患しやすいが、その疾患と診断されたことのない、対象における疾患の発生又は再発に関し、予防を提供することを含む。
【0085】
本明細書において、機能又は活性を「抑制する」ことは、目的の条件又はパラメーター以外が同じ条件の場合と比較した場合、又は、別の条件と比較した場合、機能又は活性を低下させることである。例えば、腫瘍成長を低下させる抗体は、抗体が存在しない条件下の腫瘍の成長速度と比較して、腫瘍の成長速度を低下させる。
【0086】
薬剤の「有効量」とは、所望の治療的又は予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。
【0087】
本願発明の物質/分子、アゴニスト、又はアンタゴニストの「治療的有効量」は、個体の病状、年齢、性別及び体重、また、個体における所望の反応を引き出すための本発明の物質/分子、アゴニスト、又はアンタゴニストの能力等の要因によって変わり得る。また、治療的有効量とは、物質/分子、アゴニスト、又はアンタゴニストの毒性又は有害作用よりも治療的に有益な作用が上回る量である。治療的有効量は、1以上の投与により送達されてもよい。
【0088】
「予防的有効量」とは、所望の予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。必ずではないが、通常、予防的用量は、疾病の前又は初期の段階に対象に使用されるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
【0089】
用語「薬学的製剤」及び「薬学的組成物」は、有効な活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、製剤を投与する対象にとって許容できない毒性である他の成分を含まない調製物を指す。そのような製剤は、滅菌されていてもよい。
【0090】
「薬学的に許容可能な担体」は、対象への投与のために、薬学的組成物を共に含む治療剤と共に使用するために、当該技術分野で従来から使用される、非毒固体、半固体、又は液体の賦形剤、希釈剤、カプセル化材料、処方助剤、又は担体を指す。薬学的に許容可能な担体は、レシピエントに対し、その使用される用量及び濃度において非毒性であり、かつ、製剤の他の成分と適合性を有する。薬学的に許容可能な担体は、使用される製剤のために好適である。
【0091】
「滅菌された」製剤は、無菌であり、又は基本的に生きた微生物及びその胞子を含まない。
【0092】
1以上の更なる治療剤「との組合せ」投与は、任意の順序での、同時の(並行した)、及び連続した、又は順次的な投与を含む。
【0093】
用語「同時の」は、本明細書において、2以上の治療剤を投与することを指すために使用され、ここで、少なくとも投与の一部は時間的に重複し、又は1の治療剤の投与は他の治療剤の投与に比較して短い時間で行われる。例えば、2以上の治療剤は、例えば、約30、15、10、5、又は1分の何れか未満である、約60分未満の分離時間で投与される。
【0094】
用語「順次的な」は、本明細書において、2以上の治療剤の投与を指すために使用され、1以上の薬剤の投与は、1以上の他の薬剤の投与の中断後に継続する。例えば、2以上の治療剤は、約20、30、40、50、又は60分、1日、2日、3日、1週間、2週間、又は1ヶ月、又はそれ以上の何れか等の、約15分より長い分離時間で投与される。
【0095】
本明細書において、「併用して」は、他の処置手段に加え、ある処置手段を投与することを指す。そのように、「併用して」は、対象に対し、他の処置手段の投与前、投与中、投与後に、ある処置手段を投与することを指す。
【0096】
用語「添付文書」は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに使用され、このような治療製品の使用に関する指示、使用法、用量、投与、組合せ療法、禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
【0097】
「製品」は、任意の製品(例えば、包装品又は容器)、又は、疾患又は障害(例えば、がん)を処置するための医薬等の少なくとも1の薬品、又は本明細書に記載のバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含むキットである。特定の実施態様において、製品又はキットは、本明細書に記載の方法を実施するための単位で、販売促進され、流通され、又は販売される。
【0098】
II.抗FGFR2IIIb抗体
いくつかの実施態様において、本願発明は、FGFR2IIIbに対するように指向されたアフコシル化抗体を提供する。アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、本明細書に記載の、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、及び重鎖及び/又は軽鎖HVR(例えばCDR)を含む抗体を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、本発明は、FGFR2IIIbに結合する単離されたアフコシル化抗体を提供する。特定の実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIb活性を調節する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対する増強された親和性を有する。
【0099】
抗FGFR2IIIb抗体は、本明細書の実施例に記載の「αFGFR2b」を指し、かつ、配列リストは、2012年1月24日発行の米国特許第8101723号のHuGAL-FR21抗体と同一のアミノ酸配列を有する。米国特許第8101723号は、特に、任意の目的のために引用により本明細書に援用され、かつ、HuGAL-FR21の可変領域及び完全長の成熟抗体鎖のアミノ酸配列を示す、米国特許第8101723号の
図13及び14は、特に、任意の目的のために引用により本明細書に援用される。加えて、米国特許第8101723号の
図13において下線で示されるHuGAL-FR21抗体のHVR配列は、特に、任意の目的のために、本明細書に援用される。
【0100】
ある実施態様において、本願発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、又は6つのHVR(例えばCDR)を含むアフコシル化抗FGFR2IIIbを提供する。
【0101】
いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、重鎖可変領域を含む少なくとも1の重鎖及び重鎖定常領域の少なくとも一部、及び軽鎖可変領域を含む少なくとも1の軽鎖及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、各重鎖が重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含む、2つの重鎖、及び、各軽鎖が軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む、2つの軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0102】
ある実施態様において、本願発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、6つのHVRを含むアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を提供する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、上記6つのHVRを含み、FGFR2IIIbに結合する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、上記6つのHVRを含み、FGFR2IIIbに結合し、かつ、増強されたADCC活性、及びFcガンマRIIIA(例えばFcガンマRIIIA(V158)及び/又はFcガンマRIIIA(F158))に対する増強された親和性から選択される少なくとも1の活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合しない。
【0103】
ある実施態様において、本願発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含む、6つのHVRを含む抗FGFR2IIIb抗体と競合する、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を提供する。
【0104】
ある実施態様において、本願発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1、少なくとも2、又は3つ全てのVH HVR配列を含むアフコシル化抗体を提供する。
【0105】
別の実施態様において、本願発明は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、少なくとも2、又は3つ全てのVL HVR配列を含むアフコシル化抗体を提供する。
【0106】
別の実施態様において、本願発明のアフコシル化抗体は、(a)(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1、少なくとも2、又は3つ全てのVH HVR配列を含むVH ドメイン;及び(b)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1、少なくとも2、又は3つ全てのVLHVR配列を含むVLドメイン、を含む。
【0107】
別の実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbへ結合する能力を保持する。特定の実施態様において、そのような抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合せずに、選択的にFGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、配列番号4において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号5のVH配列を含む。特定の実施態様において、VHは、以下から選択される1、2、又は3つのHVRを含む:(A)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3。
【0108】
別の実施態様において、配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が提供される。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、そのような抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合せずに、選択的にFGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、配列番号5において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号4のVL配列を含む。特定の実施態様において、VLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、1、2、又は3つのHVR配列を含む。
【0109】
別の実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列、及び配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対し、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含み、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対し、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、そのような抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合せずに、選択的にFGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、配列番号4において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、配列番号5において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、一方又は両方の配列の翻訳後修飾を含む、配列番号4のVH配列及び配列番号5VL配列を含む。特定の実施態様において、VHは、以下から選択される1、2、又は3つのHVRを含む:(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;及びVLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1、2、又は3つのHVR配列を含む。
【0110】
別の実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が提供され、その抗体は、上記に与えられた実施態様の何れかにあるVH、及び上記に与えられた実施態様の何れかにあるVLを含む。別の実施態様において、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、それぞれ配列番号4及び配列番号5であるVH及びVLを含む。
【0111】
別の実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖配列を含む。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含むアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、そのような抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合せずに、選択的にFGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、配列番号2において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体重鎖は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号2におけるVH配列を含む。特定の実施態様において、重鎖は、以下から選択される1、2、又は3つのHVRを含む:(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3。
【0112】
別の実施態様において、配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖を含む、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が提供される。ある実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIb結合する能力を保持する。特定の実施態様において、そのような抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合せずに、選択的にFGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、配列番号3において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の軽鎖は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号3のVL配列を含む。特定の実施態様において、軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、1、2、又は3つのHVR配列を含む。
【0113】
別の実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖配列、及び配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、そのような抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合せずに、選択的にFGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、そのような抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合せずに、選択的にFGFR2IIIbに結合する能力を保持する。特定の実施態様において、配列番号2において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、配列番号3において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体重鎖は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号2におけるVH配列を含み、かつアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体軽鎖は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号3におけるVL配列を含む。特定の実施態様において、重鎖は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1、2、又は3つのHVRを含み;かつ軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1、2、又は3つのHVR配列を含む。
【0114】
例示的キメラ抗体
特定の実施態様において、本明細書で提供されるアフコシル化抗体等の抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第 4,816,567号;及び Morrison et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81 :6851-6855 (1984))に記載される。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0115】
非限定的例示的アフコシル化キメラ抗体は、本明細書に記載の重鎖HVR1、HVR2、及びHVR3及び/又は軽鎖HVR1、HVR2、及びHVR3配列を含むキメラ抗体を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、上記可変領域を含み、FGFR2IIIbに結合する。いくつかの実施態様において、アフコシル化キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、上記可変領域を含み、FGFR2IIIbに結合し、かつ、増強されたADCC活性、及びFcガンマRIIIA(例えばFcガンマRIIIA(V158)及び/又はFcガンマRIIIA(F158))に対する増強された親和性から選択される少なくとも1の活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合しない。
【0116】
いくつかの実施態様において、アフコシル化キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合し、配列番号4に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施態様において、アフコシ化キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合し、配列番号5に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合し、配列番号4に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖、及び配列番号5に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖を含む。
【0117】
例示的アフコシル化キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、また、本明細書に記載の抗体又はその断片とFGFR2IIIbに対する結合について競合するキメラ抗体を含む。従って、いくつかの実施態様において、キメラ抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と、FGFR2IIIbに対する結合について競合するように提供される。いくつかの実施態様において、抗体は、FGFR2IIIbへの結合について競合するが、FGFR2IIIには結合しない。
【0118】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラ抗体は、1以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施態様において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、及びIgDから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施態様において、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG4定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0119】
上記のように、エフェクター機能が所望であるか否かに関わらず、特定の抗体を対象にした特定の処置方法に依存してもよい。従って、いくつかの実施態様において、エフェクター機能が所望である場合、ヒトIgG1重鎖定常領域、又はヒトIgG3重鎖定常領域を含むキメラ抗FGFR2IIIb抗体が選択される。従って、いくつかの実施態様において、エフェクター機能が所望でない場合、ヒトIgG4又はIgG2重鎖定常領域を含むキメラ抗FGFR2IIIb抗体が選択される。
【0120】
例示的ヒト化抗体
いくつかの実施態様において、FGFR2IIIbに結合するアフコシル化ヒト化抗体が提供される。ヒト化抗体は、治療用抗体に対する免疫応答をもたらし、かつ治療の効果を低下させる、非ヒト抗体に対するヒト免疫応答(例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答)を、低下させ又は除去するので、ヒト化抗体は、治療用分子として有効である。
【0121】
特定の実施態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低下させるために、親の非ヒト抗体の特異性と親和性を保持したまま、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は、例えばCDR等のHVR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、かつ、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、1以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部をも含む。いくつかの実施態様において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)における、対応する残基により置換されている。
【0122】
ヒト化抗体、及びヒト化抗体を作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson, (2008) Front. Biosci. 13: 1619-1633に概説され、また、例えば、Riechmann et al., (1988) Nature 332:323-329; Queen et al., (1989) Proc. Natl Acad. Sci. USA 86: 10029-10033;米国特許第5821337号、7527791号、6982321号、及び7087409号; Kashmiri et al., (2005) Methods 36:25-34 (SDR(a-CDR)グラフティングを記載); Padlan, (1991) Mol. Immunol. 28:489-498 (「表面再構成」を記載); Dall’Acqua et al., (2005) Methods 36:43-60(「FR シャフリング」を記載);及びOsbourn et al., (2005) Methods 36:61-68 and Klimka et al., (2000) Br. J. Cancer, 83:252-260 (FRシャフリングに対する「ガイデッド・セレクション(guided selection)」法を記載)に更に記載されている。
【0123】
ヒト化に使用されてもよいヒトフレームワーク領域は、「ベストフィット(best-fit)」法(例えば、Sims et al. (1993) J. Immunol. 151:2296 (2296)参照)を使用して選択されるフレームワーク領域; 軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285;及びPresta et al. (1993) J. Immunol., 151:2623参照);ヒト成熟 (体細胞変異した)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, (2008) Front. Biosci. 13:1619-1633 参照);及びFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al., (1997) J. Biol. Chem. 272:10678-10684及びRosok et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:22611-22618参照)を含むが、これらに限定されない。
【0124】
非限定的例示的ヒト化抗体は、本明細書に記載のαFGFR2bを含む。非限定的例示的アフコシル化ヒト化抗体は、フコースを含むαFGFR2bと同一のアミノ酸配列を有する、本明細書に記載のαFGFR2bAを含む。非限定的例示的アフコシル化ヒト化抗体は、また、αFGFR2bの重鎖可変領域、及び/又はαFGFR2bの軽鎖可変領域を含む抗体を含む。非限定的例示的アフコシル化ヒト化抗体は、配列番号4の重鎖可変領域及び/又は配列番号5の軽鎖可変領域を含む抗体を含む。例示的なヒト化抗体は、また、αFGFR2bの重鎖HVR1、HVR2、及びHVR3、及び/又は軽鎖HVR1、HVR2、及びHVR3を含むヒト化抗体を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、上記HVRを含み(すなわち、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3)、FGFR2IIIbに結合する。いくつかの実施態様において、ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、上記HVRを含み、FGFR2IIIbに結合し、かつ、増強されたADCC活性、及びFcガンマRIIIA(例えばFcガンマRIIIA(V158)及び/又はFcガンマRIIIA(F158))に対する増強された親和性から選択される少なくとも1の活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合しない。
【0125】
いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗体は、また、αFGFR2bの重鎖HVR1、HVR2、及びHVR3、及び/又は軽鎖HVR1、HVR2、及びHVR3を含む。非限定的例示的アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号6、7、及び8に記載の重鎖HVR1、HVR2、及びHVR3のセットを含む抗体を含む。非限定的例示的アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、配列番号9、10、及び11に記載の軽鎖HVR1、HVR2、及びHVR3のセットを含む抗体を含む。
【0126】
いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合し、配列番号4に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合し、配列番号5に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも 93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに結合し、配列番号4に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む重鎖、及び配列番号5に対し少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である可変領域配列を含む軽鎖を含む。
【0127】
いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、本明細書に記載の、少なくとも1つのHVRを含む。つまり、いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、本明細書に記載の重鎖HVR1、本明細書に記載の重鎖HVR2、本明細書に記載の重鎖HVR3、本明細書に記載の軽鎖HVR1、本明細書に記載のHVR2、本明細書に記載のHVR3を含む。更に、いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、本明細書に記載のHVRに基づく少なくとも1つの変異HVRを含み、変異HVRは本明細書に記載のHVRに対し1、2、3、又は4アミノ酸置換を有する。いくつかの実施態様において、1以上のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。当業者は、特定のHVR配列に対し1以上の好適な保存的アミノ酸を選択することができ、ここで、好適な保存的アミノ酸置換は、変異HVRを含む抗体の結合特性を特異的に変化させることは予測されない。
【0128】
例示的アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、また、本明細書に記載の抗体又はその断片とFGFR2IIIbに対する結合について競合する抗体を含む。従って、いくつかの実施態様において、ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに対する結合についてαFGFR2bと競合するように提供される。いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIbに対する結合についてαFGFR2bと競合するように提供され、かつ、増強されたADCC活性、及びFcガンマRIIIA(例えばFcガンマRIIIA(V158)及び/又はFcガンマRIIIA(F158))に対する増強された親和性から選択される少なくとも1の活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、FGFR2IIIcに結合しない。
【0129】
いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体は、本明細書に記載の、少なくとも1のヒト定常領域を含む。いくつかの実施態様において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、及びIgDから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施態様において、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。
【0130】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化ヒト化抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。従って、いくつかの実施態様において、エフェクター機能が所望である場合、ヒトIgG1重鎖定常領域又はヒトIgG3重鎖定常領域を含むアフコシル化ヒト化抗FGFR2IIIb抗体が選択される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化ヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化ヒト化抗体は、N297がフコシル化されていない、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化ヒト抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0131】
いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化ヒト化抗体は、配列番号2のアミノ酸配列及び任意の翻訳後修飾からなる重鎖、及び配列番号3のアミノ酸配列及び任意の翻訳後修飾からなる軽鎖を含むアフコシル化抗体を含む。
【0132】
例示的抗体定常領域
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗体は、1以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施態様において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、及びIgDから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施態様において、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。
【0133】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施態様において、エフェクター機能が所望である場合、ヒトIgG1重鎖定常領域又はヒトIgG3重鎖定常領域を含むアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体が選択される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗体は、N297がフコシル化されていない、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアフコシル化抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0134】
本明細書及び特許請求の範囲において、明示され又は当業者に周知ない限り、免疫グロブリン重鎖の残基の番号付けは、明示的に引用により本明細書に援用される、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991. に示されるEUインデックスの番号付けである。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
【0135】
特定の実施態様において、本願発明の抗体は、野生型IgG又は野生型抗体に対し少なくとも1のアミノ酸置換を有する変異Fc領域を含む。特定の実施態様において、変異Fc領域は、野生型抗体のFc領域において、2以上のアミノ酸置換を有する。特定の実施態様において、変異Fc領域は、野生型抗体のFc領域において、3以上のアミノ酸置換を有する。特定の実施態様において、変異Fc領域は、本明細書に記載の、少なくとも1、2、又は3のFc領域アミノ酸置換を有する。特定の実施態様において、本明細書における変異Fc領域は、天然型の配列のFc領域と、及び/又は親抗体のFc領域と、少なくとも約80%の相同性を有するであろう。特定の実施態様において、本明細書における変異Fc領域は、天然型の配列のFc領域と、及び/又は親抗体のFc領域と、少なくとも約90%の相同性を有するであろう。特定の実施態様において、本明細書における変異Fc領域は、天然型の配列のFc領域と、及び/又は親抗体のFc領域と、少なくとも約95%の相同性を有するであろう。
【0136】
特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は抗体がグリコシル化される程度を増加または低下させるように改変される。抗体に対するグリコシル化部位の追加又は除去は、1以上のグリコシル化部位が作成又は除去されたアミノ酸配列を変更することにより、簡便に行われてもよい。
【0137】
抗体がFc領域を含む場合には、それに付着する炭水化物が変更されてもよい。哺乳動物細胞によって生成された天然型抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合により一般的に付着した、分岐した、二分岐オリゴ糖を含んでいる。例えばWright et al.TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、二分岐糖鎖構造の「幹」のGlcNAcに結合した、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、並びにフコースを含み得る。いくつかの実施態様において、本発明の抗体におけるオリゴ糖の改変は一定の改善された特性を有する抗体変異体を作成するために行われてもよい。
【0138】
ある実施態様において、抗体は、Fc領域に(直接または間接的に)付着したフコースを欠いた炭水化物構造(すなわち、アフコシル化抗体)を有するよう提供される。例えば、複数のそのような抗体を含む組成物におけるフコースの量は、0%から約5%であってもよい。いくつかの実施態様において、複数のそのような抗体は、少なくとも95%のアフコシル化抗体を含む。フコースの量は、Asn297に付着する全糖構造体の総量に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)を計算することにより決定される。抗体におけるフコースを検出する非限定的例示的方法は、MALDI-TOF質量分析(例えば、国際公開第2008/077546号参照)、蛍光標識された遊離オリゴ糖のHPLC法(例えば、Schneider et al., “N-Glycan analysis of monoclonal antibodies and other glycoproteins using UHPLC with fluorescence detection,” Agilent Technologies, Inc. (2012); Lines, J. Pharm. Biomed. Analysis, 14: 601-608 (1996); Takahasi, J. Chrom., 720: 217-225 (1996)参照)、蛍光標識された遊離オリゴ糖のキャピラリー電気泳動法 (例えば、Ma et al., Anal. Chem., 71: 5185-5192 (1999)参照)、及び単糖組成物測定のための、パルスドアンペロメトリ検出を伴うHPLC(例えば、Hardy, et al., Analytical Biochem., 170: 54-62 (1988)参照)を含む。Asn297は、Fc領域(Fc領域残基のEU番号付け)でおよそ297位に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、297位の±3残基上流又は下流のアミノ酸に位置してもよく、すなわち抗体の軽微な配列変異に起因して、294位と300位の間に位置してもよい。本明細書に記載の抗体αFGFR2bにおいて、Asn297は、配列QYNSTに見出され、かつ、下記配列の表で、配列番号2に太字及び下線で示される。フコシル化変異体はADCC機能を改善させていてもよい。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)を参照のこと。「アフコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関連する出版物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号、国際公開第2000/61739号、国際公開第2001/29246号、米国特許出願公開第2003/0115614号、米国特許出願公開第2002/0164328号、米国特許出願公開第2004/0093621号、米国特許出願公開第2004/0132140号、米国特許出願公開第2004/0110704号、米国特許出願公開第2004/0110282号、米国特許出願公開第2004/0109865号、国際公開第003/085119号、国際公開第2003/084570号、国際公開第2005/035586号、国際公開第2005/035778号、国際公開第2005/053742号、国際公開第2002/031140号、Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が含まれる。アフコシル化抗体を産生する能力を有する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986); 米国特許出願公開第2003/0157108 A1号、Presta, L;及び国際公開第2004/056312 A1号、Adams et al., 特に実施例11)、及びノックアウトCHO細胞等の、機能的アルファ-1、6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8を欠くノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)が含まれる。
【0139】
抗体は、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分された、二分岐オリゴ糖とともに更に提供される。このような抗体はフコシル化を減少させ、及び/又はADCC機能を改善していてもよい。そのような抗体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号 (Jean-Mairet et al.);米国特許第660684号(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を持つ抗体も提供される。このような抗体はCDC機能が改善されていてもよい。このような抗体は、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel et al.);国際公開第1998/58964号 (Raju, S.); 及び国際公開第1999/22764号(Raju, S.)に記載されている。
【0140】
抗体は、また、アミノ末端リーダー伸長と共に提供される。例えば、アミノ末端リーダー配列の1以上のアミノ酸残基は、抗体の重鎖又は軽鎖の1以上の任意の末端に存在する。例示的なアミノ末端リーダー伸長は、抗体の1又は両方の軽鎖に存在する、3つのアミノ酸残基、VHS、を含む、又はからなる。
【0141】
ヒトFcRn抗親和性結合ポリペプチドのインビボ又は血清半減期は、例えば、変異Fc領域を伴うポリペプチドが投与される、遺伝子組換えマウスにおいて、ヒトにおいて、又は非ヒト霊長類において、分析される。例えば、Petkova et al. International Immunology 18(12):1759-1769 (2006)を参照のこと。
【0142】
いくつかの実施態様において、アフコシル化抗体は、フコースを含む親抗体よりも効果的に、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCCを媒介し、通常ADCC活性は、本明細書に記載のように、インビトロのADCC活性を使用して決定されてもよいが、例えば、動物モデル等のADCC活性を決定するための他のアッセイ又は方法が企図される。
【0143】
特定の実施態様において、抗体の「KD」、「Kd」、「Kd」、又は「Kd値」は、約10反応単位(RU)で固定した抗原CM5チップを用い、25℃で、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIACORE Inc.)を、供給業者の指示書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μL/分の流速で注入する。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。反応速度論的な測定のために、完全長抗体などのポリペプチドの段階希釈液が、25℃、およそ25μL/分の流速で、0.05%TWEEN-20(商標)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入される。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software version 3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照のこと。表面プラズモン共鳴アッセイによる会合速度が106M-1s-1を上回る場合、会合速度は、分光計、例えば流動停止を備えた分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される漸増濃度の抗原の存在下で、25℃、PBS(pH7.2)中の20nM抗-抗原抗体の蛍光放出強度(励起=295nm;吸収=340nm、16nmバンドパス)の増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて測定することができる。
【0144】
上記「会合速度(「on-rate」、「rate of association」、「association rate」、又は「kon」)」は、また、上記BIACORE (登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000システム(BlAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用して決定され得る。
【0145】
特定の実施態様において、前記2つの値の間の差異(例えば、Kd値)は、実質的に同一であり、例えば、参照/比較値の関数は、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/又は約10%未満である。
【0146】
特定の実施態様において、前記2つの値の間の差異(例えば、Kd値)は、実質的に相違し、例えば、参照/比較分子の関数は、約10%より高い、約20%より高い、約30%より高い、約40%より高い、及び/又は約50%より高い。
【0147】
例示的リーダー配列
一部の分泌タンパク質が大量に発現し、かつ分泌されるために、異種タンパク質由来のリーダー配列が望ましい。いくつかの実施態様において、リーダー配列が分泌プロセスでER内で除去されるときに、得られる成熟ポリペプチドが改変されないままであり得るという点で、異種リーダー配列は、有利であるかもしれない。追加の異種リーダー配列は、いくつかのタンパク質を発現し、かつ分泌するために必要とされるかもしれない。
【0148】
特定の例示的リーダー配列の配列は、例えば、Department of Biochemistry, National University of Singaporeにより維持されるオンラインのリーダー配列データベースに示されている。Choo et al., BMC Bioinformatics, 6: 249 (2005);及び国際公開第2006/081430号を参照のこと。
【0149】
III.アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の特性
いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、インビトロ及び/又はインビボでの増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、インビトロでの増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、インビトロでのADCC活性は、本明細書の、例えば実施例3に記載の方法により決定される。簡潔に言うと、FGFR2IIIb発現細胞は、エフェクター(PBMC)対標的細胞が25:1の比で、フコシル化抗体又はアフコシル化抗体の存在下で、単離されたばかりのヒトPBMCと接触せしめられる。いくつかの実施態様において、FGFR2IIIb発現Ba/F3細胞が、標的細胞として使用される。いくつかの実施態様において、細胞傷害性は、CytoTox非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega, Madison, WI)を使用して、LDH放出を定量することで決定される。いくつかの実施態様において、最大溶解は、5%TritonX-100を用いて決定され、自然放出は、抗体の非存在下で決定された。いくつかの実施態様において、特異的溶解のパーセンテージは、以下の式により決定されてもよい:(実験値-自然放出)/(最大値-自然放出)×100=特異的溶解(%)。いくつかの実施態様において、増強されたADCCを有するアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、試験された少なくとも1の濃度において、同量のフコシル化抗体による特異的溶解よりも、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、又は少なくとも75パーセントポイント高い特異的溶解をもたらす。いくつかの実施態様において、増強されたADCCを有するアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、試験された少なくとも1の濃度において、同量のフコシル化抗体による特異的溶解よりも、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、又は少なくとも75パーセントポイント高い特異的溶解をもたらし、ここで、各抗体の濃度は0.01から1μg/mlであり、かつ標的細胞は、FGFR2IIIb発現Ba/F3細胞である。いくつかの実施態様において、抗体の濃度は、0.01μg/ml、0.1μg/ml、又は1μg/mlである。
【0150】
いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対する増強された親和性を有する。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIAに対する抗体親和性は、例えば、本明細書の実施例2、及び/又は以下に記載される表面プラズモン共鳴アッセイを使用して決定される。以下の記載はFcガンマRIIIA(V158)についてあるが、FcガンマRIIIA(F158)に対する親和性の決定のためにも好適である。簡潔に言うと、いくつかの実施態様において、フコシル化又はアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、プロテインAコーティングされたデキストランチップに捕捉される。FcガンマRIIIA(V158)(例えばR&D Systemsから入手可能)は、様々な濃度で注入される。フコシル化及びアフコシル化抗FGFR2IIIbに対する、FcガンマRIIIA(V158)の結合定数、解離定数、及び親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴システム(例えば、Biacore T200 Evaluation Software 1:1 binding model)を提供するソフトウェアを用い、決定されてもよい。いくつかの実施態様において、FcガンマRIIIA(例えばFcガンマRIIIA(V158)又はFcガンマRIIIA(F158))に対する増強された親和性を有するアフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体よりも、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも17倍、又は少なくとも20倍高い親和性でFcガンマRIIIAに結合する。例えば、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、9.2nMの親和性(KD)でFcガンマRIIIA(V158)に結合し、かつ、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、207nMの親和性(KD)でFcガンマRIIIA(V158)に結合し、そして、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、フコシル化抗FGFR2IIIb抗体よりも207/9.2=22.5倍高い親和性でFcガンマRIIIA(V158)に結合する。
【0151】
IV.抗FGFR2IIIb抗体発現及び産生
抗FGFR2IIIb抗体をコードする核酸分子
抗FGFR2IIIb抗体の1以上の鎖をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子が提供される。いくつかの実施態様において、核酸分子は、抗FGFR2IIIb抗体の重鎖又は軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、核酸分子は、抗FGFR2IIIb抗体の、重鎖をコードするポリヌクレオチド及び軽鎖をコードするポリヌクレオチドの両方を含む。いくつかの実施態様において、第1核酸分子は重鎖をコードする第1ポリヌクレオチドを含み、かつ第2核酸分子は軽鎖をコードする第2ポリヌクレオチドを含む。
【0152】
いくつかのそのような実施態様において、重鎖及び軽鎖は、2つの別々のポリペプチドとして、1つの核酸分子から、又は、2つの別々の核酸分子から、発現される。いくつかの実施態様において、抗体がscFvであるような場合、単一のポリヌクレオチドが互いに結合する重鎖及び軽鎖を含む単一のポリペプチドをコードする。
【0153】
いくつかの実施態様において、抗FGFR2IIIb抗体の重鎖又は軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、翻訳されるとき重鎖又は軽鎖のN末端に位置する、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む。上記のように、リーダー配列は、天然型の重鎖又は軽鎖リーダー配列であってもよく、又は、別の異種リーダー配列であってもよい。
【0154】
核酸分子は、当該技術分野での従来法である組換えDNA技術を使用して構築されてもよい。いくつかの実施態様において、核酸分子は、選択された宿主細胞における発現のために好適な発現ベクターである。
【0155】
ベクター
抗FGFR2IIIb重鎖及び/又は抗FGFR2IIIb軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。また、抗FGFR2IIIb重鎖及び/又は抗FGFR2IIIb軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。そのようなベクターは、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、ベクターは、重鎖をコードする第1ポリヌクレオチド配列、及び軽鎖をコードする第2ポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様において、重鎖及び軽鎖は、2つの別々のポリペプチドとして、ベクターから発現する。いくつかの実施態様において、重鎖及び軽鎖は、例えば、抗体がscFvである場合等に、単一のポリペプチドの一部として発現される。
【0156】
いくつかの実施態様において、第1ベクターは重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、かつ第2ベクターは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、第1ベクター及び第2ベクターは、同量(近いモル量又は近い質量)で、宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施態様において、5:1から1:5のモル又は質量比の第1ベクター及び第2ベクターが宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施態様において、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターについて、1:1から1:5の質量比が使用される。いくつかの実施態様において、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターについて、1:2の質量比が使用される。
【0157】
いくつかの実施態様において、ベクターは、CHO、又はCHO由来細胞、又はNSO細胞において、ポリペプチドの発現のために最適化されるように、選択される。例示的な、そのようなベクターは、例えば、Running Deer et al., Biotechnol. Prog. 20:880-889 (2004)に記載されている。
【0158】
宿主細胞
様々な実施態様において、抗FGFR2IIIb重鎖及び/又は抗FGFR2IIIb軽鎖は、細菌細胞等の原核細胞、菌細胞等の真核細胞(例えば、酵母)、植物細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞において発現されてもよい。そのような発現は、例えば、当該技術分野で周知の手順に従って実施される。ポリペプチドを発現するために使用されてもよい例示的な真核細胞は、COS7細胞を含むCOS細胞;293-6E細胞を含む293細胞;CHO-S、DG44.Lec13 CHO細胞、及びFUT8 CHO細胞を含むCHO細胞;PER.C6(登録商標)細胞(Crucell);及びNSO細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、抗FGFR2IIIb重鎖及び/又は抗FGFR2IIIb軽鎖は、酵母において発現されてもよい。例えば、米国特許出願公開第2006/027004 A1号を参照のこと。いくつかの実施態様において、特定の真核宿主細胞は、所望の翻訳後修飾を、抗FGFR2IIIb重鎖及び/又は抗FGFR2IIIb軽鎖に付加できる能力に基づき、選択される。例えば、いくつかの実施態様において、CHO細胞は、293細胞において産生された同一ポリペプチドよりも、高レベルのシアル酸付加を有するポリペプチドを産生する。
【0159】
1以上の核酸の所望の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション法、DEAE-デキストラン仲介トランスフェクション法、陰イオン脂質仲介トランスフェクション法、エレクトロポーテーション法、トランスダクション法、インフェクション等を含むが、これらに限定されない、任意の方法により実施されてもよい。非限定的例示的方法は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。核酸は、任意の好適な方法に従い、一過的に又は安定的に所望の宿主細胞にトランスフェクトされてもよい。
【0160】
いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、例えば、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108 A1号、Presta, L;及び国際公開第2004/056312 A1号、Adams et al., 特に実施例11)、及びノックアウトCHO細胞等の、機能的アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8を欠くノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)等のアフコシル化抗体を産生することが可能な細胞において、産生される。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、機能的FUT8遺伝子を欠くCHO細胞において産生される。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、Potelligent(登録商標)CHOK1SV細胞(BioWa/Lonza, Allendale, NJ)において産生される。
【0161】
抗FGFR2IIIb抗体の精製
抗FGFR2IIIb抗体は、任意の好適な方法により精製されてもよい。そのような方法は、親和性マトリクス又は疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用を含むが、これらに限定されない。好適な親和性リガンドは、FGFR2IIIbECD、及び抗体定常領域に結合するリガンドを含む。例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、又は抗体アフィニティカラムが定常領域を結合するために、かつ、抗FGFR2IIIb抗体を精製するために用いられてもよい。疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えば、ブチル又はフェニルカラムも、また、いくつかのポリペプチドを精製するために好適である。ポリペプチドを精製する数多くの方法が、当該技術分野で周知である。
【0162】
抗FGFR2IIIb抗体の無細胞産生
いくつかの実施態様において、抗FGFR2IIIb抗体は、無細胞系で産生される。非限定的例示的無細胞系は、例えば、Sitaraman et al., Methods Mol. Biol. 498: 229-44 (2009); Spirin, Trends Biotechnol. 22: 538-45 (2004); Endo et al., Biotechnol. Adv. 21: 695-713 (2003)に記載されている。
【0163】
V.治療用組成物及び方法
抗FGFR2IIIb抗体を使用した疾患治療方法
本願発明の抗体、及び本願発明の抗体を含む組成物は、ヒト又は動物のための処置方法における使用のために提供される。アフコシル化された抗FGFR2IIIb抗体を投与することを含む、疾患を処置する方法が、また、提供される。アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を用いて処置され得る非限定的例示的疾患は、がんを含むが、これに限定されない。いくつかの実施態様において、アフコシル化された抗FGFR2IIIb抗体を投与することを含む、がんを処置する方法が提供される。いくつかの実施態様において、がんは、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、及び食道がんから選択される。いくつかの実施態様において、アフコシル化された抗FGFR2IIIb抗体を投与することを含む、胃がんを処置する方法が提供される。
【0164】
いくつかの実施態様において、がんはFGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施態様において、FGFR2遺伝子増幅を含むがんは、FGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含むがんは、FGFR2IIIcよりもFGFR2IIIbを多く過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含むがんは、標準化されたFGFR2IIIc発現レベルよりも、2倍、3倍、5倍、又は10倍より高い標準化されたレベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施態様において、発現レベルは、GUSBに対し標準化されている。いくつかの実施態様において、がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施態様において、胃がんはFGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施態様において、FGFR2遺伝子増幅を含む胃がんは、FGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含む胃がんは、FGFR2IIIcよりもFGFR2IIIbを多く過剰発現する。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅を含む胃がんは、標準化されたFGFR2IIIc発現レベルよりも、2倍、3倍、5倍、又は10倍より高い標準化されたレベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施態様において、発現レベルは、GUSBに対し標準化されている。いくつかの実施態様において、胃がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施態様において、過剰発現は、mRNA過剰発現である。いくつかの実施態様において、過剰発現は、タンパク質過剰発現である。
【0165】
FGFR2IIIb遺伝子増幅は、インサイツ ハイブリダイゼーション(ISH)を含むがこれに限定されない、当該技術分野での任意の好適な方法により決定されてもよい。いくつかの実施態様において、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)比が>3である。
【0166】
FGFR2IIIb mRNA過剰発現は、定量PCR(qPCR)を含む方法を含むがこれに限定されない、当該技術分野での任意の好適な方法により決定されてもよい。用語「FGFR2IIIb mRNA過剰発現」は、増加したFGFR2IIIb mRNAレベルの原因にかかわらず(すなわち、転写の増加により及び/又はmRNAの分解の低下により、他の機構により、又は機構の組合せにより、レベルの増加がもたらされるか否かにかかわらず)増加したレベルが、FGFR2IIIb mRNAの増加したレベルを意味する。
【0167】
FGFR2IIIbタンパク質過剰発現は、免疫組織化学(IHC)等の抗体ベースの方法を含むが、これらに限定されない、当該技術分野での任意の好適な方法により決定されてもよい。いくつかの実施態様において、IHC染色は、当該技術分野での方法に従って、スコア付けされる。用語「FGFR2IIIbタンパク質過剰発現」は、増加したFGFR2IIIbタンパク質レベルの原因にかかわらず(すなわち、翻訳の増加により及び/又はタンパク質の分解の低下により、他の機構により、又は機構の組合せにより、レベルの増加がもたらされるか否かにかかわらず)増加したレベルが、FGFR2IIIbタンパク質の増加したレベルを意味する。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の1+、2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHCによる、腫瘍細胞の2+又は3+の染色は、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施態様において、IHC染色は、実施例6に記載されるように、スコア付けされる。
【0168】
薬学的組成物
様々な実施態様において、アフコシル化抗体を含む組成物は、幅広い種類の薬学的に許容可能な担体と共に製剤中に提供される(例えば、Gennaro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons: Drugfacts Plus, 20th ed. (2003); Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th ed., Lippencott Williams and Wilkins (2004); Kibbe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd ed., Pharmaceutical Press (2000)参照)。ビヒクル、アジュバント、及び希釈剤を含む、様々な薬学的に許容可能な担体が入手可能である。更に、例えば、pH調節及び緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤、等の様々な薬学的に許容可能な補助的物質が入手可能である。非限定的例示的担体は、生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組合せを含む。
【0169】
様々な実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を含む組成物は、例えば、植物油又はその他の油分、合成脂肪族グリセリド、高級脂肪酸、又はプロピレングリコール等の水性又は非水性溶媒にそれらを溶解、懸濁、乳化することにより;かつ、所望の場合、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤、及び保存料等の従来使用される添加物と共に、皮下投与を含む注射のために製剤化されてもよい。様々な実施態様において、例えば、ジクロロフルオロメタン、プロパン、窒素等の加圧された許容可能な推進剤を使用して、吸入のために製剤化されてもよい。組成物は、様々な実施態様において、生分解性又は非生分解性ポリマー等と共に、徐放マイクロカプセルに製剤化されてもよい。非限定的例示的生分解性製剤は、ポリ乳酸-グリコール酸ポリマーを含む。非限定的例示的非生分解性製剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。そのような製剤を製造するための特定の方法は、例えば、欧州特許出願公開公報1125584 A1号に記載されている。
【0170】
投与ルート
様々な実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、経口、動脈内、非経口、鼻腔内、筋肉内、心内、脳室内、気管内、口腔、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮、及び髄腔内、又は移植又は吸入による、様々なルートにより、インビボで投与されてもよい。対象の組成物は、固体、半固体、液体、又は気体の形態に製剤化されてもよく;形態は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、かん腸、注射、吸入、エアロゾルを含むが、これらに限定されない。好適な製剤及び投与ルートは、目的の適用に従って、選択されてもよい。
【0171】
薬学的組成物は、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、又は食道がん等のがんの処置又は予防のための有効量が投与される。治療的有効量は、典型的には、処置される対象の体重、彼又は彼女の身体状態又は健康状態、処置される健康状態の深刻性、又は処置される対象の年齢によるものである。通常、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、用量あたり、約10μg/kg体重から約100mg/kg体重の量で投与されてもよい。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、用量あたり、約50μg/kg体重から約5mg/kg体重の量で投与されてもよい。いくつかの実施態様において、抗FGFR2IIIb抗体は、用量あたり、約100μg/kg体重から約10mg/kg体重の量で投与されてもよい。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、用量あたり、約100μg/kg体重から約20mg/kg体重の量で投与されてもよい。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、用量あたり、約0.5mg/kg体重から約20mg/kg体重の量で投与されてもよい。
【0172】
アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の組成物は、対象の必要に応じて、投与されてもよい。投与頻度は、処置される健康状態、処置される対象の年齢、処置される健康状態の深刻さ、処置される対象の一般的健康状態等を考慮して、主治医等の当業者により決定されてもよい。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の有効用量が、1又は複数回、対象に投与される。様々な実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の有効用量が、1か月に1回、1か月に2回以上、例えば2か月に1回又は3か月に1回、対象に投与される。別の実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の有効用量が、例えば、1か月に1回未満、例えば2週間に1回又は毎週、対象に投与される。アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の有効用量が、少なくとも1回、対象に投与される。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の有効用量は、少なくとも1か月、少なくとも6か月、又は少なくとも1年の期間に、複数回投与されてもよい。
【0173】
組合せ療法
アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、単独で、又は他の処置方法を伴って、投与されてもよい。それは、例えば、手術、化学療法、又は放射線療法等の他の処置方法の前に、実質的に同時に、又は後に提供されてもよい。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、他の抗がん剤と併用して投与される。アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体と共に投与されてもよい非限定的限定的抗がん剤は、白金剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(登録商標))、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標))、エピルビシン(ELLENCE(登録商標)、PHARMORUBICIN(登録商標))、FOLFOX(5-FUと組合わされたオキサリプラチン)、FOLFIRI(ロイコボリン、5-FU、及びイリノテカンの組合せ)、ロイコボリン、フルオロウラシル(5-FU、EFUDEX(登録商標))、マイトマイシンC(MITOZYTREX(商標)、MUTAMYCIN(登録商標)、及びドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシンPFS、アドリアマイシンRDF、RUBEX(登録商標))を含む。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、パクリタキセルと併用して投与される。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、シスプラチン及び/又は5-FUと併用して投与される。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、シスプラチン及び5-FUと併用して投与される。いくつかの実施態様において、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体は、FOLFOX(オキサリプラチン、5-FU、及びロイコボリン)と併用して投与される。
【0174】
キット/製品
本願発明は、キット、医薬、組成物、及び、本明細書に記載の任意の方法のための単位用量形態を含む。
【0175】
本発明のキットは、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体(又は単位用量形態、及び/又は製品)を含む1以上の容器を含む。いくつかの実施態様において、1以上の追加の薬剤を伴い、又は伴わずに、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体を含む、既定量の組成物を含む、単位用量が提供される。いくつかの実施態様において、そのような単位用量は、注射のための、使い捨ての充填済みシリンジで提供される。様々な実施態様において、単位用量に含まれる組成物は、生理食塩水、ショ糖等;リン酸等のバッファーを含んでもよく;かつ/又は安定かつ有効なpH範囲内に製剤化されてもよい。一方、いくつかの実施態様において、組成物は、例えば滅菌水等の好適な液体の添加によって再構成され得る、凍結乾燥粉末として提供されてもよい。いくつかの実施態様において、組成物は、ショ糖及びアルギニンを含むがこれに限定されない、タンパク質凝集を阻害する1以上の物質を含む。いくつかの実施態様において、本願発明の組成物は、ヘパリン及び/又はプロテオグリカンを含む。
【0176】
いくつかの実施態様において、本願発明のキットは、本明細書に記載の任意の方法に従って、例えば、がん(例えば、胃がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、又は食道がん)の処置における使用説明書を更に含む。キットは、好適な個体又は処置を選択する説明を更に含む。本願発明のキットに添付される説明書は、典型的には、ラベル又はパッケージ挿入物に記載された説明(例えば、キットに含まれる紙)であるが、機械可読説明(例えば、磁気又は光学ディスクに保存された説明)もまた許容される。いくつかの実施態様において、キットは、他の治療剤を更に含む。
【0177】
本発明のキットは、適切に包装されている。適切な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密封マイラー又はビニール袋)等があるが、これらに限定されない。キットは、例えばバッファー及び解説等の追加の成分を、任意選択的に提供する。本願は、従って、バイアル(例えば密封バイアル)、ボトル、ジャー、フレキシブル包装等を含む製品も提供する。
【実施例】
【0178】
以下に記載の実施例は、単に本発明の例示であると意図されており、決して本発明を限定するものと考えられるべきではない。実施例は、以下の実施例が、全ての実施例、又は実行された実施例のみであることを説明することを意図するものではない。使用された数(例えば、量、温度等)に関する正確性を確認するために、注意が払われてきているが、一部の実験的誤差及び偏差は、説明されるべきである。別途指示がない限り、部(parts)は重量部(parts by weight)、分子量は重量平均の分子量、温度は摂氏温度での温度、及び圧力は大気圧での又は大気圧付近での圧力である。
【0179】
実施例1:アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体の産生
発現ベクターの構築モノクローナル抗体αFGFR2bの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)をコードするヌクレオチド配列は、製造業者の説明書に従って、GS Gene Expression System(Lonza, Basel, Switzerland)にクローニングされた。システムにより、軽鎖及び重鎖の両方のための発現カセットを含むダブル遺伝子ベクター(DGV)が作製された。
【0180】
宿主細胞株の選択アフコシル化モノクローナル抗体αFGFR2bA(αFGFR2bの後の「A」は、「アフコシル化」を示す)を生成するために、宿主細胞として、Potelligent(登録商標)CHOK1SV細胞(BioWa/Lonza, Allendale, NJ)が選択された。Potelligent(登録商標)CHOK1SV細胞は、FUT8遺伝子(α1,6-フコシルトランスフェラーゼ)を欠き、そして、そのために、フコース非含有抗体(アフコシル化抗体)を産生する。
【0181】
アフコシル化αFGR2bA抗体の産生のための安定細胞株の構築:上記αFGFR2b抗体重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、製造業者の説明書に従って、エレクトロポーテーション法によりPotelligent(登録商標)CHOK1SV細胞にトランスフェクトされた。エレクトロポーテーションされた細胞は、約10000細胞/50μl/ウェルで96ウェルプレートに、L-グルタミン非含有CD CHO培地に播種された。次の日に、67、μML-メチオニン スルホキシミン(MSX, SIGMA cat#M5379, St. Louis, MO)含有CH CHO選択培地が、150、μl/ウェルで添加された。細胞成長及びクローンの形成は、IN細胞アナライザー2000 (IN Cell Analyzer 2000) (GE Healthcare, Piscataway, NJ)でモニターされた。
【0182】
4~6週間後、生存しているコロニーは、XL665コンジュゲートプロテインA及びクリプテートコンジュゲートポリクローナルウサギIgG(Cisbio, Bedford, MA)を用いて精製されたαFGFR2b抗体について生成された標準カーブに対し、ホモジニアス時間分解蛍光(Homogenous Time Resolved Fluorescence,HTRF)ベースのアッセイにより、αFGFR2bA抗体の発現についてスクリーニングした。24ウェルプレート、遠心管、フラスコ振盪、ベンチスケールのバイオリアクター、及びプラットフォームプロダクション工程(platform production process)を含む一連の増加スケールの産生工程を通し、最も発現の高いクローンを増殖させた。各工程で、最も発現の高いクローンを含むサブセットのみに、次の工程を実施した。最終的な産生クローンは、タンパク質産生タイター、細胞成長特性、産物の質、安定性、及びバイオリアクターにおける拡張性、の評価に基づいて選択された。最終的な産生株は、αFGFR2bAについて約3.5g/Lの発現レベルを有していた。最終的産生細胞株におけるαFGFR2bAにおけるフコシル化の欠如は、順相HLPC(N-HPLC)クロマトグラフィーを使用して確認された。
【0183】
αFGFR2bA抗体は、カラムクロマトグラフィーにより精製され、限外濾過により精製物質が濃縮され、そして、透析濾過により精製バッファー(20mMヒスチジン、150mML-アルギニン、0.01%ポリソルベート20、pH6.0)と交換された。抗体は、-70oCより低い温度で保管された。
【0184】
αFGFR2bAのグリカン分析は、タンパク質からのグリカンの放出、アントラニル酸(2-AA)によるグリカンの標識、及び標識されたグリカンの精製により実施される。蛍光検出を伴う順相HPLCは、グリカンを分離し、抗体における各グリカンの相対量を測定するために、使用される。
図7は、Potelligent(登録商標)CHOK1SV細胞株に由来するαFGFR2b、及びCHOK1SVから産生されるαFGFR2bが、2つの異なるグリカン分布を有することを示す。(A)Potelligent(登録商標)CHOK1SV細胞株に由来するαFGFR2bのグリカン分布は、抗体がフコースを欠く(「G0」)ことを示す。(B)CHOK1SV細胞株に由来するαFGFR2bのグリカン分布は、抗体がフコースを含む(「G0F」)ことを示す。
【0185】
順相HPLC分離で得られるグリカンのピークは、2つの直交法を使用して検出した。第1に、Potelligent(登録商標)CHOK1SVにより産生されたαFGFR2bは、標識され、かつ、順相HPLC法により分離された。蛍光検出の後、グリカンを、QTrap質量分析計を通過させた。各ピークの質量が検出され、その質量は各グリカンを確実に検出するために使用され、表2に示された。
【0186】
グリカンの各フコシル化形態(G0F、 G1F、及び G2F)の質量は、また、Potelligent(登録商標)CHOK1SVにより産生されたαFGFR2bにおいて探索され、観察されなかった。
図8は、抗体において典型的に観察される、G0、G1、G2、G0F、G1F、G2F、及びマンノース-5(又はMan-5)グリカン構造のスキーム図を示す。
【0187】
HPLCアッセイにより示されたピークは、また、Prozymeより購入したグリカン標準を使用し、標準と、Potelligent(登録商標)CHOK1SV細胞株及びCHOK1SV細胞株の両方から取得したαFGFR2のプロフィールとの間の保持時間をマッチングさせて、確認した。これらの標準は、G0、G0F、Man5、G1、G1F、及びG2Fを検出することができた。
【0188】
HPLCアッセイにより得られた結果、並びに特性データにより、Potelligent(登録商標)CHOK1SV細胞株に由来するαFGFR2における、フコシル化の欠如が確認された。
【0189】
実施例2:アフコシル化抗FGFR2b抗体の結合親和性
FcガンマRIIIA(V158)に対するαFGFR2bA及びαFGFR2bFの結合親和性(αFGFR2bの後の「F」は、「フコシル化」を示す)は、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定された。簡潔に言うと、プロテインAを、アミンカップリングキット(GE Healthcare Life Sciences, Piscataway, NJ)及びブロッキング剤として100mMエチレンジアミン(Sigma)含有100mMホウ酸ナトリウムバッファー(pH8.0)(Sigma, St. Louis, MO)を使用して、デキストランチップに共有結合させた。約600-800RUのαFGFR2bA及びαFGFR2bFは、分離フローセル、及び対照コントロールとして機能する、プロテインA(Pierce)で誘導体化されたフローセルに捕捉された。FcガンマRIIIA(V158)(R&D Systems, Minneapolis, MN)は、HBS-P+ランニングバッファー(Biacore, GE Healthcare, Piscataway, NJ)で希釈され、5つの濃度(0nM、12.3nM、37nM、111nM、333nM、及び1000nM)で、2重試験(デュープリケート)で注入された。αFGFR2bAに対する結合定数、解離定数、及び親和性は、Biacore T200 Evaluation Software 1:1結合モデルを使用して、算出された。αFGFR2bF結合に対する親和性定数は、Biacore T200 Evaluation Software steady state親和性モデルを使用して決定された。結果を表3に示す。
【0190】
表3に示されるように、FcガンマRIIIA(V158)は、αFGFR2bFに対する結合よりも、20倍より高い親和性で、αFGFR2bAに結合した。
【0191】
実施例3:アフコシル化抗FGFR2b抗体のADCC活性
αFGFR2bA抗体対αFGFR2bF抗体のADCC活性を決定するために、インビトロアッセイが実施された。Ba/F3 FGFR2IIIb発現標的細胞は以下のように産生された。Leibniz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHから取得したBa/F3細胞(DSMZ, cat# ACC300, Braunschweig, Germany)は、10%ウシ胎仔血清(Mediatech, cat# 35-010-CV)、1ng/mLマウスIL-3(Peprotech, cat# 213-13, Rocky Hill, NJ)、1×BME(Invitrogen, cat# 1047574, Grand Island, NY)、及び1×ペニシリン-ストレプトマイシン(Mediatech cat# 30-002-Cl)添加RPMI(Mediatech, cat# 10-041-CV, Manassas, VA)で維持された。Ba/F3細胞は、Cell Line Nucleofector(登録商標) Kit V(Lonza, cat# VCA-1003)を用い、製造業者のプロトコルに従って、FGFR2IIIb、pBNew-hFGFR2bを発現する発現ベクターによりトランスフェクトされた。pBNewベクターは、ニワトリβアクチンのイントロン、及び、アンピシリン及びピューロマイシン成長選択遺伝子を伴い、CAGプロモーターを含む。トランスフェクトされた細胞は、3日間完全増殖培地(full growth media)でインキュベートされ、そして、2μg/mLのピューロマイシン(InVivoGen, cat # ant-pr-1, San Diego, CA)で処置された。ピューロマイシン選択は、培養中にわたり維持された。個々の安定なクローンを生成するために、細胞は、3ウェルあたり1細胞の密度で播種された。抗FGFR2IIIb抗体を用いた蛍光活性化セルソーティング(FACS)が、最も高いFGFR2IIIb発現レベルのクローンを選択するために使用された。
【0192】
MFM-223細胞はHealth Protection Agency(英国)から取得され;OCUM-2M細胞は大阪市立大学(大阪、日本)から取得され、KATO III細胞は、ATCC(Rockville, MD)から得られた。全ての細胞は、一般的な方法を使用して培養された。健常ドナーから単離されたばかりのPMBCは、AllCells(Emeryville, CA)から取得された。
【0193】
ADCCアッセイは、3人の独立したドナーから3日別々の日に取得したエフェクター細胞を使用して実施された。ADCCアッセイ試験は、単離されたばかりのヒトPBMCをエフェクター細胞として使用し、エフェクター対標的(E/T)細胞比25:1で、実施された。標的細胞は、エフェクター存在下かつ抗体濃度が増加していく条件下で、16時間インキュベートされた。ADCCアッセイは、SKOV-3標的細胞に対しHERCEPTIN(登録商標)、及びRaji標的細胞に対するRITUXIN(登録商標)という、2のポジティブコントロール抗体を使用して評価された。完全ヒトIgG1ネガティブコントロール抗体(Eureka Therapeutics, Catalog ET901, Emeryville, CA)が、非特異的細胞障害性のために使用された。細胞傷害性は、製造業者の説明書(CytoTox Non Radioactive Cytotoxicity Assay, Promega, Madison, WI)に従って、LDH放出の定量により、決定された。
【0194】
最大溶解は、5%TritonX-100の存在下で決定され、自然放出は、抗体の非存在下で決定された。特異的溶解のパーセンテージは、自然放出を差し引いた最大溶解のパーセンテージとして、以下のように算出された:
(実験値-自然放出)/(最大値-自然放出)×100=特異的溶解(%)
【0195】
Ba/F3細胞についての結果を
図1に示す。アフコシル化αFGFR2bA抗体は、FGFR2IIIb発現Ba/F3細胞において、フコシル化αFGFR2bF抗体より高い特異的溶解を誘導した。OCUM-2M、MFM223、及びKATO III細胞において、抗体の最大特異的溶解は、OCUM-2M及びMFM 223細胞において同等であった(データは示さない)が、αFGFR2bAは、αFGFR2bFよりも低い濃度でより高いADCC活性を示した。更に、αFGFR2bは、FGFR2IIIc発現Ba/F3細胞において、ADCC活性をほとんど示さない、又はADCC活性を示さなかった。
図1Aを参照のこと。
【0196】
実施例4:胃がん及び乳がん異種移植モデルにおけるアフコシル化抗FGFR2b抗体活性
Charles River Laboratories(Wilmington, MA)から、6週齢のメスCB17 SCIDマウスを購入し、マウスを、研究開始前1週間順化させた。ヒト胃癌細胞株OCUM-2M又は乳癌細胞株が、腫瘍モデルとして使用された。OCUM-2Mは、公立大学法人大阪市立大学(OCU、大阪、日本)から購入し、MFM-223はCulture Collections(Public Health England)(98050130, HPA Culture Collections, Salisbury, UK)から購入した。細胞は、最長3回まで完全増殖培地で継代され、移植のために増殖させた。OCUM-2M及びMFM-223細胞は、それぞれ、ダルベッコ最小必須培地(DMEM)及び最小必須培地(MEM)で培養された。全ての培地には、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)、2mML-グルタミン、及びペニシリン-ストレプトマイシン溶液が添加されていた。細胞は、5%CO2の湿潤環境下で、37℃で培養された。
【0197】
培養細胞が85~90%コンフルエントに達したとき、細胞は、回収され、50%マトリゲル(BD BioSciences, San Jose, CA)を含む冷却Ca2+及びMg2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁された。OCUM-2M細胞は、5x105細胞/100μl/マウスで、マウスの右脇から皮下に移植された。MFM-223細胞は、5x105細胞/100μl/マウスで、マウスの右脇から皮下に移植され、かつ、0.72mg90日放出17-βエストラジオールペレット(Innovative Research of America, Sarasota, FL)は、右脇へ皮下に接種された。マウスは、細胞移植後に週2回、腫瘍成長をモニターされた。腫瘍サイズは、式:腫瘍サイズ(mm3)=(幅(mm)×長さ(mm)2)/2により測定された。MFM-223腫瘍が80mm3に達したとき、マウスはグループ分けされ、ランダム化(n=10)され、処置が開始された。OCUM-2M腫瘍について、腫瘍が平均サイズ100mm3に達した場合に抗FGFR2bを使用した単一療法が開始され、腫瘍が平均サイズ250mm3に達した場合に組合せ療法が開始された。
【0198】
抗FGFR2IIIbヒト化抗体(アフコシル化、αFGFR2bA;フコシル化、αFGFR2bF)又はネガティブコントロールとしてのアルブミンが、図の説明に示すように、週2回、1から10mg/kgの用量で腹腔内投与された。化学療法剤は、パクリタキセルについて12mg/kgで、フルオロウラシル(5-FU)について2.3mg/kgで、及びシスプラチンについて33mg/kgで、週2回腹腔内投与された。治療の開始後、腫瘍サイズは、各マウスにおいて週2回測定された。各腫瘍の長さ及び幅は、ノギスを使用して測定され、腫瘍サイズは、上記式に従って算出された。皮下の腫瘍体積が2000mm3を超えたとき、又は腫瘍が過度に壊死性になったとき、マウスを安楽死させた。
【0199】
結果としての腫瘍体積の比較は、P<0.05の場合、統計的に有意であると決定した。P値は、腫瘍が測定された最終日における算出された腫瘍体積の独立した、両側t検定を使用して算出した。
【0200】
図2は、FGFR2増幅を有するOCUM-2Mヒト胃がん異種移植モデルにおける、10mg/kg(A及びB)及び3mg/kgでの(C及びD)、αFGFR2bA及びαFGFR2bFの有効性を示す。(A)10mg/kgでは、フコシル化及びアフコシル化抗体の両方が、直接的な腫瘍退行を誘導した。しかしながら、アフコシル化αFGFR2bAは、フコシル化αFGFR2bFよりも、更に継続的な応答を誘導した。(B)アフコシル化αFGFR2bAは、フコシル化αFGFR2bFに比較して、最終的なOCUM-2M腫瘍サイズを有意に低下させた。統計的有意性は、両側独立t検定により決定した。(C)3mg/kgの用量の場合、アフコシル化αFGFR2bAは、フコシル化αFGFR2bFに比較して腫瘍成長を低下させた。実際に、アフコシル化αFGFR2bAは、フコシル化αFGFR2bFと比較して、より高い腫瘍退行及び継続的応答を誘導した(注:1匹の動物は、約42日時点でαFGFR2bFグループから除去され、これによりカーブのシフトが生じた)。(D)フコシル化αFGFR2bFと比較された、3mg/kgでのアフコシル化αFGFR2bAは、最終的OCUM-2M腫瘍サイズを顕著に低下させた。統計的有意性は、両側独立t検定により決定した。
【0201】
図3は、αFGFR2bAによる、用量依存的腫瘍阻害を示す。(A)平均腫瘍サイズが約100mm
3に達したとき、皮下OCUM-2M異種移植片を有するSCIDマウスは、1、1.5、2、3、又は5mg/kgのアフコシル化αFGFR2bAで処置された。アフコシル化αFGFR2bAの全ての用量が腫瘍成長を阻害したが、最も高い抑制及び継続的応答は、3及び5mg/kgで観察され、2、1.5、及び1mg/kgαFGFR2bAでは成長抑制が低下した。(B)アフコシル化αFGFR2bAは、最終的OCUM-2M腫瘍サイズを減少させ、より高い用量は、より強力な成長抑制を示した。腫瘍成長抑制は、全ての用量について、統計的に有意であった(5mg/kg、p<0.0001;3mg/kg、p<0.0001;2mg/kg、p<0.0001;1.5mg/kg、p=0.0003;1mg/kg、p=0.0013)。統計的有意性は、両側独立t検定により決定した。
【0202】
図4は、OCUM-2M胃がん異種移植モデルにおける、アフコシル化αFGFR2bAの投与による、パクリタキセルの抗腫瘍活性の増強を示す。(A)平均腫瘍サイズが約285mm
3に達したとき、皮下OCUM-2M異種移植片を有するSCIDマウスは、アフコシル化αFGFR2bA(5mg/kg)、パクリタキセル(12mg/kg)、又はこれら2つの組合せで処置された。パクリタキセルとアフコシル化αFGFR2bAとを組合せることにより、αFGFR2bA又はパクリタキセル単独の何れかと比較して、腫瘍サイズが低下した。(B)αFGFR2bA/パクリタキセルの組合せ療法は、パクリタキセル(p=0.0005)又はαFGFR2bA(p=0.0009)単独の何れかと比較して、最終的なOCUM-2M腫瘍サイズを有意に低下させた。統計的有意性は、両側独立t検定により決定した。
【0203】
図5は、OCUM-2M胃がん異種移植モデルにおける、アフコシル化αFGFR2bAの投与による、シスプラチン/5-FUの抗腫瘍活性の増強を示す。(A)平均腫瘍サイズが約260mm
3に達したとき、皮下OCUM-2M異種移植片を有するSCIDマウスは、アフコシル化αFGFR2bA(5mg/kg)、フルオロウラシル(5-FU)並びにシスプラチン(それぞれ、2.3及び33mg/kg)、又はこれら3つの組合せで処置された。5-FU/シスプラチンとアフコシル化αFGFR2bAとを組合せることにより、αFGFR2bA又は5-FU/シスプラチン単独の何れかと比較して、腫瘍サイズが低下した。(B)αFGFR2bA/5-FU/シスプラチン組合せ療法は、5-FU/シスプラチンと比較して、最終的なOCUM-2M 腫瘍サイズを有意に低下させた(p=0.0003)。αFGFR2bA/5-FU/シスプラチン組合せ療法による、αFGFR2bA単独に比較した、腫瘍サイズの更なる低下は、顕著であったが、統計的に有意ではなかった。統計的有意性は、両側独立t検定により決定した。
【0204】
図6は、MFM-223ヒト乳がん異種移植モデルにおける、αFGFR2bAの有効性を示す。(A)FGFR2増幅を有するMFM-223ヒト乳癌細胞株は、SCIDマウスの皮下に移植され、平均腫瘍サイズが約80mm
3に達したとき、アフコシル化αFGFR2bA療法が開始された。アフコシル化αFGFR2bA(5mg/kg)は、アルブミンコントロール(5mg/kg)と比較して、MFM-223腫瘍の成長を著しくに低下させた。(B)アフコシル化αFGFR2bAは、アルブミンコントロールと比較して、最終的なMFM-223腫瘍サイズを有意に低下させた(p=0.0008)。統計的有意性は、両側独立t検定により決定した。
【0205】
実施例5:アフコシル化抗FGFR2b抗体は、フコシル化抗FGFR2b抗体より高いADCCを媒介する。
αFGFR2bA抗体対αFGFR2bF抗体のADCC活性を決定するために、インビトロアッセイが実施された。Ba/F3 FGFR2IIIb発現標的細胞は上記のように生成された。OCUM-2M細胞は、大阪市立大学(大阪、日本)より取得した。全ての細胞は、一般的な方法を使用して培養された。健常ドナーから単離されたばかりのPMBCは、AllCells(Emeryville, CA)から取得された。
【0206】
ADCCアッセイは、単離されたばかりのヒトPBMCをエフェクター細胞として使用し、エフェクター対標的(E/T)細胞比25:1で、実施された。標的細胞は、エフェクター存在下かつ抗体濃度が増加していく条件下で、16時間インキュベートされた。全ての条件は、三重試験(トリプリケート)で実施された。細胞傷害性は、製造業者の推奨(Promega’s CytoTox Non-Radioactive Cytotoxicity Assay)に従って、LDH放出の定量により、決定された。OCUM-2M細胞について、最大溶解は、5%TritonX-100の存在下で決定され、自然放出は、抗体の非存在下で決定された。特異的溶解のパーセンテージは、自然放出を差し引いた最大溶解のパーセンテージとして、以下のように算出された:(実験値-自然放出)/(最大値-自然放出)×100=特異的溶解(%)GraphPad software curve-fitting analysisを使用し、EC50値を取得した。
【0207】
Ba/F3細胞についての結果を
図9に示す。アフコシル化αFGFR2bA抗体は、FGFR2IIIb発現Ba/F3細胞において、フコシル化αFGFR2bF抗体より高い力価(低い濃度での、より高いADCC活性)を示した。OCUM-2M細胞についての同様の結果は、
図10に示される。表4は、
図9及び10に示される、異なる2つの細胞株における、フコシル化FGFR2b抗体と比較した、アフコシル化抗FGFRb抗体の力価の増加倍数を示す。
【0208】
実施例6:腫瘍組織における、FGFR2IIIbタンパク質の免疫組織化学的検出
GAL-FR21のマウス可変領域(米国特許第8101723号を参照)及びマウスIgG2a定常領域を含む、マウスαFGFR2b抗体が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)胃ガン組織においてFGFR2IIIbタンパク質を検出するために用いられた。FFPE腫瘍組織は、一連のキシレン洗浄、及び、濃度を段階的に下げた一連のエタノール洗浄によりパラフィンを除去し、水で5分間再水和した。スライドにマウントされた組織切片は、0.1mMクエン酸バッファー(pH6.0)に浸漬され、15分間、95o~99oCに加熱された。組織切片は、冷却され、室温で5分間3%H2O2と接触せしめられ、そして、TBST(0.05M Tris、0.15M NaCl、0.05%Tween20)で2回洗浄され、室温で30分間ブロッキングバッファー(2.5%正常ウマ血清含有TBST)でブロックされた。組織切片は、そして、ブロッキングバッファー中の5μg/ml αFGFR2b抗体と、室温で30分間インキュベートされた。30分から2時間のインキュベーション時間により同様の染色強度が得られた。TBSTバッファーでの3回の洗浄に続き、組織切片は、ブロッキングバッファー(Vector Laboratories, Burlingame, CA; Cat. No. PK-7200)に希釈した調製済み(RTU)ビオチン価ウマ二次抗体(10μg/ml)と、室温で30分インキュベートされた。組織切片は、TBSTバッファーで2回洗浄され、そして、ストレプロアビジン-西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP; Vector Laboratories, Cat. No. PK-7200)と室温で30分インキュベートされた。検出は、3’,3’-ジアミノベンジジン(DAB)基質(Vector Laboratories, Cat. No. PK-4105)を使用して、製造業者の説明書に従って、室温で10分間、実施された。組織切片は、その後、ヘマトキシリンを使用し、製造業者の説明書に従って、対比染色された。組織切片は、段階的に濃度を段階的に上げたエタノール及びキシレンの洗浄により脱水され、そして、カバーグラスでカバーされた。
【0209】
0.1から5mg/mlのαFGFR2b抗体の染色濃度が、タンパク質検出のために特に効果的であった。
【0210】
染色は、以下のようにスコア付けされた:
0 αFGFR2b抗体による染色は観察されない。
1+ 試料において、αFGFR2b抗体による弱い染色が観察される。ネガティブコントロール抗体で染色された対応切片においては、染色は観察されない。
2+ αFGFR2b抗体に特異的な膜-細胞質染色が、切片においてより広範囲に観察される。
3+ 染色された腫瘍細胞の少なくとも1のサブセットにおいて、明白な膜分布を伴う、αFGFR2b抗体での強く特異的な染色が観察される。
【0211】
図11は、腫瘍組織の例示的な0(A)、1+(B、C)、2+(D)、及び3+(E、F)の染色を示す。
図11Aにおいて、管細胞及び散在腫瘍細胞は、αFGFR2b抗体を使用した染色がないことを示す。間質性胃腫瘍試料を示す
図11Bにおいて、腫瘍細胞(矢印)は、αFGFR2b抗体を使用したいくつかの染色を示すが、周辺の管細胞は染色を示さない。びまん性胃腫瘍試料を示す
図11Cにおいて、腫瘍細胞(矢印)は、αFGFR2b抗体を使用したいくらかの染色を示すが、周辺の間質細胞(矢じり)は染色を示さない。
図11Dにおいて、腫瘍細胞(矢印)は、αFGFR2b抗体を使用した中程度の染色を示すが、周辺の間質細胞(矢じり)は染色を示さない。
図11Eにおいて、腫瘍細胞(矢印)は、αFGFR2b抗体を使用した高い膜分布染色を示すが、周辺の間質細胞(矢じり)は染色を示さない。
図11Fにおいて、腫瘍細胞(矢印)は、αFGFR2b抗体を使用した高い膜/細胞質染色を示すが、周辺の間質細胞(矢じり)は染色を示さない。
【配列表】