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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20221128BHJP
   G01T 1/169 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 C
G01T1/169 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019208540
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021081297
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沢 博志
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/052937(WO,A1)
【文献】特開2017-173239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 -1/16
G01T 1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を受けて発光するシンチレータ、
入射した光を電気信号に変換して出力する光検出器、および
前記シンチレータが発した光を前記光検出器に導くライトガイド、を備え、
前記シンチレータは、
入射側の法線が互いに開く方向に交差する2つの平坦状の入射面を有し
前記ライトガイドは、
三角柱状をなし、3つの側面のうちの2つの側面を、前記2つの入射面それぞれの裏側に密着して、前記2つの入射面それぞれからの光を内部に導入する受光面とする受光部と、
前記受光部の残りの側面を下底面とし、前記下底面より小さな相似形の上底面を、前記内部を進行してきた光を前記光検出器に向けて出射する出射面とする四角錐台状の誘導部と、を一体化した中実体であることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記2つの入射面どうしが交差する角度が、直角、または鈍角であることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記受光面どうしのなす角をβ、前記受光面どうしの交線の長さをL、前記受光面における前記交線と対辺との間隔をGとすると、
L=G×2cos(90°-β/2)
の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記誘導部における前記下底面と4つの側面それぞれとのなす角が45度以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
放射線を受けて発光するシンチレータ、
入射した光を電気信号に変換して出力する光検出器、および
前記シンチレータが発した光を前記光検出器に導くライトガイド、を備え、
前記シンチレータは、
入射側の法線が互いに開く方向に交差する3つの平坦状の入射面を有し、
前記ライトガイドは、
六面体をある頂点に隣接する3つの頂点を結ぶ平面で切断した七面体状をなし、前記ある頂点に対向する頂点を囲む3面を、前記3つの入射面それぞれの裏面に密着して、前記3つの入射面それぞれからの光を内部に導入する受光面とする受光部を有する、ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
前記3つの入射面どうしが交差する角度が、直角、または鈍角であることを特徴とする請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記ライトガイドは、
前記受光面が正方形をなすことを特徴とする請求項5または6に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記ライトガイドは、
前記受光部と、
前記受光部の前記3つの頂点を結ぶ面を下底面とし、前記下底面より小さな相似形の上底面を、前記内部を進行してきた光を前記光検出器に向けて出射する出射面とする三角錐台状の誘導部と、を一体化した中実体であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、放射線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線の管理区域内にある物品を管理区域外に持ち出す際には、放射能汚染(表面汚染)を検査することが法令で定められている。対象となる物品は様々であり、携帯できるような小さなものから、据置型の装置、建物の廃材のような大型物品まで、例外なく検査が必須である。とくに、東日本大震災以降、除染廃棄物を一時的に貯蔵する中間貯蔵施設では、廃棄物だけではなく、廃棄物を保管した容器、施設に出入りするダンプトラックなどの車両についても検査対象となり、箱型の容器内面に対する表面検査の需要が増大している。
【0003】
これらの表面汚染を検査する検出器は、GMサーベイメータ等により作業員が手作業で実施することもあれば、物品搬出モニタのように対象物品を所定の位置にセットして自動で測定を行うものもある。ところで、表面汚染の測定対象線種であるβ線とα線には、いずれも空気中の飛程に限界があり、α線は数cm、β線はエネルギーによるが数cmから数十cm程度である。このため、表面汚染検査の際には検出器を測定対象物に近づけて測定することが必須である。
【0004】
一方、測定対象物の形状は様々である。滑らかな形状であれば、検出器を容易に表面まで近づけることができるので測定はさほど難しくないが、凹凸が顕著にある物体は測定に手間がかかるだけでなく、物理的に検出器を測定対象に近づけられない場合があり、測定精度が低下するおそれがある。とくに、容器の内面を検査する場合は検出器を容器内面に入れて測定しなければならず、測定対象面に近づけるのに非常に手間がかかる。
【0005】
それに対し、帯状に配置したシンチレータから軸中心に向かって発せられた光を円錐形のミラーで軸方向に反射してフォトマルに入射させる管内放射能測定装置(例えば特許文献1参照。)が開示されている。また、成形品の外表面に対峙するよう配置された外側検出器と、内表面に対峙するよう配置された内側検出器とを備えた形品放射能汚染モニタ装置の、とくに、内側検出器を内表面に合わせて角錐台または円錐台形状とした構成(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。あるいは、分割された検出器ユニットが連結金具を介して配置され、測定対象の形状に応じて、取付間隔と取付角度が異なる連結金具に交換することで、任意の曲率の曲面を測定できる放射能測定装置(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平3-021795号公報(第7頁11行~第8頁1行、第4図)
【文献】特開2000-56026号公報(段落0034~0040、図1図3、段落0051~0053、図5
【文献】特開2005-241595号公報(段落0010~0015、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、帯状のシンチレータ、あるいは外表面と内表面それぞれに対峙する検出器を用いる技術では、内径が決まった管、あるいは形状が決まった成形品以外への適用が困難で、測定対象物が限られる。また、連結金具で曲面に対応させる技術では、測定対象物が変わるたびに連結金具の交換による時間がかかり、測定対象物が多岐にわたる条件での測定には不向きであった。
【0008】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、箱型の内面を短時間、かつ、感度良く測定する放射線検出器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される放射線検出器は、放射線を受けて発光するシンチレータ、入射した光を電気信号に変換して出力する光検出器、および前記シンチレータが発した光を前記光検出器に導くライトガイド、を備え、前記シンチレータは、入射側の法線が互いに開く方向に交差する2つの平坦状の入射面を有し、前記ライトガイドは、三角柱状をなし、3つの側面のうちの2つの側面を、前記2つの入射面それぞれの裏側に密着して、前記2つの入射面それぞれからの光を内部に導入する受光面とする受光部と、前記受光部の残りの側面を下底面とし、前記下底面より小さな相似形の上底面を、前記内部を進行してきた光を前記光検出器に向けて出射する出射面とする四角錐台状の誘導部と、を一体化した中実体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される放射線検出器によれば、面が交差する隅部分に近接して検査ができるので、容器内面を短時間、かつ、感度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる放射線検出器の構成を説明するための斜視図である。
図2】実施の形態1にかかる放射線検出器のライトガイドのうち、受光部の形状を説明するための斜視図である。
図3】実施の形態1にかかる放射線検出器のライトガイドのうち、誘導部の形状を説明するための斜視図である。
図4】平坦面の表面汚染を検査する放射線検出器の構成例を説明するための正面図である。
図5】実施の形態1にかかる放射線検出器の構成を説明するための正面図である。
図6】実施の形態1にかかる放射線検出器の構成を説明するための側面図である。
図7】実施の形態1にかかる放射線検出器の測定対象の一例である、放射性汚染物を収納する箱型容器の斜視図である。
図8】実施の形態1にかかる放射線検出器の測定対象の一例である、トラックの荷台の斜視図である。
図9】実施の形態1の応用例にかかる放射線検出ユニットの構成と、測定方法を説明するための模式図である。
図10】実施の形態1の変形例にかかる放射線検出器のライトガイドのうち、受光部の形状を説明するための斜視図である。
図11】実施の形態2にかかる放射線検出器の構成を説明するための斜視図である。
図12】実施の形態2にかかる放射線検出器のライトガイドのうち、受光部の形状を説明するための斜視図である。
図13】実施の形態2にかかる放射線検出器のライトガイドのうち、誘導部の形状を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1図8は、実施の形態1にかかる放射線検出器の構成、あるいは使用方法について説明するためのものであり、図1は放射線検出器の構成を説明するための斜め上方から見たときの斜視図、図2は放射線検出器を構成するライトガイドのうち、シンチレータからの光を受光する受光部の形状を説明するための上方から見たときの斜視図、図3はライトガイドのうち、集光した光を光検出器に出射する誘導部の形状を説明するための、出射面を真上に向け、上方から見たときの斜視図である。
【0013】
また、図4は、一般的な平坦面の表面汚染を検査する放射線検出器であるとともに、応用例の放射線検出ユニットに用いる平坦面用検出器の構成例を説明するための正面図である。さらに、図5は放射線検出器の2つの入射面に垂直な方向を前後方向、一方の入射面を底面と定義したときの正面図、図6図5と同じ方向の定義をしたときに他方の入射面側から見たときの側面図である。
【0014】
一方、図7は放射線検出器の測定対象の一例である、放射性汚染物を収納する箱型容器の内面部分を示す斜視図、図8は測定対象の一例である、トラックの荷台の内面部分を示す斜視図である。そして、図9は応用例として、実施の形態1にかかる放射線検出器と平坦面を検知対象とする複数の放射線検出器とで構成した放射線検出ユニットの構成と、放射線検出ユニットにより、箱型容器の内面の表面検査を行う方法を説明するための模式図である。
【0015】
以下、実施の形態にかかる放射線検出器について、図を参照しながら説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付しているが、対応する各構成部のサイズ、あるいは縮尺はそれぞれ独立している。例えば、構成の一部を変更した図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズ、あるいは縮尺が異なっている場合もある。また、放射線検出器の構成は、実際には、さらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
【0016】
実施の形態1にかかる放射線検出器1は、図1に示すように、放射線を受けると発光するシンチレータ2と、入射した光を検知する光検出器4と、シンチレータ2からの光を光検出器4の検出面に向けて誘導するライトガイド3とを備えている。シンチレータ2は矩形の第一入射面1fdaを形成する第一面部2aと、第一入射面1fdaと直交する矩形の第二入射面1fdbを形成する第二面部2bとが、y方向の両端を揃えて連なり、y方向から見たときにL字状(図では逆L字)をなすように構成している。つまり、第一入射面1fdaと、第一入射面1fdaに直交する第二入射面1fdbからなる2つの入射面1fdを有している。
【0017】
なお、本願の各実施の形態にかかる放射線検出器1においては、上下左右どの方向に向けても使用可能であるが、便宜上、以下のように方向を定義する。第二入射面1fdbをxy面に平行に配置した状態を基準として、第二入射面1fdbを底面とし、z軸方向の進行先を上、逆を下とする。上述したシンチレータ2がL字状に見える方向を前後方向として、y方向の進行先を後ろ側とし、xz面に平行な第一入射面1fdaが設けられた側(x軸方向の進行先)を右、逆を左とする。
【0018】
光検出器4は、例えば、光電子増倍管など、符号を付さない検知面(光電面)に入射した光を電気信号に変換して出力する。シンチレータ2の入射面1fdの表面、あるいは内部には、放射線を受けると励起して発光する蛍光体が封じ込められており、放射線が入射面1fdを透過した際、蛍光体にエネルギーが付与されることで光を発する。図において、第一入射面1fdaの右側に、被検査体の壁面を、第二入射面1fdbの下側に被検査体の壁面を当てて放射線を検知することを想定している。なお、第一入射面1fdaと第二入射面1fdbの交線部1sabは、角状に描画しているが、曲面状、あるいは面取り状になっていてもよい。
【0019】
ライトガイド3は、アクリルなどの透明な材料の中実体で、シンチレータ2の裏面部分と密着してシンチレータ2からの光を受ける受光面3frを有する受光部31と、受光部31が受けた光を光検出器4に誘導する誘導部32とを一体化して構成している。
【0020】
受光部31は、図2に示すように、第一入射面1fdaの裏面に密着し、第一入射面1fdaからの光を受ける第一受光面3fraと、第二入射面1fdbの裏面に密着し、第二入射面1fdbからの光を受ける第二受光面3frbとが互いに直交する。そして、第一受光面3fraと第二受光面3frbの交線3sabに対向する対向面31fjにより、y軸に垂直な断面形状は直角二等辺三角形となり、対向する2つの側面31fsを底面とする三角柱を形成する。
【0021】
一方、誘導部32は、図3に示すように、矩形の下底面32fjと、下底面32fjより小さい矩形をなし、下底面32fjから間隔L32hをあけて平行に配置された上底面3ftとを有する四角錐台(六面体)をなす。受光部31の対向面31fjと誘導部32の下底面32fjとを接合すると、図1に示すようなライトガイド3の形状となる。なお、ライトガイド3の形状を説明するため、別体の受光部31と誘導部32とを「接合」したかのように記載したが、下底面32fjと対向面31fjとの間に光学的な境界は形成されていない。受光部31と誘導部32との間に光学的な界面が形成されないならば、面精度を出すために接合体で形成した方がいい場合もあるが、基本的にライトガイド3は、受光部31の形状と誘導部32の形状を合体させた立体形状を有する一体物であると考えた方がよい。
【0022】
このような立体形状を有するライトガイド3の受光面3frに沿ってシンチレータ2を配し、上底面3ftの領域R3pに光検出器4の検出面を対向させるようにして放射線検出器1を構成する。この場合、図4に示すような、ひとつの入射面1fdPを有する平板シンチレータ2P、角錐台または円錐台状のライトガイド3P、および光検出器4Pで構成する、一般的な平坦面用の高効率シンチレーション検出器である平坦面用検出器1Pと同様の光の伝搬経路を有することになる。
【0023】
つまり、本実施の形態1にかかる放射線検出器1においても、複数の入射面1fdそれぞれと検出面までは、平坦面用検出器1Pとほとんど同じ光の伝搬経路を有することになる。これにより、β線などの放射線がシンチレータ2に入射すると、エネルギーが付与され、蛍光体が発光する。シンチレータ2が発した光は受光面3frからライトガイド3内に入り、外部に向かって進む光の大半が壁面部分で内側に向けて反射され、光検出器4の検出面に誘導される。その結果、シンチレータ2に入射したβ線などの放射線を効率良く検出することができる。
【0024】
このような、高効率の光伝達を実現する各部の寸法・角度の例を以下に示す。例えば、図2に示すように、第一受光面3fraの交線3sabからの長さL3aと、第二受光面3frbの交線3sabからの長さL3bは、ともに14cm、交線3sabの長さ(交線長L3ab)は20cm(厳密には、(L3a+L3b1/2)に設定する。すると、対向面31fj(=下底面32fj)の、第一受光面3fra、第二受光面3frbそれぞれとの交線の長さは、交線3sabの長さと同じ20cmであり、両側面31fsとの交線の長さ(交線長L3j)は、交線長L3abと同じ20cmとなる。
【0025】
このように、対向面31fj(=下底面32fj)を正方形に近い形状にすることが望ましく、また、図3に示すように、四角錐台の底角α(下底面32fjと側面32fsとのなす角)は45°以上が望ましい。45度以上にすることで、第一受光面3fra、第二受光面3frbそれぞれと側面32fsとのなす角が90°以上になり、受光面3frに入射した光を側面32fsから外部に漏出させることなく、確実に上底面3ftに誘導することができる。
【0026】
なお、各部寸法は10~20cm程度に設定した例を示すが、これら寸法の比率を保ったまま、寸法を変えた相似形であってもよい。これら構成部材の位置関係を、前方の側面31fs側(y方向)から見ると図5のように、第一入射面1fda側(x方向)から見ると図6のようになる。
【0027】
このような構成にすることにより、廃棄物容器のように、少なくとも内面部分が直方体をなす、箱体の内面の放射能汚染を高効率に測定することが可能である。例えば、図7に示すように、放射性汚染物を収納する箱体7の内部、あるいは、図8に示すようなトラック8の荷台81内面の放射能汚染を検査する場合について説明する。
【0028】
このような場合、図4で説明した平坦面用検出器1Pだけでは、箱体7の隣接する3つの内面(内底面7io、内側面7ip、内側面7iq)が交差する隅部7cに入射面1fdPを近づけることは困難であり、感度が低下して十分な測定精度が得られない。同様に、荷台81の隣接する3つの内面(内底面81io、内側面81ip、内側面81iq)が交差する隅部81cにも入射面1fdPを近づけることは困難であり、感度が低下して十分な測定精度が得られない。
【0029】
もっとも、平坦面用検出器1Pであっても、例えば、一旦内底面7io(または内底面81io)を検査後、検出器の向きを変えて内側面7ip(または内側面81ip)を検査する、と言うように、面毎に入射面1fdPを近づけることは可能である。しかし、その場合は、測定に時間がかかり、大量に発生する検査対象の表面検査をスケジュール通りにこなすことが困難となる。
【0030】
それに対し、実施の形態1にかかる放射線検出器1では、一度に内底面7io(または内底面81io)と内側面7ip(または内側面81ip)を検査することができ、かつ、隅部7c(または隅部81c)にシンチレータ2の有感部を近づけることができる。その結果、時間と手間を省くと同時に、検出精度を高めることができる。
【0031】
応用例.
また、測定対象の面積が広い場合、実施の形態1で説明した放射線検出器1を含む複数の検出器で構成された放射線検出ユニットにより一度に対象面を検査することで全体の検査時間を短縮することができる。測定対象が平坦面のみであれば、平坦面用検出器1Pを複数台横方向に配置させるだけで特段の課題はない。
【0032】
しかし、箱状容器内面の交線部分のように、2面以上の測定対象を同時に検査する放射線検出ユニットを構成する場合、平坦面用検出器1Pのみで交線部分も網羅できる構成にすると、ライトガイド3P、光検出器4Pなどの各構成部材が空間的に干渉する。そのため、実質的に平坦面用検出器1Pのみで、交線部分、さらには隅部7c(または隅部81c)のような隅部分を測定するために配置したユニットを構成することは、大変困難であった。
【0033】
それに対し、実施の形態1の放射線検出器1と、入射面1fdPが矩形の平坦面用検出器1Pの複数台を組み合わせて、例えば、図9に示すような放射線検出ユニット10を構成する。放射線検出ユニット10は、箱状の筐体11の内底面と内側面との交線部に、放射線検出器1の交線部1sabを再接近させるように配置し、放射線検出器1に対して、x方向に順次隣接するよう、平坦面用検出器1P-1~1P-3を並べる。そして、放射線検出器1に対して、z方向に隣接するよう、平坦面用検出器1P-4を並べる。
【0034】
これにより、左右方向(x方向)での計測長Lh、前後方向(y方向)での計測長(交線長L3ab:図2)、および垂直方向(z方向)での計測長Lvを有する放射線検出ユニット10が形成される。ここで、例えば、矢印のように、放射線検出ユニット10の水平入射面10fdhを被検査体9の内底面9ioに当て、さらに、垂直入射面10fdvを内側面9ipに当てるように移動させる。そして、内底面9ioと内側面9ipとの接触を保ちながら、両矢印に示す、内底面9ioと内側面9ipの交線に平行な走査方向Dsに沿って、走査する。これにより、箱体内面の隅9cに容易に近づけることができ、かつ、一度に大面積の領域を検査することができる。
【0035】
なお、シンチレータ2の交線部1sab、あるいは放射線検出ユニット10の交線部10svhについては、被検査体の内面同士の交差部分の形状に合わせ、曲率が最も小さい(曲率半径が大きい)形状に合わせることが望ましい。これにより、放射線検出器1の交線部1sabを図7における内底面7ioと内側面7ipとの交差部分に近接させ、第二入射面1fdbと内底面7ioとの密着、および第一入射面1fdaと内側面7ipとの密着を維持した検査、あるいは走査が可能となる。同様に、放射線検出ユニット10の交線部10svhを図9における内底面9ioと内側面9ipとの交差部分に近接させ、水平入射面10fdhと内底面9ioとの密着、および垂直入射面10fdvと内側面9ipとの密着を維持しながら検査、あるいは走査が可能となる。
【0036】
変形例.
図10は、変形例にかかる放射線検出器のライトガイドのうち、受光部の形状を説明するための、図2に対応する斜視図である。そして、図2においては、第一受光面3fraと第二受光面3frbとが直交する例を示したが、これに限ることはない。例えば、図10に示すように、第一受光面3fraと第二受光面3frbが交差する角度βが鈍角であってもよい。あるいは、シンチレータ2に対して説明したように、図に示したような交線3sabが実際に出現する必要はなく、曲面であったり、面取りが施されていたりしてもよい。
【0037】
その場合、長さL3a=長さL3bとし、式(1)のように、交線長L3abを設定すれば対向面31fjを正方形に形成できる。
L3ab=L3a×2cos(90°-β/2) ・・・(1)
【0038】
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、容器内の2つの面を同時に検査するため、入射側の法線が互いに開く方向に交差する2つの入射面を有する放射線検出器の例を示した。本実施の形態2では、容器内の3つの面を同時に検査するため、入射側の法線が互いに開く方向に交差する3つの入射面を有する放射線検出器について説明する。
【0039】
図11図13は、実施の形態2にかかる放射線検出器の構成について説明するためのものであり、図11は放射線検出器の構成を説明するための斜め上方から見たときの斜視図であるが、シンチレータの記載は省略している。図12は放射線検出器を構成するライトガイドのうち、シンチレータからの光を受光する受光部の形状を説明するための上方から見たときの斜視図、図13はライトガイドのうち、集光した光を光検出器に出射する誘導部の形状を説明するための、出射面を上方に向け、上方から見たときの斜視図である。実施の形態1と同様の部分については、同様の符号を付し、同様部分の説明については省略する。
【0040】
実施の形態2にかかる放射線検出器1は、図11に示すように、それぞれ隣接し、外側を向いて直交する3つの受光面3fr(第一受光面3fra、第二受光面3frb、および第三受光面3frc)を有するライトガイド3を有することを特徴とする。ライトガイド3は、実施の形態1と同様に、描画を省略したシンチレータ2の裏面部分と密着してシンチレータ2からの光を受ける3つの受光面3frを有する受光部31と、受光部31が受けた光を光検出器4に誘導する誘導部32とを一体化して構成している。
【0041】
なお、光検出器4については、相違点がないため、説明を省略する。一方、シンチレータ2は、3つの受光面3frを覆う形態であり、互いに直交し隣接する図示しない3つの入射面1fd(第一入射面1fda、第二入射面1fdb、および符号を付さない第三入射面)を有している。そして、外形としては3つの受光面3frをつないだ形に厚み分を足した形態となるが、実施の形態1の図1図2の違いと同様、受光面3frと同様の形になるため、改めての説明は省略する。
【0042】
受光部31は、図12に示すように、矩形(好ましくは、正方形)をなし、互いに直交する3つの受光面3frと、各受光面3frの交点3crに対向する対向面31fjと、対向面31fjと各受光面3frとの間に形成された3つの側面31fsとを有する。つまり、直方体(同、正六面体)を3つの頂点を通る平面で切り取った七面体となり、好ましくは、各受光面3frが正方形、対向面31fjが正三角形、各側面31fsが直角二等辺三角形となる。
【0043】
一方、誘導部32は、図13に示すように、三角形(好ましくは、正三角形)の下底面32fjと、下底面32fjより小さい相似形の三角形をなし、下底面32fjから間隔L32hをあけて平行に配置された上底面3ftとを有する三角錐台をなす。受光部31の対向面31fjと誘導部32の下底面32fjとを接合すると、図11に示すようなライトガイド3の形状となる。
【0044】
これにより、例えば、図7の箱体7に対しては、隅部7cに交点3crを近接させることで、3つの入射面1fdをそれぞれ内底面7io、内側面7ip、および内側面7iqに同時に密着させて、3面同時に検査することが可能となる。同様に、図8の荷台81に対しても、隅部81cに交点3crを近接させることで、3つの入射面1fdをそれぞれ内底面81io、内側面81ip、および内側面81iqに同時に密着させて、3面同時に検査することが可能となる。つまり、箱体内面の隅の三面を同時に測定することができ、測定の手間と時間を大幅に省けるとともに、隅の部分の測定精度を高めることができる。
【0045】
なお、ライトガイド3は、実施の形態1と同様に、受光部31と誘導部32とを一体化して形成され、上底面3ftの領域R3pに光検出器4の検出面を接続させることを想定している。一方、実施の形態2においては、図12に示すように、対向面31fjが、3つの受光面3frを投影した領域よりも小さくなっているので、領域R31pに光検出器4の検出面を直接接続し、受光部31のみをライトガイド3として用いることも可能である。
【0046】
その際、実施の形態1で説明したように、3つの入射面1fdの交点部分は、実際に存在させる必要はなく、適宜、曲面加工、面取り加工等を施していてよい。
【0047】
なお、本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。
【0048】
例えば、実施の形態1で示した応用例のように、実施の形態2にかかる放射線検出器1を含めた複数の放射線検出器により、放射線検出ユニット10を形成してもよい。
【0049】
以上のように、本実施の形態にかかる放射線検出器1によれば、放射線を受けて発光するシンチレータ2、入射した光を電気信号に変換して出力する光検出器4、およびシンチレータ2が発した光を光検出器4に導くライトガイド3、を備え、シンチレータ2は、放射線の入射側の図示しない法線が互いに開く方向に交差する(3以下の)複数の入射面1fdを有するように構成したので、箱型の容器内の、2つの内面が交差する部分の2つの内面、あるいは3面が交差する隅部分の3つの内面に同時に入射面1fdを当てることができる。そのため、短時間、かつ、感度良く表面汚染を測定することができる。
【0050】
とくに、複数の入射面1fd(第一入射面1fdaと第二入射面1fdb、あるいは、さらに符号を付さない第三入射面)はそれぞれ平坦、かつ入射面1fdどうしが交差する角度βは、直角、または鈍角であるので、箱型容器(箱体7、荷台81、被検査体9など)の2面同時、あるいは3面同時に、入射面1fdを容易に密着させることができる。
【0051】
また、実施の形態1で説明したように、シンチレータ2は、複数の入射面1fdとして、2つの入射面1fd(第一入射面1fdaと第二入射面1fdb)を有し、ライトガイド3は、三角柱状をなし、3つの(矩形の)側面のうちの2つの側面を、2つの入射面1fdそれぞれの裏側に密着して、2つの入射面1fdそれぞれからの光を内部に導入する受光面3fr(第一受光面3fraと第二受光面3frb)とする受光部31と、受光部31の残りの側面(対向面31fj)を下底面32fjとし、下底面32fjより小さな相似形の上底面3ftを、内部を進行してきた光を光検出器4に向けて出射する出射面とする四角錐台状の誘導部32と、を一体化した中実体であるように構成したので、2つの入射面1fdからの光を確実に光検出器4に導くことができる。
【0052】
その際、複数の受光面3fr(第一受光面3fraと第二受光面3frb)は、それぞれ平坦、かつ受光面どうしが交差する角をβ、受光面どうしの交線3sabの長さ(交線長L3ab)をL、受光面における交線3sabと対辺との間隔をG(=長さL3a、長さL3b)とすると、「L=G×2cos(90°-β/2):(式(1)」の関係を満たすようにすれば、2つの入射面1fdからの光を効率良く光検出器4に導くことができる。
【0053】
とくに、誘導部32における下底面32fjと4つの側面32fsそれぞれとのなす角(底角α)が45度以上であれば、外部に向かう光を内部に戻し、光検出器4への光の到達率が向上する。
【0054】
あるいは、実施の形態2で説明したように、シンチレータ2は、複数の入射面1fdとして、3つの入射面1fd(第一入射面1fdaと第二入射面1fdb、および符号を付さない第三入射面)を有し、ライトガイド3は、六面体をある頂点に隣接する3つの頂点を結ぶ平面で切断した七面体状をなし、ある頂点に対向する頂点(交点3cr)を囲む3面を、3つの入射面1fdそれぞれの裏面に密着して、3つの入射面1fdそれぞれからの光を内部に導入する受光面3fr(第一受光面3fra、第二受光面3frb、第三受光面3frc)とする受光部31を有する、ように構成すれば、単純な構成で、3つの入射面1fdからの光を確実に光検出器4に導くことができる。
【0055】
その際、ライトガイド3は、受光面3frが正方形をなすように構成したので、箱型容器の各面からの放射線を偏りなく検出することができる。
【0056】
また、ライトガイド3は、受光部31と、受光部31の3つの頂点を結ぶ(三角形の)面(対向面31fj)を下底面32fjとし、下底面32fjより小さな相似形の上底面3ftを、内部を進行してきた光を光検出器4に向けて出射する出射面とする三角錐台状の誘導部32と、を一体化した中実体であるように構成したので、3つの入射面1fdからの光をさらに確実に光検出器4に導くことができる。
【符号の説明】
【0057】
1:放射線検出器、 10:放射線検出ユニット、 1fd:入射面、 1fda:第一入射面、 1fdb:第二入射面、 1P:平坦面用検出器、 2:シンチレータ、 3:ライトガイド、 31:受光部、 31fj:対向面(残りの側面)、 32:誘導部、 32fj:下底面、 3ft:上底面、 3fr:受光面、 3fra:第一受光面、 3frb:第二受光面、 3frc:第三受光面、 4:光検出器、α:底角、 β:角度。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13