(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】高屈折率ナノ複合体
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20221128BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221128BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20221128BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20221128BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D7/61
C09D4/02
C08F290/06
C08F2/44 A
(21)【出願番号】P 2019515266
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(86)【国際出願番号】 US2017051052
(87)【国際公開番号】W WO2018052868
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-06
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】リヨン,ジェニファー リン
(72)【発明者】
【氏名】モーリー,パメラ アーリーン
(72)【発明者】
【氏名】セナーラットヌ,ワギーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ワイケル,アーリン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,イン
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-271612(JP,A)
【文献】特開2001-181312(JP,A)
【文献】特開2007-314773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体コーティング層において、
アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子網目構造を有する樹脂、および
前記樹脂内に配置された無機ナノ粒子、
を含み、
1.7超の屈折率および60℃超のガラス転移温度を有し、
前記高分子網目構造が、三官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を25質量%から60質量%、二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を40質量%以上、必要に応じて、単
官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を10質量%まで含む、複合体コーティング層。
【請求項2】
前記二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーが、フルオレンジアクリレート(9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエチル)フェニル]フッ素)または芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを含む、請求項1記載の複合体コーティング層。
【請求項3】
前記無機ナノ粒子が酸化ジルコニウムから作られる、請求項1または2記載の複合体コーティング層。
【請求項4】
表面回折格子をさらに含む、請求項1記載の複合体コーティング層。
【請求項5】
硬化性コーティング組成物において、
a.三官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を25質量%から60質量%、二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を40質量%以上、必要に応じて、単
官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を10質量%まで含む、硬化性組成物、
b.無機ナノ粒子、
c.前記硬化性組成物が中に溶け、前記無機ナノ粒子が中に分散する溶媒、および
6 d.活性化放射線に暴露されたときに、前記硬化性組成物の重合を開始することができる光開始剤、
を含む硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
前記硬化性コーティング組成物が、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート)、n-ビニルカプロラクタム、二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、アクリル酸、ビフェニルメチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、およびフルオレンジアクリレートの内の1つを含む、請求項5記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
前記無機ナノ粒子が、前記活性化放射線に暴露された際に、前記硬化性組成物と化学反応するように官能化されている、請求項5または6記載の硬化性コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2016年9月16日に出願された米国仮特許出願第62/395525号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、高い屈折率を有する光学素子を調製するのに有用な光硬化性組成物に関し、より詳しくは、ナノスケールの表面特徴を有する光学素子の製造に有用なそのような組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
高屈折率高分子(HRIP)が、有機発光ダイオード(OLED)、反射防止コーティング、ニア・トゥー・アイ(near to eye)(NTE)ディスプレイなどの使用の増大により、多くの関心を集めてきた。これらの用途に要求される典型的な屈折率(RI)は、約1.7以上である。HRIPが、様々な製品に回折格子を形成するためにナノ複製を経ることも一般的である。UV硬化HRIPは、その高い生産速度およびその場でナノ複製される能力のために好ましい。光をライトガイドに出入りするように効率的に結合するために、異なるパターンおよび特徴が使用される。その上、高屈折率材料は、入光結合(in-coupling)効率を改善することが知られている。ナノ複製材料の別の特徴は、様々な角度からの様々な波長の光を捕捉し、放出して、仮想現実用メガネなどの電子機器の視野を改善する能力である。機器の成功は、ライトガイド中への光結合を促進し、散乱を減少させる(広角視野(FOV)を可能にする)高屈折率高分子の効率に依存する。
【0004】
高屈折率高分子は、(1)導波路を通る光の全内部反射率を改善し、それによって、光損失を低下させることができ、(2)光がライトガイドに出入りできる角度を改善する(すなわち、より高い屈折率により、視野が広くなる)ので、高屈折率高分子が望ましい。
図2は、係数R(最短波長の最小回折角の正接に対する最長波長の最大回折角の正接の比)の関数としての視野に対する効果および屈折率の重要性を示すグラフである。係数Rは、全内部反射間のビームのステップ長さの最大比の尺度である。5以上のR値を有する材料は、ガイド材料からより長い波長を抽出するのが困難であろう。
図2に示されるように、ポリカーボネートおよびポリイミド(図示せず)を含む、改善された屈折率値を示すことのできる高分子に多くのタイプがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの材料のほとんどは、導波路の回折格子を製造するのに必要なナノスケール寸法で複製される能力を持たない。粘度がより低い材料が、適所で硬化される所望の回折格子プロファイルの形成を促進することが望ましい。UV効果(メタ)アクリル、ビニルおよびエポキシが、機械的に複製できる回折格子に適している。その上、ある用途では、50℃超またさらには100℃超で機械的に安定であり(高Tg)、それでも1.7以上の屈折率を達成する樹脂材料を使用する必要がある。高RI(低いTg)または高Tg(低いRI)のいずれかを達成するために、公知の材料が選択されてきた。文献は、高温での機械的安定性が重視されていない高RI材料を開発することに焦点を当ててきた。現行の製品の必要性により、高RI材料は保証されているが、完成品に、熱安定性、機械的安定性、高いアッベ数、低いヘイズおよび高い透過率も設計しなければならないことになっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
高屈折率複合体コーティング(すなわち、n≧1.7)のための硬化性組成物が開示されている。この複合体コーティングは、高い屈折率と高い動的機械的安定性(すなわち、60℃以上のガラス転移温度)を同時に達成しつつ、適切に高い収斂性(すなわち、アッベ数)、低いヘイズおよび高い透過率も示す。
【0007】
その硬化性コーティング組成物から形成される複合材料に、樹脂内にナノスケールの無機粒子が分散した樹脂がある。この樹脂は、アクリルおよび/またはメタクリル繰り返し単位を有する高分子を含む高分子マトリクスである。その複合体コーティングは、1.7以上の屈折率および60℃以上のガラス転移温度を有する。
【0008】
その硬化性コーティング組成物は、少なくとも1種類の二官能性または多官能性アクリルモノマーまたはメタクリルモノマー、そのモノマーが溶解する随意的な溶媒、適切な活性化エネルギーに曝されたときにモノマーの重合を開始させることのできる重合開始剤、およびナノスケールの無機粒子を含む。その硬化性コーティング組成物を硬化させることによって形成された複合体コーティングは、1.7以上の屈折率および60℃以上のガラス転移温度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】光を捕捉し導波路から光を放出するために使用される典型的なナノ複製パターンを示す図
【
図2】左から右に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)(n
D=1.49)、環状オレフィンコポリマー(COC)(n
D=1.53)、ポリカーボネート(PC)(n
D=1.59)、エピスルフィドMGC171(n
D=1.71)、Schottガラス(LASFN9)(n
D=1.85)を含む、465~645nmの波長に関する異なる材料の水平FOVの関数としての係数Rを示すグラフ(最後の曲線は、n
D=2である)
【
図3】バルク材または薄膜の屈折率を決定するためのプリズム結合方法を示す図
【
図4】本開示による複合体の表面に成形されたナノスケールの特徴を示す走査電子顕微鏡写真
【
図5】本開示による複合体の表面に成形されたナノスケールの特徴を示す走査電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
高い屈折率および高いガラス転移温度(Tg)を有する複合体コーティングが開示されている。その複合体コーティングは、1種類以上の硬化性成分、無機ナノ粒子、および重合開始剤を含む硬化性コーティング組成物から形成される。その硬化性コーティング組成物は、必要に応じて、溶媒および1種類以上の添加剤を含む。硬化性コーティング組成物を硬化させる際に、1種類以上の硬化性成分の混合物は、複合体コーティングを形成するために無機ナノ粒子が中に含まれている樹脂を形成する。
【0011】
その硬化性コーティング組成物は、1種類以上の硬化性成分を含む。ここに用いられているように、「硬化性」という用語は、その成分が、適切な硬化エネルギー源に曝されたときに、その成分をそれ自体にまたは他の成分に結合して、高分子材料を形成するのに関与する共有結合を形成することのできる硬化性官能基を1つ以上含むことを意味することが意図されている。硬化性コーティング組成物を硬化させることによって得られる生成物は、ここでは、その組成物の硬化生成物と呼ばれることがある。その硬化過程は、エネルギーにより誘発されることがある。エネルギーの形態には、放射または熱エネルギーがある。放射線硬化性成分は、十分な期間に亘り適切な強度で適切な波長の放射線に暴露されたときに、硬化反応を経るように誘発され得る成分である。放射線硬化反応は、光開始剤の存在下で行われることがある。放射線硬化性成分は、必要に応じて、熱硬化性であることもある。同様に、熱硬化性成分は、十分な期間に亘り適切な強度の熱エネルギーに暴露されたときに、硬化反応を経るように誘発され得る成分である。熱硬化性成分は、必要に応じて、放射線硬化性であることもある。
【0012】
硬化性成分は、1つ以上の硬化性官能基を含む。硬化性官能基を1つしか持たない硬化性成分は、ここでは、単官能性硬化性成分(例えば、1つのアクリロイル基を有するモノマー)と呼ばれる。2つ以上の硬化性官能基を有する硬化性成分は、ここでは、多官能性硬化性成分と呼ばれる。多官能性硬化性成分は、硬化過程中に共有結合を形成することのできる官能基を2つ以上含み、硬化過程中に形成される高分子網目構造中に架橋を導入することができる。多官能性硬化性成分は、ここでは、「架橋剤」または「硬化性架橋剤」とも称される。硬化性成分としては、1つ以上の硬化性官能基を有するモノマー、1つ以上の硬化性官能基を有するオリゴマー、および1つ以上の硬化性官能基を有するモノマーと、1つ以上の硬化性官能基を有するオリゴマーとの組合せが挙げられる。好ましい硬化性成分としては、アクリルとメタクリルのモノマーとオリゴマーが挙げられる。
【0013】
開示された複合体コーティングは、高い屈折率(n≧1.7)および高い動的機械的安定性(Tg≧60℃)を同時に達成する。無機ナノ粒子と組み合わされた、アクリル、メタクリル、および/またはビニルモノマーまたはオリゴマーを含む硬化性コーティング組成物が硬化されて、1つの実施の形態において、開示された屈折率および機械的安定性を有する複合体コーティングを提供する。
【0014】
開示された硬化性コーティング組成物およびそれから形成された複合体コーティングは、高い屈折率を有するガラスまたは他の基板に屈折率を一致させることができる。これにより、最終使用者が、複製特徴(回折格子を形成する溝など)をガラスまたは他の基板に組み込んで、そのガラスまたは他の基板中に、またはその中から、またはその中で光を所望のように向けることができ、HRIPコーティングを用いる機器を製造するのに必要な材料を与えることができる。これらの材料は、例えば、拡張現実の分野に使用することができる。
【0015】
本開示に記載された複合体コーティングは、樹脂およびその樹脂内に配置された無機ナノ粒子を含む。その樹脂は、樹脂配合物の硬化生成物として形成された高分子マトリクスである。その樹脂配合物は、無機ナノ粒子を含まない硬化性コーティング組成物の1種類以上の硬化性成分および重合開始剤を含む。好ましい実施の形態において、その高分子マトリクスは、アクリルおよび/またはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を含む。その高分子マトリクスは、ナノ粒子が中に配置される連続高分子網目構造である。その高分子網目構造は、典型的に架橋されて、複合体コーティングに機械的強度を与える。その無機ナノ粒子は、高分子網目構造内に物理的に保持され得る、またはナノ粒子が高分子網目構造に化学的に(すなわち、共有)結合され得るように、アクリルまたはビニル官能基などにより、官能化され得る。表面官能化された無機ナノ粒子は、Pixelligentなどから市販されている、または公的に入手できる文献に開示された方法にしたがって調製することができる。
【0016】
その高分子マトリクスの高分子は、アクリルおよび/またはメタクリルモノマーまたはオリゴマーの残基である繰り返し単位からなる。「繰り返し単位」という用語は、モノマーの残基の分子構造を称し、高分子マトリクスは、典型的に、高分子網目構造内の多数の位置で生じる異なる繰り返し単位からなる高分子を含む。特定の実施の形態において、高分子マトリクスの高分子の繰り返し単位の大半(例えば、70質量%超、または80質量%超、または90質量%超)は、二官能性または多官能性(すなわち、アクリレートまたはメタクリレート基など、反応性官能基の残基である結合を3つ以上有する)モノマーまたはオリゴマーに由来する。しかしながら、他の実施の形態において、繰り返し単位の大半に満たないもの(すなわち、50%未満)が、二官能性または多官能性モノマーまたはオリゴマーに由来する。高分子マトリクスの高分子の繰り返し単位のバランスは、単可能性モノマーまたはオリゴマーに由来する。その樹脂は、アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーに由来する少なくとも2つの異なる繰り返し単位を有する高分子を持つ高分子網目構造を含み得る。
【0017】
複合体コーティングにおける樹脂対無機粒子の質量比は、1:5から1:1であり得る。その樹脂の少なくとも90質量%は、1種類以上の二官能性モノマーまたはオリゴマー、1種類以上の多官能性モノマーまたはオリゴマー、もしくは1種類以上の二官能性モノマーまたはオリゴマーと1種類以上の多官能性のモノマーまたはオリゴマーとの組合せからなり得る。1つの実施の形態において、その樹脂は、1種類以上の三官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を25質量%から60質量%、1種類以上の二官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を40質量%から80質量%、そして、必要に応じて、1種類以上の単可能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を10質量%まで含む。別の実施の形態において、その樹脂は、1種類以上の二官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を50質量%から100質量%、必要に応じて、1種類以上の三官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を50質量%まで、そして、必要に応じて、1種類以上の単官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を10質量%まで含む。
【0018】
その三官能性モノマーまたはオリゴマーは、トリス(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレートであり得る。その二官能性モノマーまたはオリゴマーは、脂肪族ウレタンアクリレートモノマーまたはオリゴマー、芳香族ウレタンアクリレートモノマーまたはオリゴマー、ビスフルオレンジアクリレート(9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエチル)フェニル]フルオレン)、またはビフェニルメチルアクリレートであり得る。単可能性モノマーまたはオリゴマーとしては、n-ビニルカプロラクタム、アクリル酸、およびヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。
【0019】
複合体コーティングは、1種類以上の硬化性成分、無機ナノ粒子、および必要に応じて、重合開始剤を含む硬化性コーティング組成物から調製される。その硬化性コーティング組成物は、必要に応じて、溶媒および前記無機ナノ粒子の分散媒質を含む。その1種類以上の硬化性成分は、少なくとも1種類の二官能性または多官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーを含む。その1種類以上の硬化性成分は、必要に応じて、少なくとも1種類の単可能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーを含む。その随意的な重合開始剤は、硬化性組成物の活性化エネルギーへの暴露の際に、その1種類以上の硬化性成分の重合を開始して、硬化生成物を形成できる。随意的な溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0020】
好ましい無機ナノ粒子としては、高屈折率を有するナノ粒子が挙げられる。その例に、二酸化ジルコニウム(ZrO2)および官能化二酸化ジルコニウム(例えば、アクリレート官能化二酸化ジルコニウム)がある。その無機ナノ粒子は、約1nmから約100nmまたは約10nmの範囲の寸法(例えば、流体力学半径)を有する。無機ナノ粒子は、分散媒質中に無機ナノ粒子を含む分散体の形態で提供されることがある。その分散媒質は、無機ナノ粒子と一緒に存在する場合、硬化性コーティング組成物の追加の成分になる。
【0021】
この重合開始剤は、硬化性コーティング組成物中の1種類以上の硬化性成分の硬化性官能基の反応を誘発または促進して、硬化生成物を提供する。重合開始剤としては、熱開始剤、化学開始剤、電子ビーム開始剤、および光開始剤が挙げられる。光開始剤が好ましい重合開始剤である。光開始剤は、反応性成分であり、反応、転位、または分解を経て、硬化性成分との光化学反応を開始することができる化学種(例えば、フリーラジカル)を提供する。アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーに基づくほとんどの硬化性成分について、ケトン光開始剤および/またはホスフィン・オキシド光開始剤などの光開始剤が好ましい。その光開始剤は、硬化性コーティング組成物中で使用される場合、高速硬化を生じるのに十分な量で存在する。光硬化性成分の硬化が、紫外線放射により行われることが好ましい。
【0022】
適切な光開始剤としては、制限なく、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(例えば、BASFから入手できるIrgacure 184)、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルフェニルホスフィンオキシド(例えば、BASFから入手できる市販のブレンドIrgacure 1800、1850、および1700)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(例えば、BASFから入手できるIrgacure 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASFから入手できるIrgacure 819)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(例えば、独国、ミュンヘン所在のBASFから入手できるLucirin TPO)、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASFから入手できるLucirin TPO-L)、およびその組合せが挙げられる。
【0023】
ここに開示された複合体の「アッベ数」は、比較的高く、例えば、29より大きく、式VD=(nD-1)/(nF-nC)により決定され、式中、VDはアッベ数(または収斂性)であり、nD、nFおよびnCは、フラウンホーファーD-、F-およびC-スペクトル線の波長(それぞれ、589.3nm、486.1nm、および656.3nm)での材料(複合体)の屈折率である。
【0024】
その複合体コーティングは、拡張現実装置に使用するためにガラスまたは他の基板と統合することができる。その複合体コーティング内に形成された回折格子は、拡張現実装置に使用されるガラスまたは他の基板から出入りする光を結合することができる。回折格子は、当該技術分野で公知のナノ複製技術によって、複合体コーティング内に形成することができる。硬化過程を速いプロセス速度で行うことができ、硬化生成物内に回折格子をその場で形成できるので、硬化性コーティング組成物の硬化生成物として形成された複合体コーティングが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は、説明に役立つ複合体コーティング、硬化性コーティング組成物、および硬化性成分を示す。表1には、説明に役立つ実例の硬化性コーティング組成物に使用される材料が列挙されている。全ての材料は、受け取ったまま使用した。表1には、各化合物および供給業者の情報を称するために使用される省略形も含まれている。PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-(1-メトキシ)プロピルアセテートとしても知られている)を、硬化性コーティング組成物におけるZrO2ナノ粒子の分散媒質として、また溶媒として使用した。
【0026】
ZrO2ナノ粒子は、分散媒質としてのPGMEA中の50質量パーセントのZrO2ナノ粒子を含む分散体の形態で、製造供給元(Pixelligent)から得た。ZrO2ナノ粒子は、直径が30nm未満のほぼ球形の形状であり、ナノ粒子の大半は、2nmから10nmの範囲の直径を有した。製品番号PCPB-2-50-PGAのZrO2ナノ粒子および製品番号PCPN-2-50-PGAのZrO2ナノ粒子を使用した。それらのZrO2ナノ粒子は、製造供給元が所有する表面コーティングで安定化されている。実験に基づいて、ZrO2ナノ粒子は、約1.9から2.0の屈折率を有すると予測される。
【0027】
【0028】
表2および3には、いくつかの樹脂配合物に関する成分と量(質量パーセント(質量%)で表されている)が列挙されている。樹脂配合物は、試料番号で特定されている。表2および3には、硬化前の液体状態における各樹脂配合物に関する589nmでの屈折率(n)も列挙されている。各樹脂配合物は、0.1pphの量でTPO光開始剤を含んだ。ここで、「pph」という単位は、樹脂配合物の硬化性成分の合計量に対する量を表す。表2および3に示されるように、硬化性成分の合計量は、樹脂配合物の100質量%を構成する。この原則に対して、0.1pphは、合計で100gの硬化性成分当たり0.1gの光開始剤が、樹脂配合物中に含まれたことを意味する。
【0029】
【0030】
【0031】
樹脂配合物の調製
試料1A(表2)は、樹脂配合物の調製を説明するための例として使用される。表2および表3の他の樹脂配合物の全ては、類似の調製手順にしたがった。トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR368)(6.0g)、低粘度で高屈折率の二官能性ウレタンアクリレート(HR3700)(14g)、および光開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)(0.20g)を組み合わせ、50℃で加熱し、全成分が溶けるまで混合して、均質な液体樹脂を得た。
【0032】
液体樹脂の屈折率
その均質な液体樹脂配合物の屈折率(nD)を、ナトリウム源屈折計を使用して、589.3nmで測定した。液体樹脂配合物の屈折率値が、表2および3に列挙されている。屈折率は、標準操作説明書にしたがってMilton Roy Company屈折計モデルLE07を使用して測定した。
【0033】
樹脂の調製
樹脂は、上記樹脂配合物を硬化させることによって形成した。液体樹脂配合物を加えて、対向するMylar離型ライナーの間の10mm厚の間隙を満たし、1055mJ/cm2(365nmで測定)の全線量でFusion Dバルブ(10フィート(約3m)/分で1回通過)を使用して硬化させた。
【0034】
樹脂のガラス転移温度
樹脂配合物から形成された樹脂のガラス転移温度(Tg)をDMA(動的機械分析)技術によって測定した。長方形張力治具を備えた流体測定DMTA IV装置を使用して、測定を完了した。その装置のゲージ長は、10mmであった。樹脂試料は、幅3~4mmおよび厚さ0.2mmから0.4mmの薄膜であった。分析は、0℃で開始し、2℃/分の速度で200℃まで上昇させる昇温を使用して行った。1.0Hzの試験周波数での0.03%(3.0μm)の動歪みを使用した。試料の座屈を防ぐために、この装置のAuto-Tension機能を作動させ、10%の静的力>動的力をプログラムした。TA InstrumentsからのTRIOSソフトウェアを使用してデータを解析した。Tgは、tanδピークの最大値として決定した。ここで、tanδピークは
tanδ=E”/E’
として定義され、式中、E”は、変形サイクルにおける熱としてのエネルギーの損失に比例する、損失弾性率であり、E’は、変形サイクルにおいて貯蔵されたエネルギーに比例する、貯蔵弾性率または弾性係数である。
【0035】
異なる樹脂配合物から形成された樹脂に関するガラス転移温度が、表4に纏められている。
【0036】
【0037】
硬化性コーティング組成物の調製
硬化性コーティング組成物を、無機ナノ粒子および表2および3に列挙された樹脂配合物により調製した。容器内でナノ粒子分散体を樹脂配合物と混ぜ合わせ、ボルテックスにかけて、透明-半透明の溶液の形態にある硬化性コーティング組成物を形成した。透明-半透明の溶液を形成した後、硬化性コーティング組成物の安定性を2日間までに亘りモニタして、大きい粒子の沈降、沈殿、または色の変化が起きないことを確認した。硬化性コーティング組成物の安定性が一旦確認されたら、硬化を開始して、複合体コーティングを形成した。
【0038】
樹脂配合物およびナノ粒子分散体を様々な比率で組み合わせて、硬化性コーティング組成物を形成した。相対的比率を制御して、予測される屈折率(589nmでの)が1.68~1.72の範囲にある硬化性コーティング組成物を提供した。説明に役立つ硬化性コーティング組成物を形成するために使用した樹脂配合物、ナノ粒子分散体、および溶媒が、表5~9に纏められている。樹脂配合物は、表2および3に示されたラベルにより特定される。ナノ粒子分散体は、ラベル「PCPB」および「PCPN」により特定され、これは、それぞれ、表1に示された項目PCPB-2-50-PGAおよびPCPN-2-50-PGAを称する。PGMEAが溶媒として含まれた。樹脂配合物、ナノ粒子分散体、および溶媒の相対的比率は、質量パーセント(質量%)の単位で列挙されている。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
複合体コーティングの形成
表5~9に列挙された硬化性コーティング組成物から複合体コーティングを形成するための基板として、EXGガラス(Eagle XG(登録商標)ガラス、Corning,Inc.から入手できるアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス)を選択した。被覆の前に、SemiClean(2~4%)洗浄剤を使用して、EXGガラスを洗浄し、その後、温水で濯ぎ、空気中で乾燥させた。次に、ガラスを、5分間に亘り高出力設定(29.6W)で空気中において処理した。次に、硬化性コーティング組成物をこのガラス基板上に濾過し、Laurell Model WS-650-23 Spin Coaterを使用して、室温で回転塗布した。回転塗布は、硬化性組成物1~29から形成された複合体コーティングについて、2つの速度で行った:35秒間に亘る1000rpmと、その後の35秒間に亘る3000rpm。回転塗布後に、15分間に亘る80℃での熱処理を行い、30分間に亘り窒素パージした後に窒素雰囲気下で365nmでのUV硬化を行った。硬化源は、Phoseonからの365 NM LED(モデルFJ800)であり、これは、33mW/cm2で365nmの放射線を提供した。硬化時間は、330J(硬化性組成物の表面で)の総硬化線量を提供するために10秒であった。被覆したガラス基板を、硬化源の筐体から約7cmおよび硬化源のバルブから約18cmに配置した。
【0045】
複合体コーティングの性質
表5~9に列挙された硬化性コーティング組成物の内のいくつかから形成された複合体コーティングについて、厚さ、588nmでの屈折率、透過率およびヘイズを測定した。その硬化性コーティング組成物の内のいくつかから形成された複合体コーティングについて、588nmでの屈折率は、測定せずに、計算した。硬化性コーティング組成物19~29から形成された複合体コーティングについて、アッベ数を測定した。測定手順が下記に記載されており、その結果が下記の表10~14に提示されている。表10~14には、硬化性コーティング組成物(表5~9により番号がつけられた)に対応する説明に役立つ複合体コーティング、複合体コーティングの厚さ、複合体コーティングの屈折率、複合体コーティングの透過率(透過率パーセント(%T)として報告されている)、および複合体コーティングのヘイズ(ヘイズパーセント(%H)として報告されている)が列挙されている。
【0046】
屈折率およびアッベ数の測定 屈折率およびアッベ数の測定を、Metricon Model 2010プリズムカプラで行った。Metricon Model 2010プリズムカプラは、473nmから1549nmの範囲の離散波長で光を提供できるレーザ源を備えていた。このMetricon 2010プリズムカプラは、全自動屈折計として作動する。この屈折計において、バルク材および/または膜の屈折率を測定できる。プリズム結合技術を使用して屈折率を決定する原理が、
図3に示されている。屈折率nの材料を屈折率n
pのプリズムと結合した場合、プリズムの基部に向けられたレーザ光は、入射角θが臨界角θ
c(ここで、θ
c=arcsin(n/n
p))より小さくなるまで、全反射される。入射角θが臨界角θ
cより下落するときに検出器の強度が急変するので、界角θ
cは、光検出器を使用して測定される。n
pは公知なので、nは、上記の式から決定できる。このMetricon 2010プリズムカプラに使用した作動条件は以下のとおりであった:P-2プリズム-4510.9、平均-1、全工程、単一膜モード接触荷重(1.5から約20lbs(約0.68から9.1kg)TE)。
【0047】
測定前に、EXGガラス基板の複合体コーティングの表面を、圧縮空気を使用して吹いて、埃を除去した。被覆されたガラス基板をプリズムに結合し、プリズムと基板との間の臨界角に対応する反射強度が急激に減少する前に、可視モードの存在を評価した。各試料について、三片の各々で1つのスポットを測定した。基準8293屈折率ガラスを試料セットで測定した。試料の値を基準の値と比較し、補正値を使用して、試料値を補正した。本開示において、補正された値が報告されている。
【0048】
厚さの測定 複合体コーティングの厚さを、Zygo光学式表面形状測定機を使用して測定した。カミソリの刃を使用して、複合体コーティングに傷を付けて、下にあるガラス基板を露出させた。その表面形状測定機によって、傷付き区域を測定して、そのコーティングの厚さを決定した。
【0049】
透過率の測定
ガラス基板上の複合体コーティングの透過率パーセントの測定。測定は、250から850nmの範囲で行った。透過率測定値を得るために、Perkin Elmer UV/VIS/NIR Spectrometer Lambda 900を使用した。この装置を制御するために、UVWin Labバージョン3.00.03のソフトウェアを使用した。この装置の取扱説明書の手順にしたがった。被覆ガラス基板の測定を行う前に、未被覆のガラス基板をブランクとして使用して、装置をゼロにした。
【0050】
ヘイズの測定
試料のヘイズおよび透過率を測定するために、Gardner Haze-Gard装置を使用した。スペクトルコーンに対して試料を置き、測定を開始した。ヘイズおよび透過率は、国際照明委員会(CIE)により示された手順にしたがって計算した。Gardner Haze-Gard装置の測定は、CIE-D65標準光源の出力分布に基づいた。CIE標準光源D65は、平均的な昼光条件を示す目的であり、約6500Kの相関色温度を有する。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
いくつかの実施の形態において、複合体コーティングの屈折率は、1.60超、または1.65超、または1.67超、または1.70超、または1.72超、または1.74超、または1.76超、または1.65~1.80の範囲、または1.67~1.78の範囲、または1.70~1.76の範囲にある。
【0057】
いくつかの実施の形態において、複合体コーティングのアッベ数は、25超、または27超、または29超、または30超、または31超、または32超、または33超、または25~35の範囲、または27~34の範囲、または29~33の範囲にある。
【0058】
いくつかの実施の形態において、複合体コーティングのガラス転移温度は、55℃超、または60℃超、または70℃超、または80℃超、または90℃超、または100℃超、または110℃超、または55℃~135℃の範囲、または60℃~130℃の範囲、または65℃~120℃の範囲、または70℃~110℃の範囲にある。
【0059】
ナノ複製
使用したナノ複製型は、Toppan Photomasks Inc.により製造されたQuartz回折格子型である;この型は、酸素プラズマ処理によって洗浄され、離型剤として真空下で(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン(Gelest Inc.)で被覆されている。最初に、複製基板をイソプロパノール、アセトンおよび脱イオン水で洗浄する;RIシリーズ樹脂を、0.2μmのPTFEシリンジフィルタで濾過し、30秒間に亘り1000rpmの回転速度で基板上に回転塗布する。次に、樹脂が被覆された試料を3分間に亘り80℃で焼いて、どのような残留溶媒も除去し、次いで、室温まで冷ます。次に、ナノ複製型を被覆試料の上に置き、その型に圧縮力を印加して、樹脂を型の回折格子構造中に確実に入り込ませる。圧縮圧力を印加した状態で、Quartz型を通じて紫外線を照らし、樹脂を硬化させる。樹脂が一旦硬化したら、ナノ複製型を基板から分離し、
図4および5に示されるようなナノ複製構造を露わにする。
【0060】
記載された実施の形態は、好ましいおよび/または説明に役立つが、限定ではない。付随の請求項の範囲内で、様々な改変が考えられる。
【0061】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0062】
実施形態1
複合体コーティングにおいて、
アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を含む高分子網目構造を有する樹脂、および
前記樹脂内に配置された無機ナノ粒子、
を含み、
1.7超の屈折率および60℃超のガラス転移温度を有する複合体コーティング。
【0063】
実施形態2
前記高分子網目構造が、2つ以上のアクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有するコポリマーから作られる、実施形態1に記載の複合体コーティング。
【0064】
実施形態3
前記コーティングが29.0超のアッベ数を有する、実施形態1または2の複合体コーティング。
【0065】
実施形態4
前記複合体コーティングにおける樹脂対無機ナノ粒子の質量比が、1:5から1:1の範囲にある、実施形態1から3いずれか1つに記載の複合体コーティング。
【0066】
実施形態5
前記高分子網目構造が、二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー、多官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー、もしくは二官能性と多官能性のアクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーの組合せに由来する繰り返し単位を有する高分子を少なくとも90質量%含む、実施形態1から4いずれか1つに記載の複合体コーティング。
【0067】
実施形態6
前記高分子網目構造が、三官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を25質量%から60質量%、二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を40質量%から80質量%、必要に応じて、単官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を10質量%まで含む、実施形態1から4いずれか1つに記載の複合体コーティング。
【0068】
実施形態7
前記三官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーが、トリス(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレートを含み、前記二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーが、芳香族ウレタンアクリレートモノマーまたはオリゴマー、メタクリルモノマーまたはオリゴマー、ビフェニルメチルアクリレート、またはビフェニルメチルメタクリレートの少なくとも1つを含む、実施形態6に記載の複合体コーティング。
【0069】
実施形態8
少なくとも1種類のモノマーの残基である単官能性繰り返し単位をさらに含み、前記高分子網目構造が、n-ビニルカプロラクタムまたはフッ素ジアクリレートに由来する繰り返し単位を有する高分子を含む、実施形態7に記載の複合体コーティング。
【0070】
実施形態9
前記高分子網目構造が、二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を50質量%から100質量%、必要に応じて、三官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を50質量%まで、そして、必要に応じて、単官能性モノマーまたはオリゴマー由来の繰り返し単位を有する高分子を10質量%まで含む、実施形態1から4いずれか1つに記載の複合体コーティング。
【0071】
実施形態10
前記二官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーが、フルオレンジアクリレート(9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエチル)フェニル]フッ素)または芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを含む、実施形態9に記載の複合体コーティング。
【0072】
実施形態11
前記高分子網目構造が、トリス(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート由来の繰り返し単位を有する高分子を含む、実施形態10に記載の複合体コーティング。
【0073】
実施形態12
前記高分子網目構造が、アクリル酸またはヒドロキシブチルアクリレート由来の繰り返し単位を有する高分子を含む、実施形態10に記載の複合体コーティング。
【0074】
実施形態13
前記無機ナノ粒子が酸化ジルコニウムから作られる、実施形態1から12いずれか1つに記載の複合体コーティング。
【0075】
実施形態14
前記酸化ジルコニウムのナノ粒子が、約10nm以下の平均サイズを有する、実施形態13に記載の複合体コーティング。
【0076】
実施形態15
前記無機ナノ粒子が、前記高分子網目構造に化学結合している、実施形態1から14いずれか1つに記載の複合体コーティング。
【0077】
実施形態16
表面回折格子をさらに含む、実施形態1から15いずれか1つに記載の複合体コーティング。
【0078】
実施形態17
硬化性コーティング組成物において、
a.少なくとも1種類の二官能性または多官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー、および必要に応じて、少なくとも1種類の単官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマー、
b.無機ナノ粒子、
c.前記二官能性または多官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーが中に溶け、前記無機ナノ粒子が中に分散する溶媒、および
d.活性化放射線に暴露されたときに、前記二官能性または多官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーの重合を開始することができる光開始剤、
を含む硬化性コーティング組成物。
【0079】
実施形態18
前記硬化性コーティング組成物が、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート)、n-ビニルカプロラクタム、二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、アクリル酸、ビフェニルメチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、およびフルオレンジアクリレートの内の1つを含む、実施形態17に記載の硬化性コーティング組成物。
【0080】
実施形態19
前記無機ナノ粒子が、前記活性化放射線に暴露された際に、前記二官能性または多官能性アクリルまたはメタクリルモノマーまたはオリゴマーと化学反応するように官能化されている、実施形態17または18に記載の硬化性コーティング組成物。
【0081】
実施形態20
前記溶媒がプロピレングリコールメチルエーテルアセテートである、実施形態17から19いずれか1つに記載の硬化性コーティング組成物。