(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ステント送達のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20221128BHJP
A61F 2/90 20130101ALI20221128BHJP
A61F 2/07 20130101ALI20221128BHJP
【FI】
A61F2/966
A61F2/90
A61F2/07
(21)【出願番号】P 2019518270
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(86)【国際出願番号】 US2017055183
(87)【国際公開番号】W WO2018067727
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】パァング,ポナカ
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ヘレン
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104212(JP,A)
【文献】米国特許第8048139(US,B2)
【文献】国際公開第2015/184075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61F 2/90
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアワイヤ(104)を含み、
前記コアワイヤ(104)は、前記コアワイヤ周りに配置されるとともに圧縮構成と径方向拡張構成とをさらに有するメッシュ部分(102)と、前記メッシュ部分上方に配置され、当該メッシュ部分を覆うステントとによって特徴づけられ、
前記メッシュ部分は、前記ステントをカテーテルの外側へ配置するとき前記ステントの内部に対して径方向に拡張し、その径方向拡張構成において、患者の血管の湾曲部分周辺に前記ステントを支持して開かせるように配置された複数のバルブ
(bulb 102A)形状を形成する、ステント送達デバイス。
【請求項2】
プッシャー体(112)をさらに含む、請求項1に記載のステント送達デバイス。
【請求項3】
前記コアワイヤ(104)は前記プッシャー体(112)から遠位に延びる、請求項2に記載のステント送達デバイス。
【請求項4】
前記コアワイヤ(104)は前記プッシャー体(112)の内腔にわたっている、請求項3に記載のステント送達デバイス。
【請求項5】
前記コアワイヤ(104)は前記プッシャー体(112)の遠位端部に取り付けられる、請求項3に記載のステント送達デバイス。
【請求項6】
前記ステント(12)は前記プッシャー体(112)に係合する、請求項3に記載のステント送達デバイス。
【請求項7】
前記メッシュ部分(102)の近位端部は前記プッシャー体(112)の遠位端部に固定される、請求項3に記載のステント送達デバイス。
【請求項8】
前記メッシュ部分(102)は前記コアワイヤ(104)において長手方向にスライドする、請求項3に記載のステント送達デバイス。
【請求項9】
前記コアワイヤ(104)の少なくとも一部は前記プッシャー体(112)の遠位端部から露出されている、請求項3に記載のステント送達デバイス。
【請求項10】
前記メッシュ部分(102)の近位端部は、細長い前記プッシャー体(112)の遠位端部で接続され、コアワイヤ(104)が細長い前記プッシャー体から前記メッシュ部分内に延びて、前記メッシュ部分の最近位バルブ部内で終了する、請求項3に記載のステント送達デバイス。
【請求項11】
前記複数のバルブ形状はそれぞれ、球体、回転楕円体、細長い筒体、円錐体、又は近位に増大する及び近位に減少する円錐体形状を備えた形状から選択される形状を有する、請求項1に記載のステント送達デバイス。
【請求項12】
前記メッシュ部分(102)の遠位端部は前記コアワイヤ(104)においてスライドし、前記メッシュ部分(102)の近位端部は前記コアワイヤ(104)に対して長手方向に固定されている、請求項1に記載のステント送達デバイス。
【請求項13】
前記コアワイヤ(104)に固定されるとともに前記メッシュ部分(102)内に配置されたマーカーバンド(107)をさらに含む、請求項1に記載のステント送達デバイス。
【請求項14】
前記複数のバルブ形状は、その径方向拡張構成において、第1バルブ形状、第2バルブ形状、及び前記第1バルブ形状と第2バルブ形状との間の縮径形状を含む、請求項1に記載のステント送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、「ステント送達及びステント使用のための方法」という発明の名称の2016年10月4日に出願された米国仮特許出願第62/404,102号の優先権を主張するものであり、参照することによりその全てが本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ステントは、一般的に、カテーテル又は類似の送達デバイスによって患者の血管系に送達される管状デバイスである。ステントは、狭窄や動脈瘤を含む多様な病態を処置するために使用することができる。狭窄(血管が狭くなること)の処置に使用される場合、ステントは、血栓を押して血管を通じさせ、正常な血流を可能にするように使用される。動脈瘤の処置に使用される場合、低空隙率ステントを使用して、血管への血流を制限して(いわゆる分流ステント)動脈瘤凝固を促進するとともに動脈瘤破裂のリスクを低減することができる。あるいは、ステントは、他の塞栓材(塞栓コイルなど)を動脈瘤内に留めるための足場材として使用することができる。
【0003】
ステントが血管の実質的に直線状の部分に配置されるとき、ステント送達は通常容易である。例として、送達カテーテルの遠位端部を所望の送達位置近傍に前進させ、アウターシースを引き抜き、ステントを血管内で拡張させることができる。これらの直線状の血管の場合でも、ステントのサイズ、送達カテーテルのサイズ、及び血管のサイズなどの可変要素のため、ステント送達はなお困難であり得る。ステントが、血管の屈曲した部分又は大きく湾曲した部分に、あるいはその近傍に配置される必要があるとき、自己拡張型ステントは適切に配置するのが困難であることがある。例として、
図1は、血管10における大きく湾曲した部分に配置された自己拡張型ステント12(例えば、言及することでその全てが本明細書に援用される特許文献1に記載されるものなど)を示す。カテーテル14がステント12を解放しても、ステントは血管10の外側曲面に対して平坦な又は折り畳まれた部分12Aを形成する。
図2は、ステント12がさらに拡張されたとき血管10の第2の湾曲部の外面に対して形成された第2の平坦な又は折り畳まれた部分12Aを示す。折り畳まれた部分12Aが発生したとき、医師にとっての唯一の代案はカテーテル14を回転させてみること、及び/又はステント12を部分的に後退させて再配置してみることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特に大きく湾曲した又は屈曲した血管内において、自己拡張型ステントの拡張を支援するための方法、装置、及びキットを対象とする。
【0006】
一実施形態では、自己拡張メッシュ部分をその遠位端部に有する細長いプッシャーを含むステント送達デバイスを対象とする。メッシュ部分は、好ましくは、縮径領域によって互いに接続された1つ以上のメッシュバルブ部を含む。任意的に、バルブ部の中間領域などのメッシュ部分の種々の領域は、より高いpic毎インチを有するより高密度の編組部分を有することができる。
【0007】
一実施形態において、メッシュ部分は、プッシャーの遠位端部から延びるコアワイヤに配置される。メッシュ部分は、コアワイヤにおいて長手方向にスライド可能であり、近位端部はコアワイヤ又はプッシャーに固定することができる、又は遠位端部はコアワイヤに固定することができる。
【0008】
メッシュ部分は、1つのバルブ部分を含むことができる、又は(例えば2~10、又はそれより多い)複数のバルブ部分を含むことができる。さらに、バルブ部分は、球体状、回転楕円体状、細長い筒体状、円錐体状、又はダイヤモンド状などの多様な形状を有することができる。
【0009】
一実施形態において、コアワイヤはプッシャーの遠位端部又は第1バルブ部分内の中途部で終端することができる。支援デバイスは、メッシュ部分の終わりまで延びていないことで、より可撓性があり、より大きい程度の血管湾曲を許容することができる。
【0010】
一実施形態において、構造ワイヤ部材がバルブ部同士の間かつ縮径領域上方に延びる。これらの構造ワイヤ部材は、ステント送達手技時に除去された凝塊又は他の砕片を捕捉するのに利用される。
【0011】
一実施形態において、遠位保護デバイスはデバイスの遠位端部に含まれる。遠位保護デバイスは、ステント配置時に除去された任意の物質を捕らえるフィルター又は類似の構造を含む、比較的大きい拡張可能メッシュバルブ部を含むことができる。遠位保護デバイスは、メッシュ部分と一体的に編組されてもよく、又はコアワイヤの遠位端部近傍に接続された別の構造であってもよい。
【0012】
また、本発明は、血管構造の湾曲領域内でステントの遠位部分を露出するステップと、ステント内のステント支援デバイスのメッシュ部分を拡張してステントの内部に径方向拡張力を加えるステップと、ステントを適切に配置するステップと、ステント支援デバイスを引き抜くステップとを含む、ステントを配置する方法も対象とする。
【0013】
また、本発明は、カテーテル、カテーテル内のプッシャー、プッシャーの遠位端部に取り付けた自己拡張メッシュ部分、及びメッシュ部分上に配置されたステントを含むキットも対象とする。
【0014】
本発明の実施形態が許容できるこれらの態様、特徴、及び利点、並びにその他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して、以下の本発明の実施形態の説明より明白かつ明瞭になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、血管の屈曲部分に配置されたステントを示す。
【
図2】
図2は、さらに血管の屈曲部分に配置された
図1のステントを示す。
【
図3】
図3は、本発明にかかる、拡張構成のステント支援デバイスの一実施形態を示す。
【
図4】
図4は、本発明にかかる、ステント内における
図3のステント支援デバイスの遠位端部を示す。
【
図5】
図5は、本発明にかかる、ステント内における
図3のステント支援デバイスを示す。
【
図6】
図6は、屈曲した血管構造内においてステントの配置を支援する
図3のステント支援デバイスを示す。
【
図7】
図7は、
図6のステントのさらなる配置を支援する
図3のステント支援デバイスを示す。
【
図8】
図8は、本発明にかかる、ステント支援デバイスの他の実施形態を示す。
【
図9】
図9は、本発明にかかる、複数のメッシュバルブ部を有するステント支援デバイスの他の実施形態を示す。
【
図10】
図10は、本発明のメッシュバルブ部のための複数の種々の可能な形状を示す。
【
図11】
図11は、本発明にかかる、メッシュ部分の近位位置内で終端するコアワイヤを有するステント支援デバイスの他の実施形態を示す。
【
図12】
図12は、本発明にかかる、ステント内における
図11のステント支援デバイスを示す。
【
図15】
図15は、本発明にかかる、バルブ部同士の間のワイヤフレーム部材を有するステント支援デバイスを示す。
【
図16】
図16は、本発明にかかる、メッシュ部分に取り付けた遠位保護デバイスを有するステント支援デバイスを示す。
【
図17】
図17は、本発明にかかる、メッシュ部分とは分離した遠位保護デバイスを有するステント支援デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本発明の具体的な実施形態を添付の図面に関して記載する。しかしながら、本発明は多様な構成で表され得、本明細書に示す実施形態に限定されると解釈されるべきではない。それよりも、これらの実施形態は、この開示が的確で完結しているとともに当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。添付の図面に示す実施形態の詳細な説明において使用される用語は、本発明を限定することを意図しない。図面において、同様の番号は同様の構成要素を示す。
【0017】
本発明は、一般に、自己拡張型ステント12を径方向に拡張する支援をするさらなる拡張力を与えるとともに、その径方向拡張状態を維持するために、配置時に自己拡張型ステント12の内部通路内で拡張可能なデバイスを対象とする。このさらなる拡張力は、
図1及び
図2に関して示し記載するように、特に、ステント12に折り畳まれた部分12Aを形成させやすい大きく屈曲した血管10において有用であり得る。
【0018】
図3及び以降のものにおいて、特に提示がなければ、図面の右にあるものは全て遠位(患者・患者の血管構造の方向)と考えられ、図面の左にあるものは全て近位(患者・患者の血管構造から離れる又はそれらの外側の方向)と考えられるということが留意される。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態にかかる拡張可能なステント支援デバイス100を示す。ステント支援デバイス100は、ステント12を機械的に押す又は機械的に送達するために使用される広範な送達システム又はプッシャーの遠位部分として考えられ得る。ステント支援デバイス100は、放射線不透過性(例えばタンタル)マーカーバンド109で終端する細長い筒形状を有するプッシャー体112と、プッシャー体112の遠位に露出された静止又は固定コアワイヤ104とを含む。
【0020】
一実施形態において、コアワイヤはプッシャー体112の内腔にわたり、コアワイヤ104の遠位部分のみが露出している。他の実施形態において、コアワイヤ104はプッシャー体112の遠位端部に取り付けられている。コアワイヤ104は、固定放射線不透過性マーカーバンド107を含む。一実施例において、ステント12は、拡大マーカーコイル領域を有する、近位に配置した多数のフレアー状端部又はループを含むことができ、1つ以上のフレアー状端部又はループは、送達時にステントを保持するために、位置104Aにおいてマーカーバンド109及び107内に配置される。拡大マーカーコイル領域は、マーカーバンド107と109との間に留めたステントのフレアー・ループを維持する。マーカーバンド107、109は、直径が約0.0135インチのサイズを有することができ、コアワイヤ104は直径が約0.003インチである。ステントは、送達カテーテル14内に納めたとき、第1の折り畳まれた構成をとり、これは
図4~
図5に良好に示される。プッシャー体112がカテーテル14の遠位端部を超えて押されると、又はカテーテル14が後退すると、ステントはそのヒートセットした拡張形状に拡張する。ステントがカテーテル14から十分に押されると、留めたステントのループ・フレアーが拡張して位置104Aには保持されない類似のステント及び送達システム・構成は、前述の援用した特許文献1に見受けられる。
【0021】
ステント支援デバイス100は、コアワイヤ104に沿って配置されるメッシュ部分102をさらに含む。このメッシュ部分の目的は、さらなる径方向外方の力をステント12に与えて、手技時にステント12の拡張を支援してその拡張形状を維持することである。メッシュ部分102は複数のワイヤから形成され、重なっている送達カテーテル14から解放されるとメッシュ部分が自己拡張するように拡張形状にヒートセットされる。
【0022】
好ましくは、メッシュ部分102は、1つ以上のバルブ部102A(例えば、
図3に示すような2つのバルブ部、又はより多くのバルブ部も可能である)を形成するように編組されヒートセットされ、各バルブ部が縮径部分102Bによって接続される。メッシュ部分は、多数のクリンプ点(近位クリンプ点108、遠位クリンプ点106)を含む。クリンプ点106、108は、それ自体でワイヤをクリンプして、溶接して、接着して、又は金属バンド(例えば放射線不透過性マーカーバンド)を使用して作製することができる。種々の実施形態において、クリンプ点106・108は、以下に説明する方法で、コアワイヤ104上を浮動・スライドする、又はコアワイヤ104に固定することができる。
【0023】
メッシュ部分102は多様な構成に織り込むことができる。例えば、12、16、24、36、又は48のワイヤを1×1、1×2、又は他のワイヤ構成にともに織り込むことができる。
【0024】
拡張構成におけるメッシュ部分102の空隙率又は開口部のサイズは、メッシュ部分102の長さとともに変化し得る。
図3に示す実施形態において、バルブ部102Aの径方向中心部分102Cは、より低い空隙率(すなわち、より多い数のワイヤ又はより高いpic毎インチ)を有する。このため、より大きい径方向外方の力を与えるとともに、ステント12がメッシュ部分102に接触したときステント12のワイヤに絡まりにくくすることが可能な、メッシュ部分102のより強力でより補強された領域が作製される。
【0025】
他の実施形態では、バルブ部102Aの端部又は縮径領域102Bなど、この方法で強化したメッシュ部分102の他の部分を有してもよい。一実施形態において、メッシュ部分102のワイヤはニチノールを含み、約0.001インチ~0.0015インチの範囲の直径を有する。また、放射線不透過性(例えばタンタル)ワイヤは、可視度を上げるとともに編組部において堅牢性の増大した領域を提供して、重なっているステント12に対して接触力をさらに向上させるために、メッシュに含まれてもよい。また、ニチノールジャケットとタンタルコア、又はその反対のものを有する延伸充填管(dawn-filled tubing)も使用することができる。
【0026】
メッシュ部分102は多様な方法で作製することができる。例として、バルブ部102Aと類似する形状のバルブ領域と領域102Bと類似する形状の縮径領域とを有するマンドレルが、メッシュ部分形状を作製するために使用されてもよい。ワイヤをマンドレル上で織り込んだ後、形状を与えるためにヒートセットすることができる、又は予め織り込まれたメッシュの筒をマンドレル上に配置してヒートセットすることができる。
【0027】
あるいは、均一の筒径を有するマンドレルを使用して、メッシュ部分をまずそのマンドレル上で織り込むことができる。そして、メッシュ部分102をマンドレルから外して、縮径領域102Bを作製するためにひも又はマーカーバンドを所定位置に選択的に付加する。そして、その後の熱処理を行って、例えば
図3に示す形状を与える。
【0028】
一実施形態において、コアワイヤ104は、プッシャー体112の他の構成要素に対して固定位置を維持する。クリンプ点108はコアワイヤ104に固定される一方で、クリンプ点106はコアワイヤ104上を長手方向にスライド又は浮動する。編組メッシュ構造は径方向に拡張すると長さが小さくなりやすく、メッシュ部分102がカテーテル14から露出されて径方向に拡張し始めるとき長手方向にスライド可能なクリンプ点106によりメッシュ部分102の遠位端部が近位に移動することができる。
【0029】
ステント12が血管と比較して極端に過大である場合、血管壁に対する大きい径方向の力が存在して、ステント12を動けなくし得る。また、このためメッシュ部分102も動けなくなり得、これは、メッシュ部分もまた血管に対して過大であり、ゆえに血管内で又はステントのワイヤに対して動けなくなるためである。拡張形状においてメッシュ部分102が動けなくなるという状況を避けるため、コアワイヤは2つのクリンプ点106、108の間に固定マーカーバンド110を含むことができ、固定マーカーバンド110はクリンプ点106が極端に近位に短縮できないことを確実にするバックストップとして機能する。
【0030】
クリンプ点106、108のいずれか1つが固定されている・スライド可能である構成、又はクリンプ点106、108は両方とも固定されている若しくは両方ともスライド可能である状況を含む、他の実施形態も可能である。スライド可能なクリンプ点を実現するために、クリンプ点内径は、コアワイヤ径よりも少なくともわずかに大きい必要がある。一実施例において、コアワイヤは直径が約0.003インチであり得る一方で、任意のスライドするクリンプ点は約0.005~0.006インチの内径を有し得る。固定クリンプ点を作製するために、一実施例において、クリンプツール、接着剤、又は溶接を用いてクリンプ点をコアワイヤ104に機械的に取り付けることができる。
【0031】
コアワイヤ104はニチノールを含むことができる。
図4に最良に示されるように、コアワイヤ104の遠位端部は、例えば、下にあるニチノールワイヤの周りでコイル状にしたタンタル又は白金ワイヤから構成される、比較的軟質の遠位先端部114を含む。タンタル又は白金のコイル状ワイヤは可視化を支援して、どこにワイヤ104の遠位端部が配置されているかがユーザーに分かる一方、コイルは可撓性を増大させて、部分114が血管壁に当たったとき血管壁に対して動けなくならない。軟質の遠位先端部114は、
図4に示すような予め調節したJ字形状を有してもよく、又はユーザーが所定のマンドレル上でこのJ字形状を与えることができるように融合可能であってもよい。角度をなしたJ字形状は、血管分岐部を通ってシステムを誘導する際、特に有用である。この遠位先端部により、カテーテル及びステントを標的処置領域へとトラッキングする別のガイドワイヤを不必要にし得る。
【0032】
図4~
図5は、一般に、送達するときにステント12がどのようにその拡張構成をとるか、及びメッシュ部分がどのようにステントを支持して開かせるように支援可能かを示す。
図4において、ステント12はカテーテル14から解放されているところであり、ステント12の遠位部分はその拡張形状をとっている。
図5において、メッシュ部分102Aは、ステント12の近位部分に対して拡張して、ステント12の近位部分に対する足場力を与えてステントを開かせる支援をする。
図5において、メッシュ部分が1つのバルブ部102Aのみを使用しているか、又はメッシュ部分102の遠位部分のみに対応する限定的な量のステント12が露出するようにステント12が部分的にのみ配置されている。
【0033】
操作時には、
図6及び
図7に見受けられるように、医師がステント12を配置しようとする領域に又はその近傍にカテーテル14の遠位端部を前進させる。そして、カテーテル14をステント12から後退させる、又はステント12がカテーテルの内部通路から外側に押される。ステント12が患者の血管10の湾曲部分周辺に配置されると、メッシュ部分102及び特にビーズ部102Aは、径方向に拡張するとともにステント12内から外方に押して、
図7に示すようにステントを支持して開かせる。
【0034】
カテーテルは、多くの場合その遠位先端部から3センチメートルに配置された放射線不透過性マーカーバンドを含むので、ユーザーは、送達プッシャーに沿っていずれかに配置されたマーカーバンドを並べて、ステントの近位端部の位置を判定することができる。これに関して、医師は、プッシャーの長手方向位置に基づいて、ステントが十分に配置された、又はほぼ十分に配置されたときを判断することができる。
図3及び上述において、プッシャー体112に接続するマーカーバンド109と、コアワイヤ104に沿うマーカーバンド107を記載した。これらのマーカーのいずれも、カテーテルの3センチメートルマーカーとアライメントして、ステントが完全に配置されている又はほぼ完全に配置されていることを判定することができる。ステント12が十分に配置されると、プッシャー体112を近位に後退させて、メッシュ部分102をカテーテル14の通路内に戻す。
【0035】
一部の実施形態において、コアワイヤ104は、プッシャー体112の本体に対して自在に可動する。この可動コアワイヤ104により、医師は、クリンプ点106及び108の構成に対応してメッシュ部分102の拡張及び/又は縮小を手動で制御することができる。
【0036】
例として、
図8は、重なっているステント112に対して径方向の押圧力を増加させるようにメッシュバルブ部分102A径を選択的に増大させるために、コアワイヤ104がプッシャー体112から独立して移動可能である、ステント支援デバイス120のそうした実施形態を示す。この実施形態において、プッシャー体112は、その長さに沿って延びるとともにその近位端部及び遠位端部で開口する内腔を含む。コアワイヤ104は、この内腔を通ってプッシャー体112から独立して押し引きすることができ、コアワイヤ104の近位端部はユーザー・医師によってプッシャー体112から独立して操作可能である。
【0037】
近位クリンプ点108はプッシャー体112又はコアワイヤ104に固定される。近位クリンプ点108が(プッシャー体112に固定するのではなく)コアワイヤ104に固定される場合、該近位クリンプ点108は、コアワイヤを後退させるとクリンプ点が直ちにプッシャー体112に当接して、メッシュ部分102のさらなる近位への移動を防ぐように、プッシャー体112に比較的近接して配置される。遠位クリンプ点106はコアワイヤ104上を長手方向に移動可能である。コアワイヤ104は、他の固定遠位マーカーバンド122を含み、該固定遠位マーカーバンド122は、メッシュクリンプ点106の遠位にあり、コアワイヤに固定されている。ユーザー・医師がコアワイヤ104を後退させると、遠位マーカーバンド122はクリンプ点106に接触し、クリンプ点106がスライド可能なことからクリンプ点106は近位に内方に移動して、メッシュ部分102Aの径方向プロファイルを増大させ、このことは、遠位マーカー122によって加えられる押圧力のためメッシュ部分102Aが長手方向に収縮することによる。このようにして、ユーザーは、メッシュバルブ部102A径を独立して制御可能にすることでステントに加える径方向拡張力を選択的に増加させることができる。マーカーバンド110は、
図3の実施形態のように、遠位クリンプ点106がどれくらい浮動可能かを制限するバックストップ面を提供する。
【0038】
他の実施形態は、
図8のデバイス120と類似するものである。しかしながら、この実施形態において、コアワイヤ104を近位に引くことでメッシュ部分102Aのすべて又は一部をプッシャー体112内に後退可能であるように、プッシャー体112の内腔はクリンプ点106、108よりも大きい。近位クリンプ点108はコアワイヤ104上をスライド可能である一方で、遠位クリンプ点106はコアワイヤ104に固定される。コアワイヤ104を後退させることにより、近位クリンプ点108が送達プッシャー体112に入る。コアワイヤ104をさらに後退させることで、メッシュ部分102もプッシャー体112に入ることができる(そのようにできることは、メッシュ部分102と比較してプッシャー体112の内径がどれほど過大であるかに依存する)。しかしながら、メッシュ部分102の近位部分をプッシャー体112内に納めることができることによっても、ユーザーが、メッシュ部分102を重なっているステントにどれほど接触させるかをカスタマイズすることができる。
【0039】
一実施例において、コアワイヤは、メッシュ部分102のすべて又は一部がプッシャー体112内に収納される第1の後退構成をとる。そして、ユーザーはステント12を送達し、ステントの一部が開かない屈曲部でステント12が動けなくなるトラッキングの問題がある場合、ユーザーはコアワイヤを遠位に押すことで、メッシュ部分102が露出されるとともにメッシュバルブ部分102Aがステント12に接触して押して開くことができる。これは主に、この実施形態で近位クリンプ点108がスライドできることよって実現され、その理由は、このことにより、メッシュ部分102が長手方向に拡張して径方向に縮小可能になるためである。
【0040】
あるいは、この機能はまた、近位クリンプ点108がコアワイヤ104に固定されるが遠位クリンプ点106はコアワイヤ104に対してスライド可能である場合にも可能である。この構成において、コアワイヤ104をプッシャー体112内に後退させたとき、近位クリンプ点108はプッシャー体112に入り、そして、さらなるメッシュ部分102がプッシャー体112内に後退すると、メッシュ部分102は長手方向に拡張してスライド可能な遠位クリンプ点106を遠位に押し、そしてこれがメッシュ部分102の連続的な径方向の縮小・長手方向の拡張を可能にする。一方で、両方のクリンプ点106、108が固定された場合、メッシュ部分102は比較的一定の形状を有し、プッシャー体112内に適合させるために径方向に圧縮・長手方向に拡張した形状を得ることは困難になる。
【0041】
図9は、一般に前の図面のステント支援デバイスの実施形態に示す2つのバルブ部102Aの代わりに6個のバルブ部102Aを有するステント支援デバイス130を示す。メッシュ部分の一部として多くのバルブ部102Aが含まれ得ると考えられる(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以上のバルブ部)。これらのバルブ部102Aの数、長さ、及び直径は、ともに使用されている特定のステント12の長さ及び拡張径に対応するように選択することができる。
【0042】
バルブ部102Aの様々な数に加え、バルブ部102Aは多様な形状を有することができる(例えば、すべてのバルブ部が同じ形状を有する、又は色々な形状が存在する)。
図10は、球体形状132、回転楕円体133、細長い筒体134、近位に増大する円錐体形状135、近位に減少する円錐体形状136、又は近位及び遠位に減少するテーパ状円錐部分を有するダイヤモンド様形状137を含む、例のバルブ形状を示す。これらの形状は、所望の形状を有するマンドレル(例えば、
図10のメッシュ形状と同じ形状を有するマンドレル)上でメッシュ部分102を編組し、そしてその後、拡張したときの形状を与えるためにヒートセットすることによって、メッシュ部分102に与えることができる。あるいは、これらの形状は、均一で一定の形状(例えば筒状)を有するマンドレル上でメッシュ102を編組し、マンドレル上で形状をヒートセットし、メッシュ部分102を取り外し、そして形状の部分を結び留めする又は形状の部分の周りに選択的にマーカーバンドを配置して
図10に示す形状をとることによって作製することができる。
【0043】
前の実施形態では、メッシュ部分102がコアワイヤ104上に直接的に配置される、メッシュ部分102の全体にわたるコアワイヤ104を記載した。他の実施形態では、メッシュ部分102の遠位端部の近位の位置で終端するコアワイヤ104を使用することができる。この前にある終端点により、メッシュ部分にある程度の独立性を与えて、血管構造の屈曲状態に適合させ、十分にステントを拡張させるさらなる支援をすることができる。
【0044】
例として、
図11、
図12、
図13、及び
図14は、コアワイヤ104がメッシュ部分102内又はその近位で終端するにステント支援デバイス140の他の実施形態を示す。
図11を見ると、コアワイヤ104のコアワイヤ先端部分142は第1の最近位バルブ部102A内に配置されている。一実施例において、コアワイヤ先端部142は、ニチノールワイヤ又はコアワイヤ104の遠位端部の周りでコイル状にした白金又はタンタルワイヤであってもよい。他の実施例において、コアワイヤ104は、プッシャー体112の本体内で終端し、第1の最近位バルブ部102A内でコアワイヤ先端部142のみ(例えば、ニチノールワイヤ周りのコイル状白金又はタンタルワイヤ)を露出させる。この先端部分142は、
図13の拡大図に見受けられる。メッシュ部分102の近位端部は、プッシャー体112の本体に直接的に、又は近位クリンプ点108を介してプッシャー体112の本体に直ちに隣接して、固定される。
【0045】
任意的に、メッシュ部分102の遠位端部は、血管外傷を起こさずにステント12の配置を支援するために、ステント12の下でガイド面を提供する及び軟質の血管接触面を提供するように、前述した実施形態と類似する、メッシュ部分102の遠位端部に接続する遠位先端部114を含むことができる。
図14に最良に示すように、遠位先端部114は、最遠位メッシュバルブ部102A内に近位レーザー溶接ボール114Aを有する、下にあるニチノールワイヤを含む。タンタル又は白金ワイヤのコイル114Bは、ニチノールワイヤ及びメッシュ部分102の最遠位部分に巻装されている。また、白金又はタンタルワイヤのコイル114Cがニチノールワイヤに巻装され、タンタル・白金コイル114Bの一部に絡み合わせて、ニチノールワイヤの残余の遠位長さに沿って延びる。任意的に、接着剤又は溶接を先端部114の遠位端部に使用することができる。さらに、下にあるニチノールワイヤの部分を平坦化又は成形することができる。
【0046】
ステントが患者に配置されると、血栓が除去されて下流へと移動し、血管構造における下流でさらなる合併症にもたらし得ることがある。以下の記載は、ステント配置手技時に除去された血栓の採取又は捕捉に利用される実施形態を対象とする。
【0047】
図15は、ワイヤフレーム部材152が拡張バルブ部102A同士の間に延びるメッシュ部分102を使用するステント支援デバイス150の実施形態を示す。これらのワイヤフレーム部材152は、バルブ部102Aに対するさらなる構造的支援を可能にし、手技時に形成し得る凝血塊を採取・捕捉するのに利用することができる。これらのワイヤフレーム部材152は、好ましくは、メッシュ部分102を構成するものと同じ直径の又はそれよりも大きいワイヤから構成され、ワイヤフレーム部材152がメッシュ部分102とともに拡張及び収縮するように、メッシュ部分102のワイヤ、下にあるコアワイヤ104、又はそれぞれの組合せに取り付けられる。
【0048】
一実施形態において(
図15に示す)、4つの等距離ワイヤフレーム部材152が使用され、そのそれぞれは、拡張したとき、バルブ部102Aに直径が類似する外方円弧形状を形成する。しかしながら、ワイヤフレーム部材152はあるいは、メッシュ部分102周りのらせん形状、バルブ102A同士の間の直線形状、又は類似の幾何学的形状を有することができる。
【0049】
図16~
図17は、除去したした血栓を捕捉する遠位メッシュ要素を有するステント支援デバイスの実施形態を示す。
図16において、ステント支援デバイス160は、手技時に遠位保護部として機能する凹状フィルター164を含む比較的大きいメッシュバルブ部162を有するメッシュ部分102を使用しており、ステント12の配置時に除去され得る凝血塊、血栓、又は他の砕片を捕捉する。凹状フィルター164は、微細なメッシュ、布帛、ポリマーフィルム、又は類似の既知のフィルター材料から構成することができる。さらに、円形平面などの他のフィルター164形状も可能である。より大きいメッシュバルブ部162は、メッシュ部分102のワイヤから織られて、相互接続メッシュ構造を形成することができる。手技時に、メッシュバルブ部162は、ステント12より前に拡張して血管に接触するように、ステント12を超えて遠位に前進する(又はステント12の前に配置される)ことができる。
【0050】
あるいは、
図17のデバイス166に見受けられるように、メッシュバルブ部162は、メッシュ部分102とは分離して、コアワイヤ104の遠位端部近傍に固定することができる。この位置によって、ステント12の配置開始より前又はその開始時に、医師がバルブ部162及びフィルター164をより容易に配置することができる。この分離したメッシュバルブ部162は、コアワイヤ104を長手方向にスライドするように構成することができる、又はスライドするのを適所にロックすることができる。
【0051】
本明細書に開示の実施形態は、ステント12及びメッシュ部分102の送達に使用する共通送達プッシャー体112を使用している。他の実施形態では、通路を有する第1の細長い送達プッシャーに接続するステント12を使用することができる。ステント支援デバイスの第2のプッシャー体112が第1プッシャー内に配置されて、ユーザーがステントとステント支援デバイスを別に独立して動かすことができる。
【0052】
本発明はまた、誘導管、誘導管内に配置されたプッシャー体112、プッシャー体112に取り付けられた、本明細書に記載のステント支援実施形態のいずれか、並びに誘導管の遠位端部近傍及びプッシャー体112のメッシュ部分102上に配置されたステント、を含むキットも対象とすることを理解する必要がある。使用時に、医師は、誘導管をカテーテル14の近位ハブに接続し、そして(メッシュ部分102を含む)プッシャー及びステント12をカテーテル14内に前進させることができる。
【0053】
本発明は、プッシャー体112、コアワイヤ104、及びメッシュ部分102などの別の構成要素について記載しているが、これらの構成要素の1つ以上がプッシャー、ステント支援システム、又はステント支援デバイスとも考えられ得るということを理解する必要がある。
【0054】
本発明は特定の実施形態及び用途について記載しているが、当業者は、この教示から、本発明の意図から外れることなく又は本発明の範囲を超えることなくさらなる実施形態及び変形を実施可能である。したがって、本明細書の図面及び説明は本発明の理解を容易にするために一例として示され、その範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが理解される。