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特許7183165口腔内疾患関連種との凝集形成用プロバイオティクス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】口腔内疾患関連種との凝集形成用プロバイオティクス
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20221128BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20221128BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221128BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20221128BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20221128BHJP
   A23G 4/12 20060101ALN20221128BHJP
【FI】
A61K35/747
A61Q11/00
A61P1/02
A61K8/99
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A23L33/135
A61K35/744
A23G4/12
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019538588
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018051112
(87)【国際公開番号】W WO2018134256
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】17152068.7
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】CCTCC  M2016652
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM32130
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB11718
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB8816
【微生物の受託番号】CBS  CBS142430
【微生物の受託番号】CBS  CBS142431
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】500377549
【氏名又は名称】プロビ アクチボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ マルクス ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ホルムグレン ケルスティン
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】フィービヒ ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド ウィリアム
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-535226(JP,A)
【文献】特表2012-512171(JP,A)
【文献】Applied and Environmental Microbiology, 2011, Vol.77, No.23, pp.8445-8450
【文献】Applied and Environmental Microbiology, 2008, Vol.74, No.15, pp.4610-4625
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61Q 11/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯肉炎および/もしくは歯周炎の治療および/もしくは予防に使用するための、1又は複数の微生物を含む組成物であって、
前記微生物が、ラクトバチルス・デルブリッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)NS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウス(Lactobacillus salivarius)NS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウス(Streptococcus salivarius)NS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
前記微生物が、歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種の共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記微生物が、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、ポルフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)、およびフィリファクター・アロキス(Filifactor alocis)からなる群から選択される歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用される、請求項1又は2に記載の組成物であって、
但し、前記共凝集物は、ラクトバチルス・デルブリッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)と、ポルフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)との共凝集物ではないことを条件とする、
前記組成物。
【請求項4】
前記微生物が、減弱化生物であって、且つラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)及びラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記微生物又は2以上の前記微生物中の少なくとも1種の微生物が、疾患関連種の増殖に対して害活性を有し、前記微生物又は2以上の前記微生物中の1種の微生物が、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記微生物又は2以上の前記微生物中の少なくとも1種の微生物が、フィリファクター・アロキス、ユウバクテリウム・サフェヌム、およびパルビモナス・ミクラ(Parvimonas micra)からなる群から選択される1つまたは複数の疾患関連微生物の増殖に対して阻害活性を有し、前記微生物又は2以上の前記微生物中の1種の微生物が、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記微生物が、口腔内の炎症を治療および/または予防する能力更に有し、前記微生物が、ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、およびラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)からなる群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物含む、経口医薬組成物あって、前記微生物総量が、肉炎および/または歯周炎を治療および/または予防するのに十分である、前記経口医薬組成物
【請求項9】
歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防に使用するための請求項に記載の経口医薬組成物
【請求項10】
担体、賦形剤、または更なる有効成分からなる群から選択される1つもしくは複数のコンポーネントを更に含む、請求項又はに記載の経口医薬組成物
【請求項11】
前記組成物が、コーティングまたはカプセル化されている、請求項から10までのいずれか1項に記載の経口医薬組成物
【請求項12】
溶液、懸濁物、エマルジョン、タブレット、顆粒、粉末、もしくはカプセルの形態である、請求項から11までのいずれか1項に記載の経口医薬組成物
【請求項13】
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物を含む、オーラルケア製品であって、前記微生物の総量が、歯肉炎および/または歯周炎を治療および/または予防するのに十分である、前記オーラルケア製品。
【請求項14】
歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防に使用するための、請求項13に記載のオーラルケア製品。
【請求項15】
練り歯磨き、歯磨きジェル、歯磨き粉、歯洗浄液、歯洗浄フォーム、マウスウォッシュ、口内スプレー、デンタルフロス、チューインガム、およびロゼンジからなる群から選択される、請求項13または14に記載のオーラルケア製品。
【請求項16】
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物を含む、栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品であって、前記微生物の総量が、歯肉炎および/または歯周炎を治療および/または予防するのに十分であり、且つ
前記嗜好を目的とする製品が、菓子、アルコール飲料及び非アルコール飲料から選択される、
前記栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品。
【請求項17】
歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防に使用するための、請求項16に記載の栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品。
【請求項18】
請求項から12までのいずれか1項に記載の経口医薬組成物製造する方法であって、
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物、1つもしくは複数の更なるコンポーネント組み合わせるステップ
を含む方法。
【請求項19】
請求項13から15までのいずれか1項に記載のオーラルケア製品を製造する方法であって、
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物を、1つもしくは複数の更なるコンポーネントと組み合わせるステップ
を含む方法。
【請求項20】
請求項16又は17に記載の栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品を製造する方法であって、
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物を、1つもしくは複数の更なるコンポーネントと組み合わせるステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の炎症の治療および/または予防で使用される、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎を治療および/または予防するための特定の微生物またはその混合物に関する。
【0002】
特に、本発明は、歯肉炎および/または歯周炎と関連した微生物との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、ポルフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)、フィリファクター・アロキス(Filifactor alocis)、およびユウバクテリウム・サフェヌム(Eubacterium saphenum)からなる群から選択される口腔細菌種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用される微生物またはその混合物に関する。
更に、本発明は、活性な薬剤としてプロバイオティック微生物のうちの1つもしくは複数を含む経口医薬組成物、オーラルケア製品、または栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品、ならびにその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
歯肉の炎症状態は、主に歯垢の形成により誘発される。定着細菌はバイオフィルムを歯の表面に形成するが、これは食物残渣ならびに唾液のコンポーネントが存在することにより助長される。初期段階において十分に除去されなかった場合、歯の表面上のプラークフィルムは、取り除くのが非常に困難である歯石の沈着を引き起こす。歯肉縁に細菌が存在しその数が増加すると、歯肉炎として知られている歯肉の炎症が引き起こされる。罹患しやすい個体では、歯肉炎は歯周炎まで進行する可能性があり、歯周炎は、歯の喪失を引き起こすおそれがある。特に、グラム陰性菌中に存在するリポ多糖(LPS)はLPS刺激マクロファージによる非特異的免疫応答を引き起こすおそれがあり、患部組織内にプロスタグランジンE2(PEG2)および炎症促進性メディエーター、例えばインターロイキンおよびTNF-α等が放出される。炎症促進性メディエーターは、更なるPGE2および周辺組織の細胞外マトリックスを破壊する、常在性線維芽細胞由来のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の放出を誘発する。これにより、細菌が組織中により深く侵入し、そして上皮外層および歯根とは独立した炎症プロセスを促進することが可能となり、歯周ポケットの形成を引き起こす。進行する細菌よりも先に歯を支持する歯槽骨が再吸収を受け、歯が不安定となる原因となり、そして治療せずに放置すると失われる。
歯肉の進行性破壊を回避するために、口腔内の炎症性応答を初期段階のうちに抑え、または理想的には予防する必要がある。
プラークを機械的に除去するための改善した方法から強い抗菌特性を有するオーラルケア製品の使用に及ぶ多くの異なるアプローチによって、この問題への取り組みがなされている。
しかし、口腔内に存在する細菌のすべてが疾患に関連するわけではなく、多くは口腔の健康を促進することさえもある。したがって、常在菌を非特異的に根絶するのではなく、口内微生物叢の構成が健全となるようなバランスを確立することが望ましい。
正常な口腔微生物叢はきわめて複雑であり、700を超える細菌種、ならびに古細菌、菌、プロトゾア、およびウイルスが含まれる。
下部消化管の共生生物、例えば乳酸杆菌およびビフィドバクテリア等は、プロバイオティクスとして投与したときに、若干の抗炎症特性を含む腸の健康に対して有益な効果を有することが明らかにされている。
【0004】
口腔内細菌のプロバイオティック作用が一部の研究の対象とされてきたが、使用した種によって大きく変化すること、および作用は概ね無関係の効果に立脚する可能性があるので、有効なアプリケーションのための適切なパラメーターを規定するのは困難であることが判明した。
プロバイオティック作用のなかでも、疾患関連種に対する一般的な抗菌効果、歯の表面に対する細菌接着の低下または予防、ならびに抗炎症効果が文献で議論されている。
国際公開第2010/077795は、連鎖球菌および乳酸杆菌の特定の系統から選択される有益な細菌の治療有効量を含む口腔の健康を改善する組成物に関する。口内細菌叢と有益な細菌のバランスをとることによる歯肉炎およびプラークの予防が、この文脈において取り上げられている。
【0005】
ドイツ特許第20 2009 011 370 U1号によれば、歯周炎および歯肉炎を予防する能力を有するものとして、歯およびオーラルケア製品を含有するプロバイオティクスが開示されているが、同特許には、乳酸杆菌、ビフィドバクテリア、腸球菌、スポロラクトバチルス菌、および連鎖球菌を含む、非常に多様なプロバイオティック細菌が列挙されている。但し、特定の系統が記載されるわけではなく、また主張するプロバイオティック作用の機構についても更に評価されていない。
国際公開第2010/008879号は、水と接触すると活性化可能である、不活性プロバイオティックを含有する糖菓組成物を提供する。プロバイオティクスとして、異なる系統の乳酸杆菌およびビフィドバクテリアが開示されている。国際公開第2010/008879号に記載されるプロバイオティック効果には、例えば病原性細菌を抑制することによる歯肉の炎症低下が含まれる。
【0006】
欧州特許第1 852 122 A1号は、脱水された反応可能な微生物を含有する歯および歯肉用健康組成物に関する。同特許は、競合に起因して患部組織の平衡を再確立することにより、微生物は毒性の強い病原性細菌叢を退治可能であることについて説明する。国際公開第2005018342号もまた、競合効果とそれによりプロバイオティック細菌が栄養分または連結部位と競合することによって病原体のコロニー化または増生を阻害することができることに言及している。
しかし、単なる競合置換だけでなく、プロバイオティック細菌は、口外に容易にフラッシング除去される病原体との共凝集物を形成することができ、したがって病原体ローディングを低下させ得ることが立証された。
【0007】
虫歯、歯垢、および歯根膜感染症を予防または治療するための外因性乳酸菌の使用について、国際公開第00/09080号に開示されている。常在性微生物相に対する特異的結合によるコロニー化(共凝集)は記載されているが、国際公開第00/09080号に基づくプロバイオティクスの使用は、常在性微生物相の一部ではない特定の乳酸菌が、歯のペリクルに直接接着する能力を有し、したがって病原体を置換する、またはその付着を防止するという効果に立脚する。
【0008】
プロバイオティック細菌が病原体に取って代わる、または病原体バイオフィルム形成を妨げる凝集物を形成する能力について、国際公開第2012/022773号に記載されている。但し、国際公開第2012/022773号は、有効量のラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)CECT7481およびラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)CECT7480を含む、口腔の健康のためのプロバイオティック組成物と主に関連し、同組成物は特定の病原体に対する抗菌特性を有することが実証されているが、共凝集物の形成は評価されていない。
国際公開第2012028759号(欧州特許第2 612 904 A2号)は、S.ミュータンス(S.mutans)とプロバイオティック系統との共凝集物形成に基づく、口腔内感染性疾患の治療で使用されるストレプトコッカス属の抗菌性菌株を提供する。
【0009】
国際公開第2012/100991号は、口腔内の連鎖球菌と結合するバインダー微生物(乳酸菌)の使用について開示し、同微生物は次にフラッシング除去され、したがって病原体によるコロニー化およびカリエスの形成を予防する。国際公開第2012/100991号に基づく有効なバインダー微生物は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)およびラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)の特定の系統である。
【0010】
連鎖球菌との凝集物を形成するプロバイオティック細菌の効果は、先行技術において報告されているが、公知のプロバイオティック菌種について、その他の口腔細菌と凝集するその能力に関して個別に評価されたことはなかった。特に、歯周炎関連細菌、例えばポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌム等は、この文脈においてきわめて有意義であると考えられる。本発明に至るまでの多岐にわたる調査において、特定の系統が上記病原体と強く凝集することが判明し、したがって歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防で使用されるきわめて有効で活性な薬剤として特定された。注目すべきことには、定評のあるプロバイオティック細菌の密接に関係する多くの系統は、疾患関連種とほとんどまたはまったく凝集を示さない。したがって、本発明は、今や、全体的に最も有効な系統を選択し、および/または組み合わせることにより、(商業的に)利用可能なプロバイオティック細菌の使用を最適化することを可能にすることができる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、口腔内の炎症のきわめて有効な治療および/または予防において、特に歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防において使用可能である微生物またはその混合物を提供することであった。
本発明の更なる目的は、歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される種との共凝集物を形成するプロバイオティック剤として使用可能である微生物またはその混合物を提供することであった。
本発明による微生物を送達するためのオーラルケア組成物または製品、およびそのような組成物または製品を製造する方法も提供される。
【0012】
本発明の目的は、歯肉炎および/もしくは歯周炎の治療および/もしくは予防で使用される微生物又は2つ以上の微生物を含む、またはそれらからなる混合物により満たされ、微生物は、ラクトバチルス・デルブリッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)NS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウス(Lactobacillus salivarius)NS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウス(Streptococcus salivarius)NS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される。
多岐にわたるスクリーニングにより、驚くべきことに密接に関連する多くの系統が病原体との何らかの凝集を示すことができない一方、本発明による菌株は、上記列挙した凝集物を形成することが判明した。先行技術では、記載した病原体との凝集物の形成に関して、異なる菌株の有効性について評価されていない。本発明の文脈において、テストされたプロバイオティック系統について凝集インデックスが個々に決定され、オーラルケア用途において最も強力な系統を直接選択できるようにした。
【0013】
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41系統が、2016年11月17日に、BioGrowing Co.、Ltd.社(No.10666 Songze Rd.、Qingpu Shanghai 201700、中国)により、受け入れ番号CCTCC M2016652として、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)、Wuhan大学、Wuhan430072、中国において、ブダペスト条約に基づき預託された。ラクトバチルス・ファーメンタム35D系統が、2015年9月2日に、Probi AB社(Solvegatan 41、22370 Lund、スウェーデン)により、受け入れ番号DSM32130として、Leibniz Institut Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)(Inhoffenstr.7B、38124 Braunschweig、ドイツ)において、ブダペスト条約に基づき預託された。ラクトバチルス・ガセリNS8系統(NCIMB11718;受け入れ日1982年1月27日、DSMZにより預託された)、およびラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816;受け入れ日1956年10月1日、Birmingham大学により預託された)が、国立産業食品および海洋菌保存機関(National Collection of Industrial,Food and Marine Bacteria;NCIMB)(Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen AB21 9YA、英国)において、それぞれ受け入れ番号NCIMB11718およびNCIMB8816として公的に入手可能である。ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18系統およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19系統が、2017年3月8日に、NIZO Food Research BV社(Kernhemseweg2、6718 ZB Ede、オランダ)により、受け入れ番号CBS142430およびCBS142431としてCBS collection at Westerdijk Fungal Biodiversity Institute(Uppsalalaan8、3584 AD Utrecht、オランダ)においてブダペスト条約に基づき預託された。
いくつかの異なる系統を、病原体に対するその結合能力についてテストし、そして下記の実施例セクションで説明されるように、その凝集インデックスに基づきいくつかのカテゴリーに分類した。
【0014】
本発明による微生物は、好ましくは、歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用され得る。
列挙した疾患関連種は、歯周炎および関連する疾患の発症に関与することが公知であり、したがって凝集用のきわめて望ましい標的疾患関連種である。
【0015】
病原性細菌により口腔粘膜がコロニー化し、そしてプラークが形成されると、口腔内の微生物バランスがディスバイオシスとも呼ばれる有害な微生物の蓄積に偏る契機となり得る。したがって、本発明による口腔内の炎症の予防および/または治療で使用される微生物には、プラークおよびプラーク関連疾患の予防および/または治療における使用が含まれ、そして好都合には、口内からの疾患関連種の除去を促進することによって口内細菌叢が健康な状態に向かってバランスをとるのを支援する。
本発明の好ましい実施形態では、上記微生物は、減弱化または死滅微生物、好ましくは熱失活微生物、好ましくは70~100℃の間の温度で2~8分間インキュベートすることにより熱失活微生物である。
有利なことには、凝集を促進するのに必要とされる、細胞の特定の膜構造に過ぎないものとして、死滅微生物、または例えば、熱失活微生物を使用することも可能である。
【0016】
本発明の更なる態様では、本発明による微生物は、微生物がラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)であるとき、疾患関連種の増殖に対して、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、ユウバクテリウム・サフェヌム、パルビモナス・ミクラ(Parvimonas micra)、ラクノアナエロバクラム・サブレウム(Lachnoanaerobaculum saburreum)からなる群から選択される1つまたは複数の疾患関連種の増殖に対して阻害活性を更に有する。
有利なことには、本発明によるプロバイオティック系統は、抗炎症活性に付加して、下記の例で実証されるように、特定の疾患関連種に対して増殖阻害効果も示し得る。
【0017】
1つの態様では、本発明は上記列挙した微生物に関し、微生物は口腔内の炎症を治療および/または予防する能力、好ましくはインターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子(TNF)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、マトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)、およびNF-κBからなる群から選択される1つもしくは複数の炎症性因子の放出を低下させる、または阻害する能力を更に有し、微生物は、ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、およびラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)からなる群から選択される。
本発明による微生物の更なるプロバイオティック効果をカバーするために、疾患関連種との凝集物の形成とは無関係に、どのプロバイオティック系統が、異なる炎症促進因子のうちのいくつかの放出を効率的に阻害する能力を有するかが個別に明らかにされた。したがって、複数のプロバイオティック作用に関して、全体的に最も効率的な系統を選択することにより、口腔内の炎症状態の治療および/または予防するための市販のプロバイオティック系統の使用を最適化することが可能である。
【0018】
本発明の別の態様によれば、上記態様のいずれかで定義するような1つまたは複数の微生物の断片が、口腔内の炎症の治療および/または予防において、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防において、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤としての用途で使用され得る。
発明の効果を提供するには、断片(例えば、分解した細胞のデブリ)のみを含む混合物、特に微生物の膜画分で十分であるので、本発明によるプロバイオティック微生物の細胞全体を使用する必要はない。本発明の文脈において、「1つまたは複数の微生物の断片」とは、したがって好ましくは本明細書に記載する凝集効果を提供する能力を有する細胞の任意の部分または部分の組合せを意味する。
【0019】
更なる態様では、本発明は、ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物、またはその断片を含む経口医薬組成物、オーラルケア製品、または栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品とも関連し、微生物またはその断片の総量は、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成することにより、歯肉炎および/または歯周炎を治療および/または予防するのに十分であり、更に好ましくは、微生物またはその断片の総量は、いずれの場合も組成物の総質量に関して0.01~100%の範囲内、より好ましくは0.1~50%の範囲内、最も好ましくは1~10%の範囲内であり、ならびに/あるいは微生物またはその断片の総量は、1×103~1×1011コロニー形成単位(CFU)の範囲内、より好ましくは1×105~1×1010CFUの範囲内である。
当業者は、本発明による組成物または製品で使用されるプロバイオティック微生物は生物学材料を代表し、その活性はバッチ毎に異なり、および製造法または処理法にも依存し得ることを認識している。したがって、適する量は、所与の範囲内でしかるべく調節可能である。
【0020】
嗜好目的の製品は、例えば、菓子(例えば、チョコレート、チョコレートバー製品、その他のバー製品、フルーツガム、ハードボイルドスイーツ、タフィー、チューインガム、アイスクリーム)、アルコールまたは非アルコール飲料(例えば、コーヒー、茶、ワイン、ワイン含有飲料、ビール、ビール含有飲料、リキュール、スピリット、ブランデー、フルーツ含有レモネード、アイソトニック飲料、清涼飲料、ネクター、フルーツおよび野菜ジュース、フルーツまたは野菜ジュース調製物)等の享楽を目的として摂取される製品である。
【0021】
更に、本発明は、口腔内の炎症の治療および/または予防で使用される、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防で使用される、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用される上記のような組成物または製品に関する
【0022】
本発明による組成物は、担体、賦形剤、または更なる有効成分、例えば、非ステロイド系抗炎症薬、抗生物質、ステロイド、抗TNF-α抗体、またはその他の生物工学的に製造された活性な薬剤および/もしくは物質、ならびに鎮痛薬、デクスパンテノール、プレドニゾロン(prednisolon)、ポリビドン(polyvidon)ヨウ化物、クロルヘキシジン-ビス-D-グルコン酸、ヘキセチジン、ベンジダミンHCl、リドカイン、ベンゾカイン、マクロゴールラウリルエーテル、塩化セチジルピリジニウムと併用するベンゾカインまたは仔ウシ血液由来のタンパク質フリーの血液透析液と併用するマクロゴールラウリルエーテルの群由来の活性な薬剤、ならびに例えば、充填剤(例えば、セルロース、炭酸カルシウム)、可塑剤または流れ改良剤(例えば、タルカン、ステアリン酸マグネシウム)、塗料(例えば、ポリビニルアセテートフタレート(phtalate)、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレート(phtalate))、崩壊剤(例えば、スターチ、架橋式ポリビニルピロリドン)、柔軟剤(例えば、トリエチルシトレート、ジブチルフタレート)、顆粒化用(ラクトース、ゼラチン)、減速用(例えば、分散状態のポリ(メタ)アクリル酸メチル/エチル/2-トリメチルアミノメチルエステルコポリマー化剤、ビニルアセテート/クロトン酸コポリマー化剤)、圧縮用(例えば、微結晶セルロース、ラクトース)の物質、溶媒、懸濁剤または分散剤(例えば、水、エタノール)、乳化剤(例えば、セチルアルコール、レシチン)、流体力学特性修正用の物質(シリカ、アルギン酸ナトリウム)、微生物安定化用の物質(例えば、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム)、防腐剤および酸化防止剤(例えば、DL-α-トコフェロール、アスコルビン酸)、pH修正用の物質(乳酸、クエン酸)、発泡剤または不活性気体(例えば、フッ素化塩素化された炭化水素、二酸化炭素)、染料(酸化鉄、酸化チタン)、軟膏用の基本成分(例えば、パラフィン、みつろう)、ならびに文献(例えば、Schmidt, Christin. Wirk- und Hilfsstoffe fur Rezeptur, Defektur und Grossherstellung. 1999; Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart oder Bauer, Fromming Fuhrer. Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie. 8. Auflage, 2006. Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart)に記載されているようなその他の物質等からなる群から選択される1つもしくは複数のコンポーネントを更に含み得る。
本発明による組成物または製品は、コーティングまたはカプセル化される場合もある。
【0023】
本発明による組成物のカプセル化は、例えば、水と接触した際の制御放出、または長期にわたる持続放出を可能にする長所を有し得る。更に、組成物を分解から保護することができ、製品の寿命を改善する。有効成分をカプセル化する方法は、当技術分野において周知されており、いくつかのカプセル化材料、ならびにそれらを具体的要件に基づきどのように組成物に適用するか、その方法について利用可能である。
更に、本発明による組成物または製品は、溶液、懸濁物、エマルジョン、タブレット、顆粒、粉末、またはカプセルの形態であり得る。
本発明による組成物または製品は、練り歯磨き、歯磨きジェル、歯磨き粉、歯洗浄液、歯洗浄フォーム、マウスウォッシュ、口内スプレー、デンタルフロス、チューインガム、およびロゼンジからなる群から選択され得る。
【0024】
そのような組成物または製品は、研磨システム(研磨および/またはポリッシングコンポーネント)、例えばシリケート、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、および/またはヒドロキシルアパタイト等、界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシンナトリウム、および/またはコカミドプロピルベタイン等、保水物質、例えばグリセロールおよび/またはソルビトール等、増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、カラゲナン、および/またはLaponite(登録商標)、甘味料、例えばサッカリン等、不快な味覚的印象に対するアロマおよび味覚補正剤、味覚修正物質(例えば、イノシトールホスフェート、ヌクレオチド、例えば、グアノシンモノホスフェート、アデノシンモノホスフェート、またはその他の物質、例えば、グルタミン酸ナトリウムまたは2-フェノキシプロピオン酸)、清涼化剤、例えばメントール誘導体等(例えば、L-メンチル(mentyl)ラクテート、L-メンチルアルキルカーボネート、メントンケタール)、イシリンおよびイシリン誘導体、安定剤および活性な薬剤、例えばフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、二フッ化スズ、四級アンモニウムフッ化物、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、ピロリン酸スズ、スズ二塩化物、異なるピロリン酸塩の混合物、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、過酸化水素等、アロマ物質、炭酸水素ナトリウム、および/または臭覚補正剤を含有し得る。
【0025】
チューインガムまたはデンタルケアチューインガムは、例えば、欧州特許第0 242 325号、米国特許第4,518,615号、同第5,093,136号、同第5,266,336号、同第5,601,858号、または同第6,986,709号に例として記載されているようなエラストマー、例えばポリビニルアセテート(PVA)、ポリエチレン、(低または中分子)ポリイソブタン(PIB)、ポリブタジエン、イソブテン/イソプレンコポリマー、ポリビニルエチルエーテル(PVE)、ポリビニルブチルエーテル、ビニルエステルとビニルエーテルのコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)、または例えばビニルアセテート/ビニルラウレート、ビニルアセテート/ビニルステアレート、またはエチレン/ビニルアセテートに基づくビニルエラストマー、および記載されているエラストマーの混合物を含むチューインガム基材を含み得る。更にチューインガム基材は、更なる配合物、例えば(無機の)充填材(filers)、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(silicone dioxide)、タルカン、酸化アルミニウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、水酸化マグネシウム、およびその混合物、可塑剤(例えば、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、酢酸エチル、ジアセチン(グリセロールジアセテート)、トリアセチン(グリセロールトリアセテート)、およびトリエチル(trietyhl)シトレート)、乳化剤(例えばリン脂質、例えばレシチンならびに脂肪酸のモノおよびジグリセリド、例えばグリセロールモノステアレート等)、酸化防止剤、ワックス(例えば、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、微結晶性ワックスおよびポリエチレンワックス)、脂肪または脂肪油(例えば、硬化した(水素付加した)植物性または動物性脂肪)、およびモノ、ジまたはトリグリセリドを含有し得る。
【0026】
最後に、本発明は、上記のような経口医薬組成物、オーラルケア製品、または栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品を製造する方法であって、
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物、またはその断片を、1つもしくは複数の更なるコンポーネント、好ましくは担体、賦形剤、または更なる有効成分からなる群から選択される1つもしくは複数のコンポーネントと組み合わせるステップ
を含む方法とも関連する。
【0027】
本発明の文脈において、本明細書に記載の微生物または混合物を対象/患者に対して、好ましくはそれを必要としている対象/患者に対して、好ましくは炎症を治療または予防する、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎を治療または予防するのに十分な量で投与するステップを含む、特に口腔内の炎症を治療および/または予防する(本明細書に記載するように)ために、対象または患者をそれぞれ治療する方法についても本明細書に記載される。
下記の例は、範囲を制限するように意図することなく本発明を例証するために追加される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】共凝集アッセイ法における、疾患関連細菌のタイプ系統に対する表示のプロバイオティクスの凝集力を示す図である。結果は、病原菌とプロバイオティック細菌を同時インキュベーションすると、凝集インデックス(%)として表される総光学濃度が減少することを特徴づけている。凝集インデックス[%]=(OD合計-OD上清/OD合計)×100;OD合計=OD標的系統+ODプロバイオティック系統。x軸上に示す疾患関連細菌の系統毎に、左から右に向かってラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)に対応するカラムによって凝集インデックスを表わす。
図2】共凝集アッセイ法における、野生型(wt)系統の疾患関連フィリファクター・アロキスおよびタイプ系統のフィリファクター・アロキス(ATCC35896T)に対する表示のプロバイオティクスの凝集力を示す図である。結果は、病原菌とプロバイオティック細菌を同時インキュベーションすると、凝集インデックス(%)として表される総光学濃度が減少することを特徴づけている。凝集インデックス[%]=(OD合計-OD上清/OD合計)×100;OD合計=OD標的系統+ODプロバイオティック系統。x軸上に示す野生型(wt)系統の疾患関連フィリファクター・アロキスおよびタイプ系統のフィリファクター・アロキス(ATCC35896T)ぞれぞれについて、ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)(左側カラム)およびラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)(右側カラム)に対応する凝集インデックスを表わす。
図3】共凝集アッセイ法における、野生型(wt)系統の疾患関連ポルフィロモナス・ジンジバリスおよびタイプ系統のポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC33277T)に対する表示のプロバイオティクスの凝集力を示す図である。結果は、病原菌とプロバイオティック細菌を同時インキュベーションすると、凝集インデックス(%)として表される総光学濃度が減少することを特徴づけている。凝集インデックス[%]=(OD合計-OD上清/OD合計)×100;OD合計=OD標的系統+ODプロバイオティック系統。凝集インデックスは、プロバイオティクスのラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)のそれぞれについて、左から右に向かってグループ化されたカラムにより表わされ、そして各グループ内では、各カラムはポルフィロモナス・ジンジバリス系統に対応し、それぞれ左から右に向かってATCC33277T、1807(wt)、2836(wt)、7681(wt)、2103(wt)、および9066(wt)を表す。
図4】共凝集アッセイ法における、野生型(wt)系統の疾患関連ポルフィロモナス・ジンジバリスおよびタイプ系統のポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC33277T)に対する、表示の生存または減弱化プロバイオティクスの凝集力を示す図である。結果は、病原菌とプロバイオティック細菌を同時インキュベーションすると、凝集インデックス(%)として表わされる総光学濃度が減少することを特徴づけている。凝集インデックス[%]=(OD合計-OD上清/OD合計)×100;OD合計=OD標的系統+ODプロバイオティック系統。ポルフィロモナス・ジンジバリスの各系統、ATCC33277T、1807(wt)、2836(wt)、7681(wt)、2103(wt)、および9066(wt)を左から右に向かってy軸上に示し、そのそれぞれについて、生存ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)(左側カラム)および減弱化ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)(右カラム)、ならびに生存ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)(左側カラム)、および減弱化ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)(右側カラム)に対応する凝集インデックスを交互に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(例1)
プロバイオティック系統の培養および取り扱いを規定する
最適な増殖条件および採取ポイントを特定するために、ならびにスクリーニングされるプロバイオティック細菌についてコロニー形成単位(CFU)を決定するために、最初に、対数期および増殖期の終期を決定した。
【0030】
バクテリアの増殖
凍結した(-80℃)プロバイオティックストックを4℃、オーバーナイトで解凍し、そして無菌の9%NaCl溶液、6mlを、細菌、1.2mlに翌朝添加した。サンプルを遠心分離し(5分、5000rpm)、上清を廃棄し、ペレットを9%NaCl、8mlで洗浄し、そして再度5000rpmで5分間遠心分離した。ペレットを次に9%NaCl、1.2ml中で再懸濁し、そしてサンプル、1mlを37℃に加温した培地(MRS Bouillon、Carl Roth KG社、Karlsruhe)、50mlに添加し、そして37℃においてインキュベートした。インキュベーションを50mlの無菌のポリプロピレンチューブ(Greiner社)内で実施し、そして異なる時点においてプローブを採取して増殖曲線を評価した。
【0031】
ODの決定
ODを決定するために、細菌懸濁物、500μlを取り出し、そして1.5ml-PS-キュベット(Brand社)中、MRS Bouillon、1ml内で稀釈した。ODの決定を600nm(ThermoScientific社、Helios Epsilon)において実施し、MRS Bouillon、1.5mlをブランクとして使用した。
【0032】
CFUの決定
CFUを決定するために、細菌を稀釈し(1:10.000.000、1:50.000.000、および1:100.000.000)、MRS-寒天プレート(MRS寒天、X924、Carl Roth社)上に播種し、そして37℃において2日間インキュベートした。増殖したコロニーを次にカウントし、そしてCFUを計算した。
【0033】
細菌は、始めから対数期に至り、プラトー期に到達し始める7~8時間まで続いた。播種した細菌の量によって曲線の形状が変化することはない。対数期内の細菌を採取するために、5時間を最も急激な増殖期に当たる時点として選択し、そして対数期の終期において細菌を採取するために、7時間を選択した。
【0034】
(例2)
プロバイオティック系統と口腔疾患関連細菌との共凝集
スクリーニングは、独自開発のOASSYS(登録商標)共凝集法に基づいた。標的系統およびプロバイオティック系統を特別な増殖条件において培養し、採取、洗浄し、そして同時インキュベートした。系統の挙動を以下のようにモニタリングした:
a)0~3(フロキュレーション無し/濁りのある上清で「0」、および多量のペレット/透き通った上清では「3」)にグレード化したフロキュレーションの外観については巨視的に。
b)適用した細菌細胞のうち、同時インキュベーション後に凝集した細菌細胞の割合(%)を表わす凝集インデックス(凝集率(%))の見積りにより。凝集が生じた場合には、軽く遠心分離すれば凝集物がウェル底部に沈降し、その結果、系統間で相互作用が生じなければ上清の光学濃度は不変であるが、それよりも上清の光学濃度(600nmにおいて測光法により測定される)が減少する。このアプローチは、凝集イベントの正確な定量化を可能にする。
凝集インデックスを、式:
【数1】
OD(合計)=OD(標的系統)+OD(プロバイオティック系統)
に基づき計算した。
テストした系統を、次にその凝集インデックスに基づき5つのカテゴリーに分類した(表1)。凝集インデックスが低くければ、安定な相互作用および細胞間の凝集のグレードが低いことを示唆する一方、凝集インデックスが高ければ、高い凝集能力および同時インキュベーション後に浮遊細胞がほとんどまたはまったく残っていないことを示唆する。本発明の文脈において、本発明に基づき使用される微生物は、(本明細書に記載するように)疾患関連微生物に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%の凝集インデックスを示すことが好ましい。
【0035】
【表1】
c)(任意選択的)光学顕微鏡;目視可能なフロキュレーションが観察され、選択された系統を光学顕微鏡により分析し写真撮影した。
【0036】
標的系統の培養および特徴付け
標的細菌のユウバクテリウム・サフェヌム、タンネレラ・フォーサイシア(Tanarella forsythia)、フィリファクター・アロキス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、およびポルフィロモナス・ジンジバリスの培養および取り扱いに関する微生物学的方法を規定および適合させた。
【0037】
標的系統をブロス中の細菌懸濁物として送達し、寒天プレートからフラッシュし、そしてクライオチューブ内に収集した。標的系統を懸濁培養物として培養するための最も適する増殖培地を確立するために、様々な培地、例えばBHI(ブレーンハートインフュージョン)、TYP(トリプトン-酵母エキス-ペプトン)、FAB(嫌気性細菌培養液)等を、場合によってはアルギニン、システイン、ビタミンK、およびヘミンを補充して調製し、テストした。最適な増殖条件を、P.ジンジバリス、P.エンドドンタリス、およびF.アロキスについて確立した。しかし、T.フォーサイシアおよびE.サフェヌムの培養のための適する液体培地を見出すことはできず、したがってこれらの系統は、固体培地(ウマ血液およびN-アセチルムラミン酸が補充された嫌気性寒天培地)上で増殖させるように適合させた。後続するアッセイのために、細胞材料をプレートから採取した。この培養の代替法では、細胞材料の収率が低く、限定された数のスクリーニング実験しか実施することができなかった。したがって、T.フォーサイシアのスクリーニングを、その他の疾患関連種(F.アロキス、P.ジンジバリス、およびP.エンドドンタリス)に対するスクリーニングにおいて陽性の共凝集能力をすでに示したプロバイオティック系統に絞った。非常に増殖が遅く不良なため、E.サフェヌムをスクリーニングから完全に除外した。
【0038】
スクリーニング
共凝集アッセイ法を24ウェルプレート内で実施した。標的系統およびプロバイオティック系統を培養し、数回洗浄し、そして同時インキュベートした。更に、分析したプロバイオティック系統および標的系統の両方の自己凝集能力をテストした。この目的のために、標的系統およびプロバイオティック系統を単独でインキュベートし、そして同時インキュベーションの場合と同様に、同一のパラメーター(上清内の巨視的な観察および光学濃度測定)を記録した。特定の系統の共凝集能力についてより良い全体像が描けるように、またヒットセレクションが得やすくなるように、プロバイオティック系統を、その凝集インデックスに基づきいくつかのカテゴリーに分類した(表1も参照)。凝集インデックスが高いいくつかのサンプル内に凝集物が存在することを、顕微鏡分析により確認した。
【0039】
60を超える系統をスクリーニングし、そのうちの系統、ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)が、少なくとも1つの標的系統について60%を超える凝集インデックスを示した。
テストした疾患関連系統に関するプロバイオティック系統の凝集力を、図1~4に示す。プロバイオティック系統に関する巨視的な共凝集および凝集カテゴリーのグレーディングを表2および表3に示す。
【0040】
表2は、巨視的に評価された共凝集アッセイ法における、野生型(wt)系統の疾患関連フィリファクター・アロキスおよびタイプ系統のフィリファクター・アロキス(ATCC35896T)に対する表示のプロバイオティクスの凝集力を示す。フロキュレーションは、フロキュレーション無しで「0」、および多量のペレットまたは透き通った上清では「3」としてグレード化される。更に、同表は、アッセイ結果の解釈をより容易にするために、凝集カテゴリー内の凝集インデックスについて、そのグレーディングを示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表3は、巨視的に評価される共凝集アッセイ法における、野生型(wt)系統の疾患関連ポルフィロモナス・ジンジバリスおよびタイプ系統のポルフィロモナス・ジンジバリス(ATCC33277T)に対する表示のプロバイオティクスの凝集力を示す。フロキュレーションは、フロキュレーション無しで「0」、および多量のペレットまたは透き通った上清では「3」としてグレード化される。更に、同表は、アッセイ結果の解釈をより容易にするために、凝集カテゴリー内の凝集インデックスについて、そのグレーディングを示す。
【表3】
【0043】
(例3)
疾患関連細菌に対するプロバイオティック系統の阻害活性
歯周炎関連口腔細菌種(インジケーター系統)に対する選択されたプロバイオティック系統、特にL.サリヴァリウスNS13の阻害活性を決定した。インジケーター系統は、
・ポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277
・ポルフィロモナス・エンドドンタリスATCC35406
・タンネレラ・フォーサイシアATCC43037
・フィリファクター・アロキスATCC35896
・ユウバクテリウム・サフェヌムATCC49989
・パルビモナス・ミクラATCC33270
・ラクノアナエロバクラム・サブレウムATCC33271
であった。
遅延式アンタゴニズム法を三回繰り返して実施した。テスト系統を血液寒天上にストリークとして24時間または48時間増殖させ、次にクロロホルムへの曝露により死滅させた。インジケーター系統をクロスストリークし、そして最長72時間インキュベートした。
【0044】
L.サリヴァリウスNS13が、表4に示すように複数のインジケーター系統に対して活性を有した:
【表4】
【0045】
(例4)
プロバイオティックロゼンジまたはコンプリメイト
【表5】

製造方法:
・コンポーネント1および6を、真空コンパートメントドライヤー内で50℃および最大圧力10ミリバールにおいて16時間乾燥する。
・すべてのコンポーネントを正確に秤量する。
コンポーネント1、2、3、4、および5を一つにまとめ、徹底混合する(ブロックA)。プロバイオティック材料は、1グラム当たり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥された形態で適用する。
・ブロックAをその後コンポーネント6に添加し、5分間徹底混合する。
・タブレットプレスEK0(Korsch AG社、ベルリン)において15~20kNの調整後圧力で粉末混合物を圧縮してタブレットにする。
目標パラメーター:
〇タブレット直径:20mm
〇タブレット質量:2.0g
・密閉されたアルミニウムサシェ内、RTにおいて保管する。ロゼンジ5個毎に1gの乾燥剤(真空コンパートメントドライヤー内、105℃で3時間保管することにより活性化される)を除湿用として使用する。
【0046】
(例5)
粉末歯磨き剤
【表6】
【0047】
製造方法:
・コンポーネント7を、真空コンパートメントドライヤー内、50℃および最大圧力10ミリバールにおいて16時間乾燥する。
・すべてのコンポーネントを正確に秤量する。
・コンポーネント1、2、3、および4を一つにまとめ、共に徹底混合する(ブロックA)。
・コンポーネント5および6を、必要な場合には一つにまとめて徹底混合する(ブロックB)。プロバイオティック材料は、1グラム当たり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥された形態で適用する。
・ブロックAおよびBを、その後1つにまとめて共に徹底混合する。
・混合物をコンポーネント7に添加し、そして5分間混徹底合する。
・粉末混合物を0.5gの部分に形成し、部分毎に1gの乾燥剤(真空コンパートメントドライヤー内、105℃で3時間保管することにより活性化される)を共存させて、密閉されたアルミニウムサシェ内、RTで保管する。
【0048】
(例6)
粉末歯磨き剤
【表7】
【0049】
製造方法:
・コンポーネント6、9、および10を、真空コンパートメントドライヤー内、50℃および最大圧力10ミリバールにおいて16時間乾燥する。
・すべてのコンポーネントを正確に秤量する。
・コンポーネント1、2、3、4、5、および6を一つにまとめ、共に徹底混合する(ブロックA)。
・コンポーネント7および8を一つにまとめ、共に徹底混合する(ブロックB)。プロバイオティック材料は、1グラム当たり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥された形態で適用する。
・ブロックAおよびBをその後1つにまとめ、共に徹底混合する。
・コンポーネント9および10を一つにまとめ、共に徹底混合する(ブロックC)。
・2つの混合物(ブロックA/BおよびブロックC)を一つにまとめ、5分間徹底混合する。
・タブレットプレスEK0(Korsch AG社、ベルリン)において15~20kNの調整後圧力で粉末混合物を圧縮してタブレットにする。
目標パラメーター
〇タブレット直径:9mm
〇タブレット質量:0.3g
・密閉されたアルミニウムサシェ内、RTにおいて保管する。タブレット3個毎に1gの乾燥剤(真空コンパートメントドライヤー内、105℃で3時間保管することにより活性化される)を除湿用として使用する。
【0050】
(例7)
チューインガム
【表8】
【0051】
製造方法:
・コンポーネント2を、真空コンパートメントドライヤー内、50℃および最大圧力10ミリバールにおいて16時間乾燥する。
・すべてのコンポーネントを正確に秤量する。
・コンポーネント1をチューインガムラボニーダー内で45~59℃に調節し、均質な塊が得られるまで加熱混練する。加熱は混合プロセス全期間を通じて継続する。
・コンポーネント2、3、および4をその後添加し、そして混合物が均質となり、粉末がもはや目視可能とならなくなるまで混練する。
・処方に基づき、コンポーネント6をコンポーネント5(ブロックC)またはコンポーネント7(ブロックD)中に組み込む。プロバイオティック材料は、1グラム当たり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥された形態で適用する。コンポーネントを均一な懸濁物が得られるまで混合する。
・最初に、ブロックCをチューインガムの塊に添加し、そして均質な塊が得られるまで再度混練する。
・最後に、ブロックDをしかるべく処理する。添加後、組成物を均一なチューインガムの塊が得られるまで混練しなければならない。
・塊をミキサーから取り出し、エンボシングセット「スラブ」を使用して、エンボス加工ローラーによりミニスティックに成形する。
・密閉されたアルミニウムサシェ内、RTにおいて保管する。チューインガム7個毎に1gの乾燥剤(真空コンパートメントドライヤー内、105℃で3時間保管することにより活性化される)を除湿用として使用する。
【0052】
(例8)
プロバイオティックビーズレット
【表9】
【0053】
製造方法:
アルギネートビーズレット沈殿用の塩化カルシウム浴の作製:
・蒸留水および塩化カルシウムから、2%塩化カルシウム溶液を作製する。CaCl2が完全に溶解するように注意を払わなければならない。
アルギネート溶液の作製(アルギネートの代わりに、ペクチンまたはゲランガムも使用され得る):
・バッチサイズに適するスターラーを備えた反応槽に水を供給する。
・スターラーを稼働させ、高レベルで撹拌しながら、アルギネート、アラビアゴム、小麦繊維、およびプロバイオティックの各量を添加し、ならびに必要とされるゲランガムを添加してもよい。
・混合物を撹拌しながら80℃まで加熱し、この温度に5分間保つ-このステップ期間中に、ゲル形成コンポーネントを溶解する。
・その後、加熱を停止し、高温のゲル溶液を、塊がなくなるまで少なくとも30分間更に撹拌する。
・その後、溶液を撹拌しながら冷却により39~43℃まで冷やす。
・更に別の容器内に、アロマおよび色素を必要であれば供給し、そしてアロマが使用されない場合には徹底混合し、色素はグリセロールと共に混合する。
・色素分散物を均質に混合したら、これをアルギネート溶液と共にバッチ容器に添加する。アルギネート溶液の量の約10%の水を用いて混合容器を数回洗浄し、そして分散物に添加する。
・アルギネート分散物を更に少なくとも5分間撹拌する。
・その後、バッチを少なくとも15分間、低速で更に撹拌して、存在する可能性がある空気を取り除く。
【0054】
ビーズレットを沈殿させるための塩化カルシウム溶液へのアルギネート溶液の滴下:
・アルギネート分散物を、2つの出口を有するしっかりと密閉可能な圧力安定型反応槽に移す。一方の出口に加圧空気を適用する。第2の出口はチューブを経由して滴下ユニットのノズルに繋がっている。
・アルギネート溶液の温度が約45℃に達するように、反応槽を加熱プレート上で温度調節する。溶液を、マグネットスターラーを用いて軽く撹拌する。
・反応槽に圧力を適用した後、アルギネート溶液は、振動子により振動するように設定されたノズルに向かって押される。圧力と振動子の周波数を適合させることにより、ノズル先端において得られる液滴のサイズを調整することができる。
・ノズル先端においてアルギネート溶液の液滴が形成され、それは漏斗状の収集容器中に落下するが、容器内部には始めに調製された塩化カルシウム溶液が循環する。
・硬化したアルギネートビーズレットは、塩化カルシウム溶液と共に漏斗を通過し、そして篩内に収集され、収集された塩化カルシウム溶液は、滴下ユニット下方の漏斗の中にポンプ搬送されて戻り、したがってリサイクルされる。
・エアロマティックフローベッドドライヤー内、80℃の供給空気温度で、排出空気温度が45℃に達するまで、ビーズレットを乾燥する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕歯肉炎および/もしくは歯周炎の治療および/もしくは予防に使用するための微生物、或いは2つ以上の微生物を含むかまたはそれらからなる混合物であって、
前記微生物が、ラクトバチルス・デルブリッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)NS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウス(Lactobacillus salivarius)NS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウス(Streptococcus salivarius)NS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される、微生物または混合物。
〔2〕歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、ポルフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)、フィリファクター・アロキス(Filifactor alocis)、およびユウバクテリウム・サフェヌム(Eubacterium saphenum)からなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用される、前記〔1〕に記載の使用のための微生物または混合物。
〔3〕前記微生物が、減弱化または死滅微生物、好ましくは熱失活微生物、好ましくは70~100℃の間の温度で2~8分間インキュベートすることにより熱失活された微生物である、前記〔1〕または〔2〕に記載の使用のための微生物または混合物。
〔4〕前記/1つの微生物が、疾患関連種の増殖に対して、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、ユウバクテリウム・サフェヌム、パルビモナス・ミクラ(Parvimonas micra)、ラクノアナエロバクラム・サブレウム(Lachnoanaerobaculum saburreum)からなる群から選択される1つまたは複数の疾患関連微生物の増殖に対して阻害活性を(更に)有し、前記微生物が、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)である、前記〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載の使用のための微生物または混合物。
〔5〕前記微生物が、口腔内の炎症を治療および/または予防する能力、好ましくはインターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子(TNF)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、マトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)、およびNF-κBからなる群から選択される1つもしくは複数の炎症性因子の放出を低下させるまたは阻害する能力を更に有し、前記微生物が、ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、およびラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)からなる群から選択される、前記〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の使用のための微生物または混合物。
〔6〕歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防に使用するための、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用するための、前記〔1〕から〔5〕までのいずれか1項で定義する1つまたは複数の微生物の断片。
〔7〕ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物、またはその断片を含む、経口医薬組成物、オーラルケア製品、または栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品であって、前記微生物またはその断片の総量が、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成することにより、歯肉炎および/または歯周炎を治療および/または予防するのに十分であり、更に好ましくは、前記微生物またはその断片の総量が、いずれの場合も組成物の総質量に対して0.01~100%の範囲内、より好ましくは0.1~50%の範囲内、最も好ましくは1~10%の範囲内であり、ならびに/あるいは前記微生物またはその断片の総量が、1×10 3 ~1×10 11 コロニー形成単位(CFU)の範囲内、より好ましくは1×10 5 ~1×10 10 CFUの範囲内である、経口医薬組成物、オーラルケア製品、または栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品。
〔8〕歯肉炎および/または歯周炎の治療および/または予防に使用するための、好ましくは歯肉炎および/または歯周炎と関連した口腔細菌種との、特にポルフィロモナス・ジンジバリス、ポルフィロモナス・エンドドンタリス、タンネレラ・フォーサイシア、フィリファクター・アロキス、およびユウバクテリウム・サフェヌムからなる群から選択される疾患関連種との共凝集物を形成するためのプロバイオティック剤として使用するための、前記〔7〕に記載の組成物または製品。
〔9〕担体、賦形剤、または更なる有効成分からなる群から選択される1つもしくは複数のコンポーネントを更に含む、前記〔7〕に記載の組成物もしくは製品、または前記〔8〕に記載の使用のための組成物もしくは製品。
〔10〕前記組成物が、コーティングまたはカプセル化されている、前記〔7〕から〔9〕までのいずれか1項に記載の組成物もしくは製品、または前記〔7〕から〔9〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物もしくは製品。
〔11〕溶液、懸濁物、エマルジョン、タブレット、顆粒、粉末、もしくはカプセルの形態である、前記〔7〕から〔10〕までのいずれか1項に記載の組成物もしくは製品、または前記〔7〕から〔10〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物もしくは製品。
〔12〕練り歯磨き、歯磨きジェル、歯磨き粉、歯洗浄液、歯洗浄フォーム、マウスウォッシュ、口内スプレー、デンタルフロス、チューインガム、およびロゼンジからなる群から選択される、前記〔7〕から〔11〕までのいずれか1項に記載の組成物もしくは製品、または前記〔7〕から〔11〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物もしくは製品。
〔13〕前記〔7〕から〔12〕までのいずれか1項に記載の経口医薬組成物、オーラルケア製品、または栄養摂取もしくは嗜好を目的とする製品を製造する方法であって、
ラクトバチルス・デルブリッキイ亜種ラクティスLL-G41(CCTCC M2016652)、ラクトバチルス・ファーメンタム35D(DSM32130)、ラクトバチルス・ガセリNS8(NCIMB11718)、ラクトバチルス・サリヴァリウスNS13(NCIMB8816)、ストレプトコッカス・サリヴァリウスNS18(CBS142430)、およびストレプトコッカス・サリヴァリウスNS19(CBS142431)からなる群から選択される1つもしくは複数の微生物、またはその断片を、1つもしくは複数の更なるコンポーネント、好ましくは担体、賦形剤、または更なる有効成分からなる群から選択される1つもしくは複数のコンポーネントと組み合わせるステップ
を含む方法。
図1
図2
図3
図4