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特許7183169医療用ポンプ、医療用ポンプの制御方法、及び医療用ポンプシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】医療用ポンプ、医療用ポンプの制御方法、及び医療用ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20221128BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20221128BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/168 500
A61M5/172
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019544389
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2018029821
(87)【国際公開番号】W WO2019064953
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017191873
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】勝沼 隆幸
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/024385(WO,A1)
【文献】特開2009-210516(JP,A)
【文献】特開2005-275960(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/168
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ポンプであって、
通信部及びメモリを有し前記医療用ポンプに装着可能なシリンジに貼り付けられている通信器に記憶された識別子及びデータセットを読み取り可能なリーダと、
前記通信器から複数回読み取った前記識別子が一致するか判定し、複数回読み取った前記識別子が一致している場合に、前記通信器からの前記データセットの読み取りを開始させる制御部と、
前記シリンジを前記医療用ポンプに装着するための装着部と、を備え、
前記装着部は、複数の装着部品を含み、
前記制御部は、
前記複数の装着部品のうちのいずれかの装着部品に前記シリンジが装着されると、前記通信器から前記識別子を読み取らせ、
前記複数の装着部品の全て前記シリンジが装着されると、前記通信器から前記識別子を再度読み取らせる、医療用ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用ポンプにおいて、
前記制御部は、
前記医療用ポンプの送液開始時に、前記通信器から前記識別子を再度読み取らせ、
送液開始時に読み取った前記識別子が、以前に読み取った前記識別子と一致しない場合、前記医療用ポンプを送液不可モードに移行させる、医療用ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療用ポンプにおいて、
前記通信器は、RFタグである、医療用ポンプ。
【請求項4】
通信部及びメモリを有しシリンジに貼り付けられている通信器に記憶された識別子及びデータセットを読み取り可能なリーダを備える医療用ポンプの制御方法であって、
前記シリンジを前記医療用ポンプに装着するための装着部が含む複数の装着部品のうちのいずれかの装着部品に前記シリンジが装着されると、前記通信器から前記識別子を読み取ることと、
前記複数の装着部品の全て前記シリンジが装着されると、前記通信器から前記識別子を再度読み取ることと、
前記通信器から複数回読み取った前記識別子が一致するか判定することと、
複数回読み取った前記識別子が一致している場合に、前記通信器からの前記データセットの読み取りを開始させることと、を含む医療用ポンプの制御方法。
【請求項5】
通信部及びメモリを有する通信器が貼り付けられたシリンジと、医療用ポンプと、を備える医療用ポンプシステムであって、
前記医療用ポンプは、
前記通信器に記憶された識別子及びデータセットを読み取り可能なリーダと、
前記通信器から複数回読み取った前記識別子が一致するか判定し、複数回読み取った前記識別子が一致している場合に、前記通信器からの前記データセットの読み取りを開始させる制御部と、
前記シリンジを前記医療用ポンプに装着するための装着部と、を備え、
前記装着部は、複数の装着部品を含み、
前記制御部は、
前記複数の装着部品のうちのいずれかの装着部品に前記シリンジが装着されると、前記通信器から前記識別子を読み取らせ、
前記複数の装着部品の全て前記シリンジが装着されると、前記通信器から前記識別子を再度読み取らせる、医療用ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用ポンプ、医療用ポンプの制御方法、及び医療用ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプ及び輸液ポンプなどの医療用ポンプは、例えば手術室や集中治療室(ICU)等で使用される。医療用ポンプは、患者に対して抗癌剤、麻酔剤、化学療法剤、及び栄養剤などの薬剤の投与を、高い精度で比較的長時間行う場合などに用いられる。
【0003】
RFIDチップと通信可能なリーダを備える医療用ポンプが知られている。このような医療用ポンプは、シリンジに貼り付けられているRFIDチップから各種データを取得することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-221430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リーダを備える医療用ポンプは、本来、医療用ポンプに装着されたシリンジに貼り付けられているRFIDチップなどの通信器から各種データを取得する必要がある。
【0006】
しかしながら、例えば、通信器が貼り付けられたシリンジを持っているユーザの手が、医療用ポンプの近くを横切った場合などに、医療用ポンプのリーダは、医療用ポンプに装着されないシリンジに貼り付けられている通信器から各種データを取得してしまうことが起こり得る。
【0007】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、医療用ポンプに装着されないシリンジに貼り付けられている通信器から各種データを取得することを抑制することができる医療用ポンプ、医療用ポンプの制御方法、及び医療用ポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様としての医療用ポンプは、通信部及びメモリを有する通信器に記憶された識別子及びデータセットを読み取り可能なリーダと、前記通信器から複数回読み取った前記識別子が一致するか判定し、複数回読み取った前記識別子が一致している場合に、前記通信器からの前記データセットの読み取りを開始させる制御部と、を備える。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記リーダは、前記医療用ポンプに装着可能なシリンジに貼り付けられている前記通信器に記憶された前記識別子及び前記データセットを読み取り可能である。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記医療用ポンプは、前記シリンジを前記医療用ポンプに装着するための複数の装着部をさらに備え、前記制御部は、前記複数の装着部のうちの一部の装着部が前記シリンジを装着すると、前記通信器から前記識別子を読み取らせ、前記複数の装着部の全てが前記シリンジを装着すると、前記通信器から前記識別子を再度読み取らせる。
【0011】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、前記シリンジの前記医療用ポンプへの装着が完了すると、前記通信器から前記識別子を読み取らせ、前記シリンジの前記医療用ポンプへの装着が完了してから所定時間経過すると、前記通信器から前記識別子を再度読み取らせる。
【0012】
本開示の1つの実施形態として、前記医療用ポンプは、前記シリンジを前記医療用ポンプに装着するための複数の装着部をさらに備え、前記制御部は、前記複数の装着部のうちのいずれかが操作されると、所定時間周期で前記通信器から前記識別子を読み取らせ、読み取った前記識別子が所定回数以上一致すると、前記通信器からの前記データセットの読み取りを開始させる。
【0013】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、前記医療用ポンプの送液開始時に、前記通信器から前記識別子を再度読み取らせ、送液開始時に読み取った前記識別子が、以前に読み取った前記識別子と一致しない場合、前記医療用ポンプを送液不可モードに移行させる。
【0014】
本開示の1つの実施形態として、前記通信器は、RFタグである。
【0015】
本開示の第2の態様としての医療用ポンプの制御方法は、通信部及びメモリを有する通信器に記憶された識別子及びデータセットを読み取り可能なリーダを備える医療用ポンプの制御方法であって、前記通信器から複数回読み取った前記識別子が一致するか判定することと、複数回読み取った前記識別子が一致している場合に、前記通信器からの前記データセットの読み取りを開始させることと、を含む。
【0016】
本開示の第3の態様としての医療用ポンプシステムは、通信部及びメモリを有する通信器が貼り付けられたシリンジと、医療用ポンプと、を備える医療用ポンプシステムであって、前記医療用ポンプは、前記通信器に記憶された識別子及びデータセットを読み取り可能なリーダと、前記通信器から複数回読み取った前記識別子が一致するか判定し、複数回読み取った前記識別子が一致している場合に、前記通信器からの前記データセットの読み取りを開始させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る医療用ポンプ、医療用ポンプの制御方法、及び医療用ポンプシステムによれば、医療用ポンプに装着されないシリンジに貼り付けられている通信器から各種データを取得することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係る医療用ポンプシステムの概略構成図である。
図2】シリンジが装着されている状態の、本開示の一実施形態に係る医療用ポンプを示す概観斜視図である。
図3図2に示す医療用ポンプの概観正面図である。
図4図1に示すシリンジの概観斜視図である。
図5図1に示す通信器の概略構成図である。
図6図1に示す医療用ポンプの電気的な構成を示す概略図である。
図7図1に示す医療用ポンプの表示部の表示の一例である。
図8図1に示す医療用ポンプの読み取りタイミングの実施例1による動作を示すフローチャートである。
図9図1に示す医療用ポンプの読み取りタイミングの実施例2による動作を示すフローチャートである。
図10図1に示す医療用ポンプの読み取りタイミングの実施例3による動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態に係る医療用ポンプシステム1の概略構成図である。医療用ポンプシステム1は、医療用ポンプ100と、シリンジ200とを備える。シリンジ200は、医療用ポンプ100に装着可能である。シリンジ200には、通信器300が貼り付けられている。
【0021】
通信器300は、例えばRFタグである。医療用ポンプ100と、通信器300とは、例えばNFC(Near Field Communication)のような、到達距離の短い無線通信によって通信を行うことができる。
【0022】
医療用ポンプ100と通信器300との間の無線通信は到達距離が短いため、通常、医療用ポンプ100は、医療用ポンプ100に装着されているシリンジ200に貼り付けられている通信器300と通信を行う。しかしながら、例えば、シリンジ200を持ったユーザが医療用ポンプ100の付近にいる場合、医療用ポンプ100が、ユーザが持っているシリンジ200に貼り付けられている通信器300と通信可能となることも起こり得る。
【0023】
シリンジ200には、シリンジ200に充填されている薬剤に対応する情報のセット(以後、単に「データセット」とも称する)を記憶している通信器300が貼り付けられている。
【0024】
医療用ポンプ100は、医療用ポンプ100に装着されているシリンジ200に貼り付けられている通信器300から、通信器300に記憶されているデータセットを読み取る。
【0025】
医療用ポンプ100が通信器300から読み取るデータセットには、例えば、薬剤特定情報が含まれている。ここで薬剤特定情報とは、薬剤プロファイルを特定することのできる情報であり、例えば薬剤コードである。薬剤コードには、例えば、13桁の管理番号からなる所謂HOTコードなどがある。
【0026】
また、薬剤プロファイルとは、医療用ポンプ100で薬剤を投与する際の設定情報などの集まりである。薬剤プロファイルは、例えば、基準投与速度、投与速度の上限値/下限値、薬剤コード、及び薬剤カラーなどの設定情報を有する。薬剤プロファイルは、一つの薬剤についての複数の設定情報の集まりである。また、例えば数千種類の薬剤プロファイルをまとめてデータベース化したものが薬剤ライブラリである。
【0027】
医療用ポンプ100は、複数の薬剤プロファイルを含む薬剤ライブラリを記憶していてもよい。
【0028】
例えば、医療用ポンプ100が通信器300から読み取ったデータセットに薬剤特定情報が含まれている場合、医療用ポンプ100は、データセットに含まれている薬剤特定情報に対応する薬剤プロファイルに基づいて、投与に関する情報(以後、単に「投与情報」とも称する)を設定することができる。
【0029】
ここで、投与に関する情報(投与情報)とは、例えば、基準投与速度、及び投与速度の上限値/下限値などである。医療用ポンプ100は、装着されたシリンジ200に充填されている薬剤に対応した投与情報を設定することにより、該医療用ポンプ100を所有する医療機関がカスタマイズした投与情報に基づいて薬剤を投与することができる。また、医療用ポンプ100は、該医療用ポンプ100を所有する医療機関が設定した上限値より大きい、又は、下限値より小さい投与速度で、薬剤を投与することを防止することができる。
【0030】
次に、図2及び図3を参照して、本開示の一実施形態に係る医療用ポンプ100について説明する。図2は、本開示の一実施形態に係る医療用ポンプ100の概観斜視図である。図3は、本開示の一実施形態に係る医療用ポンプ100の概観正面図である。図2及び図3においては、一例として、医療用ポンプ100がシリンジポンプである場合を示している。
【0031】
医療用ポンプ100は、例えば、手術室やICU(Intensive Care Unit)、CCU(Coronary Care Unit)、及びNICU(Neonatal Intensive Care Unit)等の集中治療室等において、シリンジ200に充填された静脈麻酔薬や血管作動薬等の薬剤を持続的に患者の体内に送液するために使用される。静脈麻酔薬は、神経系に作用して鎮静効果や鎮痛効果を発揮する薬剤を含む。
【0032】
医療用ポンプ100は、シリンジ200に充填された静脈麻酔薬や血管作動薬等を含む種々の薬剤を患者の体内に送液することができる。適用可能な静脈麻酔薬の例として、プロポフォール、ミタゾラム、及びレミフェンタニル等がある。適用可能な血管作動薬の例として、エピネフリン、ノルアドレナリン、ドブタミン、ドパミン、硝酸イソソルビド、及びニトログリセリン等がある。
【0033】
以下に、医療用ポンプ100の装置構成の一例を詳細に説明する。
【0034】
図2及び図3に示すように、医療用ポンプ100は、薬剤を充填した、薬剤収納容器としてのシリンジ200のシリンジ押子202をT方向に押圧して、シリンジ本体201内の薬剤を、チューブ203及び留置針204を介して、患者Pに対して正確に送液する。このとき、シリンジ200のシリンジ本体201は、クランプ5によって医療用ポンプ100に動かないように装着されている。また、シリンジ200のシリンジ押子202は、クラッチ11によって医療用ポンプ100に装着されている。すなわち、クランプ5及びクラッチ11は、シリンジ200を医療用ポンプ100に装着するための装着部として機能する。
【0035】
医療用ポンプ100は、本体カバー2を有する。
【0036】
本体カバー2は、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されている。これにより、本体カバー2は防沫処理構造を有する。防沫処理構造は、仮に医療用ポンプ100に薬剤等がかかっても、医療用ポンプ100の内部に薬剤等が侵入することを抑制することができる。防沫処理構造を有するようにしているのは、シリンジ本体201内の薬剤がこぼれたり、医療用ポンプ100の上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着したりすることがあるためである。
【0037】
図2及び図3に示すように、本体カバー2は、上部分2A及び下部分2Bを有する。
【0038】
上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4とが配置されている。
【0039】
下部分2Bには、シリンジ設置部6と、シリンジ押子202を押すためのシリンジ押子駆動部7とが配置されている。
【0040】
表示部3は、カラー表示することができる画像表示装置である。表示部3は、例えば、カラー液晶表示装置により構成することができる。表示部3は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。表示部3は、本体カバー2の上部分2Aの左上位置であって、シリンジ設置部6とシリンジ押子駆動部7の上側に配置されている。表示部3は、タッチセンサ等の入力デバイスを備え、ユーザからの入力を受け付けてもよい。
【0041】
操作パネル部4は、本体カバー2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置されている。操作パネル部4には、電源ON/OFFボタン4A、動作インジケータ4F、及び操作ボタンが配置されている。図2及び図3には、操作ボタンとして、必要最小限の、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、及びメニュー選択ボタン4Eが配置されている例を示している。
【0042】
図2及び図3に示すように、シリンジ設置部6とシリンジ押子駆動部7は、X方向に沿って並べて配置されている。シリンジ設置部6は、シリンジ200を着脱可能にはめ込んで固定することができる。シリンジ設置部6は、複数の種類の大きさの異なるシリンジ200を固定することができる。
【0043】
図4に、シリンジ200の外観斜視図を示す。シリンジ200は、シリンジ本体201と、シリンジ押子202とを有している。シリンジ本体201は、本体フランジ209を有し、シリンジ押子202は、押子フランジ205を有している。シリンジ本体201には、薬剤の目盛210が形成されている。シリンジ本体201の出口部211には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。シリンジ200がシリンジ本体201内に予め薬剤が充填されたプレフィルドシリンジである場合、シリンジ本体201の出口部211に出口部211の開口部を封止するキャップが装着された状態で、シリンジ200が医療機関に提供される。シリンジ本体201内に予め充填される薬剤としては、プロポフォール、ミタゾラム、及びレミフェンタニル等の静脈麻酔薬や、エピネフリン、ノルアドレナリン、ドブタミン、ドパミン、硝酸イソソルビド、及びニトログリセリン等の血管作動薬がある。
【0044】
シリンジ本体201には、シリンジ200に充填されている薬剤に対応するデータセットを記憶している通信器300が貼り付けられている。シリンジ200がプレフィルドシリンジである場合、シリンジ本体201に充填された薬剤に対応する薬剤特定情報を含むデータセットを記憶したメモリを有する通信器300が予めシリンジ本体201に貼り付けられた状態で、シリンジ200が医療機関に提供される。
【0045】
図5に、通信器300の概略構成図を示す。上述のように、通信器300は、例えばRFタグである。通信器300は、通信部310と、メモリ320とを備える。
【0046】
通信部310は、医療用ポンプ100が備えるリーダ170(図6参照)と無線通信を行う。通信部310は、医療用ポンプ100と、例えばNFCのような、到達距離の短い無線通信によって通信を行う。
【0047】
メモリ320は、通信器300に固有の識別子(ID)、及び、シリンジ200に充填されている薬剤に対応するデータセットなどの情報を記憶している。メモリ320が記憶しているIDは、通信器300を識別するための情報であり、通信器300ごとに異なる情報となっている。メモリ320が記憶しているデータセットには、薬剤コードのような薬剤特定情報が含まれていてもよい。
【0048】
通信部310は、医療用ポンプ100からIDの送信要求を受信すると、メモリ320に記憶されているIDを医療用ポンプ100に送信する。また、通信部310は、医療用ポンプ100からデータセットの送信要求を受信すると、メモリ320に記憶されているデータセットを医療用ポンプ100に送信する。
【0049】
再び図2及び図3を参照して、医療用ポンプ100の装置構成について説明する。
【0050】
シリンジ設置部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5とを有している。収容部8は、シリンジ本体201を収容するために、断面がほぼ半円形形状の凹部であり、X方向に沿って形成されている。収容部8の端部の壁部分には、チューブ203を着脱可能に挟み込むためのチューブ固定部9が形成されている。
【0051】
クランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ設置部6から取り外す際には、クランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向(手前方向)に引っ張って、さらにR1方向に90度回す。この操作により、シリンジ本体201のクランプ5による固定は解除され、シリンジ200を収容部8から取り外すことができる。また、クランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ設置部6に取り付ける際には、クランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向に引っ張ってR2方向に90度回して、スプリングの力によりY2方向に戻す。この操作により、シリンジ本体201を収容部8に収容して、クランプ5により固定することができる。クランプ5により、5mL、10mL、20mL、30mL、50mLなどの様々な収容量のシリンジ200を固定することができるように、シリンジ設置部6の収容部8の右端部8Eは一部が切欠部となっている。
【0052】
シリンジ本体201が収容部8内に収容されて固定されると、シリンジ押子202がシリンジ押子駆動部7内に配置される。このシリンジ押子駆動部7は、スライダ10を有している。スライダ10に設置されているクラッチ11は、シリンジ押子202を挟み込む機構と連動しており、シリンジ押子202をスライダ10に固定する。このスライダ10は、図3に示す制御部180からの指令により、シリンジ押子202の押子フランジ205を、シリンジ本体201に対して相対的にT方向に沿って少しずつ押す。
【0053】
図2及び図3におけるX方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。
【0054】
次に、図6を参照して、図1に示す医療用ポンプ100の電気的な構成例を詳細に説明する。
【0055】
図6において、医療用ポンプ100は、全体的な動作の判断及び制御を行う制御部(コンピュータ)180を有している。この制御部180は、例えばワンチップのマイクロコンピュータである。
【0056】
制御部180は、電源ON/OFFボタン4Aと、スイッチ111とが接続されている。
【0057】
スイッチ111は、電源コンバータ部(電源部)112と、例えばリチウムイオン電池のような充電池113とを切り換えることで、電源コンバータ部112及び充電池113のいずれか一方から制御部180に電源を供給する。
【0058】
電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
【0059】
図6において、ポンプ部160は、制御部180に電気的に接続されている。ポンプ部160は、制御部180からの指令により、薬剤を患者に投与する。
【0060】
図6において、ポンプ部160には、シリンジ200の本体フランジ209が所定の位置にセットされていることを検出する本体フランジセンサ120と、シリンジ200の押子フランジ205が所定の位置にセットされていることを検出する押子フランジセンサ121とが配置されている。本体フランジセンサ120は、本体フランジ209が所定の位置にセットされているかどうかを、制御部180に通知する。押子フランジセンサ121は、押子フランジ205が所定の位置にセットされているかどうかを、制御部180に通知する。
【0061】
ポンプ部160のクランプセンサ122は、クランプ5の位置状態を検知することで、シリンジ本体201がクランプ5により確実にクランプされているかどうかを、制御部180に通知する。
【0062】
ポンプ部160のクラッチセンサ123は、クラッチ11によりシリンジ押子202がスライダ10に確実に装着されているかどうかを、制御部180に通知する。
【0063】
ポンプ部160のシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部180の指令によりモータドライバ134により駆動されると、送りネジ135を回転させてスライダ10をT方向に移動させる。これにより、スライダ10は、シリンジ押子202の押子フランジ205をT方向に押圧して、図3に示すシリンジ本体201内の薬剤を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液する。
【0064】
図6において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、及びメニュー選択ボタン4Eは、制御部180に電気的に接続されている。開始スイッチボタン4Cが押下されると送液開始の制御信号が制御部180に入力される。また、停止スイッチボタン4Dが押下されると送液停止の制御信号が制御部180に入力される。
【0065】
図6において、表示部ドライバ130は、制御部180に電気的に接続されている。表示部ドライバ130は、制御部180の指令により表示部3を駆動して種々の情報を表示部3に表示する。
【0066】
図6において、報知部131は、制御部180に電気的に接続されている。報知部131は、制御部180の指令により各種の警報内容を、音声、光、又は振動などにより告知する。また、制御部180が各種の警報内容を、表示部3への表示により告知する場合、表示部3が報知部としての機能を有してもよい。
【0067】
通信部140は、ネットワークを介して医療機関のサーバなどとデータの送受信を行う。また、通信部140は、例えばデスクトップコンピュータのようなコンピュータとローカルに接続して、データの送受信を行ってもよい。
【0068】
リーダ170は、シリンジ200に貼り付けられた通信器300の通信部310と、例えばNFCのような、到達距離の短い無線通信によって通信を行う。
【0069】
リーダ170は、通信器300に対してIDの送信要求を送信する。リーダ170は、リーダ170からの送信要求に応答して通信器300から送信されるIDを読み取る。また、リーダ170は、通信器300に対してデータセットの送信要求を送信する。リーダ170は、リーダ170からの送信要求に応答して通信器300から送信されるデータセットを読み取る。
【0070】
記憶部110は、例えば半導体メモリ及び磁気メモリ等を用いて構成されてよい。記憶部110は、医療用ポンプ100の動作に必要な種々の情報及びプログラムを記憶する。
【0071】
記憶部110は、複数の薬剤プロファイルを含む薬剤ライブラリを記憶していてもよい。記憶部110は、医療用ポンプ100を所有する医療機関によってカスタマイズされた薬剤ライブラリを記憶することができる。例えば、制御部180が、医療機関のサーバに保存されている薬剤ライブラリを、通信部140を介して記憶部110にダウンロードすることで、記憶部110は、医療機関によってカスタマイズされた薬剤ライブラリを記憶することができる。
【0072】
制御部180は、所定のタイミングで、複数回、リーダ170に通信器300のIDを読み取らせる。所定のタイミングの詳細については後述する。
【0073】
制御部180は、リーダ170が通信器300から複数回読み取ったIDが一致するか判定する。制御部180は、複数回読み取ったIDが一致している場合、リーダ170に、通信器300に記憶されているデータセットの読み取りを開始させる。制御部180は、複数回読み取ったIDが一致していない場合、リーダ170に、通信器300に記憶されているデータセットを読み取らせない。
【0074】
このように、通信器300のIDを複数回読み取り、複数回読み取ったIDが一致している場合にのみ、通信器300からデータセットを読み取ることで、医療用ポンプ100は、医療用ポンプ100に装着されないシリンジ200に貼り付けられている通信器300などからデータセットを取得することを抑制することができる。これは、例えば、ユーザがシリンジ200を持って医療用ポンプ100の付近にいる場合、ユーザの動きに伴ってシリンジ200の位置は動くため、偶然、リーダ170がIDを読み取れる位置にシリンジ200が位置することは起こり得るが、リーダ170が複数回IDを読み取る間ずっと、その位置に留まることはほとんどないからである。
【0075】
制御部180は、例えば、取得したデータセットに薬剤特定情報が含まれている場合、該薬剤特定情報に対応する薬剤プロファイルを記憶部110から読み込むことができる。制御部180は、記憶部110から読み込んだ薬剤プロファイルの情報に基づいて、投与情報などを設定する。投与情報は、上述したように、基準投与速度、及び投与速度の上限値/下限値などである。
【0076】
制御部180は、医療用ポンプ100に装着されたシリンジ200に充填されている薬剤に対応する薬剤プロファイルを読み込むと、薬剤プロファイルに含まれる情報を反映させて、表示部3の表示内容を更新する。
【0077】
図7に、制御部180が薬剤プロファイルを読み込んだ場合の表示部3の表示の一例を示す。図7に示す例では、薬剤名表示欄701、薬剤カラー表示欄702、及び投与設定表示欄703が表示される。また、メッセージがある場合、メッセージ欄704にメッセージが表示される。
【0078】
薬剤名表示欄701には、例えば、「ニトログリセリン」のような薬剤名が表示される。薬剤カラー表示欄702には、薬剤に対応して予め設定されている色が表示される。
【0079】
投与設定表示欄703には、例えば、基準投与速度及び基準流量などが表示される。図7に示す例では、基準投与速度として、1.00[μg/kg/min]が表示され、基準流量として、1.20[mL/h]が表示されている。ユーザは、必要に応じて、例えば基準投与速度を変更することが可能である。しかしながら、ユーザが設定した値が、薬剤プロファイルにおいて規定されている投与速度の上限値を上回っているか、又は下限値を下回っている場合、制御部180は、報知部131に警告を報知させる。表示部3が報知部として機能している場合、制御部180は、表示部3の表示を変更することにより、警告を報知してもよい。医療用ポンプ100は、これにより、ユーザが薬剤プロファイルにおいて規定されている投与速度の上限値より大きい、又は、下限値より小さい投与速度で、薬剤を投与することを防止することができる。
【0080】
メッセージ欄704には、制御部180が薬剤プロファイルを読み込んだ場合、例えば、「薬剤を認識しました」のようなメッセージが表示される。
【0081】
制御部180は、開始スイッチボタン4Cが押下されると、設定された投与情報に従って薬剤を患者に送液するように、ポンプ部160を制御する。
【0082】
制御部180がリーダ170に通信器300のIDを読み取らせる所定のタイミングについて、以下の実施例1~4を説明する。
【0083】
(読み取りタイミングの実施例1)
図8に示すフローチャートを参照して、読み取りタイミングの実施例1による医療用ポンプ100の動作について説明する。
【0084】
医療用ポンプ100の制御部180は、一部の装着部としての、クランプ5及びクラッチ11のうちのいずれかが、医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着したか否かを、クランプセンサ122及びクラッチセンサ123により監視している(ステップS101)。
【0085】
クランプ5及びクラッチ11のいずれも、医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着していないと判定すると(ステップS101のNo)、制御部180は、ステップS101の処理を繰り返す。
【0086】
クランプ5及びクラッチ11のうちのいずれかが、医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着したと判定すると(ステップS101のYes)、制御部180は、リーダ170に通信器300からIDを読み取らせる。例えば、制御部180は、クランプ5が医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着すると、リーダ170に通信器300からIDを読み取らせる。制御部180は、読み取った通信器300のIDを記憶部110に記憶させる(ステップS102)。
【0087】
制御部180は、全ての装着部としての、クランプ5及びクラッチ11の両方が、医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着したか否かを、クランプセンサ122及びクラッチセンサ123により監視する(ステップS103)。
【0088】
クランプ5及びクラッチ11の両方が医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着していないと判定すると(ステップS103のNo)、制御部180は、ステップS103の処理を繰り返す。
【0089】
クランプ5及びクラッチ11の両方が医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着したと判定すると(ステップS103のYes)、制御部180は、リーダ170に通信器300からIDを再度読み取らせる。制御部180は、読み取った通信器300のIDを記憶部110に記憶させる(ステップS104)。
【0090】
制御部180は、読み取った2つのIDが一致するか否かを判定する(ステップS105)。
【0091】
読み取った2つのIDが一致している場合(ステップS105のYes)、制御部180は、リーダ170に、通信器300に記憶されているデータセットの読み取りを開始させる(ステップS106)。
【0092】
読み取った2つのIDが一致していない場合(ステップS105のNo)、制御部180は、リーダ170に、通信器300に記憶されているデータセットを読み取らせない(ステップS107)。
【0093】
ステップS101及びステップS103において、クランプセンサ122及びクラッチセンサ123によって、シリンジ200の装着を判定する例を示したが、さらに本体フランジセンサ120及び押子フランジセンサ121を用いて、医療用ポンプ100に対するシリンジ200の装着を判定してもよい。例えば、ステップS101において、クランプセンサ122及び本体フランジセンサ120が、医療用ポンプ100に対するシリンジ200の装着を検出したときに、ステップS101においてYesと判定してもよい。また、ステップS103において、クランプセンサ122、クラッチセンサ123、本体フランジセンサ120及び押子フランジセンサ121の全てがシリンジ200の装着を検出したときに、ステップS103においてYesと判定してもよい。
【0094】
本実施例においては、制御部180は、全ての装着部によるシリンジ200の装着が完了する前から、リーダ170に通信器300のIDの読み取りを開始させる。これにより、医療用ポンプ100は、シリンジ200の装着の完了後、短い待ち時間で通信器300からデータセットを読み取ることができる。
【0095】
(読み取りタイミングの実施例2)
図9に示すフローチャートを参照して、読み取りタイミングの実施例2による医療用ポンプ100の動作について説明する。
【0096】
医療用ポンプ100の制御部180は、シリンジ200の医療用ポンプ100への装着が完了したか否かを、クランプセンサ122、クラッチセンサ123、本体フランジセンサ120及び押子フランジセンサ121により監視している(ステップS201)。
【0097】
クランプ5等の全ての装着部によるシリンジ200の医療用ポンプ100への装着が完了していないと判定すると(ステップS201のNo)、制御部180は、ステップS201の処理を繰り返す。
【0098】
クランプ5等の全ての装着部によるシリンジ200の医療用ポンプ100への装着が完了していると判定すると(ステップS201のYes)、制御部180は、リーダ170に通信器300からIDを読み取らせる。制御部180は、読み取った通信器300のIDを記憶部110に記憶させる(ステップS202)。
【0099】
制御部180は、ステップS202における通信器300のIDの読み取りから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS203)。
【0100】
所定時間が経過していないと判定すると(ステップS203のNo)、制御部180は、ステップS203の処理を繰り返す。
【0101】
所定時間が経過していると判定すると(ステップS203のYes)、制御部180は、リーダ170に通信器300からIDを再度読み取らせる。制御部180は、読み取った通信器300のIDを記憶部110に記憶させる(ステップS204)。
【0102】
ステップS205~S207の処理は、図8に示すステップS105~S107の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0103】
ステップS203における所定時間は、長くすると、装着されないシリンジ200を持つユーザがその間に医療用ポンプ100の近傍を離れている可能性が高くなるため、装着されないシリンジ200からデータセットを読み取る可能性を低減できるが、シリンジ200からデータセットを読み取るまでの時間が長くなる。また、所定時間は、短くすると、シリンジ200からデータセットを読み取るまでの時間を低減できるが、装着されないシリンジ200を持つユーザが医療用ポンプ100の近傍に留まっている可能性が高くなるため、装着されないシリンジ200からデータセットを読み取る可能性が高くなる。このようなトレードオフの関係があるため、ステップS203における所定時間は、両者のバランスを考慮し、100ms~1.5s程度とすることが好ましい。
【0104】
本実施例においては、制御部180は、医療用ポンプ100へのシリンジ200の装着が完了してから、リーダ170に通信器300のIDの読み取りを開始させる。これにより、医療用ポンプ100は、装着されないシリンジ200が付近にある可能性が低い状態で、シリンジ200からデータセットを読み取ることができるため、装着されないシリンジ200からデータセットを誤って読み取る可能性をさらに低減することができる。
【0105】
(読み取りタイミングの実施例3)
図10に示すフローチャートを参照して、読み取りタイミングの実施例3による医療用ポンプ100の動作について説明する。
【0106】
医療用ポンプ100の制御部180は、医療用ポンプ100にシリンジ200が装着されている状態において、一部の装着部としての、クランプ5及びクラッチ11のうちのいずれかについて、シリンジ200を外すための操作がされたかを、クランプセンサ122及びクラッチセンサ123により監視している(ステップS301)。
【0107】
クランプ5及びクラッチ11のいずれについても、シリンジ200を外すための操作がされていないと判定すると(ステップS301のNo)、制御部180は、ステップS301の処理を繰り返す。
【0108】
クランプ5及びクラッチ11のうちのいずれかについて、シリンジ200を外すための操作がされたと判定すると(ステップS301のYes)、制御部180は、リーダ170に通信器300からIDを読み取らせる。制御部180は、読み取った通信器300のIDを記憶部110に記憶させる(ステップS302)。
【0109】
制御部180は、読み取ったIDが連続して所定回数以上一致しているか否かを判定する(ステップS303)。
【0110】
読み取ったIDが連続して所定回数以上一致していない場合(ステップS303のNo)、制御部180は、所定時間経過するのを待ち(ステップS304)、その後、ステップS302の処理に戻る。すなわち、制御部180は、ステップS303において、読み取ったIDが連続して所定回数以上一致していると判定されるまで、所定時間周期で、リーダ170に通信器300からIDを読み取らせる。
【0111】
ステップS303において、読み取ったIDが連続して所定回数以上一致している場合(ステップS303のYes)、制御部180は、リーダ170に、通信器300に記憶されているデータセットの読み取りを開始させる(ステップS305)。
【0112】
ステップS304における所定時間は、例えば100ms程度であってよい。ステップS303における所定回数は、例えば10回程度であってよい。
【0113】
本実施例においては、制御部180は、交換前のシリンジ200を医療用ポンプ100から外す操作が開始されるとすぐに、リーダ170に通信器300からのIDの読み取りを開始させる。これにより、医療用ポンプ100は、交換対象のシリンジ200がリーダ170の通信可能範囲に入るとすぐに、交換対象のシリンジ200に貼り付けられている通信器300からデータセットを読み取ることができる。
【0114】
(読み取りタイミングの実施例4)
医療用ポンプ100の制御部180は、上述の読み取りタイミングの実施例1~3のいずれかのタイミングで、リーダ170に通信器300からのIDの読み取りを開始させると、そのまま継続して、所定時間周期で通信器300からIDを読み取らせてよい。制御部180は、所定時間周期で通信器300から読み取ったIDを比較して、読み取ったIDが所定回数以上一致した場合、リーダ170に、通信器300に記憶されているデータセットの読み取りを開始させてよい。
【0115】
また、制御部180は、医療用ポンプ100の送液開始時、すなわち、開始スイッチボタン4Cが押下されたときに、再度、リーダ170に通信器300からIDを読み取らせてよい。制御部180は、医療用ポンプ100の送液開始時に読み取ったIDが、それ以前に読み取ったIDと一致していない場合、医療用ポンプ100を送液不可モードに移行させてもよい。ここで、「送液不可モード」とは、ユーザによって開始スイッチボタン4Cが押下されても、送液を開始しないようにするモードである。制御部180は、送液不可モードに移行させる場合、送液不可モードに移行したことを音声などによって報知部131に報知させてもよい。
【0116】
本実施例においては、制御部180は、医療用ポンプ100の送液開始時に、再度、リーダ170に通信器300からIDを読み取らせる。これにより、医療用ポンプ100は、より確実に、医療用ポンプ100に装着されているシリンジ200に貼り付けられている通信器300からデータセットを読み取ることができる。
【0117】
(読み取りの終了)
医療用ポンプ100の制御部180は、複数回読み取ったIDが一致していると判定し、通信器300からデータセットを読み取った場合は、通信器300からのID及びデータセットの読み取り処理を終了し、以後、シリンジ200を交換するまで読み取り処理を実行しない。これにより、医療用ポンプ100は、正しいデータセットを読み取った後に、意図しないデータを読み取って上書きしてしまうことを抑制することができる。
【0118】
また、制御部180は、医療用ポンプ100に装着されているシリンジ200からデータセットが読み取れていない状態で開始スイッチボタン4Cが押下された場合は、以後の通信器300からのID及びデータセットの読み取り処理を終了してもよい。医療用ポンプ100に装着されているシリンジ200からデータセットが読み取れていない状態は、例えば、シリンジ200に通信器300が貼り付けられていない場合などに起こり得る。この場合、シリンジ200からデータセットを読み取れていないため、医療用ポンプ100は、装着されているシリンジ200に充填されている薬剤に対応する薬剤プロファイルを読み込めていない状態である。このような状態でユーザが開始スイッチボタン4Cを押下した場合は、ユーザが通信器300の貼り付けられていないシリンジ200を意図的に装着しているとみなし、制御部180は、以後の通信器300からのID及びデータセットの読み取り処理を終了する。
【0119】
また、制御部180は、ユーザが薬剤プロファイルを手動で選択した場合、及び、薬剤の投与単位を手動で変更した場合などは、以後の通信器300からのID及びデータセットの読み取り処理を終了してもよい。これにより、制御部180がシリンジ200からデータセットを読み取り、ユーザが意図的に手動でした設定を上書きしてしまうことを抑制することができる。
【0120】
このように、本実施形態に係る医療用ポンプ100において、制御部180は、通信器300から複数回読み取ったIDが一致するか判定し、複数回読み取ったIDが一致している場合に、通信器300からのデータセットの読み取りを開始させる。これにより、本実施形態に係る医療用ポンプ100は、医療用ポンプ100に装着されないシリンジ200に貼り付けられている通信器300から各種データを取得することを抑制することができる。
【0121】
また、本実施形態において、制御部180は、複数の装着部のうちの一部の装着部が医療用ポンプ100に対してシリンジ200を装着すると、通信器300からIDを読み取らせ、複数の装着部の全てがシリンジ200を医療用ポンプ100に対して装着すると、通信器300からIDを再度読み取らせてもよい。このように、制御部180が、シリンジ200の装着が完了する前から、リーダ170に通信器300からのIDの読み取りを開始させることによって、医療用ポンプ100は、シリンジ200の装着の完了後、短い待ち時間で通信器300からデータセットを読み取ることができる。
【0122】
また、本実施形態において、制御部180は、シリンジ200の医療用ポンプ100への装着が完了すると、通信器300からIDを読み取らせ、シリンジ200の医療用ポンプ100への装着が完了してから所定時間経過すると、通信器300からIDを再度読み取らせてもよい。これにより、医療用ポンプ100は、装着されないシリンジ200が医療用ポンプ100の付近にある可能性が低い状態で、シリンジ200からデータセットを読み取ることができるため、装着されないシリンジ200からデータセットを誤って読み取る可能性をさらに低減することができる。
【0123】
また、本実施形態において、制御部180は、複数の装着部のうちのいずれかが操作されると、所定時間周期で通信器300からIDを読み取らせ、読み取ったIDが所定回数以上一致すると、通信器300からのデータセットの読み取りを開始させてもよい。これにより、医療用ポンプ100は、交換対象のシリンジ200がリーダ170の通信可能範囲に入るとすぐに、交換対象のシリンジ200に貼り付けられている通信器300からデータセットを読み取ることができる。
【0124】
また、本実施形態において、制御部180は、医療用ポンプ100の送液開始時に、通信器300からIDを再度読み取らせ、送液開始時に読み取ったIDが、以前に読み取ったIDと一致しない場合、医療用ポンプ100を送液不可モードに移行させてもよい。これにより、医療用ポンプ100は、より確実に、医療用ポンプ100に装着されているシリンジ200に貼り付けられている通信器300からデータセットを読み取ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示は、医療用ポンプ、医療用ポンプの制御方法、及び医療用ポンプシステムに関する。
【符号の説明】
【0126】
1 医療用ポンプシステム
2 本体カバー
2A 本体カバーの上部分
2B 本体カバーの下部分
3 表示部
4 操作パネル部
4A 電源ON/OFFボタン
4B 早送りスイッチボタン
4C 開始スイッチボタン
4D 停止スイッチボタン
4E メニュー選択ボタン
4F 動作インジケータ
5 クランプ
6 シリンジ設置部
7 シリンジ押子駆動部
8 収容部
8E 収容部の右端部
9 チューブ固定部
10 スライダ
11 クラッチ
100 医療用ポンプ
110 記憶部
111 スイッチ
112 電源コンバータ部(電源部)
113 充電池
114 コンセント
115 商用交流電源
120 本体フランジセンサ
121 押子フランジセンサ
122 クランプセンサ
123 クラッチセンサ
130 表示部ドライバ
131 報知部
133 モータ
134 モータドライバ
135 送りネジ
140 通信部
160 ポンプ部
170 リーダ
180 制御部
200 シリンジ
201 シリンジ本体
202 シリンジ押子
203 チューブ
204 留置針
205 押子フランジ
209 本体フランジ
210 薬剤の目盛
211 シリンジの出口部
300 通信器
310 通信部
320 メモリ
701 表示部の薬剤名表示欄
702 表示部の薬剤カラー表示欄
703 表示部の投与設定表示欄
704 表示部のメッセージ欄
P 患者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10