IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーエムシー マグネティクス コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図1
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図2
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図3
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図4
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図5
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図6
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図7
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図8
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図9
  • 特許-光ディスク及び光ディスクの製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】光ディスク及び光ディスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/24024 20130101AFI20221128BHJP
   G11B 7/2534 20130101ALI20221128BHJP
   G11B 7/24047 20130101ALI20221128BHJP
   G11B 7/257 20130101ALI20221128BHJP
   G11B 7/26 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G11B7/24024
G11B7/2534
G11B7/24047
G11B7/257
G11B7/26 531
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019546984
(86)(22)【出願日】2018-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2018037058
(87)【国際公開番号】W WO2019069984
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】62/569,036
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2017224089
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510042873
【氏名又は名称】シーエムシー マグネティクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】牛嶋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】森脇 悠
(72)【発明者】
【氏名】武富 友幸
(72)【発明者】
【氏名】清野 賢二郎
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197936(JP,A)
【文献】特開2005-158162(JP,A)
【文献】特開平09-147425(JP,A)
【文献】特開平11-031337(JP,A)
【文献】特開2006-155751(JP,A)
【文献】特開2006-269037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/24024
G11B 7/2534
G11B 7/24047
G11B 7/257
G11B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の片面側にのみ記録層を有し、該基板の反対面側に貼り合せ面を有する記録基板が、一対にして貼り合された光ディスクであって、
前記記録基板が紫外線硬化型接着層を介して貼り合されており、
前記記録基板が前記基板の前記反対面側にガスバリア層を備えることを特徴とする、
光ディスク。
【請求項2】
平面視において前記ガスバリア層が前記記録層と対応する形状を有しており、
前記ガスバリア層の内径が前記記録層の内径と同等以下、及び/又は、前記ガスバリア層の外径が前記記録層の外径と同等以上である、
請求項1に記載の光ディスク。
【請求項3】
平面視において前記ガスバリア層が前記基板と対応する形状を有しており、
前記基板の内周部に前記ガスバリア層が形成されていない領域(X)、及び/又は、前記基板の外周部に前記ガスバリア層が形成されていない領域(Y)を有し、
前記領域(X)の内周端が前記基板の内周端と一致する位置に、前記領域(X)の外周端が前記基板の内周端から0.2mm以上22.5mm以下の位置にあり、
前記領域(Y)の外周端が前記基板の外周端と一致する位置に、前記領域(Y)の内周端が前記基板の外周端から0.2mm以上3.0mm以下の位置にある、
請求項1又は2に記載の光ディスク。
【請求項4】
前記ガスバリア層が、金属、金属酸化物、金属窒化物及び金属硫化物から選択される少なくとも1種の無機物からなる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項5】
前記ガスバリア層の厚みが2nm以上200nm以下である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項6】
前記ガスバリア層の屈折率が1.4以上3.0以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項7】
前記ガスバリア層の消衰係数が1以下である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項8】
前記基板がポリカーボネート樹脂からなる、
請求項1~7のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項9】
前記記録基板は波長360nmの光を透過させた際の透過率が3%以下である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項10】
前記記録層は30nm以上の厚みを有する金属層を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項11】
前記記録基板の厚みが400μm以上1400μm以下である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項12】
前記紫外線硬化型接着層の厚みが10μm以上100μm以下である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の光ディスク。
【請求項13】
基板の片面側にのみ記録層を形成し、該基板の反対面側にガスバリア層を形成して、記録基板を得る、第1工程、及び
前記記録基板を2枚用意し、前記基板の前記反対面側を貼り合せ面として、前記記録基板同士をラジカル重合系紫外線硬化型接着層を介して貼り合せる、第2工程、
を備える、光ディスクの製造方法。
【請求項14】
前記第2工程において、前記記録基板の前記記録層が形成された面から、及び/又は、前記記録基板の側面から、紫外線を照射して、前記ラジカル重合系紫外線硬化型接着層を硬化させる、
請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第2工程において、一方の前記記録基板の前記記録層が形成された面と、他方の前記記録基板の前記記録層が形成された面との両方から紫外線を照射して、前記ラジカル重合系紫外線硬化型接着層を硬化させる、
請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は両面型の光ディスク及びその製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、運用コストが低いことから、アクセス頻度が低いデータの長期保管用の記録媒体として、その大容量化が求められている。大容量の光ディスクとして、2枚の記録基板を貼り合せた両面型の光ディスクが知られている。両面型の光ディスクは、例えば、特許文献1、2に開示されているように、基板の片面側に記録層を有し該基板の反対面側に貼り合せ面を有する記録基板を、紫外線硬化型接着層を介して、一対にして貼り合せることにより作製可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-197936号公報
【文献】特開2017-174487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の新たな知見によれば、紫外線硬化型接着層を介して記録基板同士を貼り合せる場合、紫外線硬化型接着層の硬化が遅いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、基板の片面側に記録層を有し、該基板の反対面側に貼り合せ面を有する記録基板が、一対にして貼り合された光ディスクであって、前記記録基板が紫外線硬化型接着層を介して貼り合されており、前記記録基板が前記基板の前記反対面側にガスバリア層を備えることを特徴とする、光ディスクを開示する。
【0006】
「ガスバリア層」とは、上記の記録基板を構成する基板よりもガスの透過性の低い層で、記録基板から紫外線硬化型接着層へのガスの侵出を抑制可能な層をいう。ガスバリア層は有機物からなる層であっても無機物からなる層であっても有機物と無機物との混合物からなる層であってもよい。
【0007】
本開示の光ディスクにおいては、平面視において前記ガスバリア層が前記記録層と対応する形状を有しており、前記ガスバリア層の内径が前記記録層の内径と同等以下、及び/又は、前記ガスバリア層の外径が前記記録層の外径と同等以上であることが好ましい。
【0008】
本開示の光ディスクにおいては、平面視において前記ガスバリア層が前記基板と対応する形状を有しており、前記基板の内周部に前記ガスバリア層が形成されていない領域(X)、及び/又は、前記基板の外周部に前記ガスバリア層が形成されていない領域(Y)を有し、前記領域(X)の内周端が前記基板の内周端と一致する位置に、前記領域(X)の外周端が前記基板の内周端から0.2mm以上22.5mm以下の位置にあり、前記領域(Y)の外周端が前記基板の外周端と一致する位置に、前記領域(Y)の内周端が前記基板の外周端から0.2mm以上3.0mm以下の位置にあることが好ましい。
【0009】
本開示の光ディスクにおいて、前記ガスバリア層が、金属、金属酸化物、金属窒化物及び金属硫化物から選択される少なくとも1種の無機物からなることが好ましい。
【0010】
本開示の光ディスクにおいて、前記ガスバリア層の厚みが2nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0011】
本開示の光ディスクにおいて、前記ガスバリア層の屈折率が1.4以上3.0以下であることが好ましい。
【0012】
本開示の光ディスクにおいて、前記ガスバリア層の消衰係数が1以下であることが好ましい。
【0013】
本開示の光ディスクにおいて、前記基板がポリカーボネート樹脂からなることが好ましい。
【0014】
本開示の光ディスクにおいて、前記記録基板は波長360nmの光を透過させた際の透過率が3%以下であることが好ましい。
【0015】
本開示の光ディスクにおいて、前記記録層は30nm以上の厚みを有する金属層を含むことが好ましい。
【0016】
本開示の光ディスクにおいて、前記記録基板の厚みが400μm以上1400μm以下であることが好ましい。
【0017】
本開示の光ディスクにおいて、前記紫外線硬化型接着層の厚みが10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0018】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、基板の片面側に記録層を形成し、該基板の反対面側にガスバリア層を形成して、記録基板を得る、第1工程、及び、前記記録基板を2枚用意し、前記基板の前記反対面側を貼り合せ面として、前記記録基板同士をラジカル重合系紫外線硬化型接着層を介して貼り合せる、第2工程、を備える、光ディスクの製造方法を開示する。
【0019】
本開示の製造方法においては、前記第2工程において、前記記録基板の前記記録層が形成された面から、及び/又は、前記記録基板の側面から、紫外線を照射して、前記ラジカル重合系紫外線硬化型接着層を硬化させることが好ましい。
【0020】
本開示の製造方法においては、前記第2工程において、一方の前記記録基板の前記記録層が形成された面と、他方の前記記録基板の前記記録層が形成された面との両方から紫外線を照射して、前記ラジカル重合系紫外線硬化型接着層を硬化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
記録基板の貼り合せ面側にガスバリア層を設けた場合、ガスバリア層を設けなかった場合よりも、記録基板同士を貼り合せる際の紫外線硬化型接着層の硬化が速い。これは以下のメカニズムによるものと考えられる。すなわち、従来のようにガスバリア層を設けずに紫外線硬化型接着層を介して記録基板同士を貼り合せる場合、記録基板に含まれるガス(空気や水蒸気等)がアウトガスとして紫外線硬化型接着層へと侵出し、当該アウトガスが紫外線硬化型接着層の硬化反応を阻害するものと考えられる。これに対し、本開示の光ディスクにおいては、記録基板の貼り合せ面側にガスバリア層が設けられていることから、記録基板から紫外線硬化型接着層へのアウトガスの侵出を抑制可能であり、紫外線硬化型接着層の硬化が進み易いものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】光ディスクの構成の一例を説明するための概略図である。
図2】記録基板の構成の一例を説明するための概略図である。
図3】基板とガスバリア層との位置関係の一例を説明するための概略図である。
図4】記録層とガスバリア層との位置関係の一例を説明するための概略図である。
図5】光ディスクの製造方法の流れの一例を説明するための図である。
図6】光ディスクの製造方法の一例を説明するための概略図である。
図7】光ディスクの製造方法の一例を説明するための概略図である。
図8】実施例にて使用した記録基板の光線透過スペクトルを示す図である。
図9】実施例による効果を説明するための概略図である。
図10】実施例による効果を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.光ディスク100
図1に光ディスク100の構成を概略的に示す。図1(A)が平面図、図1(B)が断面図である。図1に示すように、光ディスク100は、基板1の片面側に記録層2を有し、該基板1の反対面側に貼り合せ面を有する記録基板10が、一対にして貼り合されている。また、図1に示すように、光ディスク100においては、記録基板10、10が紫外線硬化型接着層20を介して貼り合されている。図2に光ディスク100を構成する記録基板10の構成を概略的に示す。図2に示すように、記録基板10は基板1の反対面側にガスバリア層3を備える。
【0024】
1.1.記録基板10
図2に示すように、記録基板10は、基板1と、基板の片面側に設けられた記録層2と、基板1の反対面側に設けられたガスバリア層3と、を有しており、基板1の反対面側が貼り合せ面とされる。
【0025】
1.1.1.基板1
基板1は、光ディスクの基板として公知のものをいずれも採用可能である。基板1を構成する材質は、光ディスクとしての機能を確保可能な材質であればよい。例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも強度や透明性等の観点からポリカーボネート樹脂からなることが好ましい。基板1の形状は規格に応じて適宜決定すればよく、例えば平面視において中心部に穴を有する円盤状であることが好ましい。基板1の厚みは特に限定されるものではないが、強度や透明性等の観点から、例えば300μm以上1300μm以下が好ましい。下限がより好ましくは450μm以上である。
【0026】
1.1.2.記録層2
記録層2は、光ディスクの記録層として公知のものをいずれも採用可能である。記録層2は多層構造であってもよい。本開示の技術は非書換型の半透明なディスク及び書換型の不透明なディスクのいずれに対しても効果がある。非書換型の場合、記録層2は半透明な酸化物層を有する。一方、書換型の場合、記録層2は不透明な金属層を有する。特に、記録層2は30nm以上の厚みを有する金属層を含むことが好ましい。このような、分厚い金属層を有する場合でも、本開示の技術によれば紫外線硬化型接着層20を適切に硬化させることができる。例えば、本発明者の知見によれば、金属層を有する書換型の不透明なディスクにおいても、透過率が小さいながらも紫外線が金属層を透過する。このようなわずかな量の紫外線を利用して、後述の紫外線硬化型接着層20を素早く硬化させることができる。或いは、本開示の技術は光ディスクの側面から紫外線を照射する場合(図7(B)参照)にも適用可能であることから、記録層2における金属層の有無に関わらず、紫外線硬化型接着層20内に紫外線を透過させることができる。
【0027】
1.1.3.ガスバリア層3
ガスバリア層3は、記録基板10を構成する基板1よりもガスの透過性の低い層で、記録基板10から紫外線硬化型接着層20へのガスの侵出を抑制可能な層をいう。ガスバリア層3は有機物からなる層であっても無機物からなる層であっても有機物と無機物との混合物からなる層であってもよい。ガスバリア層3を構成し得る有機物としては、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。ガスバリア層3を構成し得る無機物としては、金属、金属酸化物、金属窒化物及び金属硫化物等が挙げられる。
【0028】
ガスバリア層3は、金属、金属酸化物、金属窒化物及び金属硫化物から選択される少なくとも1種の無機物からなることが好ましい。薄くとも高いガスバリア性が確保できるためである。具体的には、アルミニウム、ケイ素、チタン、ニオブ、銀およびそれら主成分とする合金などの金属;酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化テルル、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ビスマスなどの金属酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの金属窒化物;及び硫化亜鉛、二硫化モリブデン等の金属硫化物からなる群のいずれか1種以上から選択される無機物からなることが好ましい。
【0029】
中でも、ガスバリア層3は、金属酸化物及び金属窒化物から選択される少なくとも1種の無機物からなることがより好ましい。透明性に優れ、後述の紫外線硬化型接着層20へとより効率的に紫外線を透過させることができるためである。具体的には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タンタル、窒化アルミニウム、窒化ケイ素からなる群のいずれか1種以上から選択される無機物からなることがより好ましく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化スズ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素からなる群のいずれか1種以上から選択される無機物からなることが特に好ましい。
【0030】
ガスバリア層3の厚みは特に限定されるものではない。ガスバリア層3が厚いとガスバリア性に優れる一方、ガスバリア層3が薄いと透明性に優れる。ガスバリア性と透明性との両立等を考慮した場合、ガスバリア層3の厚みは2nm以上200nm以下であることが好ましい。下限がより好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上であり、上限がより好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
【0031】
ガスバリア層3の屈折率は特に限定されるものではないが、光学的な効果を一層高める観点から、基板1の屈折率に対して差が小さいことが好ましい。例えば、ガスバリア層3の屈折率は1.4以上3.0以下であることが好ましい。上限がより好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.3以下である。或いは、ガスバリア層3の屈折率と基板1の屈折率との差が1.4以下であることが好ましい。より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.7以下である。
【0032】
ガスバリア層3の消衰係数は特に限定されるものではないが、光学的な効果を一層高める観点から、消衰係数が1以下であることが好ましい。上限がより好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0033】
1.1.4.基板1とガスバリア層3との位置関係
光ディスク100においては、平面視においてガスバリア層3が基板1と対応する形状を有していることが好ましい。すなわち、図3(A)に示すように、平面視における基板1の形状が中心に穴を有する円形状である場合、ガスバリア層3の形状も中心に穴を有する円形状であることが好ましい。この場合、基板1の一部にガスバリア層3が形成されていない領域を設けることが好ましい。本発明者の新たな知見によれば、このような領域を備えることで、記録基板10と紫外線硬化型接着層20との接着強度が向上する。特に、図3(A)に示すように、光ディスク100は、基板1の内周部にガスバリア層3が形成されていない領域(X)、及び/又は、基板1の外周部にガスバリア層3が形成されていない領域(Y)を有することが好ましい。特に領域(Y)を有することがより好ましい。具体的には、図3(B)に示すように、領域(X)の内周端が基板1の内周端と一致する位置に、領域(X)の外周端が基板1の内周端から0.2mm以上22.5mm以下の位置にあり(すなわち、平面視における領域(X)の幅が0.2mm以上22.5mm以下であり)、領域(Y)の外周端が基板1の外周端と一致する位置に、領域(Y)の内周端が基板1の外周端から0.2mm以上3.0mm以下の位置にある(すなわち、平面視における領域(Y)の幅が0.2mm以上3.0mm以下である)ことが好ましい。領域(X)の外周端は基板1の内周端からより好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは4.5mm以上で、より好ましくは16.5mm以下、さらに好ましくは10.5mm以下の位置にある。領域(Y)の内周端は基板1の外周端からより好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上で、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下の位置にあり、特に好ましくは基板1の外周端から1.5mmの位置にある。
【0034】
また、基板1の一部にガスバリア層3が形成されていない領域を設ける場合、平面視における基板1の面積(A)に対するガスバリア層3の面積(A)の比(A/A)が0.66以上0.995以下であることが好ましい。また、基板1の内周部及び/又は外周部に領域(X)及び/又は領域(Y)を設ける場合、平面視における基板1の面積(A)に対する領域(X)の面積(A3X)の比(A3X/A)が0.00085以上0.24以下であることが好ましく、平面視における基板1の面積(A)に対する領域(Y)の面積(A3Y)の比(A3Y/A)が0.00675以上0.0995以下であることが好ましい。
【0035】
1.1.5.記録層2とガスバリア層3との位置関係
光ディスク100においては、平面視においてガスバリア層3が記録層2と対応する形状を有していることが好ましい。すなわち、図1~4に示すように、平面視における記録層2の形状が中心に穴を有する円形状である場合、ガスバリア層3の形状も中心に穴を有する円形状であることが好ましい。この場合、ガスバリア層3の内径が記録層2の内径と同等以下、及び/又は、ガスバリア層3の外径が記録層2の外径と同等以上であることが好ましい。すなわち、図4に示す記録層2の内径D1aとガスバリア層3の内径D2aとの関係がD1a≧D2aであり、記録層2の外径D1bとガスバリア層3の外径D2bとの関係がD2b≧D1bであることが好ましい。記録層2とガスバリア層3との位置関係をこのように調整した場合、基板からのアウトガスが紫外線硬化型接着層へ侵出することを抑制できる為、記録層を透過する僅かな紫外線にて接着層を素早く硬化させることができる。
【0036】
1.2.紫外線硬化型接着層20
紫外線硬化型接着層20は、紫外線硬化樹脂を含む。紫外線硬化樹脂の具体例は特に限定されるものではなく、一般的な紫外線硬化樹脂をいずれも採用可能である。たとえば、カチオン重合系やラジカル重合系の紫外線硬化樹脂が挙げられるが、特に、ラジカル重合系の紫外線硬化樹脂が好ましい。紫外線硬化型接着層20の厚みも特に限定されるものではなく、記録基板10、10を適切に接着可能な厚みであればよい。接着強度と硬化の容易性との両立等を考慮した場合、例えば、紫外線硬化型接着層20の厚みを10μm以上100μm以下とすることが好ましい。下限がより好ましくは20μm以上、上限がより好ましくは80μm以下であり、特に好ましくは40μmである。紫外線硬化型接着層20は記録基板10の貼り合せ面の全面に設けられていることが好ましい。
【0037】
1.3.その他
上述の通り、記録基板10は非書換型の半透明なディスクであっても書換型の不透明なディスクであってもよいが、本発明の効果を顕著に奏することから書換型の不透明なディスクであることが好ましい。具体的には、記録基板10は、波長360nmの光を透過させた際の透過率が3%以下であることが好ましい。より好ましくは1%以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは0.01%以上である。本開示の技術によれば、記録層2が不透明で、記録基板10の紫外線の透過率がわずかであっても、紫外線硬化型接着層20を適切に硬化させることができる。
【0038】
記録基板10の厚み(基板1、記録層2及びガスバリア層3を含む全体としての厚み)は特に限定されるものではないが、光学特性、強度等の観点から、例えば400μm以上1400μm以下であることが好ましい。下限がより好ましくは550μm以上である。
【0039】
尚、記録基板10は、基板1、記録層2及びガスバリア層3以外に、上記課題を解決できる範囲で、何らかの層を備えていてもよい。例えば、記録層2を保護するためのカバー層、読み取り面のキズ・汚れ防止の為のハードコート層、ガスバリア層3と紫外線硬化型接着層20との接着性を向上させるための層等である。
【0040】
2.光ディスクの製造方法S10
図5に示す光ディスク100の製造方法S10は、基板1の片面側に記録層2を形成し、基板1の反対面側にガスバリア層3を形成して、記録基板10を得る、第1工程S1、及び、記録基板10を2枚用意し、基板1の反対面側を貼り合せ面として、記録基板10、10同士をラジカル重合系紫外線硬化型接着層20を介して貼り合せる、第2工程S2を備える。
【0041】
2.1.第1工程S1
第1工程S1においては、基板1の片面側に記録層2を形成し、基板1の反対面側にガスバリア層3を形成して、記録基板10を得る。記録層2とガスバリア層3との形成順序は特に限定されるものではなく、どちらを先に形成してもよい。
【0042】
基板1の片面側に記録層2を形成する方法については公知であることから、ここでは詳細な説明を省略する。一方、基板1の反対面側にガスバリア層3を形成する方法については、ガスバリア層3の材質に応じて最適な方法を選択すればよい。例えば、ガスバリア層3として有機物からなる層や有機物と無機物との混合物からなる層を設ける場合、当該有機物等を含む塗工液を基板1の反対面側に塗布して乾燥・硬化させる方法や当該有機物等を基板1の表面で合成・成膜する方法等を採用できる。一方、ガスバリア層3として無機物からなる層を設ける場合、蒸着、スパッタ、CVD、ALD等の各種成膜法を採用できる。特にスパッタが好ましい。
【0043】
2.2.第2工程S2
第2工程S2においては、記録基板10を2枚用意し、基板1の反対面側を貼り合せ面として、記録基板10、10同士をラジカル重合系紫外線硬化型接着層20を介して貼り合せる。
【0044】
第2工程S2は、例えば、図6に示すような流れで実施可能である。すなわち、記録基板10の貼り合せ面に紫外線硬化樹脂をスピンコートで塗布し(図6(A))、余分な樹脂を振り切った後で(図6(B))、真空下で、紫外線硬化樹脂が塗布された記録基板10、10同士を貼り合せ(図6(C))、その後、紫外線ランプ等を用いて記録基板10に対して紫外線を照射することで、紫外線硬化樹脂を硬化させる(図6(D))。図6(A)~(D)の流れそのものは当業者にとって自明であることから、これ以上の説明を省略する。
【0045】
ここで、記録基板10に紫外線を照射する場合の照射方向については特に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、第2工程S2において、記録基板10の記録層2が形成された面から(図7(A))、又は、記録基板10の側面から(図7(B))、紫外線を照射して、ラジカル重合系紫外線硬化型接着層20を硬化させることができる。また、記録基板10の記録層2が形成された面及び記録基板10の側面から(図7(C))、紫外線を照射してもよい。
【0046】
特に、第2工程S2において、一方の記録基板10の記録層2が形成された面と、他方の記録基板10の記録層2が形成された面との両方から紫外線を照射して、ラジカル重合系紫外線硬化型接着層20を硬化させることが好ましい。さらに、これに記録基板10の側面から紫外線を照射する方法を組み合わせることがより好ましい。
【0047】
以上の通り、光ディスク100によれば、記録基板10の貼り合せ面側にガスバリア層3を設けることで、記録基板10から紫外線硬化型接着層20へのアウトガスの侵出を抑えることができ、ガスバリア層3を設けなかった場合よりも、記録基板10、10同士を貼り合せる際の紫外線硬化型接着層20の硬化を速めることができる。
【実施例
【0048】
1.書換型の記録基板の作製と光線透過スペクトルの確認
金属層を有する不透明な書換型の記録基板を作製し、光線透過スペクトルを確認した。
上記書換型の記録基板は次のプロセスで作製した。まず、射出成型によって厚み0.5mmの溝付きポリカーボネート基板を作製する。その後、基板上にスパッタリングにより記録層を成膜する。記録層は次の複数の層から構成されている。
Sn-Zn-In-Si-O 6nm、Ag‐Cu-Nd 70nm、CrTaO-SiO 8nm、ZnS-SiO 2nm、GeInSbTe 26nm、ZrO-ZnS 5nm、ZnS-SiO 28nm。
記録層上にそれぞれ紫外線硬化樹脂からなり、総厚みが100μmの、記録層を保護するカバー層および読み取り面のキズ・汚れ防止の為のハードコート層をスピンコートにて形成することで、該記録基板が作製される。
上記書換型記録基板の光線透過スペクトルを図8に示す。図8に示すように、金属層を有する不透明な書換型の記録基板においても、透過率が小さいながらも紫外線が透過することがわかる。以下、このようなわずかな量の紫外線であっても記録基板同士を紫外線硬化樹脂で貼り合せることが可能であるのか検討をした。
【0049】
2.比較例1に係る光ディスクの作製及び評価
上記の書換型の記録基板を2枚用意し、記録層とは反対側の面を貼り合せ面として、図6に示すような流れで、記録基板同士を紫外線硬化樹脂(ラジカル重合系、デクセリアルズ社製SK6570)で貼り合せた。紫外線の照射方向は図7(A)に示す方向とし、紫外線の照度は100mW/cm、照射時間は4秒とした。紫外線硬化樹脂の厚み(2枚の記録基板の貼り合せ面間の距離)は40μmとした。その結果、紫外線硬化樹脂の硬化反応が十分に進行せず、接着層の略全体に亘って未硬化部分が存在することとなった。鋭意研究の結果、本発明者は、基板に含まれるガス(空気や水蒸気等)が、紫外線硬化樹脂の硬化反応を阻害しているのではと考えた。すなわち、基板の記録層とは反対側の面にガスバリア層を設けてアウトガスの影響を抑えることで、紫外線硬化樹脂の硬化を速めることができるのではないかと考えた。
【0050】
3.ガスバリア層によるアウトガス抑制効果の確認
3.1.実施例1
上記の書換型の記録基板の記録層とは反対側の面にガスバリア層としてSn-Zn-In-Si-Oからなる金属酸化物のスパッタ薄膜(厚み9nm)を設けた。実施例1において、基板の内径(穴の径)は15mm、基板の外径は120mm、記録層の内径D1aは35mm、記録層の外径D1bは119mm、ガスバリア層の内径D2aは43mm、ガスバリア層の外径D2bは119mmとした。同様にしてスパッタ薄膜を設けた記録基板を2枚用意し、記録層とは反対側の面を貼り合せ面として、比較例1と同様の方法で記録基板同士を紫外線硬化樹脂で貼り合せ、実施例1に係る光ディスクを得た。
【0051】
3.2.実施例2
紫外線の照射方向を図7(B)に示す方向に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で記録基板同士を紫外線硬化樹脂で貼り合せ、実施例2に係る光ディスクを得た。
【0052】
3.3.目視観察
実施例1、2に係る光ディスクは、いずれも、平面視においてガスバリア層が設けられた領域にある紫外線硬化樹脂については硬化反応が十分に進行している一方、平面視においてガスバリア層が設けられていない領域にある紫外線硬化樹脂については比較例1と同様に未硬化部分が存在していた。以上の通り、ガスバリア層による効果が確認できた。すなわち、図9に示すように、ガスバリア層3を有さない比較例においては、記録基板10から紫外線硬化型接着層20へとアウトガスが侵出することから、これが紫外線硬化樹脂の硬化反応を阻害するものと考えられる。一方で、ガスバリア層3を有する実施例においては、記録基板10から紫外線硬化型接着層20へのアウトガスの侵出を抑制でき、紫外線硬化樹脂を素早く適切に硬化させることができるものと考えられる。
【0053】
4.光導波路形成効果の確認
4.1.実施例3
ガスバリア層としてAg‐Cu-Ndからなる合金のスパッタ薄膜(厚み100nm)を設けたこと以外は、実施例2と同様の方法で記録基板同士を紫外線硬化樹脂で貼り合せ、実施例3に係る光ディスクを得た。
【0054】
4.2.実施例4
ガスバリア層としてSiOからなるスパッタ薄膜(厚み12nm)を設けたこと以外は、実施例2と同様の方法で記録基板同士を紫外線硬化樹脂で貼り合せ、実施例4に係る光ディスクを得た。
【0055】
実施例4に係る光ディスクと実施例3に係る光ディスクとを比べた場合、実施例4に係る光ディスクのほうが紫外線硬化樹脂を素早く硬化させることができた。これは以下のメカニズムによるものと考えられる。すなわち、図10に示すように、実施例3に係る光ディスクにおいては、ガスバリア層3が不透明のAg‐Cu-Ndからなることから、片方のガスバリア層3ともう片方のガスバリア層3との間の小さな隙間のみから紫外線硬化型接着層20へと紫外線が供給される。すなわち、紫外線の入り口が小さく、紫外線が紫外線硬化型接着層20の奥(ディスク中心側)へと入り込み難いものと考えられる。一方、実施例4に係る光ディスクにおいては、ガスバリア層3が半透明なSiOからなり、ガスバリア層3と基板1との屈折率差も小さいことから、片方の記録層2ともう片方の記録層2との間の全面に亘って紫外線が反射・拡散し得る。すなわち、紫外線が複数の方向から紫外線硬化型接着層20へと供給され、紫外線硬化型接着層20の全体を効率的に硬化させることができるものと考えられる。以上のことから、ガスバリア層としては、透明・半透明化が容易な無機物である金属酸化物や金属窒化物を採用することが好ましいと考えられる。
【0056】
5.接着強度の確認
5.1.実施例5
紫外線の照射方向を図7(C)に示す方向に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で記録基板同士を紫外線硬化樹脂で貼り合せ、実施例5に係る光ディスクを得た。
【0057】
5.2.実施例6
基板にガスバリア層を設けるにあたり、以下のようなガスバリア層が形成されていない領域(Y)を設けたこと以外は、実施例5と同様の方法で記録基板同士を紫外線硬化樹脂で貼り合せ、実施例6に係る光ディスクを得た。
・ 基板の外周部にガスバリア層が形成されていない領域(Y)を設ける。
・ 領域(Y)の外周端は基板の外周端と一致させる。
・ 領域(Y)の内周端は基板の外周端から1.5mmの位置とする。
【0058】
5.3.目視観察
実施例5及び6に係る光ディスクは、いずれも、平面視においてガスバリア層が設けられた領域にある紫外線硬化樹脂について硬化反応が十分に進行していた。
【0059】
5.4.ディスク落下試験による接着強度の評価
実施例5及び6に係る光ディスクそれぞれについて、高さ76cmから自由落下させ、端部の欠けや接着界面のはがれの有無を確認した。その結果、実施例5及び6のいずれについても従来の光ディスクと同等以上の接着強度を有していた。特に、実施例5よりも実施例6のほうが接着強度が高いことが分かった。実施例5に係る光ディスクにおいては、ガスバリア層と紫外線硬化型接着層との間の接着強度が小さいものと考えられる。これに対し、実施例6に係る光ディスクのように、基板の一部にガスバリア層が形成されていない領域を設けることで、ガスバリア層近傍で紫外線硬化型接着層を適切に硬化させつつ、紫外線硬化型接着層の一部をポリカーボネート基板と強固に接着でき、接着強度が向上するものと考えられる。
【0060】
本発明者の見出した傾向によれば、紫外線硬化型接着層の硬化度と、接着強度とのバランスを考えた場合、基板においてガスバリア層が形成されない領域は以下の通りとすることが好ましい。
・ 基板の内周部にガスバリア層が形成されていない領域(X)、及び/又は、基板の外
周部にガスバリア層が形成されていない領域(Y)を設ける。
・ 領域(X)の内周端は基板の内周端と一致させる。
・ 領域(X)の外周端は基板の内周端から0.2mm以上22.5mm以下の位置とす
る。
・ 領域(Y)の外周端は基板の外周端と一致させる。
・ 領域(Y)の内周端は基板の外周端から0.2mm以上3.0mm以下の位置とする。
【0061】
尚、上記の実施例では、書換型の光ディスクにおいてガスバリア層を設けた場合の効果について確認したが、本開示の技術は非書換型の光ディスクにおいても効果を発揮するものと考えられる。すなわち、非書換型の光ディスクを製造する場合においても、紫外線硬化型接着層を硬化させる際、基板から紫外線硬化型接着層へとアウトガスが侵出し、紫外線硬化樹脂の硬化反応を阻害するものと考えられるところ、基板の貼り合せ面側にガスバリア層を設けることでアウトガスの侵出を抑制でき、紫外線硬化樹脂を素早く硬化させることができる。
【0062】
上記の実施例では、ガスバリア層としてSn-Zn-In-Si-OやAg‐Cu-Ndからなる合金やSiOの薄膜を設けた場合を中心に説明したが、本開示の技術においてガスバリア層の材質はこれに限定されるものではない。有機物及び無機物を問わず、ガスバリア性を有する層であればいずれも所望の効果を発揮できるものと考えられる。ただし、紫外線を適切に透過させる観点から、ガスバリア層は透明又は半透明であることが好ましい。また、ガスバリア層は、十分なガスバリア性を確保する一方で、できるだけ薄くすることが好ましい。この点、透明性、ガスバリア性及び厚みを考慮すると、ガスバリア層は無機物からなるものが好ましく、金属酸化物及び/又は金属窒化物からなるものがより好ましい。尚、ガスバリア層を金属層とする場合、金属層をできるだけ薄くすることで、紫外線透過性を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る光ディスクは、例えば、アクセス頻度が低いデータの長期保管用の大容量記録媒体として利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
2 記録層
3 ガスバリア層
10 記録基板
20 紫外線硬化型接着層
100 光ディスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10