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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】PVPを有する難燃剤ポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20221128BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20221128BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20221128BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20221128BHJP
   C08L 39/06 20060101ALI20221128BHJP
   D01F 6/90 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/32
C08K5/5313
C08K5/3477
C08L39/06
D01F6/90 321D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019547612
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018054762
(87)【国際公開番号】W WO2018158224
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】17158705.8
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ロト,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ホイスラー,ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】ウスケ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ミンゲス,クリストフ
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087099(WO,A1)
【文献】特表2003-510396(JP,A)
【文献】特開2005-113146(JP,A)
【文献】特開平05-194570(JP,A)
【文献】特表2005-513229(JP,A)
【文献】特開2002-234964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08K 3/32
C08K 5/5313
C08K 5/3477
C08L 39/06
D01F 6/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)20~96.9質量%の熱可塑性ポリアミド、
B)1~20質量%の無機ホスフィネート塩、
C)1~15質量%の有機ホスフィネート塩、
D)1~15質量%のメラミンシアヌレート、
E)0.5質量%のポリビニルピロリドンホモポリマー、
F)0~50質量%の他の添加剤
を含み、A)~F)の質量パーセンテージの合計が100%であり、成分E)のモル質量Mn(数平均)が、GPC(PVP標準及び溶離液として、0.01mol/Lのリン酸緩衝液を有する水/メタノール(80/20)(pH7.4))によって測定して、1000~500000g/molである、熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
A)30~92.5質量%、
B)5~20質量%、
C)1~10質量%、
D)1~10質量%、
E)0.5~質量%、
F)0~40質量%、
を含み、A)~F)の質量パーセンテージの合計が100%である、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
成分B)が、式(I)
【化1】
(式中、R及びRは水素であり、
M=Mg、Ca、Al、Znであり、
m=1~3である)
の無機ホスフィン酸の金属塩である、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
成分B)としてアルミニウムハイポホスファイトを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
成分C)が、式(II)
【化2】
(式中、R及びRは同一又は異なり、直鎖又は分岐のC~C-アルキル及び/又はアリールであり;
M=Mg、Ca、Al、Ti、Zn、Fe、Li、Na、K又はプロトン化された窒素塩基であり、
mは1~5である)
の有機ホスフィン塩である、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
成分C)が、式(II)のジアルキルホスフィン酸のアルミニウム塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
成分E)が粉状である、請求項1から6に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項8】
成分E)のd50値が、40~180μm(粉末のレーザー散乱(Sympatec-Helos Rodos)によって判定)である、請求項1から7に記載の熱可塑性成形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)20~96.9質量%の熱可塑性ポリアミド
B)1~20質量%の無機ホスフィネート塩、
C)1~15質量%の有機ホスフィネート塩、
D)1~15質量%のメラミンシアヌレート、
E)0.1~10質量%のポリビニルピロリドンホモポリマー、
F)0~50質量%の他の添加剤
を含み、A)~F)の質量パーセンテージの合計が100%である、熱可塑性成形組成物に関する。
【0002】
本発明はさらに、これらポリアミド混合物から構成される難燃剤成形組成物、及び繊維、フィルム及び成形品を製造するためのそのような成形組成物の使用、及び得られる任意の種類の成形品、繊維及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
難燃剤ポリアミドの重要性はますます高まっている。ここで特に関心の高い製品は、電気分野向けの淡い固有の色を持つ製品である。しかしながら、相乗剤と組み合わせた赤リン及びハロゲン化合物が難燃性のある系として知られているが、それらはこの用途分野には適していない。ハロゲン化合物は、耐トラッキング性や絶縁耐力などの電気特性のレベルを低下させる。赤リンは固有の色は、淡色への使用を妨げる。例として、DE-A1694254は、淡色で強化されていない難燃剤ポリアミドの製造にメラミンの使用を推奨している。ガラス繊維強化ポリアミドの場合、メラミン及びメラミン塩は、付加的な難燃性相乗剤なしで使用した場合、効果が低くなり、これらの製品のグローワイヤ抵抗は、特に壁厚が薄い場合、非常に低い。
【0004】
対照的に、一般にグローワイヤ抵抗がより高い、強化していない成形組成物には、剛性及び強度などの機械的特性が不十分であるという欠点がある。メラミンシアヌレートを有するポリアミド混合物にガラス繊維を添加すると、機械的特性が向上するが、難燃性はガラス繊維のウィッキング効果(wicking effect)として知られるものによって大幅に損なわれるので、難燃性の特性は悪影響を受ける。従ってEP-A241702は、ガラス繊維とメラミンシアヌレートとで作られたPA混合物の難燃性の性能が、混合物に短いガラス繊維を使用することによって改善できることを開示している。
【0005】
難燃性添加剤混合物の有効性は、本質的にUL94V燃焼試験に記載されている。しかしながら、建物内の系及び低電圧交換設備における難燃剤ポリマーという或る特定の用途については、IEC60695-2 12に準拠したグローワイヤ試験が特に重要な基準であり、高い難燃性も望ましい。しかしながら、家庭用設備分野における難燃剤ポリマーという特定の用途では、特に重要なのはIEC60695-2-13に準拠したグローワイヤ試験である。
【0006】
ガラス繊維は従来技術で使用される場合、従来の連続フィラメント繊維(ロービング)又はチョップド繊維(長さ4~6mmの繊維束)の形態で使用することができる。すると押出機内のせん断により、製品のガラス繊維長分布範囲が、従来の処理については、約250~300μmで得られる(ガラス繊維含有率25%の製品に基づく)。ここで考慮しなければならない要因は、繊維の含有率が増加すると平均繊維長は一般に短くなることである。これは、取り込み区域で繊維相互作用の程度が増加することによって、繊維が破損する程度が増すためである(F.Raumsteiner,R.Theysohn,Comp.Sci.Techn.23(1985)231)。
【0007】
従来技術(WO2015/087099)で特に適していることが証明されている組み合わせは、無機ホスフィネート塩の有機ホスフィネート塩及びメラミン化合物との組み合わせであり、これは当該文書において、複数のヒドロキシ基を有する有機化合物と組み合わせて第四の難燃剤として使用されている。しかしながら、この種類の熱可塑性成形組成物の熱老化耐性、及び熱にさらされた際の黄変傾向を改善することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】DE-A1694254
【文献】EP-A241702
【文献】WO2015/087099
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、良好な機械的特性、UL94Vに準拠した高い難燃性及び自己消火特性、及びIEC60695-2-13に準拠したグローワイヤ試験における可能な限り短い残炎時間を有し、そのため特に家庭用設備部門で使用することができる、難燃剤熱可塑性成形組成物を提供することであった。
【0010】
さらなる意図は、熱可塑性成形組成物の熱老化耐性と、熱にさらされた際の黄変傾向を改善することであった。
【0011】
よって導入部で定義した組成物が発見された。好ましい実施形態は従属請求項に見出すことができる。
【0012】
本発明の成形組成物は、成分A)として、20~96.9質量%、好ましくは30~92.5質量%、特に30~80質量%の、少なくとも1種のポリアミドを含む。
【0013】
本発明の成形組成物のポリアミドの固有粘度は、ISO307に準拠して25℃で96質量%硫酸中の0.5質量%溶液で測定して、一般に90~350ml/g、好ましくは110~240ml/gである。
【0014】
例として米国特許第2071250号、第2071251号、第2130523号、第2130948号、第2241322号、第2312966号、第2512606号及び第3393210号に記載されている種類の、モル質量Mw(質量平均)が少なくとも5000の半結晶性又は非晶質樹脂が好ましい。
【0015】
ここでの例は、7~13員環を有するラクタム、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム及びポリラウロラクタムから誘導されるポリアミド、及びジカルボン酸のジアミンとの反応により得られるポリアミドである。
【0016】
使用することができるジカルボン酸は、6~12個の炭素原子、特に6~10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸である。ここで、ほんのいくつかの酸:アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオイック酸、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸が挙げられる。
【0017】
特に適したジアミンは、6~12個の炭素原子、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及びm-キシリレンジアミン(例えば、MXDAのアジピン酸に対するモル比が1:1の、BASF SE社からのUltramid(登録商標)X17)、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン又は1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンである。
【0018】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、及びポリカプロラクタム、及び特にカプロラクタム単位の含有率が5~95質量%の6/66コポリアミド(例えば、BASF SE社からのUltramid(登録商標)C31)である。
【0019】
さらに適したポリアミドは、ω-アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA6)、及びヘキサメチレンジアミンとアジポジニトリル(PA66)から、水の存在下における直接重合として知られているものによって得ることができ、例としてDE-A10313681、EP-A1198491及びEP922065に記載されている。
【0020】
さらに、例として、高温での1,4-ジアミノブタンのアジピン酸との縮合により得ることができるポリアミド(ポリアミド4、6)も挙げられる。この構造のポリアミドの製造方法は、例としてEP-A38094、EP-A38582及びEP-A39524に記載されている。
【0021】
さらに適したポリアミドは、上述のモノマーの2つ以上の共重合によって得ることができるもの、及び任意の所望の混合比での複数のポリアミドの混合物である。ポリアミド66の他のポリアミドとの混合物、特に6/66コポリアミドが特に好ましい。
【0022】
さらに特に有利であることが証明されている材料は、半芳香族コポリアミド、例えばPA6/6T及びPA66/6Tであり、そのトリアミン含有率は、0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満である(EP-A299444参照)。高温耐性を有する他のポリアミドは、EP-A1994075に開示されている(PA6T/6I/MXD6)。
【0023】
低いトリアミン含有率を有する好ましい半芳香族コポリアミドは、EP-A129195及び129196に記載されている方法により製造し得る。
【0024】
次の非包括的なリストは、前述のポリアミド及び本発明の意味内の他のポリアミドA)、及び含まれるモノマーを含有する。
【0025】
ABポリマー:
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
PA11 11-アミノウンデカン酸
PA12 ラウロラクタム
AA/BBポリマー
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA9T 1,9-ノナンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6T参照)
PA6/66 (PA6及びPA66参照)
PA6/12 (PA6及びPA12参照)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610参照)
PA6I/6T (PA6I及びPA6T参照)
PA PACM12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ドデカンジオイック酸
PA6I/6T/PACM PA6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタンとして
PA12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸
PA410 1,4-テトラメチレンジアミン、セバシン酸
PA510 1,5-ペンタメチレンジアミン、セバシン酸
PA10T 1,10-デカンジアミン、テレフタル酸
【0026】
本発明の成形組成物は、成分B)として、1~20質量%、特に5~20質量%、好ましくは5~15質量%の無機ホスフィネート塩を含む。
【0027】
好ましい成分B)は、無機ホスフィン酸の金属塩であり、式(I):
【化1】
(式中、RおよびRは水素であり、
M=Mg、Ca、Al、Znであり、及び
m=1~3である)
に対応する。
【0028】
特に好ましい成形組成物は、成分B)として、アルミニウムハイポホスファイト又は前記成分の混合物を含む。
【0029】
【化2】
【0030】
本発明の成形組成物は、成分C)として、成分A)~Fの全体に対して、1~15質量%、好ましくは1~10質量%、特に2~8質量%の有機ホスフィネート塩を含む。
【0031】
式(II)のホスフィン塩は、好ましい成分C)として適しており、
式中、R及びRは同一又は異なり、直鎖又は分岐のC~C-アルキル及び/又はアリールであり;
M=Mg、Ca、Al、Ti、Zn、Fe、Li、Na、K又はプロトン化された窒素塩基であり、
mは1~5である。
【0032】
成分B)のR及びRが同一又は異なり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及び/又はフェニルであることが好ましい。
【0033】
好ましい成分C)は、式(II)のジアルキルホスフィン酸のアルミニウム塩である。
【0034】
及びRがメチル又はエチルであり、M=Alであることが特に好ましく、ここでAlジエチルホスフィネートが特に好ましい。
【0035】
ホスフィネートは、水溶液から適切な金属塩を沈殿させることによって好ましくは製造する。しかしながら、ホスフィネートは、担体材料として適した無機金属酸化物又は適した無機金属硫化物(白色顔料、例えばTiO、SnO、ZnO、ZnS、SiO)の存在下でも沈殿され得る。これによって、レーザーマーキングが可能な難燃剤として使用することができる表面改質顔料が得られる。
【0036】
本発明の成形組成物は、成分D)として、1~15質量%、好ましくは1~10質量%、特に2~8質量%のメラミンシアヌレートを含む。
【0037】
本発明における適したメラミンシアヌレート(成分D)は、好ましくは等モル量の、メラミン(式I)及びシアヌル酸又はイソシアヌル酸(式Ia及びIb)の反応生成物である。
【0038】
【化3】
【0039】
これは、例として、90~100℃での出発化合物の水溶液の反応によって得られる。商業的に得ることができる製品は、1.5~7μmの平均粒径d50及び50μmより小さいd99値を有する白色粉末である。
【0040】
本発明において、メラミンシアヌレートを使用することが非常に特に好ましく、その粒径分布は、好ましくは:
98<25μm、好ましくは<20μm、
50<4.5μm、好ましくは<3μm である。
【0041】
50値は、一般に当業者には、50%の粒子の粒径が前記の値よりも小さく、50%の粒子の粒径が前記の値よりも大きくなるように選択された粒径の値であると理解される。
【0042】
粒径分布は、典型的にはレーザー散乱(ISO13320に基づく方法)によって判定する。
【0043】
本発明の成形組成物は、成分E)として、0.1~10質量%、好ましくは0.5~8質量%、特に0.5~5質量%のポリビニルピロリドンホモポリマーを含む。
【0044】
これらのPVPポリマーは、水溶液の形態又は粉末の形態で得ることができ、ここでは粉状の材料が好ましい。
【0045】
PVPホモポリマーは一般に、遊離ラジカル発生剤存在下での、及び大抵は反応中のモノマーの分解を抑制する脂肪族アミンの存在下でのバルク、溶液又は懸濁重合プロセスによる1-ビニルピロリジン-2-オンの遊離ラジカル重合によって得ることができる。
【0046】
適した製品は、BASF SE社からLuvitec(登録商標)の商標で市販されている。
【0047】
好ましい成分E)は、成分E)のモル質量Mn(数平均)が、GPC(PVP標準及び溶離液として、0.01mol/Lのリン酸緩衝液を有する水/メタノール(80/20)(pH7.4))によって測定して、1000~500000g/mol、好ましくは1500~200000g/モルのものである。




【0048】
好ましい成分E)は、次の粒径を有する:
10が、15~90、特に15~60μm、
50が、50~180、特に50~160μm、
90が、100~350、特に100~320μm。
【0049】
粒径は一般に、粉末のレーザー散乱(Sympatec-Helos Rodos)によって判定することができる。
【0050】
本発明の成形組成物は、成分F)として、0~50質量%、好ましくは最大で40質量%まで、特に最大で30質量%までの他の添加剤を含むことができる。
【0051】
繊維状又は粒状充填剤F)として、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉状石英、雲母、硫酸バリウム及び長石が挙げられる;これらは0~50質量%、好ましくは5~50質量%、特に10~40質量%の量で使用することができる。
【0052】
好ましい繊維状充填剤として、炭素繊維、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維が挙げられ、ここでEガラスの形態のガラス繊維が特に好ましい。これらは、ロービング又はチョップドガラスの形態で商業的に入手可能な形態で使用することができる。
【0053】
繊維状充填剤は、熱可塑性のものとの相溶性を改善するために、シラン化合物で表面を前処理されていてよい。
【0054】
適したシラン化合物は、一般式
(X-(CH-Si-(O-C2m+14-k
のものであり、式中、置換基は以下のように定義される:
【化4】
【0055】
式中、nは、2~10の整数、好ましくは3~4であり、
mは、1~5の整数、好ましくは1~2であり、
kは、1~3の整数、好ましくは1である。
【0056】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン及び置換基Xとしてグリシジル基を含む対応するシランである。
【0057】
一般に表面コーティングに使用されるシラン化合物の量は、0.01~2質量%、好ましくは0.025~1.0質量%、及び特に0.05~0.5質量%の量(Fに対して)である。
【0058】
針状の鉱物充填剤も適している。
【0059】
本発明において、針状の鉱物充填剤という表現は、際立って針状の特徴を有する鉱物充填剤を意味する。例として、針状珪灰石が挙げられる。鉱物のL/D(長さ対直径)比は、好ましくは8:1~35:1、好ましくは8:1~11:1である。鉱物充填剤は、任意に、上述のシラン化合物で前処理されていてもよい;しかしながら、前処理は本質的な要件ではない。
【0060】
他の充填剤として、好ましくは0.1~10%の量の、カオリン、焼成カオリン、珪灰石、タルク及びチョーク、沈殿カルサイト及び薄板状又は針状のナノ充填剤が挙げられる。この目的のために好ましく使用される材料は、マイカ、ベーマイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、針状形態の酸化亜鉛及びヘクトライトである。薄板状ナノ充填剤と、有機バインダーとの間の良好な相溶性を得るために、薄板状ナノ充填剤は、従来技術の有機変性に付される。本発明のナノ複合材料への薄板状又は針状のナノ充填剤の添加は、機械的強度のさらなる増加につながる。
【0061】
成形組成物は、成分F)として、1~10質量%、好ましくは0.5~10質量%、特に1~8質量%の量のエラストマーポリマー(しばしば衝撃改質剤、エラストマー又はゴムとも称される)を含むことができる。
【0062】
これらは非常に一般には、次のモノマーの少なくとも2つから好ましくは構成されるコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、及びアルコール成分中に1~18個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート。
【0063】
この種類のポリマーは、例として、Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie[Methods of organic chemistry],vol.14/1(Georg-Thieme-Verlag,Stuttgart,1961)、392~406頁、及びC.B.Bucknallによるモノグラフ「Toughened Plastics」(Applied Science Publishers、ロンドン、1977年)に記載されている。
【0064】
これらのエラストマーのいくつかの好ましい種類を、以下に記載する。
【0065】
好ましい成分F)は、
) 40~98質量%、好ましくは50~94.5質量%のエチレン、
) 2~40質量%、好ましくは5~40質量%の、1~18個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、又は/及び
) 0~20質量%、好ましくは0.05~10質量%の、エチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸の群から選択される官能性モノマー、
及びそれらのカルボン酸無水物及びエポキシ基及び混合物
(ここで、F)~F)の質量パーセンテージの合計は100%である)
から構成されるエチレンコポリマー、又は
最大で72%まで亜鉛で中和されているエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー
をベースとする衝撃改質剤である。
【0066】
特に好ましくは、
) 50~69.9質量%のエチレン、
) 30~40質量%の、1~18個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、
) 0.1~10質量%の請求項1に記載の官能性モノマー、
(ここで、F)~F)の質量パーセンテージの合計は100%である)
から構成されるエチレンコポリマーである。
【0067】
官能基F)の含有率は、100質量%のF)に対して、0.05~5質量%、好ましくは0.2~4質量%、特に0.3~3.5質量%である。
【0068】
特に好ましい成分F)は、エチレン性不飽和モノ-又はジカルボン酸、又は前述の酸の官能性誘導体から構成される。
【0069】
原則として、アクリル酸又はメタクリル酸Dの第一級、第二級及び第三級C~C18-アルキルエステルの任意のものが適しているが、1~12個の炭素原子、特に2~10個の炭素原子を有するエステルが好ましい。
【0070】
ここで例として、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル及びtert-ブチル、2-エチルヘキシル、オクチル及びデシルアクリレート、及びメタクリル酸の対応するエステルが挙げられる。これらの中で、n-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
【0071】
オレフィンポリマーは、エステルに加えて、エチレン性不飽和モノ-又はジカルボン酸の酸官能性及び/又は潜在的に酸官能性のモノマーを含むことができ、又はエポキシ基を有するモノマーを含むことができる。
【0072】
モノマーF)の他の例として、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸の第三級アルキルエステル、特にブチルアクリレート、及びジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸及びこれらの酸の無水物、及びそれらのモノエステルが挙げられる。
【0073】
潜在的酸官能性モノマーという表現は、重合条件下で、又はオレフィンポリマーの成形組成物への組み込み中に、遊離酸基を形成する化合物を意味する。これらの例として、最大で20個までの炭素原子を有するジカルボン酸の無水物、特に無水マレイン酸、及び上述の酸の第三級C~C12-アルキルエステル、特にtert-ブチルアクリレート及びtert-ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0074】
上記エチレンコポリマーは、それ自体既知の方法により、好ましくは高圧及び高温でのランダム共重合によって、製造することができる。
【0075】
エチレンコポリマーのメルトインデックスは、一般に1~80g/10分の範囲である(190℃、2.16kg荷重で判定)。
【0076】
これらのエチレンコポリマーの分子量は、10000~500000g/mol、好ましくは15000~400000g/molである(MnはPS較正を用いて1,2,4-トリクロロベンゼン中のGPCによって判定される)。
【0077】
好ましく使用される商業的に入手可能な製品は、Fusabond(登録商標)A560、Lucalen(登録商標)A2910、Lucalen(登録商標)A3110、Nucrel3990、Nucrel925、Lotader AX9800、及びIgetabond FS7Mである。
【0078】
上記エチレンコポリマーは、それ自体既知の方法、好ましくは高圧及び高温でのランダム共重合によって製造し得る。対応する方法はよく知られている。
【0079】
他の好ましいエラストマーは、その製造が例としてBlackleyによるモノグラフ「Emulsion Polymerization」に記載されているエマルジョンポリマーである。使用することができる乳化剤及び触媒は、それ自体既知である。
【0080】
)単位を含まないが酸成分F)がZnで中和されているコポリマーが、特に好ましい。ここで、最大で72%まで亜鉛で中和されているエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー(DuPont社からSurlyn(登録商標)9520として商業的に得ることができる)が好ましい。
【0081】
無論、上記のゴム種の混合物を使用することも可能である。
【0082】
本発明の成形組成物は、成分F)として、0.05~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~1質量%の滑剤を含むことができる。
【0083】
10~44個の炭素原子、好ましくは12~44個の炭素原子を有する脂肪酸のアルミニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はエステル又はアミドが好ましい。
金属イオンは、好ましくはアルカリ土類金属及びAlであり、Ca又はMgが特に好ましい。
【0084】
好ましい金属塩は、ステアリン酸Ca及びモンタナートCa、並びにステアリン酸アルミニウムである。
【0085】
様々な塩の混合物を任意の所望の混合比で使用することも可能である。
【0086】
カルボン酸は1又は2塩基であり得る。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカンジオイック酸、ベヘン酸、及び特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸並びにモンタン酸(30~40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0087】
脂肪族アルコールは1~4価であり得る。アルコールの例は、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールであり、ここでグリセロール及びペンタエリスリトールが好ましい。
【0088】
脂肪族アミンは1~3価であってよい。ここで例として、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6-アミノヘキシル)アミンが挙げられ、ここでエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステル又はアミドは、対応してグリセリルジステアレート、グリセリルトリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリルトリラウレート、グリセリルモノベヘナート及びペンタエリスリチルテトラステアレートである。
【0089】
様々なエステル又はアミド又はエステルのアミドと組み合わせた混合物も、使用することが可能であり、この場合混合比は所望のものである。
【0090】
本発明の成形組成物は、成分F)として、0.05~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、及び特に0.1~1質量%の、Cu安定剤、好ましくはCu(I)ハロゲン化物を、特に、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくはKJとの混合物で、特に1:4の比で、含むことができる。
【0091】
好ましく使用することができる一価の銅の塩は、PPhとの銅(I)錯体、酢酸銅(I)、及び塩化銅(I)、臭化銅(I)及びヨウ化銅(I)である。これらの含まれる量は、ポリアミドに対して、銅5~500ppm、好ましくは10~250ppmに対応する。
【0092】
有利な特性は、銅がポリアミド中で分子分散の形態をとる場合に、特に得られる。これは、成形組成物に添加された濃縮物が、ポリアミド、一価の銅の塩及びアルカリ金属ハロゲン化物を、均質な固溶体の形態で含む場合に達成される。典型的な濃縮物は、例として、79~95質量%のポリアミドと、21~5質量%のヨウ化銅又は臭化銅及びヨウ化カリウムの混合物とから構成される。均質な固溶体中の銅の濃度は、溶体の全質量に対して、好ましくは0.3~3質量%、特に0.5~2質量%であり、ヨウ化銅(I)のヨウ化カリウムに対するモル比は、1~11.5、好ましくは1~5である。
【0093】
濃縮物に適したポリアミドは、ホモポリアミド及びコポリアミド、特にポリアミド6及びポリアミド6.6である。
【0094】
適した立体障害フェノールF)は、フェノール環上に少なくとも1個のかさ高な基を有するフェノール構造を有する原則として任意の化合物である。
【0095】
例として、式
【化5】
(式中、
及びRは、アルキル基、置換アルキル基又は置換トリアゾール基であり、ここでR及びR部分は、同一又は異なってよく、且つRは、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基又は置換アミノ基である)
の化合物を使用することが好ましい。
【0096】
前述の種類の酸化防止剤は、例としてDE-A2702661(US4360617)に記載されている。
【0097】
好ましい立体障害フェノール類の別の群は、置換ベンゼンカルボン酸から、特に置換ベンゼンプロピオン酸から誘導される。
【0098】
この部類からの特に好ましい化合物は、式
【化6】
(式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、それ自体置換基を有することができる(そのうち少なくとも1個がかさ高な基である)C~C-アルキル基であり、Rは、1~10個の炭素原子を有し且つ主鎖中にC-O結合を有することができる二価の脂肪族部分である)の化合物である。
【0099】
この式の好ましい化合物は、
【化7】
(BASF SE社からのIrganox(登録商標)245)
【化8】
(BASF SE社からのIrganox(登録商標)259)
である。
【0100】
立体障害フェノールの例として、以下のものが挙げられる:
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホナート、2,6,7-トリオキサ-1-ホスファビシクロ[2.2.2]オクト-4-イルメチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-3,5-ジステアリルチオトリアジルアミン、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルジメチルアミン。
【0101】
次のものは特に有効であることが証明されており、従って好ましく使用される:2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox(登録商標)259)、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及びN,N’-ヘキサメチレンビス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンアミド(Irganox(登録商標)1098)及び上記BASF SE社からのIrganox(登録商標)245、これは特に良く適している。
【0102】
単独で又は混合物の形態で使用することができる酸化防止剤F)の含まれる量は、成形組成物A)~F)の全質量に対して、0.05~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~1質量%である。
【0103】
ある場合には、フェノール性ヒドロキシ基に対してオルト位に1個以下の立体障害基を有する立体障害フェノールが、特に拡散光中での長期間貯蔵中に色堅牢度を評価する場合に、特に有利であることが証明されている。
【0104】
本発明の成形組成物は、成分F)として、0.05~5質量%、好ましくは0.1~2質量%、特に0.25~1.5質量%のニグロシンを含むことができる。
【0105】
ニグロシンは一般に、様々な形態(水溶性、脂溶性、ガソリン溶性)の黒色又は灰色のフェナジン染料(アジン染料)の群であり、インジュリンに関連し、羊毛の染色及び捺染に、絹の黒色染色に、革の染色及び靴クリーム、ワニス、プラスチック、熱硬化性コーティング、インク等、及び顕微鏡用染色剤として使用される。
【0106】
ニグロシンは、ニトロベンゼン、アニリン及びアニリンヒドロクロリドを、金属鉄及びFeClと加熱することによって工業的に得られる(名称はラテン語のniger=黒に由来する)。
【0107】
成分F)は、遊離塩基の形態で、又は塩(例えばヒドロクロリド)の形態で使用することができる。
【0108】
ニグロシンに関する更なる詳細は、例として、電子百科事典Roempp Online,Version 2.8,Thieme-Verlag Stuttgart,2006の見出し語“Nigrosin”に見出すことができる。
【0109】
本発明の熱可塑性成形組成物は、成分F)として、従来の処理助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、熱による分解及び紫外線による分解に反作用する薬剤、滑剤、離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、成核剤、可塑剤等を含むことができる。
【0110】
酸化遅延剤及び熱安定剤の例は、熱可塑性成形組成物の質量に対して、最大で1質量%までの濃度の、立体障害フェノール及び/又はホスファイト及びアミン(例えばTAD)、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、これらの群の様々な置換された一部及びそれらの混合物である。
【0111】
成形組成物に対して、一般に最大で2質量%までの量で使用されるUV安定剤として、様々な置換されたレソルシノール、サリチラート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンが挙げられる。
【0112】
着色剤として、次のものを添加することができる:無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄及びカーボンブラック、及びさらに有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、及び染料、例えばアントラキノンである。
【0113】
使用することができる成核剤は、フェニルホスフィネートナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、及び好ましくはタルクである。
【0114】
本発明の熱可塑性成形組成物は、それ自体既知の方法により、慣例の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダー混合機又はバンバリー混合機中で出発成分を混合し、次いで得られた混合物を押し出すことによって、製造し得る。押出し物は冷却して粉砕し得る。個別の成分を予備混合し、次いで残りの出発材料を単独で及び/又は同様に混合物の形態で添加することも可能である。混合温度は一般に230℃~320℃である。
【0115】
別の運転モードでは、成分B)~F)をプレポリマーと混合し、配合してペレット化することができる。次いで得られたペレット化材料を、不活性ガス下、固相中で、成分A)の融点未満の温度で連続的に又はバッチ式で所望の粘度に凝縮する。
【0116】
本発明の熱可塑性成形組成物の特徴は、良好な機械的特性、UL94Vに準拠した高い難燃性及び自己消火特性であり、前述の成形組成物は、IEC60695-2-13に準拠したグローワイヤ試験における非常に短い残炎時間を示し、これら材料は特に家庭用設備部門で使用することができる。
【0117】
さらに、熱可塑性成形組成物は、改善された熱老化耐性を有し、熱にさらされても黄変する傾向が少ない。
【0118】
従ってそれら組成物は任意の種類の繊維、フィルム及び成形品の製造に適している。例として、プラグコネクタ、プラグ、プラグ部品、ケーブルハーネス構成成分、回路マウント、回路マウント構成成分、三次元射出成形回路マウント、電気接続要素、及びメカトロニクス構成成分が挙げられる。
【0119】
熱可塑性成形組成物から本発明において製造される成形品又は半製品は、例として自動車両、電気、電子、電気通信、情報技術、娯楽又はコンピュータ産業において、車両及び他の輸送手段において、船舶、宇宙船において、家庭設備において、オフィス設備において、スポーツにおいて、医療において、及び一般に高い難燃性が必要とされる建物の製品及び部品において、使用することができる。
【0120】
改善された流動性を有するポリアミドの台所及び家庭分野用の可能な使用は、台所器具の構成成分、例えばフライ用品、スムージングアイロン、ノブ/ボタンの製造、及び庭及びレジャー分野における用途である。
【実施例
【0121】
次の成分を使用した:
成分A:
ISO 307に準拠して25℃で96質量%硫酸中の0.5質量%溶液で測定して、固有粘度がIV107ml/gのポリアミド6(BASF SE社からのUltramid(登録商標)B22)。
【0122】
成分B:
アルミニウムハイポホスファイト(Italmatch Chemicals SPA社からのPhoslite(登録商標)IP-A)。
【0123】
成分C:
ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩(Clariant GmbH社からのExolit(登録商標)OP1230)。
【0124】
成分D:
平均粒径が約2.6μmのメラミンシアヌレート(BASF SE社からのMelapur(登録商標)MC25)。
【0125】
成分E/1V:比較用
エチレン含有率29%のエチレン-ビニルアルコールコポリマー(日本合成化学社からのSoarnol(登録商標)DT2904RB)。
【0126】
成分E/2:
1500~2500ダルトンの数平均分子量Mnを有する粉状のポリビニルピロリドンホモポリマー(BASF SE社からのLuvitec(登録商標)K17)。
【0127】
成分E/3:
11000~18000ダルトンの数平均分子量Mnを有する粉状のポリビニルピロリドンホモポリマー(BASF SE社からのLuvitec(登録商標)K30)。
【0128】
成分E/4:
300000~400000ダルトンの数平均分子量Mnを有するポリビニルピロリドンホモポリマー(BASF SE社からのLuvitec(登録商標)K90)。
【0129】
成分F/1:
ポリアミド用の標準チョップドガラス繊維、L=4.0mm、D=10μm。
【0130】
成分F/2(PVPプレミックス):
製剤F1~F5では、次のさらなる添加剤:0.35%の3,3’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-N,N’-ヘキサメチレンジプロピオンアミド(CAS番号23128-74-7)を熱安定剤として、及び0.4%のエチレンビスステアラミド(CAS番号110-30-5)を処理助剤として、使用した。
【0131】
成分F/2(EvOHプレミックス):
製剤V1では、次のさらなる添加剤:0.35%の3,3’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-N,N’-ヘキサメチレンジプロピオンアミド(CAS番号23128-74-7)及び0.2%のエチレンビス(オキシエチレン)ビス(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)(CAS番号36443-68-2)を熱安定剤として、及び0.4%のエチレンビスステアラミド(CAS番号110-30-5)を処理助剤として、使用した。
【0132】
表1中の成分A)~F)の割合の合計は、100質量%である。成形組成物の構成及び試験の結果は、同様に表1に見出すことができる。
【0133】
成形組成物の製造
適切なプラスチック成形組成物を配合することによって調製した。このために個別の成分を、約250~270℃の平坦な温度プロファイルを有するZSK26(Berstorff)二軸押出機で、スループット20kg/hで混合し、ストランドの形態で排出してペレット化ができるまで冷却し、ペレット化した。
【0134】
表1に列挙する試験の試験試料は、Arburg420C射出成形機で、溶解温度約250~290℃で、型温度約80℃で、射出成形した。
【0135】
成形組成物の難燃性は、UL94V法(Underwriters Laboratories Inc. Standard of Safety、「Test for Materials for Parts for Parts in Devices and Appliances」、第14頁~第18頁、Northbrook、1998年)によって判定した。
【0136】
グローワイヤ抵抗は、DIN EN 60695-2-12に準拠したGWFI(グローワイヤ燃焼性指数)グローワイヤ着火試験及びDIN EN 60695-2-13に準拠したGWIT(グローワイヤ着火温度)グローワイヤ着火試験によって判定した。
【0137】
GWFI試験では、3個の試験試料(例えば寸法60×60×1.0mmの板又はディスク)について、グローワイヤを使用して650~960℃の温度で、グローワイヤにさらされている期間を含めた時間中、着火に至らない最高温度を、連続した3回の試験で判定した。試験試料を、1ニュートンの力で30秒間、赤熱したグローワイヤに押し付けた。グローワイヤの貫通深さは7mmに制限した。試験は、グローワイヤを取り除いた後、試験試料の残炎時間が30秒未満であり、且つ試験試料の下に置かれた薄葉紙が着火しない場合に、合格したと見なされる。
【0138】
GWFI試験では、3個の試験試料(例えば寸法0×60×1.5mmの板)について、グローワイヤを使用して650~960℃の温度で、グローワイヤにさらされている期間を含めた時間中、着火に至らない最高温度を、連続した3回の試験で判定した。前述のグローワイヤ着火温度は、判定された最高温度を超える25Kであった。ここで使用した着火基準は、火炎時間が>5秒の火炎であった。
【0139】
成形組成物(例えば寸法60×60×1.5mmの板)を、対流式オーブンでそれぞれ前述の温度で熱老化させた。
【0140】
色は、DIN53236に準拠し、R45/0°照明で、CIE Lbに準拠して測定した。
【0141】
表1のデータは、発明例1-発明例5の組成物が、薄い壁厚での難燃性(0.4mmでのUL94V-2)の点及び熱安定性関連の両方において、従来技術(比較例1)よりも良好な値を示すことを示す。MVRの結果は、長期滞留時間での溶解安定性が、20分後に比較例1の場合ほど急激に増加しないことを明らかにしている。さらに、150℃での熱老化後/熱老化中の色測定は、本発明の成形組成物の黄変が先行技術よりも急速に進行しないことを示している(より小さなデルタE値)。
【0142】
V3の安定化量の減少は、熱老化安定性の減少に反映されている。
【0143】
【表1】