(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】半導体の有機層を形成するためのインク組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20221128BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221128BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20221128BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20221128BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20221128BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L31/04 154C
H01L31/04 154D
H01L31/04 154B
H01L29/28 100A
H01L29/28 310J
H01L29/28 250F
H01L29/28 250H
H01L29/28 250G
(21)【出願番号】P 2019553476
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2018058154
(87)【国際公開番号】W WO2018178273
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-10
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】レデラ,ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ガニエ,ジェロム
(72)【発明者】
【氏名】リムバッハ,アンケ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080489(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/034498(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/188609(WO,A1)
【文献】特表2012-527089(JP,A)
【文献】特開2014-026978(JP,A)
【文献】特開2009-021104(JP,A)
【文献】特開2012-003947(JP,A)
【文献】特表2015-514327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/10
H01L 51/46
H01L 51/05
H01L 51/40
H01L 51/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体層を形成するためのインク組成物であって、
前記インク組成物は、
電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物
は1個以上
、3個以下のニトリル基を有し、か
つ100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルであ
り、
前記p型ドーパントは、
少なくとも4個のニトリル基で置換されたヘキサアザトリフェニレン;
フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換されたシアノベンゾキノンジメタンおよび/またはシアノベンゾキノンジイミン;
ラジアレン化合物;
トリス(1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール)コバルト(III)トリス(ヘキサフルオロホスフェート);
モリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン];
C
60
F
48
;
フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換された電荷中性金属アミド化合物;
有機金属錯体、
を含む群から選択されるか、あるいは、
前記p型ドーパントは以下の化学式(P1)~(P25)を有するp型ドーパントの群から選択される、インク組成物。
【化1】
式中、M
+
は、一価カチオンである。
【請求項2】
前記インク組成物は、
電子求引基を含み、か
つ100℃以上で固体である少なくとも1つのp型ドーパントと、
100℃以上で固体である有機電荷輸送材料であって、前記有機電荷輸送材料は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物
は1個以上
、3個以下のニトリル基を有し、か
つ100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
4個以上の原子を有する少なくとも1つのp型ドーパントであって、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量
が17原子%以上
、90原子%以下である、少なくとも1つのp型ドーパントと、
4個以上の原子を有し、か
つ100℃以上の融点を有する少なくとも1つの有機電荷輸送材料であって、前記少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量は0以上
、17原子%未満である、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物
は1個以上
、3個以下のニトリル基を有し、か
つ100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのp型ドーパントは
、3個以上
、100個以下の電子求引基を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記p型ドーパントの分子質量は
、60g/mol以上
、5000g/mol以下の範囲である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記インク組成物は、少なくとも1つの第1の有機電荷輸送材料および少なくとも1つの第2の有機電荷輸送材料の少なくとも2つの有機電荷輸送材料を含み、前記第1の有機電荷輸送材料の分子質量は、前記第2の有機電荷輸送材料の分子質量よりも低い、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記第1の有機電荷輸送材料の平均分子質量は
、300g/mol以上
、1500g/mol以下の範囲であり、および/または、
前記第2の有機電荷輸送材料の平均分子質量は、600g/mol以上
、2,000,000g/mol以下の範囲であり、
ここで、前記第1の有機電荷輸送材料の分子質量は、前記第2の有機電荷輸送材料の分子質量よりも低い、請求項6に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の補助化合物は、置換されたまたは非置換のベンゾニトリル、アルキルベンゾニトリル、メチルベンゾニトリル、o-トルニトリル、4-ブチル-ベンゾニトリルを含む群から選択され、
ここで、置換基は、アルキル、アリール、またはハロゲンから選択される、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の補助化合物の分子質量は
、100g/mol以上
、500g/mol以下の範囲である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記インク組成物は
、23℃で液体である少なくとも1つの第2の補助化合物をさらに含み、前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、前記第1の補助化合物とは異なり、かつ、前記p型ドーパントとは異なる化学構造を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記第2の補助化合物は、大気圧で50℃以上、350℃以下の沸点を有する、請求項10に記載のインク組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、
アルカン化合物;
脂肪族アルコール化合物;
脂肪族エーテル化合物;
脂肪族ニトリル化合物;
芳香族炭化水素化合物;
フッ素化炭化水素化合物、
を含む群から選択される、請求項10または11に記載のインク組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、
ノナン、デカン、ウンデカン、またはドデカン;
ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、またはデシルアルコール;
ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、またはテトラエチレングリコールジメチルエーテル;
アセトニトリル、プロピオニトリル、またはブチロニトリル;
1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、またはノニルベンゼン、3-フェノキシトルエン、2-イソプロピルナフタレン、ジベンジルエーテル、イソプロピルビフェニル、またはビスジメチルフェニルエタン;
ヒドロフルオロエーテルまたはメトキシノナフルオロブタン、
を含む群から選択される、請求項10または11に記載のインク組成物。
【請求項14】
前記インク組成物は、
0.00001重量%以上
、2重量%以下の前記少なくとも1つのp型ドーパントと、
0.01重量%以上
、5重量%以下の少なくとも1つの第1の有機電荷輸送材料および/または第2の有機電荷輸送材料と、
0.01重量%以上
、99.97重量%以下の前記少なくとも1つの第1の補助化合物と、
0重量%以上
、99.97重量%以下の少なくとも1つの第2の補助化合物と、
0重量%以上
、5重量%以下の水と、
を含み、
ここで、前記重量%は、前記インク組成物の総重量に基づいており、全ての成分の総量は、100重量%を超えない、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか1項に記載の前記インク組成物を、溶液処理、スピンコーティング、スロットダイコーティング、および/または、インクジェットプリントによって処理する、有機電子デバイスの有機半導体層を形成する方法。
【請求項16】
前記有機半導体層は、アノードと直接接触して配置される、請求項
15に記載の有機半導体層を形成する方法。
【請求項17】
有機電子デバイスの画素セル、有機発光ダイオードの画素バンクまたは太陽電池の画素バンクにおいて、溶液処理によってインク組成物の層を形成する工程と、
前記インク組成物から前記補助化合物を蒸発させ、それによって前記有機半導体層を形成する工程と、
を含む、請求項
15に記載の有機半導体層を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の有機層を形成するためのインク組成物、半導体層を含むOLEDまたは太陽電池などの電子デバイス、ならびに有機半導体層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子デバイスは、商業化に成功し、それらのスケールアップおよび費用効率の高い作製のために集中的に研究されてきた。このような光電子デバイスの代表例としては、有機エレクトロルミネセンス素子や有機発光ダイオード(OLED)が挙げられる。これらは、アノードとカソードとの間に蛍光性発光層または燐光性発光層を含むデバイスに電流を印加する際に、電子と正孔とが結合することによって起こる自然発光現象を利用した発光デバイスである。このようなOLEDは、単純な構造を有し、単純なプロセスで得られ、高画質および広視野角を実現する。また、映像と高い色純度を完全に実現し、低電圧・低消費電力で駆動されるため、携帯電子機器に適している。
【0003】
国際公開第2016/034498号パンフレットは、薄膜トランジスタにおける導電性電極領域と有機半導体との間の界面における寄生抵抗を低減するための方法であって、前記半導体をドーピングするためのドーパントを含む溶液を提供する工程と、前記導電性電極領域と前記半導体との間の前記界面に隣接する前記半導体を選択的にドーピングするために、前記半導体および/または前記導電性電極領域上に前記溶液を堆積させる工程とを含み、前記溶液を堆積させる工程は、前記溶液をインクジェットプリントすることを含む、方法に関する。
【0004】
欧州特許出願公開第0067691号は、以下の一般式で示される1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-11,11,12,12-テトラシアノ-9,10-アントラキノジメタン化合物に関する。
【0005】
【0006】
式中、W、X、YおよびZは、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、1~8個の炭素原子を有する炭化水素基、アルコキシ基、または、アシルオキシ基を表すが、ただし、W=YかつX=Z、または、W=ZかつX=Yである。これらの化合物を含む組成物および電荷移動錯体も、化合物の中間体と共に記載されている。
【0007】
米国特許出願公開第2013/263925号は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の光活性層と、第1の電極と光活性層との間の正孔キャリア層とを含む光電池に関する。一実施形態では、正孔キャリア層は酸化剤および正孔キャリアポリマーを含んでいる。
【0008】
国際公開第2013/052096号は、中性形態の少なくとも1つの第1の化合物を、第1の溶媒において、少なくとも1つのイオン性ドーパントと化合させて、第1のドープされた反応生成物を提供することと、固体形態の第1のドープされた反応生成物を単離することと、単離された第1のドープされた反応生成物を、第2の溶媒において、中性形態の少なくとも1つの共役ポリマーと化合させて、酸化形態の共役ポリマー、中性形態の第1の化合物を含む第2のドープされた反応生成物を形成することと、を含む方法に関する。利点として、より良好な安定性、使い易さ、および金属含有量が少ないことが挙げられる。用途には、OLEDを含む有機電子デバイスが含まれる。
【0009】
国際公開第2011/087601号は、有機電子デバイス(例えば、OLED)の有機層を形成するための液体組成物(例えば、インクジェット流体)に関する。液体組成物は、芳香族溶媒と混合された小分子の有機半導体材料を含む。
【0010】
芳香族溶媒は、有機層中に残留物として残される場合、他の従来の溶媒と比較して、電荷輸送に対して比較的低い抵抗性を示す、あるいは、堆積された有機層中の電荷輸送を容易にすることができる。
【0011】
典型的なOLEDは、基板上に連続して積層されたアノード、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、およびカソードを含む。ここで、アノードは、表面抵抗が低く、透過率の高いインジウム錫酸化物(ITO)からなることが多い。また、上述したように、2つの電極の間には、発光効率および寿命を向上させるために、複数の有機薄膜が配置されている。
【0012】
このような多層OLEDを効率よく形成するためには、高価な真空チャンバが多く必要とされ、パターニングマスクも必要とされる。さらに、OLEDを作製するための処理には、低温動作の点で根本的な制限がある。これらの理由のために、OLEDのサイズをスケールアップし、費用効率を改善することがますます困難になっている。
【0013】
従って、上述の問題を解決するための新規の処理を開発することが絶えず必要とされている。
【0014】
プリント処理の使用を通して上述の問題を克服するため、多くの試みがなされてきた。例えば、公知の堆積処理に替わるインクジェットプリント処理は、少量の材料を消費し、高い効率を示し、スケールアップおよび低温動作を可能にするという点で堆積処理とは異なる。従って、プラスチックなどの可撓性基板を、インクジェットプリント処理で使用することができ、その結果、費用効率が大幅に改善される。その結果、韓国および外国の多くの企業および団体は、このようなインクジェットプリント処理の積極的な研究および開発を行ってきた。インクジェットプリント技術は、電気・電子、エネルギー、ディスプレイ、バイオインダストリーなどの様々な産業分野に応用され、多種多様な製品の生産と、費用効率および環境特性の向上とに寄与することが期待されている。
【0015】
インクジェットプリントは、低ノイズ、低コスト、および非接触のプリント技術である。インク噴射モードに応じて、インクジェットプリント処理は、連続ジェット法およびドロップオンデマンド(DOD)法に分類される。連続ジェット法は、ポンプでインクを連続的に噴射しながら、電磁場の変化によりインクの方向を制御することによってプリントする。DOD法は、電気信号により所望の瞬間にのみインクを噴射する方法であり、さらに、電気により動的変形を引き起こす圧電板を用いて圧力を発生させるピエゾ式インクジェット法、および、熱によって生じる気泡が膨張する際に発生する圧力を用いたサーマル型インクジェット法に分類される。
【0016】
既知のインク組成物は、他の従来の処理と比較して、液滴サイズの不均一性および光電気特性の劣化を引き起こすという点で問題がある。これは、公知の処理は、化学的に安定し、保管中に相分離を示さず、制御可能な粘度、表面張力組成物、溶解度、乾燥後の膜の均一性などを有するインクジェットプリント用インク組成物を提供できないということに起因し得る。これが組成物をインクジェット法に不適切なものにする。
【0017】
OLEDまたは太陽電池を含む光電子デバイスの層(発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔注入層または正孔輸送層など)を製造するための有機材料のような主要な材料をインクジェットプリント処理に適用するためのインク組成物は、そのインク組成物の成分の最適化された化学的安定性、ならびに相安定性、粘度、表面張力、溶解度、乾燥後の膜の均一性などを有する必要がある。これらの特性は、再現性、液滴形成システム、液滴サイズ、および一定圧力下での速度に影響を及ぼし得る。
【0018】
種々の添加剤を使用する従来のインクジェット法は、インク組成物の成分の劣化ならびに相分離による、誘電係数、電荷移動および伝導率の劣化をもたらす。特に、作製後に残るインク組成物中の不純物および濃度変動は、OLED、有機薄膜トランジスタ(OTFT)または太陽電池などの電子デバイスの誘電係数、電荷移動、寿命および伝導率の低下の原因となる。
【0019】
また、有機電子デバイスを構成する層の液体処理された堆積は、有機電子デバイスの動作に必要な材料(例えば、電荷キャリア輸送材料(ホスト)およびドーパント)、ならびに、溶媒および添加剤などの任意の材料を含むインクの調製を必要とする。これらの成分は、有機電子デバイスの生産における典型的な製造条件下で、例えば、液体処理されたまたはプリントされた正孔注入層を可能にする、安定した加工可能なインクに結合されなければならない。
【0020】
一方、インクに含まれる1つまたは複数の溶媒は、所望の濃度の様々な成分がインクに含有されるよう十分な溶解力を有していなければならない。
【0021】
他方、成分は、インク調製および処理中に特性を変化させないために、インク中で安定していなければならない。さらに、インクの物理的パラメータは、生産の際、周囲温度のような典型的な製造条件下での処理を可能にするものでなければならない。
【0022】
本発明の目的は、光電子デバイスを作製するためのインク組成物であって、長期にわたり安定して保管可能で、インクジェット法などのプリント処理に適用できるように粘度、溶解度、および膜の均一性を制御して、従来技術に関連する上述の欠点を克服するインク組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0023】
その結果、電子デバイスの半導体層を提供することができ、半導体層およびこれらの層を含むデバイスのスケールアップを実現することができ、費用効率および同じ品質の再現性を向上させることができる。
【0024】
一般的な一態様では、光電子デバイス用の材料をインクに形成することによって得られる、パターン形成処理に直接適用可能なプリントインク組成物が提供される。
【0025】
より詳細には、OLED、太陽電池、またはOTFTなどの光電子デバイスの1つまたは複数の半導体層をプリントするためのプリントインク組成物が提供される。
【0026】
本発明の一態様は、有機半導体層を形成するためのインク組成物を提供し、当該インク組成物は、
電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである、インク組成物である。
【0027】
また、OLEDにおいて活性層を形成するためのインク組成物が提供される。
【0028】
また、インク組成物を使用してOLEDの活性層を形成する方法も提供される。
【0029】
インク組成物は、きわめて均一な厚さおよび均質な組成を有する層を提供することができる。
【0030】
その結果、インク組成物を使用して作製されたOLEDは、きわめて均一な発光プロファイルを持つことができる。
【発明の効果】
【0031】
驚くべきことに、ニトリル溶媒、特に、ベンゾニトリル、o-トルニトリルなどの芳香族ニトリル類は、p型ドーパントを十分に高い濃度で溶解し、十分に長い期間にわたってインク安定性をもたらすのに非常に適していることが見出された。
【0032】
さらに、本発明者らによって、ニトリル溶媒、特に、ベンゾニトリル、o-トルニトリルなどの芳香族ニトリル類は、有機電荷輸送材料を十分に高い濃度で溶解し、十分に長い期間にわたってインク安定性をもたらすのに非常に適していることが見出された。
【0033】
例えば、芳香族ニトリル溶媒は、溶液処理およびプリントの際に、本発明にかかるインク組成物のための単一溶媒であって、安定性、加工性、溶解性、および環境要件を同時に満たす単一溶媒として有利に使用することができる。
【0034】
好ましいニトリル溶媒を使用することにより、有機電荷輸送材料およびp-ドーパントの両方が約23℃で約6ヶ月間以上、または、好ましくは約23℃で約9ヶ月間以上安定するインク組成物が提供される。
【0035】
インク組成物の有機電荷輸送材料およびp型ドーパントの良好な安定性は、予想外であった。なぜなら、溶解した状態の赤外スペクトル/紫外・可視スペクトルに対して固体の状態の赤外スペクトル/紫外・可視スペクトルを比較することで、これら化合物、特に、p型ドーパントの赤外スペクトルまたは紫外・可視スペクトルにおいて大きな変化が観察されたためである。
【0036】
インク溶液は、溶液処理による、pn接合中間層または導電性p型中間層の一部として、電極または電荷発生層と直接接触する、正孔輸送層または注入層などの有機電子層の製造に好適に使用することができる。
【0037】
溶液処理方法としては、スピンコーティング、スロットダイコーティングおよびインクジェットプリントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
インク組成物によってカバーされる広い沸点範囲は、選択された層の溶液処理に柔軟性を与える。例えば、スピンコーティング、スロットダイコーティングの場合は約150℃未満の温度であり、OLED層の工業用インクジェットプリントの場合は約150℃以上、約300℃以下の温度である。
【0039】
沸点温度を制御することにより、層製造のための個々の処理タイプに適合したインク組成物を提供することができる。
【0040】
さらに、インクの表面張力(SFT)も、芳香族ニトリル化合物および補助溶剤の種類に応じて、好ましくは約15dyn/cm以上、約50dyn/cm以下、または、約20dyn/cm以上、約40dyn/cm以下(mN/m)の間で調節可能である。基板の表面エネルギー(SFTsubstrate)に対してインクの表面張力(SFTink)を適切に整合させることにより、基板上におけるインクの湿潤特性を良好なものにすることができる。良好な湿潤特性のためには、インク組成物の表面張力がSFTink<SFTsubstrateを満たすことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0041】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の一実施形態は、
電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
前記p型ドーパントとは異なる少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0042】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルであり、
1mlのベンゾニトリルに対して溶解された化合物P11[4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)](NDP-9、NovaLEDから入手可能)であるp型ドーパントの固体10gに対して、前記インク組成物は、さらに、約23℃で液体である少なくとも1つの第2の補助化合物を含んでいてもよく、ここで、前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、前記第1の補助化合物とは異なり、かつ、前記p型ドーパントとは異なる化学構造を有する。
【0043】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルであり、
ベンゾニトリルに溶解された化合物P11[4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)](NDP-9、NovaLEDから入手可能)であるp型ドーパントの固体に対して、前記インク組成物は、さらに、約23℃で液体である少なくとも1つの第2の補助化合物を含んでいてもよく、ここで、前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、前記第1の補助化合物とは異なり、かつ、前記p型ドーパントとは異なる化学構造を有する。
【0044】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基はフッ素、塩素、臭素、および/またはニトリルであり、
前記インク組成物は、さらに、約23℃で液体である少なくとも1つの第2の補助化合物を含み、ここで、前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、前記第1の補助化合物とは異なり、かつ、前記p型ドーパントとは異なる化学構造を有する。
【0045】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態によれば、第2の補助化合物は、ニトリル基を含まない。
【0046】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態によれば、第2の補助化合物は、電子求引基を含まない。
【0047】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態によれば、第2の補助化合物は、ニトリル基および/または電子求引基を含まない。
【0048】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基はフッ素、塩素、臭素、および/またはニトリルであり、
前記インク組成物は、さらに、約23℃で液体である少なくとも1つの第2の補助化合物を含み、ここで、前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、前記第1の補助化合物とは異なり、かつ、前記p型ドーパントとは異なる化学構造を有し、
前記第2の補助化合物は、大気圧で50℃以上の沸点を有し、好ましくは前記第2の補助化合物の沸点は、50℃以上、350℃以下、より好ましくは100℃以上、350℃以下、より好ましくは150℃以上、350℃以下である。
【0049】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
電子求引基を含み、かつ約100℃以上で固体である少なくとも1つのp型ドーパントと、
約100℃以上で固体である有機電荷輸送材料であって、前記有機電荷輸送材料は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0050】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
i)電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基はフッ素、塩素、臭素、および/またはニトリルであり、
前記インク組成物は、さらに、約23℃で液体である少なくとも1つの第2の補助化合物を含み、ここで、前記少なくとも1つの第2の補助化合物は、前記第1の補助化合物とは異なり、かつ、前記p型ドーパントとは異なる化学構造を有し、好ましくは前記第2の補助化合物は、ニトリル基および/または電子求引基を含まない;または、
ii)電子求引基を含み、かつ約100℃以上で固体である少なくとも1つのp型ドーパントと、
約100℃以上で固体である有機電荷輸送材料であって、前記有機電荷輸送材料は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0051】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
電子求引基を含み、かつ約100℃以上で固体である少なくとも1つのp型ドーパントと、
約100℃以上で固体である有機電荷輸送材料であって、前記有機電荷輸送材料は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0052】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量が約17原子%以上、約90原子%以下である、少なくとも1つのp型ドーパントと、
少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量が0以上、約17原子%未満である、前記p型ドーパントとは異なる少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0053】
別の実施形態によれば、有機半導体層を形成するためのインク組成物は、
少なくとも約3個以上の電子求引基を含む少なくとも1つのp型ドーパントと、
少なくとも約0個から約3個未満の電子求引基を含む有機電荷輸送材料であって、前記有機電荷輸送材料は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0054】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態は、
約4個以上の原子を有する少なくとも1つのp型ドーパントであって、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量が約17原子%以上、約90原子%以下である、少なくとも1つのp型ドーパントと、
約4個以上の原子を有する少なくとも1つの有機電荷輸送材料であって、前記少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量が0以上、約17原子%未満であり、前記有機電荷輸送材料は前記p型ドーパントと前記第1の補助化合物とは異なる、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントと前記有機電荷輸送材料とは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0055】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態は、
約4個以上の原子を有する少なくとも1つのp型ドーパントであって、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量が約17原子%以上、約90原子%以下である、少なくとも1つのp型ドーパントと、
約4個以上の原子を有し、かつ約100℃以上の融点を有する少なくとも1つの有機電荷輸送材料であって、前記少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量が0以上、約17原子%未満である、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0056】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態は、
約4個以上の原子を有する少なくとも1つのp型ドーパントであって、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量が約22原子%以上、約90原子%以下である、少なくとも1つのp型ドーパントと、
約6個以上の原子、好ましくは12個以上の原子を有し、かつ約100℃以上の融点を有する少なくとも1つの有機電荷輸送材料であって、前記少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量が0以上、約17原子%未満である、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0057】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態は、
約4個以上の原子を有するp型ドーパントであって、前記p型ドーパントは少なくとも約3個以上、約100個以下の電子求引基を含む、少なくとも1つのp型ドーパントと、
約4個以上の原子を有する有機電荷輸送材料であって、前記有機電荷輸送材料は0個以上、3個未満の電子求引基を有し、かつ約100℃以上の融点を有する、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約3個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0058】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態は、
約4個以上の原子を有する少なくとも1つのp型ドーパントであって、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量が約22原子%以上、約90原子%以下である、少なくとも1つのp型ドーパントと、
約6個以上の原子、好ましくは12個以上の原子を有し、かつ約100℃以上の融点を有する少なくとも1つの有機電荷輸送材料であって、前記少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量が0以上、約17原子%未満である、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約2個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0059】
有機半導体層を形成するためのインク組成物の別の実施形態は、
約4個以上の原子を有するp型ドーパントであって、前記p型ドーパントは少なくとも約3個以上、約100個以下の電子求引基を含む、少なくとも1つのp型ドーパントと、
約4個以上の原子を有しする有機電荷輸送材料であって、前記有機電荷輸送材料は0個以上、3個未満の電子求引基を有し、かつ約100℃以上の融点を有する、少なくとも1つの有機電荷輸送材料と、
芳香族ニトリル化合物である第1の補助化合物であって、前記芳香族ニトリル化合物は約1個以上、約2個以下のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、前記第1の補助化合物は前記p型ドーパントとは異なる、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
を含み、
前記電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0060】
〔定義〕
芳香族とは、少なくとも1つの芳香環または芳香環系を含む分子の一部としての分子または部分をいう。芳香環または芳香環系は、共有結合した炭素原子またはヘテロ原子の平面環または環系を指し、平面環または環系は、ヒュッケル則を満たす非局在化電子の共役系を含む。分子の一部としての芳香族部分の例として、フェニルまたはトリルのような単環基、ビフェニリルのような単結合によって連結されたより多くの芳香環を含む多環基、およびナフチルまたはフルオレン-2-イル、カルバゾリルのような縮合環を含む多環基が挙げられる。
【0061】
用語「ヘテロ原子」は、共有結合した炭素原子によって形成され得る構造において、少なくとも1つの炭素原子が別の多価原子によって置換されるものと理解される。好ましくは、ヘテロ原子は、B、Si、N、P、O、Sから選択することができ、より好ましくはN、P、OまたはSから選択することができる。
【0062】
本発明に関連して、「異なった」とは、化合物が同一の化学構造を有していないことを意味する。
【0063】
用語「含まない(free of、does not contain、does not comprise)」とは、堆積前に化合物中に存在し得る不純物を除外するものではない。不純物は、本発明によって達成される目的に関して技術的効果を有さない。
【0064】
本明細書において、用語「寿命(life spanおよびlife time)」は、同義的に使用される。
【0065】
特に明記しない限り、相対湿度(RHと略す)は40%であり、温度は23℃である。
【0066】
本明細書において、正孔特性とは、電界を印加した際に電子を供与して正孔を形成する能力であり、アノードに形成された正孔は、最高被占分子軌道(HOMO)準位による導電特性により、容易に発光層に注入され、発光層中を輸送され得ることをいう。
【0067】
また、電子特性とは、電界を印加した際に電子を受け入れる能力であり、カソードに形成された電子は、最低空分子軌道(LUMO)準位による導電特性により、容易に発光層に注入され、発光層中を輸送され得ることをいう。
【0068】
本明細書において、分子の合計式中の電子求引基の量は、合計式中の原子の総数の電子求引基の原子%(at%)で与えられる。
【0069】
定義および計算を明確にするために、合計式は、1つの電子求引基が2つ以上の原子からなる場合であっても、1つの原子単位としてカウントされるように簡略化されている。
【0070】
本発明によれば、電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルのみの群から選択されると定義される。
【0071】
電子求引基の原子%は、化合物/p型ドーパントの合計式中の原子および電子求引基の総数に対する電子求引基の割合である。
【0072】
p型ドーパント中の原子および電子求引基の総数は4つ以上である。
【0073】
CN基は、p型ドーパントの(簡略化された)合計式において、1つの電子求引基としてカウントされる。
【0074】
電荷輸送材料について計算された電子求引基の量を、表1に示す。
【0075】
【0076】
p型ドーパントについて計算された電子求引基の量を、表2に示す。
【0077】
【0078】
〔p型ドーパント〕
正孔注入層(HIL)には、P型ドーパントを使用することができる。HILは、p型ドーパントから構成されてもよく、またはp型ドーパントを含んでもよい。HILは、通常、電極、典型的にはアノードと直接接触して使用され、電極から有機電子デバイスの層への正孔注入に対する障壁を減少させる。
【0079】
正孔輸送層(HIL)には、p型ドーパントを使用することができる。HTLは、p型ドーパントおよび1つ以上の有機電荷輸送材料から構成されてもよい。これにより、p型ドーパントは、通常、HTLの伝導率を増加させ、p型ドーパントを含むHTLの伝導率は、p型ドーパント無しで得られるHTLの伝導率よりも高い。
【0080】
p型ドーパントは、2つ以上の有機電子デバイスの間に挿入された層に使用されてもよく、その目的は低いまたは無視できるほどの電気損失でデバイスを電気的に接続することである。このような層は、電荷発生層と呼ぶことができる。p型電荷発生層は、p型ドーパントがドープされた有機材料から構成されてもよい。p型電荷発生層は、n型電荷発生層に直接接触して配置することができる。また、p型電荷発生層とn型電荷発生層との間に中間層を設けてもよい。
【0081】
電荷発生層は、一般に、少なくとも2つの層から構成され、その少なくとも2つの層はp型電荷発生層とn型電荷発生層であり得る。
【0082】
OLED用の電荷発生層(CGL)は、米国特許出願公開第2012098012号明細書に記載されており、有機光電池用の電荷発生層(CGL)は、Chen et al Adv. Mater. 2014, 26, 5670-5677に記載されている(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0083】
実施形態によれば、インク組成物は、少なくとも1つのp型ドーパントを含み、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量は、約17原子%以上である。
【0084】
一実施形態によれば、インク組成物は、少なくとも1つのp型ドーパントを含み、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量は、約17原子%以上、約90原子%以下である。
【0085】
一実施形態によれば、インク組成物は、少なくとも1つのp型ドーパントを含み、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量は、約20原子%以上、約80原子%以下である。
【0086】
一実施形態によれば、インク組成物は、少なくとも1つのp型ドーパントを含み、前記少なくとも1つのp型ドーパントの合計式中の電子求引基の量は、約22原子%以上、約90原子%以下、または、約22原子%以上、約80原子%以下である。
【0087】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、約3個以上、約100個以下の電子求引基、好ましくは約4個以上、約70個以下の電子求引基、さらに好ましくは約5個以上、約50個以下の電子求引基を含んでいてもよい。
【0088】
p型ドーパントの電子求引基は、独立して、カルボニル、ニトロ、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択することができる。
【0089】
p型ドーパントの分子質量は、約60g/mol以上、約5000g/mol以下、好ましくは約100g/mol以上、約3000g/mol以下、より好ましくは約250g/mol以上、約2500g/mol以下、加えて好ましくは約350g/mol以上、約2000g/mol以下の範囲であり得る。
【0090】
ホスト化合物との混合物におけるゲスト化合物として用いられるp型ドーパントは、通常、純化合物(neat compound)と比較して、ホスト化合物の伝導率を増加させる。これは、ホスト(正孔輸送材料)のHOMOからドーパントのLUMOへの電子移動の結果としてもたらされる。レドックスp型ドーパントとも呼ばれる適切なp型ドーパントは、一般的に、ホストのHOMOに等しいか、または、それより下のLUMO準位を有する分子またはラジカルである。場合によっては、ホストのHOMO準位よりわずかに上のLUMO準位を有するp型ドーパントも使用可能であるが、これらの場合のフロンティア軌道エネルギーの差は0.5eV以下、好ましくは0.3eV以下であるべきである。p型ドーパントは中性であってもよいし、帯電していてもよい。
【0091】
インク組成物に適したp型ドーパントは、以下を含む群から選択することができる:
少なくとも4個のニトリル基で置換されたヘキサアザトリフェニレン;
フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換されたシアノベンゾキノンジメタンおよび/またはシアノベンゾキノンジイミン;
ラジアレン化合物、好ましくは、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換された、[3]-ラジアレン化合物;
トリス(1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール)コバルト(III)トリス(ヘキサフルオロホスフェート);
モリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン];
C60F48;
フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換された電荷中性金属アミド化合物;
有機金属錯体、好ましくは、少なくとも1つのリガンドがフッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換された、Vb/VIb/VIIb族有機金属錯体。
【0092】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、好ましくは、少なくとも4個のニトリル基で置換されたヘキサアザトリフェニレンを含む群から選択することができる。
【0093】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換されたシアノベンゾキノンジメタンおよび/またはシアノベンゾキノンジイミンを含む群から選択されてもよい。
【0094】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、好ましくは、ラジアレン化合物、好ましくは、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換された、[3]-ラジアレン化合物を含む群から選択されてもよい。
【0095】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、好ましくは、トリス(1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール)コバルト(III)トリス(ヘキサフルオロホスフェート)を含む群から選択されてもよい。
【0096】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、モリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン]であってもよい。
【0097】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、フッ素化フラーレン、好ましくはC60F48であってもよい。
【0098】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換された電荷中性金属アミド化合物を含む群から選択されてもよい。
【0099】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、好ましくは、有機金属錯体、好ましくは、少なくとも1つのリガンドがフッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも4個の電子求引基で置換された、Vb/VIb/VIIb族有機金属錯体を含む群から選択されてもよい。
【0100】
別の実施形態によれば、インク組成物のp型ドーパントは、以下の化学式(P1)~(P25)を有するp型ドーパントの群から選択されてもよい:
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
式中、M+は一価カチオン、好ましくは、アルカリカチオンである。
【0109】
〔有機電荷輸送材料〕
有機電荷輸送材料(HTM)は、小分子またはポリマーまたはそれらの混合物であり得る。好ましくは、有機電荷輸送材料は、ポリマーまたはオリゴマーである。ポリマーは、例えば、国際公開第2014037512号パンフレットに記載されているように架橋性であってもよい。
【0110】
適切であり得るさらなる架橋性ポリマーHTMは、Carlos A. Zuniga, Stephen BarlowならびにSeth R. Marder「Approaches to Solution-Processed Multilayer Organic Light-Emitting Diodes Based on Cross-Linking」,Chem. Mater. 2011, 23, 658-681に記載され、参照により援用される。
【0111】
有機正孔輸送材料は、HTLを形成するために一般に使用され、インク組成物の成分として処理することができる任意の化合物であり得る。
【0112】
適切であり得る化合物は、例えば、Yasuhiko ShirotaならびにHiroshi Kageyama, Chem. Rev. 2007, 107, 953-1010に開示され、参照により援用される。
【0113】
一実施形態によれば、インク組成物は少なくとも1つの有機電荷輸送材料を含み、少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量は、約0原子%以上、17原子%未満であり、約100℃以上の融点を有する。
【0114】
本発明により定義される電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルである。
【0115】
一実施形態によれば、インク組成物は少なくとも1つの約100℃以上、400℃以下の融点を有する有機電荷輸送材料を含み、前記少なくとも1つの有機電荷輸送材料の合計式中の電子求引基の量は、約0原子%以上、約17原子%未満である。非晶質のポリマー有機電荷輸送材料は、融点を有していない。
【0116】
別の実施形態によれば、インク組成物の少なくとも1つの有機電荷輸送材料の電子求引基は、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルから選択され、好ましくは、電子求引基はフッ素および/またはニトリルである。
【0117】
別の実施形態によれば、インク組成物は、少なくとも第1の有機電荷輸送材料および少なくとも第2の有機電荷輸送材料の少なくとも2つの有機電荷輸送材料を含んでいてもよく、第1の有機電荷輸送材料の分子質量は、第2の有機電荷輸送材料の分子質量よりも低い。
【0118】
別の実施形態によれば、インク組成物は少なくとも2つの有機電荷輸送材料を含んでいてもよく、
前記第1の有機電荷輸送材料の平均分子質量は、約300g/mol以上、約1500g/mol以下、好ましくは約400g/mol以上、約1300g/mol以下の範囲であり、および/または、
前記第2の有機電荷輸送材料の平均分子質量は、600g/mol以上、約2,000,000g/mol以下、好ましくは約1000g/mol以上、約1,000,000g/mol以下、さらに好ましくは約1000g/mol以上、約500,000g/mol以下の範囲であり、
前記第1の有機電荷輸送材料の分子質量は、前記第2の有機電荷輸送材料の分子質量よりも低い。
【0119】
本発明の意味における有機電荷輸送材料は、その分子構造式中に、下記表3に記載されるような以下の分子断片のうちの少なくとも1つを含む化合物であってもよい。
【0120】
【0121】
【0122】
有機電荷輸送材料の具体例としては、スピロ化合物、銅フタロシアニン(CuPc)などのフタロシアニン化合物、4,4’,4''-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、TDATA、2T-NATA、α-NPD(N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン)、N4,N4,N4'',N4''-テトラ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-[1,1’:4’,1''-テルフェニル]-4,4''-ジアミンのようなトリフェニルアミン化合物、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メチルフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、トリス(4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)アミンのようなカルバゾール化合物が挙げられる。
【0123】
好適に使用できる「HTL材料」と名付けられたさらなる有機電荷輸送材料は、ペンタセン、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)、さらにC10-DNTT(一般的にはCx-DNTT)などのDNTT誘導体、金属-フタロシアニン(ZnPc,CuPc)、ジインデノペリレン(DIP)などのペリレン、テトラプロピル-テトラフェニル-ジインデノペリレン(P4-PH4-DIP)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、DIP-ペンタセン、ポリ[2,5-ビス(3-アルキルチオフェン-2-イル)チエノ(3,2-b)チオフェン](PBTT)、または、ポリ{[N,N9-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-alt-5,59-(2,29-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))のようなn型材料である。
【0124】
さらに好適に使用できる、市販のHTL材料は、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン、4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル、1,4-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゼン、4,4’-ビス(3-エチル-N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニルベンジジン、N,N’-ビス(フェナントレン-9-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン、銅(II)フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン、4,4’-シクロヘキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン]、4-(ジベンジルアミノ)ベンズアルデヒド-N,N-ジフェニルヒドラゾン、9,9’-(2,2’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス-9H-カルバゾール、2,2’-ジメチル-N,N’-ジ-[(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル]-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、9,9-ジメチル-N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-9H-フルオレン-2,7-ジアミン、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン、N,N’-ジ(2-ナフチル-N,N’-ジフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、4-(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-p-トリルベンゼン-1,4-ジアミン、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル、インジウム(III)フタロシアニンクロライド、ポリ(銅フタロシアニン)、ポリ(N-エチル-2-ビニルカルバゾール)、ポリ(2-ビニルカルバゾール)、ポリ(9-ビニルカルバゾール)、ポリ(1-ビニルナフタレン)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ(トリアリールアミン)、スピロ-MeOTAD、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン、N,N,N’,N’-テトラキス(3-メチルフェニル)-3,3’-ジメチルベンジジン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ナフチル)ベンジジン、テトラ-N-フェニルベンジジン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-ナフタレン-2,6-ジアミン、スズ(IV)2,3-ナフタロシアニンジクロライド、チタニルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン、トリス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]アミン、1,3,5-トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン、1,3,5-トリス(2-(9-エチルカバジル(ethylcabazyl)-3)エチレン)ベンゼン、1,3,5-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン、4,4’,4''-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン、4,4’,4''-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン、トリ-ポリラミン(polylamine)、酸化タングステン、および/またはバナジルフタロシアニンである。
【0125】
HTL材料として使用することができる化合物のさらなる例として、以下が挙げられる:
-カルバゾール化合物、例えば、N-フェニルカルバゾールまたはポリビニルカルバゾール;
-芳香族縮合環を有するアミン化合物、例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、または、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD);
-トリフェニルアミン化合物、例えば、4,4’,4''-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、または、N4,N4''-ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-N4,N4''-ジ(ナフタレン-2-イル)-[1,1’:4’,1''-テルフェニル]-4,4''-ジアミン、あるいは、チオフェン系化合物、例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)-2,5-ジイル。
【0126】
使用できる有機電荷輸送材料は、ポリマー1、好ましくは(ポリ[(9,9-ジ(2-エチルヘキシ-1-イル)-9H-フルオレン-2,7-ジイル)-co-(4,4’,4''-(4-アジドブトキシ-1-イル)-N,N-ジフェニルアニリン)])、ならびにポリマー2、好ましくは(ポリ[(9,9-ジ(2-エチルヘキシ-1-イル)-9H-フルオレン-2,7-ジイル)-co-(4,4’,4''-(prop-2-yn-1-イルオキシ)-N,N-ジフェニルアニリン)])である。
【0127】
【0128】
〔第1の補助化合物〕
インク組成物は、少なくとも1つの第1の補助化合物を含み、第1の補助化合物は、芳香族ニトリル化合物であり、芳香族ニトリル化合物は、約1個以上、約3個以下のニトリル基を有するか、または約1個以上、約2個以下のニトリル基、好ましくは1個のニトリル基を有し、かつ約100℃未満の融点を有し、第1の補助化合物は、p型ドーパントとは異なる。
【0129】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第1の補助化合物は、置換されたまたは非置換のベンゾニトリルを含む群から選択することができる。置換されたベンゾニトリルは、好ましくは、メチルベンゾニトリル、o-トルニトリル、および/または4-ブチル-ベンゾニトリルなどのアルキルベンゾニトリルである。
【0130】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの第1の補助化合物は、置換されたまたは非置換のベンゾニトリル化合物を含む群から選択することができ、ここで、置換基は、アルキル、ヘテロまたは非ヘテロシクロアルキル、ヘテロまたは非ヘテロアリール、および/またはハロゲンから選択することができる。
【0131】
第1の補助化合物は、3-アセチルベンゾニトリル、4-アセチルベンゾニトリル、ベンゾニトリル、ベンゾイルアセトニトリル、4-ブチルベンゾニトリル、4-tert-ブチルベンゾニトリル、4-シアノフェニルアセトニトリル、2,3-ジメトキシベンゾニトリル、3,4-ジメトキシベンゾニトリル、2-エチルベンゾニトリル、3-エチルベンゾニトリル、4-エチルベンゾニトリル、2-メトキシベンゾニトリル、3-メトキシベンゾニトリル、4-メトキシベンゾニトリル、4-メトキシベンゾイルアセトニトリル、4-(メトキシメチル)ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フェニルブチロニトリル、3-フェニルプロピオニトリル、2-プロピレンベンゾニトリル、4-プロピルベンゾニトリル、o-トルニトリル、m-トルニトリル、p-トルニトリル、4-トルオイルアセトニトリル、3,4,5-トリメトキシベンゾニトリル、4-シアノフェニルアセトニトリル、2-クロロベンゾニトリル、3-クロロベンゾニトリル、4-クロロベンゾニトリルから選択することができる。
【0132】
「アルキル基」という用語は、飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。アルキル基は、C1からC10のアルキル基であり得る。より具体的には、アルキル基は、C1からC10のアルキル基、またはC1からC6のアルキル基であり得る。例えば、C1からC4のアルキル基は、アルキル鎖中に1個~4個の炭素を含み、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルから選択され得る。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
【0133】
「アリール基」という用語は、対応する芳香族炭化水素中の芳香環から1個の水素原子を形式的に除くことによって作製することができるヒドロカルビル基を指す。芳香族炭化水素は、少なくとも1つの芳香環または芳香環系を含む炭化水素を指す。芳香環または芳香環系は、共有結合した炭素原子の平面環または環系を指し、平面環または環系は、ヒュッケル則を満たす非局在化電子の共役系を含む。アリール基の例として、フェニルまたはトリルのような単環基、ビフェニリルのような単結合によって連結されたより多くの芳香環を含む多環基、およびナフチルまたはフルオレン-2-イルのような縮合環を含む多環基が挙げられる。
【0134】
同様に、ヘテロアリールの場合、少なくとも1つの複素芳香環を含む化合物中の複素芳香環から1つの環水素を形式的に除くことによって得られる基と理解される。
【0135】
ヘテロまたは非ヘテロシクロアルキルの場合、3個~12個の環原子を有する複素環または非複素環から1個の環水素を形式的に除くことによって得られる基と理解される。
【0136】
用語「ヘテロ(複素)」は、共有結合した炭素原子によって形成され得る構造において、少なくとも1つの炭素原子が別の多価原子によって置換されるものと理解される。好ましくは、ヘテロ原子は、B、Si、N、P、O、Sから選択され、より好ましくはN、P、O、Sから選択される。
【0137】
用語「ハロゲン」は、F、Cl、BrおよびIを含む群から選択されるハロゲンを表し、FおよびClがより好ましい。
【0138】
少なくとも1つの第1の補助化合物の分子質量は、約100g/mol以上、約500g/mol以下、好ましくは約100g/mol以上、約400g/mol以下、より好ましくは約100g/mol以上、約300g/mol以下の範囲であり得る。
【0139】
〔第2の補助化合物〕
インク組成物は少なくとも1つの第2の補助化合物を含み、第2の補助化合物は、約23℃で液体であり、少なくとも1つの第2の補助化合物は、第1の補助化合物とは異なり、かつ、p型ドーパントとは異なる化学構造を有し、好ましくは、第2の補助化合物は、ニトリル基および/または電子求引基を含まない。
【0140】
インク組成物の一実施形態によれば、第2の補助化合物は、以下を含む群から選択することができる:
ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどのアルカン化合物;
ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコールなどの脂肪族アルコール化合物;
ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、またはテトラエチレングリコールジメチルエーテルなどの脂肪族エーテル化合物;
アセトニトリル、プロピオニトリル、またはブチロニトリルなどの脂肪族ニトリル化合物;
1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、またはノニルベンゼン、3-フェノキシトルエン、2-イソプロピルナフタレン、ジベンジルエーテル、イソプロピルビフェニル、またはビスジメチルフェニルエタンなどの芳香族炭化水素化合物;
メトキシノナフルオロブタン(3M(商標)Novec(商標)7100)のようなヒドロフルオロエーテルなどのフッ素化炭化水素化合物。
【0141】
第2の補助化合物の使用は、インク特性、インクのプリント特性、およびプリントされたフィルムの乾燥挙動、フィルム形成および均質性にとって有利であり得る。
【0142】
第2の補助化合物は、大気圧で50℃よりも高い沸点を有することがさらに好ましく、第2の補助化合物の沸点は、50℃~350℃であることが好ましく、100℃~350℃であることがより好ましく、150℃~350℃であることがより好ましい。
【0143】
〔水〕
好ましい実施形態に係るインク組成物は、水を含んでいなくてもよい。しかしながら、インク組成物は、約0重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0重量%以上、約1重量%以下、より好ましくは約0重量%以上、約0.1重量%以下、加えて好ましくは約0重量%以上、約0.01重量%以下の範囲の水を含むことができる。なお、重量%はインク組成物の総重量に基づく。
【0144】
水の含有量、特に過剰な水は、インク組成物を不安定にすることがある。しかしながら、水を含まないインク組成物は、好ましい実施形態であり得る。
【0145】
〔インク組成物〕
処理の向上のために、インク組成物は、以下の物理的データのうちの少なくとも1つを有し得る。
【0146】
一実施形態によれば、インク組成物は、約10℃~150℃の範囲、好ましくは約20℃~100℃の範囲、さらに好ましくは約23℃~80℃の範囲の温度で液体であり得る。
【0147】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約0℃以上、約100℃以下の範囲、好ましくは約15℃以上、約50℃以下の範囲、さらに好ましくは約20℃以上、約30℃以下の範囲、加えて好ましくは約21℃以上、約23℃以下の範囲で溶液であり得る。
【0148】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約50℃以上、約350℃以下、好ましくは約80℃以上、約320℃以下、さらに好ましくは約100℃以上、約300℃以下、加えて好ましくは150℃以上、約250℃以下の沸点を有し得る。
【0149】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約23℃で、約15dyn/cm以上、約50dyn/cm以下、好ましくは約20dyn/cm以上、約40dyn/cm以下の範囲の表面張力を有し得る。
【0150】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約50℃で、約15dyn/cm以上、約50dyn/cm以下、好ましくは約20dyn/cm以上、約40dyn/cm以下の範囲の表面張力を有し得る。
【0151】
一実施形態では、基板上においてインクが良好な湿潤性を有するために、第2の補助化合物を添加することによって表面張力を低い値に調節してもよい。このため、第2の補助化合物は、フッ素化炭化水素化合物であり得る。
【0152】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約20℃で均一な溶液であり得る。
【0153】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約23℃で均一な溶液であり得る。
【0154】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約30℃で均一な溶液であり得る。
【0155】
別の実施形態によれば、インク組成物は、約50℃で均一な溶液であり得る。
【0156】
別の実施形態によれば、インク組成物は、
約0.00001重量%以上、約2重量%以下、好ましくは約0.0001重量%以上、約1.5重量%以下、さらに好ましくは約0.001重量%以上、約1重量%以下、さらに好ましくは約0.001重量%以上、約0.9重量%以下、加えて好ましくは約0.01重量%以上、約0.5重量%以下の少なくとも1つのp型ドーパントと、
約0.01重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約4重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以上、約3重量%以下、加えて好ましくは約0.5重量%以上、約2重量%以下の少なくとも1つの第1の有機電荷輸送材料および/または第2の有機電荷輸送材料と、
約0.01重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の少なくとも1つの第1の補助化合物と、
約0重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の少なくとも1つの第2の補助化合物と、
約0重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0重量%以上、約1重量%以下、より好ましくは約0重量%以上、約0.1重量%以下、加えて好ましくは約0重量%以上、約0.01重量%以下の水と、
を含み、好ましくは、インク組成物は水を含まず、
ここで、重量%は、インク組成物の総重量に基づいており、全ての成分の総量は、100重量%を超えない。
【0157】
別の実施形態によれば、インク組成物は、
約0.00001重量%以上、約2重量%以下、好ましくは約0.0001重量%以上、約1.5重量%以下、さらに好ましくは約0.001重量%以上、約1重量%以下、加えて好ましくは約0.01重量%以上、約0.5重量%以下の、少なくとも約4個以上、約50個以下の電子求引基を有する少なくとも1つのp型ドーパントと、
約0.01重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約4重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以上、約3重量%以下、加えて好ましくは約0.5重量%以上、約2重量%以下の、約0個以上、約3個以下の電子求引基を有する少なくとも1つの第1の有機電荷輸送材料、および/または、少なくとも約0個以上、約3個以下の電子求引基を有する少なくとも1つの第2の有機電荷輸送材料と、ここで、第1の有機電荷輸送材料は第2の有機電荷輸送材料とは異なり、
約0.01重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の、23℃で液体であるニトリル化合物である少なくとも1つの第1の補助化合物と、
約0重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の、カルボニル、ニトロ、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される電子求引基を含まず、23℃で液体である少なくとも1つの第2の補助化合物と、
約0重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0重量%以上、約1重量%以下、より好ましくは約0重量%以上、約0.1重量%以下、加えて好ましくは約0重量%以上、約0.01重量%以下の水と、
を含み、好ましくは、インク組成物は水を含まず、
ここで、重量%は、インク組成物の総重量に基づいており、全ての成分の総量は、100重量%を超えない。
【0158】
別の実施形態によれば、インク組成物は、
約0.00001重量%以上、約2重量%以下、好ましくは約0.0001重量%以上、約1.5重量%以下、さらに好ましくは約0.001重量%以上、約1重量%以下、加えて好ましくは約0.01重量%以上、約0.5重量%以下の、カルボニル、ニトロ、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも約5個以上、約50個以下の電子求引基を有する少なくとも1つのp型ドーパントと、
約0.01重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の、23℃で液体である芳香族ニトリル化合物である、少なくとも1つの第1の補助化合物と、
約0重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の、カルボニル、ニトロ、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される電子求引基を含まず、23℃で液体である少なくとも1つの非芳香族の第2の補助化合物と、
約0重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0重量%以上、約1重量%以下、より好ましくは約0重量%以上、約0.1重量%以下、加えて好ましくは約0重量%以上、約0.01重量%以下の水と、
を含み、好ましくは、インク組成物は水を含まず、
ここで、重量%は、インク組成物の総重量に基づいており、全ての成分の総量は、100重量%を超えない。
【0159】
別の実施形態によれば、インク組成物は、
約0.00001重量%以上、約2重量%以下、好ましくは約0.0001重量%以上、約1.5重量%以下、さらに好ましくは約0.001重量%以上、約1重量%以下、加えて好ましくは約0.01重量%以上、約0.5重量%以下の、カルボニル、ニトロ、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される少なくとも約5個以上、約50個以下の電子求引基を有する少なくとも1つのp型ドーパントと、
約0.01重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約4重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以上、約3重量%以下、加えて好ましくは約0.5重量%以上、約2重量%以下の、約0個以上、約3個以下の電子求引基を有する少なくとも1つの第1の有機芳香族電荷輸送材料、および/または、少なくとも約0個以上、約3個以下の電子求引基を有する少なくとも1つの第2の有機芳香族電荷輸送材料と、ここで、第1の有機電荷輸送材料は第2の有機電荷輸送材料とは異なり、
約0.01重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の、23℃で液体である芳香族ニトリル化合物である少なくとも1つの第1の補助化合物と、
約0重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の、カルボニル、ニトロ、フッ素、塩素、臭素および/またはニトリルを含む群から選択される電子求引基を含まず、23℃で液体である少なくとも1つの非芳香族の第2の補助化合物と、
約0重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0重量%以上、約1重量%以下、より好ましくは約0重量%以上、約0.1重量%以下、加えて好ましくは約0重量%以上、約0.01重量%以下の水と、
を含み、好ましくは、インク組成物は水を含まず、
ここで、重量%は、インク組成物の総重量に基づいており、全ての成分の総量は、100重量%を超えない。
【0160】
別の実施形態によれば、インク組成物は、
約0.00001重量%以上、約2重量%以下、好ましくは約0.0001重量%以上、約1.5重量%以下、さらに好ましくは約0.001重量%以上、約1重量%以下、加えて好ましくは約0.01重量%以上、約0.5重量%以下の、式P1~P25の化合物を含む群から選択される少なくとも1つのp型ドーパントと、
約0.01重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約4重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以上、約3重量%以下、加えて好ましくは約0.5重量%以上、約2重量%以下の、少なくとも1つの第1の有機芳香族電荷輸送材料および第2の有機芳香族電荷輸送材料と、ここで、第1の有機芳香族電荷輸送材料の分子量は第2の有機芳香族電荷輸送材料の分子量よりも低く、
約0.01重量%以上、約99.97重量%以下、好ましくは約0.1重量%以上、約99.80重量%以下、より好ましくは約1重量%以上、約98重量%以下の、23℃で液体である芳香族ニトリル化合物から選択され、好ましくはトルニトリルおよび/またはベンゾニトリルから選択される少なくとも1つの第1の補助化合物と、
約0重量%以上、約5重量%以下、好ましくは約0重量%以上、約1重量%以下、より好ましくは約0重量%以上、約0.1重量%以下、加えて好ましくは約0重量%以上、約0.01重量%以下の水と、
を含み、好ましくは、インク組成物は水を含まず、
ここで、重量%は、インク組成物の総重量に基づいており、全ての成分の総量は、100重量%を超えない。
【0161】
本発明の意味におけるインク組成物の例を以下の表4に示す。
【0162】
【図面の簡単な説明】
【0163】
【
図1】化合物P20のモリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン](Mo(tfd)
3)の各溶媒におけるt
0(t
0=溶解直後に測定)での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図2】[3]-ラジアレン化合物P11である、4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)の各溶媒におけるt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図3】[3]-ラジアレン化合物P15である、2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-アセトニトリル)の各溶媒におけるt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図4】[3]-ラジアレン化合物P18である、(2E,2’E,2''E)-2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(2,3,5-トリフルオロ-4,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アセトニトリル)の各溶媒におけるt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図5】化合物P21のフッ素化フラーレンC
60F
48の各溶媒におけるt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図6】化合物P20のモリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン](Mo(tfd)
3)の各溶媒における1週間後の紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図7】[3]-ラジアレン化合物P11である、4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)の各溶媒における1週間後の紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図8】[3]-ラジアレン化合物P15である、2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-アセトニトリル)の各溶媒における1週間後の紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図9】[3]-ラジアレン化合物P18である、(2E,2’E,2''E)-2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(2,3,5-トリフルオロ-4,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アセトニトリル)の各溶媒における1週間後の紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図10】t
0から22時間のインク保管期間の、各ニトリル非含有溶媒(比較例5a~5e)における[3]-ラジアレン化合物P17の吸収強度に関する紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図11】t
0から22時間のインク保管期間の、各ニトリル溶媒(実施例6aおよび6b)における[3]-ラジアレン化合物P17の吸収強度に関する紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図12】t
0およびt
7d(7日間のインク保管期間)でのトルエン(比較例7)における化合物P8の吸収強度に関する紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図13】t
0およびt
7d(7日間のインク保管期間)でのアニソール(比較例8)における化合物P8の吸収強度に関する紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図14】t
0およびt
7d(7日間のインク保管期間)でのベンゾニトリル(実施例9)における実施例化合物P8の吸収強度に関する紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【
図15】t
0からt
17h(17時間)までの期間における、アニソールにおけるポリマー1の有機電荷輸送材料に関する、紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)における吸収強度を示す。
【
図16】t
0からt
17h(17時間)までの期間における、ベンゾニトリルにおけるポリマー1の有機電荷輸送材料に関する、紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)における吸収強度を示す。
【
図17】アセトニトリルおよびイソバレロニトリルに溶解したモリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン](Mo(tfd)
3)[化合物P20]の580nmにおける紫外・可視吸収極大の強度を示す。
【
図18】アセトニトリルおよびイソバレロニトリルの各溶媒におけるモリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン](Mo(tfd)
3)[化合物P20]のt=0およびt=22hにおける紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【0164】
以下、実施例を参照して図面をより詳細に説明する。しかしながら、本開示は、以下の図面に限定されない。
【0165】
芳香族ニトリル溶媒および芳香族ニトリル非含有溶媒における各p型ドーパントの安定性を、紫外・可視吸収分光法(波長350nm~800nm)によって試験した。吸収は、サンプル間の直接的な比較可能性を保証するために正規化される。
【0166】
図1は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、p型ドーパント化合物P20のモリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン](Mo(tfd)
3)のt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す:
【0167】
【0168】
図2は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、p型ドーパント化合物P11のt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【0169】
【0170】
図3は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、p型ドーパント化合物P15のt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【0171】
【0172】
図4は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、p型ドーパント化合物P18のt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【0173】
【0174】
図5は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、p型ドーパントのフラーレン化合物C
60F
48(P21)のt
0での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。
【0175】
図6は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、大気下およびN
2雰囲気下の、p型ドーパント化合物P20のt
0およびt
7d(1週間のインク保管)での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。化合物P20は、ベンゾニトリルであるニトリル溶液において1週間にわたって安定していることが分かる。しかしながら、P20は、トルエンおよびアニソールであるニトリル非含有溶液において1週間にわたる保管が安定していない。
【0176】
【0177】
図7は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、大気下およびN
2雰囲気下の、p型ドーパント化合物P11のt
0およびt
7d(1週間のインク保管)での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。化合物P11は、ベンゾニトリルであるニトリル溶液において1週間にわたって安定していることが分かる。しかしながら、P11は、トルエンおよびアニソールであるニトリル非含有溶液において1週間にわたる保管が安定していない。
【0178】
【0179】
図8は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、大気下およびN
2雰囲気下の、p型ドーパント化合物P15のt
0およびt
7d(1週間のインク保管)での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。化合物P15は、ベンゾニトリルであるニトリル溶液において1週間にわたって安定していることが分かる。しかしながら、P15は、トルエンおよびアニソールであるニトリル非含有溶液において1週間にわたる保管が安定していない。
【0180】
【0181】
図9は、ベンゾニトリルである芳香族ニトリル溶液、および、トルエンおよびアニソールである芳香族ニトリル非含有溶液における、大気下およびN
2雰囲気下の、p型ドーパント化合物P18のt
0およびt
7d(1週間のインク保管)での紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。化合物P18は、ベンゾニトリルであるニトリル溶液において1週間にわたって安定していることが分かる。しかしながら、P18は、トルエンおよびアニソールであるニトリル非含有溶液において1週間にわたる保管が安定していない。
【0182】
【0183】
図10は、t
0から22時間のインク保管期間の、各ニトリル非含有溶媒(比較例5a~5e)における[3]-ラジアレンp型ドーパント化合物P17(比較例5a~5e)の吸収強度に関する紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。吸収強度が経時的に低下することは明らかである。強度の低下は、溶液中の吸収化合物P17の量の減少によって引き起こされる。溶液中の吸収化合物P17の量の減少は、溶液中のP17の分解に起因する。
【0184】
図11は、t
0から22時間のインク保管期間の、各ニトリル溶媒(実施例6aおよび6b)における[3]-ラジアレンp型ドーパント化合物P17の吸収強度に関する紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)を示す。吸収強度は、時間がたっても高レベル(>97%)で一定のままであるか(6a)、または、増加(6b)することが明らかである。一定した吸収強度(6a)は、溶液における吸収化合物P17の量が経時的に一定していることに起因する。P17は溶液において安定している。吸収強度(6b)の増加は、溶液における吸収化合物P17の量の経時的な増加に起因する。これは、P17の低速溶解を示す。約17時間後、吸収強度は一定の高い(>97%)レベルに達している。P17は溶液において安定している。
【0185】
図12は、t
0およびt
7d(7日間のインク保管期間)でのトルエン(比較例7)におけるp型ドーパント化合物P8の紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)における吸収強度を示す。吸収強度は低下している。化合物P8は、トルエンであるニトリル非含有溶液において経時的に安定していないことが明らかに分かる。
【0186】
【0187】
図13は、t
0およびt
7d(7日間のインク保管期間)でのアニソール(比較例8)におけるp型ドーパント化合物P8の紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)における吸収強度を示す。吸収強度は低下している。化合物P8は、アニソールであるニトリル非含有溶液において経時的に安定していないことが明らかに分かる。
【0188】
【0189】
図14は、t
0およびt
7d(7日間のインク保管期間)でのベンゾニトリル(実施例9)におけるp型ドーパント化合物P8の紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)における吸収強度を示す。吸収は経時的に一定のままである。化合物P8は、ベンゾニトリルであるニトリル溶液中で経時的に安定していることが明らかに分かる。
【0190】
【0191】
図15は、t
0からt
17h(17時間)までの期間における、アニソールにおけるポリマー1の有機電荷輸送材料についての紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)における吸収強度を示す。
【0192】
【0193】
図16は、t
0からt
17h(17時間)までの期間における、ベンゾニトリルにおけるポリマー1の有機電荷輸送材料についての紫外・可視吸収スペクトル(波長350nm~800nm)における吸収強度を示す。
図16は、23℃で17時間保管した後のアニソールとポリマー1の溶液の吸収損失が3%であることを示している。
【0194】
【0195】
図16は、23℃で17時間保管した後のベンゾニトリルとポリマー1の溶液の吸収損失が、測定技術の解像限界、すなわち、0.8%未満であることを示している。
【0196】
図17および18は、モリブデントリス-[1,2-ビス(トリフルオロメチル)エタン-1,2-ジチオレン](Mo(tfd)
3)[化合物P20]などのp型ドーパントが、アセトニトリル溶液またはイソバレロニトリル溶液などの非芳香族ニトリル溶液において、芳香族ニトリル溶液と比較して、安定していないことを明確に示している(
図6および
図11参照)。
【0197】
図15および16は、ニトリル非含有溶媒(
図10参照)または非芳香族ニトリル溶液(
図17および18参照)よりも、芳香族ニトリル溶液のほうが、保管のために有機電荷輸送材料をかなり良好に安定させることができることを明確に示している。
【0198】
分光光度分析のベールの法則(吸光度=e×L×c、ここで、e=モル吸光係数、L=サンプルの光路長、c=溶液中の化合物のモル濃度)によれば、吸収強度は、溶液中の化合物の濃度に正比例する。このことから、ポリマー1の3%が、17時間の保管後にアニソール溶液中で分解されると結論される。
【0199】
〔プリント方法〕
本開示の意味において、有機電子デバイスの層は、インク組成物から加工される。堆積方法は、インクジェットプリント、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スピンコーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、ラングミュア-ブロジェット(LB)方法のようなプリント方法であり得る。
【0200】
堆積方法は、スピンコーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティングのようなコーティング方法、あるいは、ナノインプリンティングのようなインプリンティング方法であってもよい。
【0201】
これらの方法は、液体処理による層形成の例として理解されるべきである。開示された製法を処理するという意味において、これら方法に限定されない。
【0202】
一実施形態によれば、インク組成物は、溶液処理、好ましくはスピンコーティング、スロットダイコーティング、および/または、インクジェットプリントによって処理され得る。
【0203】
別の実施形態によれば、当該方法は、
有機電子デバイスの画素セル(pexel cell)、好ましくは有機発光ダイオードの画素バンク(pixel bank)または太陽電池の画素バンクにおいて、好ましくは溶液処理によってインク組成物の層を形成する工程と、
インク組成物から補助化合物を蒸発させ、それによって有機半導体層を形成する工程と、
を含み得る。
【0204】
別の実施形態によれば、インク組成物から得られる有機半導体層は、アノードと直接接触して配置される。
【0205】
本発明に係るインク組成物を使用することによって、例えば、溶液処理によって得ることができる有機層は、約1nm以上、約1μm以下、好ましくは約2nm以上、約500nm以下、さらに好ましくは約5nm以上、約200nm以下の層厚を有し得る。
【0206】
インク組成物によって製造される有機層は、約1E-7S/cm≦σ≦1E1S/cmの伝導率σ(conductivity sigma)を有し得る。
【0207】
〔電子デバイス〕
本発明に係るインク組成物を用いて得られた有機層は、以下のように電子デバイスにおいて用いることができる:
1)有機層は、有機発光ダイオード(OLED)デバイスにおいて、デバイス積層体(正孔輸送領域)のp側で、好ましくはアノードと直接接触して、正孔注入層(HIL)として使用され、アノードの陽電荷キャリア(正孔)の、電子デバイスの隣接する層への効率的な注入を可能にする。
2)有機層は、有機光電池(OPV)デバイスにおいて、導電層としての電極に近接して(好ましくは直接接触して)使用され、デバイス積層体の、吸収層、活性層、正孔輸送層のような隣接する層から、アノードまたはカソードである導電性電極への電荷キャリアの効率的な抽出を容易にする。
3)有機層は、有機光電池(OPV)デバイスおよび/または有機発光ダイオード(OLED)デバイスにおいて、「低電気損失」接続層として、または、少なくとも2つのデバイス要素間の「低電気損失」接続層積層体の一部として使用される。この「低電気損失」接続層または「低電気損失」接続層積層体は、pn接合層または電荷発生層(CGL)であり得る。「低電気損失」接続層または「低電気損失」接続層積層体は、いくつかの層、好ましくはn型層およびp型層から構成されてもよく、これらの層は互いに直接接触していてもよく、あるいは、中間層によって区分されていてもよい。本発明に係る有機層は、好ましくはp型層である。
4)有機層は、有機薄膜トランジスタにおいて、トランジスタ電極上で使用され、電極と電極に直接接触する層との間の接触抵抗を低減する。
【実施例】
【0208】
標準的なOLEDを使用して、本発明のインク組成物を試験した。本発明のOLEDデバイスInv-OLED-1~Inv-OLED-4を構成する層を、以下のように順次堆積させた:
ITO / 本発明のHIL(40nm) / HTM-1(90nm) / ホスト-1:エミッタ-1(5重量%、20nm) / n-ETM-1(30nm) / LiQ(1nm) / Al(100nm)
まず、クリーンルームワイプおよびトルエン溶媒を用いてガラス基板上のITOを洗浄した後、プラズマ洗浄した。続いて、inv-ink1を、以下のレシピを用いて窒素グローブボックス内でスピンコーティングによって堆積させた;スピン工程1:加速=2s、速度=750rpm、t=5秒間;スピン工程2:加速=2s、速度=1200rpm、t=30秒間。層をホットプレート上で、60℃で1分間乾燥させ、続いて、架橋のためのハードベーク(hard bake)を150℃で30分間行った。それに続く全ての層を、真空熱蒸着(VTE)によって、約1E-7mbarの圧力、および、有機層については毎秒約1オングストロームの堆積速度で、アルミニウムカソード層については毎秒約3オングストロームの堆積速度で堆積させた。VTEにより堆積された材料は、HTM-1=N4,N4''-ジ(ナフタレン-1-イル)-N4,N4''-ジフェニル-[1,1’:4’,1''-テルフェニル]-4,4''-ジアミン;ホスト-1=9-(4-(ナフタレン-1-イル)フェニル)-10-(フェニル-d5)アントラセン;エミッタ-1=KR20110015213の化合物BD23;n-ETM-1=2-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[ジ]イミダゾール:LiQ(1:1重量%)であった。
【0209】
実施例Inv-OLED-1~Inv-OLED-4において、本発明のインク組成物は著しく改善された安定性を有することが実証されている。
【0210】
実施例Inv-OLED-1~Inv-OLED-4において、液体インク組成物(23℃で液体)を、以下の成分を混合することによって得た:
ポリマー1の第1の有機電荷輸送材料(GPC/SECによるとMn=15458.00g/mol、GPC/SECによるとMw=23422.00g/mol)、および、ポリマー2の第2の有機電荷輸送材料(GPC/SECによるとMn=17604.00g/mol、GPC/SECによるとMw=31690.00g/mol)である有機電荷輸送材料、
p型ドーパントP17、
ベンゾニトリル、
アニソール。
【0211】
溶媒の体積比は、アニソール:ベンゾニトリル=5:1体積%である。インク中の全固形分は、インク組成物の総重量に基づいて、2重量%であった。ベンゾニトリルおよびアニソールを除去した後に得られる、固体HIL層中のp型ドーパントP17の含有量は、20重量%である。なお、p型ドーパントP17の含有量は、固体HIL層の総重量に基づいて計算される。
【0212】
ポリマー1とポリマー2の重量比は、3.6:10である。
【0213】
得られた本発明に係るインク組成物、例えば、t=0におけるInv-OLED-1、例えば、t=2週間におけるInv-OLED-2、例えば、t=12週間におけるInv-OLED-3、および、例えば、t=22週間におけるInv-OLED-4を用いてHIL層を調製した。
【0214】
実施例Inv-OLED-1~Inv-OLED-4に係る本発明のインクを用いて調製したHIL層を含むOLEDのデバイス性能データを表5に示す。
【0215】
【0216】
インクの優れた保管安定性が実証された。OLED性能は、22週間までのインク保管期間では変化しない。
【0217】
実用的な例示的実施形態であると現在考えられているものに関連して本発明を説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されず、反対に、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる様々な変更および同等の構成を包含することが意図されることを理解されたい。
【0218】
従って、前述の実施形態は、例示的なものであって、本発明をいかなるようにも限定するものではないことを理解されたい。