(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】C5結合性を欠失したコバーシンバリアント
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221128BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20221128BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221128BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221128BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221128BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221128BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20221128BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20221128BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20221128BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221128BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221128BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221128BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221128BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221128BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20221128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221128BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/435
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12P21/00 C
A61K38/17
A61K31/7088
A61P9/12
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/06
A61P43/00 111
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2019556928
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2018060240
(87)【国際公開番号】W WO2018193121
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514058533
【氏名又は名称】ヴォリューション イミュノ ファーマシューティカルズ エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(72)【発明者】
【氏名】ナン,マイルズ アンドリュー
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511632(JP,A)
【文献】特表2012-516694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイド結合活性を示し、かつ減少したC5結合性を示すか、またはC5結合性を示さない改変コバーシンポリペプチドであって、前記改変コバーシンポリペプチドが、配列番号3において1~30のアミノ酸置換がなされた配列を含み、ここで
(i)配列番号3の114~124位に以下の置換がなされている:
a. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
b. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはProで置換されている;
c. Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
d. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHisで置換されている;
e. Glu123が、Ala、Asp、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されている;
および、
(ii)配列番号3中のAla44が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;および、
(iii)配列番号3中のAsp149が、Gly、Gln、Asn、Ala、Met、Arg、Lys、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されている;および、
(iv)Met114、Trp115、Asp118、Ala119、Gly120およびVal124が置換されていない;
改変コバーシンポリペプチド、または改変コバーシンポリペプチドのN末端から最大で5つのアミノ酸が欠失されているその断片。
【請求項2】
配列番号3の114~124位において
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu117が、Serで置換されている;
c. Gly121が、Alaで置換されている;
d. Leu122が、Aspで置換されている;および
e. Glu123が、Alaで置換されている、
請求項
1に記載の改変コバーシンポリペプチドまたはその断片。
【請求項3】
配列番号3のアミノ酸位置114~124間に、配列番号11に示されるループ配列を有する、請求項1または2に記載の改変コバーシンポリペプチドまたはその断片。
【請求項4】
配列番号6に示される置換以外に、配列番号3と比較して1~20の追加的な置換を有し、任意選択で、
(i)配列番号6に示される置換以外に、配列番号3と比較して2~15の追加的な置換を有する;または、
(ii)配列番号6に示される置換以外に、配列番号3と比較して3~10の追加的な置換を有する、
請求項
3に記載の改変コバーシンポリペプチドまたはその断片。
【請求項5】
配列番号6からなるまたはそれを含む、請求項1
~4のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチド。
【請求項6】
(i)配列番号3中のAla44がAsnで置換されている;
(ii)配列番号3中のAla44がAsnで置換されている;
(iii)配列番号3の6、38、100、128、129、150位の6つのシステインアミノ酸が、未改変形態で保持されている;
(iv)Asn60およびAsn84が、それぞれGlnで置換されている;
(v)以下のアミノ酸:Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、
およびAsp103
の1または2以上、あるいは全てが置換されていない;
(vi)配列番号3中のアミノ酸5、6、11、13~15、20~21、24~27、29~32、35~41、45、47~48、50、52~60、64、66、69~81、83、84、86、90~94、97~104、112~113
、125~129、132~139、145、148、および150のどれも置換されていない;
(vii)配列番号3中のアミノ酸5、6、11、13~15、18、20~21、24~27、29~32、35~41、43、45、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、97~104、112~113
、125~129、132~139、145、148、および150のどれも置換されていない;および/または
(viii)配列番号3中のアミノ酸5、6、11、13~15、18、20~21、24~25、27、30~32、35~41、43、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、98、100、102~104、112~113
、126、128~129、132~139、145、148、および150のどれも置換されていない、
請求項1
~4のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチドまたはその断片。
【請求項7】
LTB
4に結合する、請求項1
~6のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチドまたはその断片。
【請求項8】
1または2以上のペプチドまたはポリペプチドと遺伝的または化学的に融合されている、請求項1
~7のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質であって、任意選択で
(i)PAS配列を含む;または
(ii)改変コバーシンポリペプチドのN末端に融合された、配列番号13の30コピーからなるPAS配列を含む、融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1
~7のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチドもしくはその断片または請求項
8に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項10】
請求項
9に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
請求項
9に記載の核酸分子または請求項
10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1
~7のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチドもしくはその断片、または請求項
8に記載の融合タンパク質を調製する方法であって、請求項
11に記載の宿主細胞を前記タンパク質が発現する条件で培養すること、およびそのように産生された前記タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項13】
請求項1
~7のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチド、請求項
8に記載の融合タンパク質、または請求項
9に記載の核酸分子を、薬学的に許容される担体と共に含む組成物。
【請求項14】
請求項1
~7のいずれか一項に記載の改変コバーシンポリペプチド、請求項
8に記載の融合タンパク質、請求項
9に記載の核酸分子、または請求項
13に記載の組成物を含む、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイドによって媒介される疾患または症状を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エイコサノイドによって媒介される疾患および症状(condition)の治療に有用な組成物、特に、ロイコトリエンおよびヒドロキシエイコサノイド、特にLTB4によって媒介される疾患および症状の治療のためのロイコトリエン/ヒドロキシエイコサノイド(LK/E)結合活性を有する改変マダニ由来化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エイコサノイドは、炭素数20の脂肪酸であるアラキドン酸(AA)から3つの主要酵素経路:シクロオキシゲナーゼ(COX)、リポキシゲナーゼ(LO)、およびチトクロームP450モノオキシゲナーゼ(CYP450)を経由して誘導される、酸化生物学的活性脂質メディエーターのファミリーである。エイコサノイドには、COX経路由来のプロスタノイド(プロスタグランジン、PG、およびトロンボキサン、TXBを含む)、LO経路由来のロイコトリエン(LK)ならびにLOおよびP450モノオキシゲナーゼ経路由来のヒドロキシエイコサテトラエン酸(HETE)およびエポキシエイコサトリエン酸(EET)が含まれる(Curtis-Prior、2004;Peters-Golden & Henderson Jr.、2007)。エイコサノイドは、多種多様な細胞型および器官に対する多数の効果を媒介する。これらの効果には、血管緊張ならびに毛細血管および細静脈の透過性の調節(PG、TBX、LK)、筋肉の収縮または弛緩(PG、TBX、システイニルLK)、血小板機能の刺激または阻害(TBX、PG、LK)、腎血流および無機質代謝の調節(Imig、2000;HaoおよびBreyer、2007)、悪性細胞の増殖および/または蔓延の制御(Schwartzら、2005;Aya、2006)、ならびに特に自己免疫および炎症症状における白血球の活性化(LK、HETE)(Samuelsson、1983;Kim & Luster、2007)が含まれる。
【0003】
ロイコトリエンB4(LTB4)は、記載された、最も強力な走化性および化学運動性のエイコサノイドであり、インテグリンのアップレギュレーションを介して好中球の血管内皮への接着を促進する(Hooverら、1984)。LTB4は、また、好中球に関する完全な分泌促進物質であり、その凝集を誘導し、微小血管透過性を増加させる。LTB4は、ナチュラルキラー細胞、単球および好酸球を動員および活性化する。LTB4は、スーパーオキシドラジカルの形成を増加させ(HarrisonおよびMurphy、1995)、組織の炎症を増強および延長するおそれがある、いくつかの炎症性サイトカインおよびメディエーターの産生を含む遺伝子発現をモジュレートする(Ford-Hutchinson、1990;Showellら、1995)。LTB4は、また、適応免疫応答の誘導および管理において役割を果たす。例えば、流入領域リンパ節への樹状細胞の輸送の調節(Klaasら、2005;Del Preteら、2007)、肺T細胞からのTh2サイトカインIL-13の産生(Miyaharaら、2006)、抗原特異的エフェクターCD8+ T細胞の動員(Taubeら、2006)ならびにヒトBリンパ球の活性化および増殖(Yamaokaら、1989)である。
【0004】
ロイコトリエンB4(LTB4)およびヒドロキシエイコサノイドは、BLT1およびBLT2 Gタンパク質共役受容体を介してその効果を媒介する(Yokomizoら、1997、2000)。ヒトBLT1は、LTB4に特異的な高親和性受容体であり(KD 0.39~1.5nM;TagerおよびLuster、2003)、競合結合研究において20-ヒドロキシLTB4および12-エピLTB4だけがLTB4に代替しうる(Yokomizoら、2001)。ヒトBLT2は、BLT1と比較してLTB4に対して20分の1の親和性(KD 23nM)を有し、12-エピLTB4、20-ヒドロキシLTB4、12(S)-HETE、15(S)-HETE、12(S)-HPETEおよび15(S)-HPETEを含む、より広範囲のエイコサノイドと結合することによって活性化される(Yokomizoら、2001)。ヒトBLT2は、ヒトおよびマウスBLT1と45.2および44.6%のアミノ酸同一性を有するが、一方で、ヒトBLT2とマウスBLT2とは、92.7%の同一性を有する(Yokomizoら、2000)。
【0005】
ヒトBLT1は、内皮細胞および血管平滑筋細胞で発現することが最近報告されたが、主として白血球の表面で発現する。ヒトBLT2は、より広範囲の組織および細胞型で発現する。ヒト好中球の活性化、血管外遊出およびアポトーシスを阻害し(KimおよびLuster、2007)、炎症性関節炎(Kimら、2006)および腎虚血再灌流(Noiriら、2000)のマウスモデルにおいて好中球浸潤によって起きる症状を軽減する、BLT1およびBLT2のいくつかの特異的アンタゴニストが記載されている。BLT1およびBLT2のいずれも、LTB4およびヒドロキシエイコサノイドを介して病的作用を媒介することができるが(Lundeenら、2006)、BLT1が、マウスにおけるコラーゲン誘発関節炎などのいくつかの病状に疑いなく優位な役割を果たすことが、ますます多くの研究によって示されている(Shaoら、2006)。BLT1-/-欠損マウスも、炎症応答において好中球の遊走を方向づけることにBLT1が重要であることを明らかにした。特に、5LO欠損マウス系統を使用して、好中球上のBLT1のオートクリン活性化が、関節炎を起こした関節への好中球の動員に必要であることが示された(Chenら、2006)。
【0006】
B4イソロイコトリエンなどのLTB4の酸化異性誘導体も、生物学的に活性である(Harrisonら、1995)。ヒドロキシエイコサノイドのように、例えば5(S)-HETEは、好酸球に対する高度に強力な走化性因子である(PowellおよびRokach、2005)。LTA4から誘導されるシステイニルLKは、気道を覆う平滑筋の収縮によって起きる気管支収縮;血管漏出によって起きる粘膜浮腫;粘液の分泌増加;および好酸球が豊富な炎症細胞浸潤物の存在を含む、喘息の病態生理と相関する(Bisgaardら、1985;Drazenら、1988)。
【0007】
いくつかの市販薬が、エイコサノイドを標的とする。これらには、ホスホリパーゼA2(PLA2)をモジュレートし、それにより、エイコサノイド前駆体AAの放出を阻害するグルココルチコイド(Sebaldtら、1990)、ならびにPGおよびTXBの合成を防止する非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および他のCOX2阻害剤が含まれる(Curryら、2005)。LTB4合成に必要な5-LO酵素を阻害する(ジロートン;Dubeら、1998)か、またはシステイニルロイコトリエンの効果を媒介するCysLT1受容体と拮抗する(ザフィルルカストおよびモンテルカスト)(SharmaおよびMohammed、2006)、いくつかのLK調節物質もある。LK調節物質は、経口的に利用可能であり、例えば喘息の治療に使用するためにFDAによって承認されている。LTB4またはその受容体に特異的に作用する薬物は、まだ販売されていない。
【0008】
WO2004/106369は、補体成分C5に直接結合することによって古典的補体経路、レクチン補体経路および第二補体経路のいずれも阻害するヒメダニ由来補体(C)阻害剤コバーシンを記載している(Nunnら、2005)。コバーシンは、吸血節足動物の唾液腺から得られる。コバーシンは、治療可能性も証明されている(Hepburnら、2007)。コバーシンは、ヒトを含む広範囲な哺乳動物種において補体(C)成分5(C5)のC介在性活性化を防止する(Barratt-Due、A.ら(2011)J.Immunol.187、4913~4919))。CUB、C5dおよびC5-C345C C5ドメインに直接結合することによって、コバーシンは、C5補体コンバターゼによるC5開裂を防止し、それにより、アナフィラトキシンC5aの放出および補体成分C5b-9複合体を含む膜侵襲複合体(MAC)形成の中核となるC5bの形成を防止する(例えば、Joreら、2016を参照されたい)。コバーシンは、エイコサノイド、特にLK、とりわけLTB4に結合し(Roversi、P.ら、(2013)J.Biol.Chem.2013、288:18789~18802)、それらをタンパク質内に封入することも示されている。コバーシンは、LTB4およびC5と同時に結合することができ、その結合部位は、コバーシンの対面に位置し、LTB4結合ポケットは、C5-コバーシン複合体において完全にアクセス可能であることが、知られている(Joreら、2016)。
【発明の概要】
【0009】
コバーシンポリペプチドは、そのC5結合活性(したがって、その補体阻害剤活性)を減少または除去する一方で、ロイコトリエン/ヒドロキシエイコサノイド(LK/E)結合活性(例えばLTB4結合活性)を保持するように改変できることが見出されている。特に、本発明者らは、配列番号3を含むコバーシンポリペプチドを特定の残基で改変することで、C5結合性を減少または除去できることを示した。
【0010】
したがって、本発明は、減少したC5結合性を示すか、またはC5結合性を示さないが、LK/Eに結合する、配列番号3を含むコバーシンポリペプチドの改変バージョン、およびこのような改変コバーシンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0011】
このような改変コバーシンポリペプチド、またはこのような改変コバーシンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、LK/E阻害剤として作用し、LK/Eによって媒介される疾患および症状の予防および治療に使用することができる。これらの改変分子は、減少したC5結合性を示すか、またはC5結合性を示さず、その結果、C5コンバターゼ阻害が減少、またはC5コンバターゼ阻害がなく、補体活性への干渉が減少、または干渉がないであろうことが分かる。
【0012】
本発明は、また、ロイコトリエン、特にLTB4およびヒドロキシエイコサノイドがその病理に関与することが示唆されている疾患の治療および予防における、本発明の改変コバーシンポリペプチドおよびコードするヌクレオチドの使用に関する。本発明の改変コバーシンポリペプチドは、LKおよびヒドロキシエイコサノイドに結合し、それを包み込む(cage)ことができる。これは、リガンドがBLT1受容体およびBLT2受容体の両方と相互作用することを防止する場合があり、両方の受容体を経由するシグナル伝達に依存することがしばしば示されている脂肪酸の炎症促進作用を緩和する。したがって、本発明の一態様により、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイドによって媒介される疾患または症状の治療のための、本発明の改変コバーシンポリペプチドおよびコードするヌクレオチドが、提供される。
【0013】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイドによって媒介される疾患および症状の治療に使用され得る。本発明により治療できる疾患および障害の例には、接触過敏症、潰瘍性大腸炎、食道腺がん、膵臓腺がん、乳がん、ざ瘡、動脈瘤、歯周病、嚢胞性線維症、喘息、および細気管支炎が含まれる。
【0014】
さらなる例には、好ましくは、アルファ-1アンチトリプシン疾患(AATD)、肺動脈高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、特発性肺疾患(IPD)、重症持続性喘息、運動およびアスピリン誘発喘息、アレルギー性鼻炎、および珪肺症から選択される肺および気道の症状;好ましくは自己免疫性水疱症、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、およびチャーグ-ストラウス症候群から選択される皮膚症状;好ましくは膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、前立腺がん、肺がん、食道がん、およびがん転移から選択されるがん;自己免疫性ぶどう膜炎、アレルギー性結膜炎、および本出願で後記するその他の症状などの眼の症状が含まれる。関心対象となる他の一般的な全身症状には、関節リウマチ、骨破壊性関節炎、閉経後骨粗鬆症、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、グッドパスチャー症候群および糸球体腎炎を含む血管炎、全身性硬化症、2型糖尿病、糖尿病性腎症、鎌状赤血球症(SCD)、マラリア、外傷、心筋梗塞、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、アテローム動脈硬化症、冠動脈形成術後の再狭窄、多発性硬化症(MS)、認知症、移植片対宿主病(GVHD)、および神経障害が含まれる。
【0015】
最も好ましくは、本発明は、AATD、COPD、PAH、喘息、例えば重症持続性喘息、GVHD、水疱形成皮膚疾患および乾癬の治療に使用される。
【0016】
本発明の別の態様では、対象に、本発明による改変コバーシンポリペプチドまたは改変コバーシンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの治療有効量を投与することを含む、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイドによって媒介される疾患または症状を、その治療または予防を必要とする対象において治療または予防する方法が提供される。
【0017】
本発明のさらなる態様では、改変コバーシンポリペプチドおよび脂肪酸を含む組成物が、提供される。脂肪酸は、好ましくは治療用脂肪酸であり、個体への送達のために提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様では、PAS配列および本発明の改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】補体活性化の古典的経路および第二経路の模式図を示す。酵素成分は、濃い灰色。アナフィラトキシンを星形で囲む。
【
図2A】コバーシンの一次配列を示す図である。シグナル配列に下線を付ける。システイン残基を太字で示す。ヌクレオチド番号およびアミノ酸番号を右に示す。
【
図2B】コバーシンバリアントの例を示す図である。
【
図3】大腸菌(E.coli)から発現および精製したコバーシン野生型(レーン1)、コバーシンバリアント1(レーン2)およびコバーシンバリアント2(レーン3)の還元SDS-PAGEゲルを示す図である。
【
図4A】C5に結合する野生型コバーシンおよびコバーシンバリアント1およびコバーシンバリアント2についての表面プラズモン共鳴のトレースを示す図である。
【
図4B】C5に結合する野生型コバーシンおよびコバーシンバリアント1およびコバーシンバリアント2のPAS化(PASylated)バージョンについての表面プラズモン共鳴のトレースを示す図である。
【
図5A】LTB
4に結合する、様々な濃度での、野生型コバーシンおよびコバーシンバリアント1およびコバーシンバリアント2についての蛍光滴定曲線を示す図である。
【
図5B-1】LTB
4に結合する、様々な濃度での、野生型コバーシンおよびコバーシンバリアント1およびコバーシンバリアント2のPAS化バージョンについての蛍光滴定曲線を示す図である。
【
図5B-2】LTB
4に結合する、様々な濃度での、野生型コバーシンおよびコバーシンバリアント1およびコバーシンバリアント2のPAS化バージョンについての蛍光滴定曲線を示す図である。
【
図6】円二色性分光法により測定したときの野生型コバーシンならびにコバーシンバリアント1および2についての熱変性曲線を示す図である。各タンパク質の融解温度に関する値の表も示す。
【
図7】CH50アッセイによって測定したときのC5介在性ヒツジ赤血球溶解に対する野生型コバーシンならびにコバーシンバリアント1および2の作用を示す図である。
図7に示すこのアッセイの結果は、野生型コバーシンならびにバリアント1および2がC5を阻害する能力の間接的尺度として使用される。
【
図8】喘息のマウスモデルの気管支肺胞洗浄液および肺中の好酸球数および好中球数に対するL-コバーシンの作用を示す図である。L-コバーシンの投与前に喘息マウスをチリダニ(HDM)に曝露した。対照群のマウスにHDM曝露の代わりにリン酸緩衝食塩水を導入した。
【
図9A】EBAのマウスモデルに対する長時間作用型L-コバーシン(PAS-L-コバーシン)の作用を示す図である(A:実験1)。
【
図9B】EBAのマウスモデルに対する長時間作用型L-コバーシン(PAS-L-コバーシン)の作用を示す図である(B:実験2)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列の説明
配列番号1は、Ornithodoros moubataのコバーシンのポリヌクレオチド配列である。
配列番号2は、Ornithodoros moubataのコバーシンのアミノ酸配列(すなわち、アミノ酸1~168)である。配列は、アミノ酸132~142のベータHとアルファ2との間のループを特徴とする。
配列番号3は、配列番号2に示されるアミノ酸19~168のアミノ酸配列であり、シグナル配列である、配列番号2のタンパク質の最初の18アミノ酸の配列を有さないOrnithodoros moubataのコバーシンのアミノ酸配列である。配列は、アミノ酸114~124のベータHとアルファ2との間のループを特徴とする。
配列番号4は、配列番号3のポリヌクレオチド配列である。
配列番号5は、配列番号3が、Met114をGlnに、Met116をGlnに、Leu117をSerに、Asp118をAsnに、Ala119をGlyに、Gly120をSerに、Gly121をAlaに、Leu122をAspに、Glu123をAspにおよびVal124をLysに変更するように改変された、本発明による改変コバーシンのアミノ酸配列である。(コバーシンバリアント1)
配列番号6は、配列番号3が、Ala44をAsnに、Met116をGlnに、Leu117をSerに、Gly121をAlaに、Leu122をAspに、Glu123をAlaにおよびAsp149をGlyに変更するように改変された、本発明による改変コバーシンのアミノ酸配列である。(コバーシンバリアント2)
配列番号7は、Ala44をAsnに、Met116をGlnに、Leu122をAspにおよびAsp149をGlyに変更するように改変された、本発明による改変コバーシンのアミノ酸配列である。(コバーシンバリアント3)
配列番号8は、Ala44をAsnに変更するように改変された、本発明による改変コバーシンのアミノ酸配列である。(コバーシンバリアント4)
配列番号9は、配列番号3のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
配列番号10は、コバーシンバリアント1における配列番号3(配列番号5)のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
配列番号11は、コバーシンバリアント2における配列番号3(配列番号6)のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
配列番号12は、コバーシンバリアント3における配列番号3(配列番号7)のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
配列番号13~19は、PAS配列である。
【0021】
発明の詳細な説明
一態様では、本発明は、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイド結合活性を示し、かつ減少したC5結合性を示すか、またはC5結合性を示さない改変コバーシンポリペプチドであって、前記改変コバーシンポリペプチドが、配列番号3において1~30のアミノ酸置換がなされた配列を含み、ここで
(i)配列番号3の114~124位に以下の置換(a)~(j)の1または2以上がなされている:
a. Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
b. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
c. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはProで置換されている;
d. Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、His、またはThrで置換されている;
e. Ala119が、Gly、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
f. Gly120が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
g. Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
h. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHisで置換されている;
i. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されている;
j. Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;または/および
(ii)配列番号3中のAla44が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
改変コバーシンポリペプチド、または改変コバーシンポリペプチドのN末端から最大で5つのアミノ酸が欠失されているその断片を提供する。
【0022】
本発明による改変コバーシンポリペプチドまたはその断片を含む融合タンパク質も、提供される。
【0023】
本発明による改変コバーシンポリペプチドまたはその断片をコードする核酸分子、ならびに本発明による核酸分子を含むベクターおよび本発明による核酸分子または本発明によるベクターを含む宿主細胞も、提供される。
【0024】
本発明による改変コバーシンポリペプチドもしくはその断片、または本発明による融合タンパク質を調製する方法であって、前記タンパク質が発現する条件で本発明による宿主細胞を培養すること、およびそのように産生された前記タンパク質を回収することを含む方法も、提供される。
【0025】
本発明による改変コバーシンポリペプチド、本発明による融合タンパク質、または本発明による核酸分子を薬学的に許容される担体と共に含む組成物も、提供される。
【0026】
治療における使用のための、本発明による改変コバーシンポリペプチド、本発明による融合タンパク質、本発明による核酸分子または本発明による組成物が、さらに提供される。
【0027】
ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイドによって媒介される疾患または症状の治療における使用のための、本発明による改変コバーシンポリペプチド、本発明による融合タンパク質、本発明による核酸分子または本発明による組成物も提供され、対象におけるロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイドによって媒介される疾患または症状を治療または予防する方法であって、本発明により前記対象に本発明による融合タンパク質、本発明による核酸分子または本発明による組成物を投与することを含む方法も、同様である。
【0028】
一態様では、本発明は、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイドによって媒介される疾患または症状の治療のための改変コバーシンポリペプチドまたは前記改変コバーシンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0029】
改変コバーシンポリペプチド
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、Ornithodoros moubataの唾液から単離されたマダニ由来補体阻害剤に基づく。このタンパク質は、最初にマダニの唾液腺から単離されたが、古典的補体経路および第二補体経路ならびにロイコトリエンおよびヒドロキシエイコサノイド(特にLTB4)を阻害することが見出されている。このタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。一部の実施形態では、本発明による改変コバーシンポリペプチドは、配列番号2に示される完全配列の改変バージョンであり得る。
【0030】
代替的な実施形態では、タンパク質配列の最初の18アミノ酸(シグナル配列)を含まない形態のコバーシンポリペプチドが、提供される。したがって、本発明による改変コバーシンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸19~168である配列番号3の改変バージョンであり得る。
【0031】
本出願全体にわたり、「改変コバーシンポリペプチド」への言及は、配列番号2または配列番号3のいずれかの改変バージョン、すなわち、配列番号2のN末端に見られる18アミノ酸のシグナル配列を有するまたは有さないコバーシンポリペプチドへの言及と理解されたい。
【0032】
配列番号3内の特定のアミノ酸が、配列番号3中のその位置番号への言及により定義される場合、このアミノ酸は、配列番号2中のその位置番号への言及によっても定義することができ、この番号は、配列番号2のN末端に18アミノ酸のシグナル配列が存在するせいで、配列番号3よりも18大きい。
【0033】
本発明の改変コバーシンポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2または配列番号3における配列と1~30のアミノ酸だけ異なるが、未改変コバーシンポリペプチドで見られるようなLK/E結合活性をある程度保持する。本発明の改変コバーシンポリペプチドは、また、配列番号2および配列番号3における未改変コバーシンポリペプチドと比較して、減少したC5結合性を示す、またはC5結合性を示さない。本明細書に使用されるLK/E結合活性は、LTB4、B4イソロイコトリエンおよびその任意のヒドロキシル化誘導体、HETE、HPETEならびにEETを含むが、それに限定されないロイコトリエンおよびヒドロキシエイコサノイドに結合する能力を表す。LTB4結合性が、特に関心対象である。
【0034】
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、下の説明により改変された配列番号2もしくは3からなるか、または下の説明により改変された配列番号2もしくは3を含み得る。
【0035】
配列番号2および配列番号3における未改変コバーシンポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間のループを特徴とする。このループは、以下に示される配列を有する:
-Met-Trp-Met-Leu-Asp-Ala-Gly-Gly-Leu-Glu-Val- (配列番号9)
最初のMetは、配列番号3の114位および配列番号2の132位にある。
【0036】
本発明の一態様では、配列番号2または配列番号3におけるコバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAlaで置換されている;
b. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAlaで置換されている;
c. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerまたはAlaで置換されている;
d. Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met Pro、His、またはThr、好ましくはAsnで置換されている;
e. Ala119が、Gly、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはGlyまたはAsnで置換されている;
f. Gly120が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはSerまたはAsnで置換されている;
g. Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaまたはAsnで置換されている;
h. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspまたはAlaで置換されている;
i. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAsp、Ala、GlnまたはAsnで置換されている;
j. Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはLysまたはAlaで置換されている
の1または2以上がなされるように改変されている。
【0037】
本発明の実施形態では、配列番号2または配列番号3におけるコバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Glnで置換されている;
b. Met116が、Glnで置換されている;
c. Leu117が、Serで置換されている;
d. Asp118が、Asnで置換されている;
e. Ala119が、Glyで置換されている;
f. Gly120が、Serで置換されている;
g. Gly121が、Alaで置換されている;
h. Leu122が、Aspで置換されている;
i. Glu123が、Asp、またはAlaで置換されている;
j. Val124が、Lysで置換されている
の1または2以上がなされるように改変されている。
【0038】
本発明の実施形態では、配列番号2または配列番号3におけるコバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Alaで置換されている;
b. Met116が、Alaで置換されている;
c. Leu117が、Alaで置換されている;
d. Asp118が、Asnで置換されている;
e. Ala119が、Asnで置換されている;
f. Gly120が、Asnで置換されている;
g. Gly121が、Asnで置換されている;
h. Leu122が、Alaで置換されている;
i. Glu123が、Gln、またはAsnで置換されている;
j. Val124が、Alaで置換されている
の1または2以上がなされるように改変されている。
【0039】
本発明の実施形態では、置換(a)~(j)の2、3、4、5、6、7、8、9、または10が存在する。好ましくは置換(a)~(j)の2つ以上、5つ以上、または8つ以上が存在する。
【0040】
一部の実施形態では、配列番号2または配列番号3におけるコバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換:
a. Met114が、Glnで置換されている;
b. Met116が、Glnで置換されている;
c. Leu117が、Serで置換されている;
d. Asp118が、Asnで置換されている;
e. Ala119が、Glyで置換されている;
f. Gly120が、Serで置換されている;
g. Gly121が、Alaで置換されている;
h. Leu122が、Aspで置換されている;
i. Glu123が、Aspで置換されている;
j. Val124が、Lysで置換されている
が存在するように改変されている。
【0041】
必要に応じて、上述の改変コバーシンポリペプチドにおいて、Trp115は置換されていない。好ましい改変コバーシンポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間に、配列Gln-Trp-Gln-Ser-Asn-Gly-Ser-Ala-Asp-Asp-Lys(配列番号10)を有するループを有する。
【0042】
一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換:
a. Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnで置換されている;
b. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerで置換されている;
c. Gly121が、Ala、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaで置換されている;
d. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspで置換されている;
e. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAspまたはAla、より好ましくはAlaで置換されている
が存在するように改変されている。
【0043】
より詳細な実施形態では;
a. Met116は、Glnで置換されている;
b. Leu117は、Serで置換されている;
c. Gly121は、Alaで置換されている;
d. Leu122は、Aspで置換されている;
e. Glu123は、Alaで置換されている。
【0044】
必要に応じて、上述のこの改変コバーシンポリペプチドでは、Trp115は置換されていない。必要に応じて、この実施形態では、Met114、Trp115、Asp118、Ala119、Gly120およびVal124は、置換されていない、または本明細書の他で言及されたように保存的置換で置換されている。好ましい改変コバーシンポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間に、配列Met-Trp-Gln-Ser-Asp-Ala-Gly-Ala-Asp-Ala-Val(配列番号11)を有するループを有する。
【0045】
一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位で以下の置換:
a. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnで置換されている;
b. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspで置換されている
が存在するように改変されている。
【0046】
より詳細な実施形態では;
a. Met116は、Glnで置換されている;
b. Leu122は、Aspで置換されている。
【0047】
必要に応じて、上述のこの改変コバーシンポリペプチドにおいて、Trp115は、置換されていない。必要に応じて、この実施形態では、Met114、Trp115、Leu117、Asp118、Ala119、Gly120、Gly121、Glu123およびVal124は、置換されていない。好ましい改変コバーシンポリペプチドは、配列Met-Trp-Gln-Leu-Asp-Ala-Gly-Gly-Asp-Glu-Valを有する配列番号3のアミノ酸位置114~124(配列番号12)のベータHとアルファ2との間にループを有する。
【0048】
本発明の別の態様では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3中のAla44(配列番号2中のAla62)が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されるように改変されている。
【0049】
好ましい実施形態では、配列番号3中のAla44は、Asnで置換されている。
【0050】
配列番号3の44位(または配列番号2の62位)でのこの置換は、本明細書に記載される他の置換のいずれかと組み合わせてなされ得る。
【0051】
本発明の別の態様では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAla、例えばGlnで置換されている;
b. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAla 例えばGlnで置換されている;
c. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerまたはAla、例えばSerで置換されている;
d. Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met Pro、His、またはThr、好ましくはAsnで置換されている;
e. Ala119が、Gly、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはGlyまたはAsn、例えばGlyで置換されている;
f. Gly120が、Ser、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはSerまたはAsn、例えばSerで置換されている;
g. Gly121が、Ala、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaまたはAsn、例えばAlaで置換されている;
h. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspまたはAla、例えばAspで置換されている;
i. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAsp、Ala、GlnまたはAsn、例えばAspまたはAlaで置換されている;
j. Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはLysまたはAla、例えばLysで置換されている
の1または2以上が存在し、かつ追加的に、配列番号3中のAla44(配列番号2中のAla62)が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAsnで置換されるように改変されている。
【0052】
一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu117が、Serで置換されている;
c. Gly121が、Alaで置換されている;
d. Leu122が、Aspで置換されている;
e. Glu123が、Alaで置換されている
が存在し、かつ配列番号3中のAla44が、Asnで置換されるように改変されている。
【0053】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号3の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号11に示される通りである。
【0054】
一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu122が、Aspで置換されている
が存在し、かつ配列番号3中のAla44が、Asnで置換されるように改変されている。
【0055】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号3の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号12に示される通りである。
【0056】
一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3中のAsp149が、Gly、Gln、Asn、Ala、Met、Arg、Lys、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されるように改変されている。一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3のAsp149がGlyで置換されるように改変される。配列番号3の149位(配列番号2の167位)でのこの置換は、本明細書に記載される他の置換のいずれかと組み合わされ得る。
【0057】
一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu117が、Serで置換されている;
c. Gly121が、Alaで置換されている;
d. Leu122が、Aspで置換されている;
e. Glu123が、Alaで置換されている
が存在し、配列番号3中のAla44が、Asnで置換され、配列番号3のAsp149が、Gly149で置換されるように改変されている。
【0058】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号3の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号11に示される通りである。
【0059】
一部の実施形態では、コバーシンポリペプチドは、配列番号3の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu122が、Aspで置換されている
が存在し、配列番号3中のAla44が、Asnで置換され、配列番号3のAsp149が、Gly149で置換されるように改変されている。
【0060】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号3の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号12に示される通りである。
【0061】
本開示の様々な態様および実施形態では、本発明の改変コバーシンポリペプチドは、配列番号2および配列番号3における未改変コバーシンポリペプチドと1~30のアミノ酸が異なる。配列番号2および配列番号3におけるコバーシンポリペプチドに任意の修復がなされ得るが、但し、結果として生じる改変コバーシンポリペプチドが、未改変コバーシンポリペプチドと比較して、LK/E結合活性を示し、減少したC5結合性を示すか、またはC5結合性を示さない。
【0062】
本発明の一部の実施形態では、配列番号3の6、38、100、128、129、150位の6つのシステインアミノ酸は、本発明の改変コバーシンポリペプチドに保持されている。
【0063】
一部の実施形態では、配列番号3中のAsn60およびAsn84は、それぞれGlnで置換されている。この改変は、ポリペプチドを真核細胞(例えば酵母、植物、哺乳動物)において発現させた場合における、N結合型高グリコシル化を防止するために、部位特異的変異誘発により実施することができる。
【0064】
一部の実施形態では、配列番号3中の以下のアミノ酸:Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115の1または2以上が、LTB4との結合に関与すると考えられ、したがって、未改変形態で保持され得る。一部の実施形態では、これらのアミノ酸の少なくとも5、10もしくは15、または全てが、本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて未改変形態で保持され得る。一部の実施形態では、これらのアミノ酸の1または2以上が、保存的に置換され得る。一部の実施形態では、これらのアミノ酸の最大で5、10もしくは15、または全てが、本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて保存的に置換されている。
【0065】
配列番号3中の以下の位置:5、6、11、13~15、20~21、24~27、29~32、35~41、45、47~48、50、52~60、64、66、69~81、83、84、86、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150のアミノ酸は、コバーシンとTSGP2およびTSGP3との間で高度に保存されている。
【0066】
配列番号3中の以下の位置:5、6、11、13~15、18、20~21、24~27、29~32、35~41、43、45、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150のアミノ酸は、LTB4への結合に関与すると考えられ、かつ/またはコバーシンとTSGP2およびTSGP3との間で高度に保存されている。
【0067】
配列番号3中の以下の位置:5、6、11、13~15、18、20~21、24~25、27、30~32、35~41、43、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、98、100、102~104、112~113、115、126、128~129、132~139、145、148、および150のアミノ酸は、LTB4への結合に関与すると考えられ、かつ/またはコバーシンとTSGP2およびTSGP3との間で高度に保存されている。
【0068】
したがって、一部の実施形態では、上記アミノ酸は、未改変形態で保持されている。一部の実施形態では、これらのアミノ酸の少なくとも5、10もしくは15、または全てが、本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて未改変形態で保持されている。一部の実施形態では、これらのアミノ酸の1または2以上が、保存的に置換され得る。一部の実施形態では、これらのアミノ酸の最大で5、10もしくは15、20、25、30、40、50または全てが、本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて保存的に置換されている。
【0069】
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、典型的には、配列番号2または配列番号3と1~30、好ましくは2~25、より好ましくは3~20、さらにより好ましくは4~15のアミノ酸が異なる。典型的には、差異は、5~12、または6~10のアミノ酸変化である。例えば、1~30、または2~25、3~30、4~15、5~12、または6~10のアミノ酸置換が、配列番号2または配列番号3になされ得る。
【0070】
配列番号3のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間に配列番号10に示されるようなループを有する改変コバーシンポリペプチドは、このループが存在する結果として、配列番号3と比較して10のアミノ酸置換を有する。したがって、一部の実施形態では、本発明の改変コバーシンポリペプチドは、好ましくは、配列番号5に示される置換以外に配列番号3と比較して(例えば配列番号10のループ中に)1~15、2~10、3~5、または最大で2、3、4または5の追加的な置換を有する。
【0071】
配列番号11に示されるような、配列番号3のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間にループを有する改変コバーシンポリペプチドは、このループが存在する結果として、配列番号3と比較して5のアミノ酸置換を有する。したがって、一部の実施形態では、本発明の改変コバーシンポリペプチドは、好ましくは、配列番号6に示される置換以外に配列番号3と比較して(例えば配列番号11のループ中に)1~20、2~15、3~10、または最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10の追加的な置換を有する。追加的な置換には、好ましくは、本明細書の他の箇所に示されるような44位および149位の置換が含まれる。
【0072】
配列番号12に示されるように配列番号3のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間にループを有する改変コバーシンポリペプチドは、このループが存在する結果として、配列番号3と比較して2のアミノ酸置換を有する。したがって、一部の実施形態では、本発明の改変コバーシンポリペプチドは、好ましくは、配列番号7に示される置換以外に配列番号3と比較して1~25、2~12、3~15、または最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15の追加的な置換(例えば配列番号12のループ中の置換)を有する。追加的な置換には、好ましくは、本明細書の他の箇所に示されるような44位および149位の置換が含まれる。
【0073】
本明細書の他の箇所に示されるように配列番号3の44位に置換を有する改変コバーシンポリペプチドは、好ましくは、配列番号3と比較して、1~25、2~12、3~15、または最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15の追加的な置換を有する。
【0074】
上記で明確に述べられる置換以外の置換は、好ましくは、例えば次の表による保存的置換である。第2列の同じブロック内にあり、好ましくは第3列の同じ行にあるアミノ酸は、相互に置換され得る。
【0075】
【0076】
置換は、また、Ornithodoros moubataから得られるコバーシンタンパク質の相同体などのバリアント中に見出される残基に基づき選択され得る。このような相同体は、例えば、Rhipicephalus appendiculatus、R.sanguineus、R.bursa、A.americanum、A.cajennense、A.hebraeum、Boophilus microplus、B.annulatus、B.decoloratus、Dermacentor reticulatus、D.andersoni、D.marginatus、D.variabilis、Haemaphysalis inermis、Ha.leachii、Ha.punctata、Hyalomma anatolicum anatolicum、Hy.dromedarii、Hy.marginatum marginatum、Ixodes ricinus、I.persulcatus、I.scapularis、I.hexagonus、Argas persicus、A.reflexus、Ornithodoros erraticus、O.moubata moubata、O.m.porcinus、およびO.savignyiを含む他のマダニ種からのコバーシンタンパク質配列を含む、配列番号2または3に示されるコバーシン配列のパラログおよびオルソログを含み得る。
【0077】
本発明は、また、改変コバーシンポリペプチドのN末端から最大で5つのアミノ酸が欠失している、配列番号3の改変コバーシンポリペプチドの断片を包含する。前記断片は、改変コバーシンポリペプチドのN末端からの1、2、3、4または5つの欠失に対応し得る。配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列における他の位置からの欠失は、また、結果として生じるポリペプチドが改変コバーシンのLK/E結合活性(例えば、改変ポリペプチドに関連して本明細書に記載されるもの)を保持し、減少した補体阻害剤活性(例えば、改変ポリペプチドに関連して本明細書に記載されるもの)を有するか、または補体阻害剤活性を有さない限り、本発明の一部を構成すると考えられる。
【0078】
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、また、別のペプチドと遺伝的または化学的に融合された改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質として提供され得る。融合タンパク質は、例えば、異種タンパク質配列についてのコード配列のフレーム内に、改変コバーシンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをクローニングすることによって取得し得る。本明細書に使用される「異種」という用語は、本発明の改変コバーシンポリペプチド以外の任意のポリペプチドを呼ぶことが意図される。可溶性融合タンパク質のN末端またはC末端のいずれかに含まれ得る異種配列としては、下記:膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常領域(Fc領域)、PASもしくはXTENもしくは他の類似の構造不定のポリペプチド、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質のドメイン、シグナル配列、搬出配列、またはアフィニティークロマトグラフィーによる精製を可能にする配列である。これらの異種配列の多くは、発現プラスミドに挿入されて市販されており、それは、これらの配列と融合されたタンパク質の特異的生物学的活性を顕著に損なわずに追加的特性を提供するために、一般的に融合タンパク質に含まれるからである。このような追加的特性としては、体液中でより長く持続する半減期(例えば、Fc領域の付加またはPas化(Schlapschy Mら、Protein Eng Des Sel.2013 Aug;26(8):489~501)の結果として生じる)、細胞外局在、またはヒスチジン、GST、FLAG、アビジンもしくはHAタグなどのタグによって可能になるような、より簡単な精製手順である。融合タンパク質は、追加的に、リンカー配列(例えば1~50、2~30、3~20、5~10アミノ酸長)を含有してもよく、それにより、構成成分がこのリンカーによって分離される。
【0079】
したがって、融合タンパク質は、改変コバーシンポリペプチドを含むタンパク質の例であり、これらには、具体例としてPAS配列および改変コバーシンポリペプチド配列を含むタンパク質が含まれる。PAS配列は、例えば、Schlapschy Mら、Protein Eng Des Sel.2013 Aug;26(8):489~501、およびEP08773567.6に記載されており、PAS化コバーシン分子は、Kuhnら、Bioconjugate Chem.、2016、27(10)、2359~2371ページに記載されている。PAS化は、タンパク質と、アミノ酸Pro、Ala、および/またはSerから構成されるコンフォメーション的には無秩序なポリペプチド配列との遺伝子融合を説明している。これは、XL Protein(http://xl-protein.com/)によって開発された技法であり、溶媒和したランダム鎖を大きな流体力学的体積で、それと融合されるタンパク質に結合させる簡便な方法を提供する。ポリペプチド配列は、かさ高いランダムコイル構造をとる。したがって、結果として生じる融合タンパク質のサイズは、それが融合されるタンパク質よりもずっと大きい。これにより、生体システム中のクリアランスが減少することが示されている。適切なPAS配列は、EP08773567.6および上記のSchlapschyの参考文献に記載されている。任意の適切なPAS配列が、融合タンパク質に使用され得る。例えば、ランダムコイルコンフォメーションを形成し、アラニン、セリンおよびプロリン残基からなる(またはプロリンおよびアラニン残基からなる)少なくとも約100のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列が含まれる。これは、複数のアミノ酸リピートを含んでもよく、その際、前記リピートは、Ala、Ser、およびPro残基(またはプロリンおよびアラニン残基)からなり、同一アミノ酸残基の連続は、6つ以下である。プロリン残基は、配列のアミノ酸の4%よりも大きく40%未満を構成し得る。配列は、
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号13);
AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号14);
APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号15)、
SAPSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号16)、
SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号17)、
AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号18)および
ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号19)
または、これらの配列の全体もしくは部分としての当該配列の環状置換(circular permuted)バージョンもしくは多量体から選択されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、PAS配列中に存在するリピートの1つの5~40、10~30、15~25、18~20、好ましくは、20~30または30コピー、すなわち配列番号13~19の1つ、好ましくは13が存在し得る。好ましくは、PAS配列は、配列番号13の30コピーを含むまたはそれからなる。好ましくは、PAS配列は、コバーシン型タンパク質のN末端と(直接またはリンカー配列を介して)融合され、ある特定の好ましい実施形態では、コバーシン型タンパク質は、配列番号5もしくは配列番号6、または配列番号7もしくは配列番号8を含むか、またはそれからなってもよく、例えば、融合タンパク質は、(a)配列番号13の30コピーからなるPAS配列および(b)(i)配列番号5、または(iii)配列番号6、または(iii)配列番号7、または(iv)配列番号8を含み、その際、(a)は、(b)のN末端に直接またはリンカー配列を介して融合されている。
【0080】
一部の実施形態では、リンカーは、1または2以上のアラニン残基、例えば1~5つのアラニン残基、例えば単一のアラニン残基を含む。
【0081】
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、化学改変、例えば翻訳後改変し得る。例えば、それらは、グリコシル化、ペグ化、リン酸化であり得、または改変アミノ酸残基を含み得る。このような改変ポリペプチドは、本明細書に使用される「ポリペプチド」という用語の範囲内である。他の実施形態では、本発明の改変コバーシンポリペプチドは、化学改変、例えば翻訳後改変されていない(例えば、グリコシル化、ペグ化、リン酸化されていない)。
【0082】
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、実質的に単離された形態であり得る。本発明のポリペプチドは、宿主細胞中に発現させた場合、その中に発現させた宿主細胞および/または増殖培地の少なくとも1つの成分から分離されたものであり得る。改変コバーシンポリペプチドは、ポリペプチドの意図される目的を妨害しない担体または希釈剤と混合されてもよく、その場合も実質的に単離されていると見なされ得ることが理解されよう。本発明における使用のためのポリペプチドは、また、実質的に精製された形態でもよく、その場合、一般的に、調製物中に50重量%よりも多い、例えば80重量%、90重量%、95重量%または99重量%よりも多いポリペプチドが、本発明のポリペプチドである調製物中に、ポリペプチドが含まれる。これは、例えば、電気泳動またはクロマトグラフィーによって決定され得る。
【0083】
改変コバーシンポリペプチドは、また、合成的に、または組換えにより製造され得る。例えば、組換えコバーシンポリペプチドは、哺乳動物細胞、真菌細胞、細菌細胞または昆虫細胞を、適切な制御配列に作動可能に連結した改変コバーシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターと培養して形質移入し、前記細胞を培養し、前記細胞により産生される改変コバーシンポリペプチドを抽出および精製することによって産生され得る。ポリペプチドは、また、合成または組換え生産後に改変され得る。本発明における使用のためのポリペプチドは、D-アミノ酸を使用して産生され得る。このような場合、アミノ酸は、CからN方向に逆配列で連結される。これは、このようなポリペプチドを産生するために当技術分野において慣例的である。
【0084】
多くの側鎖改変が当技術分野で公知であり、改変コバーシンポリペプチドがLK/E結合活性を保持し、かつ、減少した補体阻害剤活性(例えば補体C5結合活性)を示すか、または補体阻害剤活性を示さない限り、当該改変が改変コバーシンポリペプチドの側鎖になされ得る。
【0085】
ポリヌクレオチド
本発明の一態様により、本発明の改変コバーシンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、提供される。本発明による改変コバーシンポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチドは、ロイコトリエンまたはエイコサノイドによって媒介される疾患または症状を治療または予防するために使用され得る。
【0086】
特に、ポリヌクレオチドは、(a)本発明の改変コバーシンポリペプチド中の配列番号2もしくは配列番号3になされる改変を反映するために必要な変化を有する、配列番号1(もしくはそのヌクレオチド55~507)の配列に対応するコード配列;(b)(a)に定義される配列に対する遺伝子コードの結果としての縮重配列;または(c)LK/E結合活性(例えば、改変ポリペプチドに関連して本明細書に記載されるもの)および減少した補体阻害剤活性(例えば、改変ポリペプチドに関連して本明細書に記載されるもの)を有するか、もしくは補体阻害剤活性を有さない本発明による改変ポリペプチドをコードする、(a)もしくは(b)に定義される配列の任意の1つの断片を含むか、またはそれからなっていてもよい。典型的には、ポリヌクレオチドは、DNA、例えばcDNAである。しかし、ポリヌクレオチドは、RNAポリヌクレオチドでもよい。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖でもよく、その中に合成または改変ヌクレオチドを含み得る。
【0087】
一部の実施形態では、配列番号1の配列に対応するコード配列の代わりに、コード配列は、
図2におけるヌクレオチド配列(配列番号1)のヌクレオチド55~507の配列に対応する。このヌクレオチド配列は、シグナル配列を有さない、
図2におけるコバーシンタンパク質をコードし、すなわち、配列番号3をコードする。
図2におけるヌクレオチド配列の最初の54塩基は、補体阻害活性またはLTB4結合活性に必要とされないシグナル配列をコードする。したがって、本発明のポリヌクレオチドは、
図2におけるヌクレオチド配列(配列番号1)のヌクレオチド55~507の改変バージョンを含むか、またはそれからなっていてもよい。
【0088】
本発明のポリヌクレオチドは、典型的には、本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて配列番号2または配列番号3になされた改変を反映するために必要な変化を有する、配列番号1(またはそのヌクレオチド55~507)のコード配列またはコード配列の相補配列と、バックグラウンドをはるかに上回るレベルでハイブリダイズしうる。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、例えば、DNAライブラリーに存在する他のDNAのために生じ得る。本発明のポリヌクレオチドと、本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて配列番号2または配列番号3になされた改変を反映するために必要な変化を有する配列番号1(またはそのヌクレオチド55~507)のコード配列またはコード配列の補体との相互作用によって発生するシグナルレベルは、典型的には、他のポリヌクレオチドと配列番号1(またはそのヌクレオチド55~507)のコード配列との間の相互作用より少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍強い。相互作用の強度は、例えばプローブを、例えば32Pで放射標識することによって測定され得る。選択的ハイブリダイゼーションは、典型的には、中~高ストリンジェンシーの条件を使用して達成され得る。しかし、このようなハイブリダイゼーションは、当技術分野において公知の任意の適切な条件で実施され得る(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、1989を参照されたい)。例えば、高ストリンジェンシーが必要な場合、適切な条件には、60℃、最大で65℃で0.1~0.2×SSCが含まれる。より低いストリンジェンシーが必要な場合、適切な条件には、60℃で2×SSCが含まれる。
【0089】
上述のポリヌクレオチドは、代替的または追加的に、ポリペプチドのループ領域の末端または内部のいずれかまたは両方に伸長部をコードする配列を含むように改変され得る。シグナル配列、またはタンパク質の検出、発現、分離もしくは精製を助ける別のペプチドもしくはタンパク質をコードする配列、または上述のようにタンパク質の循環半減期を増加させるための本明細書の他の箇所に言及されるFcペプチド、PASもしくは他の分子などのペプチドをコードする配列などの追加的な配列を含み得る。他の融合パートナーの例には、ベータ-ガラクトシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、またはルシフェラーゼが含まれる。
【0090】
改変ポリヌクレオチドは、一般的に、LK/E結合活性を有するポリペプチドをコードする。縮重置換がなされてもよく、および/または例えば上の表に示されるように、改変配列が翻訳された場合に保存的アミノ酸置換をもたらす置換がなされてもよい。本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて配列番号2または配列番号3になされる改変を反映するために必要な変化を有する、配列番号1のDNAコード配列の補体と選択的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列は、一般的に、配列番号1(本発明の改変コバーシンポリペプチドにおける配列番号2または配列番号3になされる改変を反映するために必要な変化を有する)の少なくとも20、好ましくは少なくとも30、例えば少なくとも40、少なくとも60、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも420の領域にわたり、または最も好ましくは全長もしくは本発明によるこれらの配列になされる改変に供される、配列番号2または配列番号3に示される配列を有するポリペプチドをコードする配列番号1(本発明の改変コバーシンポリペプチドにおける配列番号2または配列番号3になされる改変を反映するために必要な変化を有する)の長さにわたり、本発明の改変コバーシンポリペプチドにおいて配列番号2または配列番号3になされる改変を反映するために必要な変化を有する、配列番号1のコード配列(またはそのヌクレオチド55~507)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。配列同一性は、任意の適切な方法によって決定され得る(例えば、Pearson、W.Curr Protoc Bioinformatics.2013 June;0 3、doi:10.1002/0471250953.bi0301s42に記載)。
【0091】
本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、組換え的に、合成的に、または当業者に利用可能な任意の手段によって産生され得る。それらは、また、標準的な技法によってクローニングされ得る。ポリヌクレオチドは、典型的には、単離および/または精製された形態で提供される。
【0092】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、in vitro、in vivoまたはex vivoで実施され得る、本発明における使用のためのポリペプチドの産生に有用である。ポリヌクレオチドは、それ自体で治療剤として使用され、または組換えタンパク質合成に関与し得る。本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、典型的には、組換え複製可能なベクターに組み込まれる。ベクターは、適合する宿主細胞中で核酸を複製させるために使用され得る。したがって、本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、コバーシンポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入すること、ベクターを適合性の宿主細胞に導入し、ベクターの複製をもたらす条件で宿主細胞を増殖させることにより作製され得る。宿主細胞は、例えば、大腸菌細胞であり得る。
【0093】
ベクター
本発明は、また、本発明のこの態様の核酸分子を含む発現ベクターをクローニングすることを含む。このような発現ベクターは、本発明の核酸分子とフレーム内に連結された適切な転写および翻訳制御配列、例えばエンハンサーエレメント、プロモーター-オペレーター領域、終止終結配列(termination stop sequence)、mRNA安定性配列、開始および終止コドンまたはリボソーム結合部位を組み込み得る。
【0094】
好ましくは、ベクターは、本明細書に定義される改変コバーシンポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターである。コード配列は、また、使用すべき宿主生物に適した好ましいコドン使用頻度を提供するように選択され得る。他の適切なベクターは、当業者に明らかであろう。Sambrookら(1989)を参照されたい。好ましくは、ベクター中への本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現させうる制御配列に作動可能に連結しており、すなわち、ベクターは発現ベクターである。「作動可能に連結した」という用語は、記載された構成成分が、それらを意図されるように機能させる関係にある並置を表す。コード配列に「作動可能に連結した」プロモーターなどの調節配列は、調節配列と適合する条件でコード配列の発現が達成されるように配置される。
【0095】
本発明によるベクターには、プラスミドおよびウイルス(バクテリオファージおよび真核生物ウイルスの両方を含む)、ならびに他の直鎖または環状DNA担体、例えば転位因子または相同組換え技法を使用するDNA担体が含まれる。
【0096】
多くのこのようなベクターおよび発現系が、当技術分野において公知であり、記載されている(Fernandez & Hoeffler、1998)。特に適切なウイルスベクターには、バキュロウイルスベース、アデノウイルスベースおよびワクシニアウイルスベースのベクターが含まれる。
【0097】
組換え発現に適した宿主には、高レベルの組換えタンパク質を発現させることができ、容易に大量増殖させることができる大腸菌などの通常使用される原核生物種または真核性酵母が含まれる。好ましくは、宿主細胞は、真核性酵母細胞である。特にウイルス駆動発現系を使用する場合、in vitroで増殖した哺乳動物細胞株も適している。別の適切な発現系は、宿主として昆虫細胞の使用を伴うバキュロウイルス発現系である。発現系は、また、DNAがゲノムに組み込まれた宿主細胞を構成し得る。
【0098】
タンパク質またはタンパク質断片は、また、in vivoで、例えば昆虫の幼虫または哺乳動物組織中に発現させ得る。
【0099】
本発明によるベクターを原核細胞または真核細胞に導入するために多様な技法が使用され得る。適切な形質転換または形質移入技法は、文献に詳細に記載されている(Sambrookら、1989;Ausubelら、1991;Spector、Goldman & Leinwald、1998)。真核細胞では、発現系は、系の必要性に応じて一過性(例えばエピソーム)または永続性(染色体組込み)であり得る。
【0100】
宿主細胞
本発明には、また、上記で定義される核酸分子、アンチセンス核酸分子またはベクターを含む、形質転換または形質移入原核または真核宿主細胞が含まれる。宿主細胞が原核細胞の場合、それらは、好ましくは大腸菌細胞である。
【0101】
好ましい真核宿主細胞には、真核酵母細胞および哺乳動物細胞が含まれる。
【0102】
本発明は、また、上記で定義される改変コバーシンポリペプチドを調製する方法であって、本発明による核酸分子を含有する宿主細胞を、タンパク質が発現する条件で培養すること、およびそのように産生されたタンパク質を回収することを含む方法を提供する。好ましくは、宿主細胞は、酵母細胞または大腸菌細胞である。
【0103】
組成物
本発明のさらなる態様により、本発明の上記態様による改変コバーシンポリペプチド、改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質、または改変コバーシンポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を薬学的に許容される担体と共に含む組成物が提供される。
【0104】
本明細書に使用される「薬学的に許容される担体」という用語には、賦形剤が、それ自体、毒性作用を誘導せず、医薬組成物を受け入れる個体に有害な抗体の産生も引き起こさない限り、遺伝子、ポリペプチド、抗体、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸および不活性ウイルス粒子または実際に任意の他の薬剤が含まれる。薬学的に許容される担体は、追加的に、水、食塩水、グリセロール、エタノールなどの液体または湿潤剤もしくは乳化剤などの補助物質、pH緩衝物質およびその他を含有し得る。例えば、水またはPBS中への溶液が使用され得る。
【0105】
賦形剤は、患者による摂取を助けるために医薬組成物を錠剤、丸剤(メカニカルピルを含む)、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、クリーム剤、エアロゾル噴霧剤に製剤化することを可能にし得る。治療用物質の送達またはイオン泳動用のナノ粒子も使用し得る。薬学的に許容される担体の詳細な説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、N.J.1991)から入手可能である。
【0106】
さらなる態様により、本発明は、治療における使用のための、本発明の上記態様による改変コバーシンポリペプチド、改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質、または改変コバーシンポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0107】
本発明は、また、LK/E(特にLTB4)媒介疾患もしくは障害を患う動物を治療する方法または動物がLK/E(特にLTB4)媒介疾患もしくは障害を発生するのを予防する方法であって、前記動物に、本発明の上記態様による改変コバーシンポリペプチド、改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質、または改変コバーシンポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子、または本発明の上記態様による医薬組成物を治療または予防有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0108】
本発明は、また、LK/E(特にLTB4)媒介疾患もしくは障害を患う動物を治療するまたは動物がLK/E(特にLTB4)媒介疾患もしくは障害を発生するのを予防する方法における使用のための、本発明の上記態様による改変コバーシンポリペプチド、改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質、または改変コバーシンポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0109】
好ましくは、前記動物は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0110】
「治療有効量」という用語は、標的となる疾患または症状を治療または回復させるために必要な化合物の量を表す。本明細書に使用される「予防有効量」という用語は、標的となる疾患または症状を予防するために必要な化合物の量を表す。正確な投薬量は、一般的に、投与時の患者の状況に依存する。投薬量を決定する場合に考慮され得る要因には、患者における病状の重症度、患者の全身の健康状態、年齢、体重、性別、食事、時間および投与回数、薬物の組合せ、反応感受性および患者の治療に対する抵抗性または反応が含まれる。
【0111】
正確な量は、日常的な実験により決定することができるが、最終的に医師の判断であり得る。好ましくは、薬剤の用量は、対象において可能な限り多くの利用可能なLK/E、例えばLTB4、より好ましくは、全ての利用可能なLK/E、例えばLTB4と結合するために十分である。
【0112】
用量を投与する必要がある回数は、関与する薬剤の半減期に依存する。改変コバーシンポリペプチドは、連続注入として、大量瞬時投与で、または毎日ベース、1日2回ベース、もしくは2、3、4日、5、6、7、10、15もしくは20日以上毎に投与され得る。改変コバーシンポリペプチドの特定の利点は、それらを投与することができる相対的な容易さおよび迅速性、ならびに医療従事者がタンパク質を投与する必要がないという事実である。
【0113】
単回または多回用量が投与され得る。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、または8用量が投与され得る。単回用量は、一実施形態である。用量の正確な投薬量および回数は、また、投与時での患者の症状に依存し得る。投薬量を決定する場合に考慮され得る要因には、治療または予防の必要性、患者における病状の重症度、患者の全身の健康状態、年齢、体重、性別、食事、投与の時間および回数、薬物の組合せ、反応の感受性および治療に対する患者の抵抗性または応答が含まれる。正確な量は、日常的な実験により決定できるが、最終的には医師の判断であり得る。
【0114】
投薬レジメンは、また、初回「負荷用量」に続く1または2以上の後続する「維持用量」の形態でもよい。一般に、負荷用量は、維持用量よりも大きい。負荷用量は、維持用量の2、5、10倍またはより大きくてもよい。負荷用量は、単回用量として、または特定の時間枠内の1または2以上の用量として投与され得る。典型的には、負荷用量は、単一の24時間中に投与される1、2、3、4または5用量である。維持用量は、規則的な間隔で繰り返される、より低い用量でもよい。維持用量は、3、4、6、8、12、24、または48時間毎などの間隔で繰り返されてもよい。正確なレジメンは、日常的な実験により決定できるが、最終的に医師の判断であり得る。維持用量は、初回負荷用量の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100%、または初回負荷用量の最大20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100%であり得る。
【0115】
さらなる実施形態では、治療経過にわたり同じ用量が使用される(例えば毎日)。
【0116】
改変コバーシンポリペプチド、改変コバーシンポリペプチドを含む融合タンパク質、または改変コバーシンポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子は、任意の公知の投与経路により送達され得る。それは、部分的または全身的に送達され得る。それは、非経口経路で送達され得る(例えば、皮下、腹腔内、静脈内もしくは筋肉内のいずれかの注射により、または組織の間質腔に送達される)。組成物は、また、病変内に投与することができる。他の投与様式には、経口および肺投与、坐剤、および経真皮または経皮適用、針、ならびにハイポスプレーが含まれる。部分的な投与は、局所投与を含み得る。好ましくは、皮下注射を介して送達される。
【0117】
疾患および症状
本発明者らは、本出願および請求項に定義される改変コバーシンポリペプチドが、E/LK、例えばLTB4に結合する能力を有するが、C5結合性を示さないか、または減少したC5結合性を示すことを見出した。LTB4は、記載された、最も強力な走化性および化学運動性エイコサノイドであり、インテグリンのアップレギュレーションを介して血管内皮への好中球の接着を促進する。LTB4は、好中球の凝集を誘導し、多様な過程により炎症に役割を果たす。LTB4は、適応免疫応答の誘導および管理に役割を果たすことが示されている。したがって、ロイコトリエンおよびヒドロキシエイコサノイドに結合し、包み込む能力を有する改変コバーシンポリペプチドは、これらのリガンドがBLT1およびBLT2受容体と相互作用するのを防止することができ、脂肪酸の炎症促進作用を緩和するために使用できる。
【0118】
本発明の改変コバーシンポリペプチドを使用して治療できる疾患および障害の例を以下に示す。
【0119】
アルファ-1アンチトリプシン疾患(AATD)、肺動脈高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、特発性肺疾患(IPD)、重症持続性喘息、運動およびアスピリン誘発喘息、アレルギー性鼻炎、珪肺症。
【0120】
自己免疫性水疱症、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、チャーグ-ストラウス症候群。
【0121】
関節リウマチ、骨破壊性関節炎、閉経後骨粗鬆症、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、グッドパスチャー症候群および糸球体腎炎を含む血管炎、全身性硬化症、2型糖尿病、糖尿病性腎症、鎌状赤血球症(SCD)、マラリア、外傷、心筋梗塞、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、アテローム動脈硬化症、冠動脈形成術後の再狭窄、多発性硬化症(MS)、神経障害。
【0122】
膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、前立腺がん、肺がん、食道がん、がん転移。
【0123】
シェーグレン性ドライアイ、移植片対宿主症候群性ドライアイ、乾性角結膜炎、アトピー性角結膜炎、粘膜類天疱瘡、春季カタル、眼瞼角結膜炎、通年性角結膜炎、眼性エリテマトーデス(Ocular lupus erythematosus)、眼型酒さ、トラコーマ、細菌性、ウイルス性または真菌性角膜炎、眼単純ヘルペスまたは帯状疱疹、遺伝性、外傷性、網膜色素変性症、未熟児網膜炎、ダウン症候群、骨形成不全症、アジソン病、レーバー先天黒内障、およびエーラス-ダンロス症候群の種類を含むが、それに限定されない円錐角膜、地図状斑点状指紋角膜変性症、フックス角膜変性症、格子状角膜変性症、光線角膜炎、前部ぶどう膜炎、翼状片、自己免疫性ぶどう膜炎、アレルギー性結膜炎。
【0124】
本発明により治療することができるいくつかの特異的障害の例には、ぶどう膜炎、アトピー性皮膚炎、接触過敏症、潰瘍性大腸炎、食道腺がん、膵臓腺がん、乳がん、卵巣がん、結腸がん、肺がん、ざ瘡、閉塞性細気管支炎、動脈瘤、歯周病、嚢胞性線維症、前立腺がん、炎症後色素沈着、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、腫瘍転移、強皮症、多発性硬化症、サルコイドーシス、放射線誘発胃腸炎、および痛風が含まれる。
【0125】
本発明により治療することができるさらなる症状および障害には、喘息、気管支炎、アテローム動脈硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、敗血症、動脈炎、心筋梗塞、脳卒中、および冠動脈疾患、虚血再灌流傷害、腎炎ならびに関節リウマチ、脊椎関節症、骨関節炎、および若年性関節炎を含む関節炎が含まれる。本発明により治療することができる、LTB4によって媒介されることが公知の症状には、閉塞性細気管支炎、強皮症、間質性肺疾患、歯周病、慢性B細胞性白血病、前立腺がんおよびアテローム動脈硬化症が含まれる。本発明により治療することができる、LTB4および補体によって媒介されることが公知の症状には、腎炎、様々な種類の関節炎、ぶどう膜炎、がん、敗血症、虚血再灌流傷害、脳卒中および心筋梗塞が含まれる。
【0126】
最も好ましくは、本発明は、AATD、COPD、PAH、重症持続性喘息、GVHD、水疱形成皮膚疾患および乾癬の治療に使用される。
【0127】
補体およびLK/E活性
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイド結合活性を示す。配列番号2または3におけるアミノ酸配列への改変の結果として、改変コバーシンポリペプチドは、また、減少した補体C5結合活性を(配列番号2または配列番号3における未改変コバーシンアミノ酸配列と比較して)示すか、または補体C5結合活性を示さない。
【0128】
減少したC5結合性/C5結合性の欠如
本発明の改変ポリペプチドが、C5多型を有する対象からのC5を含む補体C5タンパク質に結合する能力は、当技術分野において公知の標準的なin vitroアッセイ、例えば、タンパク質をゲル上で標識C5と共にインキュベーションした後のウエスタンブロットまたは表面プラズモン共鳴によって決定され得る(例えば実施例2を参照されたい)。
【0129】
野生型コバーシンは、ラット、マウスおよびヒト血清中でC5に結合し、C5コンバターゼによるC5の開裂を約0.02mg/mlのIC50で防止する。コバーシンタンパク質は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して決定された1nMのKDでC5に結合することが実証されている(例えば、実施例2を参照されたい)。
【0130】
改変コバーシンポリペプチドは、好ましくは、未改変コバーシンポリペプチドと比較してC5に減少した結合能を示す。好ましい実施形態では、改変コバーシンポリペプチドは、C5に検出可能な結合性を示さなくてもよい。
【0131】
本発明の一部の実施形態では、C5結合性は、例えば、配列番号2または3における未改変コバーシンポリペプチドによって示される結合性と比べて少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、15分の1、20分の1、50分の1、100分の1に減少する、または消失する。
【0132】
一部の実施形態では、C5結合性は、配列番号2または3における未改変コバーシンポリペプチドと比べて少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%減少する。
【0133】
一部の実施形態では、改変コバーシンポリペプチドは、Roversiら(2013)J Biol Chem.288、18789~18802に記載される方法により、または実施例2に示されるように表面プラズマ共鳴によって決定されるとき、1マイクロモル濃度よりも大きいKDでC5と結合する。
【0134】
一部の実施形態では、改変コバーシンポリペプチドは、全プール正常血清中に0.02mg/mLの濃度で存在する場合、Giclas 1994によりまたはそれと同様になされたCH50溶血アッセイでヒツジ赤血球の溶解を10%未満阻害する。
【0135】
本発明の改変ポリペプチドがC5に結合する能力は、薬剤が血清中で補体活性化を阻害する能力を測定することによって決定され得る。例えば、血清中の補体活性は、当技術分野において公知の任意の手段によって測定することができる。
【0136】
影響を受けないLK/E結合性
本発明の改変コバーシンポリペプチドは、LK/E(例えばロイコトリエンB4(LTB4))の活性を阻害し得る。特に、本発明の改変コバーシンポリペプチドは、このような分子と結合し得る。薬剤がこれらの分子と結合する能力は、当技術分野において公知の標準的なin vitroアッセイによって、例えば、コバーシンと、標識LK/E(例えばLTB4)への結合を競合する抗LK/E(例えば抗LTB4)抗体との間の競合ELISAによって決定され得る。このようなアッセイは、Roversiら、2013に示される。
【0137】
本発明による改変コバーシンポリペプチドは、野生型コバーシンと同じか、またはより大きい親和性でLK/Eと結合し得る。結合のいくらかの減少も許容され得る。
【0138】
コバーシンのLTB4結合性は、また、蛍光滴定によって決定されたKDによって表現され得る。蛍光滴定を使用して得られるデータは、野生型コバーシンが、LTB4と200~300pMのKDで結合することを示している。本発明による改変コバーシンポリペプチドは、好ましくは、LTB4と5nM、2nM、または1nM未満、より好適には0.9nM未満、最も好適には0.8nM未満、好ましくは0.7nM未満、より好ましくは0.6nM未満、好ましくは0.5nM未満、さらにより好ましくは0.4nM未満、有利には0.3nM未満のKDで結合し、その際、前記KDは、例えば実施例3に記載される方法により蛍光滴定を使用して決定される。
【0139】
一部の実施形態では、改変コバーシンポリペプチドは、Roversiら(2013)J Biol Chem.288、18789~18802に記載されるELISA方法論に従ってLTB4への結合を抗体と競合する。
【実施例1】
【0140】
大腸菌におけるコバーシンバリアントの発現
コバーシンバリアント1(配列番号5)および2(配列番号6)をコードする遺伝子構築物を大腸菌発現ベクターにクローニングし、次いでそれを大腸菌発現株内に形質転換した。次に、確立された発酵プロトコールを使用して、複合培地を用いて細菌培養物の発酵を行った。
【0141】
結果として生じる清澄な細胞培養液を20mMビストリス緩衝液、pH6.0中で濃縮し、DEAE-Sepharose FFカラム(GE Healthcare)に適用し、次いで同緩衝液中NaCl段階的勾配をかけて溶出した。次に、Phenyl Sepharose HPカラムを用いて、20mMビストリス緩衝液中で(NH4)2SO4の直線勾配を使用して精製画分を泳動した。クロマトグラフィー画分をSDS-PAGEで分析し、プールした。コバーシンバリアント1について、プールしたタンパク質画分をSuperdex 75ゲル濾過カラムに適用するさらなる精製ステップを行った。コバーシンバリアント2について、プールしたタンパク質画分をQ-sepharoseイオン交換カラムに適用するさらなる精製ステップを実施した。
【0142】
次に、野生型コバーシンと一緒に、バリアント1および2の精製画分をSDS-PAGEゲルで泳動した。結果を
図3に示すが、これは両方のコバーシンバリアントが大腸菌において十分に発現することを実証している。
【実施例2】
【0143】
コバーシンバリアント1および2は、野生型コバーシンと比べてC5結合活性を失っている
野生型コバーシンのC5への結合活性をコバーシンバリアント1および2の結合活性と比較して測定するために、Biacore装置(GE Healthcare)を使用するSPR実験を実施した。0.05%Tween20を有するHEPES緩衝食塩水を流動緩衝液として流速30μl/分で使用し、ヒトC5を合計4800RUまでCM3センサーチップ上に固定化した。
【0144】
BIAcore 2000システム(GE Healthcare、Munich、Germany)を用いてリアルタイム親和性測定を25℃で行った。最初に、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して、CM3センサーチップ(GE Healthcare)上にヒトC5(Complement Technology、Tyler、TX、USA)を10mM 酢酸Na、pH5.0中に濃度25μg/mLで固定化し、4200~4800共鳴ユニット(RU)のリガンド密度にした。精製コバーシンバリアント2およびバリアント1を、希釈系列(コバーシンについて0~96nM)またはバリアントの場合は1μMで、流動緩衝液として0.05%v/v Tween20含有HEPES緩衝食塩水(HBS;10mM HEPES/NaOH pH7.4、150mM NaCl)(HBST-0.05)の存在下で注入した。補体の形成を、30μl/分の連続流速で240秒かけて観察した。続いて、ImmunoPure Gentle Ag/Ab溶出緩衝液(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA、USA)8μlで再生するまえに、解離を900秒間進行させて、コバーシンとC5との間の強い静電相互作用を破壊し、その後、1mM EDTA含有HBST-0.05 120μlおよびHBST-0.05 120μlを注入してフローセルを洗浄した。インラインの対照ブランクチャネルについて測定した対応シグナル、および以前に報告された3回の緩衝液ブランク注入から決定した平均ベースライン(Myszka D.G.(1999)Improving biosensor analysis.J Mol Recognit.12(5):279~284)の2つを差し引くことによって、センサーグラムを補正した。BIAevaluationソフトウェアを使用して、二分子複合体形成についてのラングミュア結合モデルへのデータのグローバルフィットを行うことによって、速度パラメーターを決定した。
【0145】
図4aに示すように、コバーシンは、1.45nMのK
Dで固定化C5に結合した。対照的に、1μMのコバーシンバリアント1および2の単回測定を用いて同じ実験を実施した場合、どちらも有意な反応を生じなかったが、これは、どちらのバリアントもC5に結合しないことを実証している。コバーシンバリアント1および2のPAS化バージョンも試験し、類似の結果が得られた(
図4B)。
【実施例3】
【0146】
コバーシン/バリアントは、LTB4とピコモル濃度範囲で結合する
野生型コバーシンおよびバリアント1およびバリアント2ならびにそのPAS化バージョンについて、LTB4へのコバーシン結合性の蛍光滴定を実施した。
【0147】
リン酸緩衝食塩水(PBS)中のコバーシン、バリアント1およびバリアント2ならびにそのPAS化バージョンのLTB4(Caymen Chemicals、Ann Arbor、MI、USA)に対する結合活性をLS50B分光蛍光計(Perkin-Elmer、Norwalk、CT、USA)で定量した。PBS 2mL中のタンパク質の精製100nM溶液を、磁器スターラーを備える石英キュベット(経路長10mm;Hellma、Muhlheim、Germany)に適用した。温度を20℃に調整し、平衡に達した後、タンパク質のTyr/Trpの蛍光を280nmで励起させた(スリット幅:15nm)。最大発光に対応する蛍光発光を340nmで測定した(スリット幅:16nm)。PBS中の30μM LTB4リガンド溶液を、最大体積20μL(全試料体積の1%)まで段階的に添加し、30秒インキュベーション後に定常状態の蛍光を測定した。KD値の計算のために、初期蛍光強度100%に対してデータを規準化し、3μM N-アセチル-トリプトファンアミド溶液の滴定を使用してインナーフィルター効果を補正し、対応するリガンド濃度に対してデータをプロットした。次に、二分子複合体の形成についての質量作用の法則に基づく非線形最小二乗回帰を使用して、公表された式(Breustedtら、2006 Comparative ligand-binding analysis of ten human lipocalins.Biochim Biophys Acta 1764(2):161~173)を用いてOriginソフトウェアバージョン8.5(OriginLab、Northampton、MA、USA)によりデータをフィットした。
【0148】
図5AおよびBは、コバーシンバリアントと、そのPAS化バージョンとの両方がLTB
4結合活性を保持し、LTB
4とピコモル濃度範囲のK
Dで結合することを示す。
【実施例4】
【0149】
CD分光法を使用する熱安定性の分析
円二色性を使用して、熱変性の結果としてのタンパク質アンフォールディングを検出した。この方法を使用して、野生型コバーシン、コバーシンバリアント1およびコバーシンバリアント2の融解温度を得た。
【0150】
両方ともSpectra Managerバージョン1.53.05装置ソフトウェアによって制御されるペルチェ素子PT-423Sを備えるJ-810分光偏光計(Jasco、Tokyo、Japan)で熱アンフォールディングを測定した。Slide-A-LyzerTMミニ透析装置(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA、USA)を使用して、4℃で一晩透析することによりタンパク質溶液を20mM KPi pH7.5、50mM K2SO4に緩衝液交換し、石英キュベット(1mm経路長;Hellma)中タンパク質濃度12.5μMで、20℃および94℃、190nm~250nmでスペクトルを記録した。このようにして、変性研究のために最適なシグナル変化を217nmで特定した。タンパク質溶液を用いて20℃から94℃に勾配60K/hで加熱して融解温度(Tm)を決定した。データを217nmで記録し、公表された式(SchlehuberおよびSkerra、2002 Tuning ligand affinity、specificity、and folding stability of an engineered lipocalin variant -- a so-called ’anticalin’ -- using a molecular random approach.Biophys Chem.96(2~3):213~228)を使用して、KaleidaGraphソフトウェア(Synergy software、Reading、PA、USA)でタンパク質フォールディングの二状態モデルにより評価した。
【0151】
アンフォールディングしたタンパク質画分を温度に対してプロットして、
図6の融解曲線、ならびに野生型コバーシン、バリアント1およびバリアント2の融解温度についての値を得た。
図6に示すように、野生型コバーシンは、融解温度61.06℃±0.03℃を有し、バリアント2は、融解温度57.83℃±0.04℃を有し、バリアント1は、融解温度50.16℃±0.06℃を有する。
【実施例5】
【0152】
コバーシンバリアントはC5阻害活性を示さない
C5に対するコバーシン/コバーシンバリアント1および2の阻害効果を評価するために、精製コバーシンタンパク質を用いて、下記プロトコールを使用してCH50アッセイを実施した。
【0153】
Giclasら、1994の方法により、ウサギ溶血素(Sigma)を使用してヒツジ赤血球(SRBC)を感作した。プールした正常ヒト血清(NHS)をカルシウムおよびマグネシウム補充ゼラチンベロナール緩衝食塩水で1:80希釈したもの25μlおよび感作SRBC 25μlを使用する合計体積50μlでアッセイを行った。全ての溶解アッセイ物を氷上に配置した。コバーシン、コバーシンバリアント1およびコバーシンバリアント2の系列希釈物を希釈NHS中に調合した。アッセイ物を350rpmで振盪しながら37℃で30分間インキュベートした。4000gで5秒間マイクロ遠心して反応を停止させ、上清を平底96ウェルプレートに取り出した。ddH2O 100μlを各ウェルに添加し、タンパク質の存在下の溶解パーセンテージを、希釈NHSの代わりに水25μlを反応物に添加することによって誘導された総溶解に対するパーセンテージとして計算した。
【0154】
C5に対する各タンパク質の阻害効果を、各コバーシンタンパク質の存在下で細胞の溶解パーセンテージにより評価した。一連のコバーシンタンパク質濃度に沿って細胞溶解の尺度として405nmでの吸光度の測定値を取得した。
【0155】
図7は、異なる濃度の野生型コバーシンを含有する試料中の細胞溶解のパーセンテージが各濃度で10%未満に維持されたことを示し、これは、野生型コバーシンによるC5の公知の阻害効果を実証している。対照的に、両方のコバーシンバリアントを異なる濃度で含有する試料中の細胞のほぼ全てが溶解したが、これは、どちらのバリアントもC5に対して検出可能な阻害活性を全く有さないことを示している。
【実施例6】
【0156】
L-コバーシンは喘息のHDMマウスモデルにおいて顆粒球の浸潤を減少させる
コバーシンバリアントのin vivo効果を試験するために、チリダニ(HDM)アレルゲンによって誘発される喘息のマウスモデルにバリアント2を導入した(Gregory、L.Gら、2009を参照されたい)。以下に概略を示すように6群のマウスを試験した:
1. PBS(n=4)
2. L-コバーシン(n=4)
3. HDM(n=6)
4. HDM/L-コバーシン(n=6)
【0157】
マウス4~6匹の群に、PBS 50μl中のHDM 25μgを1週間に3回、3週間、気管内(i.t.)投与した。PBS 50μl中のL-コバーシン100μgを毎日3週間投与した。同じ投薬レジメンでPBSを対照に投与した(群1)。
【0158】
次に、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球および好中球のレベルを各群について試験した。結果を
図8に示す。
図8は、L-コバーシンがHDMのみの対照と比べて気管支肺胞洗浄液中の好中球数に有意な減少を引き起こし、好酸球数に有意に近い減少を引き起こすことを示す。
【実施例7】
【0159】
EBA導入モデルにおけるPAS化L-コバーシン
Sitaruら、2005によって記載されたプロトコールの修正版を使用して、抗体導入後天性表皮水疱症(EBA)を誘導した。簡潔に言うと、マウスにアフィニティー精製抗Col7 IgG、50μgを0、2、および4日目に皮下注射した。抗Col7 IgGの最初の注射の4日前(-2日目)から開始して、コバーシンまたはPAS化L-コバーシン(PAS化バリアント2)をマウスに1日2回皮下注射した。この適用を11日目の実験最終日まで実験全体にわたり継続した。対照群では、マウスに皮下のビヒクルのみ投与した。
【0160】
マウスVII型コラーゲン(「抗COL7」)に対する抗体を生成するために、ニュージーランドホワイトウサギに、コラーゲンVIIの非コラーゲン1(NC1)ドメイン由来の3種の異なる組換えタンパク質(「Col7A、B、およびC」)を含有するタンパク質混合物200μgをフロイント不完全アジュバントと一緒に免疫処置した。免疫処置されたウサギの血清から、プロテインGの使用によりIgGを単離し、その後、his-Col7を用いてIgGをアフィニティー精製して、特異的にウサギ抗Col7 IgGを得た。凍結切片アッセイで力価および効力を決定することによって抗体の品質をチェックした。
【0161】
4日目に開始して、1日おきに各個別のマウスにおける皮膚病変の程度をスコア付けした。紅斑、水疱、びらん、痂皮、または脱毛を示している皮膚領域を、熟練の観察者が「罹患」または「非罹患」として分類した[Sitaruら、2005]。皮膚病変に冒された総体表面(ABSA)のパーセンテージを計算した。
【0162】
実験結果を
図9に示す。コバーシンで処置されたマウスにおけるABSAのパーセンテージが減少し、PAS化L-コバーシンバリアント2 10mg/kgで処置されたマウスにおけるABSAも減少したことが分かる。使用したPAS-L-コバーシン配列は、PAS配列がバリアント2のN末端に融合したものであった。PAS-L-Covの分子量がより高いせいで、10mg/kg PAS-L-Covが2.5mg/kgコバーシンに相当する。
【0163】
参考文献
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