(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】熱処理治具用組成物、及び熱処理治具の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/185 20060101AFI20221128BHJP
C04B 35/195 20060101ALI20221128BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C04B35/185
C04B35/195
F27D3/12 S
(21)【出願番号】P 2020059168
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】小池 康太
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅崇
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227327(JP,A)
【文献】特開平06-016465(JP,A)
【文献】特開2009-292704(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105693227(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109467422(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109400137(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
F27D 3/00-5/00
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナを重量比で5%以上25%以下、
ムライトを重量比で0%以上35%以下、
コージェライトを重量比で15%以上35%以下、
スピネルを重量比で0%以上35%以下、
溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含み、
前記溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さい範囲内であること、を特徴とする熱処理治具用組成物。
【請求項2】
リチウム含有化合物の熱処理に用いられること、を特徴とする請求項1に記載の熱処理治具用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱処理治具用組成物を成形し、焼成することを特徴とする熱処理治具の製造方法。
【請求項4】
リチウム含有化合物の熱処理に用いられる熱処理治具の製造方法であって、
アルミナ、コージェライト、及び溶融シリカを配合してなり、前記溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含み、前記溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さいものである熱処理治具用組成物を成形して得られた成形品を焼成することにより、破壊応力をσ[MPa]、ポアソン比をν、熱膨張係数をα[ppm/K]、弾性率をE[GPa]としたとき、R={σ・(1-ν)}/(α・E)[K]で表される熱衝撃破壊抵抗係数Rが、199[K]以上である熱処理治具の製造することを特徴とする熱処理治具の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理治具用組成物が、コージェライトを重量比で15%以上35%以下の範囲で含むものであること、を特徴とする請求項4に記載の熱処理
治具の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理治具用組成物として、ムライト及びスピネルのいずれか一方又は双方をさらに含むものを用いること、を特徴とする請求項4又は5に記載の熱処理治具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理治具用組成物、及び熱処理治具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されている熱処理容器のような熱処理治具が、例えばリチウム電池用活物質の製造等において熱処理を行うために用いられている。
【0003】
下記特許文献1に開示されている熱処理容器は、板状の底部と、底部の周縁部に全周にわたって形成された、立設した板状の壁部と、を備えた槽状の容器を、アルミナ粉末等を含む混合粉末を焼成して形成したものである。特許文献1に開示されている発明では、熱処理容器を形成するための混合粉末として、全体の質量を100%としたときに、5~45%のアルミナ粉末と、0~35%のムライト粉末と、5~40%のコーディエライト粉末と、5~30%のスピネル粉末と、を有するものを用いている。このような混合粉末を用いて形成された熱処理容器は、耐反応性に優れた特性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、例えばリチウム電池用活物質の製造等において、製造効率の向上等の観点から、リチウム電池用活物質を収容した熱処理容器を、未だ高温(例えば約500度程度の高温)の状態において強制的に空冷する等の処理を行いたいという要望がある。しかしながら、このような処理を行うと、熱処理容器に割れが生じてしまう可能性が高まってしまう。そのため、従来技術においては、例えばリチウム電池用活物質等の製造効率の向上等を図るべく、温度変化に対する耐久性の高い熱処理治具や、リチウム電池用活物質製造方法が求められていた。また、これらの要求を満足するのに適した熱処理治具用組成物が求められていた。
【0006】
かかる知見に基づき、本発明は、温度変化に対する耐久性の高い熱処理治具等の製造に適した熱処理治具用組成物、当該熱処理治具用組成物を用いた熱処理治具の製造方法、及び当該熱処理治具を用いたリチウム電池用活物質製造方法の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の熱処理治具用組成物は、アルミナを重量比で5%以上25%以下、ムライトを重量比で0%以上35%以下、コージェライトを重量比で15%以上35%以下、スピネルを重量比で0%以上35%以下、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含むこと、を特徴とするものである。
【0008】
(2)本発明の熱処理治具用組成物は、前記溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さい範囲内であること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
(3)上述した課題を解決すべく提供される本発明の熱処理治具の製造方法は、上述した熱処理治具用組成物を成形し、焼成することを特徴とするものである。
【0010】
(4)本発明の熱処理治具の製造方法は、アルミナ、コージェライト、及び溶融シリカを配合してなり、前記溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含み、前記溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さいものである熱処理治具用組成物を成形して得られた成形品を焼成することにより、破壊応力をσ[MPa]、ポアソン比をν、熱膨張係数をα[ppm/K]、弾性率をE[GPa]としたとき、R={σ・(1-ν)}/(α・E)[K]で表される熱衝撃破壊抵抗係数Rが、199[K]以上である熱処理治具の製造することを特徴とするものである。
【0011】
(5)本発明の熱処理治具の製造方法は、前記熱処理治具用組成物として、ムライト及びスピネルのいずれか一方又は双方をさらに含むものを用いること、を特徴とするものであると良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温度変化に対する耐久性の高い熱処理治具等の提供に適した熱処理治具用組成物、当該熱処理治具用組成物を用いた熱処理治具の製造方法、及び当該熱処理治具を用いたリチウム電池用活物質製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例に係る熱処理治具の製造方法によって製造された熱処理容器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る熱処理治具用組成物、当該組成物を用いた熱処理治具の製造方法、及び当該製造方法で製造された熱処理治具を用いたリチウム電池用活物質製造方法について説明する。
【0015】
以下において本実施形態で例示する熱処理治具用組成物は、例えば、いわゆる匣鉢やルツボ等の熱処理容器、棚板、セッター等、熱処理用治具全般の製造において好適に利用できる。本実施形態の熱処理治具は、壁部の厚さの最も薄い最薄部が、9~12mmの厚さを有することが好ましい。また、本実施形態の熱処理冶具において、壁部の最薄部以外の部分の厚さは、特に限定されるものではないが、16mm以下の厚さであることが好ましい。
【0016】
本実施形態の熱処理治具用組成物は、アルミナ、コージェライト、及び溶融シリカを素材として配合してなるものである。熱処理治具用組成物は、これらの素材に加え、ムライト及びスピネルのいずれか一方又は双方をさらに含むものとすることも可能である。さらに具体的には、本実施形態の熱処理治具用組成物は、アルミナを重量比で5%以上25%以下、ムライトを重量比で0%以上35%以下、コージェライトを重量比で15%以上35%以下、スピネルを重量比で0%以上35%以下、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含むものとされる。
【0017】
本実施形態の熱処理治具は、上述した熱処理治具用組成物を成形した成形体を焼成してなる。これらのセラミックス粉末の混合粉末から製造されることで、本発明の熱処理容器が多孔質セラミックスにより形成されることとなり、耐熱性を有するようになる。
【0018】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、アルミナは、主として被熱処理化合物に対する耐反応性を高める効果を発揮する。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物を焼成して形成される熱処理治具は、被熱処理化合物に対して高い耐反応性(耐食性とも称す)を発揮する。
【0019】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、アルミナは、重量比で5%以上25%以下の割合で配合される。これにより、被熱処理化合物に対する高い耐反応性を得られる熱処理治具を製造できる。アルミナ粉末の含有割合が5%未満では、熱処理治具においてアルミナ粉末の含有の効果を十分に発揮できなくなる。アルミナ粉末の含有割合が25%を超えると、セラミックス粉末に含まれる他の成分が相対的に減少し、熱処理治具が所望の特性を発揮できにくくなる。
【0020】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、コージェライトは、主として耐熱衝撃性を高める効果を発揮する。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物を焼成して形成される熱処理治具は、高い耐熱衝撃性を発揮する。
【0021】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、コージェライトは、重量比で15%以上35%以下の割合で配合される。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物を焼成して形成される熱処理治具は、高い耐熱衝撃性を有する。コージェライトの含有割合が上記の範囲を逸脱して少なくすると、熱処理治具における耐熱衝撃性の向上効果が低くなる。また、コージェライトの含有割合が上記の範囲を逸脱して多くなると、熱処理治具における被熱処理化合物による汚染が生じやすくなる。特に、酸化リチウムを含む活物質用セラミック材料のように、リチウムを含有するリチウム含有化合物を非熱処理化合物とするときには、リチウム含有化合物による汚染が生じやすくなる。
【0022】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、溶融シリカは、材質自身の熱膨張率が極めて低く、主として熱処理治具用組成物の熱膨張率を低下させ、熱衝撃に対する耐久性を高める効果を発揮する。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物を焼成して形成される熱処理治具は、溶融シリカを含まない熱処理治具用組成物を用いて製造したものに比べて熱膨張率が低く、熱衝撃に対する耐久性が高い。
【0023】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、溶融シリカは、重量比で15%以上50%以下の割合で配合される。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物を焼成して形成される熱処理治具は、熱膨張率が低く、熱衝撃に対する耐久性が高い特性を有する。溶融シリカの配合量が15%を下回ると、熱膨張率の低下が不十分となり、熱衝撃に対する耐久性が十分に向上しない。また、溶融シリカの配合量が50%を上回ると、被熱処理化合物に対する耐反応性(耐食性)が低下してしまう。
【0024】
また、本実施形態の熱処理治具用組成物において、溶融シリカは、平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さい範囲内であるものが配合される。これにより、熱処理治具に対して熱衝撃が繰り返し加えられたときの弾性率の低下度合いを抑制することができる。溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも小さいとき、1.5mmより大きいとき、のいずれにおいても、熱衝撃が繰り返し加えられたときの弾性率の低下が大きくなる。熱処理治具は、熱衝撃が繰り返し加えられたときの弾性率の低下度合いが高いと、クラックの発生等により破損しやすくなる。
【0025】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、ムライトは、コージェライトと同様に、主として耐熱衝撃性を高める効果を発揮する。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物においてムライトを配合したものを焼成して形成される熱処理治具は、高い耐熱衝撃性を発揮する。
【0026】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、ムライトは、重量比で0%以上35%以下の割合で配合される。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物においてムライトを配合したものを焼成して形成される熱処理治具は、被熱処理化合物に対する耐熱衝撃性が高いという特性を有する。ムライトの含有割合が35%を超えると、熱処理治具用組成物に含まれる他の成分が相対的に減少し、熱処理容器自身が所望の特性を発揮できにくくなる。
【0027】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、スピネルは、主として耐反応性を高める効果を発揮する。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物においてスピネルを配合したものを焼成して形成される熱処理治具は、高い耐反応性を発揮する。スピネル粉末による耐反応性の向上は、熱処理容器の被熱処理化合物がリチウムを含有する化合物の場合に特に効果を発揮し、リチウムイオン二次電池の正極活物質の場合に特に優れた効果を発揮する。
【0028】
本実施形態の熱処理治具用組成物において、スピネルは、重量比で0%以上35%以下の割合で配合される。そのため、本実施形態の熱処理治具用組成物においてスピネルを配合したものを焼成して形成される熱処理治具は、被熱処理化合物に対する耐反応性が高いという特性を有する。スピネルの含有割合が35%を超えると、熱処理治具用組成物に含まれる他の成分が相対的に減少し、熱処理容器自身が所望の特性を発揮できにくくなる。
【0029】
本実施形態の熱処理治具用組成物は、例えば、従来公知の添加剤等を含有したものとすると良い。本実施形態の熱処理治具用組成物に添加する添加剤は、例えば、成形体を焼成に伴って消失する化合物や、バインダ等のように、従来の熱処理容器に用いられている添加剤のうち、熱処理容器の特性に変化を生じさせないものとすると良い。例えば、本実施形態の熱処理治具用組成物は、バインダを含有したものとすることにより、熱処理治具の成形性を向上させ、熱処理治具の製造コストの抑制、歩留まりの向上等の効果が期待できる。
【0030】
本実施形態の熱処理治具の製造方法は、上述した熱処理治具用組成物を所定形状に成型した後、所定条件で焼成することによって実現できる。焼成条件については適宜設定可能であるが、例えば、最高温度を1250℃ ~1400℃ 、好ましくは1280℃~1350℃ として、所定時間に亘って焼成すると良い。焼結によるコージライトの分解を防止するため、焼成温度は1400℃ 以下にすると良い。また、溶融シリカのクリストバライト構造化による残存膨張を抑えるため、焼成時間はできる限り短い方が良く、好ましくは1~3時間であると良い。
【0031】
ここで、一般論からすれば、上述したように熱処理治具用組成物に溶融シリカを含めることは、耐食性の観点からすると懸念材料になるとも考えられる。しかしながら、上述したように熱処理治具用組成物に溶融シリカを含めれば、溶融シリカの低熱膨張性に加え、熱処理治具用組成物を焼成して熱処理治具を製造する過程において溶融シリカが膨張収縮して形成される隙間(いわゆる、マイクロクラック)を熱膨張率の低減に活用し、熱膨張に対する耐久性の高い熱処理治具を製造できると考えられる。従って、耐食性について懸念される問題(課題)を解消することを考慮に入れつつ、熱処理治具用組成物に溶融シリカを含めれば、耐食性の確保、及び熱膨張係数の低減という、いわば二律背反した課題を解決できるものと考えられる。
【0032】
かかる課題を解決すべく、本実施形態の熱処理治具用組成物では、上述したように、アルミナを重量比で5%以上25%以下、ムライトを重量比で0%以上35%以下、コージェライトを重量比で15%以上35%以下、スピネルを重量比で0%以上35%以下、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含んだものとされている。このように、アルミナやムライト、コージェライト、スピネルを所定の重量比で配合するだけでなく、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含むように配合することにより、当該組成物を焼成して得られる焼成物の熱膨張係数を低減させることができると共に、耐食性においても問題のない熱処理治具を製造できる。
【0033】
また、本発明者らが鋭意検討した結果、溶融シリカの平均粒径を0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さい範囲内とすることにより、熱処理治具用組成物を用いて製造された熱処理治具について、熱衝撃を付与することによる劣化度を抑制に対する効果が判然として現れることが見いだされた。従って、熱処理治具用組成物に溶融シリカを配合する場合には、平均粒径が0.1mm以下である微粒の溶融シリカや、1.5mm以上である粗粒の溶融シリカを配合するよりも、0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さい中粒の溶融シリカを配合すると良い。
【0034】
また、本実施形態において例示した熱処理治具用組成物のように、アルミナ、コージェライト、及び溶融シリカを配合してなり、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含み、溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さいものを成形して得られた成形品を焼成することにより、熱衝撃破壊抵抗係数Rが、199[K]以上である熱処理治具を製造できる。このような製造方法によれば、熱衝撃に対して優れた特性を示す熱処理治具を製造できる。
【0035】
また、本実施形態において例示した熱処理治具用組成物のように、アルミナ、コージェライト、及び溶融シリカに加え、ムライトやスピネルをさらに含む熱処理治具用組成物を用いても、同様に熱衝撃に対して優れた特性を示す熱処理治具を製造できる。また、熱処理治具用組成物についてスピネルを含むものとすれば、耐食性の向上効果も期待できる。
【0036】
本実施形態において例示した熱処理治具用組成物を用いた製造方法で製造された熱処理治具を用いれば、リチウムイオン二次電池用の活物質を好適に製造することができる。具体的には、酸化リチウムを含む活物質用セラミック材料を、熱処理治具を用いて当該セラミック材料の焼成に適した温度条件下(例えば、800℃~1100℃程度の高温条件下)にて焼成することにより、リチウムイオン二次電池用の活物質を製造できる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明の熱処理治具用組成物、熱処理治具の製造方法、及びリチウム電池用活物質製造方法について具体的に説明する。本実施例では、熱処理治具の例として、
図1に示すように、天面側に開口部分を有する槽状の外観形状を有する匣鉢を熱処理容器10として製作した。熱処理容器10は、例えば、酸化リチウムを含む活物質用セラミック材料を被熱処理化合物とし、これを焼成するため等の用途に用いることができるものである。
【0038】
図1に示した熱処理容器10は、底部12及び立設壁14を有する。底部12は、板状のものであり、例えば平面視で矩形、円形等の形状のもの(図示例では矩形)のものとすることができる。また、立設壁14は、底部12の周縁部において、底部12の全周にわたって立設するように形成された部分である。
図1の熱処理容器10は、底部12及び立設壁14のうち、厚さの最も薄い最薄部が、9~12mmの厚さとし、最薄部以外の部分の厚さを16mm以下の厚さとして製造した。
【0039】
また、アルミナ、ムライト、コージェライト、スピネル、及び溶融シリカを準備し、以下の表1~表3に示した重量比になるように秤量して混合した熱処理治具用組成物を試料として複数種準備した。また、各試料について、以下に説明する試験方法によって評価試験を行い、その結果を表1~表3に示した。なお、以下の表1~表3において、共通する試料名にて表示されている熱処理治具用組成物は、それぞれ同一の重量比で各成分を含むものである。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
≪試験方法について≫
(a)熱膨張率、及び熱膨張率低下割合について
上述した各試料について、8×8×25mmの大きさに成形したものを準備し、熱膨張計を用いて常温から1000℃までの間の伸びを計測し、常温における長さに対する百分率で表した。また、比較例1に係るサンプルの熱膨張率を基準として、実施例1~実施例5に係るサンプルの熱膨張率の低下割合を算出した。比較例2に係るサンプルの熱膨張率を基準として、実施例6、実施例7に係るサンプルの熱膨張率の低下割合を算出した。
【0044】
(b)曲げ応力について
上述した各試料について、10×10×60mmの大きさに成形したものを準備した。当該試料について、支点間距離を40mmとして、JISR1604に準拠して、常温における三点曲げ強度を計測した。
【0045】
(c)弾性率について
上述した各試料について、100×50×10の板状に成形したものを準備し、常温における弾性率を弾性率計にて計測した。
【0046】
(d)熱衝撃破壊抵抗係数について
上記(a)~(c)の試験により得られた熱膨張率、曲げ応力、及び弾性率の数値を用い、以下の(数式1)に則って上述した各試料についての熱衝撃破壊抵抗係数を導出した。なお、上述のとおり、熱膨張率は常温から1000℃までの間の伸びを計測し、常温における長さに対する百分率で表したもの、曲げ応力及び弾性率は常温における数値である。
【数1】
【0047】
(e)熱衝撃劣化試験について
上述した各試料について、熱衝撃を繰り返し加えることによる劣化の進行度についての評価を行うべく、熱衝撃劣化試験を行った。具体的には、上述した各試料について、100×50×10の板状に成形したものを準備し、当該試料について(1)1000℃で30分加熱、(2)水中投下、(3)弾性率計測、からなる一連のフローを5回繰り返して行う試験を行った。熱衝撃を繰り返し加えることによる劣化の進行度についての評価は、各サンプルの初期の弾性率から、5セット後の弾性率への変化率(劣化率)を百分率で表すことにより評価した。
【0048】
(f)耐反応性(耐食性)について
上述した各試料について、被熱処理化合物に対する耐反応性(耐食性)に関する評価を行うための試験を行った。具体的には、炭酸リチウム粉末(Li2CO3)を3/2mol%、酸化コバルト粉末(Co3O4)を1/3mol%、二酸化マンガン粉末(MnO2)を1mol%、水酸化ニッケ ル粉末(Ni(OH)2)を1mol%、となるように秤量し、十分に混合した後に円板状のペレット形状に成形した。このペレットは、φ18mm、厚さ5mm、重量4gとなるように成形された。
【0049】
上述したようにして製造されたペレットを、各試料を
図1の熱処理容器10のように成形及び焼成した匣鉢の表面上(底部の中央部)に載置し、焼成炉内に配置して焼成した。ペレットの焼成は、大気雰囲気で、1100℃まで4時間で昇温し、昇温後1100℃で4時間保持し、その後、大気中で放冷した。また、放冷後、各試料の熱処理容器の表面上のペレットを取り除き、別途準備した未焼成のペレットを同じ場所に載置し、先の焼成と同様の処理条件で焼成を行った。このようなペレットの焼成を20回繰り返し、焼成後の各試料を観察した。焼成後の各試料の観察は、へこみが生じているか否かに着目して行った。当該観察の結果、へこみが生じたものについてはペレット(リチウム含有化合物)に含まれるリチウムに対する耐食性が低く、へこみが生じなかったものについてはリチウムに対する耐食性が高いとの評価を行った。
【0050】
≪試験結果について≫
以下、上述した各試験の結果について、上記した表1~表3に基づいて説明する。
【0051】
[表1に示した試験結果について]
表1は、アルミナを重量比で5%以上25%以下、ムライトを重量比で0%以上35%以下、コージェライトを重量比で15%以上35%以下、溶融シリカを重量比で20%以上50%以下の範囲で含み、粘土を重量比で12.5%含んだ実施例1~実施例5、比較例1、比較例5、及び比較例6について、上記各試験の試験結果を纏めたものである。
【0052】
表1に纏めた試験例では、実施例1~実施例5、比較例1、比較例5、比較例6で、熱処理治具用組成物に含まれる溶融シリカの有無や重量比が相違している。そのため、表1によれば、熱処理治具用組成物における溶融シリカの有無や重量比が、熱処理治具において求められる特性に与える影響についての知見を得ることができる。また、表1に列挙されている各実施例、及び各比較例は、いずれもスピネルを含まないものとしている。そのため、表1を参照することにより、スピネルを配合することによるリチウムに対する耐反応性(耐食性)の抑制効果が及ばない状況において、熱処理治具として十分な特性が得られるかについての知見を得ることもできる。以下、これらの観点に基づき、表1に纏めた試験結果について各試験毎に検討する。
【0053】
先ず、表1に列挙された各実施例及び比較例に関し、熱膨張率について検討すると、溶融シリカを熱処理治具用組成物に含む実施例1~実施例5、比較例5、比較例6は、溶融シリカを含まない比較例1に比べて熱膨張率が低くなる傾向にあることが見いだされた。また、熱膨張率は、溶融シリカの重量比が50重量%まで増加するに連れて低下する傾向にあることが見いだされた。従って、熱処理治具用組成物に溶融シリカを配合することにより、熱膨張率を低下させる効果があることが見いだされた。また、溶融シリカを含まない比較例1の熱膨張率を基準(100%)とした各実施例や比較例の熱膨張率の低下度を百分率で示した結果に基づき、溶融シリカの含有量の変化が熱膨張率に与える影響を検討すると、溶融シリカの重量比が10重量%では85.7%であるものの、20重量%に増加させることで67.9%まで大幅に低下するとの知見が得られた。この結果に基づけば、溶融シリカの重量比を10重量%よりも多くすることで、熱膨張率の観点において有意な効果が得られるとの知見が得られた。
【0054】
また、表1に列挙された各実施例及び比較例に関し、熱衝撃破壊抵抗係数を導出し、検討を行った。熱衝撃破壊抵抗係数の導出は、熱膨張率、曲げ応力、及び弾性率の数値(表1参照)を実験により導出し、これらの数値を上記の(数式1)に代入することによって算出した。その結果、溶融シリカを熱処理治具用組成物に含む実施例1~実施例5、比較例5、比較例6は、いずれも溶融シリカを含まない比較例1に比べて熱衝撃破壊抵抗係数が高かった。そのため、溶融シリカを熱処理治具用組成物に配合することにより、熱衝撃破壊抵抗係数の向上に貢献できるとの知見が得られた。またこの結果から、溶融シリカの重量比が10重量%では179.0[K]であるものの、20重量%に増加させることで268.3[K]まで上昇することが見いだされた。この結果に基づけば、溶融シリカの重量比を10重量%よりも多くすることで、熱衝撃破壊抵抗係数の観点において有意な効果が得られるとの知見が得られた。
【0055】
続いて、表1に列挙された各実施例及び比較例に関し、熱衝撃劣化試験を行い、熱衝撃劣化度を導出した。その結果、溶融シリカを熱処理治具用組成物に含む実施例1~実施例5、比較例5、比較例6は、いずれも溶融シリカを含まない比較例1に比べて熱衝撃劣化度が改善される傾向にあることが見いだされた。また、溶融シリカの重量比が10重量%では46.0%であり、溶融シリカを含まない場合の45.0%よりもやや改善した程度であったが、20重量%に増加させることで52.7%まで改善することが見いだされた。この結果に基づけば、溶融シリカの重量比を10重量%よりも多くすることで、熱衝撃劣化度の観点において有意な効果が得られるとの知見が得られた。
【0056】
上述した各試験に加え、表1に列挙された各実施例及び比較例に関し、耐反応性(耐食性)についての試験を行った。その結果、溶融シリカを10重量%~50重量%の範囲で含む熱処理治具用組成物、及び溶融シリカを含まない比較例1において耐反応性の観点において問題ないとの結果が得られたが、溶融シリカを60重量%含む比較例6においては、耐反応性に問題があるとの結果が得られた。この結果に基づけば、重量比で50重量%を越える範囲にまで溶融シリカの配合量を増やしてしまうと、耐反応性において問題が生じる懸念があるとの知見が得られた。
【0057】
[表2に示した試験結果について]
表2は、アルミナを重量比で25%、ムライトを重量比で0%以上20%以下、コージェライトを重量比で15%、スピネルを重量比で30%以上35%以下、溶融シリカを重量比で0%以上20%以下の範囲で含み、粘土を重量比で10%含んだ実施例6、実施例7、比較例2について、上記各試験の試験結果を纏めたものである。
【0058】
表2に纏めた試験例では、実施例6、実施例7、比較例2で、熱処理治具用組成物に含まれる溶融シリカの有無や重量比が相違している。また、表2に列挙されている実施例6、実施例7、比較例2は、いずれもスピネルを含むものである。そのため、表2によれば、スピネルを含む熱処理治具用組成物において、溶融シリカを配合することにより、熱処理治具において求められる特性に与える影響についての知見を得ることができる。以下、表2に纏めた試験結果について各試験毎に検討する。
【0059】
先ず、表2に列挙された各実施例及び比較例に関し、熱膨張率について検討すると、溶融シリカを熱処理治具用組成物に含む実施例6、実施例7は、溶融シリカを含まない比較例2に比べて熱膨張率が低くなる傾向にあることが見いだされた。従って、スピネルを含む熱処理治具用組成物についても、溶融シリカを配合することにより、熱膨張率を低下させる効果があることが見いだされた。また、溶融シリカを含まない比較例2の熱膨張率を基準(100%)とした各実施例の熱膨張率の低下度を百分率で示した結果を見ても、溶融シリカを含有させることにより、十分な低下度が得られることが判明した。この結果に基づけば、スピネルを含む熱処理治具用組成物についても、熱膨張率を低下させる効果が得られ、上記表1で得られた知見と同様に、溶融シリカの重量比を15重量%以上にすると有意な効果が得られるとの知見が得られた。
【0060】
また、表2に列挙された各実施例及び比較例に関し、熱衝撃破壊抵抗係数を導出し、検討を行った。熱衝撃破壊抵抗係数は、実施例6、実施例7、及び比較例2について計測した熱膨張率、曲げ応力、及び弾性率の数値を表2に示すように実験により導出し、これらの数値を上記の(数式1)に代入することによって算出した。その結果、溶融シリカを熱処理治具用組成物に含む実施例6、実施例7は、いずれも溶融シリカを含まない比較例2に比べて熱衝撃破壊抵抗係数が高かった。そのため、スピネルを含む熱処理治具用組成物であっても、溶融シリカを15重量%以上配合することにより、熱衝撃破壊抵抗係数の向上に貢献できるとの知見が得られた。
【0061】
続いて、表2に列挙された実施例6、実施例7、及び比較例2に関し、熱衝撃劣化試験を行い、熱衝撃劣化度を導出した。その結果、スピネルを含む熱処理治具用組成物についても、溶融シリカを含む実施例6、実施例7は、いずれも溶融シリカを含まない比較例2に比べて熱衝撃劣化度が改善される傾向にあることが見いだされた。また、溶融シリカの重量比が15重量%以上とすることで、熱衝撃劣化度の観点において有意な効果が得られるとの知見が得られた。
【0062】
上述した各試験に加え、表2に列挙された実施例6、実施例7、及び比較例2に関し、耐反応性(耐食性)についての試験を行った。その結果、耐反応性の観点においては、実施例6、実施例7、及び比較例2のいずれにおいても問題ないとの結果が得られた。
【0063】
[表3に示した試験結果について]
表3は、アルミナを重量比で10%、ムライトを重量比で12.5%、コージェライトを重量比で30%、溶融シリカを重量比で35%、粘土を12.5%で含んだ実施例1、比較例3、比較例4について、上記各試験の試験結果を纏めたものである。表3は、熱処理治具用組成物を構成する各成分について、同一の重量比で含むものとしつつ、溶融シリカの平均粒径を相違させた場合についての実施例や比較例についての実験結果を纏めたものである。具体的には、実施例1は、溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さい範囲内となるようにしたものである。これに対し、比較例3は溶融シリカの一部に平均粒径が1.5mm以上の溶融シリカを用いた例、比較例4は溶融シリカの一部に平均粒径が0.1mm以下の溶融シリカを用いた例である。以下、表3に纏めた試験結果に基づき、溶融シリカの平均粒径が各物性値に与える影響について検討する。
【0064】
先ず、表3に列挙された実施例1、比較例3、及び比較例4に関し、熱膨張率について検討すると、0.19あるいは0.2であり、殆ど相違がなかった。また、表1に示した比較例1(溶融シリカを含まない熱処理治具用組成物)の熱膨張率を基準として、溶融シリカを重量比で同量(35%)含む実施例1、比較例3、及び比較例4についての熱膨張率の低下率を百分率で算出した。その結果、実施例1、比較例3、及び比較例4のいずれも、十分な熱膨張率の低減効果が認められた。これにより、熱処理治具用組成物に配合する溶融シリカの平均粒径の大きさが熱膨張率に与える影響は小さいことが判明した。従って、熱膨張率を改善する観点からすると、表1及び表2に示した実験結果に基づき、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含ませることが有意に働くとの知見が得られた。
【0065】
また、表3に列挙された実施例1、比較例3、及び比較例4に関し、熱衝撃破壊抵抗係数を導出し、検討を行った。熱衝撃破壊抵抗係数の導出は、表1及び表2に示した各実施例や比較例と同様に、熱膨張率、曲げ応力、及び弾性率の数値を実験により導出したうえ、これらの数値を上記の(数式1)に代入することによって算出した。その結果、実施例1、比較例3、及び比較例4の熱衝撃破壊抵抗係数は、いずれも199[K]よりも高く、熱処理治具に用いるうえで十分な値を示すことが判明した。この結果を踏まえれば、表1や表2での検討結果のように、溶融シリカを熱処理治具用組成物に配合すれば熱衝撃破壊抵抗係数の向上に貢献できるが、その平均粒径の大きさが熱衝撃破壊抵抗係数に与える影響は小さいことが判明した。
【0066】
続いて、表3に列挙された実施例1、比較例3、及び比較例4に関し、熱衝撃劣化試験を行い、熱衝撃劣化度を導出した。その結果、溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく1.5mmより小さい範囲内にある実施例1について、溶融シリカの一部に平均粒径が1.5mm以上の溶融シリカを用いた比較例3や、溶融シリカの一部に平均粒径が0.1mm以下の溶融シリカを用いた比較例4に比べて熱衝撃による劣化が少ない(熱衝撃劣化度合の%が高い)ことが見いだされた。また、比較例3や比較例4の熱衝撃劣化度は、表1及び表2に示した比較例1や比較例2のように溶融シリカを含まないものと大差ないことが判明した。この結果に基づき、溶融シリカの平均粒径を0.1mmよりも大きく1.5mmより小さい範囲とすることで、熱衝撃劣化度の改善に大きく貢献できるとの知見が得られた。
【0067】
上述した各試験に加え、表3に列挙された実施例1、比較例3、及び比較例4に関し、耐反応性(耐食性)についての試験を行った。その結果、耐反応性の観点においては、実施例1、比較例3、及び比較例4のいずれにおいても問題ないとの結果が得られた。
【0068】
以上、表1~表3に示した各実施例や各比較例についての試験結果に基づけば、熱処理治具用組成物は、アルミナを重量比で5%以上25%以下、ムライトを重量比で0%以上35%以下、コージェライトを重量比で15%以上30%以下、スピネルを重量比で0%以上35%以下、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含むものであることが好適であるとの知見が得られた。また、溶融シリカの平均粒径については、0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さい範囲内であることが望ましいとの知見が得られた。
【0069】
また、表1~表3に示した各実施例や各比較例についての試験結果に基づけば、上述したような好適な組成比で各成分を含む熱処理治具用組成物を成形して焼成することで、温度変化に対する耐久性の高い熱処理治具を提供できるとの知見が得られた。
【0070】
また、表1~表3に示した各実施例や各比較例についての試験結果に基づけば、アルミナ、コージェライト、及び溶融シリカを配合してなり、溶融シリカを重量比で15%以上50%以下の範囲で含み、溶融シリカの平均粒径が0.1mmよりも大きく、1.5mmより小さいものである熱処理治具用組成物を成形して得られた成形品を焼成すれば、熱衝撃破壊抵抗係数が、199[K]以上である熱処理治具を製造できるとの知見が得られた。
【0071】
また、表1~表3に示した各実施例や各比較例についての試験結果に基づけば、上述した熱処理治具用組成物がムライト及びスピネルのいずれか一方又は双方をさらに含むものであっても、その他の成分を上述した好適な組成比で含むものとすれば、温度変化に対する耐久性の高い熱処理治具を提供できるとの知見が得られた。
【0072】
さらに、上述した各実施例や各比較例についての試験結果に基づけば、上述した好適な組成比で各成分を含む熱処理治具用組成物によって製造された熱処理治具は、酸化リチウムを含むリチウムイオン二次電池の活物質用セラミック材料を焼成して製造するのに最適であるとの知見が得られた。具体的には、上述した製法で製造された熱処理治具は、例えば、リチウムイオン二次電池用の活物質を収容しつつ、未だ高温(例えば約500度程度の高温)の状態において強制的に空冷する等の処理を行ったとしても破損等しにくい。また、上述した製法で製造された熱処理治具は、リチウム含有化合物に含まれるリチウムに対する耐食性が高い。そのため、上述した製法で製造された熱処理治具は、リチウムイオン二次電池の活物質の製造に適している。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の熱処理治具用組成物、及び熱処理治具の製造方法は、熱処理に用いるための治具全般の素材、及び製造方法として好適に利用できる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用活物質製造方法は、リチウムイオン二次電池の活物質の製造全般において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0074】
10 : 熱処理容器(熱処理治具)
12 : 底部
14 : 立設壁