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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】振動型駆動装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/12 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
H02N2/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020145846
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040911
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】根本 歩
(72)【発明者】
【氏名】戸村 かおり
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205494(JP,A)
【文献】特開2006-158053(JP,A)
【文献】特開2010-122403(JP,A)
【文献】特開2019-213255(JP,A)
【文献】特開2009-237213(JP,A)
【文献】特開2014-085470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円環形状の被接触部材と、
前記被接触部材を保持する保持部材と、
前記被接触部材に対して加圧接触すると共に、振動を用いて前記被接触部材を回転駆動する駆動部と、
前記駆動部を前記被接触部材に対して加圧する加圧手段と、
前記駆動部からの加圧力を受ける加圧受け部材と、
前記被接触部材と前記加圧受け部材との間に介在するスペーサ部材と、
前記被接触部材の径方向において、前記駆動部が前記被接触部材に加圧接触する第1の位置よりも内側の第2の位置で、前記被接触部材前記加圧受け部材及び前記スペーサ部材を一括して前記保持部材に対して固定する固定手段と、
前記径方向において前記スペーサ部材と並び前記第1の位置を含む領域に配置され、前記固定手段に固定されず前記被接触部材と前記加圧受け部材とで挟持される減衰部材と、を有することを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項2】
前記径方向において、前記第2の位置は前記第1の位置に近接していることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
【請求項3】
前記固定手段は、前記被接触部材の回転駆動における回転中心を中心とする同心の複数箇所で前記被接触部材前記加圧受け部材及び前記スペーサ部材を一括して前記保持部材に対して固定することを特徴とする請求項1または2に記載の振動型駆動装置。
【請求項4】
記スペーサ部材は前記被接触部材よりも剛性が高いことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項5】
前記保持部材を、回転中心を中心として回転可能に支持する支持体をさらに有し、
前記加圧受け部材は、前記駆動部からの加圧力を前記被接触部材と前記支持体との間で受けることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記被接触部材に接触する弾性体と、前記弾性体に振動を励起させる素子とを有し、
前記弾性体に励起される振動により前記被接触部材が回転駆動されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型駆動装置と、
前記振動型駆動装置によって駆動される撮像部と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動と摩擦力とによって回転駆動力を生じさせる振動型駆動装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置等の電子機器において、励起した振動と摩擦力とにより回転駆動を生じさせる振動型駆動装置が採用される。振動型駆動装置として、小型、高出力、静粛性という特徴を併せ持つ回転式の振動型モータが知られている。
【0003】
このような回転式の振動型モータには、駆動源である円環形状の振動子が、円環形状の摩擦部材(被接触部材)に対して、円環形状全面で均一に加圧付勢され、加圧付勢により発生する摩擦力を利用して回転方向の駆動力が取り出される構成のものがある。一方、特許文献1、2に示されるように、円環形状の摩擦部材に対し相対的にサイズの小さい振動子が摩擦部材の円周上の特定の位置でのみ加圧付勢するように構成された振動型モータも提案されている。このような振動型モータは振動子のサイズが小さいことにより小型化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-158054号公報
【文献】特開2004-304887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、円周上の特定位置でしか規制を受けなくなると、規制が少ないことで摩擦部材が不要な共振を発生しやすくなり、振動子の駆動力の阻害要因となって、振動型モータとしての駆動特性が低下するおそれがある。一方で、摩擦部材の不要な共振を抑えるために、摩擦部材をビスなどで固定部材へ固定することで振動を減衰させる方法が考えられる。しかし、摩擦部材を何ら工夫なく固定部材に固定したのでは、不要な共振を生じさせたり、ユニット全体の大型化を招いたりするおそれがある。
【0006】
本発明は、良好な駆動特性を確保すると共に大型化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、略円環形状の被接触部材と、前記被接触部材を保持する保持部材と、前記被接触部材に対して加圧接触すると共に、振動を用いて前記被接触部材を回転駆動する駆動部と、前記駆動部を前記被接触部材に対して加圧する加圧手段と、前記駆動部からの加圧力を受ける加圧受け部材と、前記被接触部材と前記加圧受け部材との間に介在するスペーサ部材と、前記被接触部材の径方向において、前記駆動部が前記被接触部材に加圧接触する第1の位置よりも内側の第2の位置で、前記被接触部材前記加圧受け部材及び前記スペーサ部材を一括して前記保持部材に対して固定する固定手段と、前記径方向において前記スペーサ部材と並び前記第1の位置を含む領域に配置され、前記固定手段に固定されず前記被接触部材と前記加圧受け部材とで挟持される減衰部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な駆動特性を確保すると共に大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電子機器の模式図である。
図2】振動型モータの分解斜視図である。
図3】振動型モータの分解斜視図である。
図4】振動型モータの要部の断面図である。
図5】振動子の振動モードの模式図、楕円運動する突起部の模式図である。
図6】被駆動体の分解斜視図である。
図7】被駆動体を詳細に示した振動型モータの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る振動型駆動装置が適用される電子機器の模式図である。この電子機器として旋回駆動装置1が例示される。旋回駆動装置1は、固定体10と、固定体10に対して回転可能な可動体20とを含む。固定体10は、振動型駆動装置としての振動型モータ100のほか、旋回駆動装置1全体を制御する制御基板(不図示)を含む。振動型モータ100は断面図で示されている。可動体20は、被写体を撮像可能な撮像部である撮像装置21を含む。なお、旋回駆動装置1全体を撮像装置と呼称してもよい。
【0012】
振動型モータ100は、振動を用いて被駆動体121を回転駆動する振動子101(後述する)を備える回転式の超音波モータである。可動体20は、振動型モータ100の被駆動体121に連結されている。振動子101が被駆動体121を回転移動させることによって、撮像装置21を含む可動体20は回転中心Pを中心として回転する。
【0013】
旋回駆動装置1は、可動体20が被駆動体121に連結され、支持体122を固定状態にして用いられる構成である。しかし、これとは逆に、旋回駆動装置1は、可動体20が支持体122に連結され、被駆動体121を固定状態にして用いられる構成であってもよい。
【0014】
図2図3は、振動型モータ100の分解斜視図である。図4は、振動型モータ100の要部の断面図である。
【0015】
以降、各部の方向を、図2図3等に示したX、Y、Z座標軸を基準として呼称する。ここでは便宜上、回転中心Pの軸線方向と平行な方向をY方向と定義する。特に、Y方向において、振動子101に対して被駆動体121が位置する側を+Y方向とする。振動子101の長手方向をZ方向と定義する。Y方向とZ方向とに直交する方向をX方向と定義する。
【0016】
振動型モータ100は、主として、支持体122、被駆動体121、シャーシ122dを有する。支持体122は、振動型モータ100全体を保持している。被駆動体121は、全体として略円環形状の部材である。被駆動体121は、軸部121a、転動受け部121b、接触面121sを有する。接触面121sは摩擦面である。支持体122には回転支持穴122aが形成されている。被駆動体121の軸部121aが回転支持穴122aに回転可能に嵌合(軸支)されている。これにより、被駆動体121全体が、回転中心Pを中心として支持体122に対して相対的に回転可能である。従って、振動型モータ100のラジアル方向はすべり軸受構造となっている。
【0017】
振動型モータ100は、ラジアル方向における嵌合関係が回転支持穴122aと軸部121aとによって決定されるシンプルな構成であるので、比較的低コストで且つ容易に嵌合精度を確保可能である。なお、被駆動体121を単一部材で構成してもよいし、接触面121sおよび転動受け部121bを含む円盤状部分と軸部121aとを別部材で構成してもよい。あるいは、軸部121aと回転支持穴122aとの関係を反対にしてもよい。すなわち、被駆動体121に回転支持穴を設け、支持体122に軸部を設け、両者を嵌合することによって、被駆動体121全体が、支持体122に対して相対的に回転可能となるように構成してもよい。
【0018】
駆動部としての振動子101は、弾性体102と圧電素子103とを有する。圧電素子103は、弾性体102に振動を励起させる電気-機械エネルギ変換素子である。圧電素子103は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で構成される。弾性体102は例えばステンレス等の板金で構成される。
【0019】
弾性体102は、それぞれ長手方向に並んだ各2つの突起部102aおよび被保持部102bを有する(図2)。弾性体102と圧電素子103とは、接着剤などにより固着されている。両者が固着された状態で、後述する加圧機構により圧電素子103が押圧されることで、突起部102aが、被駆動体121の接触面121sに対して加圧接触する。圧電素子103に高周波交流の駆動電圧が印加されることで発生する超音波領域の周波数の振動(超音波振動)により、弾性体102の突起部102aに楕円運動EM(図5(a)、(b))が起こる。これによって、突起部102aと接触面121sとの間で駆動力が発生する。突起部102aと接触面121sとの接触位置が、後述する駆動力F2(図3)が発生する位置である。
【0020】
支持体122には、被駆動体121の転動受け部121bと対向する面である転動受け部122bが形成されている。転動受け部122bと転動受け部121bとの間に複数個(図では6個)の転動ボール108が設けられている。すなわち、振動型モータ100のスラスト方向に関する支持構造は転がり軸受構造であり、被駆動体121と支持体122とは互いに、転動ボール108の転動を介して相対的に円滑に回転可能である。これにより、被駆動体121が、加圧力を受けながら移動する際の摩擦抵抗を極力小さくすることができる。
【0021】
なお、転動受け部122bは支持体122に一体に設けてもよいが、別部材で構成してもよい。また、転動受け部121bは被駆動体121に一体に設けてもよいが、別部材で構成してもよい。なお、転動ボール108の代わりに、転動受け部122bと転動受け部121bとの間にローラやコロ等の転動部材を設けてもよいし、摺動部材を設けてもよい。
【0022】
第1保持部材104は、弾性体102の被保持部102bを保持することで弾性体102を固定的に保持する。これにより、振動子101と第1保持部材104とは一体的に動く。シャーシ122dは支持体122に固定されている。枠部材113は、弾性連結部材114を介して第1保持部材104を保持している。枠部材113がシャーシ122dに複数のビス115で固定されることで、第1保持部材104は被駆動体121に対して位置決め固定される。
【0023】
遮断部材105は、振動が他の部品に伝わらないように遮断する機能を有する。遮断部材105により、圧電素子103の超音波振動が後述する小基台106へ伝播することが抑制される一方、圧電素子103の超音波振動は減衰されない。遮断部材105の材料としてはフェルト生地が適している。小基台106は、遮断部材105を介して圧電素子103と面接触し、加圧バネ111による加圧力を圧電素子103に伝える機能を有する。
【0024】
加圧機構は、加圧部材110、加圧手段としての加圧バネ111、受け部材112を含む。第2保持部材107はこの加圧機構を保持している。第2保持部材107は、枠部材113と共に、2つのビス115でシャーシ122dに固定される。受け部材112の中央には、丸穴である嵌合穴部112aが形成され、受け部材112の外周面にはネジ部112bが形成されている。ネジ部112bが第2保持部材107のネジ穴107aに螺合されることで、受け部材112は第2保持部材107に固定される。また、嵌合穴部112aは、加圧部材110が有する嵌合軸部110aを嵌合保持する。加圧部材110は、受け部材112の嵌合穴部112aに嵌合されて、被駆動体121の接触面121sに対して概ね垂直な方向にのみ移動可能に保持される。
【0025】
加圧部材110は、加圧バネ111からの加圧力を、小基台106と遮断部材105とを介して振動子101に伝える。これにより、振動子101が被駆動体121に加圧接触する。加圧バネ111は、例えば圧縮コイルバネで構成される。加圧バネ111の一方の端部は受け部材112に固定され、他方の端部は加圧部材110に当接している。このように加圧バネ111は圧縮状態で両端部が固定されることにより加圧力F1を発生させる。発生した加圧力F1は、圧電素子103に伝えられることで、被駆動体121の接触面121sの垂線方向(+Y方向)に働く力となる。その加圧力F1が、振動子101と被駆動体121とを加圧接触させる。従って、+Y方向が加圧バネ111による加圧方向である。転動ボール108は、加圧力F1を被駆動体121と支持体122との間で受け止める摺動部材の一例である。また、加圧力F1を付与する加圧位置は、振動子101の長手方向における弾性体102の2つの突起部102a間の略中心に設定されている。これにより、2つの突起部102aを被駆動体121にバランスよく加圧接触させることができる。
【0026】
このように、各部材が組込まれてユニット化され、振動型モータ100が構成される。この構成において、振動子101が振動し、突起部102aに楕円運動EM(図5(c))が生じると、突起部102aと被駆動体121の接触面121sとの間に駆動力F2(図3)が生じる。駆動力F2は被駆動体121の回転中心Pを中心とする径方向に垂直であるので、被駆動体121は回転中心P周りに回転駆動される。
【0027】
次に、振動型モータ100の振動子101の振動モードについて、図5(a)~(c)を用いて説明する。図5(a)、(b)は、振動子101の振動モードを示す模式図である。図5(c)は、楕円運動EMをする突起部102aの模式図である。
【0028】
振動子101の振動モードは、第1の振動と第2の振動とを含む複合的な振動である。第1の振動は、図5(a)に示すように、振動子101の突起部102aに、矢印で示す往復運動M1を発生させ、主に接触面121sの接線方向に突起部102aを変位させる振動である。第1の振動では節N1が複数生じる。振動子101においては、破線で示された3つの節N1が存在し、振動子101の長手方向の両端側にある節N1が突起部102aの近傍に位置する。
【0029】
第2の振動は、図5(b)に示すように、突起部102aに、矢印で示す往復運動M2を発生させ、主に接触面121sと接触離間させる方向に突起部102aを変位させる振動である。第2の振動では節N2が複数生じる。振動子101においては、破線で示された2つの節N2が存在する。
【0030】
第1の振動と第2の振動とを同一の周波数で発生させることで、突起部102aにおける接触面121sとの接触点102c(図4図5(c))に楕円運動EMを発生させることができる。振動子101においては、上述した駆動力F2をより大きく発生させるために接触点102cを複数(2個)設けているが、複数設けることは必須でない。なお、第1の振動、第2の振動の発生方法などの詳細については、例えば特開2004-304887号公報に記載されるように公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0031】
次に、図6図7で、被駆動体121の詳細な構成を説明する。図6(a)、(b)は、被駆動体121の分解斜視図である。図7は、被駆動体121を詳細に示した振動型モータ100の要部の断面図である。
【0032】
図2図4では、被駆動体121は簡素化して模式的に示されていた。図7に示すように、被駆動体121は、軸部121a、転動受け部121b、摩擦部材201(被接触部材)、スペーサ部材202、減衰部材203および連結部材204を有する。図6図7では、被駆動体121を構成する要素を個別に示してある。
【0033】
なお、図示されていないが、被駆動体121の転動受け部121bと支持体122の転動受け部122bとの間には、リテーナが介在する。リテーナはリング形状の部材である。リテーナは、支持体122に対して回転可能に嵌合されている。リテーナは、転動ボール108を保持するためのボール保持穴を複数有する。複数のボール保持穴は、円周方向に略等間隔(例えば60°間隔)に配置されている。転動ボール108がボール保持穴に収容されることで、転動ボール108が周方向に略等間隔で保持される。
【0034】
あるいは、複数の転動ボール108は、リテーナではなく環状溝部によって保持されてもよい。例えば、支持体122に、回転中心Pを中心とする環状溝部が形成される。この環状溝部内に複数の転動ボール108が配置される。複数の転動ボール108は、公転半径(転動軌跡)、すなわち径方向における位置が規制された状態で被駆動体121と支持体122とに対して転動可能となる。なお、転動ボール108の数は6個に限定されないが、安定して転動保持をするために転動ボール108は最低3個以上必要である。すなわち、安定駆動のためには、転動ボール108等の摺動部材は、6個に限定されず、回転中心Pを囲むように少なくとも3つ設けられればよい。
【0035】
摩擦部材201は接触面121sを有する円環形状の部材である。摩擦部材201と軸部121aとの間には、摩擦部材201側から順にスペーサ部材202、転動受け部121bが介在する。さらに、摩擦部材201と転動受け部121bとの間には、スペーサ部材202の外側において、減衰部材203が狭持される。摩擦部材201、スペーサ部材202、転動受け部121bにはそれぞれ、複数(6個)のビス等の連結部材204が貫通する6個の穴が形成されている。摩擦部材201の穴が固定部201aである。径方向Rにおける摩擦部材201の複数の固定部201aの位置は互いに共通である。複数の固定部201aは略等間隔に6個配置されるが、数は問わない。軸部121aには、連結部材204が螺合されるネジ穴が形成されている。
【0036】
摩擦部材201は複数の連結部材204により軸部121aに固定される。スペーサ部材202および転動受け部121bも、同一の固定手段である連結部材204により、摩擦部材201と共に軸部121aに一括して(共締め状態で)固定される。このような構成により、保持部材としての軸部121aは摩擦部材201を保持する。また、加圧受け部材としての転動受け部121bは、加圧機構に起因する振動子101からの加圧力F1を摩擦部材201と支持体122の転動受け部122bとの間で受ける。スペーサ部材202は摩擦部材201よりも剛性が高い。
【0037】
図7に示すように、回転中心Pを起点として回転中心Pに直交する方向が径方向Rである。回転中心Pに平行な方向からの投影視において(つまり径方向Rにおいて)、回転中心Pから、振動子101の突起部102aが被駆動体121の接触面121sに加圧接触する位置(第1の位置)までの距離を、駆動半径Rdと称する。第1の位置は、駆動力F2(図1(b))が発生する位置でもある。また、径方向Rにおいて、回転中心Pから、摩擦部材201と転動受け部121bとが一括して軸部121aに対して固定される位置(第2の位置)までの距離を、固定位置半径Rxと称する。径方向Rにおいて、固定位置半径Rxの位置(第2の位置)は、駆動半径Rdの位置(第1の位置)よりも内側である。
【0038】
転動受け部121bは連結部材204により一括して摩擦部材201と共に固定されるため、転動受け部121bと摩擦部材201とを個別に固定する構成に比べて、径方向Rの大型化を避けることができる。ここで、径方向Rの大型化を避けるだけであれば、回転中心Pを中心とする円周方向に沿って、摩擦部材201と転動受け部121bの互いの固定位置を避ける方法が考えられる。例えば各部品を120度毎の3点で固定し、相互の固定位置を60度ずらすこと考えられる。
【0039】
しかし、この方法だと、摩擦部材201の形状が回転中心Pに対して非対称な異形形状となり、不要な共振モードを持ちやすくなってしまう。本実施の形態のように、固定箇所を摩擦部材201の転動受け部121bと共通化することで、摩擦部材201の異形形状化を避けることが可能となり、不要共振を持ちにくい形状にすることができる。また、摩擦部材201と同様に転動受け部121bも異形形状化を避けることができる。摩擦部材201からスペーサ部材202を介して伝搬される振動により転動受け部121bに発生する不要共振も、転動受け部121bの異形形状化を避けることで、同様に発生しにくくすることができる。
【0040】
固定位置半径Rxの位置と駆動半径Rdの位置とは隣接し、且つ近接している。回転中心Pに平行な方向からの投影視において、摩擦部材201と転動受け部121bとが減衰部材203を狭持する位置は、駆動半径Rdの位置に対して重なっている。言い換えると、摩擦部材201と転動受け部121bとは、径方向Rにおいて、駆動半径Rdの位置を含む領域で減衰部材203を狭持している。
【0041】
本実施の形態によれば、径方向Rにおいて、駆動半径Rdの位置(第1の位置)よりも内側の固定位置半径Rxの位置(第2の位置)で、摩擦部材201と転動受け部121bとが軸部121aに対して連結部材204により一括して固定される。まず、摩擦部材201が連結部材204で軸部121aへ固定されることで振動を減衰させることができる。その結果、摩擦部材201の不要な共振が低減され、駆動特性が良好となる。また、固定部201aの位置は、振動子101と摩擦部材201とが摩擦接触する第1の位置の内側であるので、摩擦部材201を被駆動体121の重心に近い位置で保持固定することが可能となり、被駆動体121全体の慣性モーメントを小さく抑えることができる。その結果、駆動特性が良好となる。さらに、転動受け部121bは摩擦部材201と共に一括して軸部121aに固定されるので、転動受け部121bと摩擦部材201とを個別に固定する態様に比べて、径方向Rの大型化を避けることができる。しかも、摩擦部材201の異形形状化を避けることが可能となり、摩擦部材201の不要な共振が低減される。よって、良好な駆動特性を確保すると共に大型化を抑制することができる。
【0042】
特に、連結部材204は、回転中心Pを中心とする同心の複数箇所で、摩擦部材201と転動受け部121bとを一括固定するので、径方向Rにおける省スペースが図られる。
【0043】
また、摩擦部材201と転動受け部121bとは、径方向Rにおいて、駆動半径Rdの位置を含む領域で減衰部材203を狭持する。これにより、摩擦部材201の不要な共振を一層減衰させることができ、しかも、大型化に繋がらない。
【0044】
また、径方向Rにおいて、固定位置半径Rxの位置と駆動半径Rdの位置とは隣接・近接しているので、摩擦部材201を径方向Rに延びる梁と見たときの梁長さを短くすることができる。その結果、摩擦部材201の不要な共振の抑制に寄与する。なお、この観点からは、固定位置半径Rxの位置と駆動半径Rdの位置との距離が、固定位置半径Rxよりも十分に短ければ、共振抑制の効果は得られる。
【0045】
また、摩擦部材201と転動受け部121bとの間に、摩擦部材201よりも剛性が高いスペーサ部材202が介在する。これにより、摩擦部材201を固定することによる振動の減衰効果を高めることができる。
【0046】
なお、撮像装置21が振動型モータ100により回転駆動される例を説明したが、振動型モータ100により回転駆動される回転体を有する装置であれば本発明を適用可能である。その場合の回転体としては、例えば、レーザ光などの照射装置やロボットアームのアーム部なども該当する。
【0047】
なお、各実施の形態において、「略」を付したものは完全を除外する趣旨ではない。例えば、「略等間隔」、「略一致」、「略中心」、「略円環形状」、はそれぞれ、等間隔、一致、中心、円環形状を含む趣旨である。
【0048】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
101 振動子
121 被駆動体
121a 軸部
121b 転動受け部
122 支持体
201 摩擦部材
204 連結部材
P 回転中心
図1
図2
図3
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図5
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図7