(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】体液用多用途センサ組立体
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20221128BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20221128BHJP
G01N 27/333 20060101ALI20221128BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G01N27/416 336G
G01N27/327 353B
G01N27/416 336Z
G01N27/333
G01N27/28 321F
(21)【出願番号】P 2020193409
(22)【出願日】2020-11-20
(62)【分割の表示】P 2019532700の分割
【原出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-12-01
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ストランゲ,クレスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フリシャウフ,ピーダ
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-256725(JP,A)
【文献】特表平08-500679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0028566(US,A1)
【文献】特開2004-279150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中のバイオ分析測定のためのセンサ組立体であって、
入口から出口まで軸方向に延在する測定チャンバであって、水平方向にチャンバ幅を画定する側壁と、垂直方向にチャンバ高を画定する上壁及び下壁とを有する横断面を有し、前記側壁、前記上壁及び前記下壁のそれぞれが、水溶液に対して各自の壁湿潤性を有する測定チャンバと、
体液の第1のパラメータを測定するように適合された第1のセンサであって、第1の軸方向位置において前記測定チャンバの内部に露出した第1のセンサ面を有し、前記第1のセンサ面が水溶液に対する第1の湿潤性を有する第1のセンサと、
体液の第2のパラメータを測定するように適合された第2のセンサであって、前記第1の軸方向位置の上流又は下流の第2の軸方向位置において前記測定チャンバの内部に露出した第2のセンサ面を有し、前記第2のセンサ面が、水溶液に対する前記第1の湿潤性よりも高い第2の湿潤性を有する第2のセンサと、
を備え、
前記第2の軸方向位置における前記第2のセンサ面及び前記測定チャンバは、
前記水平方向において前記測定チャンバの幅が
前記第2のセンサ面の幅よりも大きくなるような寸法に設定さ
れ、平行な流路が、前記水平方向における前記第2のセンサ面の両側を迂回する、体液用センサ組立体。
【請求項2】
前記第2のセンサ面の水溶液に対する前記第2の湿潤性が、水溶液に対する前記壁湿潤性よりも高い、請求項1に記載の体液用センサ組立体。
【請求項3】
前記第2のセンサが、水平方向で前記測定チャンバの中央に配置されている、請求項1又は2に記載の体液用センサ組立体。
【請求項4】
前記測定チャンバが、垂直投影で見たときに、軸方向に配向された対称軸について対称である、請求項1~3のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項5】
垂直投影で見たときに、前記測定チャンバが、
軸方向に延在する直線側壁を有する第1の部分と、
前記第2の軸方向位置において前記第2のセンサ面の周りで拡張部を形成する湾曲側壁を有する第2の部分と、
を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項6】
前記上壁及び前記下壁が、垂直投影で見たときに、平行な平面であり、前記測定チャンバの輪郭を画定する貫通凹部を有するスペーサガスケットによって互いに分離されており、前記スペーサガスケットが、前記チャンバ高を決定する厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項7】
チャンバ高が、100μm~1mm、200μm~800μm又は300μm~600μmの範囲内である、請求項1~6のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項8】
チャンバ幅が、1~10mm、1.5~7mm、2~4mmの範囲内である、請求項1~7のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項9】
前記第2の軸方向位置において、
前記平行な流路により前記
測定チャンバの幅が前記第2のセンサ面の幅を超え、前記第2の軸方向位置における前記測定チャンバが、前記第1の軸方向位置と比較して水平方向に拡張部を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項10】
前記測定チャンバが、前記拡張部の下流側及び前記拡張部に隣接する第3の軸方向位置において前記測定チャンバの壁に配置されたフロー成形面要素を更に備え、前記フロー成形面要素が、水溶液に対する周囲の壁面材料の壁湿潤性と異なる面要素湿潤性を有する、請求項9に記載の体液用センサ組立体。
【請求項11】
水溶液に対する前記フロー成形面要素の面要素湿潤性が、各自の上壁及び下壁の湿潤性よりも低い、請求項10に記載の体液用センサ組立体。
【請求項12】
前記フロー成形面要素が、金、パラジウム、銀、プラチナ又はこれらの任意の組み合わせなどの金属、若しくは前記面よりも低い湿潤性を有する任意の材料で作製される、又はそれを含む、請求項10又は11に記載の体液用センサ組立体。
【請求項13】
前記フロー成形面要素の上流縁が、前記入口から前記出口への軸方向で見たときに凸状である、請求項10~12のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項14】
前記フロー成形面要素の下流縁が、前記入口から前記出口への軸方向で見たときに凹状である、請求項10~13のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項15】
前記第2のセンサが、イオン選択性膜で覆われた固体電気化学センサであり、前記第2のセンサ面を形成する最上層が、酵素及び結合剤ポリマーを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【請求項16】
前記第2のセンサが尿素センサである、請求項1~15のいずれか一項に記載の体液用センサ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液中のバイオ分析測定用センサ組立体に関する。センサ組立体は、入口から出口まで軸方向に延在する測定チャンバであって、水平方向にチャンバ幅を画定する側壁と、垂直方向にチャンバ高を画定する上壁及び下壁とを有する横断面を有し、側壁、上壁及び下壁のそれぞれが、水溶液に対して各自の壁湿潤性を有する測定チャンバと、体液の第1のパラメータを測定するように適合された第1のセンサであって、第1の軸方向位置で測定チャンバの内部に露出した第1のセンサ面を有し、第1のセンサ面が水溶液に対する第1の湿潤性を有する第1のセンサと、体液の第2のパラメータを測定するように適合された第2のセンサであって、第1の軸方向位置の上流又は下流の第2の軸方向位置において、測定チャンバの内部に露出した第2のセンサ面を有し、第2のセンサ面が水溶液に対する第1の湿潤性よりも高い第2の湿潤性を有する第2のセンサと、を備える。
【背景技術】
【0002】
様々な検体に関して血液や尿などの体液を分析することは、臨床診断において重要な役割を果たしており、極小量サンプルに関する正確なパラメータ及び信頼性の高い量的結果を、可能な限り迅速に提供することは今もって難題である。極小量サンプルに関する測定結果をタイムリーに提供することは、集中治療の臨床診断、特に新生児治療の状況において特に重要であり、患者の適切なモニタリングを行うには1日に15~20回のサンプル採取を必要とする場合がある。頻繁に監視される体液のパラメータとしては、血液サンプル中の電解質及び代謝産物の濃度、並びに血液サンプルのヘマトクリット値が挙げられる。例えば、pCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+、Cl-、グルコース、乳酸及びヘモグロビン値の測定は、患者の状態を評価する際の主な臨床指標である。現在、そのような複数のパラメータ測定を行う様々な分析器が多数存在しており、設計によっては、必要なサンプル量を低減しつつも、センサ設計、形状及び配線などにより課せられる物理的制約を満たすことを目的とした小型測定チャンバ及びセンサカートリッジを使用する。例えば、米国特許第5,916,425号は、やや小型の貫通孔上に形成されたセンサ用電子配線基板を開示している。比較的多数のセンサを、比較的小さい流体フローセル内の基板面に形成することができる。米国特許出願第6,123,820号は、センサポートの周囲でフロースルーサンプルセル面と直接封止接触する流体成分選択センサメンブレンを含むセンサカートリッジを開示している。センサカートリッジは、対向セル面の両方に一連のセンサポートを設けるように、ジグザグ又は蛇行流路を有するフロースルーサンプルセルを含む。しかしながら、このタイプのカートリッジは製造が複雑である。更に、このセンサカートリッジのフロー形状は特に複雑であるため、このタイプのセンサカートリッジは、個々のサンプルチャンバ内に汚染物質を蓄積し易い。これらのアプローチの有効な代替案は、体液用センサ組立体に関する米国特許第8,728,288号に開示されている。米国特許第8,728,288号のセンサ組立体は、第1及び第2の面と、第1の面に形成された少なくとも1つの検体センサとを有する第1の電子配線基板であって、少なくとも1つの検体センサが1つ以上の電気接点と接続されている第1の電子配線基板と、第1及び第2の面と、第1の面に形成された少なくとも1つの検体センサと、第1及び第2の開口部を有する貫通凹部を有するスペーサとを有する第2の電子配線基板であって、少なくとも1つの検体センサが1つ以上の電気接点と接続される第2の電子配線基板と、第1の基板、第2の基板及びスペーサは、層状構造で配置され、第1の基板の第1の面がスペーサの第1の開口部を閉鎖し、第2の基板の第1の面がスペーサの第2の開口部を閉鎖することによって、各基板から少なくとも1つのセンサに面する測定セルを形成する。米国特許第8,728,288号の測定セルを使用することにより、対向検体センサ間のいかなる有意な干渉も伴わずに、同じ測定セル内の2つ以上のパラメータを測定することができるが、検体センサの分離を維持するための壁や路などは存在しない。ほとん
どの場合、測定セル内の対向面上の検体センサは、所望に応じて互いに対向配置されてもよく、又は互いにオフセットされてもよい。センサ組立体の測定セルは、基板のうちの1つ又は基板のそれぞれが2つ以上のセンサに面していてもよい。典型的には、測定セルは、一連のセンサ面と共に細長であり、それらのセンサは基板のうちの少なくとも1つに形成され、測定セルに沿って連続的に配置されている。測定セルは、極小サンプルに関する多数のパラメータ値を容易に測定する。
【0003】
複数回使用のためにセルを設計する際に、極小量サンプルに関する複数のパラメータを測定するための上記フロー又は測定セルにおいては、このようなセルを一貫して反復可能な方法で確実に充填し、排出し、再充填する必要があるために特定の課題が生じる。このような課題は、正確な定量的測定結果を確実に取得するようにセンサとサンプル間で正しい相互作用を確保するために充填中に全てのセンサ面を適切に湿らせるという問題や、セル内に残っている液体サンプルの最初の液体の充填、ひいては、別の液体サンプルの以後の充填の問題、又はセル内の気泡形成及び液体捕捉の問題などを含み得る。液体サンプルを1回充填するだけで測定後に廃棄される単回使用の使い捨て測定セルでは、上記の課題が同じようには発生しない。
【0004】
したがって、体液の複数の各種パラメータを確実に測定するために、極小量サンプルを測定し、液体サンプルを装置に確実に充填、排出及び再充填するように適合された再利用可能な装置が必要とされている。特に、血液又は尿などの体液と共に使用するように適合された上記装置が必要とされている。
【0005】
したがって、一態様によれば、本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも一部を克服する体液の液体サンプルを分析する、又は少なくとも従来技術の装置の代替を提供するための、改善された再利用可能測定装置を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態によれば、本発明の目的は、請求項1に定義される体液用のセンサ組立体によって達成され、更なる有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明において定義される。
【0007】
第1の態様では、体液用多用途センサ組立体は、
入口から出口まで軸方向に延在する測定チャンバであって、水平方向にチャンバ幅を画定する側壁と、垂直方向にチャンバ高を画定する上壁及び下壁とを有する横断面を有し、側壁、上壁及び下壁のそれぞれが、水溶液に対して各自の壁湿潤性を有する測定チャンバと、
体液の第1のパラメータを測定するように適合された第1のセンサであって、第1の軸方向位置において測定チャンバの内部に露出した第1のセンサ面を有し、第1のセンサ面が水溶液に対する第1の湿潤性を有する第1のセンサと、
体液の第2のパラメータを測定するように適合された第2のセンサであって、第1の軸方向位置の上流又は下流の第2の軸方向位置において測定チャンバの内部に露出した第2のセンサ面を有し、第2のセンサ面が、水溶液に対する第1の湿潤性よりも高い第2の湿潤性を有する第2のセンサと、を備え、
第2の軸方向位置において、チャンバ幅が第2のセンサ面の幅を超え、第2の軸方向位置における測定チャンバが、第1の軸方向位置と比較して水平方向に拡張部を有する。
【0008】
センサ組立体は、水溶液である体液を分析するためのものである。更に、センサ組立体は多用途である。本明細書で使用するとき、「多用途センサ組立体」という用語は、長期間、典型的には数日、数週間又は数ヶ月にわたって分析装置内に装着され、複数回の分析に使用されるように適合されたセンサ組立体を意味することを目的とする。センサ組立体の寿命中、センサ組立体はリンス液で断続的に洗浄され、品質管理/校正スケジュールに従って、異なる濃度の分析的に興味深いイオン及び分子を含有する品質管理及び/又は校正液で洗浄される。これにより、適切な校正機能を決定し、測定結果の品質を継続的に確保して文書化することができる。
【0009】
軸方向は、入口から出口まで測定チャンバを通る流れの主方向に沿う。横断方向は軸方向に垂直であり、水平方向は一方の側壁から反対側の側壁までの横断方向であり、垂直方向は下壁から上壁に向かう、水平方向及び軸方向の両方に垂直な別の横断方向である。
【0010】
湿潤は、液体と固体が接触したときの液体と固体との界面における分子間相互作用の結果である。湿潤は、液体が固体面に接触して固体面を被覆する能力とみなすことができる。したがって、湿潤とは、測定チャンバの充填、排出及び再充填に関与する以下の3つの相:
気体などの第1の流体;分析対象の液体サンプル又はリンス液などの第2の流体;
測定が行われる測定チャンバを画定する固体面;
の分子間相互作用を指す。
【0011】
湿潤度は湿潤性と称される場合がある。湿潤性は、接着力と凝集力との間の力バランスによって決定される。所与の液体に対する固体面の湿潤性は、対応する接触角によって特徴付けることができ、高湿潤性は90度以下の接触角を指し、低湿潤性は90度を超える接触角を指す。所与の液体に対する湿潤性が高いほど対応する接触角は小さく、湿潤性が低いほど対応する接触角は大きい。接触角は一般的には、湿潤性が判定される媒体内で測定されるため、接触角は湿潤性の逆の測定値をもたらし、すなわち、小さい接触角は高い湿潤性を示し、大きい接触角は低い湿潤性を示す。別の固体面よりも所与の液体に対する高い湿潤性を有する固体面は、所与の液体が固体面に対して別の固体面よりも小さい接触角を呈することを意味する。別のアプローチでは、所与の液体に対する1つの固体面の湿潤性は、固体面のそれぞれの面エネルギーの観点から、同じ所与の液体に対する別の固体面の湿潤性と比較することができる。
【0012】
一般に、測定チャンバは、サンプルの測定中にサンプルが保持されるチャンバである。測定チャンバは、少なくとも1つの内面上に、サンプルを検体センサのセンサ面と接触させるための少なくとも1つの開口部を有する。体液の同じサンプルで複数のパラメータを測定するセンサ組立体では、複数の異なるセンサが設けられる。異なるセンサはそれぞれ、典型的には特定の検体用に構成されるセンサ面を有する。センサ面は、分析対象の液体サンプルの測定チャンバの内部に露出して、センサ面に接触し、関連するセンサと相互作用して、各検体のパラメータ測定値を提供する。異なるセンサ面は典型的には、互いと比較して、及び測定チャンバを画定する壁面と比較して、異なる湿潤性を含む異なる面特性を有する。
【0013】
上述したように、センサ組立体は、多用途のためのものである。多用途は、測定チャンバに液体サンプルを充填すること、液体サンプルを排出又は同等に除去すること及び次の液体サンプルで測定チャンバを再充填することを要する。更に、センサ組立体は、小量サンプルのためのものである。小量サンプルは、バイオ流体の消費を低減するのに望ましく、患者が継続的に監視され、サンプル材料が不足している場合に特に重要であり得る。この結果、測定チャンバの寸法が小さくなり、これにより、測定チャンバを充填、排出/除去及び再充填するための内面の湿潤性の有意性が向上する。小チャンバ寸法という更なる制約下でこれらの充填、排出/除去及び再充填工程を全て首尾よく実行するため、水溶液に対してほぼ中性的な湿潤性を呈する材料が有利であることが判明している。例えば、90度に近い空気中の水の接触角を特徴とする湿潤性を有する面、又は少なくとも同様の湿潤性を呈する材料が望ましい。これと同時に、小チャンバ寸法という更なる制約下で、複雑なチャンバ形状は、測定チャンバを充填、排出/除去及び再充填するという上記の問題の多くを引き起こし増幅させることになるため、単純な形状が非常に望ましい。
【0014】
採用されるセンサ面材料と適合するチャンバ壁の面材料を入念に選択することによって、例えば、ガラス、金属、カオリンなどの鉱物といった封入材、ポリマー封入材又はそれらの任意の組み合わせを壁に使用し、入念に選択された一定の路幅を有する直線壁路を設けることによって、上記のバランスを特定の検体に対して妥協案として達成することができる。そのような妥協案を見出され得る第1のセンサの例としては、以下の体液のパラメータ:血液サンプルなどの体液サンプル中の電解質及び代謝産物の濃度、並びに血液サンプルのヘマトクリット値のいずれかを測定するためのセンサが挙げられる。好ましくは、いくつかの実施形態によると、第1のセンサは、pCO2、pO2、pHの群から選択されるパラメータ、並びにNa+、K+、Ca2+、Cl-、グルコース、乳酸及びヘモグロビンの濃度を測定するように適合される。有利なことに、1つ以上の第1のセンサの少なくともいくつかは、測定チャンバの内部に露出したイオン選択膜で覆われた固体電気化学センサである。有利なことに、いくつかの実施形態によれば、体液用センサ組立体は、測定チャンバの直線壁部分に全て配置された複数の第1のセンサを備え、第1のセンサはそれぞれ、各自の第1の軸方向位置を有する。
【0015】
本発明の重要な功績は、上記の妥協案が容易に発見されない特定のケースをできる限り包含することである。このようなケースは、例えば、対応する第1のパラメータセットを測定するように適合された第1の特定の検体センサセットを、特定の検体用の第2のセンサで補完する必要がある、つまり、第1のセンサ面のいずれかと比較して有意に異なる湿潤性を有する特定の第2のセンサ面を必要とする場合、特に、第1のセンサ面と比較して水溶液に対して有意に高い湿潤性を有する第2のセンサ面を必要とする場合に生じ得る。有意に異なる湿潤性を有する第2のセンサ面の例は、水溶液の液体サンプルに露出したときに膜内での水の吸収により膨張する材料で作製される膜である。
【0016】
このような第2のセンサ面の有意に異なる湿潤性は、フローフロントを不安定化させる場合があり、したがって、センサ組立体を充填、排出/除去及び再充填する信頼性に影響を及ぼし得る。この問題は、第2のセンサ面の周囲の拡張部において第2のセンサ面の幅を超える測定チャンバの幅を設けて、第2のセンサ面によるフローフロントの不安定化に対抗することによって解決される。
【0017】
有利なことに、第2の軸方向位置及び第2のセンサ面に平行な方向における測定チャンバの横断寸法は、同方向における第2のセンサ面の横断寸法を超える。有利なことに、第2の軸方向位置におけるセンサ面幅に対するチャンバ幅の比は、1.2~3.6の範囲内、1.4~2.8の範囲内又は1.5~2.4の範囲内である。
【0018】
好ましくは、いくつかの実施形態によれば、センサ面は、水平方向及び軸方向に広がる水平面に平行である。好ましくは、いくつかの実施形態によれば、センサ面は、上壁又は下壁などの水平壁に配置される。これにより、比較的滑らかな壁を有する封止内面が得られて、測定チャンバのフロー性能に貢献する。更に、いくつかの実施形態によれば、センサ面は、上壁及び下壁の両方に配置される。これにより、コンパクトなセンサ構成が達成され、小量サンプルに対して同時に多くの検体を測定することができる。
【0019】
拡張形状を適合させる実用的アプローチでは、当業者であれば、測定チャンバの内面の様々な部分の相対的湿潤性を、例えば、充填、排出/除去及び/又は再充填するという代表的なシーケンスを高速カメラで記録し、これらのシーケンス中の動的湿潤挙動を観察することによって有効に可視化することができる。この観察によって、第2のセンサ面に対する拡張部の詳細な形状及び配置の系統的な最適化が簡易化される。例えば、第2のセンサ面として展開される上記のような膨潤膜は、壁面及び第1のセンサ面を含む測定チャンバ内の残りの面よりも親水性が高いことが認識され、それに応じて、フローフロントを安定化させる第2のセンサ面周りの拡張部が、フローフロント可視化データに基づき考案されてもよい。
【0020】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、水溶液に対する第2のセンサ面の第2の湿潤性は、水溶液に対する壁湿潤性よりも高い。これにより、壁湿潤性は、第1のセンサ面の湿潤性の範囲と一致するように選択又は適合されてもよい。
【0021】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、第2のセンサは、水平方向で測定チャンバの中央に配置される。好ましくは、第1及び第2のセンサ面は、測定チャンバの上壁及び/又は下壁などの水平壁と平行に配置される。
【0022】
第2の軸方向位置における第2のセンサ面及び測定チャンバは、測定チャンバ幅がセンサ幅よりも大きくなるような寸法に設定される。水平方向の第2のセンサが、側壁に対して測定チャンバの中央に配置されるとき、平行な流路が第2のセンサ面の周囲に設けられる。平行流路は、水平方向に見たときに両側の第2のセンサ面を迂回する。平行流路は、両方とも同じ壁湿潤性によって特徴付けることができる面を有し、この湿潤性は第2のセンサ面を特徴付ける第2の湿潤性とは著しく異なっていてもよい。明確に定義された同じ湿潤性を有する流路を第2のセンサ面の両側に設けることによって、拡張部を軸方向に通過するフローフロントの湿潤挙動は、第2のセンサ面の両側で効果的に「ピン止め」される。この湿潤性のピン止めは、測定チャンバを通過する際にフローフロントを安定化させる効果をもたらし、そこでフローフロントは測定チャンバの水平方向中央部分で変形することができ、その間ずっと側壁に沿った縁部でのフローフロントは同じ速度で軸方向に沿って互いに移動する。
【0023】
本明細書で使用するとき、「フローフロント」という用語は、測定チャンバを横切って横断方向に延在し、入口から出口まで略軸方向に沿って移動する流体界面を指し、流体界面は、分析対象の液体サンプル又はリンス液などの第2の流体から気体などの第1の流体を分離することに留意されたい。充填工程では、第1の流体は第2の流体に先行し、すなわち、測定チャンバは第1の流体に取って代わる第2の流体で充填される。排出工程では、第1の流体は第2の流体に追従し、すなわち、測定チャンバは第2の流体に取って代わる第1の流体で満たされる。
【0024】
有利なことに、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、センサ幅に対するチャンバ幅の比は、第1の軸方向位置よりも第2の軸方向位置において大きい。したがって、第2のセンサ面を迂回する平行流路が突出するため、第1の軸方向位置よりも第2の軸方向位置においてフローフロントを安定化させる壁湿潤性の寄与を高めることができる。これは、第2のセンサ面の湿潤性が第1のセンサ面及び壁材の湿潤性の両方と有意に異なるが、第1のセンサ面及び壁材の湿潤性の変化がさほど顕著ではない場合に特に有利である。
【0025】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、測定チャンバは、垂直投影で見たときに、軸方向に配向された対称軸について対称である。これにより、チャンバに対して充填、排出又は再充填される、典型的には気体の第1の流体と液体サンプルなどの第2の流体との間で対称なフローフロントの流体界面が達成される。液体サンプルは、例えば、測定対象の体液のサンプル、リンス液のサンプル、品質管理液のサンプル又は校正液のサンプルであってもよい。対称性は、フローフロントが入口から出口まで通過する際に、測定チャンバ内のフローフロントの安全性の改善に大きく寄与する。フローフロントの安定性の改善とは、フローフロントが破断して気泡/液滴を形成した後に、気泡/液滴が測定チャンバ内に残されることによって充填、排出、除去又は再充填を阻害する傾向が低下することを指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、垂直投影とは、軸方向及び水平方向に広がる水平面に対する垂直方向の投影と理解される。軸方向に配向された面について対称であるという文脈では、測定チャンバが、水平方向に見て軸方向及び垂直方向に広がるミラー面について対称であることに相当する。
【0027】
好ましくは、第2のセンサ面はまた、拡張部内の測定チャンバの対称軸について対称に成形及び配置される。第2のセンサのこのような対称配置も、フローフロントの安定性の改善に寄与する。更に好ましくは、第1のセンサ面は、測定チャンバの対称軸に沿って配置される。更に好ましくは、第1のセンサ面は、測定チャンバの対称軸について対称である。第1及び/又は第2のセンサのこのような対称配置も、フローフロントの安定性の完全に寄与する。
【0028】
上述したように、測定チャンバは、垂直方向ではチャンバ高分、互いに離間された上壁及び下壁によって画定され、水平方向ではチャンバ幅分、互いに離間された側壁によって画定される。壁はそれぞれ、水溶液に対して各自の壁湿潤性を有してよい。典型的には、上壁及び下壁は、測定チャンバの内部に露出した同じ又は非常に類似した面材料、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリエチルメタクリレート(PEM)系ポリマー封入材から成り、側壁は、ポリエチレンテレフタレート(PET)担体製のスペーサガスケットなどの異なる材料から成り、両側に接着剤を伴う。第1の充填中の初期状態チャンバ壁のプライミング後、側壁及び/又は側壁が上壁及び下壁と交差する角部は、表面に水膜を保持して、再充填時に縁部の湿潤を向上させる傾向がある。
【0029】
好ましくは、測定チャンバは、壁に一体化された少なくとも2つのセンサ面を備える直線路のような単純な形状をとる。典型的には、測定チャンバは、平行壁を有する略直線路として成形される。単純な形状の利点は、測定チャンバの充填及び再充填性能を改善することで、より複雑な測定チャンバ形状よりも安定的で信頼性の高いセンサ組立体の動作をもたらすことである。好ましくは、流路を画定する壁は、鋭い縁部、突出部又はそれ以外の急激な流路寸法の変化を避けて、なだらかな形状を有する。これにより、充填工程及び再充填工程中に気泡を捕捉するリスクが低減される。
【0030】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、垂直投影で見たときに、測定チャンバは、軸方向に延在する直線側壁を有する第1のセクションと、第2の軸方向位置において第2のセンサ面の周りで拡張部を形成する湾曲側壁を有する第2のセクションとを備える。有利なことに、拡張部は、測定チャンバの内部から見て外方に膨らむ側壁の凹部によって形成される。好ましくは、拡張部を形成する湾曲側壁は、側壁の直線部分から外方に対称的に膨らむ。これにより、滑らかで、好ましくは対称な拡張部が設けられる。このような拡張部の形状は、測定チャンバのレイアウトを画定するスペーサガスケットの貫通凹部の輪郭を適合させることによって、層状組立体構造において容易に画定され得る。
【0031】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、上壁及び下壁は、垂直投影で見たときに、互いに平行な平面であって、測定チャンバの輪郭を画定する貫通凹部を備えたスペーサガスケットによって離間されており、スペーサガスケットは、チャンバ高を決定する厚さを有する。本発明は、米国特許第8,728,288号に記載及び開示されるように、平坦な形状の路断面を有するセンサ組立体の充填、排出/除去、及び再充填性能を改善するものとして特に有用である。
【0032】
有利なことに、体液用センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、チャンバ幅は、チャンバ高の2倍以上、3倍以上、4倍以上又は約5倍である。更に有利なことに、チャンバ幅がチャンバ高を超える倍数の上限は、6、8又は10である。
【0033】
センサ面の寸法制約により、小量サンプルの場合、上述のフロー又は測定セルの幅は、典型的にはセル高よりも大きい。したがって、フロー又は測定セルの断面は典型的には、一端の入口から他端の出口まで測定セルを通るフロー方向に沿った軸方向に見て、英字状のスリットのような形状の平坦かつ幅広の断面を有する。このようなフロー及び測定セルの典型的な寸法は、幅に関してはミリメートルの範囲であってもよく、高さに関しては数百マイクロメートルなどのミリメートル未満の範囲であってもよい。これらのセルの形状及び寸法は、サンプルの有効利用を確保できるが、同時に測定チャンバの充填、排出及び再充填を困難にする。
【0034】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、チャンバ高は、100μm~1mm、200μm~800μm又は300μm~600μmの範囲内である。
【0035】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、チャンバ幅は、1mm~10mm、1.5mm~7mm、2mm~4mmの範囲内である。
【0036】
測定チャンバは、圧力及び重力駆動流などの流体路に印加される外部駆動力によってフロー現象が支配されるマクロ規模と、流路壁と流体との間の毛管現象相互作用などの微細な力によってマイクロ流体フロー現象が支配されるミクロ規模との間の中間的規模の寸法である。中間規模の寸法を有する流路では、マクロ規模及びミクロ規模の両方のフロー現象が、当該寸法の測定チャンバの充填、排出及び再充填挙動にとって同等に重要である。
【0037】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、測定チャンバは、拡張部の下流及び拡張部に隣接する第3の軸方向位置において、測定チャンバの壁に配置されたフロー成形面要素を更に備え、水溶液に対するフロー成形面要素の湿潤性は周囲壁面材料の湿潤性とは異なる。フロー成形要素は、湿潤性が改質された領域、つまり、測定チャンバを通って流れる流体と個体との相互作用が改質された領域を提示する。改質された相互作用は、測定チャンバを通じたフローフロント流体界面の伝播に影響を及ぼす。したがって、測定チャンバ全体にわたって横断方向に変化するように構成され得る界面の相互作用は、フローフロントを成形する、例えば、フローフロントの軸方向の変形を補償するように用いられてもよい。
【0038】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、水溶液に対するフロー成形面要素の面要素湿潤性は、各自の上壁及び下壁の湿潤性よりも低い。
【0039】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、フロー成形面要素は、金、パラジウム、銀、プラチナ又はこれらの任意の組み合わせなどの金属、若しくは前述の面よりも低い湿潤性を有する任意の材料で作製される、又はそれを含む。金属面を設けることにより、フロー成形面要素を通過するフローフロントの効率的なフロー成形のため、顕著な流体-固体界面の相互作用によって生じる抵抗を提供することができる。あるいは、フロー成形面要素は、pCO2、pO2又はClセンサなどのセンサである。
【0040】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、フロー成形面要素の上流縁は、入口から出口までの軸方向に見て凸状である。これにより、第2のセンサ面が達成された後、フローフロント変形を補償するようにフローフロントの再成形が改善される。凸形状は、気体に代わる液体で測定チャンバを確実に充填するのに特に有用である。
【0041】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、フロー成形面要素の下流縁は、入口から出口までの軸方向に見て凹状である。これにより、第2のセンサ面が達成された後、フローフロント変形を補償するようにフローフロントの再成形が改善される。フロー要素の下流側の凹形状は、測定チャンバを確実に排出するため、すなわち、液体に代わる気体で測定チャンバを充填するのに特に有用である。
【0042】
有利なことに、いくつかの実施形態によれば、フロー成形面要素は、円形、楕円形、多角形又は湾曲円弧部分を含む輪郭などの類似の輪郭を有する。有利なことに、フロー成形面要素のレイアウトは規則的な輪郭を有し、好ましくは少なくとも軸方向に配向された対称軸について対称的である。好ましくは、フロー成形面要素は、第2のセンサ面と同じ壁に配置される。更に、複数のフロー成形面要素の配置が企図されてもよい。したがって、フロー成形面要素又はフロー成形要素の一部は、同じ壁、反対側の壁又は側壁に配置され得る。
【0043】
有利なことに、いくつかの実施形態によれば、面要素は、フロー成形面要素の軸方向位置における路幅よりも小さい幅を有する。更に有利なことに、フロー成形面要素は、水平方向に見て中央に、好ましくは測定チャンバの側壁について対称に配置される。
【0044】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、第2のセンサは、イオン選択性膜で覆われた固体電気化学センサであり、第2のセンサ面を形成する最上層は、酵素及び結合剤ポリマーを含む。有利なことに、固体センサは、測定チャンバの内部に露出したセンサ面を形成する膜を有し、膜は、特定のイオンを選択的に透過させることができる。膜材料は、結合剤ポリマーと酵素との組み合わせに左右される特定の湿潤性を有し得る。
【0045】
更に、センサ組立体の好ましい実施形態によれば、酵素はウレアーゼであり、結合剤ポリマーはポリウレタン又はポリウレタン系である。この被覆膜を有するセンサは、体液のサンプル中の尿素を検出/測定するのに有用である。
【0046】
更に、センサ組立体のいくつかの実施形態によれば、第2のセンサは、尿素センサである。前述のパラメータなどのバイオ分析パラメータセットを測定するように適合された複数の第1のセンサと組み合わせて尿素センサを設けることによって、比較的小量の体液サンプルの特に有用な診断画を迅速にマッピングすることができ、尿素センサにおいて拡張部を含む測定チャンバの具体的形状を取得することによって、非常に一貫した信頼性の高い充填、排出/除去及び再充填性能が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【
図1】一実施形態に係るセンサ組立体の垂直投影図である。
【
図2】
図1のセンサ組立体の線II-IIに沿った横断面図である。
【
図3】
図1のセンサ組立体の充填シーケンスを示す図である。
【
図4】従来技術によって成形された測定チャンバを有するセンサ組立体の充填シーケンスを示す図である。
【
図5】
図1のセンサ組立体の排出シーケンスを示す図である。
【
図6】
図4の従来技術の測定チャンバを有するセンサ組立体の排出シーケンスを示す図である。
【0048】
図1は、体液に関する多数の異なるパラメータを測定するように適合されたセンサ組立体1の上立面図である。センサアレイは、センサ組立体1の入口端3の入口から出口端4の出口までの流体フロー用の流路を画定する測定チャンバ2を有する。測定チャンバ2は、水平方向では測定チャンバ2のチャンバ幅を画定する軸方向延在側壁5、6と、垂直方向では測定チャンバ2のチャンバ高を画定する下壁7及び上壁8(
図1の図では透明である)とを有する。測定チャンバ2は、入口端3から出口端4まで延びる軸方向に細長い略直線壁流路として形成され、側壁5、6の直線壁部は軸方向に平行である。測定チャンバ2は、測定チャンバ2の内部から見て外方に膨らむ湾曲側壁部23、24によって形成された拡張部22を有する。垂直投影で見たときの測定チャンバのレイアウト(上立面図)は、軸方向に配向された中心軸Sについて対称である。
【0049】
線II-IIに沿った測定チャンバ2の横断面は、
図2に最も適切に示される。上壁及び下壁7、8は、セラミック配線基板Cによって担持されてもよく、セラミック配線基板Cは、測定チャンバ2の内側で、ガラス、金属、カオリンのような鉱物などの封入材、ポリマー封入材又はそれらの任意の組み合わせAによって被覆される。側壁5、6はスペーサガスケットBによって画定され、スペーサガスケットBの垂直方向の厚さは、測定チャンバ2の高さを決定する。直線壁部と拡張部22とを含む測定チャンバ2のレイアウトは、スペーサガスケット9における貫通凹部の輪郭として定義される。側壁、上壁及び下壁はそれぞれ、水溶液に対する壁湿潤性を有し、この湿潤性は測定チャンバの内部に露出した各自の材料によって決定される。典型的には、上壁及び下壁は、ガラス、金属、カオリンのような鉱物などの同じ封入材、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリエチルメタクリレート(PEM)系ポリマー封入材などのポリマー封入材、若しくはこれらの任意の組み合わせで被覆される。スペーサガスケットは、ポリエチレンテレフタレート(PET)担体膜などの異なる材料であってもよく、両側に接着剤を有する。したがって、上壁、下壁及び側壁は、上壁及び下壁封入材の各壁湿潤性、並びにスペーサガスケット材料によって決定される側壁湿潤性、又はチャンバのプライミング後にスペーサガスケット材料を覆う湿潤水膜によって決定される側壁湿潤性を有する。
【0050】
センサ組立体は、測定チャンバ2の長さに沿った各自の第1の軸方向位置において軸方向に並ぶ一連の第1のセンサ10a~hを備える。第1のセンサ10a~hは、測定チャンバ2の内部に露出した各自の第1のセンサ面11a~hを有する。第1のセンサ面11a~hは下壁に平行であり、軸方向に配向された中心軸Sについて対称に配置される。第1のセンサ面11a~hはそれぞれ水溶液に対する第1の湿潤性を有し、これらの湿潤性はチャンバ容積に露出した各自の最外膜材料によって決定される。それぞれの第1の湿潤性は、チャンバ容積に露出した最外膜の特定の材料に応じて、センサの種類により異なる場合がある。第1のセンサはそれぞれ、場合によって、取り囲む壁の湿潤性と異なる場合がある。しかしながら、第1のセンサ湿潤性及び壁湿潤性は、典型的には同等である。好ましくは、チャンバ容積に露出した第1のセンサ面及び/又は壁面は、測定チャンバの充填及び排出の両方で良好な性能を得るため、わずかに親水性であり、中性に近い湿潤性である。具体的には、良好な排出性能は、多用途装置としてサンプル組立体を安定的に動作させるためにかなり重要である。
【0051】
センサ組立体1は、第1のセンサの下流の第2の軸方向位置に第2のセンサ20を更に備える。第2のセンサ20は、水溶液に対する第2の湿潤性を有する第2のセンサ面21を有する。第2のセンサ20が第1のセンサと異なる点として、測定チャンバ2の内側に露出した第2のセンサ20のセンサ面21が、第1のセンサ10a~hの面11a~hよりも有意に高い湿潤性を有するため、
図3~
図6を参照して更に後述するように、測定チャンバの充填及び排出挙動に大きな影響を及ぼす。気体などの第1の流体と、体液又は同様の水溶液の液体サンプルなどの第2の流体との界面が、測定チャンバ2に沿ってフローフロントとして移動し、第2のセンサ面21を通過する際、湿潤性が有意に高いときに界面が乱れる傾向が強まる。凹状に外方に膨らむ湾曲側壁部23、24によって形成された拡張部22は、第2のセンサ面21の周囲の両側に平行流路を設けることによって、フローフロントが第2の軸方向位置を通過する際にフローフロントを安定化させるように作用する。測定チャンバ2に露出した平行流路の面は、チャンバ2の残りの部分に対応する湿潤性を有し、上壁封入材及び下壁封入材の壁湿潤性は、スペーサガスケット材料によって決定される、又はチャンバのプライミング後にスペーサガスケット材料を覆う湿潤水膜によって決定される。
【0052】
センサ組立体1は、第2の軸方向位置の下流にある第3の軸方向位置において測定チャンバの内側に面した面31を有するフロー成形面要素30を更に備える。フロー成形面要素30は、下壁7に、面31が平行になるように配置される。フロー成形面要素30の露出面31は、金、パラジウム、銀、プラチナ又はこれらの任意の組み合わせなどの金属、若しくは前述の面よりも低い湿潤性を有する任意の材料で作製され、取り囲む下壁面の壁湿潤性よりも低い面要素湿潤性を有する。
【0053】
測定チャンバ2の内部を構成する様々な異なる固体面と接触している流体の実際の接触角は、小さな流路の限られた形状内、例えば、マクロ規模とミクロ規模間の寸法である中間規模の体液用測定チャンバ内で画定及び測定することが困難である。しかしながら、特定路の動的な充填及び排出性能を観察するため、高速視覚技術を使用して、各種面の様々な湿潤挙動、並びに充填及び排出挙動の有意性を可視化し記録してもよい。これを例として以下に示す。実施例1は、
図1及び
図2に示すレイアウトを参照して、一実施形態に係るセンサ組立体の材料及び寸法の詳細を説明する。実施例2は、測定チャンバの拡張部を含まない従来技術のレイアウトと比較して、
図1に示すような実施例1に係る拡張部22を有するセンサ組立体で得られた可視化データを提供する。
【0054】
実施例1
図1及び
図2に示す上述の実施形態は、センサ組立体1の材料及び寸法を有効に選択するための非限定的な例を提示する。センサ組立体1は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリエチルメタクリレート(PEM)系ポリマーなどのポリマー封入剤Aで被覆された0.7mm厚のセラミック基板Cから成る上壁及び下壁7、8を有する。上壁及び下壁7、8は、250μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)担体で作製されたスペーサガスケットBによって分離され、両側に75μmのゴム系熱可塑性接着剤が貼付される結果、チャンバ高は400μm±20μmとなる。測定チャンバ2のレイアウトを画定する貫通凹部は、軸方向に34mmの長さを有し、軸方向に垂直な水平方向では、直線壁部の領域において2.3mmの一定幅を有する。直径3mmの円形拡張部は、測定チャンバの下流端から9.1mmの軸方向位置で直線路について対称に形成され、下壁上の第2のセンサの位置と同心である。
【0055】
一連の第1のセンサ位置は、対応する第1のセンサ面材料11a~hを有する以下の第1のセンサ10a~hによって占有され得る。
-センサ10a/面11a:pO2(光学)/剛性PVC窓
-センサ10b/面11b:空き/壁封入材
-センサ10c/面11c:Ca2+/可塑化PVC
-センサ10d/面11d:cl-/エポキシ
-センサ10e/面11e:pH/可塑化PVC
-センサ10f/面11f:pC2/シリコーン
-センサ10g/面11g:Na+/可塑化PVC
-センサ10h/面11h:K+/可塑化PVC
【0056】
第2のセンサ20は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる同時係属国際特許出願第PCT/EP2016/080607号、特に14~15ページ及び16ページの実施例1に開示されるような尿素センサであってもよい。具体的には、尿素センサは、酵素及び結合剤ポリマーを含む測定チャンバに向けて、第2のセンサ面21である酵素層を露出させることができる。具体的には、酵素はウレアーゼであり、結合剤ポリマーはポリウレタン系ポリマーである。より具体的には、酵素成分及びポリウレタン系結合剤ポリマーは、それぞれ約50%存在する。水溶液に曝露されると、ポリウレタン系結合剤ポリマーマトリックスは、約100%の水を吸収して、第2のセンサ面を形成する膜層をかなり膨潤させる。
【0057】
フロー成形面要素30は、金又は金合金で作製されてもよい。
【0058】
実施例2
以下の
図3~
図6を参照すると、比較試験の可視化データは、異なる測定チャンバ2を有する2つのセンサ組立体1を充填及び排出する高速ビデオ記録から得られるシーケンスとして示され、異なる測定チャンバ2の対応する特徴は同じ参照番号で示されている。
図3及び
図5に示すセンサ組立体1の測定チャンバ2は、
図1に示す実施形態に対応し、実施例1に係る更なる仕様及び第2のセンサ20の位置の拡張部22を有する。
図4及び
図6に示すセンサ組立体が
図3及び
図5に示すセンサ組立体と異なる唯一の点は、測定チャンバに拡張部が存在しない、具体的には、第2のセンサ20の周りに拡張部が存在しないことである。拡張部のない長い平行路である
図4及び
図6の測定チャンバのレイアウトは、従来技術のセンサ組立体の流路レイアウトに相当する。その他の点では、
図3~
図6に示すセンサ組立体は同一であり、第2のセンサ20と、第2のセンサ20の下流の楕円フロー成形面要素30の存在を含む。以下、「充填」とは、体液サンプルを模倣する水溶液302、402を入口端3から測定チャンバ2に供給することによって、それぞれの測定チャンバ2内の気体301、401と置き換えることを指し、「排出」とは、水溶液502、602を入口端3から注入された気体501、601で再度置き換えることを指す。
図3~
図6の4つの図では、フロー方向は、各フレーム(a)~(c)の矢印によって示されるように、右側の入口端3から左の出口端4への方向である。測定チャンバは全て、
図3~
図6に示す記録されたシーケンスの前に水溶液でプライミングする。したがって、側壁のスペーサガスケット材料は、非常に薄い水性膜によって完全に湿らされていると考えられる。
【0059】
充填の高速記録は、画像取得ソフトウェアキット(MBDirectror KIT2)を用いて、ドイツ、Mikrotron GmbH社製のDMOS画像センサを備えた高速カメラEcoSens 3CL MC3011で撮影された。3500μsのシャッター時間、フレームサイズ1200×122画素、285フレーム/秒のフレーム速度という典型的な記録パラメータが設定された。なお、流量は、マイクロリットル/秒(μl/秒)の範囲内であり、典型的な値は、排出の場合は20μl/s以上、充填の場合は65μl/s以上、通常は約35μl/sである。
【0060】
得られた高速ビデオ記録において、各自のフローフロント300a~c、400a~c、500a~c、600a~cの形状の発生は、気体-液体界面又は液体-気体界面が測定チャンバに沿って移動する度に、具体的には、フローフロント300a~c、400a~c、500a~c、600a~cが、第2の軸方向位置で第2のセンサ20の第2のセンサ面21上を通過し、第2の軸方向位置の下流の第3の軸方向位置でフロー成形面要素30の面31上を通過する度に観察される。
図3~
図6のそれぞれにおいて、ビデオ記録の3つのフレームが選択され、フローフロント300、400、500、600は、測定チャンバ2内の対応位置、すなわち、(a)第2のセンサ20に到達する直前の一連の第1のセンサ10の下流端、(b)第2のセンサ20及び(c)第2のセンサ20のすぐ下流のフロー成形面要素30、に位置する。次に、選択されたビデオフレームは、黒白線画として描かれ、各時間の液相は斜線領域として示される。
【0061】
図3は、第2のセンサ20の周りに拡張部22を有する測定チャンバ2への充填シーケンスを示す。第1のフレーム(a)では、フローフロント300aが、第2のセンサ20に接近する。フローフロント300aは、気相301から液相302に向けて見たときに凹状である。第2のフレーム(b)では、フローフロント300bは、第2のセンサ20に到達し、横断方向に拡張部22全体に広がっている。フローフロント300bは、中央に配置された第2のセンサ20の面の親水性の高い湿潤挙動により変形する。しかしながら、中央に配置された第2のセンサ20は、液体に対する下壁封入材の壁湿潤性に相当する湿潤挙動を呈する拡張隆起部の平行流路によって囲まれており、この湿潤性は、第2のセンサ面の湿潤性よりも著しく低い。第2のセンサ面全体で流方向に突出する液体の顕著なメニスカスが観察され、このメニスカスは、拡張部22の対称配置された平行流路によって安定化され、ここでの湿潤挙動は下壁湿潤性に固定される。第3のフレーム(c)では、フローフロント300cは、周囲の下壁封入材の壁湿潤性よりも低い湿潤性を有する流成形面要素30の上流縁に到達している。液体とフロー成形面要素との面相互作用は、縁部領域よりも中心における液体の伝播を減速させる。その結果、フローフロント300cは、先行する気相301から後続の液相302に向かって見たときに再び凹状となる。
【0062】
図4は、第2のセンサ20の周囲に拡張部を含まない測定チャンバ2内への充填シーケンスを示す。第1のフレーム(a)では、フローフロント400aが、第2のセンサ20に接近する。フローフロント400aは、気相401から液相402に向けて見たときに凹状である。第2のフレーム(b)では、フローフロント400bは、第2のセンサ20に到達している。フローフロント400bは、側壁湿潤性の小さな変化と組み合わせて、第2のセンサ20の面の親水性の高い湿潤挙動により「傾斜」している。フローフロント400bは、不安定となり、複雑な形状を呈すると考えられる。第3のフレーム(c)では、フローフロント400cは、周囲の下壁封入材の壁湿潤性よりも低い湿潤性を有するフロー成形面要素30の上流縁に到達している。液体とフロー成形面要素との面相互作用は、縁部領域よりも中心における液体の伝播を減速させ、フローフロント400cは、先行する気相401から後続の液相402に向かって見たときに再び凹状となる。しかしながら、第2のセンサ20を通過する際のフローフロント400bの不安定さの結果として、気泡99が第2のセンサ20に閉じ込められている。
【0063】
図5は、第2のセンサ20の周りに拡張部22を有する測定チャンバ2での排出シーケンスを示す。第1のフレーム(a)では、フローフロント500aが、第2のセンサ20に接近する。フローフロント500aは、気相501から液相502に向けて見たときに凹状である。第2のフレーム(b)では、フローフロント500bは、第2のセンサ20に到達し、横断方向に拡張部22全体に広がっている。フローフロント500bは、中央に配置された第2のセンサ20の面の親水性の高い湿潤挙動により変形する。しかしながら、中央に配置された第2のセンサ20は、液体に対する下壁封入材の壁湿潤性に相当する湿潤挙動を呈する拡張隆起部の平行流路によって囲まれており、この湿潤性は、第2のセンサ面の湿潤性よりも著しく低い。フローフロント500bが第2のセンサ20上を伝搬する際に平坦な輪郭が観察され、この平坦な輪郭は、拡張部22の対称配置された平行流路によって安定化され、ここでの湿潤挙動は下壁湿潤性に固定される。第3フレーム(c)では、フローフロント500cは、周囲の下壁封入材の壁湿潤性よりも低い湿潤性を有するフロー成形面要素30の下流縁に到達している。液相502がフロー成形面要素30を通過すると、液体502とフロー成形面要素30との面相互作用は、液相502をより高い湿潤性を有する領域に向けて跳ね返す。フロー成形面要素30の下流縁は、入口から出口に向かう軸方向、すなわち流方向に見たときに凹状である。その結果、フローフロント500cは、後続の気相501から先行する液相502に向かって見たときに再び凹状となる。
【0064】
図6は、第2のセンサ20の周囲に拡張部を含まない測定チャンバ2での排出シーケンスを示す。第1のフレーム(a)では、フローフロント600aが、第2のセンサ20に接近する。フローフロント600aは、後続の気相601から先行する液相602に向けて見たときに凹状である。第2のフレーム(b)では、フローフロント600bは、第2のセンサ20に到達している。フローフロント600bは、側壁湿潤性の小さな変化と組み合わせて、第2のセンサ20の面の親水性の高い湿潤挙動により「傾斜」している。フローフロント600bは、不安定となり、複雑な形状を呈すると考えられる。第3のフレーム(c)では、フローフロント600cは、周囲の下壁封入材の壁湿潤性よりも低い湿潤性を有するフロー成形面要素30を通過している。液相602がフロー成形面要素30を通過すると、液体602とフロー成形面要素30との面相互作用は、液相602をより高い湿潤性を有する領域に向けて跳ね返す。フロー成形面要素30の下流縁は、入口から出口に向かう軸方向、すなわちフロー方向に見たときに凹状である。その結果、フローフロント600cは、後続の気相601から先行する液相602に向けて見たときに再び凹状である。しかしながら、第2のセンサ20を通過する際のフローフロント600bの不安定さの結果として、液滴98が第2のセンサ20に留まる。