(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】通電加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20221128BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20221128BHJP
B21D 26/041 20110101ALN20221128BHJP
【FI】
H05B3/00 340
H05B3/00 330Z
H05B3/03
B21D26/041
(21)【出願番号】P 2020504882
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2019005138
(87)【国際公開番号】W WO2019171898
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018039362
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】井手 章博
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 雅之
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-185499(JP,A)
【文献】特開2004-351292(JP,A)
【文献】特開2011-112911(JP,A)
【文献】国際公開第2013/011553(WO,A1)
【文献】特開2016-002588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
H05B 3/03
B21D 26/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属
パイプ材料に電力を供給し当該金属
パイプ材料を通電加熱する
、前記金属パイプ材料を成形するための通電加熱装置であって、
前記金属
パイプ材料に接触する少なくとも2つの電極と、
前記電極に電力を供給する電力供給部と、
前記金属
パイプ材料の通電加熱において異常が発生したことの警告を行う警告部と、
前記電極の異常を検知する異常検知部と、を備え、
前記異常検知部は、
前記電極間の抵抗値を取得する抵抗値取得部と、
前記抵抗値が所定の設定値に達した場合に、前記電極に異常が発生したと判定し、前記電極に異常が発生したことの警告を行うように前記警告部を制御する異常判定部と、を有する、通電加熱装置。
【請求項2】
複数回の通電加熱時の前記抵抗値を平滑化した値である平滑化抵抗値を取得する平滑化部を更に備え、
前記平滑化抵抗値は、複数回の通電加熱時の前記抵抗値を移動平均した値である、請求項1に記載の通電加熱装置。
【請求項3】
前記電極は、新たな電極と交換可能であり、
前記異常判定部は、前記平滑化抵抗値が前記設定値に達した場合に、前記電極に異常が発生したと判定し、前記電極の交換を促す警告を行うように前記警告部を制御する、請求項2に記載の通電加熱装置。
【請求項4】
前記平滑化抵抗値は、前記電極の交換後における複数回の通電加熱時の前記抵抗値を平滑化した値である、請求項3に記載の通電加熱装置。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記抵抗値が前記平滑化抵抗値に所定の許容値を加えた値に達した場合に、前記金属
パイプ材料に異常が発生したと判定し、前記金属
パイプ材料に異常が発生したことの警告を行うように前記警告部を制御する、請求項2~4のいずれか一項に記載の通電加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、通電加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属体である金属パイプ材料を加熱すると共に当該金属パイプ材料内に気体を供給して金属パイプを成形する成形装置が知られている。このような成形装置として、例えば特許文献1には、一対の金型と、一対の金型間に配置される金属パイプ材料に接触し電気的に接続可能な電極と、電極が金属パイプ材料に電気的に接続された状態において、電極を介して金属パイプ材料に通電可能な電力供給部と、を備える成形装置が記載されている。この成形装置は、金属パイプ材料に通電することで生じるジュール熱によって、金属パイプ材料を加熱し、型成形する通電加熱装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような通電加熱装置にあっては、金属パイプ材料の通電加熱を繰り返し行うと、電極表面が傷つき、通電時の抵抗となって、電極自体の発熱や金属パイプ材料の温度上昇の妨げ等の不具合が生じてしまうことになる。
【0005】
そこで、本発明一態様は、電極に異常が発生したことを検知して作業者に認識させることができる通電加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明一態様による通電加熱装置は、金属体に電力を供給し当該金属体を通電加熱する通電加熱装置であって、金属体に接触する少なくとも2つの電極と、電極に電力を供給する電力供給部と、金属体の通電加熱において異常が発生したことの警告を行う警告部と、電極の異常を検知する異常検知部と、を備え、異常検知部は、電極間の抵抗値を取得する抵抗値取得部と、複数回の通電加熱時の抵抗値を平滑化した値である平滑化抵抗値を取得する平滑化部と、平滑化抵抗値が所定の設定値に達した場合に、電極に異常が発生したと判定し、電極に異常が発生したことの警告を行うように警告部を制御する異常判定部と、を有する。
【0007】
このような通電加熱装置によれば、複数回の通電加熱時における電極間の抵抗値を平滑化した値である平滑化抵抗値を取得する。平滑化抵抗値は、通電加熱が繰り返され電極表面の傷つき方の程度が大きくなるに連れて、増大する。この平滑化抵抗値が所定の設定値に達した場合に、電極表面が正常の範囲を超えて傷ついていると判定して、電極に異常が発生したことの警告を行う。よって、電極に異常が発生したことを検知して作業者に認識させることができる。
【0008】
ここで、平滑化抵抗値は、複数回の通電加熱時の抵抗値を移動平均した値であってもよい。これによれば、平滑化抵抗値を、複数回の通電加熱時における電極間の抵抗値を適切に反映した値とすることができる。このため、平滑化抵抗値が所定の設定値に達した場合に、より適切に、電極表面が正常の範囲を超えて傷ついていると判定することができる。
【0009】
また、電極は、新たな電極と交換可能であり、異常判定部は、平滑化抵抗値が設定値に達した場合に、電極に異常が発生したと判定し、電極の交換を促す警告を行うように警告部を制御してもよい。これによれば、電極に異常が発生したことを検知したときに、作業者に電極の交換等の適切な処理を行わせることができる。
【0010】
また、平滑化抵抗値は、電極の交換後における複数回の通電加熱時の抵抗値を平滑化した値であってもよい。これによれば、電極の交換後において、新たな電極に異常が発生したことを検知したときに、作業者に電極の交換等の適切な処理を行わせることができる。
【0011】
また、異常判定部は、抵抗値が平滑化抵抗値に所定の許容値を加えた値に達した場合に、金属体に異常が発生したと判定し、金属体に異常が発生したことの警告を行うように警告部を制御してもよい。ここで、抵抗値が平滑化抵抗値に対して所定の許容値以上大きい場合には、電極に異常が発生した可能性よりも、金属体に異常(例えば、金属体の外寸が規定範囲外である等)が発生した可能性が高い。このため、抵抗値が平滑化抵抗値に所定の許容値を加えた値に達した場合に、金属体に異常が発生したことの警告を行うことで、金属体に異常が発生したことを作業者に認識させることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明一態様によれば、電極に異常が発生したことを検知して作業者に認識させることができる通電加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る通電加熱装置を示す概略構成図である。
【
図2】電極周辺の拡大図であって、(a)は電極が金属パイプ材料を保持した状態を示す図、(b)は電極にシール部材を押し付けた状態を示す図、(c)は電極の正面図である。
【
図3】複数回の通電加熱時における平滑化抵抗値の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による通電加熱装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
〈成形装置の構成〉
図1は、通電加熱装置としての成形装置の概略構成図である。
図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11からなるブロー成形金型(金型)13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72と、金属パイプ材料14の通電加熱において異常が発生した場合に警告を行う警告装置(警告部)71とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、上記気体供給部60の気体供給及び警告装置71の動作をそれぞれ制御し、且つ、通電加熱時の異常を検知する制御部70と、を備えて構成されている。
【0016】
ブロー成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)16を備える。下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。
【0017】
更に、下型11の左右端(
図1における左右端)近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(下側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置されることで、下側電極17,18は、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14に接触する。これにより、下側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。なお、下側電極17,18は、新たな下側電極17,18と交換可能である。
【0018】
下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
【0019】
ブロー成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド81に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)24を備える。このキャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられる。
【0020】
上型12の左右端(
図1における左右端)近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(上側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置された状態において、上側電極17,18は、下方に移動することで、上型12と下型11との間に配置された金属パイプ材料14に接触する。これにより、上側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。なお、上側電極17,18は、新たな上側電極17,18と交換可能である。
【0021】
上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材101がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材101は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータの可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80のスライド81側に保持されている。
【0022】
パイプ保持機構30の右側部分において、電極18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されていて(
図2参照)、当該凹溝18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の右側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0023】
パイプ保持機構30の左側部分において、電極17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されていて(
図2参照)、当該凹溝17aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の左側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0024】
図1に示されるように、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、上記スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
【0025】
制御部70は、電極17,18の異常を検知する異常検知部70Aを有する。異常検知部70Aは、電極17,18間の抵抗値Rを取得する抵抗値取得部70aと、複数回の通電加熱時の抵抗値Rを平滑化した値である平滑化抵抗値Raを取得する平滑化部70bと、平滑化抵抗値Raが所定の閾値Rsに達した場合に、電極17,18に異常が発生したと判定し、電極17,18に異常が発生したことの警告を行うように警告装置71を制御する異常判定部70cと、を含む(詳しくは後述)。
【0026】
加熱機構50は、電力供給部55と、電力供給部55と電極17,18とを電気的に接続するブスバー52と、電極17,18間の電圧を測定する電圧測定部としての電圧計53と、を備える。電力供給部55は、直流電源及びスイッチを含み、電極17,18が金属パイプ材料14に電気的に接続された状態において、ブスバー52、電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能とされている。ブスバー52は、ここでは、下側電極17,18に接続されており、電圧計53は、ブスバー52の下側電極17寄りの位置に接続されると共に、ブスバー52の下側電極18寄りの位置に接続されている。電圧計53は、測定した電圧値(
図1に示す(B)からの情報)を、制御部70の抵抗値取得部70aに入力する。
【0027】
この加熱機構50では、電力供給部55から出力された直流電流は、ブスバー52によって伝送され、電極17に入力される。そして、直流電流は、金属パイプ材料14を通過して、電極18に入力される。そして、直流電流は、ブスバー52によって伝送されて電力供給部55に入力される。なお、電力供給部55は、約10000A20V以上の電力を供給するようになっている。抵抗値取得部70aは、電力供給部55が出力する直流電流の電流値を取得する。
【0028】
抵抗値取得部70aは、電力供給部55が出力する直流電流の電流値、及び、電圧計53で測定した電圧値に基づき、電極17,18間の抵抗値Rを取得する。抵抗値取得部70aは、金属パイプ材料14に対して通電加熱が行われる度に毎回、そのときの電極17,18間の抵抗値Rを取得する(
図4参照)。抵抗値取得部70aは、取得した抵抗値Rを、制御部70の平滑化部70b及び異常判定部70cに出力する。
【0029】
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに合わさる形状に構成されている(
図2参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは
図2(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
【0030】
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14を膨張させるための作動圧力を有するガスを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。
【0031】
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、
図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、駆動機構80等を制御する。
【0032】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0033】
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
【0034】
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。この挟持は電極17,18に形成される凹溝17a,18a、及び絶縁材91,101に形成される凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。
【0035】
なお、このとき、
図2(a)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している。また、上側電極17,18の下面と下側電極17,18の上面とは、それぞれ互いに接触している。ただし、金属パイプ材料14の両端部全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に電極17,18が当接するような構成であってもよい。
【0036】
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50の電力供給部55を制御して電力を供給し、定電流制御を行う。すると、ブスバー52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。そして、電圧計53で測定される電圧値は徐々に上がっていき、所定値に達したら通電を終了する。
【0037】
続いて、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対してブロー成形金型13を閉じる。これにより、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とが組み合わされ、下型11と上型12との間のキャビティ部内に金属パイプ材料14が配置密閉される。
【0038】
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする。このとき、
図2(b)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面18bに沿うように漏斗状に変形する。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面17bに沿うように漏斗状に変形する。シール完了後、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティ部の形状に沿うように成形する。
【0039】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。
【0040】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0041】
上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行い、型開きを行うことにより、例えば略矩形筒状の本体部を有する金属パイプを得る。
【0042】
以上の工程により、成形装置10は、金属パイプ材料14に対して通電加熱を含む金属パイプの成形を終了し、引き続き、次の金属パイプ材料14に対して通電加熱を含む金属パイプの成形を同様に行う。ところで、このように金属パイプ材料14に対する通電加熱を繰り返し行うと、電極17,18の表面が傷つき、通電時の抵抗値が大きくなる。この抵抗値の変化に基づいて行う電極17,18の異常の判定について、以下に説明する。
【0043】
図3は、複数回の通電加熱時における平滑化抵抗値Raの変化の一例を示すグラフであり、横軸には施工回数、縦軸には抵抗値が示されている。制御部70の平滑化部70bは、
図3に示されるように、複数回の通電加熱時における電極17,18間の抵抗値Rを平滑化した値である平滑化抵抗値Raを取得する。具体的には、平滑化抵抗値Raは、電極17,18の直近の交換後の、複数回の通電加熱時における電極17,18間の抵抗値Rを平滑化した値である。より具体的には、平滑化抵抗値Raは、例えば、今回の通電加熱時から所定回数前までの通電加熱時における電極17,18間の抵抗値Rを移動平均した値である。なお、ここでは平滑化抵抗値Raはk回分の通電加熱時における電極17,18間の抵抗値Rを移動平均した値としており、1回目の施工からk-1回目の施工までの間は平滑化抵抗値Raを取得することができないため、その間について図中には参考として各回の抵抗値Rを示している。
【0044】
抵抗値R1は、電極17,18が新たな電極17,18に交換された直後の通電加熱時(1回目の通電加熱時)の抵抗値Rである。施工回数が増えるに連れて平滑化抵抗値Raが徐々に増大している。これは、通電加熱を繰り返し行うことで電極17,18の表面が傷つき、通電時の抵抗が大きくなることを示している。平滑化部70bは、取得した平滑化抵抗値Raを制御部70の異常判定部70cに出力する。
【0045】
制御部70の異常判定部70cは、所定の閾値(設定値)Rsを予め記憶している。異常判定部70cは、平滑化抵抗値Raと閾値Rsとを比較し、平滑化抵抗値Raが閾値Rsに達した場合に、電極17,18の表面が大きく傷つき電極17,18に異常が発生したと判定する。
図3では、n回目の通電加熱時における平滑化抵抗値Raが所定の閾値Rsに達している。
【0046】
異常判定部70cは、電極17,18に異常が発生したと判定すると、電極17,18に異常が発生したことの警告を行うように警告装置71を制御する。この警告は、電極17,18の交換を促す警告であってもよい。なお、警告装置71は、例えばランプや音や画面表示等で警告を発するものである。
【0047】
図4は、
図3のグラフのうちの二点鎖線で示した領域Sを拡大して示すグラフである。
図4には、m回目からm+6回目の通電加熱時における各抵抗値R及び平滑化抵抗値Raと、平滑化抵抗値Raに所定の許容値ΔRを加えた値(上限抵抗値Rb)とが示されている。電極17,18と金属パイプ材料14との接触の程度にばらつきが生じることから、各抵抗値Rは施工回ごとに増減している。
【0048】
異常判定部70cは、今回の通電加熱において取得した抵抗値Rが上限抵抗値Rbに達した場合に、電極17,18と金属パイプ材料14との接触の程度が過度に不足して電流が流れにくくなっており金属パイプ材料14に異常(例えば、金属パイプ材料14の外寸・外径が規定範囲よりも小さい、或いは、許容できない程度の傷又は凹凸が生じている等)が発生したと判定する。
図4では、m回目からm+5回目の通電加熱時における各抵抗値Rは上限抵抗値Rbよりも小さい一方で、m+6回目の通電加熱時における抵抗値Rは上限抵抗値Rbよりも大きい(すなわち、上限抵抗値Rbに達している)。よって、異常判定部70cは、m+6回目に通電加熱された金属パイプ材料14に異常が発生したと判定する。
【0049】
異常判定部70cは、金属パイプ材料14に異常が発生したと判定すると、金属パイプ材料14に異常が発生したことの警告を行うように警告装置71を制御する。この警告は、通電加熱する金属パイプ材料14の交換を促す警告であってもよい。
【0050】
このように、本実施形態によれば、複数回の通電加熱時における電極17,18間の抵抗値Rを平滑化した値である平滑化抵抗値Raを取得する。平滑化抵抗値Raは、通電加熱が繰り返され電極17,18の表面の傷つき方の程度が大きくなるに連れて、増大する。この平滑化抵抗値Raが所定の閾値Rsに達した場合に、電極17,18の表面が正常の範囲を超えて傷ついていると判定して、電極17,18に異常が発生したことの警告を行う。よって、電極17,18に異常が発生したことを検知して作業者に認識させることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、平滑化抵抗値Raは、複数回の通電加熱時の抵抗値Rを移動平均した値である。これにより、平滑化抵抗値Raを、複数回の通電加熱時における電極17,18間の抵抗値Rを適切に反映した値とすることができる。このため、平滑化抵抗値Raが所定の閾値Rsに達した場合に、より適切に、電極17,18の表面が正常の範囲を超えて傷ついていると判定することができる。
【0052】
また、電極17,18は、新たな電極17,18と交換可能であり、異常判定部70cは、平滑化抵抗値Raが閾値Rsに達した場合に、電極17,18に異常が発生したと判定し、電極17,18の交換を促す警告を行うように警告装置71を制御する。これにより、電極17,18に異常が発生したことを検知したときに、作業者に電極17,18の交換等の適切な処理を行わせることができる。
【0053】
また、平滑化抵抗値Raは、電極17,18の交換後における複数回の通電加熱時の抵抗値Rを平滑化した値である。これにより、電極17,18の交換後において、新たな電極17,18に異常が発生したことを検知したときに、作業者に電極17,18の交換等の適切な処理を行わせることができる。
【0054】
また、異常判定部70cは、抵抗値Rが平滑化抵抗値Raに所定の許容値ΔRを加えた上限抵抗値Rbに達した場合に、金属パイプ材料14に異常が発生したと判定し、金属パイプ材料14に異常が発生したことの警告を行うように警告装置71を制御する。ここで、抵抗値Rが上限抵抗値Rb以上である場合には、電極17,18に異常が発生した可能性よりも、金属パイプ材料14に異常(例えば、金属パイプ材料14の外寸・外径が規定範囲よりも小さい、或いは、許容できない程度の傷又は凹凸が生じている等)が発生した可能性が高い。このため、抵抗値Rが上限抵抗値Rbに達した場合に、金属パイプ材料14に異常が発生したことの警告を行うことで、金属パイプ材料14に異常が発生したことを作業者に認識させることができる。
【0055】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態では、電極17,18を2つとしているが、電極17,18より軸線方向内側へ電極を追加して電極を3つ以上としても良い。
【0056】
また、電極17,18のメンテナンスが行われた場合において、平滑化抵抗値Raは、電極17,18の直近のメンテナンス後の、複数回の通電加熱時における電極17,18間の抵抗値Rを平滑化した値であってもよい。
【0057】
また、平滑化抵抗値Raは、複数回の通電加熱時における電極17,18の抵抗値Rを平滑化した値であればよく、平滑化の手法としては移動平均に限定されず最小二乗法等の各種カーブフィッティングの手法を用いてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、成形対象を金属パイプ材料14としているが、金属パイプ材料14に限定されるものではなく、金属棒状体や金属板状体等に対しても適用でき、要は、ある程度延びる金属体に対して適用できる。また、成形装置も、気体供給を行わずに通電加熱を行う鍛造装置等とすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
10…成形装置(通電加熱装置)、14…金属パイプ材料(金属体)、17,18…電極、55…電力供給部、70A…異常検知部、70a…抵抗値取得部、70b…平滑化部、70c…異常判定部、71…警告装置(警告部)。