(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】カテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/18 20060101AFI20221128BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61M25/18
A61M25/06 510
(21)【出願番号】P 2020509934
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019011965
(87)【国際公開番号】W WO2019188741
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018062883
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】立石 匡
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌弘
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214390(JP,A)
【文献】特表2013-529111(JP,A)
【文献】特表平03-505165(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185949(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/18
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと、
前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、
前記カテーテル内に離脱可能に挿入される内針と、
前記内針を固定保持し、且つ先端部を有する内針ハブと、を備えるカテーテル組立体であって、
前記内針ハブの前記先端部には、前記カテーテルを摺動可能としつつ該内針の撓みを抑制する支持部材が配置され、
前記支持部材は、前記カテーテルハブの移動に伴い一体に前記内針ハブから離脱し
、
前記カテーテルハブ及び前記支持部材は、前記カテーテルハブが前記先端部に移動する際に、前記カテーテルハブと前記支持部材を係合させる係合機構を有し、
前記支持部材は、基端から内部に前記カテーテルハブの一部分を収容することで一体化する構成であり、
前記係合機構は、前記カテーテルハブの外周面と前記支持部材の内周面とを嵌合させる構造である
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項2】
カテーテルと、
前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、
前記カテーテル内に離脱可能に挿入される内針と、
前記内針を固定保持し、且つ先端部を有する内針ハブと、を備えるカテーテル組立体であって、
前記内針ハブの前記先端部には、前記カテーテルを摺動可能としつつ該内針の撓みを抑制する支持部材が配置され、
前記支持部材は、前記カテーテルハブの移動に伴い一体に前記内針ハブから離脱し、
前記カテーテルハブ及び前記支持部材は、前記カテーテルハブが前記先端部に移動する際に、前記カテーテルハブと前記支持部材を係合させる係合機構を有し、
前記支持部材は、基端から内部に前記カテーテルハブの一部分を収容することで一体化する構成であり、
前記係合機構は、前記カテーテルハブの外周面と前記支持部材の内周面のうち一方に設けられた凹部に対し、他方に設けられた凸部を挿入する構造である
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項3】
請求項
2記載のカテーテル組立体において、
前記係合機構は、前記支持部材の軸方向上の複数の位置で前記カテーテルハブを係合可能である
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記支持部材は、基端から軸方向に所定長さ延在する切り欠きを有する
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記カテーテル及び前記カテーテルハブの移動を操作するカテーテル操作部材を備える
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記支持部材は、前記内針ハブに離脱可能に係合する部位を有する
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項7】
請求項
6記載のカテーテル組立体において、
前記内針ハブに離脱可能に係合する部位は、一対のウイングを含む
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項8】
請求項
6記載のカテーテル組立体において、
前記内針ハブに離脱可能に係合する部位は、前記内針を穿刺する前の初期状態で、前記内針ハブに引っ掛かる引っ掛かり部を含み、
前記引っ掛かり部は、前記カテーテルハブの移動に連動して前記内針ハブとの引っ掛かりを解除する
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項9】
請求項
6~
8のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記内針ハブは、該内針ハブの軸方向上の所定位置から先端まで延在するスロットを有し、
前記スロットは、前記支持部材の一部が挿入されて、前記支持部材の移動をガイド可能である
ことを特徴とするカテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルの撓みを抑制する機能を有するカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2013-529111号公報には、カテーテルに内針が挿入された2重構造針を有するカテーテル組立体が開示されている。このカテーテル組立体は、患者の体内にカテーテルを深く挿入するため、カテーテル及び内針が長尺に形成されている。カテーテル組立体のユーザは、2重構造針の穿刺状態で、内針と相対的にカテーテルを進出してカーテルを血管内に進入させ、さらにカテーテルから内針を離脱させることで、カテーテルを患者側に留置する。
【発明の概要】
【0003】
ところで、特表2013-529111号公報に開示のカテーテル組立体は、カテーテルの進出時に、内針ハブの先端側を上下に分離させることで、カテーテル及びカテーテルハブを、内針及び針ハブから離脱させる構成となっている。しかしながら、このような構成であると、カテーテルの進出時に、分離した内針ハブに対して2重構造針が非支持(自由)状態で延在することになる。そのため、2重構造針は、患者から反力を受けることで容易に撓んでしまう。場合によっては、撓みにより患者の挿入部から針先が抜けて、この針先が患者に再び穿刺するおそれもある。
【0004】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、カテーテルの移動中に内針の撓みを抑制することができるカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明は、カテーテルと、前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、前記カテーテル内に離脱可能に挿入される内針と、前記内針を固定保持し、且つ先端部を有する内針ハブと、を備えるカテーテル組立体であって、前記内針ハブの前記先端部には、前記カテーテルを摺動可能としつつ該内針の撓みを抑制する支持部材が配置され、前記支持部材は、前記カテーテルハブの移動に伴い一体に前記内針ハブから離脱することを特徴とする。
【0006】
また、前記カテーテルハブ及び前記支持部材は、前記カテーテルハブが前記先端部に移動する際に、前記カテーテルハブと前記支持部材を係合させる係合機構を有することが好ましい。
【0007】
上記構成に加えて、前記支持部材は、基端から内部に前記カテーテルハブの一部分を収容することで一体化する構成であり、前記係合機構は、前記カテーテルハブの外周面と前記支持部材の内周面とを嵌合させる構造であるとよい。
【0008】
或いは、前記支持部材は、基端から内部に前記カテーテルハブの一部分を収容することで一体化する構成であり、前記係合機構は、前記カテーテルハブの外周面と前記支持部材の内周面のうち一方に設けられた凹部に対し、他方に設けられた凸部を挿入する構造であってもよい。
【0009】
この場合、前記係合機構は、前記支持部材の軸方向上の複数の位置で前記カテーテルハブを係合可能であるとよい。
【0010】
また、前記支持部材は、基端から軸方向に所定長さ延在する切り欠きを有することが好ましい。
【0011】
そして、前記カテーテル及び前記カテーテルハブの移動を操作するカテーテル操作部材を備えていてもよい。
【0012】
またさらに、前記支持部材は、前記内針ハブに離脱可能に係合する部位を有する構成とすることができる。
【0013】
前記内針ハブに離脱可能に係合する部位は、一対のウイングを含んでいてもよい。
【0014】
また或いは、前記内針ハブに離脱可能に係合する部位は、前記内針を穿刺する前の初期状態で、前記内針ハブに引っ掛かる引っ掛かり部を含み、前記引っ掛かり部は、前記カテーテルハブの移動に連動して前記内針ハブとの引っ掛かりを解除する構成とすることもできる。
【0015】
さらにまた、前記内針ハブは、該内針ハブの軸方向上の所定位置から先端まで延在するスロットを有し、前記スロットは、前記支持部材の一部が挿入されて、前記支持部材の移動をガイド可能であるとよい。
【0016】
また、前記の目的を達成するために、本発明は、カテーテルと、前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、前記カテーテル内に離脱可能に挿入される内針と、前記内針を固定保持し、且つ先端部を有する内針ハブと、前記内針ハブの前記先端部に配置され、前記内針ハブに離脱可能に係合する部位を有し、前記カテーテルを摺動可能としつつ該内針の撓みを抑制する支持部材と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、カテーテル組立体は、内針ハブの先端部に配置された支持部材がカテーテルハブの移動に伴い一体に離脱する構成であることで、カテーテル組立体の取扱性を大幅に高めることができる。すなわち、支持部材は、カテーテル及び内針を生体に穿刺する際やカテーテルを血管に挿入する際に、カテーテルの外周面に接触しつつカテーテル内に挿入された内針の撓みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るカテーテル組立体の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2Aは、支持部材を示す平面図である。
図2Bは、支持部材の側面図である。
【
図3】
図3Aは、支持部材にカテーテルハブが係合した状態を示す平面図である。
図3Bは、支持部材にカテーテルハブが係合した状態を示す正面図である。
【
図4】
図4Aは、支持部材を配置した状態の内針ハブの先端部を示す側面図である。
図4Bは、カテーテルハブ及び支持部材が内針ハブから離脱した状態を示す側面図である。
【
図5】
図5Aは、
図1のカテーテル組立体の動作を示す第1説明図である。
図5Bは、
図1のカテーテル組立体の動作を示す第2説明図である。
図5Cは、
図1のカテーテル組立体の動作を示す第3説明図である。
【
図6】
図6Aは、
図1のカテーテル組立体の動作を示す第4説明図である。
図6Bは、
図1のカテーテル組立体の動作を示す第5説明図である。
【
図7】
図7Aは、第2実施形態に係るカテーテル組立体を示す側面図である。
図7Bは、カテーテルハブとカテーテル操作部材の係合状態を示す正面図である。
図7Cは、カテーテルハブとカテーテル操作部材の係合状態を示す側面図である。
【
図8】
図8Aは、
図7Aのカテーテル組立体の動作を示す第1説明図である。
図8Bは、
図7Aのカテーテル組立体の動作を示す第2説明図である。
図8Cは、
図7Aのカテーテル組立体の動作を示す第3説明図である。
【
図9】
図9Aは、第3実施形態に係るカテーテル組立体の支持部材を示す平面図である。
図9Bは、
図9Aの支持部材の側面図である。
図9Cは、
図9Aの支持部材の平面断面図である。
【
図10】
図10Aは、カテーテル組立体のカテーテルハブを示す平面図である。
図10Bは、カテーテルハブと支持部材の係合状態を説明するための側面図である。
【
図11】第4実施形態に係るカテーテル組立体のカテーテルハブ及び支持部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、
図1に示すように、患者の体外から体内に挿入されるカテーテル12を有し、カテーテル12により輸液や輸血の導入部を患者(生体)に構築する。カテーテル12は、末梢静脈カテーテルよりも長さが長いもの(例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等に適用されるもの)である。なお、カテーテル12は、末梢静脈カテーテルに構成されていてもよく、或いは静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用に構成されていてもよい。
【0021】
カテーテル組立体10Aは、上記のカテーテル12の他に、カテーテル12内に挿入される内針14、カテーテル12を固定保持するカテーテルハブ20、及び内針14を固定保持する内針ハブ30を備える。カテーテル組立体10Aは、使用前の状態(初期状態)で、カテーテル12と内針14が重なる2重構造針16を構成している。また、カテーテル組立体10Aは、内針ハブ30の先端部31に2重構造針16(カテーテル12)を摺動可能に支持する支持部材40を備える。
【0022】
具体的には、カテーテル組立体10Aのカテーテル12は、適度な可撓性を有し、軸方向に延在する内腔12aを内部に備える。カテーテル12の全長は、特に限定されるものではないが、例えば、14~500mmであるとよく、好ましくは30~400mmであり、或いは76~200mmであるとより好ましい。
【0023】
カテーテル12の構成材料は、軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
【0024】
カテーテル12の基端部は、かしめ、融着、接着、インサート成形等の適宜の固着手段によってカテーテルハブ20内の先端部に固着される。カテーテルハブ20は、カテーテル12が患者の血管内に挿入された状態で患者の皮膚上に露出され、支持部材40と共にテープ等により貼り付けられて留置される。このカテーテルハブ20に、他の医療機器(輸液や輸血のチューブ)が接続される。
【0025】
カテーテルハブ20は、カテーテル12よりも硬質な筒状に形成されている。このカテーテルハブ20は、先端方向に向かって先細りとなる先端テーパ部21と、先端テーパ部21の基端に連なり一定の太さで延在する基端胴部22と、を備える。基端胴部22の基端側外周面には、径方向外側に突出する操作タブ23が設けられる。また図示は省略するが、カテーテルハブ20は、他の医療機器と係合するためのフランジが設けられてもよい。
【0026】
カテーテルハブ20の内部には、カテーテル12の内腔12aに連通する内部空間20aが形成されている。内部空間20aはカテーテルハブ20の基端に設けられた基端開口20bに連通している。この内部空間20aには、2重構造針16の穿刺時に逆流した血液の漏出を防ぐ図示しない止血弁、及び輸液チューブのコネクタの挿入に伴い止血弁を貫通して輸液を可能とする図示しないプラグ等が収容されていてもよい。
【0027】
カテーテルハブ20は、初期状態で、内針ハブ30内に進退自在に収容され、また収容状態では操作タブ23を上方向に向けている。操作タブ23は、内針ハブ30の上面からはみ出ない程度の高さで、且つユーザの指が容易に接触するように周方向にある程度の幅をもつように形成されている。なお、操作タブ23は、内針ハブ30の上面から上方に露出するように大きく突出してもよい。
【0028】
カテーテルハブ20の構成材料は、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
【0029】
一方、内針14は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空状の管体に構成され、鋭利な針先15を先端に備える。内針14の内部には、軸方向に延在する中空部14aが設けられ、この中空部14aは、針先15に設けられた先端開口14bに連通している。
【0030】
内針14の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、或いは硬質樹脂、セラミックス等があげられる。内針14は、融着、接着、インサート成形等の適宜の固着手段により、内針ハブ30に強固に固定される。
【0031】
内針ハブ30は、医師や看護師等のユーザが把持するグリップ部分を構成し、内針14と一体的に取扱可能に構成されている。内針ハブ30は、カテーテルハブ20及び支持部材40を収容可能な収容空間30aを内側に有する角筒状の収容部材である。具体的に、内針ハブ30は、内針ハブ30の軸方向に直交する断面視で、下壁32と、下壁32に対向する上壁33と、下壁32及び上壁33の両辺間を延在する一対の側壁34と、で収容空間30aを囲うように構成されている。また、内針ハブ30の基端には、内針14を固定保持する基端壁35が設けられ、この基端壁35によって収容空間30aを閉じている。なお、内針ハブ30は、収容空間30a内に内針14を固定する針保持部を備えた構成でもよい。
【0032】
内針ハブ30の下壁32は、所定の厚みを有し、内針ハブ30の軸方向(長手方向)に沿って一連に連続する平板状に形成されている。或いは、下壁32は、内針ハブ30の先端部31よりも基端側において、カテーテルハブ20の進退をガイドする形状(例えば、カテーテルハブ20の円筒状に合った円弧状)に形成されていてもよい。
【0033】
上壁33は、下壁32と同様に平板状に形成されると共に、内針ハブ30の軸方向途中位置から先端にわたって延在するガイド溝部36を有する。ガイド溝部36は、収容空間30aと内針ハブ30の外側とを連通し、初期状態(使用する前の状態であり、内針14の針先15がカテーテル12の先端より突出した状態)でカテーテルハブ20の操作タブ23が配置される。すなわち、ガイド溝部36は、ユーザの操作タブ23の接触を可能とし且つ操作タブ23の進退を案内する機能を有する。このガイド溝部36は、内針ハブ30内でのカテーテルハブ20の移動範囲(カテーテル12の寸法)に対応した長さに形成され、また収容空間30aからのカテーテルハブ20の抜けを規制可能な幅に形成されている。ガイド溝部36を構成する上壁33の内縁33aは、収容空間30a側から外側に向かって幅方向に拡がるテーパ状に形成され、ユーザの指を入り易くしている。ガイド溝部36の基端は、初期状態においてカテーテルハブ20の操作タブ23が当接して、それ以上カテーテルハブ20が基端側に移動しないような位置に設けられている。なお、内針ハブ30内部に突起等の、カテーテルハブ20の軸方向への移動を規制する手段を設けることも可能である。
【0034】
一対の側壁34は、平板状に形成され、内針ハブ30の先端部31において支持部材40を保持するスロット37を有する。スロット37は、支持部材40の全長に対応する長さに形成され、内針ハブ30(側壁34)の先端まで延在している。スロット37は、後述する支持部材40のウイング42を係止し、また支持部材40から先端方向に向かう押圧を受けた際に、ウイング42の係止を解除する機能を有する。
【0035】
例えば、スロット37の内壁面は、初期状態のウイング42よりも先端側で僅かに突出する係合凸部37aを備える。係合凸部37aは、初期状態のウイング42に対向する基端側が急な角度に形成され、その反対側が緩やかな角度に形成されていることで、支持部材40が先端方向に進出する場合と、支持部材が基端方向に後退する場合とで、係合力を変化させている。なお、スロット37の内壁面は、係合凸部37aを備えず、初期状態のウイング42に適度な摩擦力を付与する溝幅に形成されてもよい。
【0036】
内針ハブ30は、ユーザが把持する部分を構成しているので、把持部と呼ぶこともできる。内針ハブ30は、内針14を固定保持する部位を含めて一部材で構成しても複数の部材から構成してもよい。この場合、内針14を固定保持する部位を含む部材と前述した部材を含めて内針ハブ30とする。内針ハブ30は、角筒状の収容部材であり、その壁構造として下壁32、上壁33及び一対の側壁34を説明したが、軸方向に直交する断面視で、一部若しくは全体が円又は楕円形の壁としても構成できる。この場合、一部若しくは全体が円又は楕円形の壁は、それぞれに概ね対応する位置の構成(下壁32、上壁33及び一対の側壁34)における上記記載として読み替えるものとする。
【0037】
支持部材40は、初期状態で、内針ハブ30の先端部31側に保持されている。この支持部材40は、2重構造針16(カテーテル12)の穿刺時やカテーテル12の進出時にカテーテル12を介して内針14を支持して内針14の撓みを抑制し、さらにカテーテルハブ20の移動に伴いカテーテルハブ20と一体に内針ハブ30から離脱する(
図6B参照)。そして離脱後に、支持部材40は、カテーテル12及びカテーテルハブ20と共に患者に留置される。
【0038】
図2A及び
図2Bに示すように、支持部材40は、中央筒41と、中央筒41の外周面から幅方向外側に突出する一対のウイング42と、を有する。中央筒41は、正面視で平坦状の下面から上方に向かって略半円形状を描くように突出形成されている。この中央筒41は、平面視で、先端方向に向かって先細りとなる先端側筒部43と、先端側筒部43の基端に連なり一対のウイング42が連結される基端側筒部44と、を有する。
【0039】
中央筒41は、基端側筒部44から先端側筒部43の途中位置までカテーテルハブ20を収容可能な空間部45を有する。空間部45は、中央筒41の基端に設けられた基端開口45aに連通すると共に、先端側筒部43の中心部に形成された挿通支持孔45cに連通する。
図3Aに示すように、空間部45は、挿入されるカテーテルハブ20の外形に対応した適宜の形状に設計されるとよく、本実施形態では先端テーパ部21の形状に応じて、先端方向に直径が漸減する漏斗状に形成されている。
【0040】
カテーテルハブ20と支持部材40は、カテーテルハブ20が内針ハブ30の先端部31に移動する際に、相互に係合(一体化)する係合機構18を有する。本実施形態において係合機構18は、カテーテルハブ20の外周面と支持部材40の空間部45を構成する内周面とを適宜の摩擦力で嵌合させる構造となっている。
【0041】
また、基端側筒部44には、基端から先端に向かって所定の軸方向長さ及び幅で、先端側が円弧状に形成された切り欠き46が設けられている。中央筒41の基端側は、この切り欠き46により径方向外側に弾性変形し易くなっている。なお、係合機構18は、摩擦嵌合に限定されず、例えばカテーテルハブ20と支持部材40のうち一方に凸部を備え、他方に凹部を備えることで、凸部を凹部に挿入して両者を係合する機構でもよい(
図9C、
図10Aも参照)。
【0042】
一方、挿通支持孔45cは、空間部45から中央筒41の先端(先端開口45b)まで延在している。挿通支持孔45cの直径は、カテーテル12の外径よりも若干大きく且つカテーテルハブ20の先端の直径よりも小さく形成されている。つまり、挿通支持孔45cを構成する支持部材40の壁部は、カテーテル12との間に僅かな隙間を形成して、カテーテル12を摺動自在とし、内針14が径方向外側に移動する(撓む)ことを防止する。
【0043】
図2A~
図4Bに示すように、支持部材40の一対のウイング42は、平面視で、基端側筒部44と同程度の軸方向長さで、充分な肉厚を有するように形成される。支持部材40は、一対のウイング42が内針ハブ30の一対のスロット37にそれぞれ収容されることで、内針ハブ30の先端部に対する初期状態の位置決めがなされる。また、各ウイング42は、内針ハブ30の一対の側壁34よりも幅方向外側に突出している。
【0044】
一対のウイング42は、正面視で、中央筒41の下面と各ウイング42の下面が面一に連続するように、中央筒41の下側に連結されている。これにより支持部材40を患者側に留置した際に、中央筒41及びウイング42の下面全体が面接触するように患者の体表上に留置することが可能となり、体表の狭い範囲を圧迫することを抑制することができる。
【0045】
支持部材40を構成する材料は、特に限定されず、例えば、カテーテルハブ20であげた材料を適用するとよい。また、支持部材40の先端側筒部43において挿通支持孔45cを構成する部分は、カテーテル12のキンクを防止するため、他の部分(挿通支持孔45cよりも基端側部分)よりも柔軟に構成された柔軟部47となっていることが好ましい。なお、支持部材40は、その全体がカテーテルハブ20等に比べて柔軟に構成されていてもよい。
【0046】
カテーテル組立体10Aは、以上の各部材を適宜組み付けて、
図1及び
図5Aに示すような初期状態を形成している。初期状態において、支持部材40は、内針ハブ30の先端部31に配置され、カテーテル12に内針14が挿入された2重構造針16を接触支持可能となっている。またカテーテルハブ20は、内部空間20aに内針14が挿通された状態で、内針ハブ30の基端側に収容されると共に、操作タブ23をガイド溝部36に配置している。
【0047】
第1実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、基本的には以上のように形成されており、以下、その作用について説明する。
【0048】
カテーテル組立体10Aは、上述したように輸血や輸液の導入部を構築する際に用いられる。使用において、ユーザは、内針ハブ30を把持操作して2重構造針16を患者に穿刺する。穿刺時に、支持部材40は、2重構造針16を外側から支持して2重構造針16の撓みを抑制する。
【0049】
2重構造針16の穿刺状態において、
図5Bに示すように、ユーザは、カテーテルハブ20の操作タブ23を先端方向に進出操作することでカテーテルハブ20を押し出し、カテーテル12を血管内に挿入していく。この際、支持部材40は、カテーテル12の移動をガイドしつつ、カテーテル12を介して内針14の撓みを防止する。
【0050】
図5Cに示すように、カテーテルハブ20は、進出に伴い内針ハブ30の先端付近まで移動すると、支持部材40の空間部45に進入する。この際、一対のスロット37に配置されている一対のウイング42は、係合凸部37aによる係合力が、カテーテルハブ20と支持部材40の係合力を若干上回っていることで、カテーテルハブ20を支持部材40に良好に嵌合させる。その後、支持部材40がカテーテルハブ20から進出力を受けることで、係合凸部37aとウイング42の係合が外れて、ウイング42は、内針ハブ30のスロット37内を先端方向に移動する。
【0051】
また
図6Aに示すように、カテーテル組立体10Aは、ユーザの意図に応じてカテーテル12を一旦後退させることもできる。カテーテルハブ20と支持部材40の係合後でも、単純にカテーテルハブ20の操作タブ23を基端方向に戻すことで、一対のウイング42が係合凸部37aを乗り越えて、スロット37の奥部に戻り支持部材40の後退が規制される。そのため、カテーテルハブ20をそのまま基端方向に推し戻せばカテーテルハブ20と支持部材40の係合が円滑に解除される。
【0052】
そして、ユーザは、
図6Bに示すようにカテーテルハブ20の進出操作又は内針ハブ30の後退操作に伴い、カテーテルハブ20と支持部材40を一体に内針ハブ30から離脱させる。これにより支持部材40は、カテーテルハブ20との係合を継続した状態で、留置体として患者の体表に留置される。この際、支持部材40は、一対のウイング42にテープ等が貼り付けられることで、カテーテル12及びカテーテルハブ20を良好に留置させることができる。
【0053】
以上のように、第1実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、内針ハブ30の先端部31に配置された支持部材40がカテーテルハブ20の移動に伴い一体に離脱する構成であることで、その取扱性を大幅に高めることができる。すなわち、支持部材40は、カテーテル12及び内針14を生体に穿刺する際やカテーテル12を血管に挿入する際に、カテーテル12を摺動させつつカテーテル12を介して内針14の撓みを抑制する。そして、この支持部材40による支持は、カテーテル12が支持部材40に移動するまで良好に継続する。しかも、支持部材40は、カテーテルハブ20の移動に伴い一体に内針ハブ30から離脱するため、カテーテルハブ20から内針14を容易に抜くことができる。従って、カテーテル組立体10Aは、操作が簡単になり、ユーザによる処置を効率化することが可能となる。
【0054】
また、カテーテル組立体10Aは、係合機構18によりカテーテルハブ20と支持部材40を係合させることで、両部材をより強固に一体化させることができる。そして、カテーテルハブ20と支持部材40を組み付けた状態の留置体として患者側に安定的に留置させることができる。
【0055】
さらに、係合機構18は、カテーテルハブ20の外周面と支持部材40の内周面を嵌合させる構造であることで、支持部材40に対しカテーテルハブ20を進入させる単純な操作で両部材の係合を実現することができる。
【0056】
またさらに、カテーテル組立体10Aは、支持部材40に切り欠き46を有することで、支持部材40へのカテーテルハブ20の進入時に、支持部材40の基端側部分が容易に弾性変形するようになる。これによりカテーテルハブ20を円滑に嵌合位置まで移動させ、支持部材40と適度な摩擦力で嵌合させることができる。
【0057】
ここで、カテーテル組立体10Aは、支持部材40が内針ハブ30に係合する部位を有することで、初期状態で支持部材40の脱落を強固に防止することができる。
【0058】
そして、内針ハブ30に係合する部位として、支持部材40が一対のウイング42を備えることで、内針ハブ30による支持部材40の配置状態を簡単且つ安定的に維持することが可能となる。しかも、ウイング42は、内針ハブ30からの離脱後に患者の体表に留置する際に、圧迫面積を減らし、またテープ等を貼り付ける箇所として利用することができる。
【0059】
そして、カテーテル組立体10Aは、内針ハブ30のスロット37に支持部材40の一部(一対のウイング42)を挿入してガイドすることで、支持部材40をスムーズに移動させて、内針ハブ30からの支持部材40の離脱をより一層容易化できる。
【0060】
なお、本発明に係るカテーテル組立体10Aは、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例や応用例をとり得る。例えば、支持部材40は、カテーテルハブ20を収容可能な筒状に限定されず、カテーテル12の基端部分やカテーテルハブ20の先端に係合可能な構造であればよい。一例として、カテーテル12の基端部分を太く形成して支持部材40をこの基端部分に係合させる構成でもよく、これによりカテーテル12のキンクを防止するストレインリリーフとして支持部材40を機能させてもよい。
【0061】
また、支持部材40(係合機構18)は、カテーテルハブ20の先端に引っ掛かる構造やカテーテルハブ20に貼り付けられる構造等を採用し得る。或いは、支持部材40は、カテーテルハブ20全体を収容するような形状に形成されていてもよい。
【0062】
本実施形態における支持部材40は、内針ハブ30による支持部材40の配置状態維持の点、及び、患者の体表に留置する際に利用する点で、一対のウイング42を有する態様として説明したが、一対のウイング42の代わりに、内針ハブ30のスロット37や側壁34の内面に設けられた溝にガイドされる突起状物としてもよい。このような突起状物は、内針ハブ30による支持部材40の配置状態を確実に維持することができる。この態様において、突起状物を内針ハブ30の側壁34に設け、溝を支持部材40に設けてもよい。
【0063】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係るカテーテル組立体10Bは、
図7A~
図7Cに示すように、カテーテル12及びカテーテルハブ20の進退移動を操作するカテーテル操作部材50が設けられている点で、第1実施形態に係るカテーテル組立体10Aと異なる。なお、以降の説明において、上述の実施形態と同じ構成又は同じ機能を有する要素には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0064】
具体的には、カテーテル操作部材50は、カテーテルハブ20の外周面に接続される接続部51と、接続部51から突出する連結頚部52と、連結頚部52に連なりユーザが操作する部分を構成する操作部53と、を有する。
【0065】
カテーテル操作部材50の接続部51は、初期状態で、カテーテルハブ20と共に内針ハブ30の収容空間30aに収容される。接続部51は、正面視で、内針ハブ30の収容空間30aの断面形状に応じた方形状に形成されている。また、接続部51は、カテーテルハブ20の基端胴部22よりも短い軸方向長さを有する。接続部51の内側には、カテーテルハブ20の外径に一致又は若干小径の保持空間51aが形成されている。保持空間51aに挿入されたカテーテルハブ20は、接続部51との間で適度な摩擦力で係合保持される。接続部51は、保持空間51aを形成している一対の脚部51bが幅方向に弾性的に開くことで、カテーテルハブ20の下方向への抜けを可能とする。
【0066】
カテーテル操作部材50の連結頚部52は、内針ハブ30のガイド溝部36(
図1参照)の溝幅よりも細く形成され、接続部51と操作部53とを連結している。これにより、内針ハブ30の外側に操作部53を露出させる。
【0067】
操作部53は、内針ハブ30の上方において、該内針ハブ30のガイド溝部36よりも幅方向に拡がるブロック状に形成されている。また操作部53は、連結頚部52の連結箇所から先端方向に延びることで、平面視でカテーテルハブ20に重なるように形成されている。これにより内針ハブ30を把持するユーザの指が操作部53に容易に届くようになる。
【0068】
一方、カテーテルハブ20は、カテーテル操作部材50の接続部51の先端方向への移動を規制する規制突起22aを基端胴部22の外周面に有する。すなわち、接続部51は、規制突起22aと操作タブ23の間に挟まれてカテーテルハブ20に対する軸方向の移動が規制されている。
【0069】
また、カテーテル組立体10Bにおいて、2重構造針16(カテーテル12)を支持する支持部材40(係合機構18)は、カテーテル操作部材50の接続部51の接続箇所よりも先端側のカテーテルハブ20を収容して係合することで、支持部材40とカテーテルハブ20を一体化させる。
【0070】
第2実施形態に係るカテーテル組立体10Bは、基本的には以上のように構成される。このカテーテル組立体10Bは、
図8A及び
図8Bに示すように、ユーザがカテーテル操作部材50を操作して、カテーテル12及びカテーテルハブ20を進出又は後退させる以外は、基本的には、第1実施形態に係るカテーテル組立体10Aと同様の動作を行う。すなわち、カテーテル組立体10Bは、カテーテル操作部材50を有する構成でも、カテーテル12及びカテーテルハブ20の移動時に、支持部材40による内針14の撓みを防止することが可能となる。そして、カテーテルハブ20は進出時に支持部材40に係合して、カテーテルハブ20及び支持部材40の内針ハブ30からの離脱をスムーズに実施させることができる。
【0071】
また
図8Cに示すように、カテーテル操作部材50は、内針14からカテーテルハブ20を離脱した後、ユーザによりカテーテルハブ20から取り外される。これにより、カテーテル12、カテーテルハブ20及び支持部材40で構成された留置体が患者側に留置される。
【0072】
なお、カテーテル操作部材50は、上記構成に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、カテーテル操作部材50の接続部51は、カテーテルハブ20の外周面に接続するだけなく、カテーテルハブ20内の基端開口20b(
図7A参照)から内部空間20a内に挿入されて嵌合する構成等でもよい。また、カテーテル操作部材50は、進出時に支持部材40と係合することで、支持部材40と一体化させて患者に留置されてもよい。さらに、カテーテル操作部材50は、内針14の針先15に引っ掛かり可能に構成され、廃棄体から離脱不能となっていてもよい。この場合、カテーテル操作部材50は、留置体の離脱時に、内針14の針先15を覆うことで内針14の誤刺を防止するセーフティ部材として機能させてもよい。
【0073】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係るカテーテル組立体10Cは、
図1及び
図9A~
図10Bに示すように、支持部材40Aが軸方向に沿って長く延在し、カテーテルハブ20との係合位置を調整可能な構成となっている。なお、本実施形態において、カテーテル組立体10Cは、ユーザがカテーテルハブ20を直接操作する構成(第1実施形態と同様の構成)となっている。
【0074】
具体的には、支持部材40Aの中央筒41(基端側筒部44)は、一対のウイング42の軸方向長さよりも長く延在する筒状に形成され、また中央筒41の全長に応じて内部の空間部45も軸方向に長く延在している。また、中央筒41に形成される切り欠き46も、中央筒41の基端から先端側筒部43付近まで延在している。そして、一対のウイング42は、基端側筒部44の先端寄りに連結されている。
【0075】
また、空間部45を構成する支持部材40Aの内周面には、複数の凹部48が形成されている。凹部48は、中央筒41の軸方向上の同位置で180°位相がずれる位置に一対設けられ、これら一対の凹部48は、中央筒41の軸方向に沿って複数(図示例では3つ)並設されている。凹部48は、後記のカテーテルハブ20の凸部24と係合して、支持部材40Aに対するカテーテルハブ20の係合位置を規定する係合機構18Aを構成している。軸方向に並ぶ各一対の凹部48は、相互に等間隔(例えば、1cm間隔)で設けられている。以下、軸方向に並ぶ各凹部48について、基端から先端側に向かって順に、第1凹部48a、第2凹部48b、第3凹部48cという。
【0076】
支持部材40Aの空間部45に挿入されるカテーテルハブ20は、基端胴部22の外周面から径方向外側に短く突出する一対の凸部24を有する。一対の凸部24は、支持部材40Aの一対の凹部48に対応して、カテーテルハブ20の軸方向上の同位置で180°位相がずれる位置に設けられている。従って、カテーテルハブ20は、支持部材40Aに挿入されると、第1~第3凹部48a~48cに段階的に一対の凸部24を係合させることが可能である。
【0077】
例えば、支持部材40Aは、カテーテルハブ20の一対の凸部24が一対の第1凹部48aに係合した状態で(
図10Bの実線参照)、支持部材40Aの先端から突出するカテーテル12の長さを第1長さ(例えば8cm)に設定する。また支持部材40Aは、一対の凸部24が一対の第2凹部48bに係合した状態で(
図10Bの太い点線参照)、支持部材40Aの先端から突出するカテーテル12の長さを第1長さよりも長い第2長さ(例えば9cm)に設定する。さらに支持部材40Aは、一対の凸部24が一対の第3凹部48cに係合した状態で(
図10Bの太い1点鎖線参照)、支持部材40Aの先端から突出するカテーテル12の長さを第2長さよりも長い第3長さ(例えば10cm)に設定する。
【0078】
以上のように、カテーテル組立体10Cは、凸部24及び凹部48を有する構成でも、支持部材40Aにカテーテルハブ20を進入させることで両部材を係合することができる。特に、支持部材40Aは、カテーテル12、カテーテルハブ20、支持部材40Aで構成される留置体の留置状態において、カテーテル12の長さを調整可能とする。これにより、患者の所望の穿刺箇所(例えば、皮膚上で血管がよく見える箇所)からカテーテル12を挿入しつつ、患者の体型等に応じて適切な長さのカテーテル12を体内に留置させることができる。
【0079】
また、支持部材40Aの切り欠き46は、支持部材40Aの基端から第3凹部48cを超える位置まで延びていることで、支持部材40A自体を適度に弾性変形させることができる。弾性変形によって、支持部材40Aの軸方向上に沿ってカテーテルハブ20の移動を許容しつつ、カテーテルハブ20を適宜の位置で(段階的に)良好に係止することができる。さらにまた、カテーテルハブ20及び支持部材40Aは、一対の凸部24が一対の第1~第3凹部48a~48cに係合する位置を確認可能とする目印25、49をそれぞれの外周面に有することが好ましい。この目印25、49により、ユーザにカテーテル12が突出する長さを確認させることができる。
【0080】
また、支持部材40Aは、
図10B中の点線に示すように、第1~第3凹部48a~48cに連なると共に、カテーテルハブ20の凸部24を軸方向に案内する案内凹部48dを備えた構成でもよい。案内凹部48dは、支持部材40の基端から延在し、また第1~第3凹部48a~48cの上側又は下側に連なるように形成される。これによりカテーテルハブ20を支持部材40Aの軸方向に移動させる際には、まず案内凹部48dに凸部24を位置させて移動をガイドし、カテーテルハブ20と支持部材40Aを係合する際には、案内凹部48dと第1~第3凹部48a~48cが連なる位置でカテーテルハブ20を僅かに回して凸部24を入れる。これにより、凸部24の軸方向の移動と、凸部24と凹部48の係合をよりスムーズに実施させることができる。
【0081】
また、係合機構18Aは、凸部24を支持部材40Aに備える一方で、凹部48をカテーテルハブ20に備える構成でもよい。さらに、カテーテル組立体10Cは、第2実施形態と同様に、カテーテル操作部材50がカテーテルハブ20に接続されて、カテーテル操作部材50を介して操作される構成でもよい(
図10B中の細線参照)。例えば、カテーテル操作部材50は、カテーテルハブ20の基端開口20bから内部空間20aに挿入される構造のものを適用するとよい。
【0082】
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係るカテーテル組立体10Dは、
図11、
図12A、
図12Bに示すように、内針ハブ60に係合可能なアーム71が支持部材70に設けられると共に、アーム71を押し下げ可能な押圧用突起81がカテーテルハブ80に設けられる点で、第1~第3実施形態に係るカテーテル組立体10A~10Cと異なる。
【0083】
具体的には、内針ハブ60の側壁61は、収容空間60aに連通すると共に、内針ハブ60の先端から所定の深さまで延びるスロット62を備える。スロット62の基端側の奥部には、初期状態で、後述する支持部材70の位置決め突起72が配置される幅広がり部63が形成されている。幅広がり部63を構成する壁面には、位置決め突起72の係合面72aが引っ掛かる被係合面63aが形成されている。
【0084】
内針ハブ60に収容される支持部材70は、ウイング42を備えない筒状に形成され、支持部材70の外周面に内針ハブ60と係合可能なアーム71(引っ掛かり部)を備える。このアーム71は、平面視で、外周面から径方向外側に短く突出し、屈曲点で屈曲して基端方向に延在している。アーム71は、初期状態で、内針ハブ60のスロット62の基端側部分に収まる。
【0085】
アーム71において基端方向に延在する部分は、ある程度の幅を有する平板状に形成されている。そして、アーム71の基端側の突出端部には、平面視で、内針ハブ60の側壁61に引っ掛かり可能な位置決め突起72が設けられている。位置決め突起72は、アーム71の全幅に対し所定の割合(例えば、1/2)の幅に設定され、アーム71上の幅方向外側位置に設けられている。また、位置決め突起72は、側面視で、アーム71の平面に対して直交する係合面72aを有する三角形状に形成されている。
【0086】
さらに、支持部材70は、アーム71に対向する位置の外周面にガイド切り欠き73を備える。ガイド切り欠き73は、支持部材70内の空間部74に連通し、また支持部材70の基端からアーム71の連結箇所の基端まで直線状に延在している。
【0087】
一方、カテーテルハブ80は、外周面から径方向外側に突出する押圧用突起81を備える。なお、支持部材70とカテーテルハブ80とが係合する係合機構18は、第1実施形態と同様に、支持部材70の内周面とカテーテルハブ80の外周面とを嵌合する構造となっている。
【0088】
押圧用突起81は、側面視で、先端側に頂部81aと、頂部81aから基端方向且つ下側に傾斜する斜辺81bと、下側の頂部81cとを有する直角三角形状に形成されている。この押圧用突起81は、カテーテルハブ80が支持部材70に挿入された際に、支持部材70のガイド切り欠き73から突出する一方で、アーム71の位置決め突起72に達しない突出長さに形成されている。このため、押圧用突起81は、ガイド切り欠き73を先端方向に移動した際に、その斜辺81bがアーム71に接触してアーム71を下方向に押圧する。
【0089】
第4実施形態に係るカテーテル組立体10Dは、基本的には以上のように構成される。カテーテル組立体10Dは、初期状態で、内針ハブ60の先端部64のスロット62に支持部材70のアーム71を収容しており、位置決め突起72の係合面72aが内針ハブ60の被係合面63aに引っ掛かっている。このため、支持部材70は、内針ハブ60に対し軸方向に沿った移動及び周方向回りの回転が規制されており、内針ハブ60からの脱落が防止されている。また、カテーテルハブ80は、内針ハブ60内で支持部材70の基端側に配置されている。
【0090】
ユーザは、このカテーテル組立体10Dの使用時に、2重構造針16を穿刺した状態で、カテーテルハブ80を先端方向に進出させる。進出時に、支持部材70の先端側内に形成された挿通支持孔70aは、内針14の撓みを抑制しつつカテーテル12を摺動させる。また支持部材70は、カテーテルハブ80が進出してくると基端開口70bを介して空間部74に挿入させる。
【0091】
図13A及び
図13Bに示すように、カテーテルハブ80を支持部材70にある程度進入させると、カテーテルハブ80の押圧用突起81がガイド切り欠き73に進入し、ガイド切り欠き73に沿って先端方向に移動する。押圧用突起81は、ガイド切り欠き73の移動中に、アーム71の基端(位置決め突起72の隣接箇所)に斜辺81bを接触させる。これにより、アーム71の基端(位置決め突起72)が徐々に下方向に押圧されるが、カテーテルハブ80が支持部材70に対してある程度嵌合するまでは、係合面72aと被係合面63aの係合が継続する。
【0092】
図14A及び
図14Bに示すように、カテーテルハブ80と支持部材70が嵌合すると、押圧用突起81の下側の頂部81cがアーム71を押し下げることにより、係合面72aと被係合面63aの係合がちょうど(或いは、カテーテルハブ80を支持部材70に対し若干進出させることで)解除される。これにより、支持部材70が内針ハブ60に対し相対移動可能となる。すなわち、アーム71がスロット62内を移動可能となり、カテーテルハブ80と支持部材70が一体的に先端方向に移動して内針ハブ60から離脱される。
【0093】
以上のように、第4実施形態に係るカテーテル組立体10Dは、内針ハブ60と支持部材70を相互に強固に係合することで、支持部材70の抜けを防止すると共に、支持部材70に移動してきたカテーテルハブ80との係合を円滑化することができる。そして、カテーテルハブ80と支持部材70の係合時又は係合後に、支持部材70と内針ハブ60の係合を解除することで、カテーテルハブ80と支持部材70を良好に一体化させて離脱させることが可能となる。
【0094】
カテーテル組立体10Dは、支持部材70のアーム71を複数備えていてもよく、この場合、内針ハブ60のスロット62やカテーテルハブ80の押圧用突起81も、アーム71の数に対応した数だけ設けられればよい。
【0095】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、カテーテル組立体10A~10Dは、カテーテルハブ20、80の離脱後に内針14の誤刺を防止するためのセーフティ機構を備えていてもよく、またカテーテル12の血管内での移動をガイドするガイドワイヤ及びガイドワイヤを挿入する機構を備えていてもよい。