(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】等張化剤としてリジン塩を含有するアフリベルセプト製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20221128BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221128BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221128BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221128BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K47/68
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/10
A61K9/08
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2020527044
(86)(22)【出願日】2018-11-18
(86)【国際出願番号】 US2018061710
(87)【国際公開番号】W WO2019099965
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-01
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518245799
【氏名又は名称】ジャスト-エヴォテック バイオロジックス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガレスピー、アリソン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フロイド、ジュリー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】カーウィン、ブルース エイ.
(72)【発明者】
【氏名】シスカ、クリスティーン シー.
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/129685(WO,A1)
【文献】特表2015-519373(JP,A)
【文献】特表2013-517309(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03199179(EP,A1)
【文献】特表2015-528454(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208989(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/087677(WO,A1)
【文献】特表2008-500995(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046140(WO,A1)
【文献】特表2016-502528(JP,A)
【文献】特表2010-505942(JP,A)
【文献】特表2006-515321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 47/00
A61K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)5~100mg/mLの濃度のアフリベルセプト;
(b)5~50mM濃度の
リン酸又は酢酸緩衝液;
(c)非イオン性界面活性剤;及び
(d)等張化剤としてのリジン塩
を含む眼科用製剤であって、最終浸透圧
が300
±50mOsm/kgであり;
pH
がpH5.0
~pH6.5である、眼科用製剤。
【請求項2】
前記緩衝液がリン酸緩衝液である、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項3】
前記緩衝液が酢酸緩衝液である、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項4】
前記緩衝液濃度が5~20mMである、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート、ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ポロキサマー、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール、アルキルサッカライド及びアルキルグリコシドからなる群から選択される、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項6】
さらなるアミノ酸安定化剤をさらに含む、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項7】
前記さらなるアミノ酸安定化剤が、プロリン、アルギニン、グリシン、リジン及びメチオニンからなる群から選択される、請求項
6に記載の眼科用製剤。
【請求項8】
(a)前記アフリベルセプトの濃度が20~80mg/mLであり;
(b)前記リン酸緩衝液の濃度が約10mMであり;
(c)前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート又はポロキサマーであり、
(d)前記等張化剤としての前記リジン塩が
、2~3%(w/v)の濃度であり;
眼科用製剤のpH
がpH6.0
~pH6.5である、請求項2に記載の眼科用製剤。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤がポロキサマー188である、請求項
8に記載の眼科用製剤。
【請求項10】
(a)前記アフリベルセプトの濃度が20~80mg/mLであり;
(b)前記酢酸緩衝液の濃度が約10mMであり;
(c)前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート又はポロキサマーであり、
(d)前記等張化剤としての前記リジン塩が
、2~3%(w/v)の濃度であり;
眼科用製剤のpH
がpH5.0
~pH5.5である、請求項3に記載の眼科用製剤。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤がポロキサマー188である、請求項
10に記載の眼科用製剤。
【請求項12】
眼の障害又は疾患の処置に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼科用製剤。
【請求項13】
前記眼の障害又は疾患が、網膜静脈閉塞症(RVO)後の黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、血管新生(滲出型)加齢性黄斑変性症(AMD)、近視性脈絡膜新生血管による視力障害、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、DME患者の糖尿病性網膜症(DR)及び血管新生加齢性黄斑変性症(AMD)からなる群から選択される、請求項
12に記載
の眼科用製剤。
【請求項14】
前記眼科用製
剤が、硝子体内注射によ
って前記眼の障害又は疾患を有する患者に投与されるものである、請求項
12又は13に記載の
眼科用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年11月20日に米国特許商標庁に提出された米国仮特許出願第62/588,536号明細書からの優先権を主張する。
【0002】
配列表
【0003】
本願は、ASCII方式で電子提出された配列表を含み、これは、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。2018年10月26日作成の前述のASCIIコピーの名称はJUST0471_SL.txtであり、サイズは4,148バイトである。
【0004】
本発明は、眼への投与に適したアフリベルセプト融合タンパク質の医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0005】
アフリベルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に融合されている、ヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメインからの血管内皮増殖因子(VEGF)結合部分である、2つの主要構成要素を含む組み換え融合タンパク質である(Papadopoulos et al.,Modified chimeric polypeptides with improved pharmacokinetic properties、国際公開第00/75319A1号パンフレット;米国特許第7070959B2号明細書を参照)。
【0006】
構造的に、アフリベルセプトは、タンパク質分子量が約96.9キロダルトン(kDa)の二量体糖タンパク質である。これはおよそ15%のグリコシル化を含有し、総分子量がおよそ115kDaになっている。
【0007】
一次配列によって予測される各ポリペプチド鎖上の5個の推定N-グリコシル化部位は全て糖で占められ、末端シアル酸残基の不均一性を含め、ある程度の鎖の不均一性を示し得る。
【0008】
米国食品医薬品局(FDA)は、2011年11月にアフリベルセプトの市販を承認し、欧州医薬品庁(EMA)はそれを2012年11月に承認した。
【0009】
商品名Eylea(登録商標)(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)のアフリベルセプトは、眼の障害又は疾患、例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)後の黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、血管新生(滲出型)加齢性黄斑変性症(AMD)、近視性脈絡膜新生血管による視力障害、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、DME患者の糖尿病性網膜症(DR)及び血管新生加齢性黄斑変性症(AMD)の処置における眼科用剤として使用される。
【0010】
Zaltrap(登録商標)(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)の商品のZiv-アフリベルセプトは、転移性結腸直腸癌の処置用の注射として開発された。
【0011】
アフリベルセプトに対する既知の製剤としては、Furfine et al.(Furfine et al.,VEGF antagonist formulations for intravitreal administration,米国特許第8092803号明細書;米国特許第9580489号明細書;欧州特許第2364691B1号明細書;国際公開第2007149334A2号パンフレット)により、及びDix et al.(Dix et al.,VEGF Antagonist Formulations,国際公開第2006104852A2号パンフレット;米国特許第8921316号明細書;米国特許第9636400号明細書)により記載されるものが挙げられる。
【0012】
安定性が増強されたアフリベルセプト製剤が依然として必要とされており、本発明がそれを提供する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、アフリベルセプトの眼科用製剤に関し、この製剤は、(a)5~100mg/mLの濃度のアフリベルセプト;(b)5~50mM濃度の緩衝液;(c)非イオン性界面活性剤;(d)等張化剤としてのリジン塩を含み、この製剤は最終浸透圧が約300mOsm/kg(即ち300±50mOsm/kg)であり;この製剤のpHは約pH5.0~約pH6.5である。本発明の眼科用製剤は、硝子体内又は局所投与に適している。本発明のアフリベルセプト含有眼科用製剤は、安定性の特徴を有し、例えば、経時的な凝集が顕著に減少し、他の既知のアフリベルセプト眼科用製剤と同程度に好ましいか、又はより好ましい視覚特性を有する。本発明の製剤はまた、必要に応じて、凍結乾燥及び再構成され得る。
【0014】
本発明の眼科用製剤は、眼の障害又は疾患、例えば、網膜静脈閉塞症(RVO)後の黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、血管新生(滲出型)加齢性黄斑変性症(AMD)、近視性脈絡膜新生血管による視力障害、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、DME患者の糖尿病性網膜症(DR)及び血管新生加齢性黄斑変性症(AMD)の処置の方法において医学用眼科用剤として使用され得る。本発明の眼科用製剤の投与は、硝子体内注射によるか、又は場合によっては、医学的に適切な場合、眼への局所投与によるものであり得る。本発明の製剤は、これらの眼の障害又は疾患の処置に使用され得、これらの眼の障害及び疾患の処置用の薬剤の調製に使用され得る。
【0015】
前述の要約は、本発明の全ての態様を定義するものではなく、発明を実施するための形態など、他のセクションでさらなる態様を記載する。文書全体は、統合された開示として関連付けられることを意図しており、特色の組み合わせがこの文書の同じ文又は段落又はこのセクションにおいて一緒に見られない場合でも、本明細書中に記載の特色の全ての組み合わせが企図されることを理解されたい。
【0016】
上記に加えて、本発明は、さらなる態様として、本発明の全ての実施形態が、上記の特定の段落によって定義される変形物よりも範囲を形はどうあれ狭くすることを含む。例えば、属として記載される本発明の特定の態様、及び属の全てのメンバーが、個々に、本発明の態様であることを理解されたい。また、属として記載される、又は属のメンバーを選択する態様は、属の2つ以上のメンバーの組み合わせを包含すると理解されたい。出願人は、本明細書中に記載の本発明の全範囲を発明したが、出願人は、他人の先行技術研究に記載される主題を主張するものではない。従って、特許請求の範囲内の法定先行技術が特許庁又は他の実体又は個人によって出願人の関心を呼ぶ場合、出願人は適用される特許法のもと修正権を行使する権利を留保し、かかる特許請求の主題を再定義して、かかる特許請求の範囲から、かかる法定先行技術又は法定先行技術の明白な変形物を具体的に排除する。かかる補正請求項によって定義される本発明の変形もまた、本発明の態様であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、SE-HPLCにより測定した場合の、30℃で保管される様々なアフリベルセプト製剤におけるHMW形成を示す。(製剤の略語については表1を参照)
【0018】
【
図2】
図2は、SE-HPLCにより測定した場合の、4℃で保管される様々なアフリベルセプト製剤におけるHMW形成を示す。(製剤の略語については表1を参照)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中で使用されるセクションの見出しは、組織化のためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0020】
定義
【0021】
本明細書中で別段の定義がない限り、本願に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈により特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。従って、この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈による別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「タンパク質」への言及は、複数のタンパク質を含み;「細胞」への言及は、複数の細胞の集団を含む。
【0022】
本発明は、患者への硝子体内又は局所投与に適した水性眼科用製剤に関し、この製剤は、Eylea(登録商標)としても市場で知られているアフリベルセプトを含む。アフリベルセプトは、アフリベルセプトアミノ酸配列(配列番号1)を有する2本の同一の融合ポリペプチド鎖の集合体であり、典型的には、組み換えDNA発現技術により最も都合よく作製される。アフリベルセプトのアミノ酸配列は次のとおりである:
【0023】
ジスルフィド架橋は、配列番号1の次のアミノ酸位置のシステイン残基の間にあると予想される(上記の配列番号1で示されるシステイン(C)残基に下線を付す):
【0024】
30~79(鎖内)
【0025】
124~185(鎖内)
【0026】
211~211(鎖間)
【0027】
214~214(鎖間)
【0028】
246~306(鎖内)
【0029】
352~410(鎖内)
【0030】
アフリベルセプトの2本の融合ポリペプチド鎖は、配列番号1のアミノ酸位置211及び214でジスルフィド結合により共有結合される。融合タンパク質は通常、グリコシル化されており、N-グリカンは、配列番号1の位置36、68、123、196及び282のアスパラギン残基で共有結合される(上記配列番号1で示すアスパラギン(N)残基は太字/斜字体とする)。本発明の範囲内の「アフリベルセプト」は、融合ポリペプチド鎖の一方、両方が、さらなるカルボキシ末端リジン(K)残基を有する配列番号1のアミノ酸配列を有するか、又は両方ともそれを有しない実施形態も含む。本発明の眼科用製剤におけるアフリベルセプトの濃度は、約20mg/mL~約80mg/mL又は約30mg/mL~約50mg/mLであり;例えば約40mg/mLの濃度が製剤の多くの実施形態において有用である。
【0031】
「安定な」製剤は、その中のタンパク質が、原薬及び/又はアフリベルセプトを含有する医薬品の、処理(例えば、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、他のろ過工程、バイアル充填)、輸送及び/又は保管時に、その物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を本質的に保持するものである。合わせて、製剤中のタンパク質の物理的、化学的及び生物学的安定性は、例えばアフリベルセプト製剤などのタンパク質製剤の「安定性」を織り込んでおり、これは、製剤化された医薬品(DP)が保管される条件に特異的である。例えば、氷点下の温度で保管された医薬品は、化学的、物理的又は生物学的活性の何れにも顕著な変化がないと予想され、一方で40℃で保管された医薬品は、その物理的、化学的及び生物学的活性の変化があることが予想され、その変化の程度は原薬又は医薬品に対する保管時間に依存する。タンパク質製剤の立体配置も変化速度に影響を与え得る。例えば、凝集体形成はタンパク質濃度により大きく影響され、タンパク質濃度が高いほど、高い凝集速度が観察される。賦形剤はまた、医薬品の安定性に影響を与えることも知られ、例えば、塩の添加によりいくつかのタンパク質の凝集速度が上昇し、一方で、スクロースなどの他の賦形剤は、保管中の凝集速度を低下させることが知られている。不安定性はpHによっても大きく影響を受け、修飾のタイプ及びpH依存性に応じて、分解速度の上昇及び低下の両方が起こる。
【0032】
タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えば、Wang,W.(1999),Instability,stabilization and formulation of liquid protein pharmaceuticals,Int J Pharm 185:129-188で概説されている。選択した温度で、選択した時間にわたり安定性を測定し得る。迅速なスクリーニングのために、例えば、本製剤を2週間~1か月間、40℃で維持し得、その時点で安定性を測定する。本製剤を2~8℃で保管しようとする場合、一般的に本製剤は30℃で少なくとも1か月間、又は40℃で少なくとも1週間、及び/又は2~8℃で少なくとも2年間安定であるべきである。
【0033】
色及び透明度の目視検査で、又はUV光散乱若しくはサイズ排除クロマトグラフィー若しくは他の適切な方法により測定される場合、二次及び/若しくは三次構造(即ち固有構造)若しくは凝集、並びに/又は沈殿及び/若しくは変性に対する変化の徴候が最小限でしか示されない場合、タンパク質は医薬製剤において「その物理的安定性を保持」している。タンパク質の物理的不安定性、即ち物理的安定性の喪失は、オリゴマー化によって引き起こされ得、その結果、二量体及びより高次の凝集体、サブビジブル粒子及び可視粒子の形成及び沈殿が起こる。物理的分解の程度は、関心のある分解物のタイプに応じて様々な技術を使用して確認され得る。二量体及びより高次の可溶性凝集体はサイズ排除クロマトグラフィーを使用して定量され得、一方でサブビジブル粒子は光散乱、光遮蔽又は他の適切な技術を使用して定量され得る。一実施形態では、タンパク質の安定性は、分解した(例えば断片化した)及び/又は凝集したタンパク質のパーセンテージが低い、溶液中のアフリベルセプト単量体タンパク質のパーセンテージに従って決定される。「アフリベルセプト単量体」は、ポリペプチド鎖の何れかにおけるさらなるカルボキシ末端リジン残基を伴うか又は伴わない、アフリベルセプトアミノ酸配列(配列番号1)を有する2本のポリペプチド鎖の集合を意味する。「アフリベルセプト単量体」において、この2本のアフリベルセプトポリペプチド鎖は、本明細書中、上記のように、配列の免疫グロブリンFcドメイン部分の会合及びジスルフィド架橋を通じて組み立てられる。例えば、安定なタンパク質を含む水性製剤は、(総タンパク質のパーセンテージとして)少なくとも95%アフリベルセプト単量体、少なくとも96%アフリベルセプト単量体、少なくとも97%アフリベルセプト単量体、少なくとも98%アフリベルセプト単量体又は少なくとも99%アフリベルセプト単量体タンパク質を含み得る。あるいは、本発明の水性製剤は、(総タンパク質のパーセンテージとして)約5%の凝集体及び/又は分解されたアフリベルセプトタンパク質を含み得る。
【0034】
ある時点での化学的安定性が、結果としてタンパク質構成要素、例えばアフリベルセプト、の一次構造に変化をもたらす、共有結合の形成又は破壊が起こらないようなものである場合、タンパク質は医薬製剤において「その化学的安定性を保持」する。一次構造に対する変化の結果、タンパク質の二次及び/又は三次及び/又は四次構造の修飾が起こり得、凝集体の形成又は既に形成された凝集体の逆転が起こり得る。典型的な化学修飾としては、異性化、脱アミド化、N-末端環化、バックボーン加水分解、メチオニン酸化、トリプトファン酸化、ヒスチジン酸化、ベータ脱離、ジスルフィド形成、ジスルフィドスクランブリング、ジスルフィド切断及びD-アミノ酸形成を含む一次構造に対する変化がもたらされる他の変化が挙げられ得る。化学的不安定性、即ち化学的安定性の喪失は、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチド消化物の分析及び複数のタイプの質量分析技術を含む様々な技術によって調べ得る。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変化した形態を検出及び定量することによって評価し得る。化学的変化には、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE及び/又はマトリクス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を使用して評価し得るサイズ変更(例えばクリッピング)が含まれ得る。他のタイプの化学的変化としては、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動法又はペプチドマッピングなどであるが限定されない電荷に基づく方法により評価され得る電荷変化(例えば脱アミド化の結果として生じる)が挙げられる。
【0035】
物理的及び/又は化学的安定性の喪失の結果、修飾及び修飾されるタンパク質に応じて、関心のある生物学的活性の上昇又は低下の何れかとして生物学的活性に対する変化が起こり得る。所定の時間でのタンパク質の生物学的活性が、医薬製剤調製時に示された生物学的活性の約30%以内である場合、タンパク質は医薬製剤において「その生物学的活性を保持」する。活性がその出発値の70%未満である場合、活性が低下していると見なされる。生物学的アッセイは、リガンド結合、効力、細胞増殖又はその生物医薬学的活性の他の代理測定など、インビボ及びインビトロの両方に基づくアッセイを含み得る。例として、ELISA又はヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)増殖アッセイによるPGFに対する抗胎盤成長因子結合の阻害などのインビトロリガンド結合アッセイを使用して、アフリベルセプトの生物学的活性が推定され得る。
【0036】
本発明での使用のためのアフリベルセプトは、典型的には、組み換え発現技術によって作製される。「組み換え」という用語は、物質(例えば核酸又はポリペプチド)が人為的介入によって人工的又は合成的に(即ち非自然的に)改変されていることを示す。その自然環境又は状態内の物質又はそこから除去された物質に対して改変を行い得る。例えば「組み換え核酸」は、例えばクローニング、DNAシャッフリング又は他の周知の分子生物学的手順中に、核酸を組み換えることにより作製されるものである。このような分子生物学的手順の例は、Maniatis et al.,Molecular Cloning A Laboratory ManualCold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1982)で見られる。「組み換えDNA分子」は、このような分子生物学的技術によって一緒に連結されるDNAのセグメントから構成される。本明細書中で使用される場合、「組み換えタンパク質」又は「組み換えポリペプチド」という用語は、組み換えDNA分子を使用して発現されるタンパク質分子を指す。「組み換え宿主細胞」は、組み換え核酸を含有し、及び/又は発現する細胞である。アフリベルセプト融合タンパク質の発現に有用な組み換えDNA分子は、例えばPapadopoulos et al.,Modified Chimeric Polypeptides with Improved Pharmacokinetic Properties,米国特許第7,070,959B2号明細書;及び国際公開第00/75319A1号パンフレット)により記載されている。
【0037】
ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生物学的物質に関連して本明細書中で出現する場合、「天然に存在する」という用語は、天然で見られる物質を指す。
【0038】
「制御配列」又は「制御シグナル」という用語は、特定の宿主細胞において、それが連結されるコード配列の発現及びプロセシングに影響を与え得るポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物に対する制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含み得る。真核生物に対する制御配列は、転写因子に対する1つ又は複数の認識部位、転写エンハンサー配列又はエレメント、ポリアデニル化部位及び転写終結配列を含むプロモーターを含み得る。制御配列は、リーダー配列及び/又は融合パートナー配列を含み得る。プロモーター及びエンハンサーは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する短いDNAアレイからなる(Maniatis,et al.,Science 236:1237(1987))。プロモーター及びエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫及び哺乳動物細胞及びウイルスにおける遺伝子を含む様々な真核生物源から単離されている(類似の制御エレメント、即ちプロモーターは原核生物でも見られる)。特定のプロモーター及びエンハンサーの選択は、関心のあるタンパク質を発現させるために使用しようとする細胞のタイプに依存する。いくつかの真核生物のプロモーター及びエンハンサーは広い宿主範囲を有するが、一方で他のものは細胞型の限定的なサブセットで機能的である(概説については、Voss,et al.,Trends Biochem.Sci.,11:287(1986)及びManiatis,et al.,Science 236:1237(1987)を参照)。
【0039】
「プロモーター」は、1つ以上の下流の構造遺伝子によるメッセンジャーRNAの転写を開始するためにRNAポリメラーゼが結合する部位を含むDNAの領域である。プロモーターは、遺伝子の転写開始部位の近く、同じ鎖上及びDNAの上流(センス鎖の5’領域に向かって)に位置する。プロモーターは通常、約100~1000bp長である。
【0040】
「エンハンサー」は、遺伝子の転写を活性化するために1つ以上の活性化因子タンパク質(転写因子)と結合し得るDNAの短い(50~1500bp)領域である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「操作可能な組み合わせで」、「操作可能な順序で」、及び「操作可能に連結される」という用語は、所定の遺伝子の転写を指示可能な核酸分子及び/又は所望のタンパク質分子の合成が産生されるような核酸配列の連結を指す。この用語はまた、機能的タンパク質が産生されるような方式のアミノ酸配列の連結も指す。例えば、タンパク質コード配列に「操作可能に連結される」ベクター中の制御配列をそれに連結して、タンパク質コード配列の発現が制御配列の転写活性に適合する条件下で達成されるようにする。
【0042】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書中で交換可能に使用され、ペプチド結合を通じて共有結合される2個以上のアミノ酸の分子鎖を含む。この用語は、製品の具体的な長さを指さない。従って、「ペプチド」及び「オリゴペプチド」は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、タンパク質断片、類似体、突然変異又は変異タンパク質、融合タンパク質などは、ポリペプチドの意味内に含まれる。この用語はまた、既知のタンパク質工学技術を使用して組み換えにより発現され得るような、1つ以上のアミノ酸類似体又は非標準的若しくは非天然アミノ酸が含まれる分子も含む。さらに、融合タンパク質は、本明細書中に記載のように、周知の有機化学技術によって誘導体化され得る。
【0043】
ポリペプチド(例えば免疫グロブリン又は抗体)の「変異体」は、1つ以上の複数のアミノ酸残基が、別のポリペプチド配列と比較してアミノ酸配列に挿入、削除及び/又は置換されているアミノ酸配列を含む。変異体には融合タンパク質が含まれる。
【0044】
「融合タンパク質」という用語は、例えば、アフリベルセプトに関して、タンパク質が複数の親タンパク質又はポリペプチドに由来するポリペプチド構成要素を含むことを示す。典型的には、融合タンパク質は、あるタンパク質からのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質からのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列とインフレームで付加され、場合によってはリンカーによって分離されている「融合遺伝子」から発現される。次いで、融合遺伝子は、組み換え宿主細胞によって単一のタンパク質として発現され得る。
【0045】
「分泌される」タンパク質とは、分泌シグナルペプチド配列の結果として、小胞体(ER)、分泌小胞又は細胞外空間に向けられることが可能なタンパク質、並びに、必ずしもシグナル配列を含有せずに細胞外空間に放出されるタンパク質を指す。分泌されるタンパク質が細胞外空間に放出される場合、分泌されるタンパク質は細胞外プロセシングを受けて「成熟した」タンパク質を生成する。細胞外空間への放出は、エキソサイトーシス及びタンパク質分解性切断を含む、多くの機序によって起こり得る。いくつかの他の実施形態では、関心のあるアフリベルセプト融合タンパク質は、分泌タンパク質として宿主細胞によって合成され得、次に、細胞外空間及び/又は培地からさらに精製され得る。
【0046】
本明細書中で使用される場合、宿主細胞において組み換えDNA技術により産生されるタンパク質に関連する場合、「可溶性」とは、タンパク質が水溶液中に存在することであり;タンパク質がツインアルギニンシグナルアミノ酸配列を含有する場合、可溶性タンパク質はグラム陰性細菌宿主のペリプラズム空間に輸出されるか、分泌可能な真核生物宿主細胞によって、又は適切な遺伝子(例えばkil遺伝子)を持つ細菌宿主によって培地に分泌される。従って、可溶性タンパク質は、宿主細胞内の封入体では見られないタンパク質である。あるいは、状況に応じて、可溶性タンパク質は、細胞膜への組み込みが見られないか、又は、インビトロにおいて、イオン性洗剤又はカオトロピック剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、グアニジン塩酸塩若しくは過塩素酸リチウムなどを含有しない、生理的条件下の関心のある水性緩衝液中で他のタンパク質なしで懸濁される場合に顕著な量の不溶性凝集体の形成がなく(即ち総タンパク質の10%未満、通常は約5%未満の凝集体を形成)、生理的条件下で水性緩衝液中で溶解されるか若しくは溶解可能であるタンパク質である。対照的に、不溶性タンパク質は、宿主細胞中の細胞質顆粒(封入体と呼ばれる)内で変性した形で存在するものであるか、又は再び、状況に応じて、不溶性タンパク質は、細胞質膜、ミトコンドリア膜、葉緑体膜、小胞体膜などを含むが限定されない細胞膜に存在するものであるか、又はイオン性洗剤又はカオトロピック剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、グアニジン塩酸塩若しくは過塩素酸リチウムなどを含有しない、生理的条件下の関心のある水性緩衝液中で、他のタンパク質なしで(生理的に適合した温度で)懸濁される場合に、生理的条件下のインビトロ水性緩衝液中で、顕著な量の不溶性凝集体を形成(即ち総タンパク質の約10%以上の凝集体を形成)するものである。
【0047】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、2つ以上のヌクレオチド残基を含有する1本鎖及び2本鎖ヌクレオチドポリマーの両方を含む。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチド残基は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド又は何れかのタイプのヌクレオチドの修飾形態であり得る。この修飾は、ブロモウリジン及びイノシン誘導体などの塩基修飾、2’,3’-ジデオキシリボースなどのリボース修飾、及びホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート、ホスホルアニラダート(phosphoraniladate)及びホスホロアミダートなどのヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0048】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、200以下のヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、10~60塩基長である。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19又は20~40ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、例えば突然変異遺伝子の構築での使用のための、1本鎖又は2本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、検出アッセイのための、放射性標識、蛍光標識、ハプテン又は抗原標識を含む標識を含み得る。オリゴヌクレオチドは、例えばPCRプライマー、クローニングプライマー又はハイブリッド形成プローブとして使用され得る。
【0049】
本明細書中で交換可能に使用される場合、「ポリヌクレオチド配列」又は「ヌクレオチド配列」又は「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、DNA及びRNA、核酸を含むポリヌクレオチド中のヌクレオチド残基の一次配列又は、状況に応じて、ヌクレオチド残基の一次配列を表す文字列である。何らかの特定のポリヌクレオチド配列から、所与の核酸又は相補的ポリヌクレオチド配列の何れかを決定し得る。1本鎖又は2本鎖であり得、センス鎖又はアンチセンス鎖を表し得るゲノム又は合成起源のDNA又はRNAが含まれる。別段の明記がない限り、本明細書中で論じられるあらゆる1本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’末端であり;2本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と呼ばれる。新生RNA転写産物の5’から3’への付加の方向は、転写方向と呼ばれ;RNA転写産物の5’末端に対して5’である、RNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれ;RNA転写産物の3’末端に対して3’である、RNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「単離核酸分子」又は「単離核酸配列」は、(1)核酸の天然供給源において通常付随する少なくとも1つの夾雑核酸分子から同定及び分離されるか、又は(2)関心のある核酸の配列が決定され得るようにバックグラウンド核酸から、クローニングされるか、増幅されるか、タグ付加されるか、若しくはそうでなければ区別されるかの何れかの核酸分子である。単離核酸分子は、それが天然で見られる形態又は状況以外のものである。しかし、単離核酸分子は、免疫グロブリン(例えば抗体)を通常は発現する細胞中に含有される核酸分子を含み、例えばこの核酸分子は、天然の細胞の場合とは異なる染色体位置にある。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「コードする核酸分子」、「コードするDNA配列」及び「コードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序又は配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、mRNA鎖に沿ったリボヌクレオチドの順序を決定し、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序も決定する。従って、DNA配列は、RNA配列及びアミノ酸配列をコードする。
【0052】
「遺伝子」という用語は、生物学的機能に関連するあらゆる核酸を指すために広く使用される。遺伝子は通常、コード配列及び/又はそのようなコード配列の発現に必要な調節配列を含む。「遺伝子」という用語は、特定のゲノム又は組み換え配列並びにその配列によりコードされるcDNA又はmRNAに適用される。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質に対する認識配列を形成する、非発現核酸セグメントも含む。転写因子などの調節タンパク質が結合する転写制御エレメントを含む非発現調節配列により、隣接又は近くの配列の転写を引き起こす。
【0053】
「遺伝子の発現」又は「核酸の発現」とは、文脈により示されるように、DNAからRNAへの転写(場合によってはRNAの修飾、例えばスプライシングを含む)、RNAからポリペプチドへの翻訳(おそらくその後のポリペプチドの翻訳後改変を含む)又は転写及び翻訳の両方を意味する。
【0054】
発現カセットは、組み換え発現技術の典型的な特徴である。発現カセットは、関心のあるタンパク質をコードする遺伝子、例えばアフリベルセプト融合タンパク質配列をコードする遺伝子を含む。真核生物「発現カセット」とは、哺乳動物細胞などの真核生物細胞におけるタンパク質の産生を可能にする発現ベクターの一部分を指す。これには、真核細胞で操作可能なプロモーター、mRNA転写の場合は、関心のあるタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子、及びmRNAの終結及びプロセシングシグナルが含まれる。発現カセットは、コード配列の中でも、選択マーカーとして有用な遺伝子を有用に含み得る。発現カセットにおいて、プロモーターは、関心のある外因性タンパク質をコードするオープンリーディングフレームに5’で操作可能に連結され;ポリアデニル化部位は、オープンリーディングフレームに3’で操作可能に連結される。発現カセットが操作可能である限り、他の適切な制御配列も含まれ得る。オープンリーディングフレームは、場合によっては、関心のある複数のタンパク質に対するコード配列を含み得る。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「コード領域」又は「コード配列」という用語は、構造遺伝子に関して使用される場合、mRNA分子の翻訳の結果として新生ポリペプチドで見られるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を指す。コーディング領域は、真核生物では、開始メチオニンをコードするヌクレオチドトリプレット「ATG」によって5’側で、及び停止コドンを指定する3つのトリプレット(即ちTAA、TAG、TGA)のうち1つによって3’側で境界される。
【0056】
組み換え発現技術は、典型的に、発現カセットを含む組み換え発現ベクターの使用を含む。
【0057】
「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移すために使用される何らかの分子又は実体(例えば核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を意味する。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「発現ベクター」又は「発現コンストラクト」という用語は、特定の宿主細胞における操作可能に連結されるコード配列の発現に必要な所望のコード配列及び適切な核酸制御配列を含有する組み換えDNA分子を指す。発現ベクターは、転写、翻訳に影響を与えるか又はこれらを制御し、イントロンが存在する場合、それに操作可能に連結されるコード領域のRNAスプライシングに影響を与える配列を含み得るが、限定されない。原核生物での発現に必要な核酸配列には、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、リボソーム結合部位及びおそらく他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー及び終結シグナル及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。分泌シグナルペプチド配列はまた、場合によっては、関心のあるコード配列に操作可能に連結される発現ベクターによってコードされ得るので、必要に応じて、細胞からの関心のあるポリペプチドのより容易な単離のため、発現されるポリペプチドが組み換え宿主細胞によって分泌され得るようになる。このような技術は当技術分野で周知である。(例えば、Goodey,Andrew R.;et al.,Peptide and DNA sequences,米国特許第5,302,697号明細書;Weiner et al.,Compositions and methods for protein secretion,米国特許第6,022,952号明細書及び米国特許第6,335,178号明細書;Uemura et al.,Protein expression vector and utilization thereof,米国特許第7,029,909号明細書;Ruben et al.,27 human secreted proteins,米国特許出願公開第2003/0104400A1号明細書)。関心のあるマルチサブユニットタンパク質の発現について、適切な数及び比率で、それぞれが異なるサブユニット単量体のそれぞれに対するコード配列を含有する個別の発現ベクターを使用して、宿主細胞を形質転換し得る。他の実施形態では、単一の発現ベクターを使用して、関心のあるタンパク質の異なるサブユニットを発現させ得る。
【0059】
組み換え発現技術は典型的には、組み換え発現ベクターを含む哺乳動物宿主細胞を含む。
【0060】
「宿主細胞」という用語は、核酸で形質転換されているか、又は形質転換可能であり、それによって関心のある遺伝子又はコード配列を発現する細胞を意味する。この用語には、関心のある遺伝子が存在する限り、子孫が形態又は遺伝的構成において元の親細胞と同一であるか否かに関係なく、親細胞の子孫が含まれる。本発明の実施において、多数の入手可能で周知の宿主細胞の何れかを使用して、アフリベルセプトを得ることができる。特定の宿主の選択は、当技術分野により認識されるいくつかの要因に依存する。これらには、例えば、選択された発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされるペプチドの毒性、形質転換率、ペプチドの回収の容易さ、発現特性、バイオセイフティー及びコストが含まれる。これらの要因のバランスは、全ての宿主が特定のDNA配列の発現に等しく有効であり得るとは限らないという理解と結び付けられなければならない。これらの一般的な指針内で、培養において有用な微生物宿主細胞としては、細菌(エシェリキア・コリ種(Escherichia coli sp.)など)、酵母(サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)など)及び他の真菌細胞、藻類又は藻類様細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物(ヒトを含む)細胞、例えば、CHO細胞及びHEK-293細胞が挙げられる。DNAレベルでも修飾がなされ得る。ペプチドコードDNA配列は、選択した宿主細胞とより適合するコドンに変更し得る。大腸菌(E.coli)については、最適化コドンが当技術分野で公知である。制限部位を排除するために、又はサイレント制限部位を含むようにするために、コドンを置換し得るが、これは、選択した宿主細胞でのDNAのプロセシングに役立ち得る。次に、形質転換された宿主を培養し、精製する。宿主細胞は、所望の化合物が発現されるように、従来の発酵条件下で培養され得る。このような発酵条件は、当技術分野で周知である。
【0061】
有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、CHO-K1細胞(例えばATCC CCL61)、DXB-11、DG-44を含むチャイニーズハムスター卵巣細胞及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚性腎臓株(懸濁培養での増殖用にサブクローン化された293又は293細胞(Graham et al,J.Gen Virol.36:59(1977));新生児ハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎細胞(CVl ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC5細胞又はFS4細胞;又は哺乳動物骨髄腫細胞である。
【0062】
「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」は交換可能に使用されることが多く、本明細書中のこのような名称は全て細胞子孫を含む。例えば、CHO細胞に「由来する」細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞の細胞子孫であり、何れかの数の世代によって元の初代細胞親から除去され得、形質転換子孫細胞も含み得る。形質転換体及び形質転換細胞には、初代対象細胞及び移入の数に関係なくそれらに由来する培養物が含まれる。また、故意又は偶発による突然変異のために、全ての子孫においてDNA含量が正確に同一であり得るわけではないことも理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異子孫が含まれる。
【0063】
宿主細胞は、ポリペプチド(抗体などの抗原結合タンパク質を含む)の産生のために上記の核酸又はベクターで形質転換又は遺伝子移入され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択又は、所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切であるように修飾された従来の栄養培地中で培養される。さらに、選択マーカーによって分離された転写ユニットの複数のコピーを有する新規ベクター及び遺伝子移入細胞株は、抗体などのポリペプチドの発現に特に有用である。
【0064】
「遺伝子移入」という用語は、細胞による外来又は外因性DNAの取り込みを意味し、外因性DNAが細胞膜内部に導入されているとき、細胞は「遺伝子移入」されている。多くの遺伝子移入技術が当技術分野で周知であり、本明細書中で開示される。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52:456;Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 前出;Davis et al.,1986,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier;Chu et al.,1981,Gene 13:197を参照。このような技術を使用して、1つ以上の外因性DNA部分を適切な宿主細胞に導入し得る。
【0065】
「形質転換」という用語は、細胞の遺伝的特徴の変化を指し、細胞が新しいDNA又はRNAを含有するように改変されている場合、細胞は形質転換されている。例えば、細胞は、遺伝子移入、形質導入又は他の技術を介して新しい遺伝物質を導入することにより、その天然の状態から遺伝的に改変されるように形質転換される。遺伝子移入又は形質導入後、形質転換DNAは、物理的に細胞の染色体に組み込むことにより細胞のDNAと再結合され得るか、又は複製されずにエピソームエレメントとして一時的に維持され得るか、又はプラスミドとして独立して複製され得る。形質転換DNAが細胞分裂とともに複製されるとき、細胞は「安定して形質転換されている」と考えられる。
【0066】
本発明において有用なアフリベルセプト融合ポリペプチドを作製するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に適している。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,927,762号明細書;同第4,560,655号明細書;又は同第5,122,469号明細書;国際公開第90103430号パンフレット;国際公開第87/00195号パンフレット;又は米国再発行特許Re.No.30,985号明細書は、宿主細胞のための培養用培地として使用され得る。これらの培地の何れも、必要に応じて、培地中又は培地上での細胞の生理的条件が宿主細胞により関心のあるタンパク質の発現を促進するように、ホルモン及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン又は上皮成長因子など)、塩類(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)薬など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定められる)並びにグルコース又は同等のエネルギー源が補給され得;当業者にとって公知である適切な濃度で、何らかの他の必要な補給物質も含まれ得る。温度(通常、しかし必ずしも必要ではないが、約37℃)、pH(通常、しかし必ずしも必要ではないが約pH6.5~7.5)、酸素添加などの培養条件は、関心のあるタンパク質の発現のために選択された宿主細胞とともに以前使用されたものであり、当業者にとって明らかである。培養用培地は、ウシ胎児血清(FBS)などの適切な量の血清を含み得るか、又は好ましくは、宿主細胞は、無血清培地中での培養に適合させ得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞が液体培地内の細胞懸濁液中で培養されるように、水性培地は液体である。宿主細胞は、バッチ培養又は連続培養系で有用に増殖させ得る。
【0067】
他の実施形態では、細胞が付着し、付着層を形成する培地又は基質表面を形成させるために、例えば寒天又はアガロースを含有する固体又は半固体水性培地上で哺乳動物宿主細胞を培養し得る。
【0068】
宿主細胞を培養すると、組み換えポリペプチドは、細胞内で、ペリプラズム空間で産生され得るか、又は培地に直接分泌され得る。アフリベルセプトなどのポリペプチドが細胞内で産生される場合、最初の段階として、宿主細胞又は溶解断片の何れかである粒子状破片を、例えば遠心分離又は限外ろ過によって除去する。
【0069】
アフリベルセプトなどの関心のあるタンパク質は、例えばヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、陽イオン若しくは陰イオン交換クロマトグラフィー又は好ましくは、関心のある抗原若しくはプロテインA若しくはプロテインGをアフィニティーリガンドとして使用するアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製し得る。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づくポリペプチドを含むタンパク質を精製するために使用され得る(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(Guss et al,EMBO J.5:15671575(1986))。アフィニティーリガンドが付着するマトリクスは殆どの場合アガロースであるが、他のマトリクスも利用可能である。コントロールド・ポア・グラス(controlled pore glass)又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定したマトリクスによって、アガロースで達成され得るものよりも流速を速くし、処理時間を短くすることが可能になる。タンパク質がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)レジン(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。回収しようとする抗体に応じて、エタノール沈殿、逆相HPLC、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE及び硫酸アンモニウム沈殿など、タンパク質精製のための他の手法も可能である。
【0070】
緩衝液及び免疫グロブリン、又は他の結合アッセイ試薬のインキュベーションに関する「生理学的条件下」とは、非共有結合反応などの生化学反応が起こることを可能にする、温度、pH及びイオン強度の条件下でのインキュベーションを意味する。典型的には、温度は室温又は周囲温度で、約37℃以下、pH6.5~7.5である。
【0071】
組成物の「生理学的に許容可能な塩」、例えば関心のあるタンパク質、例えば融合タンパク質若しくは免疫グロブリン、例えば抗体など、又は関心のある何らかの他のタンパク質など、の塩、又はアミノ酸の塩、例えばリジン、ヒスチジン若しくはプロリン塩などであるが限定されないものは、薬学的に許容可能であることが知られているか、又は後に発見される、何らかの(1つ又は複数の)塩を意味する。薬学的に許容可能な塩のいくつかの非限定例は:薬学的に許容可能な塩のいくつかの非限定例は、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩;ハロゲン化水素、例えば塩酸塩(例えば一塩酸塩又は二塩酸塩)及び臭化水素酸塩;硫酸塩;クエン酸塩;マレイン酸塩;酒石酸塩;グリコール酸塩;グルコン酸塩;コハク酸塩;メシル酸塩;ベシル酸塩;ペンタガロイルグルコース(PGG)及び没食子酸エピガロカテキン(EGCG)などの没食子酸エステルの塩(没食子酸は3,4,5トリヒドロキシ安息香酸としても知られる)、硫酸コレステリルの塩、パモ酸塩、タンニン酸塩及びシュウ酸塩である。
【0072】
本発明の眼科用製剤において、リジン塩は、リジン塩が薬学的に許容可能なリジン塩形態である限り、L-リジン形態及び/又はD-リジン形態を含み得る。リジン塩の例としては、(2S)-2,6-ジアミノヘキサン酸;(2R)-2,6-ジアミノヘキサン酸;L-リジン一水和物;L-リジン水和物;(S)-2,6-ジアミノカプロン酸水和物;(2S)-2,6-ビス(アザニル)ヘキサン酸水和物;L-リジン酢酸塩;L-リジン一酢酸塩;2,6-ジアミノヘキサン酸;dl-リジン酢酸塩;L-リジン塩酸塩;L-リジン一塩酸塩;(S)-2,6-ジアミノヘキサン酸塩酸塩;D-リジン塩酸塩;D-リジン一塩酸塩;(D)-2,6-ジアミノヘキサン酸塩酸塩;L-リジン二塩酸塩;2,6-ジアミノヘキサン酸二塩酸塩;L-リジン乳酸塩;L-リジンモノ-(2-ヒドロキシプロパン酸塩);L-リジンモノ(+/-)-2-ヒドロキシプロパン酸塩);L-リジンコハク酸塩;(S)-2,6-ジアミノヘキサン酸(S)-2-アミノペンタン二酸;及びL-リジンL-グルタミン酸塩が挙げられるが限定されない。
【0073】
「反応混合物」は、必要な全ての試薬及び要素を含有する水性混合物であり、これにより、インキュベーションの生理学的条件下で、共有結合又は非共有結合反応など、関心のあるインビトロ生化学反応の発生が可能になる。
【0074】
ポリヌクレオチドの「ドメイン」又は「領域」(本明細書中で交換可能に使用される)は、完全なポリヌクレオチド以下であり、完全なポリヌクレオチドを含むが、典型的には完全なポリヌクレオチドよりも小さいものを含む、ポリヌクレオチド全体の何れかの部分である。ドメインは、ポリヌクレオチド鎖の残りの部分とは独立して折り畳まれ得るが(例:DNAヘアピンフォールディング)、その必要はなく、及び/又は特定の生物学的、生化学的若しくは構造的機能若しくは位置、例えばコード領域若しくは調節領域などと相関し得る。
【0075】
タンパク質の「ドメイン」又は「領域」(本明細書中で交換可能に使用される)は、完全なタンパク質以下であり、完全なタンパク質を含むが、典型的には完全なタンパク質よりも小さい部分を含む、タンパク質全体の何れかの部分である。ドメインは、タンパク質鎖の残りの部分とは独立して折り畳まれ得るが、その必要はなく、及び/又は特定の生物学的、生化学的若しくは構造的機能若しくは位置(例えば、リガンド結合ドメイン又はサイトゾル、膜貫通又は細胞外ドメイン)と相関し得る。
【0076】
アフリベルセプト融合タンパク質の定量は、タンパク質生成の追跡、又はアフリベルセプトを含有する原薬若しくは医薬品のロット放出アッセイに有用又は必要であることが多い。従って、アフリベルセプトに特異的に結合する抗体、特にモノクローナル抗体は、これらの目的に有用であり得る。
【0077】
「抗体」又は交換可能に「Ab」という用語は、最も広い意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、モノクローナル抗体(ヒト、ヒト化又はキメラ抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二特異性抗体)及び、それらが所望の生物学的活性を示す限り、前述のものの相補性決定領域(CDR)を含む、抗原(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディ)に結合し得る抗体断片を含む。インタクトな分子及び/又は化学的に誘導体化された抗体を含む断片の多量体又は凝集体が企図される。IgG、IgM、IgD、IgA及びIgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2又は何らかのアロタイプを含む、何らかのアイソタイプクラス又はサブクラスの抗体が企図される。アイソタイプが異なれば、エフェクター機能が異なり;例えばIgG1及びIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。
【0078】
「単離」タンパク質、例えばアフリベルセプト融合タンパク質は、その天然の環境の、又はそれが産生細胞により分泌された培養用培地の1つ以上の構成要素から同定及び分離されたものである。いくつかの実施形態では、単離タンパク質は、その治療、診断、予防、研究又は他の使用を妨害する、その天然又は培養用培地環境で見られるタンパク質又はポリペプチド又は他の夾雑物質を実質的に含まない。その天然環境又は培地の「夾雑物質」構成要素は、タンパク質、例えば抗体に対する、診断又は治療での使用を妨害する物質であり、これには、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性又は非タンパク質性(例えばポリヌクレオチド、脂質、炭水化物)溶質が含まれ得る。典型的には、「単離タンパク質」は、所与の試料の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%又は少なくとも約50%を構成する。いくつかの実施形態では、関心のあるタンパク質、例えばアフリベルセプト融合タンパク質又は抗体は、(1)95重量%を超えるタンパク質、最も好ましくは99重量%を超えるまで、又は(2)還元若しくは非還元条件下で、SDS-PAGE若しくは他の適切な技術により、場合によっては例えばクーマシーブルー若しくは銀染色剤などの染色剤を使用して、均一とされるまで精製される。タンパク質の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、単離される天然の抗体は、組み換え細胞内のインシトゥの抗体を含む。しかし、典型的には、関心のある単離タンパク質(例えばアフリベルセプト又は抗体)は、少なくとも1つの精製段階により調製される。
【0079】
本明細書中で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る可能性のある天然の突然変異を除いて同一である。抗原結合タンパク質であるモノクローナル抗体は、典型的には異なるエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、個々の抗原部位又はエピトープに対する非常に特異的な結合物質である。モノクローナル抗体の非限定例としては、マウス、ウサギ、ラット、ニワトリ、キメラ、ヒト化若しくはヒト抗体、完全に組み立てられた抗体、多特異性抗体(二特異性抗体を含む)、抗原(Fab、Fab’、F(ab)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディを含む)に結合し得る抗体断片、マキシボディ、ナノボディ及び、それらが所望の生物学的活性を示す限り、前述のもののCDRを含む組み換えペプチド、又はそれらの変異体若しくは誘導体が挙げられる。
【0080】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるような抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、又は組み換えDNA法によって作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリからも単離され得る。
【0081】
「免疫グロブリン」という用語は、それぞれが軽鎖(LC)に共有結合される2本の二量体化重鎖(HC)を含む完全抗体;1本の二量体化されていない免疫グロブリン重鎖及び共有結合された軽鎖(HC+LC)、又はキメラ免疫グロブリン(軽鎖+重鎖)-Fcヘテロ三量体(いわゆる「ヘミボディ」)を包含する。「免疫グロブリン」はタンパク質であるが、必ずしも抗原結合タンパク質ではない。
【0082】
「抗体」において、各四量体はポリペプチド鎖の2つの同一対から構成され、各対は約220アミノ酸(約25kDa)の1本の「軽」鎖及び約440アミノ酸(約50~70kDa)の1本の「重」鎖を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110又はそれ以上のアミノ酸の「可変」(「V」)領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定める。可変領域は抗体によって異なる。定常領域は、異なる抗体間で同じである。各重鎖又は軽鎖の可変領域内には、抗原結合タンパク質である抗体の場合、抗原に対する抗体の特異性を決定するのに役立つ3個の超可変サブ領域がある。超可変領域間の可変ドメイン残基はフレームワーク残基と呼ばれ、一般的に異なる抗体間で幾分相同である。免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てられ得る。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)軽鎖として分類される。軽鎖及び重鎖内で、可変及び定常領域は約12個以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖はさらに約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。全般的には、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照。「抗体」はまた、組み換えにより作製された抗体、及びグリコシル化されているか、又はグリコシル化を欠く抗体も包含する。
【0083】
「軽鎖」又は「免疫グロブリン軽鎖」という用語は、結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有する全長軽鎖及びその断片を含む。全長軽鎖には、可変領域ドメインVL、及び定常領域ドメインCLが含まれる。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖は、カッパ鎖及びラムダ鎖を含む。
【0084】
「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」という用語は、結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有する全長重鎖及びその断片を含む。全長重鎖には、可変領域ドメイン、VH並びに3つの定常領域ドメイン、CH1、CH2及びCH3が含まれる。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシル末端にあり、CH3はポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)に分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして定める。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1及びIgA2サブタイプを含む)、IgM及びIgEを含む、何らかのアイソタイプであり得る。これらのうちいくつかは、サブクラス又はアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分けられ得る。異なるIgGアイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)など、異なるエフェクター機能(Fc領域によって媒介される)を有し得る。ADCCにおいて、抗体のFc領域は、ナチュラルキラー及びマクロファージなどの免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcγR)に結合し、それが標的細胞の食作用又は溶解につながる。CDCにおいて、抗体は細胞表面で補体カスケードを誘発することにより標的細胞を死滅させる。
【0085】
「Fc領域」又は本明細書で交換可能に使用される「Fcドメイン」若しくは「免疫グロブリンFcドメイン」は、完全な抗体において抗体のCH1及びCH2ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合によって、及びCH3ドメインの疎水性相互作用によって結び付けられる。
【0086】
「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を延長させるのに関与するIgG分子(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
【0087】
抗体の構造及び生成の詳細な説明については、その全体において本明細書中で参照により組み込まれるRoth,D.B.,and Craig,N.L.,Cell,94:411-414(1998)を参照。簡潔に述べると、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列をコードするDNAを生成させるための過程は、主に発生中のB細胞で起こる。様々な免疫グロブリン遺伝子セグメントの再配置及び結合の前に、V、D、J及び定常(C)遺伝子セグメントは通常、単一の染色体上で比較的近接して見られる。B細胞分化中、V、D、J(又は軽鎖遺伝子の場合はV及びJのみ)遺伝子セグメントの適切なファミリーメンバーのそれぞれの1つが再結合され、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子の機能的に再配置された可変領域を形成する。この遺伝子セグメントの再配置過程は連続的であると思われる。最初に、重鎖DとJとの連結が起こり、続いて重鎖VとDJとの連結及び軽鎖VとJとの連結が起こる。V、D及びJセグメントの再配置に加えて、軽鎖のV及びJセグメントが連結され、重鎖のD及びJセグメントが連結される位置での可変性の組み換えによって、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の主なレパートリーにおいてさらなる多様性が生じる。軽鎖におけるこのような変動は、典型的には、V遺伝子セグメントの最後のコドン及びJセグメントの最初のコドン内で起こる。連結における同様の不正確さは、DセグメントとJHセグメントとの間の重鎖染色体で起こり、10ヌクレオチドにも及び得る。さらに、ゲノムDNAによってコードされないDとJHとの間、及びVHとD遺伝子セグメントとの間にいくつかのヌクレオチドが挿入され得る。これらのヌクレオチドの付加は、N領域多様性として知られる。可変領域遺伝子セグメントにおけるこのような再配置及びこのような連結中に起こり得る可変的な組み換えの正味の効果は、一次抗体レパートリーの生成である。
【0088】
「超可変」領域という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、相補性決定領域又はCDRからのアミノ酸残基[即ち、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載のような、軽鎖可変ドメインの残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)及び重鎖可変ドメインの31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)]を含む。単一のCDRでも抗原を認識し、結合し得るが、CDR全てを含有する抗原結合部位全体よりも親和性は低くなる。
【0089】
超可変「ループ」からの残基の代替定義は、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)により、軽鎖可変ドメインの残基26~32(L1)、50~52(L2)及び91~96(L3)及び重鎖可変ドメインの26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3)として記載される。
【0090】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、超可変領域残基以外の可変領域残基である。
【0091】
「抗体断片」は、インタクトな全長抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;直線抗体(Zapata et al.,Protein Eng.,8(10):1057-1062(1995));単鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。
【0092】
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が生じ、それぞれに1つの抗原結合部位があり、定常領域を含有する残りの「Fc」断片がある。Fab断片は、可変ドメインの全て、並びに軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fc断片は糖を表示し、抗体のあるクラスを別のクラスと区別する多くの抗体エフェクター機能(補体及び細胞受容体の結合など)に関与する。
【0093】
ペプシン処理により、抗体のVH及びVLドメインを含む2つの「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片を有するF(ab’)2断片が生じ、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖に存在する。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1個以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかのさらなる残基を含むことによってFab’断片とは異なっている。好ましくは、Fvポリペプチドは、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.1 13,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照。
【0094】
「Fab断片」は、1本の軽鎖並びに1本の重鎖のCH1及び可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成し得ない。
【0095】
「Fab’断片」は、1本の軽鎖及び、VHドメイン及びCH1ドメインを含有する1本の重鎖の一部及びまたCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域も含有し、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’断片の2本の重鎖間に形成され、F(ab’)2分子を形成し得るようになる。
【0096】
「F(ab’)2断片」は、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部を含有する2本の軽鎖及び2本の重鎖を含有し、鎖間ジスルフィド結合が2本の重鎖間に形成されるようになる。従って、F(ab’)2断片は、2本の重鎖間のジスルフィド結合によって結び付けられる2個のFab’断片から構成される。
【0097】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、緊密な非共有結合の、1個の重鎖可変ドメイン及び1個の軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この立体配置では、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH VL二量体の表面に抗原結合部位を定める。1個の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3個のCDRのみを含むFvの半分)は、結合部位全体よりも親和性は低いものの、抗原を認識し、結合する能力を有する。
【0098】
「単鎖抗体」は、重鎖及び軽鎖可変領域がフレキシブルリンカーによって接続されて、抗原結合領域を形成する単鎖ポリペプチドを形成するFv分子である。単鎖抗体は、国際公開88/01649号パンフレット及び米国特許第4,946,778号明細書及び同第5,260,203号明細書で詳述されており、これらの開示は、それらの全体において参照により組み込まれる。
【0099】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖に存在し、場合によっては、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVHとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを含む(Bird et al.,Science 242:423-426,1988及びHuston et al.,Proc.Nati.Acad.Sci.USA 85:5879-5883,1988)。「Fd」断片は、VH及びCH1ドメインからなる。
【0100】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VH VL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続される重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2個のドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインが別の鎖の相補的なドメインと対形成させられ、2個の抗原結合部位が生じる。ダイアボディは、例えば欧州特許第404,097号明細書;国際公開第93/11161号明細書;及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)でより詳細に記載される。
【0101】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含有する免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。一部の例において、2個以上のVH領域がペプチドリンカーと共有結合され、二価ドメイン抗体を作製する。二価ドメイン抗体の2個のVH領域は、同じ又は異なる抗原を標的とし得る。
【0102】
「抗原結合タンパク質」(ABP)という用語には、本明細書中で定義されるようなアフリベルセプト又は抗体若しくは抗体断片、及び関心のある標的抗原に特異的に結合するような所望の抗原結合特性を有するCDRに由来する配列を含有する組み換えペプチド又は他の化合物が含まれる。
【0103】
一般に、抗原結合タンパク質、例えばアフリベルセプト又は抗体若しくは抗体断片は、同様の結合アッセイ条件下で、他の無関係のタンパク質に対するその親和性と比較して、それがその抗原に対して顕著により高い結合親和性を有し、結果的に区別可能であるとき、関心のある抗原に「特異的に結合」する。典型的には、抗原結合タンパク質は、解離定数(KD)が10-8M以下である場合、その標的抗原に「特異的に結合する」と言われる。抗原結合タンパク質は、KDが10-9M以下の場合は「高親和性」で、KDが10-10M以下の場合は「非常に高親和性」で抗原に特異的に結合する。
【0104】
「抗原結合領域」又は「抗原結合部位」は、特定の抗原に特異的に結合するタンパク質の一部を意味する。例えば、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質においてその抗原に対するその特異性及び親和性を付与するアミノ酸残基を含有する抗原結合タンパク質の一部は、「抗原結合領域」と呼ばれる。抗原結合領域は、典型的には、1個以上の「相補的結合領域」(「CDR」)を含む。特定の抗原結合領域はまた、1個以上の「フレームワーク」領域(「FR」)も含む。「CDR」は、抗原結合特異性及び親和性に寄与するアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域は、CDRの適切なコンフォメーションを維持して、抗原結合領域と抗原との間の結合を促進するのに役立ち得る。従来の抗体において、CDRは重鎖及び軽鎖可変領域のフレームワーク内に埋め込まれ、ここでそれらは抗原結合及び認識に関与する領域を構成する。免疫グロブリン抗原結合タンパク質の可変領域は、フレームワーク領域(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.によりフレームワーク領域1-4,FR1、FR2、FR3及びFR4と呼ばれる;Chothia and Lesk,1987,前出も参照)内で、少なくとも3個の重鎖又は軽鎖CDRを含む。前出を参照(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;またChothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883も参照)。
【0105】
「抗原」という用語は、抗原結合タンパク質(例えばアフリベルセプト、又は抗体若しくは抗体の免疫学的に機能的な断片を含む)などの選択的結合剤によって結合可能であり、さらに、その抗原に結合可能な抗体を産生させるために動物において使用可能である、分子又は分子の一部を指す。抗原は、異なる抗原結合タンパク質、例えば抗体、と相互作用可能である1つ以上のエピトープを保持し得る。
【0106】
「エピトープ」という用語は、抗原結合タンパク質(例えばアフリベルセプト又は抗体)によって結合される分子の一部分である。この用語は、抗体又はT細胞受容体などの抗原結合タンパク質に特異的に結合可能な何らかの決定基を含む。エピトープは近接していてもよいし、又は近接していなくてもよい(例えば単鎖ポリペプチドにおいて、ポリペプチド配列中で互いに近接していないが、分子の状況内で抗原結合タンパク質によって結合されるアミノ酸残基)。特定の実施形態では、エピトープは、それらが、抗原結合タンパク質を生成するために使用されるエピトープと同様の三次元構造を含み、また抗原結合タンパク質を生成するために使用されるそのエピトープで見られるアミノ酸残基を全く含まないか又はその一部のみを含む。殆どの場合、エピトープはタンパク質上に存在するが、一部の例においては、核酸などの他の種類の分子上に存在し得る。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面分類を含み得、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。一般に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複雑な混合物中の標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0107】
「同一性」という用語は、配列のアライメントを行い、比較することによって決定されるような、2つ以上のポリペプチド分子又は2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「パーセント同一性」は、比較される分子中のアミノ酸又はヌクレオチド間の同一残基のパーセントを意味し、比較される分子の最小のもののサイズに基づいて計算される。これらの計算の場合、アライメント中のギャップ(存在する場合)は、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(即ち「アルゴリズム」)により対処しなければならない。アライメントを行った核酸又はポリペプチドの同一性を計算するために使用し得る方法としては、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,ed.),1988,New York:Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press;von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press;Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press;及びCarillo et al.,1988,SIAM J.Applied Math.48:1073に記載されるものが挙げられる。例えば、配列同一性は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位置の類似性を比較するために一般的に使用される標準的な方法によって決定され得る。BLAST又はFASTAなどのコンピュータプログラムを使用して、それらの個々の残基の最適マッチングのために2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチド配列のアライメントを行う(一方若しくは両方の配列の全長に沿って、又は一方若しくは両方の配列の所定の部分に沿って、の何れか)。プログラムは、初期設定の開始ペナルティ及び初期設定のギャップペナルティを提供し、PAM250などのスコア行列[標準的なスコア行列:Dayhoff et al.,in Atlas of Protein Sequence and Structure,vol.5,supp.3(1978)を参照]をコンピュータプログラムと組み合わせて使用し得る。例えば、次にパーセント同一性を次のように計算し得る:完全な一致の総数に100を掛け、次に一致したスパン内のより長い配列の長さ及び2つの配列のアライメントを行うためにより長い配列に導入されたギャップの数の合計により除する。パーセント同一性の計算において、比較される配列は、配列間で最大の一致が得られるようにアライメントを行う。
【0108】
GCGプログラムパッケージは、パーセント同一性を決定するために使用し得るコンピュータプログラムであり、このパッケージは、GAP(Devereux et al.,1984,Nucl.Acid Res.12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)を含む。コンピュータアルゴリズムGAPは、パーセント配列同一性を決定しようとする2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチドのアライメントを行うために使用される。配列に対して、それらの個々のアミノ酸又はヌクレオチドの最適マッチングのためにアライメントを行う(アルゴリズムによって決定されるような「一致したスパン」)。ギャップオープニングペナルティ(平均対角線の3倍として計算され、「平均対角線」は、使用されている比較マトリクスの対角線の平均であり;「対角線」は、特定の比較行列により各完全なアミノ酸の一致に割り当てられるスコア又は数値である)及びギャップ伸長ペナルティ(通常はギャップオープニングペナルティの1/10倍)、並びにPAM250又はBLOSUM62などの比較行列は、アルゴリズムと組み合わせて使用される。特定の実施形態では、標準的な比較行列(PAM250比較行列については、Dayhoff et al.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352;BLOSUM62比較行列についてはHenikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915-10919を参照)もアルゴリズムにより使用される。
【0109】
GAPプログラムを使用してポリペプチド又はヌクレオチド配列に対するパーセント同一性を決定するための推奨パラメータとしては、次のものが挙げられる:
【0110】
アルゴリズム:Needleman et al.,1970,J.Mol.Biol.48:443-453;
【0111】
比較行列:Henikoff et al.,1992、前出からのBLOSUM62;
【0112】
ギャップペナルティ:12(ただし末端ギャップに対するペナルティなし)
【0113】
ギャップ長ペナルティ:4
【0114】
類似性のしきい値:0
【0115】
2つのアミノ酸配列のアライメントを行うための特定のアラインメントスキームの結果、2つの配列の短い領域のみが一致し得、2つの全長配列間に有意な関係がなくても、この小さなアライメント領域は非常に高い配列同一性を有し得る。従って、標的ポリペプチドの少なくとも50個の連続したアミノ酸にわたるアライメントをもたらすことが望まれる場合、選択されるアライメント方法(GAPプログラム)を調整し得る。
【0116】
関心のあるタンパク質に関連して使用される場合、「修飾」という用語は、1つ以上のアミノ酸変化(置換、挿入又は欠失を含む);化学修飾;治療薬又は診断薬への結合による共有結合修飾;標識(例えば、放射性核種又は様々な酵素による);PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合、及び非天然アミノ酸の化学合成による挿入又は置換を含むが限定されない。当業者にとって公知の方法により、タンパク質は、「改変された」タンパク質のコード配列が発現カセットに含まれる前に、標的親和性、選択性、安定性及び/又は製造性の改善のために「改変される」か又は修飾され得る。
【0117】
アフリベルセプト又は抗体などの関心のあるタンパク質に関連して使用される場合、「誘導体」という用語は、治療薬又は診断薬への結合;標識(例えば放射性核種又は様々な酵素による);PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合及び非天然アミノ酸の化学合成による挿入又は置換により共有結合修飾されるタンパク質を指す。
【0118】
本発明の範囲内で、アフリベルセプトタンパク質は、ヒトの疾患又は障害、例えば眼の疾患又は障害を含むが限定されない疾患の処置のための治療用タンパク質又は「生物製剤」であり得る。「処置」又は「処置すること」は、障害の発症を予防するか、又は病状を変化させることを意図して行われる介入である。従って、「処置」とは、治療的処置及び予防手段又は予防的手段の両方を指す。処置を必要とする者は、既に障害がある者並びに障害を予防しようとする者を含む。「処置」は、症状の減退;緩和;軽減又は傷害、病態若しくは状態を患者にとってより許容できるものにすること;変性又は衰微の速度の低下;変性の最終点をより衰弱が軽度なものにすること;患者の肉体的又は精神的な健康を改善することなどの何らかの客観的又は主観的パラメータを含む、傷害、病態又は状態の改善の成功のあらゆる徴候(1つ又は複数)を含む。症状の処置又は改善は、客観的又は主観的パラメータに基づき得;これには、医師、例えば眼科医若しくは他の医療提供者による身体検査の結果又は患者による自己報告が含まれる。
【0119】
治療薬の「有効量」は一般に、症状の重症度及び/若しくは頻度を軽減し、症状及び/若しくは根底にある原因を排除し、症状の発生及び/若しくはそれらの根底にある原因を予防し、並びに/又は眼の障害若しくは疾患に起因するか若しくはそれに関連する損傷を改善若しくは修復するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、治療的有効量又は予防的有効量である。「治療的有効量」は、病状(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)後の黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、血管新生(滲出型)加齢性黄斑変性症(AMD)、近視性脈絡膜新生血管による視力障害、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、DME患者の糖尿病性網膜症(DR)及び血管新生加齢性黄斑変性症(AMD)、移植拒絶若しくはGVHD、炎症、多発性硬化症、癌、心血管疾患、糖尿病、ニューロパチー、疼痛)若しくは症状、特に病状に関連する状態若しくは症状、あるいは病状の進行を治療するか、又は、如何なるものであれ疾患に関連する何らかの他の望ましくない症状を予防、阻止、遅延若しくは逆転させる(即ち「治療効果」を提供する)のに十分な量である。「予防的有効量」は、対象に投与したときに意図される予防的効果を有する医薬組成物の量である。完全な治療又は予防効果は、1回の投与により必ずしも起こるわけではなく、一連の投与後にのみ起こり得る。従って、治療的又は予防的有効量は、1回以上の投与で投与され得る。
【0120】
DNAのクローニング
【0121】
DNAのクローニングは、標準的な技術を使用して実行される(例えば、参照により本明細書中に組み込まれるSambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1-3,Cold Spring Harbor Pressを参照)。例えば、cDNAライブラリは、ポリA+mRNA、好ましくは膜型mRNAの逆転写によって構築され得、ライブラリは、ヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に特異的なプローブを使用してスクリーニングされ得る。しかし、一実施形態では、関心のある免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば軽鎖又は重鎖可変セグメント)をコードするcDNA(又は全長cDNAの一部)を増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する。増幅配列は、何らかの適切なベクター、例えば発現ベクター、ミニ遺伝子ベクター又はファージディスプレイベクターに容易にクローニングされ得る。使用する特定のクローニング方法は、例えば、アフリベルセプト融合ポリペプチド配列の関心のあるポリペプチドのある部分の配列を決定することが可能である限り、重要ではないことが理解される。
【0122】
抗体核酸に対する1つの供給源は、関心のある抗原で免疫付与される動物からB細胞を得て、それを不死細胞に融合させることによって作製されるハイブリドーマである。あるいは、核酸は、免疫付与動物のB細胞(又は脾臓全体)から単離され得る。抗体をコードする核酸のさらに別の供給源は、例えば、ファージディスプレイ技術を通じて作製されるこのような核酸のライブラリである。関心のあるペプチド、例えば、所望の結合特性を有する可変領域のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、パンニングなどの標準的技術によって同定し得る。
【0123】
DNAのシーケンシングは、標準的な技術を使用して実行される(例えば、参照により本明細書中に組み込まれる、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1-3,Cold Spring Harbor Press及びSanger,F.et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463-5467を参照)。クローニングされた核酸の配列を公表されている遺伝子及びcDNAの配列と比較することにより、当業者は、シーケンシングした領域に応じて、容易に決定可能である。遺伝子配列情報の1つの情報源は、National Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine,National Institutes of Health,Bethesda,MDである。
【0124】
単離DNAを制御配列に操作可能に連結させ得るか、又は発現ベクターに入れ得、次に免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞に遺伝子移入して、組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体を合成させる。抗体の組み換え産生は当技術分野で周知である。
【0125】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、操作可能に連結されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するタンパク質前駆体として発現される場合、ポリペプチドに対するDNAに操作可能に連結されているか;プロモーター若しくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に操作可能に連結されているか;又は、リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置される場合、コード配列に操作可能に連結されている。一般に、操作可能に連結されるとは、連結されているDNA配列が隣接し、分泌リーダーの場合は隣接しており、リーディングフェーズ(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって完遂される。このような部位が存在しない場合、従来の慣行に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを使用する。
【0126】
多くのベクターが当技術分野で公知である。ベクターの構成要素には、以下のもの:シグナル配列(例えば発現されるタンパク質の直接分泌などであり得る);複製起点、1つ以上の選択マーカー遺伝子(例えば抗生物質若しくは他の薬物耐性を付与し得るか、薬剤耐性、栄養要求性欠乏を補完し得るか、又は培地中で利用可能ではない重要な栄養素を供給し得る)、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列のうち1つ以上が含まれ得、これらは全て当技術分野で周知である。
【0127】
水及び他の成分の純度 本発明の眼科用製剤を作製するために使用される水及び全ての他の成分は、好ましくは、対象の管轄区域におけるこのような医薬組成物及び医薬品に必要とされる適用可能な法的又は薬局方の基準、例えば、米国薬局方(USP)、ヨーロッパ薬局方、日本薬局方又は中国薬局方などを満たす純度レベルである。例えば、USPによれば、注射用水は、製品のエンドトキシン含有量を制御しなければならない非経口製剤及び他の製剤の製造において、並びにある一定の装置及び非経口製品に接触する構成要素の洗浄など、他の製薬用途において、賦形剤として使用され;注射用水の生成のための原水又は給水の最低限の品質は、U.S.Environmental Protection Agency(EPA)、EU、日本又はWHOにより定められるような飲料水である。
【0128】
患者に投与する前に、本発明の製剤は、無菌性、エンドトキシン又はウイルス汚染物質の欠如などに関して、対象の管轄区域におけるこのような医薬組成物及び医薬品に必要とされる適用可能な法的又は薬局方の基準を満たすべきである。
【0129】
緩衝系
【0130】
本発明の眼科用製剤は、約5~50mMの濃度の範囲の緩衝液を含む。本発明の眼科用製剤に対する適した緩衝系は、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グルタミン酸、及び乳酸から選択し得るか、又は緩衝液はこれらの緩衝系の2つ以上の組み合わせであり得る。本発明のいくつかの有用な実施形態は、約5mM~約20mMの範囲の緩衝液濃度を有し、他の実施形態は、約5~約10mMの緩衝液濃度を有する。ヒスチジン緩衝液が選択される場合、約5~20mMの範囲のヒスチジン濃度が好ましい。
【0131】
非イオン性界面活性剤
【0132】
本発明の眼科用製剤は、非イオン性界面活性剤を、好ましくは約0.001%(w/v)~約5.0%(w/v)の濃度で含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤の濃度は、約0.001%(w/v)~約2.0%(w/v)又は約0.001%(w/v)~約1.0%(w/v)又は約0.001%(w/v)~約0.10%(w/v)又は約0.001%(w/v)~約0.01%(w/v)である。有用な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(例えばポリソルベート20又はポリソルベート80)、Brij(登録商標)35(即ちポリエチレングリコールドデシルエーテル)、ポロキサマー(即ちポリエチレン-ポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリ(エチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド))、例えばポロキサマー188(即ちPluronic F68)又はTriton(商標)X-100(即ち4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール))であり得る。また、アルキルサッカライド又はアルキルグリコシド(例えばAegis Therapeutics,LLCによりProTek(登録商標)の商品名で販売;例えばMaggio,Stabilizing Alkylglycoside Compositions And Methods Thereof、米国特許第8,133,863B2号明細書を参照)も本発明を実施する目的のための「非イオン性界面活性剤」内に包含される。例えば、ポロキサマー(例えばポロキサマー188)は、典型的には、約0.01%(w/v)~約1%(w/v)、好ましくは約0.1%(w/v)~約1%(w/v)の濃度で有用である。ポリソルベート(例えばポリソルベート20又はポリソルベート80)は、典型的には、約0.001%(w/v)~約0.1%(w/v)の濃度で有用である。
【0133】
等張化剤
【0134】
本発明の眼科用製剤は、その製剤が約300mOsm/kg(即ち300±50mOsm/kg)の最終浸透圧を有するように等張化剤を含む。浸透圧は、水の単位あたりの溶解粒子数の目安である。溶液中で、水(溶媒)の単位数に比例して溶質の粒子数が少ないほど、溶液の濃度が低くなり、低浸透圧になる。半透膜(溶媒分子に対してのみ透過性である膜)を使用して、異なる溶質濃度の溶液を分離する場合、浸透として知られる現象が起こり、溶媒分子が低濃度から高濃度へと膜を通過して濃度平衡を確立する。この運動を推進する圧力は浸透圧と呼ばれ、溶液中の溶質の「粒子」数によって支配される。同じ濃度の粒子を含有し、従って等しい浸透圧を示す溶液は、等浸透圧と呼ばれる。例えば、赤血球(rbc)内の浸透圧は、周囲の溶液に等しいため、rbcは収縮も膨張もしない。rbcを水に入れると、水だけが低浸透性になるためrbcは破裂する。rbcが高塩濃度の溶液、即ち0.9%(w/v)を超える塩化ナトリウムに入れられると、溶液が高浸透圧であるため、rbcは収縮する。両例とも、rbcが損傷を受ける。眼の内部など、あらゆる生体細胞で同じことが起こる。低浸透圧又は高浸透圧溶液が眼上に置かれると、損傷が引き起こされ、従って眼に対して使用される薬物のための等浸透圧溶液が必然的に求められる。実際には、塩化ナトリウムの0.9%溶液は等浸透圧であり、濃度は270~300mOsm/kgである。全ての溶液をこの標準と比較し、250~350mOsm/kgの拡大範囲内にある場合、等浸透圧と見なされる。タンパク質を安定化するために使用される賦形剤は、等浸透圧溶液を生じさせるための濃度で添加される。例えば、スクロース及びトレハロースなどの二糖類は9.25%の濃度で等浸透圧であり、グルコース及びマンノースなどの単糖類は5%の濃度で等浸透圧であり、プロリン又はリジン(又はその塩)などのアミノ酸はおよそ2~3%の濃度で等浸透圧である。浸透圧は、理論的に又は実験的に、の何れかで決定され得る。理論計算は、次の方程式に従って決定され得る:
浸透圧=(g化合物/100mL溶液)*(化合物のE値)
化合物のE値は次の方程式により決定される:
E値=(MW NaCl/i-値 NaCl)*(i-値化合物/MW化合物)
i値は、80%の理論的解離に基づく、化合物からのイオン数である。解離しない化合物、即ちスクロースの場合、i値は1である。2つのイオンに解離する化合物、即ちNaClの場合、i値は1.8であり、3つのイオンに解離する化合物の場合、i値は2.6である。浸透圧は溶液の束一的特性であるので、溶質の添加による凝固点の低下又は蒸気圧の低下は、液体中の溶質分子の総数に直接関係する。これらの原理のそれぞれは、浸透圧を測定する有用な機器を開発するために、当技術分野で活用されてきた。どちらか一方又は両方のタイプの機器を生体試料に使用し得る。例として、10mMリン酸ナトリウム、40mM NaCl、5%スクロース及び0.03%w/vポリソルベート20を含む溶液の理論浸透圧は、263mOsm/kgである。発明者らの研究室において、凝固点降下により測定した場合、実際の測定値は270mOsm/kgであった。これは、実験値が理論値とほぼ一致していることを示しており、さらに、本発明を実施する目的で、その浸透圧に基づいて溶液が硝子体内注射に適しているか否かを判断するために理論値又は実験値の何れかを使用し得る。
【0135】
本発明の眼科用製剤において、等張化剤は、リジンの薬学的に許容可能な塩である。典型的には、リジン塩等張化剤の濃度は、緩衝液濃度及び他の製剤賦形剤に応じて、2~4%(w/v)の範囲であり、いくつかの好ましい実施形態では、リジン塩は約2%(w/v)~約3%(w/v)である。
【0136】
さらなる安定化剤
【0137】
本発明の眼科用製剤のいくつかの実施形態では、本製剤は、さらなるアミノ酸安定化剤も含有し得る。さらなるアミノ酸安定化剤は、例えばプロリン、アルギニン、グリシン、リジン又はメチオニンであり得る。アミノ酸は、そのアミノ酸が薬学的に許容可能である、及び薬学的に許容可能な形態、例えば、薬学的に許容可能な塩の形態である限り、L-アミノ酸若しくはD-アミノ酸又は塩の形態であり得る。(例えば、Falconer et al.,Stabilization of a monoclonal antibody during purification and formulation by addition of basic amino acid excipients,J Chem Technol Biotechnol(2011)86:942-948;Platts et al.,Control of Globular Protein Thermal Stability in Aqueous Formulations by the Positively Charged Amino Acid Excipients,Journal of Pharmaceutical Sciences 105(2016)3532-3536;Wang,W.,Instability,stabilization,and formulation of liquid protein pharmaceuticals,International Journal of Pharmaceutics 185(1999)129-188;Yin et al.,Effects of Antioxidants on the Hydrogen Peroxide-Mediated Oxidation of Methionine Residues in Granulocyte Colony-Stimulating Factor and Human Parathyroid Hormone Fragment 13-34,Pharmaceutical Research(2004)21(12):2377-2383;Lam et al.,Antioxidants for Prevention of Methionine Oxidation in Recombinant Monoclonal Antibody HER2,Journal of Pharmaceutical Sciences 86(11):1250-1255(1997);Levine et al.,Methionine Residues as Endogenous Antioxidants in Proteins,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)93(26):15036-15040(1996);Maeder et al.,Local tolerance and stability up to 24 months of a new 20% proline-stabilized polyclonal immunoglobulin for subcutaneous administration,Biologicals 39:43-49(2011);Cramer et al.,Stability over 36 months of a new liquid 10% polyclonal immunoglobulin product(IgPro10,Privigen(著作権))stabilized with L-proline,Vox Sanguinis(2009)96,219-225;Bolli et al.,L-Proline reduces IgG dimer content and enhances the stability of intravenous immunoglobulin(IVIG)solutions,Biologicals 38(2010)150-157;Truong,Combination of D-Amino Acids and Lipoteichoic Acid,欧州特許第2545909A1号明細書;Stroppolo et al.,Pharmaceutical compositions containing the salts of S(+)-2-(4-isobutylphenyl)propionic acid with basic aminoacids,米国特許第5510385号明細書を参照)。さらなるアミノ酸安定化剤の濃度は、約0.01~3%(w/v)が有用である。しかし、メチオニンは、低濃度、即ち10mM以下で活性酸素種のスカベンジャーとして使用され得る。
【0138】
本発明の代表的製剤
【0139】
本発明の代表的な眼科用製剤としては、緩衝液がリン酸緩衝液であるものが挙げられる。このような一実施形態では、(a)アフリベルセプト濃度は20~80mg/mLであり;(b)リン酸緩衝液濃度は約10mMであり;(c)非イオン性界面活性剤は、約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート又は約0.01%(w/v)~約1%(w/v)の濃度のポロキサマーであり;(d)等張化剤は、約2%(w/v)~約3%(w/v)の濃度のリジン塩であり;この製剤のpHは約pH6.0~約pH6.5である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、約30mg/mL~約50mg/mLのアフリベルセプト濃度;例えば約40mg/mLの濃度である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、約0.1%(w/v)~約1%(w/v)の濃度のポロキサマー(例えばポロキサマー188)である。
【0140】
本発明の代表的な眼科用製剤としては、緩衝液が5~20mMの濃度のヒスチジン緩衝液であるものも挙げられる。このような一実施形態では、(a)アフリベルセプト濃度は20~80mg/mLであり;(b)ヒスチジン緩衝液濃度は約10mMであり;(c)非イオン性界面活性剤は、約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート又は約0.01%(w/v)~約1%(w/v)の濃度のポロキサマーであり;(d)等張化剤は、約2%(w/v)~約3%(w/v)の濃度のリジン塩であり;この製剤のpHは約pH5.5~約pH6.5であるか、又はいくつかの実施形態では、約pH6.0~約pH6.5である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、約30mg/mL~約50mg/mLのアフリベルセプト濃度;例えば約40mg/mLの濃度である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、約0.1%(w/v)~約1%(w/v)の濃度のポロキサマー(例えばポロキサマー188)である。
【0141】
本発明のまた他の代表的な眼科用製剤としては、緩衝液が酢酸緩衝液であるものが挙げられる。このような一実施形態では、(a)アフリベルセプト濃度は20~80mg/mLであり;(b)酢酸緩衝液は約10mMであり;(c)非イオン性界面活性剤は、約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート又は約0.01%(w/v)~約1%(w/v)の濃度のポロキサマーであり;(d)等張化剤は、約2%(w/v)~約3%(w/v)の濃度のリジン塩であり;この製剤のpHは約pH5.0~約pH5.5である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、約30mg/mL~約50mg/mLのアフリベルセプト濃度;例えば約40mg/mLの濃度である。この製剤のいくつかの好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、約0.1%(w/v)~約1%(w/v)の濃度のポロキサマー(例えばポロキサマー188)である。
【0142】
さらなる例として、以下の番号を付した実施形態が本発明に包含される。
【0143】
実施形態1:
(a)5~100mg/mLの濃度のアフリベルセプト;
(b)5~50mM濃度の緩衝液;
(c)非イオン性界面活性剤;
(d)等張化剤としてのリジン塩
を含み、最終浸透圧が約300mOsm/kgであり;製剤のpHが約pH5.0~約pH6.5である、眼科用製剤。
【0144】
実施形態2:緩衝液がリン酸緩衝液である、実施形態1の眼科用製剤。
【0145】
実施形態3:緩衝液が酢酸緩衝液である、実施形態1の眼科用製剤。
【0146】
実施形態4:緩衝液が5~20mMの濃度のヒスチジン緩衝液である、実施形態1の眼科用製剤。
【0147】
実施形態5:緩衝液が、リン酸、ヒスチジン、酢酸、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸及び乳酸から選択される、又はこれらのうち2つ以上の組み合わせである、実施形態1~4の眼科用製剤。
【0148】
実施形態6:緩衝液濃度が5~20mMである、実施形態1~5の眼科用製剤。
【0149】
実施形態7:非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(即ちBrij(登録商標)35)、ポロキサマー(例えばポロキサマー188)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール(即ちTriton(商標)X-100)、アルキルサッカライド及びアルキルグリコシドからなる群から選択される、実施形態1~6の眼科用製剤。
【0150】
実施形態8:さらなるアミノ酸安定化剤をさらに含む、実施形態1~7の眼科用製剤。
【0151】
実施形態9:さらなるアミノ酸安定化剤が、プロリン、アルギニン、グリシン、リジン及びメチオニンからなる群から選択される、実施形態8の眼科用製剤。
【0152】
実施形態10:実施形態1~2及び実施形態5~9の眼科用製剤:
【0153】
(a)アフリベルセプト濃度が、20~80mg/mLであり;
【0154】
(b)リン酸緩衝液濃度が約10mMであり、
【0155】
(c)非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート又はポロキサマーであり、
【0156】
(d)等張化剤としてのリジン塩が、約2~3%(w/v)の濃度であり;
【0157】
この眼科用製剤のpHが、約pH6.0~約pH6.5である。
【0158】
実施形態11:非イオン性界面活性剤がポロキサマー188である、実施形態1~10の眼科用製剤。
【0159】
実施形態12:実施形態1、3及び5~9の眼科用製剤:
【0160】
(a)アフリベルセプト濃度が、20~80mg/mLであり;
【0161】
(b)酢酸緩衝液濃度が約10mMであり、
【0162】
(c)非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート又はポロキサマーであり、
【0163】
(d)等張化剤としてのリジン塩が、約2~3%(w/v)の濃度であり;
【0164】
この眼科用製剤のpHが、約pH5.0~約pH5.5である。
【0165】
実施形態13:非イオン性界面活性剤がポロキサマー188である、実施形態1~12の眼科用製剤。
【0166】
実施形態14:実施形態1、4及び5~9の眼科用製剤:
【0167】
(a)アフリベルセプト濃度が、20~80mg/mLであり;
【0168】
(b)ヒスチジン緩衝液が約10mMであり;
【0169】
(c)非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート又はポロキサマーであり;
【0170】
(d)等張化剤としてのリジン塩が、約2~3%(w/v)の濃度であり;
【0171】
この製剤のpHが、約pH5.5~約pH6.5である。
【0172】
実施形態15:非イオン性界面活性剤がポロキサマー188である、実施形態1~14の眼科用製剤。
【0173】
実施形態16:眼の障害又は疾患の処置のための実施形態1~15の製剤の何れかの使用。
【0174】
実施形態17:眼の障害又は疾患が、網膜静脈閉塞症(RVO)後の黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、血管新生(滲出型)加齢性黄斑変性症(AMD)、近視性脈絡膜新生血管による視力障害、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、DME患者の糖尿病性網膜症(DR)及び血管新生加齢性黄斑変性症(AMD)から選択される、実施形態16の使用。
【0175】
実施形態18:実施形態16~17の使用であって、この眼科用製剤が、硝子体内注射によって眼の障害又は疾患を有する患者に投与されるもの。
【0176】
以下の例は例示であり、本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【0177】
例
例1.安定性試験
【0178】
材料.VEGF特異的なアフリベルセプト融合タンパク質アンタゴニストは、業界標準の組み換え発現技術及び精製工程を使用して作製した。精製された原薬はついては、Millipore Corporationによる実験室規模又はベンチ規模の接線流ろ過システムの何れかを使用して、指定の製剤緩衝液に対して緩衝液交換を行った。タンパク質濃度は、製剤緩衝液で希釈することにより最終目標濃度に調整した。全ての製剤の作製に使用した水は、イオン交換カートリッジを含むMilli-Q(登録商標)(Millipore Corporation)水浄化システムによって浄化した。水の純度は導電率を測定することにより監視し、18.2MΩcm-1(25A℃)を超える値であれば許容可能とした。製剤緩衝液の調製に使用される全ての賦形剤、緩衝液及び他の成分は、USPグレード又は同等のものであった。
【0179】
方法.
【0180】
滴定:等モルで調製された酸及び塩基の複合物を適切なモル比で一緒にブレンドして、リン酸緩衝液系に対する所望の製剤pHを達成した。コンジュゲート法を使用するか、Milli-Q(登録商標)精製水に氷酢酸を添加した後、所望の最終pHに到達させるための水酸化ナトリウム滴定によって、酢酸塩製剤を調製した。
【0181】
外観:タンパク質粒子又は環境夾雑物質について医薬品を評価するために、品質外観検査を実施した。事前に滅菌した1型ガラスバイアルにタンパク質試料のアリコート(1.1mL)を入れ、13mmの蓋を被せた。周囲の光条件下で、試料を穏やかに回旋させ、5秒間目視検査して、可視粒子を検出した。試験した全ての試料について、検出された粒子の数及び説明を記録した。
【0182】
色.製品安定中、医薬品の色を監視するために、品質的な視覚的色評価を実施した。Ricca Chemicalsからの市販のEP2.2.2黄褐色標準物質(BY1~BY7)を、事前に滅菌した1型ガラスバイアルに等分した。医薬品のアリコート(1.1mL)をバイアルに入れ、等体積の各黄褐色標準物質と比較して、着色レベルを判定した。全ての試料を白色背景の前で検査し、各試料に対して着色レベルを記録した。
【0183】
リデュースト・ボリューム光遮蔽サブビジブル粒子分析(Reduced Volume Light Obscuration Sub-Visible Particle Analysis)HRLD-150センサーを備えたHIACカウンター(Beckman Corporation)を使用して、光遮蔽によってサブビジブル粒子を測定した。1~100μmの範囲のポリスチレンビーズを使用してセンサーを較正した。分析前に、明瞭なベースラインが達成され、15μmポリスチレンビーズの標準溶液を使用してシステムの適合性を確認するまで、Milli-Q(登録商標)水をこのシステムに流した。反復試料をガラスバイアル中で最終体積1.1mLまでプールし、75Torrで2時間真空脱気した。各試料について、0.2mLの5つのアリコートを引き抜き、10及び25μmより大きい粒子を測定するように機器を設定した。最後の3つの測定の平均を報告した。
【0184】
サイズ排除クロマトグラフィー サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)分析は、Waters XBridge Protein BEH SEC 200Aカラムを使用して実施した。分離は、リン酸塩、塩化ナトリウムランニング緩衝液を使用してネイティブの条件下で達成した。ピーク溶出は、UV吸光度によって検出し、インテグレーテッドピュリティー(integrated purity)の結果は、補正した総面積に対する、高分子量(HMW)成分、主成分(単量体)及び低分子量(LMW)成分の相対ピーク面積パーセンテージとして報告した。
【0185】
CZE塩化物イオン分析 塩化物イオン分析は、Beckman PA 800キャピラリー電気泳動装置で実行されるMicrosolv Technologies CElixirOA pH 5.4キットを使用して実施する。試料及び標準物質は、製造者の指示に従って調製する。典型的には、注入は、50.2cmの有効長のベア(bare)フューズドキャピラリー上への10秒間にわたる1psiの圧力による。試料は、フォトダイオードアレイ検出器(PDA)によって監視する。通常、0.2mM~2mM塩化物の標準曲線の回帰分析を使用して、各試料中の塩化物陰イオンの濃度を定量する。
【0186】
効力評価 アフリベルセプトの効力は、細胞に基づくVEGF-A165依存性増殖アッセイで評価した。様々な濃度の医薬品及び100ng/mLのVEGF-A165を含み、成長因子非存在下で、96ウェルプレートにヒト臍帯静脈内皮細胞を播種した。アッセイプレートを37℃、5%COでおよそ3日間インキュベーションした後、蛍光生存判定試薬を添加した。蛍光に対する医薬品濃度のグラフを作成し、次いで4パラメータフィット式でフィッティングすることにより、用量反応曲線を作成した。相対効力は、試験試料と参照標準物質との間のx軸に沿ったシフトを評価することによって測定した。
【0187】
質量分析に基づくマルチアトリビュートメソッド(Multi-attribute Method)(MAM)安定試料を6.8Mグアニジンで変性させ、10mMジチオスレイトール(DTT)で還元し、20mMヨード酢酸でアルキル化した。サイズ排除に基づく脱塩カラムにより、過剰な試薬を除去した。1:10の酵素と基質との比でトリプシンを添加し、試料を37℃で30分間消化した。生じたペプチドは、C18カラム上のギ酸/アセトニトリル(FA/ACN)勾配を使用したRP-HPLCにより分離し、Thermo Fisher Q-Exactive質量分析計を使用した質量分析検出により監視した。Genedata’s Expressionistソフトウェアを使用して、個々のペプチドの同定及び定量を行った。
【0188】
浸透圧測定 試料の浸透圧は、Advanced Instruments,Inc.の凝固点浸透圧計を使用して測定した。試料分析前に、290mOsm/kgのClinitrol(商標)290 Reference Solution(Fisher Scientific)を使用して、機器の較正を確認した。試料からの20μLのアリコートサブ試料を試料チューブに移し、凝固点分析のために機器に入れた。これらのサブ試料を3つ組で分析し、報告した結果はこれらの値の平均であった。
【0189】
例2.安定性試験
【0190】
本発明の製剤の様々な実施形態におけるアフリベルセプト安定性の試験を実施した。表1は、試験したアフリベルセプト(40mg/mL)製剤及びその略称のリストを含有する。使用したアミノ酸はL-異性体配置であった。
【0191】
【0192】
製剤の浸透圧.アフリベルセプト製剤の浸透圧は、凝固点浸透圧計によって測定した。全ての浸透圧の結果は許容範囲内であった(表2を参照)。
【0193】
【0194】
アフリベルセプトの安定性.様々な生産規模で、3つの異なるロットにおいて組み換え産生されたアフリベルセプトを使用して、2つの製剤を評価した。3つの異なる規模で作製されたアフリベルセプトは、全ロットにわたり同様のグリコシル化レベルを含む同様の製品特性を示した。10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩及び0.1%(w/v)ポロキサマー188(即ちP62LysPl-0.1)製剤を、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース及び0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2(即ちP62NaSuT)で製剤化されたアフリベルセプトと比較した。SE-HPLCを使用して、4℃及び30℃でのアフリベルセプトのHMW形成速度を調べた。4℃の保管条件は、アフリベルセプトを保管するための標準的な「現実の」条件を表すが、一方で30℃の条件は標準の保管条件ではなく、好都合である、短縮された、又は「加速された」試験期間において長期保管を模倣するための方法として選択した。表3及び表4で示されるように、アフリベルセプトのHMW形成速度にはロット間で僅かな違いが明らかになったが、全てのケースで、10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩及び0.1%(w/v)ポロキサマー188(即ちP62LysPl-0.1)製剤は、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース及び0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2(即ちP62NaSuT)中で製剤化したアフリベルセプトと比較した場合、HMW形成速度がより低かった。サブビジブル粒子の形成も、リデュースト・ボリューム光遮蔽サブビジブル粒子分析(reduced volume light obscuration sub-visible particle analysis)を使用して調べた。4℃での保管期間中、サブビジブル粒子の形成は、何れの製剤でもアフリベルセプトについて有意に変化しなかった(表5)。
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
異なる界面活性剤を含むリジン製剤におけるアフリベルセプトの安定性.SE-HPLCを使用して、2つの界面活性剤、ポロキサマー188又はポリソルベート80(それぞれ表6及び表7)の何れかの存在下でリジン塩を含有する本発明の製剤におけるアフリベルセプトの安定性を調べた。それぞれがポリソルベート80又はポロキサマー188の何れかとともに製剤化された場合、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2と比較したとき、アフリベルセプトが10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、pH6.2中で製剤化された場合は、高分子量(HMW)種の形成が僅かに減少した。HMW種の形成は、これらのリン酸緩衝液に基づく製剤に対するどちらの界面活性剤の存在によっても影響を受けなかった。それぞれがポリソルベート80又はポロキサマー188の何れかとともに製剤化された場合、10mM酢酸、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、pH5.2中のアフリベルセプトは、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2製剤中のアフリベルセプトの場合と比較して、より高いHMW形成速度を示した。
【0199】
【0200】
【0201】
模擬出荷後のアフリベルセプトの安定性及び界面活性剤濃度の影響.模擬出荷後、10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、pH6.2製剤(即ちP62Lys)中で様々な界面活性剤及び界面活性剤濃度でアフリベルセプトの安定性の特徴を調べた。模擬出荷プロトコールは、製品に損傷を与え、安定性プロファイルに影響を与える可能性があり得る複数の輸送方式を考慮して設計した。SE-HPLC(表8及び
図2で示す)により測定した場合、10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、pH6.2製剤中、4℃で保管されたアフリベルセプトのHMW形成速度は、界面活性剤のタイプ又は存在する界面活性剤の濃度には依存せず、10mMリン酸塩、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2製剤(即ちP62NaSuT)中のアフリベルセプトに対して観察されたものよりも低かった。さらに、30℃でのHMW形成速度は4℃での場合よりも速かった一方で、安定性の序列は変化せず、10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、pH6.2が最も安定であった(表9及び
図1参照)。模擬出荷後、リデュースト・ボリューム光遮蔽サブビジブル粒子分析(reduced volume light obscuration sub-visible particle analysis)によって測定されたサブビジブル粒子の数は、全製剤にわたって同程度まで増加した(表10を参照;0週間対照と0週間とについてカラムを比較)。しかし、サブビジブル粒子の数は、製剤に依存しないと思われた。4℃で全製剤にわたり、色は不変のままであり、色標準物BY5とBY6との間の結果は52週の時点までであった。目視外観検査時、全製剤において、基本的に目に見える微粒子は含まれなかった。製剤のサブセット及び保管温度について、13週及び52週の時点で製品の効力を評価した(表11参照)。どの非イオン性界面活性剤が存在したかにかかわらず、10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、pH6.2製剤と10mMリン酸塩、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、pH6.2製剤との間で%相対効力の差は検出されなかった。これらの結果は、リン酸リジン塩等張化製剤がタンパク質を安定化させ、機能的活性を維持したことを示す。
【0202】
質量分析に基づくマルチアトリビュートメソッド(Multi-attribute Method)(MAM).アスパラギン酸残基の異性化、アスパラギンの脱アミド化及びメチオニンの酸化などの特質に対する翻訳後修飾レベルの変化を評価するために、MAM分析を行った。-70℃の対照試料と比較して、3つの製剤からの試料を4℃、30℃及び40℃で3か月保管した後に評価した。この分析において、10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、pH6.2製剤、0.1%(w/v)ポロキサマー188、pH6.2及び10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、0.03%(w/v)ポリソルベート80、pH6.2をアフリベルセプト市販製剤10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2と比較した。
【0203】
-70℃対照試料と比較した場合、4℃試料の何れでも翻訳後修飾の有意な増加は検出されなかった。メチオニン酸化、アスパラギン脱アミド化及びアスパラギン酸異性化レベルの検出可能な変化が高温条件に対して観察されたが、そのレベルは、試験した3つの製剤間で同様であり、測定技術の誤差の範囲内であった。これらの結果から、本発明の製剤、10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、0.1%(w/v)ポロキサマー188、pH6.2及び10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン一塩酸塩、0.03%(w/v)ポリソルベート80、pH6.2は、高温で保管した場合、市販の製剤10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2と同様の、一般的な分解経路からの保護を提供することが示される。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
市販品を入手したEylea(登録商標)との、本発明のリジン塩等張化製剤中の組み換え産生アフリベルセプトの比較.10mMリン酸塩、2.75%(w/v)リジン、pH6.2、0.1%(w/v)ポロキサマー製剤中の30℃でのアフリベルセプトの安定性を、Eylea(登録商標)(アフリベルセプト;Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY)の場合と比較した。アフリベルセプトは、これらの研究のためにJust Biotherapeutics(Seattle,WA)によって組み換え産生され、記載の製剤中で製剤化した(表12参照)。Eylea(登録商標)は欧州の市場から購入し、独自の容器中で安定性を保った。指定の時点で試料をバイアルから取り出し、SE-HPLCにより測定して、存在するHMW種の量の特徴を調べた。データは、Just Biotherapeuticsによって組み換え産生され、指定の配合で製剤化されたアフリベルセプトでは、Eylea(登録商標)医薬品中のアフリベルセプトの場合と比較して、%HMWがより低く、経時的にはHMW種の形成速度が同様であったことを示す。
【0209】
【0210】
例3.ウサギにおける硝子体内投与によるプラセボ製剤の忍容性試験
【0211】
アフリベルセプト医薬品との使用を目的とする本発明の製剤のいくつかの実施形態の忍容性を判定するために、表13で示すように、Charles River Laboratories,Inc.,640N.Elizabeth Street,Spencerville,OH 45887,United States of Americaで、プラセボ製剤の硝子体内注射をウサギへの単回投与として投与した。
【0212】
【0213】
以下のパラメータ及びエンドポイントを研究デザインに従って評価した:臨床徴候、体重、体重増加、摂餌量及び眼科学。
【0214】
本研究における対象ウサギの中で、早期死亡、処置関連の臨床徴候はなく、体重、体重増加、摂餌量への影響も、眼科的所見もなかった。結論として、硝子体内注射による全てのプラセボ製剤の投与は、ウサギでは十分に忍容された。
【配列表フリーテキスト】
【0215】
配列表1 <223>人工配列の記載:合成ポリペプチド
【配列表】