(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】2つの冗長な駆動装置を持つステアリングシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20221128BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2020531079
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 FR2018053127
(87)【国際公開番号】W WO2019115914
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カサール ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】コルレ ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ダラーラ ジョヴァンニ
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109555(JP,A)
【文献】国際公開第2017/060042(WO,A1)
【文献】特開2004-182039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04, 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求されたアシスト力の合計(30)に対応する供給される2つのアシスト力の合計を得るために、該アシスト力を車両のステアリング(2)に供給する電動駆動装置をそれぞれ含む並行に配置された2つのチャンネル(12)を備えてなる、自動車のステアリングシステムの制御方法であって、
第1のチャンネルは、前記要求されたアシスト力の合計(30)における第1の部分を供給し、
第2のチャンネルは、実際に供給された力の推定又は測定された前記第1の部分(32)と前記要求された力の合計(30)との差分に対応するアシスト力の可変追加部分を供給する
ことを特徴とする、自動車のステアリングシステムの制御方法。
【請求項2】
前記要求された力の合計(30)における前記第1の部分は、該要求された力の合計(30)の百分率に対応することを特徴とする請求項1に記載のステアリングシステムの制御方法。
【請求項3】
前記要求された力の合計(30)における前記第1の部分は、該要求された力の合計(30)の全体に対応することを特徴とする請求項2に記載のステアリングシステムの制御方法。
【請求項4】
前記要求された力の合計(30)における前記第1の部分を供給する前記第1のチャンネルの機能は、前記2つのチャンネル(12)の間で定期的に入れ替わることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のステアリングシステムの制御方法。
【請求項5】
前記力の部分を計算するために、前記車両の電気ネットワークの状況を推定又は測定する機能(40)から生じ
る第1のパラメータが用いられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のステアリングシステムの制御方法。
【請求項6】
前記力の部分を計算するために、前記ステアリングの操縦を支援するべく前記車両又は外部ソースから生じる方向指示を確立する機能(42)によって供給される第2のパラメータが用いられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のステアリングシステムの制御方法。
【請求項7】
前記力の部分を計算するために、前記車両の動的状況を測
定する機能(44)によって供給される第3のパラメータが用いられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載のステアリングシステムの制御方法。
【請求項8】
前記力の部分を計算するために、前記車両自身がおかれた環境下において当該車両を検
出する機能(46)によって供給される第4のパラメータが用いられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載のステアリングシステムの制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載のステアリングシステムの制御方法を実装する手段を備えることを特徴とするステアリングシステム。
【請求項10】
車両のステアリング(2)にトルクをそれぞれ供給する2つの電気モータを備えることを特徴とする請求項9に記載のステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングシステムの制御方法、及びそのような制御方法を実装する手段を備えるステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、一般に、車輪を旋回させるのに必要な力の一部を提供するために車両のステアリングにトルクを供給する駆動装置(motorization)を含むステアリングシステムを備える。このトルクは、ドライバーによってステアリングホイールに供給されドライバー意図センサによって測定されるトルクに、依存する。
【0003】
しかも、自動車メーカは、現在、自動運転機能を開発している。自動運転機能は、車両の自動駐車機能、渋滞での運転機能、前方の車両の追跡機能、あるいは状況に応じて完全自動運転機能のように、多かれ少なかれ自動的に特定の運転モードを実行することを可能にしている。これらの様々な機能は、これらの駆動装置によって車輪を旋回させるステアリングシステムが関与する。
【0004】
それゆえ、ステアリングシステムの運用上の安全は、手動運転の補助及び自動運転機能の両方のために、重要である。
【0005】
このため、アシストトルクをステアリングに個別に供給することが可能な独自の電源を持つ電気モータをそれぞれ含む並行に配置された2つの駆動装置をステアリングシステムに導入することが知られている。
【0006】
特に、完全な冗長性は、並行に配置された2つの同等で自律的なチャンネル(経路)を含むことで、達成される。各チャンネルは、電源を持つ駆動装置、ドライバーの意図を測定するセンサ、並びに、車両からの信号の受信、システム制御及び駆動装置制御といった様々な機能を、含んでいる。
【0007】
通常の運転モードでこれら2つのアシストチャンネルを制御するための公知の方法は、これら2つのチャンネルに対して同じステアリングからの駆動力の供給を保証する。これにより、2つの駆動装置の動作を完全に等しくすることを可能にする。
【0008】
一方のチャンネルの部分的又は全体的な故障の場合、駆動装置、電源、センサ又はその他の機能といった、そのチャンネルの全ての要素から生じた可能性があり、他方のチャンネルは、低下した運転モードにおいて、少なくとも部分的に必要な駆動力を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この種の動作は、制御信号の時間及び振幅の制御を含む2つの駆動装置の同期の完全な制御が必要であるので、2つのチャンネルに同じ駆動力を供給するための第1の問題を提起する。
【0010】
2つの駆動装置から供給されるパワーが不均衡又は非同期である場合、これらの駆動装置の効率の損失及び不安定がもたらされる。これにより、アシストシステムのパフォーマンスが低下する。これらの損失を補償するために設置電力の増加が必要であり、追加コストが発生する。
【0011】
運転の快適性に影響を与える駆動装置からの振動の発生及びドライバーによるステアリングの迅速な作動の場合に有害であるドライバーの要求に対する応答時間の短縮を得ることもまた起こり得る。
【0012】
第2に提起される問題は、2つのチャンネルに電力を供給する2つの電源から供給される電力を等しくすることである。確かに、車両は、2つの個別の電力供給ネットワークを備えることが可能である。各動作条件は、可変であり、2つのチャンネルの電力供給に影響を与えて異なる電力を供給する。この違いは、一方のチャンネルの動作によって他方のチャンネルに混乱を引き起こし、それらの同期及び動作の一様性に影響を与える可能性がある。
【0013】
このような問題は、全ての条件下で同じ電力の供給を保証するために、コストの発生する2つの供給ネットワークの適用を必要とする。加えて、第2のチャンネルの電力は、第1のチャンネルが一様性を維持するためにその容量が制限される場合、削減する必要がある。これは、アシストシステムによって供給される電力の全体的な損失を表す。
【0014】
第1及び第2の問題は、一方では同期を保証するために2つのチャンネルの間の物理的接続の制約を生じ、他方では独自の電力供給ネットワークを制御する制約を生じる。
【0015】
これら2つの制約は、実際に互いに独立した2つのチャンネルの能力を強く制限する。十分な性能を保証するための2つのチャンネルの間のより強い接続は、一方のチャンネルから他方のチャンネルへのエラーの伝搬を容易にし、これらの診断の確立を複雑にする。
【0016】
一方のチャンネルが故障を検出した場合、サービス停止して、他方のチャンネルをバックアップチャンネルとして維持する必要がある。2つのチャンネルが強く接続されている場合、システム全体に欠陥が伝搬する前に、故障の迅速な診断を行うことが難しくなる。次に、追加の診断を実行して、2つのチャンネルの間の接続が故障の要因でないことを確認する必要がある。これが表示される場合、あるチャンネルから別のチャンネルに切り替える決定は、難しい。
【0017】
本発明の目的は、特に、先行技術におけるこれらの欠点を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的を達成するために、要求されたアシスト力の合計(アシスト力の全要求量)に対応する供給される2つのアシスト力の合計を得るために、上記アシスト力を車両のステアリングに供給する電動駆動装置をそれぞれ含む並行に配置された2つのチャンネルを備える自動車のステアリングシステムを制御する方法を提案する。この方法では、第1のチャンネルは、上記要求されたアシスト力の合計における第1の部分を供給し、第2のチャンネルは、実際に供給された力の推定又は測定された上記第1の部分と上記要求された力の合計との差分に対応するアシスト力の可変追加部分を供給することを特徴とする。
【0019】
第1のチャンネルは、要求されたアシスト力の合計における第1の部分を供給する。第2のチャンネルは、要求されたアシスト力の合計に到達するように、実際に供給された力の推定又は測定に基いて、アシスト力の可変追加部分を供給する。
【0020】
この制御方法の利点は、シンプル且つ効果的な方法で、駆動装置を同期させずに、第1のチャンネルによって実際に供給された力の第1の部分が評価されることである。この第1の部分は、要求された力の合計のかなりの部分となる可能性がある。この第1の部分を要求された力の合計とリアルタイムで比較することによって、第2のチャンネルが供給する必要のある追加部分を推測する。2つのチャンネルの制御は、同時ではなく連続している。
【0021】
このようにして、力の第1の部分をもはや供給できない又は不完全に供給してしまうような第1のチャンネルの故障の場合、第2のチャンネルによって供給される追加部分は、第1のチャンネルの故障の関数として、その後自動的に増加して、要求された力の合計を取得可能とする追加部分を必然的に供給する。
【0022】
本発明による制御方法は、以下の特徴の1つ以上をさらに含むことができ、互いに組み合わせることができる。
【0023】
好適には、上記要求された力の合計における上記第1の部分は、上記要求された力の合計の百分率(パーセンテージ)に対応する。
【0024】
特に、上記要求された力の合計における上記第1の部分は、上記要求された力の合計の全体に対応してもよい。この方法では、第1の部分の計算がシンプルになる。
【0025】
好適には、この方法は、上記要求された力の合計における上記第1の部分を供給する上記第1のチャンネルの機能が、2つのチャンネルの間で定期的に入れ替わる。したがって、よりバランスのとれた方法によって、2つのチャンネルに動作が分散される。
【0026】
好適には、この方法は、上記力の部分を計算するために、上記車両の電気ネットワークの状況を推定又は測定する機能から生じ、特に上記ネットワークによって供給可能な電圧、強度又は電力を含む第1のパラメータが用いられる。
【0027】
好適には、この方法は、上記力の部分を計算するために、上記ステアリングの操縦を支援するべく上記車両又は外部ソースから生じる方向指示を確立する機能によって供給される第2のパラメータが用いられる。
【0028】
好適には、この方法は、上記力の部分を計算するために、上記車両の動的状況を測定、特に車両のスピード、横方向、縦方向若しくは垂直方向の加速度又はドリフトアングルを測定する機能によって供給される第3のパラメータが用いられる。
【0029】
好適には、この方法は、上記力の部分を計算するために、上記車両自身がおかれた環境下において当該車両を検出、特に全地球測位システムによるジオロケーション、又は地図上での位置を確立する機能によって供給される第4のパラメータが用いられる。
【0030】
本発明はまた、上述の特徴のいずれか1つを含むステアリングシステムの制御方法を実装する手段を備えるステアリングシステムに関する。
【0031】
特に、上記ステアリングシステムは、車両のステアリングにトルクをそれぞれ供給する2つの電動駆動装置を備えてもよい。
【0032】
添付の図面を参照しながら、例として与えられた以下の説明を読むことにって、本発明は、より理解され、他の特徴及び利点がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明による制御方法を実装する自動車のステアリングの図である。
【
図2】
図2は、制御方法のオペレーションを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、車両に横向きに配置されたラックを含むステアリングギアボックス2を示す。その各端部は、旋回して車両の操舵を保証するために、リンク4によって前輪ハブ6に接続されている。
【0035】
ステアリングギアボックス2に接続され、ドライバーによって操縦されるステアリングホイール8に設けられたステアリングコラムは、ドライバーがこのコラムに供給する力のセンサを含み、ドライバーの意図を測定する装置10を構成する。
【0036】
電源及び制御手段を含むチャンネルをそれぞれ形成する2つの電動駆動装置12は、手動操縦(手動運転)に際してアシスト(支援)を提供たり、車両の自動操縦(自動運転)に際して自動操舵を提供したりするために、ドライバーによってステアリングホイール8に供給される力の合計を加えることを目的として、ステアリングギアボックス2に個別にトルクを供給する。
【0037】
電動駆動装置12は、トルクを供給する以下に示す電気モータ、又は変形例として、回転若しくは平行移動の形でステアリングギアボックス2にトルク若しくは力を供給する任意のその他の電磁的手段を、それぞれ含むことができる。以下、駆動装置12の作用を、単に、トルク又は力と呼ぶ。
【0038】
制御コンピュータ16は、特に外部14から受けた様々なパラメータの関数として、各モータのトルク設定を確立するために、駆動装置12及びこれらの電源と同様に、ドライバー意図センサ10に接続されている。
【0039】
図2は、ドライバーの意図を測定する装置10を示す。この装置10は、ドライバーによってステアリングコラムに供給される力のセンサを含み、各電気モータ12によって実際に供給されるアシスト力を測定する機能20に、情報を送る。供給されるアシスト力は、特に各駆動装置12から実際に供給されるトルクである場合がある。当該実際に供給されるトルクは、これら2つの駆動装置12を含む駆動装置のグループ22から受ける情報を形成する。
【0040】
供給されるアシスト力を測定する機能20は、要求されたアシスト力の合計を計算する機能24に、情報を送る。機能24は、送られる情報の全部又は一部に基いて計算を実行する。
【0041】
要求されたアシスト力の合計を計算する機能24は、2つの駆動装置12で構成された冗長要素を制御する機能26に、第1の信号30を形成する要求されたアシスト力の合計を、送る。機能26は、駆動装置のグループ22に含まれた各駆動装置12を対象としたアシスト力の目標(値)を、それら各々に個別のトルク設定値信号D1,D2を送ることによって、計算する。
【0042】
変型例として、駆動装置のグループ22は、安全レベルを高めるために、2つより多い冗長な駆動装置12を、含むことができる。
【0043】
各駆動装置12の制御システムは、対象とする個別のトルク設定値信号D1,D2を受け、このモータの電力供給を制御して、この設定値に対応するモータトルクを供給する。
【0044】
そして、各駆動装置12は、個別の設定値D1,D2に対応するトルクを供給するために、電気モータの容量を推定又は測定する機能28に、情報を送る。推定又は測定機能28は、推定又は測定を提供し、代わりに、冗長要素の制御機能26への第2の信号32を形成する。
【0045】
このようにして、冗長要素を制御する機能26は、アシスト力の目標を計算する機能24によって確立された、要求されたアシスト力の合計30を処理するとともに、その要求されたトルクを供給するために、各駆動装置12の容量を表す第2の信号32の推定又は測定を考慮して、各駆動装置12から要求される個別の設定値信号を調整する。
【0046】
特に、冗長要素を制御する機能26は、状態の進行による各駆動装置12の動作特性をリアルタイムで考慮し、要求されたアシスト力の合計30に対応する供給されるトルクの合計を得るために、2つの駆動装置12の間における個別のトルク設定値D1,D2を分配する。
【0047】
冗長要素の制御機能26は、設定値D1,D2を計算するために、いくつかの外部パラメータ14を受ける。外部パラメータ14は、車両の電気ネットワークの状況を推定又は測定する機能40から生じる第1のパラメータを含む。第1のパラメータは、特にこのネットワークを介して供給可能な電圧、強度及び電力を含む。
【0048】
このようにして、冗長要素を制御する機能26は、各駆動装置12に電力を供給する可能性をリアルタイムで知っており、供給ネットワークに不均衡がある場合、供給可能なトルクに対応する個別のトルク設定値D1,D2を確立する。この電力は、これらの駆動装置12ごとに異なることがある。
【0049】
ステアリングの操縦を支援するために車両又は外部ソースから生じる方向指示を確立する機能42は、冗長要素を制御する機能26に第2のパラメータを供給する。
【0050】
車両の動的状況を測定する機能44は、例えば車両のスピード、横方向、縦方向若しくは垂直方向の加速度、又はドリフトアングルを測定し、冗長要素を制御する機能26に第3のパラメータを供給する。
【0051】
車両自身がおかれた環境下において当該車両を検出する機能46は、例えば全地球測位システム(GPS)によるジオロケーション、又は地図上での位置を確立し、冗長要素を制御する機能26に第4のパラメータを供給する。
【0052】
本発明による制御方法の動作は、以下の通りである。先ず、第1の駆動装置12によって形成された第1のチャンネルは、受けた個別のトルク設定値D1に従って、要求されたアシスト力の合計30における第1の部分を供給する。この第1の部分は、例えば要求されたアシスト力の合計30の予め定めた(所定の)百分率としてもよい。特に、この第1の部分は、要求されたアシスト力の合計30の大部分を構成してもよい。
【0053】
次に、要求されたトルクを供給するために、第1のチャンネルの容量を含む第2の信号32を考慮して、第2のチャンネルの個別のトルク設定値D2が確立される。第2のチャンネルは、実際に供給されたアシスト力の第1の部分と要求されたアシスト力の合計30との差分に対応するアシスト力の追加部分を供給する必要がある。
【0054】
2つの駆動装置12は、互いに補完し合う方法で動作するので、それらの間であらゆる同期を必要としない不均一な力の要求を実行する必要がある。
【0055】
このようにして、第1のチャンネルによって供給されるトルクのあらゆる変動は、個別のトルク設定値D1に関連しており、例えば、電気モータ、センサ、電子回路を含む駆動装置の故障から又は電源の故障から生じる。トルクが不十分又はゼロであると、このトルクの変動は、ステアリングシステムによって要求された力の合計30に到達するために必要な差分を供給する第2のチャンネルによって、自動的に補正される。
【0056】
同様に、個別のトルク設定値D2に関して第2のチャンネルによってもたらされる任意の故障は、要求された力の合計30を補償して取得するべく第1のチャンネルの個別の設定値D1を修正するために、第2の信号32によって冗長要素を制御する機能26に示される。
【0057】
同じ力が要求されない2つのチャンネルの間の同期がないので、これら2つのチャンネルの間の一般的な故障モードが大幅に減少し、それらの間で欠陥が何ら伝搬しないので、本方法の安全性が向上する。同様に、各チャンネルで個別に動作する外部パラメータ14からの信号は、2つのチャンネルの一般的な故障を回避する。
【0058】
一般に、この方法は、一方の駆動装置だけ又は一方が他方を補完する方法で2つの駆動装置を共に動作することによって、運用することができる。単一の駆動装置が動作する場合、その個別のトルク設定値D1,D2は、要求された力の合計30に等しくなり、2番目の駆動装置は、低い又はゼロの設定値に常時制御されたままである。2番目の駆動装置は、1番目の駆動装置によって供給されるトルクが不十分な場合に自動的に検出されるアシスト力の可変追加部分を即座に供給する準備ができるようにする。
【0059】
この場合、有利なことに、これら2つの駆動装置を同様に使用して動作摩耗を均等化するように、例えば車両の始動後に、可能な範囲内で要求されたアシスト力における第1の部分を実行する一方と、第1の部分を補償又は完了するために待機したままの他方と、を含んだ駆動装置の役割を、定期的に逆転させることが可能である。
【0060】
2つの駆動装置の補完的な動作は、例えば迅速な操縦の場合、ドライバーが期待する大きなパワーを供給するために、利用することができる。駆動装置の制御の欠陥は、例えば知覚可能な小さな振動を与えるが、運転の頻度が低い場合、車両の快適性に影響を与えない。