(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】無線通信モジュール、無線端末、車両、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/3827 20150101AFI20221128BHJP
H04M 1/72457 20210101ALI20221128BHJP
H04W 48/04 20090101ALI20221128BHJP
H04W 48/10 20090101ALI20221128BHJP
H04W 8/18 20090101ALI20221128BHJP
【FI】
H04B1/3827
H04M1/72457
H04W48/04
H04W48/10
H04W8/18
(21)【出願番号】P 2020538388
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032349
(87)【国際公開番号】W WO2020040107
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018157159
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】秦 光孝
(72)【発明者】
【氏名】金井 康明
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199295(WO,A1)
【文献】特開2009-253565(JP,A)
【文献】特開2004-179826(JP,A)
【文献】特開2003-284156(JP,A)
【文献】特開2009-115662(JP,A)
【文献】特開2000-253431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3827
H04M 1/72457
H04W 48/04
H04W 48/10
H04W 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信モジュールであって、
無線通信を行う無線通信部と、
前記無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部と、
第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、当該無線通信モジュールが前記第1の国とは異なる第2の国に位置する場合、前記無線通信部の送信動作及び受信動作を停止する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記無線通信部の送信動作を停止した後、当該無線通信モジュールが前記第1の国に位置する場合、前記無線通信部の送信動作を再開
し、
前記設定情報は、発信成功メッセージの受信を待つべき最大の時間を定義するタイマの設定値を含み、
前記制御部は、前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記タイマの設定値を、前記第2の国の法律において規定された技術基準を満たすタイマの設定値に変更する無線通信モジュール。
【請求項2】
前記無線通信部は、国コードを含む無線信号を基地局から受信し、
前記制御部は、前記無線通信部が受信した前記無線信号に含まれる前記国コードに基づいて、当該無線通信モジュールが前記第2の国に位置するか否かを判定する、請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項3】
前記制御部は、緯度及び経度を含む測位データを取得し、前記測位データに基づいて、当該無線通信モジュールが前記第2の国に位置するか否かを判定する、請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項4】
移動体と電気的に接続するためのインターフェイスをさらに備え、
当該無線通信モジュールは、前記インターフェイスにより前記移動体と電気的に接続される、請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項5】
無線端末であって、
無線通信を行う無線通信部と、
前記無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部と、
第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、当該無線端末が前記第1の国とは異なる第2の国に位置する場合、少なくとも前記無線通信部の送信動作を停止する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記無線通信部の送信動作を停止した後、当該無線端末が前記第1の国に位置する場合、前記無線通信部の送信動作を再開
し、
前記設定情報は、発信成功メッセージの受信を待つべき最大の時間を定義するタイマの設定値を含み、
前記制御部は、前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記タイマの設定値を、前記第2の国の法律において規定された技術基準を満たすタイマの設定値に変更する無線端末。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信モジュールを搭載した車両。
【請求項7】
無線通信を行う無線通信部と、前記無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部と、を備えた無線通信モジュールを制御するための制御方法であって、
第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、当該無線通信モジュールが前記第1の国とは異なる第2の国に位置する場合、前記無線通信部の送信動作及び受信動作を停止することと、
前記無線通信部の送信動作を停止した後、当該無線通信モジュールが前記第1の国に位置する場合、前記無線通信部の送信動作を再開する
ことと、を有し、
前記設定情報は、発信成功メッセージの受信を待つべき最大の時間を定義するタイマの設定値を含み、
前記制御方法は、前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記タイマの設定値を、前記第2の国の法律において規定された技術基準を満たすタイマの設定値に変更することを更に有する、制御方法。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記タイマの設定値を、前記第2の国の法律において規定された技術基準を満たすタイマの設定値に変更した場合、当該無線通信モジュールが前記第2の国に位置する場合であっても、前記無線通信部の送信動作及び受信動作を停止しない制御をする、請求項1に記載の無線通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信モジュール、無線端末、車両、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される無線通信モジュール等の端末機器は、その使用がされる国の法律により定められた技術基準を満たすことが必要とされている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、日本国において端末機器が満たすべき技術基準が定められている。かかる技術基準を満たすことが認証試験により認められ、認証が取得されていなければ、端末機器を日本国内において使用することができない。
【0004】
但し、所定の例外条件に該当する場合、具体的には、端末機器を「海外から日本国に持ち込んだ者」が日本国内で使用する場合や国際ローミングサービスにより日本国内で使用する場合には、かかる技術基準を満たすことは必要とされない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「端末設備等規則」、総務省、[平成30年8月17日検索]、インターネット<URL: http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/tanmatu/horei.html>
【発明の概要】
【0006】
第1の態様に係る無線通信モジュールは、無線通信を行う無線通信部と、前記無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部と、第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、当該無線通信モジュールが前記第1の国とは異なる第2の国に位置する場合、少なくとも前記無線通信部の送信動作を停止する、又は前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報の少なくとも一部を変更する制御部とを備える。
【0007】
第2の態様に係る無線端末は、無線通信を行う無線通信部と、前記無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部と、第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、当該無線端末が前記第1の国とは異なる第2の国に位置する場合、少なくとも前記無線通信部の送信動作を停止する、又は前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報の少なくとも一部を変更する制御部とを備える。
【0008】
第3の態様に係る車両は、第1の態様に係る無線通信モジュールを搭載した車両である。
【0009】
第4の態様に係る制御方法は、無線通信を行う無線通信部と、前記無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部と、を備えた無線通信モジュールを制御するための方法である。前記制御方法は、第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、当該無線通信モジュールが前記第1の国とは異なる第2の国に位置する場合、少なくとも前記無線通信部の送信動作を停止する、又は前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報の少なくとも一部を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る無線通信システムの構成図である。
【
図2】実施の形態に係る無線通信モジュールのブロック図である。
【
図3】実施の形態に係るVoIP発信時動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図4】実施の形態に係る無線通信モジュールの動作を示すフロー図である。
【
図5】変更例1に係る無線通信モジュールの動作を示すフロー図である。
【
図6】変更例2に係る無線通信モジュール10の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
修理を目的として端末機器を日本国に持ち込んで修理業者が使用する場合や、日本国在住の者が米国から端末機器を輸入した場合には、上述の例外条件に該当しないことがある。かかる場合、日本国の法律において規定された技術基準を満たさない端末機器を日本国内において使用すると、不正な使用になりうる。
【0012】
そこで、本開示は、不正な使用を避けることを可能とする。
【0013】
実施形態に係る無線モジュールは、無線通信を行う無線通信部と、前記無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部と、第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、当該無線通信モジュールが前記第1の国とは異なる第2の国に位置する場合、少なくとも前記無線通信部の送信動作を停止する、又は前記第1の国の通信事業者の仕様に従った前記設定情報の少なくとも一部を変更する制御部とを備える。
【0014】
以下、本実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
(無線通信システムの構成)
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成図である。
図1に示した無線通信システムは、無線通信モジュール10を搭載した車両20、基地局30、及びネットワーク40を有している。
【0016】
基地局30及びネットワーク40は、通信事業者によって提供されている。基地局30は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)等の第2世代移動通信システム、CDMA(Code Division Mutlple Access)等の第3世代移動通信システム、又はLTE(Long Term Evolution)等の第4世代移動通信システムなど如何なる移動通信システムに対応していてもよい。
【0017】
無線通信モジュール10は、様々な機能を実現するものである。例えば、無線通信モジュール10は、緊急通報システムを実現する上で、緊急時に、緊急コールセンターを含むPSAP(Public Safety Answering Point)に発信する。また、PSAPのオペレータとの通話後に、PSAPから無線通信モジュール10に着信を受けることもある。無線通信モジュール10は、VoIP(Voice over Internet Protocol)等によるIP電話で、発信又は着信できるようにしてもよい。
【0018】
さらに、車両20と通信システムとを組み合わせて、リアルタイムに情報サービスを提供するテレマティクスサービスが知られている。テレマティクスサービスでは、ナビゲーションシステムのデータ更新のための地図データやPOI(point of interest)データをネットワーク40上のサーバからダウンロードする。また、テレマティクスサービスでは、車両搭載機器のダイアグ情報をネットワーク40上のサーバにアップロードする。無線通信モジュール10は、このようなダウンロード及びアップロードを、ネットワーク40を介して行っている。
【0019】
本実施の形態では、無線通信モジュール10は、車両20などの移動体に搭載されたIVS(In Vehicle System)として例示している。本実施の形態では、移動体として車両20を挙げて説明している。勿論、移動体は、船舶、列車、又は、携帯電話機もしくはスマートフォン等の携帯端末(無線端末)など移動するものであれば如何なるものでもよい。
【0020】
無線通信モジュール10は、第2世代移動通信システム、第3世代移動通信システム、又は第4世代移動通信システムに対応していてもよい。無線通信モジュール10は、様々な機能及びユーザが作成したプログラムを実行するための機能も有してもよい。
【0021】
基地局30及びネットワーク40を運営する通信事業者は、自社と契約したユーザに対し自社の移動体通信サービスを提供している。
【0022】
(無線通信モジュールの構成)
図2は、本実施の形態に係る無線通信モジュール10のブロック図である。
図2に示した無線通信モジュール10は、アンテナ11、無線通信部12、制御部13、記憶部14、インターフェイス(IF)15、カード駆動部16、及びSIM(Subscriber Identity Module)カード17を有している。
【0023】
アンテナ11は、無線信号を基地局30と送受信する。
【0024】
無線通信部12は、アンテナ11を介して基地局30と無線通信するためのものである。無線通信部12は、アナログ信号処理部及びデジタル信号処理部を有している。
【0025】
アナログ信号処理部では、受信動作として、アンテナ11から受信された無線信号の増幅、ダウンコンバート、及びアナログ-デジタル変換処理等を行う。また、送信動作として、デジタル信号処理部から転送されるデジタル信号のデジタルーアナログ変換処理、アップコンバート、及びアナログ信号の増幅等を行い、アンテナ11を介して無線信号を送信する。
【0026】
デジタル信号処理部では、送信動作として、制御部13から転送されたデータを符号化し、無線信号の通信チャネルで送信できるように変調する。また、受信動作として、アナログ信号処理部から転送されたデジタル信号を復調及び復号し、復号したデータを制御部13に転送する。
【0027】
制御部13は、種々のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バックアップRAM、及びI/O(Input/Output)等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。制御部13は、無線通信部12を制御する上で必要な処理を実行する。
【0028】
記憶部14は、電気的に内容を書き換えることが可能なEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)などによって構成され、無線通信部12を制御する上で必要なプログラム及び情報を記憶する。
【0029】
記憶部14は、無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する。設定情報は、データ通信に関する設定パラメータ及びIP電話に関する設定パラメータ等を含む。設定パラメータは、例えば各種のタイマ値を含む。
【0030】
IF15は、無線通信モジュール10を車両20(移動体)と電気的に接続するためのインターフェイスであり、例えばUSBのIFやその他のIF等である。IF15は、車両20に設けられたディスプレイ、マイク、スピーカ、及びナビゲーションシステム等に接続される。なお、車両20として自動車を例示しているが、車両20は自動二輪車又は鉄道車両等であってもよい。
【0031】
カード駆動部16は、SIMカード(又はUIM(User Identity Module)カード)と呼ばれるICカード、すなわち情報カードを駆動する。カード駆動部16は、SIMカード17を取り込み、取り出しができるようにしてもよい。カード駆動部16は、制御部13から情報の読み出しや書き込みを受けた場合、SIMカード17に記録された情報の読み出し、SIMカード17への書き込みを行う。
【0032】
一般に、SIMカードは、加入者を特定するための情報、通信事業者を特定するための事業者特定情報、及び加入者が契約している利用可能なサービスに関する情報などが記録されたICカードである。SIMカードは、サービスを受ける上で必要な情報が記録されている。例えば、位置情報を登録する際の情報、電話番号(例えばIVSの電話番号)に関する情報など様々な情報がある。
【0033】
SIMカード17は、組み込み型のeSIM(Embedded SIM)でもよい。SIMカード17は、無線通信モジュール10の外にあってもよい。SIMカード17は、通信事業者から支給されてもよいし、その他の手段で入手してもよい。ユーザは、支給されたSIMカード17を無線通信モジュール10に装着又は接続することで、無線通信モジュール10を使用できるようになる。
【0034】
制御部13は、SIMカード17に記憶された通信事業者の設定に応じて、記憶部14に記憶された設定情報の中から当該通信事業者に対応する設定情報を取得し、取得した設定情報を用いて動作する。
【0035】
(VoIP発信時動作の一例)
本実施の形態に係るVoIP発信時動作の一例について説明する。
図3は、本実施の形態に係るVoIP発信時動作の一例を示すシーケンス図である。なお、
図3において、基地局30の図示を省略している。
【0036】
図3に示すように、ステップS101において、無線通信モジュール10の制御部13は、発信メッセージをネットワーク40に送信するよう無線通信部12を制御する。発信メッセージは、SIP(Session Initiation Protocol)で規定された「INVITE」メッセージであってもよい。
【0037】
ステップS102において、無線通信モジュール10の制御部13は、呼び出し中であることを通知する通知メッセージをネットワーク40から無線通信部12を介して受信する。通知メッセージは、SIPで規定された「180Ringing」メッセージであってもよい。
【0038】
ステップS103において、無線通信モジュール10の制御部13は、通知メッセージの受信に応じて、所定のタイマをスタートする。所定のタイマは、発信成功メッセージの受信を待つべき最大の時間を定義する。発信成功メッセージは、SIPで規定された「200OK」メッセージであってもよい。
【0039】
所定のタイマが満了(すなわち、タイムアウト)するまでに、発信成功メッセージを受信できない場合、無線通信モジュール10の制御部13は、発信失敗と判断する。ここで、所定のタイマの設定値(設定時間)は、設定情報の1つとして記憶部14に記憶されている。
【0040】
ステップS104において、所定のタイマがタイムアウトする。
【0041】
ステップS105において、無線通信モジュール10の制御部13は、所定のタイマがタイムアウトしたことに応じて、発信キャンセルメッセージをネットワーク40に送信するよう無線通信部12を制御する。発信キャンセルメッセージは、SIPで規定された「CANCEL」メッセージであってもよい。
【0042】
(無線通信モジュールの動作)
本実施の形態において、ある特定の国(以下、「国B」という)の通信事業者の設定がSIMカード17に記憶されており、無線通信モジュール10が国Bから別の国(以下、「国A」という)に持ち込まれるシナリオを想定する。ここでは、国Aが日本国である場合を主として想定する。
【0043】
国Bの通信事業者の設定がSIMカード17に記憶されている場合、無線通信モジュール10(制御部13)は、国Bの通信事業者の仕様に従って動作する。しかしながら、国Bの通信事業者の仕様は、国Aの法律により規定された技術基準を満たしていないことがある。例えば、上述した所定のタイマの設定値が、国Aの法律により規定された技術基準を満たしていないことがある。
【0044】
よって、国Aの法律により規定された技術基準を満たさない無線通信モジュール10を修理等で国Aに持ち込んだり、国A在住の者が国Bから国Aに輸入したりすると、国Aの法律に違反し、不正な使用になりうる。
【0045】
本実施の形態においては、以下に説明する動作により、かかる不正な使用を国Aで避けることを可能とする。
図4は、本実施の形態に係る無線通信モジュール10の動作を示すフロー図である。
【0046】
図4に示すように、ステップS11において、制御部13は、国Bの通信事業者の仕様に従った設定情報を用いて動作するよう設定されているか否かを判定する。例えば、制御部13は、国Bの通信事業者の設定がSIMカード17に記憶されている場合に、国Bの通信事業者の仕様に従った設定情報を用いて動作するよう設定されていると判定する。ステップS11の結果が「NO」である場合、本フローが終了する。
【0047】
ステップS11の結果が「YES」である場合、ステップS12aにおいて、制御部13は、基地局30から送信される無線信号を探索及び受信するよう無線通信部12を制御する。基地局30から送信される無線信号には、ブロードキャスト信号であるシステム情報ブロックが含まれている。システム情報ブロックには、送信元の基地局30が属する通信事業者を示す識別子であるPLMN(Public Land Mobile Network)識別子が含まれている。ここで、PLMN識別子は、国コードであるMCC(Mobile Country Code)と事業者コードであるMNC(Moblie Network Code)とにより構成されている。
【0048】
ステップS13aにおいて、制御部13は、ステップS12aにおいて受信された無線信号に、国AのMCCが含まれているか否かを判定する。例えば、国Aが日本国である場合、日本国のMCCは「440」又は「441」であるため、MCCが「440」又は「441」である基地局30を観測した場合、この基地局30が日本国のネットワークを構成することが分かる。ステップS13aの結果が「NO」である場合、本フローが終了する。
【0049】
他の例として、制御部13は、ステップS12aにおいて受信された無線信号に、予め記憶部14に登録された国CのMCCが含まれているか否かを判定してもよい。国Cは、国Aと同様な技術基準が法律により規定された国又は国Aよりも厳しい技術基準が法律により規定された国であってもよい。
【0050】
ステップS13aの結果が「YES」である場合、ステップS14aにおいて、制御部13は、少なくとも送信動作を停止するよう無線通信部12を制御する。具体的には、制御部13は、一切の無線信号の送信を停止するよう無線通信部12を制御する。これにより、無線通信モジュール10は、国Aの基地局30との無線接続を確立できなくなる。制御部13は、送信動作の停止に加えて、受信動作も停止するよう無線通信部12を制御してもよい。
【0051】
制御部13は、無線通信部12における送信動作を停止しても、無線通信部12における受信動作を停止せずに継続可能としてもよい。制御部13は、無線通信部12の送信動作を停止した後、受信動作を継続することにより無線信号を探索する。そして、受信する無線信号に含まれる国コードに基づいて、無線通信モジュール10が国Bに戻ったか否かを判定する。無線通信モジュール10が国Bに戻ったと判定された場合、制御部13は、無線通信部12の送信動作を再開する。
【0052】
このように、本実施の形態に係る無線通信モジュール10は、無線通信を行う無線通信部12と、無線通信に関する動作を設定する設定情報を記憶する記憶部14と、第1の国(国B)の通信事業者の仕様に従った設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、無線通信モジュール10が第1の国(国B)とは異なる第2の国(国A又は国C)に位置する場合、少なくとも無線通信部12の送信動作を停止する。これにより、無線通信モジュール10が不正に使用されることを回避できる。
【0053】
[変更例1]
上述の実施の形態において、制御部13は、国Bの通信事業者の仕様に従った設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、無線通信モジュール10が国Aに位置する場合、無線通信部12の送信動作を停止していた。しかしながら、無線通信部12の送信動作を停止すると、国Aの法律に違反する動作を禁止できるものの、無線通信モジュール10を国Aにおいて一切使用できなくなる。
【0054】
本変更例では、制御部13は、国Bの通信事業者の仕様に従った設定情報を用いて動作するよう設定されており、且つ、無線通信モジュール10が国Aに位置する場合、国Bの通信事業者の仕様に従った設定情報のうち、国Aの法律において規定された技術基準を満たさない動作をさせる設定情報を、当該技術基準を満たす動作をさせる設定情報に変更する。例えば、制御部13は、上述した所定のタイマの設定値を、国Aの法律により規定された技術基準を満たす値に変更する。これにより、国Aの法律に違反しなくなるため、無線通信部12の送信動作を停止しなくても済む。
【0055】
図5は、本変更例に係る無線通信モジュール10の動作を示すフロー図である。
【0056】
図5に示すように、ステップS11乃至S13aについては、
図4に示したフローと同様である。
【0057】
ステップS13aの結果が「YES」である場合、ステップS14bにおいて、制御部13は、国Bの通信事業者の仕様に従った設定情報のうち、国Aの法律において規定された技術基準を満たさない動作をさせる設定情報を、当該技術基準を満たす動作をさせる設定情報に変更する。例えば、上述した所定のタイマの設定値として、国Aの法律において規定された技術基準を満たす適正値が予め記憶部14に記憶されている。制御部13は、国Bの通信事業者の仕様に従った設定情報のうち所定のタイマの設定値のみを、かかる国Aの適正値とするよう更新する。
【0058】
このように、本変更例によれば、国Aの法律に違反する動作を禁止しつつ、無線通信モジュール10を国Aにおいて使用可能とすることが出来る。
【0059】
[変更例2]
上述の実施の形態及び変更例1において、制御部13は、基地局30から受信する無線信号に基づいて、無線通信モジュール10が位置する国を把握していた。しかしながら、無線通信モジュール10がGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を有している場合や、無線通信モジュール10が車両20のナビゲーションシステムからGNSS測位データを取得できる場合は、GNSS測位データに基づいて無線通信モジュール10が位置する国を把握してもよい。
【0060】
図6は、本変更例に係る無線通信モジュール10の動作を示すフロー図である。
【0061】
図6に示すように、ステップS11については、
図4に示したフローと同様である。
【0062】
ステップS11の結果が「YES」である場合、ステップS12bにおいて、制御部13は、GNSS受信機により得られたGNSS測位データ又は車両20のナビゲーションシステムにより得られたGNSS測位データを取得する。測位データは、緯度及び経度を含む。
【0063】
ステップS13aにおいて、制御部13は、ステップS12bにおいて取得されたGNSS測位データ(緯度、経度)が、国Aの地理的範囲に含まれているか否かを判定する。例えば、国Aの地理的範囲を示す情報が予め記憶部14に登録されており、制御部13は、ステップS12bにおいて取得されたGNSS測位データを国Aの地理的範囲を示す情報と比較する。GNSS測位データが国Aの地理的範囲に含まれている場合、無線通信モジュール10が国Aに位置することが分かる。ステップS13bの結果が「NO」である場合、本フローが終了する。
【0064】
他の例として、制御部13は、ステップS12bにおいて取得されたGNSS測位データが、予め記憶部14に登録された国Cの地理的範囲に含まれているか否かを判定してもよい。国Cは、国Aと同様な技術基準が法律により規定された国又は国Aよりも厳しい技術基準が法律により規定された国であってもよい。
【0065】
ステップS13bの結果が「YES」である場合、ステップS14aにおいて、制御部13は、少なくとも送信動作を停止するよう無線通信部12を制御する。或いは、制御部13は、上述の変更例1と同様に、設定情報の一部を変更してもよい。
【0066】
[その他の実施の形態]
上述の実施の形態に係る各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0067】
以上、図面を参照して実施の形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0068】
本願は、日本国特許出願第2018-157159号(2018年8月24日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。