(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】車車間通信用アンテナ搭載リーン車両、及びリーン車両に搭載されるように構成された車車間通信用アンテナ
(51)【国際特許分類】
B62J 11/00 20200101AFI20221128BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20221128BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20221128BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20221128BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B62J11/00
B62J23/00 A
B62J45/00
H01Q1/32 Z
H01Q1/22 A
(21)【出願番号】P 2020539472
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2019033438
(87)【国際公開番号】W WO2020045393
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2018158000
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康史
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 賢治
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-352209(JP,A)
【文献】特開2005-51338(JP,A)
【文献】特開昭61-290803(JP,A)
【文献】米国特許第5184141(US,A)
【文献】特開2011-225160(JP,A)
【文献】特開平3-104302(JP,A)
【文献】特開2012-232657(JP,A)
【文献】独国実用新案第9414817(DE,U1)
【文献】Manny Urcia, David Banks,“Structurally Integrated Phased Arrays”,IEEE Aerospace Conference 2011,米国,IEEE,2011年,p.1-8,DOI: 10.1109/AERO.2011.5747321,ISBN: 978-1-4244-7351-9/11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 45/00,11/00,23/00,
H01Q 1/22, 1/32, 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左旋回中に左方向に傾斜し、右旋回中に右方向に傾斜するリーン車体と、
略円弧状の横断面輪郭形状を有する接地部を有し、前記リーン車体に設けられ、左旋回中に左方向に傾斜し、右旋回中に右方向に傾斜するように、前後それぞれに設けられるリーン車輪と、
車両前後方向において、前後のリーン車輪の間に位置するシートと、
非金属材料により形成され、後方向に見て被視認可能であり且つ走行時に前から風を受ける前傾斜面を有する非金属製フロントカバーと、
前記リーン車体に設けられ、前記リーン車体の周囲に存在する車両との車車間通信に用いられる車車間通信装置と、
前記リーン車体と一体的に左方または右方に傾斜するように設けられ、少なくとも車車間通信用アンテナ搭載リーン車両の前方向に電波を少なくとも送信する車車間通信用アンテナと
を有する車車間通信用アンテナ搭載リーン車両であって、
前記非金属製フロントカバーは、前記車車間通信用アンテナによって覆われるように形成された開口を有し、
前記車車間通信用アンテナは、アンテナ素子と、アンテナ線とを備え、
前記アンテナ素子は、板状に成形された樹脂母材と、前記非金属製フロントカバーの前記前傾斜面において視認されないように前記樹脂母材内に埋設され、前記アンテナ線を介して前記車車間通信装置に電気的に接続された板状の金属製基板アンテナ部とを備え、
前記車車間通信用アンテナは、
前記シートの前端よりも前且つ前記リーン車輪の上端よりも上において、
前記車車間通信用アンテナの前面が、前記非金属製フロントカバーの前記前傾斜面の少なくとも一部を構成し、
前記車車間通信用アンテナの後表面が、前記非金属製フロントカバー内の内部空間へ露出する前記非金属製フロントカバーの後表面を構成し、
前記アンテナ線が、前記内部空間において、前記非金属製フロントカバーの前記後表面を介して前記金属製基板アンテナ部と電気的に接続されるとともに、前記内部空間の内側へ延びる
ように前記開口を覆っている
ことを特徴とする車車間通信用アンテナ搭載リーン車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両であって、
前記車車間通信用アンテナは、
前記樹脂母材が、前記金属製基板アンテナ部の前及び後の両方に位置し、
前記金属製基板アンテナ部の前表面及び後表面の両方が、前記樹脂母材と接触するように前記樹脂母材により覆われている
ことを特徴とする車車間通信用アンテナ搭載リーン車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両、及びリーン車両に搭載されるように構成された車車間通信用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
リーン車両は、様々な用途に応じて様々なアンテナを搭載する。リーン車両に搭載するアンテナの例として、GPSアンテナ、ETC車載アンテナ、及び車車間通信用アンテナ等が挙げられる。GPSアンテナは受信用アンテナであり、GPS通信衛星からの電波を受信する。従って、GPSアンテナは、GPS通信衛星からの電波を受信するため、上方からの電波を受信できるように受信面が上方に向けて配置される。ETC車載アンテナは、送受信用アンテナであり、リーン車両の走行する道路において、ETCゲートの上方に設けられたETCアンテナからの電波を送受信するように設けられる。従って、ETC車載アンテナは、水平方向よりも上方のETCアンテナと電波を送受信する。例えば、ETC車載アンテナは、水平方向に対し45度以上の方向で電波を送受信するため、リーン車両の直立状態においてアンテナの送受信面が上方を向くように設置される。また、ETC車載アンテナの指向性は、狭い。これは、ETCが、各ETCゲートに対応する車線を直立状態で直進するリーン車両に対し課金するのに使用されるからである。
【0003】
一方で、車車間通信用アンテナは、このアンテナが搭載されたリーン車両の周囲に存在する車両との間で通信を行うための送受信アンテナである。
例えば、特許文献1に開示されたリーン車両は、リーン車両の周囲に存在する車両との間で通信を行う車車間通信装置を備えている。車車間通信装置は、電気的に接続される金属製棒状アンテナを備えている。特許文献1の車車間通信用の金属製棒状アンテナは、フロントカバー内の内部空間において、ヘッドパイプに設けられたステーに固定具を介して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたリーン車両では、車車間通信用の金属棒状アンテナが、フロントカバー内に設置されているため、フロントカバーの前傾斜面に現れない。フロントカバーの前傾斜面の設計自由度が確保される。リーン車両にとって、フロントカバーの前傾斜面は、看者から最も注目される部分である。そのため、フロントカバーの前傾斜面の設計自由度は重要である。
【0006】
しかしながら、フロントカバー内の内部空間に車車間通信用の金属棒状アンテナが配置されるため、フロントカバー内の内部空間を効率よく利用することが難しい。車車間通信用アンテナの周囲に位置する物体は、車車間通信の通信性能の影響を及ぼす。特に、金属製の機器、装置、配線等が車車間通信の通信性能に及ぼす影響は大きい。また、車車間通信用アンテナは、自車両から略水平前方向に離れた位置に存在する車両と主に通信するという特性を有するため、前方向に障害物が設置されないことが好ましい。このように、車車間通信用アンテナがフロントカバーの内部空間に設けられると、当該内部空間内の機器、装置、配線等のレイアウトに対して種々の制約が生じてしまう。そのため、当該内部空間の利用効率が低下してしまうおそれがあった。特に、リーン車両は、走行時に運転者の体重移動によって車両の姿勢が制御されるように構成されている。操作性及び走行性能の観点から、リーン車両は、小型であることを求められる傾向がある。フロントカバーの内部空間の利用効率は、リーン車両にとって重要である。即ち、以下の全てを得ることが、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両にとって重要である。
車車間通信の通信性能
フロントカバー前傾斜面の設計自由度
フロントカバー内の内部空間の利用効率
【0007】
本発明は、車車間通信の通信性能を確保しつつ、フロントカバー前傾斜面の設計自由度を高め、フロントカバー内の内部空間の利用効率を向上させることができる車車間通信用アンテナ搭載リーン車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的のために、本発明者は、以下の検討を行った。
【0009】
車車間通信用アンテナは、GPSアンテナ又はETC車載アンテナとは異なり、車両と通信するためのアンテナである。車車間通信用アンテナは、リーン車両の周囲で道路上にある車両に電波を送信するため、水平方向に電波を送信するようにリーン車両に設置される。また、車車間通信用アンテナは、リーン車両の周囲を走行する車両に電波を送信するため、水平面において広い角度範囲で送信することが求められる。
また、車車間通信用アンテナは、例えばリーン姿勢での通信、及び上り坂と下り坂の境にあるピークを超える場合の前後方向での通信に対応するため、水平方向よりも上方及び下方を送信範囲に含めることが求められる。水平方向よりも上方及び下方は、例えば、水平方向に対し上下45度の範囲である。従って、車車間通信用アンテナは、電波の送信方向及び指向性等において、GPSアンテナ及びETCアンテナ等のアンテナと異なっている。
車車間通信では、通信対象の車両が、通常、自車両と同じく道路上にある。車車間通信用アンテナは、アンテナが搭載されたリーン車両と略同じ高さに存在し、このリーン車両から離れた位置に存在する車両と主に通信する。
【0010】
本発明者は、フロントカバー内の内部空間の利用効率を向上させるために、アンテナ形状について検討した。具体的に、本発明者は、車車間通信用アンテナを板状にすることにより、基板アンテナをフロントカバー内に沿わせて配置させることを検討した。
【0011】
しかし、フロントカバーは、意匠性や走行抵抗などを考慮して設計された曲面を有している。一方、基板アンテナも、車車間通信の性能を得るために、形状や大きさについての制約を有している。基板アンテナは、車車間通信の性能を得るための大きさを有していなければならない。そのため、基板アンテナをフロントカバー内に好適に沿わせて配置させることが難しく、フロントカバー内の内部空間の利用効率を向上させることが困難であった。
【0012】
そこで、本発明者は、更に検討を行った。その結果、本発明者は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両のフロントカバーに、基板状の車車間通信用アンテナをモールドすることに想到した。波長短縮により、基板アンテナの面積が小さくても、車車間通信の性能を得ることができる。これにより、基板アンテナの性能及びフロントカバーの前傾斜面の設計自由度を満足させつつ、基板アンテナをフロントカバー内にモールドできる。その結果、フロントカバー内の内部空間の利用効率も向上させることができる。
【0013】
このように、本発明は、リーン車両のフロントカバーに、基板状の車車間通信用アンテナをモールドすることにより、車車間通信の通信性能、フロントカバー前傾斜面の設計自由度及びフロントカバー内の内部空間の利用効率を全て満足するという、今までにない技術思想によって、初めて成し得た発明である。
【0014】
(1) 車車間通信用アンテナ搭載リーン車両であって、
前記車車間通信用アンテナ搭載リーン車両は、
左旋回中に左方向に傾斜し、右旋回中に右方向に傾斜するリーン車体と、
略円弧状の横断面輪郭形状を有する接地部を有し、前記リーン車体に設けられ、左旋回中に左方向に傾斜し、右旋回中に右方向に傾斜するように、前後それぞれに設けられるリーン車輪と、
車両前後方向において、前後のリーン車輪の間に位置するシートと、
非金属材料により形成され、後方向に見て被視認可能であり且つ走行時に前から風を受ける前傾斜面を有する非金属性フロントカバーと、
前記リーン車体に設けられ、前記リーン車体の周囲に存在する車両との車車間通信に用いられる車車間通信装置と、
前記車車間通信装置に電気的に接続された板状の金属製基板アンテナ部を有し、前記リーン車体と一体的に左方または右方に傾斜するように設けられ、少なくとも前記車車間通信用アンテナ搭載リーン車両の前方向に電波を少なくとも送信する車車間通信用アンテナと
を有し、
前記車車間通信用アンテナは、前記シートの前端よりも前且つ前記リーン車輪の上端よりも上において、前記非金属製フロントカバーの前記前傾斜面の少なくとも一部を構成するように前記リーン車体に設けられ、
前記金属製基板アンテナ部は、前記非金属製フロントカバーの前記前傾斜面において視認されないように樹脂母材内に埋設されている。
【0015】
非金属性フロントカバーは、後方向に見て被視認可能であり且つ走行時に前から風を受けるという性質上、前方向に障害物を有さない。従って、車車間通信用アンテナが、シートの前端よりも前において、非金属製フロントカバーの前傾斜面の少なくとも一部を構成するように設けられることにより、リーン車体による送受信性能の影響が少ない。
【0016】
また、車車間通信用アンテナは、リーン車輪の上端よりも上において非金属性フロントカバーに設けられる。即ち、車車間通信用アンテナは、車幅方向における中央近くにおいて比較的高い位置に配置される。そのため、旋回時に車車間通信用アンテナの高さが下がり難く、直進状態と旋回状態とでの車車間通信用アンテナの高さの変化が抑制され得る。
【0017】
また、金属製基板アンテナ部は、非金属製フロントカバーの前傾斜面において視認されないように樹脂母材内に埋設されている。そのため、走行風は、金属製基板アンテナ部による影響を受けずに、非金属性フロントカバーの前傾斜面(外表面)に沿ってスムーズに流れることができる。良好な送受信性能が得られつつ、走行風に対する空気抵抗が低減され得る。
【0018】
さらに、金属製基板アンテナ部は、樹脂母材内に埋設されている。波長短波により、金属製基板アンテナ部の面積が小さくても、車車間通信の性能を得ることができる。これにより、車車間通信用アンテナの性能、及び非金属製フロントカバーの前傾斜面の設計自由度を満足させつつ、金属製基板アンテナ部を、非金属製フロントカバーを構成する態様で、樹脂母材内にモールドできる。その結果、フロントカバー内の内部空間の利用効率も向上させることができる。
【0019】
従って、(1)の構成によれば、車車間通信の通信性能を確保しつつ、フロントカバー前傾斜面の設計自由度を高め、フロントカバー内の内部空間の利用効率を向上させることができる。
【0020】
(2) (1)の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両であって、
前記車車間通信用アンテナは、前記金属製基板アンテナ部と電気的に接続されたアンテナ線を備え、
前記アンテナ線は、前記車車間通信用アンテナの後表面から、前記非金属製フロントカバー内の内部空間へ延びている。
【0021】
(2)の構成によれば、車車間通信用アンテナの取付を容易に行うことが可能となる。
【0022】
リーン車両は、リーン姿勢で旋回する車両である。リーン車両は、旋回時にカーブの内方向にリーンするように構成されている。リーン車両は、例えば、旋回時にカーブの内方向にリーンするように構成された鞍乗型車両が挙げられる。そのような車両としては、例えば、自動二輪車、自動三輪車等が挙げられる。自動三輪車は、前二輪型であってもよく、後二輪型であってもよい。リーン車両は、例えば、棒状のステアリングハンドル(バーハンドル)を有する。
【0023】
1台の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両において、車車間通信用アンテナは、例えば、非金属製フロントカバーの前傾斜面を構成する部材として非金属製フロントカバーに設けられる。非金属製フロントカバーの前傾斜面を構成する車車間通信用アンテナは、1つであってもよく、複数であってもよい。非金属製フロントカバーの前傾斜面を構成する位置以外の1つ又は複数の位置に、1つ又は複数の車車間通信用アンテナが設けられてもよい。即ち、1台の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両は、複数の車車間通信用アンテナを備えていてもよい。例えば、車車間通信用アンテナが、非金属製フロントカバーに加え、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両の後部にも設けられてもよい。
【0024】
1台の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両において、金属製基板アンテナ部は、車車間通信用アンテナに設けられる。車車間通信用アンテナに設けられる金属製基板アンテナ部は、1つであってもよく、複数であってもよい。車車間通信用アンテナに設けられていない金属製基板アンテナ部が、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両に設けられてもよい。即ち、1台の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両は、複数の金属製基板アンテナ部を備えていてもよい。
【0025】
1台の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両に複数の金属製基板アンテナ部が設けられる場合、複数の金属製基板アンテナ部は、互いに同じ又は異なる放射特性を有する。アンテナの放射特性とは、放射パターン及び受信感度の両方を含む。つまり、アンテナの放射特性は、送信性能と受信性能の両方である送受信性能を含む。
【0026】
車車間通信用アンテナは、金属製基板アンテナ部を有する。車車間通信用アンテナは、指向性を有していてもよく、無指向性であってもよい。無指向性のアンテナとは、指向性を有さないアンテナであって、アンテナを通るある平面でアンテナを中心とした全方向にほぼ均一の放射強度を有するアンテナである。無指向性の車車間通信用アンテナの車載垂直方向の指向性は、特に限定されない。また、指向性のアンテナとは、指向性を有するアンテナであって、アンテナを通るいずれの平面においてもアンテナを中心とした全方向に均一でなく、アンテナを中心としたある特定の方向に強い放射強度を有するアンテナである。車車間通信用アンテナは、車車間通信および路車間通信を行うためのアンテナであってもよい。車車間通信用アンテナは、路車間通信を行うためのアンテナであってもよい。
【0027】
非金属製フロントカバーは、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両が前から見られた場合に視認され得る部分の少なくとも一部を構成し、前から後方向に流れる走行風を受けるように構成されている。非金属製フロントカバーは、ヘッドパイプを覆う乃至囲う部分を有する。但し、非金属製フロントカバーは、当該部分に限定されない。車車間通信用アンテナ搭載リーン車両がウィンドシールドを有する場合、ウィンドシールドは、非金属製フロントカバーの一例に該当する。
【0028】
傾斜角は、対象の面又は線が鉛直線からどの程度傾斜しているかを示す。傾斜角は、鉛直線との間で成す角として定義される。面又は線の傾斜角が小さいほど、当該面又は線の傾きが小さく、当該面又は線は鉛直に近い。面又は線の傾斜角が大きいほど、当該面又は線の傾きが大きく、当該面又は線は水平に近い。
【0029】
車両上下方向とは、車体フレームが直立状態における車両が接地する水平な路面に直交する方向である。車両左右方向とは、車体フレームが直立状態における車体フレームの幅方向中央を通る平面に直交する方向である。車両前後方向とは、車両上下方向および車両左右方向の両方に直交する方向である。なお、車体フレームが直立状態とは、車体フレームの幅方向の中央を通る平面が車両が接地する水平な路面に垂直である状態である。
【0030】
車両の前部とは、車両前後方向における車両の中央の位置よりも車両前方向にある部分のことを意味する。車両の後部とは、車両前後方向における車両の中央の位置よりも車両後方向にある部分のことを意味する。また、車両の上部とは、車両上下方向における車両の中央の位置よりも車両上方向にある部分のことを意味する。車両の下部とは車両上下方向における車両の中央の位置よりも車両下方向にある部分のことを意味する。
【0031】
ある部品の端部とは、部品の端とその近傍部とを合わせた部分を意味する。
【0032】
A方向に沿った方向とは、A方向と平行な方向に限らない。A方向に沿った方向とは、A方向に対して-45°以上+45°以下の範囲内で傾斜している直線を含む。同様の定義が、「沿った」を用いた他の表現にも適用される。「沿った」を用いた他の表現とは、例えば、「A方向に沿った方向」や、「複数のBがA方向に沿って配列される」や、「1つのBがA方向に沿っている」等である。なお、A方向は、特定の方向を指すものではない。A方向を、水平方向や前後方向に置き換えることができる。
【0033】
AがBより前方向に配置されるとは、以下の状態を指す。Aは、Bの最前端を通り前後方向に直交する平面の前方向に配置される。この場合、AとBは、前後方向に沿って並んでいてもよく、並んでいなくてもよい。この定義は、「AがBより後方向に配置される」、「AがBより右方向に配置される」、「AがBより左方向に配置される」、「AがBより上方向に配置される」、「AがBより下方向に配置される」という表現にも適用される。
【0034】
X方向に並ぶAとBとは、以下の状態を示す。X方向に垂直な方向にAとBを見たときに、AとBの両方がX方向を示す任意の直線上に配置されている状態である。Y方向に見てX方向に並ぶAとBとは、以下の状態を示す。Y方向にAとBを見たときに、AとBの両方がX方向を示す任意の直線上に配置されている状態である。この場合、Y方向とは異なるW方向にAとBを見ると、AとBのいずれか一方がX方向を示す任意の直線上に配置されていない状態であってもよい。尚、AとBが接触していてもよい。AとBが離れていてもよい。AとBの間にCが存在していてもよい。
【0035】
本明細書において、AがBの前方向に配置されるとは、以下の状態を指す。AとBが前後方向に並んでおり、且つ、AのBと対向する部分が、Bより前向方に配置される。この定義において、Bの前面のうちAと対向する部分が、Bの最前端の場合には、AはBよりも前方向に配置される。この定義において、Bの前面のうちAと対向する部分が、Bの最前端ではない場合には、AはBよりも前方向に配置されてもよく、されなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向の左右方向および上下方向にも適用される。尚、Bの前面とは、Bを前方から見た時に見える面のことである。Bの形状によっては、Bの前面とは、連続した1つの面ではなく、複数の面で構成される場合がある。
【0036】
本明細書において、左方向または右方向に見て、AがBの前方向に配置されるとは、以下の状態を指す。左方向または右方向に見て、AとBが前後方向に並んでおり、且つ、左方向または右方向に見て、AのBと対向する部分が、Bより前方向に配置される。この定義において、AとBは、3次元では、前後方向に並んでいなくてもよい。この定義は、「AがBの後方向に配置される」、「AがBの右向方に配置される」、「AがBの左方向に配置される」、「AがBの上方向に配置される」、「AがBの下方向に配置される」という表現にも適用される。
【0037】
含む(including)、有する(comprising)、備える(having)およびこれらの派生語は、列挙されたアイテムおよびその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。取り付けられた(mounted)、接続された(connected)および結合された(coupled)という用語は、広義に用いられている。具体的には、直接的な取付、接続および結合だけでなく、間接的な取付、接続および結合も含む。更に、接続された(connected)および結合された(coupled)は、物理的または機械的な接続/結合に限られない。それらは、直接的なまたは間接的な電気的接続/結合も含む。
【0038】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0039】
本明細書において、「好ましい」という用語は非排他的なものである。「好ましい」は、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。本明細書において、「好ましい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。また、本明細書において、「してもよい」という用語は非排他的なものである。「してもよい」は、「してもよいがこれに限定されるものではない」という意味である。本明細書において、「してもよい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。
【0040】
特許請求の範囲において、ある構成要素の数を明確に特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される場合、この構成要素は、複数であってもよい。また、この構成要素は、1つのみであってもよい。
【0041】
上述した他の観点による構成を互いに組み合わせることは制限されない。実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態でも可能であり、様々な変更を加えた実施形態でも可能である。また、本発明は、後述する変形例を適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両によれば、車車間通信の通信性能を確保しつつ、フロントカバー前傾斜面の設計自由度を高め、フロントカバー内の内部空間の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】(a)は、一実施形態に係る車車間通信用アンテナ搭載リーン車両を模式的に示す側面図であり、(b)は、(a)に示す車車間通信用アンテナ搭載リーン車両に搭載された車車間通信用アンテナを模式的に示す縦断面図である。
【
図2】(a)は、
図1(b)に示す車車間通信用アンテナを模式的に示す横断面図であり、(b)は、
図1(b)に示す車車間通信用アンテナを模式的に示す正面図である。
【
図3】
図1に記載の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両の車車間通信用アンテナの車幅方向の電波の放射領域を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
図1(a)は、一実施形態に係る車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10を模式的に示す側面図である。
図1(b)は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10に搭載された車車間通信用アンテナ100を模式的に示す縦断面図である。当該縦断面図は、
図1(a)におけるA部分の拡大図である。X方向は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の車両前後方向を示す。Y方向は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の車両上下方向を示す。Z方向は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の車両左右方向を示す。
図1において、Z方向は、紙面手前-奥行方向である。
【0045】
図1(a)に示すように、本実施形態の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10は、スクータ型である。車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10は、リーン車体40を備える。リーン車体40は、左旋回中に左方向(Z方向における紙面手前方向)に傾斜する。リーン車体40は、右旋回中に右方向(Z方向における紙面奥行方向)に傾斜する。リーン車体40は、ヘッドパイプ1を含むメインフレーム3と、シートフレーム5と、サイドカバー9と、グラブバー11と、リアフェンダ15と、駆動系17と、リーン車輪19、23と、フロントフォーク21と、非金属製フロントカバー25と、棒状のステアリングハンドル29(バーハンドル)と、を備えている。車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10は、さらに、シート7と、テールライト13と、ヘッドライト27と、ナンバープレート30と、を備えている。
【0046】
メインフレーム3は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の骨格を構成している。シートフレーム5は、メインフレーム3から後方向に延出されている。シートフレーム5は、運転者が座るためのシート7と、同乗者が座るための同乗者用シート7aとを支持する。テールライト13は、シートフレーム5の後部に取り付けられている。サイドカバー9は、シートフレーム5の側面及び後部を覆い、テールライト13の前部と下部とを覆うように取り付けられている。このテールライト13は、ブレーキの作動状況を示すライトと方向指示器とを一体的に備えている。グラブバー11は、同乗者の手によって把持されたり、荷物の搭載時に使用されたりする。
【0047】
メインフレーム3の後方には、駆動系17が搭載されている。駆動系17は、エンジン及びサスペンション等を含む。駆動系17の後方には、後輪としてのリーン車輪19が取り付けられている。リーン車輪19は、接地部19aを有する。リアフェンダ15は、リーン車輪19の上部及び斜め上方向を覆うように、リーン車輪19から離れた位置に設けられている。リアフェンダ15は、例えば、樹脂で成形されて構成されている。リアフェンダ15よりも後において、テールライト13の下方向には、ナンバープレート30が傾斜するように取り付けられている。
【0048】
ヘッドパイプ1の上部には、ステアリングハンドル29が回動自在に取り付けられている。ヘッドパイプ1の下方向には、ステアリングハンドル29の回動に連動するフロントフォーク21が取り付けられている。フロントフォーク21の下部には、前輪としてのリーン車輪23が回転自在に取り付けられている。リーン車輪23は、接地部23aを有する。
【0049】
接地部19a、23aは、略円弧状の横断面輪郭形状(図示せず)を有する。接地部19a、23aは、ラウンド型である。接地部19a、23aは、シングルラジウスであってもよく、ダブルラジウスであってもよい。リーン車輪19、23は、リーン車体40に設けられている。リーン車輪19、23は、左旋回中に左方向に傾斜し、右旋回中に右方向に傾斜する。
【0050】
シート7は、前後方向(X方向)において、前後のリーン車輪19、23の間に位置する。リーン車体40には、車車間通信装置50が設けられている。車車間通信装置50は、シート7の下方向におけるリーン車体40内部に設けられている。車車間通信装置50は、例えば、ECU(Electric Control Unit)である。車車間通信装置50は、リーン車体40の周囲に存在する車両(図示せず)との車車間通信に用いられる。
【0051】
ヘッドパイプ1の前部には、メインフレーム3から延出されたステー(図示せず)を介して、非金属製フロントカバー25が取り付けられている。非金属製フロントカバー25は、非金属材料により形成され、後方向に見て被視認可能であり且つ走行時に前から風を受ける前傾斜面25fを有する。非金属材料としては、特に限定されず、例えば、樹脂、炭素材料、CFRP(炭素繊維に樹脂を含浸させた複合物)が挙げられる。前傾斜面25fは、例えば、直立状態の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10を横から見て、前輪としてのリーン車輪23の上端23uよりも上における車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の前輪郭線25pの少なくとも一部を含む。前傾斜面25fは、例えば、全体として、下部分が、より前に位置し、上部分が、より後ろに位置するように構成されている。前傾斜面25fは、直立状態の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の側面視において、前から次第に傾斜角が大きくなるように湾曲している。非金属製フロントカバー25には、ヘッドライト27が設けられている。
【0052】
非金属製フロントカバー25の上部には、非金属製ウィンドシールド26が取り付けられている。非金属製ウィンドシールド26も、非金属製フロントカバー25と同様に、非金属材料により構成されている。非金属製ウィンドシールド26は、例えば、全体として、下部分が、より前に位置し、上部分が、より後ろに位置するように構成されている。非金属製フロントカバー25は、直立状態の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の側面視において、前から次第に傾斜角が大きくなるように湾曲している。
【0053】
車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10は、車車間通信用アンテナ100を備えている。車車間通信用アンテナ100は、後述するように、車車間通信装置50と電気的に接続された金属製基板アンテナ部151を有する。車車間通信用アンテナ100は、リーン車体40と一体的に左方または右方に傾斜するようにリーン車体40に設けられている。車車間通信用アンテナ100は、シート7の前端7fよりも前、且つ前輪としてのリーン車輪23の上端23uよりも上において、非金属製フロントカバー25の前傾斜面25fの少なくとも一部を構成するようにリーン車体40に設けられる。金属製基板アンテナ部151は、非金属製フロントカバー25の前傾斜面25fにおいて視認されないように樹脂母材170内に埋設されている。
【0054】
車車間通信用アンテナ100は、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の前方向に少なくとも電波を送信する。本実施形態の車車間通信用アンテナ100は、電波の受信も行う。車車間通信用アンテナ100は、リーン車体40と一体的に左方向または右方向に傾斜する。
車車間通信用アンテナ100は、水平方向に対し上斜め方向及び下斜め方向の放射領域(本実施形態において例えば水平方向から少なくとも上下45度の放射領域)を有する。従って、リーン車体40が旋回中に右方向又は左方向に傾斜した時に、車車間通信用アンテナ100は、地面に対して水平面の指向性を保持できる。つまり、リーン車体40が右方向又は左方向に傾斜した時に、車車間通信用アンテナ100は、水平方向に電波を放射できる。
【0055】
図3(a)及び(b)を参照して、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の車車間通信用アンテナ100の電波の放射領域について説明する。
図3は、
図1に記載の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の車車間通信用アンテナ100の車幅方向の電波の放射領域を示す正面図である。
図3のパート(a)は、車車間通信用アンテナ100の直立状態における車車間通信用アンテナ100の車幅方向の電波の放射領域を示す正面図である。また、
図3のパート(b)は、
図1に記載の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10のリーン姿勢における車幅方向の電波の放射領域を示す正面図である。
【0056】
車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の直立状態における車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域を、
図3(a)に示す。
図3(a)に示す車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10は、平坦な地面Gに対して直立している。車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向右上縁端L1は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ1だけ斜め上方向に伸びている。車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向右下縁端L2は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ2だけ斜め下方向に伸びている。従って、車車間通信用アンテナ100の車幅方向における進行方向右方向の電波の放射領域は、L1とL2との間の領域E1である。また、車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向左上縁端L3は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ3だけ斜め上方向に伸びている。車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向左下縁端L4は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ4だけ下方向に伸びている。従って、車車間通信用アンテナ100の車幅方向における進行方向右方向の電波の放射領域は、L3とL4との間の領域E2である。
【0057】
一方で、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10が傾斜した状態における車車間通信用アンテナ100の車幅方向の電波の放射領域を、
図3(b)に示す。
図3(b)に示すように、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10は、平坦な地面Gに対して角度θ0だけ進行方向左方向に傾斜している。車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向右上縁端L1は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ5(=θ1+θ0)だけ斜め上方向に伸びている。車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向右下縁端L2は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ6(=θ2-θ0)だけ下方向に伸びている。従って、θ2>θ0であれば、車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波は、進行方向右下方向の放射領域を確保できる。
【0058】
また、車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向左上縁端L3は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ7(=θ3-θ0)だけ斜め上方向に伸びている。車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波の放射領域の進行方向左下縁端L4は、車車間通信用アンテナ100から、車車間通信用アンテナ100を通る水平線Hよりも角度θ8(=θ4+θ0)だけ下方向に伸びている。従って、θ3>θ0であれば、車車間通信用アンテナ100の車幅方向における進行方向左方向電波の放射領域は、L3とL4との間の領域E2である。このため、車車間通信用アンテナ100の車幅方向における電波は、進行方向左上方向の放射領域を確保できる。
【0059】
従って、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10が傾斜した状態においても、車車間通信用アンテナ100は、地面に対して水平方向の指向性を有する。これは、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10のリーン車体40が直立姿勢の時に、地面と水平方向に対し斜め方向に電波を放射することにより、電波の放射領域に上下方向の幅を持たせることができるからである。
【0060】
従って、車車間通信用アンテナ搭載リーン車両1が左又は右に旋回中に傾斜した場合においても、リーン車両の前方かつ左方向及び右方向の領域に存在する車両と、直進中と同様の状態で車車間通信を行うことができる。
【0061】
車車間通信用アンテナ100について、
図1(a)、(b)に加え、
図2(a)、(b)を参照して、より詳細に説明する。
図2(a)は、車車間通信用アンテナ100を模式的に示す横断面図である。
図2(b)は、車車間通信用アンテナ100を模式的に示す正面図である。中心線Cは、車両左右方向におけるリーン車体40の中心線を示す。
【0062】
非金属製フロントカバー25において、車両左右方向における車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の略中央には、車車間通信用アンテナ100を設けるための嵌合用開口25vが形成されている。車車間通信用アンテナ100は、嵌合用開口25vに嵌め込まれている。これにより、車車間通信用アンテナ100は、車両左右方向における車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の略中央に配置されている。車車間通信用アンテナ100は、中心線Cが車車間通信用アンテナ100と重なるように設けられている。車車間通信用アンテナ100は、アンテナ素子150を備える。アンテナ素子150は、板状に成形された樹脂母材170と、樹脂母材170内に埋設された金属製基板アンテナ部151を備える。アンテナ素子150は、例えば、金属製基板アンテナ部151が樹脂モールドされることにより形成されている。金属製基板アンテナ部151は、中心線Cが金属製基板アンテナ部151と重なるように設けられている。金属製基板アンテナ部151は、金属製基板アンテナ部151の後表面から非金属製フロントカバー25内の内部空間へ向けて突出する金属端子153を有している。金属端子153には、アンテナ線154が接続されている。アンテナ線154は、車車間通信装置50に接続されている。アンテナ線154と金属端子153との接続部分は、樹脂母材170により覆われていない。但し、アンテナ線154と金属端子153との接続部分は、樹脂母材170により覆われていてもよい。
【0063】
図2(b)に示す正面視において、金属製基板アンテナ部151は、車車間通信用アンテナ100の略中央に設けられている。車車間通信用アンテナ100の外周縁には、複数の固定用開口112が、互いに間隔を空けて形成されている。固定用開口112は、車車間通信用アンテナ100の内表面から外表面へ向けて形成されている。非金属製フロントカバー25の内面25tには、各固定用開口112と対応する位置に、固定部25uが形成されている。固定部25uには、固定用開口25rが形成されている。ボルト143が固定用開口112及び固定用開口25rに取り付けられることにより、車車間通信用アンテナ100が、非金属製フロントカバー25に固定されている。
【0064】
車車間通信用アンテナ100の樹脂母材170に埋設された金属製基板アンテナ部151は、板状である。金属製基板アンテナ部151は、車幅左右方向における中央部分が前方向へ突出するように湾曲している。金属製基板アンテナ部151の前輪郭線151pと、鉛直線とが、鈍角Qを成す。金属製基板アンテナ部151の前表面は、車車間通信用アンテナ100の前表面(外表面)と略平行乃至実質的に平行である。金属製基板アンテナ部151の後表面は、車車間通信用アンテナ100の後表面(内表面)と略平行乃至実質的に平行である。波長短縮により、金属製基板アンテナ部151がコンパクトに形成されているので、車車間通信の送受信性能が確保されつつ、金属製基板アンテナ部151が樹脂母材170内に埋設されている。金属製基板アンテナ部151の前方向には、樹脂母材170が位置している。金属製基板アンテナ部151の後方向には、樹脂母材170が位置している。金属製基板アンテナ部151の前表面は、樹脂母材170と接触するように樹脂母材170により覆われている。金属製基板アンテナ部151の後表面は、樹脂母材170と接触するように樹脂母材170により覆われている。
【0065】
直立状態の車車間通信用アンテナ搭載リーン車両10の側面視において、金属製基板アンテナ部151の前には、金属部品が配置されていない。そのため、前方への電磁波の放射が妨げられない。さらに、金属製基板アンテナ部151は、シート7よりも前に位置するので、運転者及び同乗者の体により電磁波が減衰することが抑制され得る。その結果、前方の車両(先行車両や対向車両)との車車間通信が好適に実施され得る。路車間通信も好適に実施され得る。
【0066】
上述した実施形態では、車車間通信用アンテナ100の前表面又は後表面のいずれの面においても、樹脂母材170が露出している。但し、車車間通信用アンテナ100の前表面及び後表面のうち、少なくとも1つの面に塗装が施されていてもよい。また、前記少なくとも1つの面に樹脂フィルムが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ヘッドパイプ
3 メインフレーム
5 シートフレーム
7 シート
7a 同乗者用シート
7f (シートの)前端
9 サイドカバー
10 車車間通信用アンテナ搭載リーン車両
11 グラブバー
13 テールライト
15 リアフェンダ
17 駆動系
19 リーン車輪(後輪)
19a 接地部
21 フロントフォーク
23 リーン車輪(前輪)
23a 接地部
23u 上端
25 非金属製フロントカバー
25f 前傾斜面
25p 前輪郭線
25r 固定用開口
25t 内面
25u 固定部
25v 嵌合用開口
26 非金属製ウィンドシールド
27 ヘッドライト
29 ステアリングハンドル
30 ナンバープレート
50 車車間通信装置
100 車車間通信用アンテナ
112 固定用開口
143 ボルト
150 アンテナ素子
151 金属製基板アンテナ部
151p (金属製基板アンテナ部の)前輪郭線
153 金属端子
154 アンテナ線
170 樹脂母材