(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置及びリーン車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20221128BHJP
B62J 45/413 20200101ALI20221128BHJP
【FI】
B62K5/10
B62J45/413
(21)【出願番号】P 2020539623
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034103
(87)【国際公開番号】W WO2020045623
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018161336
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】原 延男
(72)【発明者】
【氏名】坪井 栄和
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-91506(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086352(WO,A1)
【文献】特開2013-23166(JP,A)
【文献】特開2013-144471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/08 - 5/10
B62J 45/412- 45/413
B60J 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーン車両が左旋回するときにリーン車両左方にリーンし、前記リーン車両が右旋回するときにリーン車両右方にリーンする車体フレームと、
前記車体フレームに支持される少なくとも1以上の操舵輪と、
前記1以上の操舵輪を操舵するためにライダーにより操作され、前記車体フレームに回転可能に支持されるハンドルと、
前記1以上の操舵輪を操舵するトルクを前記1以上の操舵輪に付与する操舵アクチュエータと、
リーン車両前後方向に延びるロール軸に対して前記車体フレームが回転することに伴って変化するロール角の単位時間当たりの変化量であるロール角速度を検出するロール角速度センサと、
を備える前記リーン車両に用いられるリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置であって、
前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサを用いることなく、前記ロール角速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度に基づいて、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサが検出するトルクに基づかずに、
前記車体フレームが前記リーン車両左方にリーンする場合に前記操舵アクチュエータが前記ハンドルを時計回りに回転させるトルクを出力し、前記車体フレームが前記リーン車両右方にリーンする場合に前記操舵アクチュエータが前記ハンドルを反時計回りに回転させるトルクを出力するように、前記操舵アクチュエータを制御する、
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置。
【請求項2】
前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサ及び前記ロール角を検出するロール角センサを用いることなく、前記ロール角速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度に基づいて、前記トルクセンサが検出するトルク及び前記ロール角センサが検出するロール角に基づかずに、前記操舵アクチュエータを制御する、
請求項1に記載のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置。
【請求項3】
前記リーン車両は、
前記リーン車両の速度を検出する速度センサを、
更に備えており、
前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、
前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサを用いることなく、前記ロール角速度センサ及び前記速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度及び前記速度センサから取得される前記リーン車両の速度に基づいて、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサが検出するトルクに基づかずに、前記操舵アクチュエータを制御する、
又は、
前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサを用いることなく、前記ロール角速度センサ及び前記速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度及び前記速度センサから取得される前記リーン車両の速度に基づいて、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサが検出するトルクに基づかずに、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクの推定値である推定操舵トルクを推定し、前記推定操舵トルクに基づいて、前記操舵アクチュエータを制御する、
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置。
【請求項4】
前記リーン車両は、IMUを備え、
前記ロール角速度センサは、前記IMUに含まれる、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置。
【請求項5】
前記リーン車両が左旋回するときに前記リーン車両左方にリーンし、前記リーン車両が右旋回するときに前記リーン車両右方にリーンする前記車体フレームと、
前記車体フレームに支持される前記少なくとも1以上の操舵輪と、
前記1以上の操舵輪を操舵するために前記ライダーにより操作され、前記車体フレームに回転可能に支持されるハンドルと、
前記1以上の操舵輪を操舵するトルクを前記1以上の操舵輪に付与する操舵アクチュエータと、
リーン車両前後方向に延びるロール軸に対して前記車体フレームが回転することに伴って変化するロール角の単位時間当たりの変化量であるロール角速度を検出するロール角速度センサと、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置と、
を備える、
リーン車両。
【請求項6】
前記ロール角速度センサは、前記車体フレームに対して変位できないように、前記車体フレームに支持されている、
請求項5に記載のリーン車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵トルクを出力する操舵アクチュエータの制御を行うリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置及びリーン車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリーン車両としては、例えば、特許文献1に記載のリーニング車両が知られている。このリーニング車両は、車体フレーム、操舵輪、操舵トルク伝達機構、操舵トルク検出装置及びモータを備えている。
【0003】
車体フレームは、左旋回時にリーニング車両における左方にリーンし、右旋回時にリーニング車両における右方にリーンする。操舵輪は、車体フレームに支持される。操舵トルク伝達機構は、ステアリングシャフト及びハンドルバーアセンブリを含む。ステアリングシャフトは、車体フレームに回転可能に支持されている。ハンドルバーアセンブリは、ステアリングシャフトに直接的又は間接的に連結されている。操舵トルク伝達機構は、ライダーがハンドルバーアセンブリを操作することにより、ステアリングシャフトを介して操舵輪を操舵する。操舵トルク検出装置は、操舵トルク伝達機構に入力された操舵トルクを検出する。モータは、操舵トルク検出装置が検出した操舵トルクに基づいて、ライダーの操舵をアシストするトルクを発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、操舵アクチュエータの制御装置に関する新たな提案が望まれている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータの制御を行うリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置及びリーン車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1に記載のリーニング車両では、操舵トルク検出装置がステアリングシャフトに発生している操舵トルクを検出し、アクチュエータ(モータ)が操舵トルクに基づいてライダーの操作をアシストするトルクを発生している。これに対して、本願発明者は、アクチュエータをライダーの操作をアシストする装置という観点ではなく、アクチュエータを車体フレームの姿勢を制御する装置という観点で検討を行った。そこで、本願発明者は、車体フレームの姿勢が変化するときの一例として、車体フレームのロール角が変化するときにライダーが行う動作について検討を行った。
【0008】
車体フレームのロール角が変化するときには、ライダーは、ハンドルに操舵力を加える。これにより、操舵力がハンドルからステアリングシャフトに伝達され、ステアリングシャフトに操舵トルクが発生する。操舵トルクの発生に応じて、ステアリングシャフトが回転し、操舵輪が操舵される。操舵輪が操舵されると、車体フレームのロール角が変化する。すなわち、車体フレームの姿勢が変化する。このように、ライダーは、ステアリングシャフトに加わる操舵トルクを入力パラメータとして、車体フレームの姿勢の制御を行う。
【0009】
ここで、操舵力(すなわち、操舵トルク)の絶対値が大きくなれば、車体フレームのロール角が変化する速度(すなわち、ロール角速度)の絶対値が大きくなる。また、操舵力(すなわち、操舵トルク)の絶対値が小さくなれば、車体フレームのロール角速度の絶対値が小さくなる。従って、本願発明者は、操舵トルクとロール角速度との間に相関性が存在すると考えた。そこで、本願発明者は、車体フレームの姿勢の制御において、ロール角速度を操舵トルクの代わりに入力パラメータとして用いることができると考えた。すなわち、本願発明者は、ロール角速度を検出すれば、このロール角速度に基づいて車体フレームの姿勢の制御を行うことができることに思い至った。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0011】
(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、
リーン車両が左旋回するときにリーン車両左方にリーンし、前記リーン車両が右旋回するときにリーン車両右方にリーンする車体フレームと、
前記車体フレームに支持される少なくとも1以上の操舵輪と、
前記1以上の操舵輪を操舵するためにライダーにより操作され、前記車体フレームに回転可能に支持されるハンドルと、
前記1以上の操舵輪を操舵するトルクを前記1以上の操舵輪に付与する操舵アクチュエータと、
リーン車両前後方向に延びるロール軸に対して前記車体フレームが回転することに伴って変化するロール角の単位時間当たりの変化量であるロール角速度を検出するロール角速度センサと、
を備える前記リーン車両に用いられるリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置であって、
前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサを用いることなく、前記ロール角速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度に基づいて、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサが検出するトルクに基づかずに、前記操舵アクチュエータを制御する。
【0012】
(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータの制御を行うことができる。より詳細には、車体フレームのロール角を変化させる場合には、ライダーは、ハンドルを操作してハンドルの回転軸回りに操舵トルクを発生させる。これにより、車体フレームのロール角が変化して、車体フレームの姿勢変化が発生する。このように、ライダーは、ステアリングシャフトに加わる操舵トルクを入力パラメータとして、車体フレームの姿勢の制御を行うことができる。
【0013】
ここで、操舵トルクの絶対値が大きくなれば、車体フレームのロール角が変化する速度であるロール角速度の絶対値が大きくなる。操舵トルクの絶対値が小さくなれば、車体フレームのロール角速度の絶対値が小さくなる。そのため、操舵トルクとロール角速度との間に相関性が存在する。従って、車体フレームの姿勢の制御において、ロール角速度を操舵トルクの代わりに入力パラメータとして用いることができる。そこで、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、ロール角速度に基づいて、操舵アクチュエータを制御している。
【0014】
ただし、以下の理由により、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、操舵トルクを検出するトルクセンサを用いることなく、トルクセンサが検出する操舵トルクに基づくことなく、操舵アクチュエータを制御している。操舵トルクとロール角速度との間に相関性があるので、ロール角速度が検出されれば、操舵トルクが検出されなくてもよい。従って、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、従来では操舵アクチュエータの制御に利用していた操舵トルクに基づくことなく、操舵アクチュエータを制御できる。
【0015】
以上の理由により、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置では、操舵トルクを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサを用いることにより、ロール角速度センサから取得されるロール角速度に基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルクに基づかずに、操舵アクチュエータを制御できる。その結果、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。
【0016】
また、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置によれば、操舵アクチュエータの制御に操舵トルクが用いられない。そのため、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置を備えるリーン車両は、操舵トルクを検出するトルクセンサを備えなくてもよい。ただし、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置を備えるリーン車両は、操舵トルクを検出するトルクセンサを備えていてもよい。
【0017】
(2)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、(1)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置であって、
前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサ及び前記ロール角を検出するロール角センサを用いることなく、前記ロール角速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度に基づいて、前記トルクセンサが検出するトルク及び前記ロール角センサが検出するロール角に基づかずに、前記操舵アクチュエータを制御する。
【0018】
(2)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。より詳細には、本願発明者は、操舵トルクとロール角との間の相関性についても検討した。その結果、本願発明者は、ロール角速度が発生している過渡的な状態では、操舵トルクとロール角速度との間に比べて、操舵トルクとロール角との間に高い相関性が存在しないと考えた。そこで、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、操舵トルクを検出するトルクセンサ及びロール角を検出するロール角センサを用いることなく、ロール角速度センサを用いることにより、ロール角速度センサから取得されるロール角速度に基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルク及びロール角センサが検出するロール角に基づかずに、操舵アクチュエータを制御する。これにより、(2)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。
【0019】
(3)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、(1)又は(2)のいずれかのリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置であって、
前記リーン車両は、
前記リーン車両の速度を検出する速度センサを、
更に備えており、
前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサを用いることなく、前記ロール角速度センサ及び前記速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度及び前記速度センサから取得される前記リーン車両の速度に基づいて、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサが検出するトルクに基づかずに、前記操舵アクチュエータを制御する。
【0020】
(3)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。車体フレームの姿勢変化とリーン車両の速度との間には以下に説明するように相関性が存在する。リーン車両の速度の絶対値が大きくなれば、操舵輪の回転速度の絶対値も大きくなり、操舵輪が発生する角運動量の絶対値も大きくなる。従って、操舵輪が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が大きくなるので、車体フレームの姿勢が変化しにくくなる。一方、リーン車両の速度の絶対値が小さくなれば、操舵輪の回転速度の絶対値も小さくなり、操舵輪が発生する角運動量の絶対値も小さくなる。従って、操舵輪が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が小さくなるので、車体フレームの姿勢が変化しやすくなる。そこで、(3)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置では、リーン車両の速度に基づいて、操舵アクチュエータを制御する。これにより、(3)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。
【0021】
(4)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、(1)ないし(3)のいずれかのリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置であって、
前記リーン車両は、
前記リーン車両の速度を検出する速度センサを、
更に備えており、
前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサを用いることなく、前記ロール角速度センサ及び前記速度センサを用いることにより、前記ロール角速度センサから取得されるロール角速度及び前記速度センサから取得される前記リーン車両の速度に基づいて、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサが検出するトルクに基づかずに、前記ライダーの操作により前記ハンドルの回転軸回りに発生するトルクの推定値である推定操舵トルクを推定し、前記推定操舵トルクに基づいて、前記操舵アクチュエータを制御する。
【0022】
(4)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。車体フレームの姿勢変化とリーン車両の速度との間には以下に説明するように相関性が存在する。リーン車両の速度の絶対値が大きくなれば、操舵輪の回転速度の絶対値も大きくなり、操舵輪が発生する角運動量の絶対値も大きくなる。従って、操舵輪が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が大きくなるので、車体フレームの姿勢が変化しにくくなる。一方、リーン車両の速度の絶対値が小さくなれば、操舵輪の回転速度の絶対値も小さくなり、操舵輪が発生する角運動量の絶対値も小さくなる。従って、操舵輪が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が小さくなるので、車体フレームの姿勢が変化しやすくなる。そこで、(4)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、操舵トルクを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサ及びリーン車両の速度を検出する速度センサを用いることにより、ロール角速度センサから取得されるロール角速度及び速度センサから取得されるリーン車両の速度に基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルクに基づかずに、操舵トルクの推定値である推定操舵トルクを推定し、推定操舵トルクに基づいて、操舵アクチュエータを制御する。これにより、(4)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。
【0023】
(5)のリーン車両は、
前記リーン車両が左旋回するときに前記リーン車両左方にリーンし、前記リーン車両が右旋回するときに前記リーン車両右方にリーンする前記車体フレームと、
前記車体フレームに支持される前記少なくとも1以上の操舵輪と、
前記1以上の操舵輪を操舵するために前記ライダーにより操作され、前記車体フレームに回転可能に支持されるハンドルと、
前記1以上の操舵輪を操舵するトルクを前記1以上の操舵輪に付与する操舵アクチュエータと、
リーン車両前後方向に延びるロール軸に対して前記車体フレームが回転することに伴って変化するロール角の単位時間当たりの変化量であるロール角速度を検出するロール角速度センサと、
(1)ないし(4)のいずれかの前記リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置と、
を備える。
【0024】
(5)のリーン車両によれば、(1)ないし(4)のリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置と同じ理由により、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータを制御することができる。
【0025】
(6)のリーン車両は、(5)のリーン車両であって、
前記ロール角速度センサは、前記車体フレームに対して変位できないように、前記車体フレームに支持されている。
【0026】
(6)のリーン車両によれば、ロール角速度センサの姿勢変化が車体フレームの姿勢変化に対して大きく遅延することが抑制されるようになる。
【0027】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0028】
本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0030】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0031】
一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0032】
本発明の説明においては、技術及び工程の数が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0033】
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータの制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】
図2は、リーン車両1aを後方Bに見た模式図である。
【
図3】
図3は、リーン車両1aを下方Dに見た模式図である。
【
図4】
図4は、リーン車両1aを後方Bに見た模式図である。
【
図5】
図5は、第1試験車両における相関係数と速度との関係を示したグラフである。
【
図6】
図6は、第2試験車両における相関係数と速度との関係を示したグラフである。
【
図7】
図7は、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606のブロック図である。
【
図8】
図8は、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が行う動作を示したフローチャートである。
【
図9】
図9は、車体フレーム
1021が直立状態であるリーン車両1bを車体フレーム
1021における右方に見た図である。
【
図10】
図10は、車体フレーム
1021が直立状態であるリーン車両1bの前部を車体フレーム
1021における後方に見た図である。
【
図11】
図11は、車体フレーム1021が直立状態であるリーン車両1bの前部を下方dに見た図である。
【
図12】
図12は、リーン車両1bを左操舵させた状態のリーン車両1bの前部を下方dに見た図である。
【
図13】
図13は、車体フレーム1021が左方Lに傾斜した状態のリーン車両1bの前部を後方bに見た図である。
【
図14】
図14は、アクチュエータ制御装置1606のブロック図である。
【
図15】
図15は、アクチュエータ制御装置1606が行う動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(概要)
以下、概要に係るリーン車両1の全体構成について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、リーン車両の一例として、傾斜可能な車体フレームと1つの前輪と1つの後輪とを有する二輪リーン車両(以下、リーン車両と称する)を例示する。
図1Aは、リーン車両1を右方Rに見た図である。
【0037】
リーン車両1は、1以上の操舵輪3o、車体フレーム21、ハンドル60、操舵アクチュエータ600、ロール角速度センサ602及びリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を備えている。
【0038】
車体フレーム21は、リーン車両1が左旋回するときにリーン車両左方にリーンし、リーン車両1が右旋回するときにリーン車両右方にリーンする。1以上の操舵輪3oは、車体フレーム21に支持される。1以上の操舵輪3oは、操舵可能な複数の車輪を含んでいてもよい。
【0039】
ハンドル60は、1以上の操舵輪3oを操舵するためにライダーにより操作される。ハンドル60は、車体フレーム21に回転可能に支持されている。ハンドル60は、車体フレーム上下方向に延びるステアリングシャフトに接続されている。ステアリングシャフトは、車体フレーム21に支持されている。これにより、ハンドル60は、ステアリングシャフトの中心軸を中心に車体フレーム12に対して回転することができる。このようなハンドル60は、例えば、車体フレーム左右方向に延びるバーハンドルである。
【0040】
操舵アクチュエータ600は、1以上の操舵輪3oを操舵するトルクを1以上の操舵輪3oに付与する。操舵とは、車体フレーム下方に見たときに、1以上の操舵輪3oが時計回り方向又は反時計回り方向に回転する動作である。
【0041】
ロール角速度センサ602は、リーン車両前後方向に延びるロール軸Axに対して車体フレーム21が回転することに伴って変化するロール角の単位時間当たりの変化量であるロール角速度を検出する。
【0042】
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、1以上の操舵輪3o、車体フレーム21、ハンドル60、操舵アクチュエータ600及びロール角速度センサ602を備えるリーン車両1に用いられる。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ライダーの操作によりハンドル60の回転軸回りに発生する操舵トルクTを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサ602を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度に基づいて、ライダーの操作によりハンドル60の回転軸回りに発生する操舵トルクTを検出するトルクセンサが検出するトルクに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御する。
【0043】
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600の制御を行うことができる。より詳細には、車体フレーム21のロール角を変化させる場合には、ライダーは、ハンドル60を操作してハンドル60の回転軸回りに操舵トルクを発生させる。これにより、車体フレーム21のロール角が変化して、車体フレーム21の姿勢変化が発生する。このように、ライダーは、ステアリングシャフトに加わる操舵トルクを入力パラメータとして、車体フレーム21の姿勢の制御を行うことができる。
【0044】
ここで、操舵トルクの絶対値が大きくなれば、車体フレーム21のロール角が変化するロール角速度の絶対値が大きくなる。操舵トルクの絶対値が小さくなれば、車体フレーム21のロール角速度の絶対値が小さくなる。そのため、操舵トルクとロール角速度との間に相関性が存在する。従って、車体フレーム21の姿勢の制御において、ロール角速度を操舵トルクの代わりに入力パラメータとして用いることができる。そこで、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角速度に基づいて、操舵アクチュエータ600を制御している。
【0045】
ただし、以下の理由により、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、操舵トルクを検出するトルクセンサを用いることなく、トルクセンサが検出する操舵トルクに基づくことなく、操舵アクチュエータ600を制御している。操舵トルクとロール角速度との間に相関性があるので、ロール角速度が検出されれば、操舵トルクが検出されなくてもよい。従って、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、従来では操舵アクチュエータ600の制御に利用していた操舵トルクに基づくことなく、操舵アクチュエータ600を制御できる。
【0046】
以上の理由により、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606では、操舵トルクを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサ602を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度に基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルクに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御できる。その結果、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。
【0047】
また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、操舵アクチュエータ600の制御に操舵トルクが用いられない。そのため、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を備えるリーン車両1は、操舵トルクを検出するトルクセンサを備えなくてもよい。ただし、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を備えるリーン車両1は、操舵トルクを検出するトルクセンサを備えていてもよい。
【0048】
(第1実施形態)
[全体構成]
以下、第1の実施形態に係るリーン車両1aの全体構成について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、リーン車両の一例として、傾斜可能な車体フレームと1つの前輪と1つの後輪とを有する二輪リーン車両(以下、リーン車両と称する)を例示する。
図1Bは、リーン車両1aを右方Rに見た図である。
図2は、リーン車両1aを後方Bに見た模式図である。
図2では、リーン車両1aは直立状態である。
図2は、模式図であるので、
図1Bとサイズ等において一致しない部分がある。また、
図2では、要部のみが図示され、車体カバー22が省略されている。
【0049】
以下では、リーン車両1aの前後方向における前方を前方F(リーン車両前方)と呼ぶ。リーン車両1aの前後方向における後方を後方B(リーン車両後方)と呼ぶ。リーン車両1aの左右方向における左方を左方L(リーン車両左方)と呼ぶ。リーン車両1aの左右方向における右方を右方R(リーン車両右方)と呼ぶ。リーン車両1aの上下方向における上方を上方U(リーン車両上方)と呼ぶ。リーン車両1aの上下方向における下方を下方D(リーン車両下方)と呼ぶ。リーン車両1aの前後方向を前後方向FB(リーン車両前後方向)と呼ぶ。リーン車両1aの左右方向を左右方向LR(リーン車両左右方向)と呼ぶ。リーン車両1aの上下方向を上下方向UD(リーン車両上下方向)と呼ぶ。リーン車両1aの前後方向における前方とは、リーン車両1aに跨ったライダーを基準として前方である。リーン車両1aの前後方向における後方とは、リーン車両1aに跨ったライダーを基準として後方である。リーン車両1aの左右方向における左方とは、リーン車両1aに跨ったライダーを基準として左方である。リーン車両1aの左右方向における右方とは、リーン車両1aに跨ったライダーを基準として右方である。リーン車両1aの上下方向における上方とはそれぞれ、リーン車両1aに跨ったライダーを基準として上方である。リーン車両1aの上下方向における下方とはそれぞれ、リーン車両1aに跨ったライダーを基準として下方である。
【0050】
また、リーン車両1aでは、車体フレーム21が左方L又は右方Rに傾斜できる。車体フレーム21が左方L又は右方Rに傾斜した場合には、車体フレーム21の上下方向及び左右方向はそれぞれ、リーン車両1aの上下方向UD及び左右方向LRと一致しない。一方、直立状態の車体フレーム21の上下方向及び左右方向はそれぞれ、リーン車両1aの上下方向UD及び左右方向LRと一致する。以下では、車体フレーム21の前後方向における前方を前方f(車体フレーム前方)と呼ぶ。車体フレーム21の前後方向における後方を後方b(車体フレーム後方)と呼ぶ。車体フレーム21の左右方向における左方を左方l(車体フレーム左方)と呼ぶ。車体フレーム21の左右方向における右方を右方r(車体フレーム右方)と呼ぶ。車体フレーム21の上下方向における上方を上方u(車体フレーム上方)と呼ぶ。車体フレーム21の上下方向における下方を下方d(車体フレーム下方)と呼ぶ。車体フレーム21の前後方向を前後方向fb(車体フレーム前後方向)と呼ぶ。車体フレーム21の左右方向を左右方向lr(車体フレーム左右方向)と呼ぶ。車体フレーム21の上下方向を上下方向ud(車体フレーム上下方向)と呼ぶ。
【0051】
本明細書において、前後方向に延びる軸や部材は、必ずしも前後方向と平行である軸や部材だけを示すものではない。前後方向に延びる軸や部材とは、前後方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。同様に、上下方向に延びる軸や部材とは、上下方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。左右方向に延びる軸や部材とは、左右方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。また、車体フレーム21の直立状態とは、ライダーが乗車せず、リーン車両1aに燃料を搭載していない状態における、前輪が操舵も傾斜もしていない状態を意味する。
【0052】
本明細書において、第1部材が第2部材に支持されているとは、第1部材が第2部材に対して移動不可能に第2部材に取り付けられている(すなわち、固定されている)場合、及び、第1部材が第2部材に対して移動可能に第2部材に取り付けられている場合を含む。また、第1部材が第2部材に支持されているとは、第1部材が第2部材に直接に取り付けられている場合、及び、第1部材が第3部材を介して第2部材に取り付けられている場合の両方を含む。
【0053】
本明細書において、前後方向に並ぶ第1部材及び第2部材とは、以下の状態を示す。前後方向に垂直な方向から第1部材及び第2部材を見たときに、第1部材及び第2部材の両方が前後方向を示す任意の直線上に配置されている状態である。本明細書において、上下方向に見て前後方向に並ぶ第1部材及び第2部材とは、以下の状態を示す。上下方向から第1部材及び第2部材を見たときに、第1部材及び第2部材の両方が前後方向を示す任意の直線上に配置されている。この場合、上下方向とは異なる左右方向から第1部材及び第2部材を見ると、第1部材及び第2部材のいずれか一方が前後方向を示す任意の直線上に配置されていなくてもよい。なお、第1部材と第2部材とが接触していてもよい。第1部材と第2部材とが離れていてもよい。第1部材と第2部材との間に第3部材が存在していてもよい。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0054】
本明細書において、第1部材が第2部材より前方に配置されるとは、以下の状態を指す。第1部材は、第2部材の前端を通り前後方向に直交する平面の前方に配置される。この場合、第1部材及び第2部材は、前後方向に並んでいてもよく、並んでいなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0055】
本明細書において、第1部材が第2部材の前方に配置されるとは、以下の状態を指す。第1部材の少なくとも一部は、第2部材が前方に平行移動するときに通過する領域内に配置されている。よって、第1部材は、第2部材が前方に平行移動するときに通過する領域内に収まっていてもよいし、第2部材が前方に平行移動するときに通過する領域からはみ出していてもよい。この場合、第1部材及び第2部材は、前後方向に並んでいる。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0056】
本明細書において、左右方向に見て、第1部材が第2部材の前方に配置されるとは、以下の状態を指す。左右方向に見て、第1部材と第2部材が前後方向に並んでおり、且つ、左右方向に見て、第1部材の第2部材と対向する部分が、第2部材の前方に配置される。この定義において、第1部材と第2部材は、3次元では、前後方向に並んでいなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向も適用される。
【0057】
本明細書において、特に断りのない場合には、第1部材の各部について以下のように定義する。第1部材の前部とは、第1部材の前半分を意味する。第1部材の後部とは、第1部材の後半分を意味する。第1部材の左部とは、第1部材の左半分を意味する。第1部材の右部とは、第1部材の右半分を意味する。第1部材の上部とは、第1部材の上半分を意味する。第1部材の下部とは、第1部材の下半分を意味する。第1部材の上端とは、第1部材の上方の端を意味する。第1部材の下端とは、第1部材の下方の端を意味する。第1部材の前端とは、第1部材の前方の端を意味する。第1部材の後端とは、第1部材の後方の端を意味する。第1部材の右端とは、第1部材の右方の端を意味する。第1部材の左端とは、第1部材の左方の端を意味する。第1部材の上端部とは、第1部材の上端及びその近傍を意味する。第1部材の下端部とは、第1部材の下端及びその近傍を意味する。第1部材の前端部とは、第1部材の前端及びその近傍を意味する。第1部材の後端部とは、第1部材の後端及びその近傍を意味する。第1部材の右端部とは、第1部材の右端及びその近傍を意味する。第1部材の左端部とは、第1部材の左端及びその近傍を意味する。第1部材とは、リーン車両1aを構成する部材を意味する。
【0058】
図1Bに示すように、リーン車両1aは、車両本体部2、前輪3、後輪4及び操舵機構7を備えている。車両本体部2は、車体フレーム21、車体カバー22、シート24、パワーユニット25及びスイングアーム26を含んでいる。
【0059】
車体フレーム21は、リーン車両1aが左旋回するときに左方Lに傾斜する。車体フレーム21は、リーン車両1aが右旋回するときに右方Rに傾斜する。
図1Bでは、車体フレーム21を太線で図示した。ただし、車体フレーム21は、車体カバー22に覆われているため、本来であれば、
図1Bでは視認されない。
【0060】
車体フレーム21は、ヘッドパイプ211、メインフレーム212及びシートレール213を含んでいる。ヘッドパイプ211は、リーン車両1aの前部に配置されている。リーン車両1aの前部とは、リーン車両1aにおいてシート24の前端より前方fに位置する部分である。リーン車両1aの後部とは、リーン車両1aにおいてシート24の前端より後方bに位置する部分である。ヘッドパイプ211は、左方l又は右方rに見たときに、ヘッドパイプ211の下端部よりヘッドパイプ211の上端部が後方bに位置するように、上下方向udに対して傾斜して配置されている。
【0061】
メインフレーム212は、右方rに見たときに、ヘッドパイプ211の後方bに配置されている。シートレール213は、メインフレーム212から後方bかつ上方uに直線的に延びている。
【0062】
スイングアーム26は、右方rに見たときに、メインフレーム212の下部かつ後部から後方bに延びている。スイングアーム26は、スイングアーム26の前端部を中心に回転できるようにメインフレーム212に支持されている。これにより、スイングアーム26の後端部は、上下動することができる。
【0063】
車体カバー22は、車体フレーム21を覆っている。また、車体カバー22は、パワーユニット25の一部を覆っている。
【0064】
シート24には、ライダーが着座する。シート24は、シートレール213に支持されている。パワーユニット25は、エンジン又は電気モータ等の駆動源と、ミッション装置等の駆動伝達系を有している。パワーユニット25は、メインフレーム212に支持されている。
【0065】
操舵機構7は、ヘッドパイプ211の周囲に配置されている。操舵機構7は、ライダーの操作により前輪3を操舵する。操舵機構7は、
図2に示すように、ハンドル60、ステアリングシャフト62、フロントフォーク64、アッパーブラケット66及びアンダーブラケット68を含んでいる。ハンドル60は、前輪3を操舵するためにライダーにより操作される。ハンドル60は、車体フレーム21に回転可能に支持される。ステアリングシャフト62は、ライダーによるハンドル60の操作によりステアリングシャフト62の中心軸を中心に回転できるように車体フレーム21に支持されている。より詳細には、アッパーブラケット66及びアンダーブラケット68は、
図2に示すように、左右に延びる板状部材である。アッパーブラケット66は、ヘッドパイプ211の上方uに配置されている。アンダーブラケット68は、ヘッドパイプ211の下方dに配置されている。ステアリングシャフト62は、ヘッドパイプ211に挿入されることにより、ヘッドパイプ211に回転可能に支持されている。更に、ステアリングシャフト62は、アッパーブラケット66及びアンダーブラケット68に固定されている。ハンドル60は、アッパーブラケット66に固定されている。
【0066】
フロントフォーク64は、アッパーブラケット66及びアンダーブラケット68に固定されている。具体的には、フロントフォーク64は、
図2に示すように、左緩衝装置64L及び右緩衝装置64Rを含んでいる。左緩衝装置64Lは、アッパーブラケット66及びアンダーブラケット68から下方dに延びている。左緩衝装置64Lは、直立状態の車体フレーム21における左右方向lrの中央より左方lに配置される。右緩衝装置64Rは、アッパーブラケット66及びアンダーブラケット68から下方dに延びている。右緩衝装置64Rは、直立状態の車体フレーム21における左右方向lrの中央より右方rに配置される。これにより、ライダーがハンドル60を回転させると、ステアリングシャフト62、フロントフォーク64、アッパーブラケット66及びアンダーブラケット68がステアリングシャフト62の中心軸を中心に一体となって回転する。
【0067】
左緩衝装置64L及び右緩衝装置64Rは、いわゆるテレスコピック式の緩衝装置である。左緩衝装置64L及び右緩衝装置64Rは、例えば、ダンパー及びスプリングの組み合わせにより構成される。左緩衝装置64L及び右緩衝装置64Rは、上下方向udに伸縮することにより、後述する前輪3の上下方向udにおける変位を緩衝する。
【0068】
前輪3は、リーン車両1aの操舵輪である。前輪3は、リーン車両1aの前部に配置される。前輪3は、アクスルを中心として回転できるようにフロントフォーク64の下端部に支持される。すなわち、前輪3は、操舵機構7を介して車体フレーム21に支持されている。これにより、ライダーは、ハンドル60を操作することにより、前輪3を操舵することができる。
【0069】
後輪4は、リーン車両1aの駆動輪である。従って、後輪4は、パワーユニット25の駆動力により回転させられる。後輪4は、リーン車両1aの後部に配置される。後輪4は、アクスルを中心として回転できるようにスイングアーム26の後端部に支持される。
【0070】
[操舵動作]
次に、リーン車両1aの操舵動作について図面を参照しながら説明する。
図3は、リーン車両1aを下方Dに見た模式図である。
図3では、前輪3が左方Lに操舵された状態、前輪3が操舵されていない状態、及び、前輪3が右方Rに操舵された状態を示した。また、
図3に示すように、下方dに見たときに、ハンドル60を反時計回りに回転させる方向を正方向と定義する。下方dに見たときに、ハンドル60を時計回りに回転させる方向を負方向と定義する。
【0071】
図3に示すように、下方Dに見たときに、ライダーがハンドル60を反時計回り(正方向)に回転させると、前輪3が反時計回りに回転させられる。すなわち、前輪3が左方Lに操舵(左操舵)される。
【0072】
図3に示すように、下方Dに見たときに、ライダーがハンドル60を時計回り(負方向)に回転させると、前輪3が時計回りに回転させられる。すなわち、前輪3が右方Rに操舵(右操舵)される。
【0073】
[傾斜動作]
次に、リーン車両1aの傾斜動作について図面を参照しながら説明する。
図4は、リーン車両1aを後方Bに見た模式図である。
図4では、車体フレーム21が左方L及び右方Rに傾斜した状態を示した。なお、
図4では、車体フレーム21が左方Lに傾斜しているときには、セルフステアリングで前輪3が左操舵されている状態を示した。また、
図4では、車体フレーム21が右方Rに傾斜しているときには、セルフステアリングで前輪3が右操舵されている状態を示した。
【0074】
車体フレーム21は、ロール軸Axを中心に回転することにより、左方L又は右方Rに傾斜する。ロール軸Axは、前後方向FBに延びる軸である。より詳細には、
図1Bに示すように、ロール軸Axは、直立状態の車体フレーム21において、後輪4が地面に接している点を通過し、かつ、ステアリングシャフト62に直交する直線である。ロール軸Axは、後方bに見たときに、直立状態の車体フレーム21の左右方向lrの中央に位置する。
【0075】
また、ロール角θは、ロール軸Axを中心に車体フレーム21が回転することに伴って変化する車体フレーム21のロール軸Ax回りにおける回転角である。以下では、
図2に示すように、直立状態の車体フレーム21における左右方向lrの中央を通過し、上下方向udに延びる直線を中央線Cと定義する。中央線Cは、
図4に示すように、車体フレーム21の左方L又は右方Rへの傾斜に伴って、車体フレーム21と共に左方L又は右方Rに傾斜する。ロール角θは、鉛直軸と中央線Cとがなす角度である。鉛直軸は、上下方向UDと平行な軸である。なお、ロール角θは、路面の法線と中央線Cがなす角度であってもよい。ただし、ロール軸Axの定義は、上記定義に限らず、その他の定義が適用されてもよい。
【0076】
更に、
図4に示すように、車体フレーム21が左方Lに傾斜する方向をロール角θの正方向と定義する。すなわち、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に時計回りに回転する方向をロール角θの正方向と定義する。また、車体フレーム21が右方Rに傾斜する方向をロール角θの負方向と定義する。すなわち、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に反時計回りに回転する方向をロール角θの負方向と定義する。ロール角θは、-90°以上90°以下の範囲で変化する。
【0077】
図4に示すように、車体フレーム21は、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に時計回りに回転し、左方Lに傾斜する。このとき、ロール角θは正の値を取る。また、セルフステアリングにより、前輪3は、左操舵される。リーン車両1aは、左方Lに旋回する。
【0078】
図4に示すように、車体フレーム21は、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に反時計回りに回転し、右方Rに傾斜する。また、セルフステアリングにより、前輪3は、右操舵される。このとき、ロール角θは負の値を取る。リーン車両1aは、右方Rに旋回する。
【0079】
[リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置]
次に、リーン車両1aのリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606について図面を参照しながら説明する。
図5は、第1試験車両における相関係数と速度との関係を示したグラフである。
図6は、第2試験車両における相関係数と速度との関係を示したグラフである。縦軸は相関係数を示し、横軸は車両の速度を示す。
図7は、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606のブロック図である。
【0080】
本願発明者は、ロール角速度ωと操舵トルクTとの間の相関性を明らかにするために、以下に説明する実験を行った。操舵トルクTは、ライダーがハンドル60を操作することによりステアリングシャフト62に発生するトルクである。より詳細には、操舵トルクTは、速度Vで走行するリーン車両1aの車体フレーム21のロール角θがロール角速度ωで変化しているときに、ライダーがハンドル60を操作することによりステアリングシャフト62に入力されるトルクである。操舵トルクTは、ステアリングシャフト62回りに発生するモーメントである。下方dに見たときに、操舵トルクTが反時計回りに発生している場合には、ステアリングシャフト62が操舵トルクTにより反時計回り(正方向)に回転させられる。下方dに見たときに、操舵トルクTが時計回りに発生している場合には、ステアリングシャフト62が操舵トルクTにより時計回り(負方向)に回転させられる。
【0081】
本願発明者は、第1試験車両及び第2試験車両を準備した。第1試験車両は、スポーツタイプの自動三輪車である。スポーツタイプの自動三輪車は、2つの前輪及び1つの後輪を備えた車両である。第2試験車両は、スポーツタイプの自動二輪車である。本願発明者は、第1試験車両及び第2試験車両を走行させて、ロール角速度ω及び操舵トルクTを7種類の速度及び2種類のロール角θにおいて測定した。具体的には、本願発明者は、第1試験車両及び第2試験車両を7種類の速度Vで走行させて、操舵トルクTを変化させた。本願発明者は、走行中にハンドルを操作することにより操舵トルクTを変化させた。本願発明者は、走行中において、操舵トルクTと時間との関係を測定すると共に、ロール角速度ωと時間との関係を測定した。操舵トルクTの測定にはトルクセンサを用いた。ロール角速度の測定にはロール角速度センサを用いた。そして、ロール角速度ωと操舵トルクTとの相関係数を計算した。7種類の速度Vは、20km/h、40km/h、60km/h、80km/h、100km/h、120km/h、140km/hである。2種類のロール角θは、8°及び20°である。ここでの相関係数は、ピアソン積率相関係数である。
【0082】
図5及び
図6によれば、ロール角速度ωと操舵トルクTとの間には高い相関性が存在することが理解できる。また、速度Vが大きくなれば、ロール角速度ωと操舵トルクTとの相関係数が高くなっている。特に、速度が40km/h以上であれば、相関係数が0.8以上となり、速度が60km/h以上であれば、相関係数が0.9以上となっている。以上より、本願発明者は、ロール角速度ωと操舵トルクTとの間に高い相関性があることを実験で確認した。従って、本願発明者は、ロール角速度ωに基づいて操舵トルクTを推定することができると考えた。そして、本願発明者は、推定した操舵トルクTに基づいて、ライダーのハンドル60の操舵をアシストできると考えた。そこで、リーン車両1aは、以下に説明するリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を備える。
【0083】
図1Bに示すように、リーン車両1aは、操舵アクチュエータ600、ロール角速度センサ602、速度センサ604及びリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を更に備える。
【0084】
操舵アクチュエータ600は、電力の供給を受けて、ステアリングシャフト62の中心軸を中心にステアリングシャフト62を回転させる補助操舵トルクTcを出力する。より詳細には、操舵アクチュエータ600は、
図2に示すように、ヘッドパイプ211の上端部に固定されている。操舵アクチュエータ600は、電気モータ及びギアの組み合わせである。電気モータはトルクを発生する。電気モータが発生したトルクは、ギアを介してステアリングシャフト62に補助操舵トルクTcとして出力される。
【0085】
ロール角速度センサ602は、ロール角θの単位時間当たりの変化量であるロール角速度ωを検出する。車体フレーム21が左方Lに傾斜する方向をロール角速度ωの正方向と定義する。すなわち、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に時計回りに回転する方向をロール角速度ωの正方向と定義する。また、車体フレーム21が右方Rに傾斜する方向をロール角速度ωの負方向と定義する。すなわち、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に反時計回りに回転する方向をロール角速度ωの負方向と定義する。
【0086】
速度センサ604は、リーン車両1aの速度Vを検出する。速度Vは、リーン車両1aが前進しているときに正の値を取る。
【0087】
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、例えば、操舵アクチュエータ600の制御用のIC(Integrated Circuit)である。ただし、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、一つのICにより実現されている必要はなく、1以上のIC、1以上の電子部品及び1以上の回路基板の組み合わせであってもよい。
【0088】
ところで、操舵アクチュエータ600、ロール角速度センサ602及びリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が互いに変位しないように組み合わされている。より詳細には、ロール角速度センサ602及びリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、例えば、操舵アクチュエータ600の筐体内に固定されている。ロール角速度センサ602及びリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606の操舵アクチュエータ600に対する固定方法としては、ボルト及びナットの組み合わせ、ねじ、スナップフィット、接着剤、粘着テープ、溶接、溶着、ロウ付け等が挙げられる。ここで、操舵アクチュエータ600は、ステアリングシャフト62に補助操舵トルクTcを出力する。そのため、操舵アクチュエータ600は、車体フレーム21に対して変位できないように支持されている。これにより、ロール角速度センサ602及びリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が操舵アクチュエータ600に対して変位できないと共に、操舵アクチュエータ600が車体フレーム21に対して変位できない。本明細書において、第1部材が第2部材に対して変位できないように第2部材に支持される場合には、第1部材と第2部材との間にラバーマウント等の衝撃吸収用の弾性体が存在しない。また、ロール角速度センサ602は、後方Bに見たときに、中央線C上に配置されている。
【0089】
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606の説明に戻る。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角速度センサ602からロール角速度ωを取得する。すなわち、ロール角速度センサ602が検出したロール角速度ωの電気信号(以下では、単にロール角速度ωと呼ぶ)が、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606に入力されてくる。
【0090】
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度センサ604から速度Vを取得する。すなわち、速度センサ604が検出した速度Vの電気信号(以下では、単に速度Vと呼ぶ)が、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606に入力されてくる。
【0091】
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ライダーの操作によりハンドル60の回転軸(ステアリングシャフト62の中心軸)回りに発生する操舵トルクTを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサ602を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度ωに基づいて、ライダーの操作によりハンドル60のステアリングシャフト62回りに発生する操舵トルクTを検出するトルクセンサが検出する操舵トルクTに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御する。本実施形態では、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、操舵トルクTを検出するトルクセンサ及びロール角θを検出するロール角センサを用いることなく、ロール角速度センサ602及び速度センサ604を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度ω及び速度センサ604から取得される速度Vに基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルクT及びロール角センサが検出するロール角θに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御する。トルクセンサ及びロール角センサを用いることなくとは、例えば、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606がトルクセンサ及びロール角センサから出力されてくる信号を制御に用いないことを意味する。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606がロール角速度センサ602及び速度センサ604を用いることとは、例えば、ロール角速度センサ602及び速度センサ604から出力されてくる信号を制御に用いることを意味する。
【0092】
本実施形態では、特に、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ライダーの操作によりハンドル60の回転軸回りに発生するトルクを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサ602及びリーン車両1aの速度を検出する速度センサ604を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度ω及び速度センサ604から取得されるリーン車両1aの速度Vに基づいて、ライダーの操作によりハンドル60の回転軸回りに発生する操舵トルクTを検出するトルクセンサが検出する操舵トルクTに基づかずに、ライダーの操作によりハンドル60の回転軸回りに発生する操舵トルクTの推定値である推定操舵トルクT(m,n)を推定し、推定操舵トルクT(m,n)に基づいて、操舵アクチュエータ600を制御する。
【0093】
そこで、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、トルク推定部614及び電流決定部616を含んでいる。トルク推定部614は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、操舵トルクTの推定値である推定操舵トルクT(m,n)を決定する。m及びnは、整数である。推定操舵トルクT(m,n)は、速度Vで走行するリーン車両1aの車体フレーム21のロール角θがロール角速度ωで変化しているときに、ライダーがハンドル60を操作することによりステアリングシャフト62に入力されると推定される操舵トルクTである。トルク推定部614は、表1に示す推定操舵トルク決定テーブルを記憶している。
【0094】
【0095】
推定操舵トルク決定テーブルには、速度V(m)とロール角速度ω(n)とに対応する推定操舵トルクT(m,n)が記録されている。速度V(m)は、0km/hより大きな数値である。mが大きくなるにしたがって、速度V(m)が大きくなる。従って、V(m)<V(m+1)が成立する。
【0096】
ロール角速度ω(n)は、nが正である場合、正の値を取る。このとき、nが大きくなるにしたがって、ロール角速度ω(n)が大きくなる。一方、ロール角速度ω(n)は、nが負である場合、負の値を取る。このとき、nが小さくなるにしたがって、ロール角速度ω(n)が小さくなる(ただし、ロール角速度ω(n)の絶対値は大きくなる。)。従って、ω(n)<ω(n+1)が成立する。
【0097】
ここで、前進中のリーン車両1aでは、ライダーがハンドル60を時計回り(負方向)に回転させると、前輪3は、正の値のロール角速度ω(n)で回転させられる。例えば、直立状態の車体フレーム21では、ライダーがハンドル60を時計回り(負方向)に回転させると、前輪3が右操舵される。このとき、車体フレーム21が左方Lに傾斜する。一方、前進中のリーン車両1aでは、ライダーがハンドルを反時計回り(正方向)に回転させると、前輪3は、負の値のロール角速度ω(n)で回転させられる。例えば、直立状態の車体フレーム21では、ライダーがハンドルを反時計回り(正方向)に回転させると、前輪3が左操舵される。このとき、車体フレーム21が右方Rに傾斜する。このように、ライダーは、ロール角速度ω(n)を発生させるために、逆操舵を行う。そのため、推定操舵トルクT(m,n)とm及びnとの関係は以下のようになる。
【0098】
nが正である場合(ロール角速度ω(n)が正の値である場合)、推定操舵トルクT(m,n)は負の値を取る。そのため、推定操舵トルクT(m,n)は、下方dに見たときに、ステアリングシャフト62を時計回り(負方向)に回転させる操舵トルクである。このとき、nが大きくなるにしたがって(ロール角速度ω(n)が大きくなるにしたがって)、推定操舵トルクT(m,n)が小さくなる(ただし、推定操舵トルクT(m,n)の絶対値は大きくなる)。また、mが大きくなるにしたがって(速度V(m)が大きくなるにしたがって)、推定操舵トルクT(m,n)が小さくなる(ただし、推定操舵トルクT(m,n)の絶対値は大きくなる)。
【0099】
一方、nが負である場合(ロール角速度ω(n)が負の値である場合)、推定操舵トルクT(m,n)は正の値を取る。そのため、推定操舵トルクT(m,n)は、下方dに見たときに、ステアリングシャフト62を反時計回り(正方向)に回転させる操舵トルクである。このとき、nが小さくなるにしたがって(ロール角速度ω(n)が小さくなるにしたがって)、推定操舵トルクT(m,n)が大きくなる。また、mが大きくなるにしたがって(速度V(m)が大きくなるにしたがって)、推定操舵トルクT(m,n)が大きくなる。
【0100】
トルク推定部614は、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が取得した速度Vに最も近い速度V(m)を特定する。また、トルク推定部614は、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が取得したロール角速度ωに最も近いロール角速度ω(n)を特定する。そして、トルク推定部614は、表1に基づいて、速度V(m)及びロール角速度ω(n)に対応する推定操舵トルクT(m,n)を決定する。
【0101】
電流決定部616は、トルク推定部614が決定した推定操舵トルクT(m,n)に基づいて、操舵アクチュエータ600を制御する。具体的には、電流決定部616は、推定操舵トルクT(m,n)に基づいて、操舵アクチュエータ600に出力すべき制御用電流I(m,n)を決定する。そこで、電流決定部616は、表2に示す制御用電流決定テーブルを記憶している。
【0102】
【0103】
制御用電流決定テーブルには、推定操舵トルクT(m,n)と制御用電流I(m,n)とが対応付けられて記録されている。制御用電流I(m,n)は、操舵アクチュエータ600が推定操舵トルクT(m,n)のアシスト率(例えば、20%)に相当する補助操舵トルクTcをステアリングシャフト62に出力するのに必要な電流である。すなわち、操舵アクチュエータ600は、推定操舵トルクT(m,n)の20%に相当する補助操舵トルクTcをステアリングシャフト62に出力する。これにより、ライダーは、推定操舵トルクT(m,n)の80%に相当するトルクがステアリングシャフト62に付与されるようにハンドル60を操作すればよい。このように、操舵アクチュエータ600は、ライダーのハンドル60の操作をアシストする。なお、アシスト率は、任意の値であり、20%以外の値であってもよい。そのため、ライダーがハンドル60をより小さな力で操作できるようにする場合には、アシスト率は20%より大きな値となる。ライダーがハンドル60をより大きな力で操作できるようにする場合には、アシスト率は20%より小さな値となる。なお、アシスト率は、負の値であってもよい。この場合、操舵アクチュエータ600は、ライダーがハンドル60を操作することの抵抗となる補助操舵トルクTcを出力する。このとき、操舵アクチュエータ600は、ステアリングダンパーとして機能する。
【0104】
nが正である場合、制御用電流I(m,n)は負の値を取る。このとき、nが大きくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が小さくなる(ただし、制御用電流I(m,n)の絶対値は大きくなる。)。また、mが大きくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が小さくなる(ただし、制御用電流I(m,n)の絶対値は大きくなる。)。
【0105】
一方、nが負である場合、制御用電流I(m,n)は正の値を取る。このとき、nが小さくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が大きくなる。また、mが大きくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が大きくなる。
【0106】
操舵アクチュエータ600は、電流決定部616が出力する制御用電流I(m,n)により補助操舵トルクTcをステアリングシャフト62に出力する。ただし、電流決定部616は、制御用電流I(m,n)を操舵アクチュエータ600に直接出力するのではなく、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とは別に設けられた電源回路により制御用電流I(m,n)を操舵アクチュエータ600に出力させてもよい。
【0107】
負の値の制御用電流I(m,n)が入力されてきた場合、操舵アクチュエータ600は、ステアリングシャフト62を時計回り(負方向)に回転させる補助操舵トルクTcを出力する。このとき、補助操舵トルクTcの絶対値は、制御用電流I(m,n)の絶対値が大きくなるほどに大きくなる。そして、車体フレーム21は、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に時計回り(正方向)にロール角速度ωで回転する。
【0108】
一方、正の値の制御用電流I(m,n)が入力されてきた場合、操舵アクチュエータ600は、ステアリングシャフト62を反時計回り(正方向)に回転させる補助操舵トルクTcを出力する。このとき補助操舵トルクTcの絶対値は、制御用電流I(m,n)の絶対値が大きくなるほどに大きくなる。このとき、車体フレーム21は、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に反時計回り(負方向)にロール角速度ωで回転する。
【0109】
以上のように、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、操舵アクチュエータ600に補助操舵トルクTcを出力させる。これにより、ステアリングシャフト62が回転し、後方Bに見たときに、車体フレーム21がロール軸Axを中心に反時計回り又は時計回りに回転して、車体フレーム21の姿勢変化が発生する。よって、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、車体フレーム21の姿勢を制御する。
【0110】
次に、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が行う動作について図面を参照しながら説明する。
図8は、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が行う動作を示したフローチャートである。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、図示しない記憶装置に記憶されたソフトウエアを実行することにより、以下に説明する動作を行う。
【0111】
本処理は、リーン車両1aのイグニッション電源がON状態にされることにより開始される。イグニッション電源がON状態である間は、ロール角速度センサ602は、ロール角速度ωをリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606に出力し続ける。また、速度センサ604は、速度Vをリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606に出力し続ける。
【0112】
トルク推定部614は、ロール角速度センサ602からロール角速度ωを取得する(ステップS1)。更に、トルク推定部614は、速度センサ604から速度Vを取得する(ステップS2)。
【0113】
次に、トルク推定部614は、表1の推定操舵トルク決定テーブルにおいて、ロール角速度ωに最も近いロール角速度ω(n)を特定する。更に、トルク推定部614は、表1の推定操舵トルク決定テーブルにおいて、速度Vに最も近い速度V(m)を特定する。そして、トルク推定部614は、表1の推定操舵トルク決定テーブルを用いて、ロール角速度ω(n)及び速度V(m)に対応する推定操舵トルクT(m,n)を決定する(ステップS3)。
【0114】
次に、電流決定部616は、表2の制御用電流決定テーブルを用いて、トルク推定部614が決定した推定操舵トルクT(m,n)に対応する制御用電流I(m,n)を決定する(ステップS4)。電流決定部616は、制御用電流I(m,n)を操舵アクチュエータ600に出力する。操舵アクチュエータ600は、制御用電流I(m,n)に応じた補助操舵トルクTcをステアリングシャフト62に出力する。この後、本処理は、ステップS1に戻る。イグニッション電源がON状態からOFF状態に切り替えられるまで、ステップS1~ステップS4の処理が繰り返される。
【0115】
[効果]
リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600の制御を行うことができる。より詳細には、車体フレーム21のロール角θを変化させる場合には、ライダーは、ハンドル60を操作してハンドル60の回転軸回りに操舵トルクTを発生させる。これにより、車体フレーム21のロール角θが変化して、車体フレーム21の姿勢変化が発生する。このように、ライダーは、ステアリングシャフト62に加わる操舵トルクTを入力パラメータとして、車体フレーム21の姿勢の制御を行うことができる。
【0116】
ここで、操舵トルクTの絶対値が大きくなれば、車体フレーム21のロール角θが変化するロール角速度ωの絶対値が大きくなる。操舵トルクTの絶対値が小さくなれば、車体フレーム21のロール角速度ωの絶対値が小さくなる。そのため、操舵トルクTとロール角速度ωとの間に相関性が存在する。従って、車体フレーム21の姿勢の制御において、ロール角速度ωを操舵トルクTの代わりに入力パラメータとして用いることができる。そこで、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角速度ωに基づいて、操舵アクチュエータ600を制御している。
【0117】
ただし、以下の理由により、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、操舵トルクTを検出するトルクセンサを用いることなく、トルクセンサが検出する操舵トルクTに基づくことなく、操舵アクチュエータ600を制御している。操舵トルクTとロール角速度ωとの間に相関性があるので、ロール角速度ωが検出されれば、操舵トルクTが検出されなくてもよい。従って、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、従来では操舵アクチュエータ600の制御に利用していた操舵トルクTに基づくことなく、操舵アクチュエータ600を制御できる。
【0118】
以上の理由により、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606では、操舵トルクTを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサ602を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度ωに基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルクTに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御できる。その結果、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。
【0119】
また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、操舵アクチュエータ600の制御に操舵トルクTが用いられない。そのため、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を備えるリーン車両1は、操舵トルクTを検出するトルクセンサを備えなくてもよい。ただし、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を備えるリーン車両1は、操舵トルクTを検出するトルクセンサを備えていてもよい。
【0120】
また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、以下の理由によっても、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。より詳細には、本願発明者は、操舵トルクTとロール角θとの間の相関性についても検討した。その結果、本願発明者は、ロール角速度ωが発生している過渡的な状態では、操舵トルクTとロール角速度ωとの間の相関性に比べて、操舵トルクTとロール角θとの間に高い相関性が存在しないと考えた。そこで、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、操舵トルクTを検出するトルクセンサ及びロール角θを検出するロール角センサを用いることなく、ロール角速度センサ602を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度ωに基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルクT及びロール角センサが検出するロール角θに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御する。これにより、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。
【0121】
また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、以下の理由によっても、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。車体フレーム21の姿勢変化とリーン車両1aの速度Vとの間には以下に説明するように相関性が存在する。リーン車両1aの速度Vの絶対値が大きくなれば、前輪3の回転速度の絶対値も大きくなり、前輪3が発生する角運動量の絶対値も大きくなる。従って、前輪3が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が大きくなるので、車体フレーム21の姿勢が変化しにくくなる。一方、リーン車両1aの速度Vの絶対値が小さくなれば、前輪3の回転速度の絶対値も小さくなり、前輪3が発生する角運動量の絶対値も小さくなる。従って、前輪3が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が小さくなるので、車体フレーム21の姿勢が変化しやすくなる。そこで、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606では、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、リーン車両1aの速度Vに基づいて、操舵アクチュエータ600を制御する。これにより、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。
【0122】
また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、以下の理由によっても、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。車体フレーム21の姿勢変化とリーン車両1aの速度Vとの間には以下に説明するように相関性が存在する。リーン車両1aの速度Vの絶対値が大きくなれば、前輪3の回転速度の絶対値も大きくなり、前輪3が発生する角運動量の絶対値も大きくなる。従って、前輪3が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が大きくなるので、車体フレーム21の姿勢が変化しにくくなる。一方、リーン車両1aの速度Vの絶対値が小さくなれば、前輪3の回転速度の絶対値も小さくなり、前輪3が発生する角運動量の絶対値も小さくなる。従って、前輪3が発生する角運動量を変化させるのに必要な外力の絶対値が小さくなるので、車体フレーム21の姿勢が変化しやすくなる。そこで、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、操舵トルクTを検出するトルクセンサを用いることなく、ロール角速度センサ602及びリーン車両1aの速度Vを検出する速度センサ604を用いることにより、ロール角速度センサ602から取得されるロール角速度ω及び速度センサ604から取得されるリーン車両1aの速度Vに基づいて、トルクセンサが検出する操舵トルクTに基づかずに、操舵トルクTの推定値である推定操舵トルクT(m,n)を推定し、推定操舵トルクT(m,n)に基づいて、操舵アクチュエータ600を制御する。これにより、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、従来とは異なる手法で、操舵アクチュエータ600を制御することができる。
【0123】
また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606によれば、高い剛性を有するトルクセンサが不要である。より詳細には、操舵トルクTは大きなトルクであるので、操舵トルクTの検出には高い剛性を有するトルクセンサが必要である。しかしながら、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606では、操舵アクチュエータ600の制御に操舵トルクTが用いられない。そのため、リーン車両1aは、高い剛性を有するトルクセンサを備えなくてもよい。ただし、この記載は、リーン車両1aがトルクセンサを備えることを妨げるものではない。
【0124】
また、リーン車両1aでは、ロール角速度センサ602は、車体フレーム21に対して変位できないように、車体フレーム21に支持されている。そのため、ロール角速度センサ602の姿勢変化が車体フレーム21の姿勢変化に対して大きく遅延することが抑制されるようになる。その結果、ロール角速度センサ602のロール角速度ωの検出精度が向上する。
【0125】
また、ロール角速度センサ602は、後方Bに見たときに、中央線C上に配置されているので、ロール角速度センサ602のロール角速度ωの検出精度が高くなる。
【0126】
(第2の実施形態)
[全体構成]
以下、第2の実施形態に係るリーン車両1bの全体構成について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、リーン車両1bの一例として、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪と1つの後輪を有する三輪リーン車両を例示する。
図9は、車体フレーム21が直立状態であるリーン車両1bを車体フレーム21における右方rに見た図である。
図10は、車体フレーム21が直立状態であるリーン車両1bの前部を車体フレーム21における後方に見た図である。
図10では、車体カバー22を透過させた状態で図示している。
【0127】
リーン車両1bは、
図9に示すように、車両本体部1002、左前輪1031、右前輪1032(
図10参照)、後輪1004、リンク機構1005及び操舵機構1007を備えている。車両本体部1002は、車体フレーム1021、車体カバー1022、シート1024及びパワーユニット1025を含んでいる。
【0128】
車体フレーム1021は、左旋回時に左方Lに傾斜する。車体フレーム1021は、右旋回時に右方Rに傾斜する。車体フレーム1021は、ヘッドパイプ1211、ダウンフレーム1212、アンダーフレーム1214及びリアフレーム1215を含んでいる。
図9では、車体フレーム1021の内、車体カバー1022に隠れた部分は破線で示している。車体フレーム1021は、シート1024やパワーユニット1025等を支持している。
【0129】
ヘッドパイプ1211は、リーン車両1bの前部に配置されている。リーン車両1bの前部とは、リーン車両1bにおいてシート1024の前端より前方fに位置する部分である。リーン車両1bの後部とは、リーン車両1bにおいてシート1024の前端より後方bに位置する部分である。ヘッドパイプ1211は、左方l又は右方rに見たときに、ヘッドパイプ1211の下端部よりヘッドパイプ1211の上端部が後方bに位置するように、上下方向udに対して傾斜して配置されている。
【0130】
ダウンフレーム1212は、ヘッドパイプ1211より後方bに配置されている。ダウンフレーム1212は、上下方向udに延びる円筒形状をなしている。ダウンフレーム1212の上端部は、左方lに見たときに、ヘッドパイプ1211の後方bに配置されている。また、ダウンフレーム1212は、ダウンフレーム1212の上端部から下方dに延びている。また、ダウンフレーム1212の上端部は、ヘッドパイプ1211の下端部に図示しない接続部により固定されている。
【0131】
アンダーフレーム1214は、ダウンフレーム1212の下端部から後方bに延びている。リアフレーム1215は、アンダーフレーム1214の後端から後方bかつ上方uに直線的に延びている。
【0132】
車体フレーム1021は、車体カバー1022によって覆われている。車体カバー1022は、フロントカバー1221、左右一対のフロントフェンダー1223及びレッグシールド1225を含んでいる。フロントカバー1221は、シート1024の前方fに位置している。フロントカバー1221は、操舵機構1007及びリンク機構1005の少なくとも一部を覆っている。
【0133】
パワーユニット1025は、エンジン又は電気モータ等の動力源と、ミッション装置等の駆動伝達系とを有している。
【0134】
シート1024には、ライダーが着座する。シート1024は、リアフレーム1215に支持されている。
【0135】
左前輪1031は、リーン車両1bの左操舵輪である。左前輪1031は、リーン車両1bの前部に配置される。左前輪1031は、
図10に示すように、車体フレーム1021の左右方向lrの中央より左方lに配置されている。左前輪1031は、左前輪アクスル1314(左操舵輪アクスルの一例)を中心として回転できる。
【0136】
右前輪1032は、リーン車両1bの右操舵輪である。右前輪1032は、リーン車両1bの前部に配置される。右前輪1032は、
図10に示すように、車体フレーム1021の左右方向lrの中央より右方rに配置されている。右前輪1032は、右前輪アクスル1324(右操舵輪アクスルの一例)を中心として回転できる。左前輪1031と右前輪1032は、中央に対して左右対称に配置されている。
【0137】
フロントフェンダー1223は、
図10に示すように、左フロントフェンダー1227及び右フロントフェンダー1228を含んでいる。左フロントフェンダー1227は、左前輪1031の上方uに配置されている。右フロントフェンダー1228は、右前輪1032の上方uに配置されている。
【0138】
後輪1004は、リーン車両1bの駆動輪である。後輪1004は、パワーユニット1025の駆動力により回転させられる。後輪1004は、リーン車両1bの後部に配置される。後輪1004は、アクスルを中心として回転できる。
【0139】
[操舵機構]
以下に、操舵機構1007について図面を参照しながら説明する。
図11は、車体フレーム1021が直立状態であるリーン車両1bの前部を下方dに見た図である。
図11では、車体カバー1022を透過させた状態で図示している。
【0140】
操舵機構1007は、ライダーの操作により左前輪1031及び右前輪1032を操舵する。操舵機構1007は、
図10及び
図11に示すように、左緩衝装置1033及び右緩衝装置1034、ハンドル1060、ステアリングシャフト1062、タイロッド1067、左ブラケット1317、右ブラケット1327及び中央ブラケット1337を含んでいる。
【0141】
左緩衝装置1033は、車体フレーム1021に対して上下方向udに移動可能に左前輪1031を支持する。左緩衝装置1033は、左下部1033a、左上部1033b及び左支持部1033cを含んでいる。左下部1033aは、上下方向udに延びている。左支持部1033cは、左下部1033aの下端部に配置されている。左支持部1033cは、左前輪1031を回転可能に支持している。左前輪1031は、左前輪アクスル1314を中心に回転できる。左前輪アクスル1314は、左支持部1033cから左方lに延びている。左上部1033bは、上下方向udに延びている。左上部1033bは、左上部1033bの下端近傍が左下部1033aに挿入された状態で、左下部1033aの上方uに配置されている。左上部1033bの上端部は、後述する左ブラケット1317に固定されている。すなわち、左上部1033bは、後述する左サイド部材1053に支持されている。
【0142】
左緩衝装置1033は、いわゆるテレスコピック式の緩衝装置である。左緩衝装置1033は、例えば、ダンパー及びスプリングの組み合わせにより構成される。左上部1033bが左下部1033aに対して左下部1033aの延びる方向に相対移動することにより、左緩衝装置1033は、当該方向に伸縮できる。これにより、左緩衝装置1033は、左上部1033bに対する左前輪1031の上下方向udにおける変位を緩衝する。
【0143】
右緩衝装置1034は、車体フレーム1021に対して上下方向udに移動可能に右前輪1032を支持する。右緩衝装置1034は、右下部1034a、右上部1034b及び右支持部1034cを含んでいる。右下部1034aは、上下方向udに延びている。右支持部1034cは、右下部1034aの下端部に配置されている。右支持部1034cは、右前輪1032を回転可能に支持している。右前輪1032は、右前輪アクスル1324を中心に回転できる。右前輪アクスル1324は、右支持部1034cから右方rに延びている。右上部1034bは、上下方向udに延びている。右上部1034bは、右上部1034bの下端近傍が右下部1034aに挿入された状態で、右下部1034aの上方uに配置されている。右上部1034bの上端部は、後述する右ブラケット1327に固定されている。すなわち、右上部1034bは、後述する右サイド部材1054に支持されている。
【0144】
右緩衝装置1034は、いわゆるテレスコピック式の緩衝装置である。右緩衝装置1034は、例えば、ダンパー及びスプリングの組み合わせにより構成される。右上部1034bが右下部1034aに対して右下部1034aの延びる方向に相対移動することにより、右緩衝装置1034は、当該方向に伸縮できる。これにより、右緩衝装置1034は、右上部1034bに対する右前輪1032の上下方向udにおける変位を緩衝する。
【0145】
ハンドル1060は、ライダーにより操作される。ステアリングシャフト1062は、ライダーによるハンドル1060の操作によりステアリングシャフト1062の中心軸を中心に回転できるように車体フレーム1021に支持されている。より詳細には、ステアリングシャフト1062は、ヘッドパイプ1211に挿入されることにより、ヘッドパイプ1211に回転可能に支持されている。ハンドル1060は、ステアリングシャフト1062の上端部に固定されている。これにより、ライダーがハンドル1060を操作すると、ステアリングシャフト1062がステアリングシャフト1062の中心軸を中心に回転する。
【0146】
中央ブラケット1337は、ステアリングシャフト1062の下端部に固定されている。よって、中央ブラケット1337は、ステアリングシャフト1062と共にステアリングシャフト1062の中心軸を中心に回転できる。
【0147】
タイロッド1067は、ハンドル1060の操作によるステアリングシャフト1062の回転を左緩衝装置1033及び右緩衝装置1034に伝達する。タイロッド1067は、左右方向LRに延びる。タイロッド1067の左右方向LRの中央は、中央ブラケット1337に支持されている。タイロッド1067の左端部は、左ブラケット1317に支持されている。タイロッド1067の右端部は、右ブラケット1327に支持されている。
【0148】
[リンク機構]
以下に、リンク機構1005について
図10及び
図11を参照しながら説明する。リンク機構1005は、パラレログラムリンク方式のリンク機構である。リンク機構1005は、ハンドル1060より下方dに配置されている。リンク機構1005は、車体フレーム1021のヘッドパイプ1211に支持されている。
【0149】
リンク機構1005は、上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054を含んでいる。上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054は、車体フレーム1021に対して変位できる複数のリンク部材である。本明細書における変位とは、平行移動による変位、回転移動による変位、並びに、平行移動及び回転移動の組み合わせによる変位を含む。
【0150】
上クロス部材1051は、左右方向LRに延びている。上クロス部材1051は、ヘッドパイプ1211の前方f、かつ、左前輪1031及び右前輪1032より上方uに配置されている。上クロス部材1051は、支持部Cによりヘッドパイプ1211に支持されている。支持部Cは、上クロス部材1051の中間部、及び、ヘッドパイプ1211の上部に位置する。上クロス部材1051の左部とは、上クロス部材1051を左右方向LRに3等分したときに最も左方Lに位置する部分である。上クロス部材1051の右部とは、上クロス部材1051を左右方向LRに3等分したときに最も右方Rに位置する部分である。上クロス部材1051の中間部とは、上クロス部材1051を左右方向LRに3等分したときに真ん中に位置する部分である。支持部Cは、前後方向fbに延びる軸である。支持部Cは、ヘッドパイプ1211から僅かに上方uに傾いた状態で前方fに延びる。上クロス部材1051は、支持部Cを中心にヘッドパイプ1211に対して回転可能である。
【0151】
下クロス部材1052は、前下クロス部材1052A及び後下クロス部材1052Bを有している。前下クロス部材1052Aは、左右方向LRに延びている。前下クロス部材1052Aは、ヘッドパイプ1211の前方fであって、上クロス部材1051より下方dかつ左前輪1031及び右前輪1032より上方uに配置されている。前下クロス部材1052Aは、支持部Fによりヘッドパイプ1211に支持されている。支持部Fは、前下クロス部材1052Aの中間部、及び、ヘッドパイプ1211の下部に位置している。前下クロス部材1052Aの左部とは、前下クロス部材1052Aを左右方向LRに3等分したときに最も左方Lに位置する部分である。前下クロス部材1052Aの右部とは、前下クロス部材1052Aを左右方向LRに3等分したときに最も右方Rに位置する部分である。前下クロス部材1052Aの中間部とは、前下クロス部材1052Aを左右方向LRに3等分したときに真ん中に位置する部分である。支持部Fは、前後方向fbに延びる軸である。支持部Fは、ヘッドパイプ1211から僅かに上方uに傾いた状態で前方fに延びている。前下クロス部材1052Aは、支持部Fを中心にヘッドパイプ1211に対して回転可能である。
【0152】
後下クロス部材1052Bは、左右方向LRに延びている。後下クロス部材1052Bは、ヘッドパイプ1211の後方bであって、上クロス部材1051より下方dかつ左前輪1031及び右前輪1032より上方uに配置されている。後下クロス部材1052Bは、支持部Fによりヘッドパイプ1211に支持されている。支持部Fは、後下クロス部材1052Bの中間部、及び、ヘッドパイプ1211の下部に位置する。後下クロス部材1052Bの左部とは、後下クロス部材1052Bを左右方向LRに3等分したときに最も左方Lに位置する部分である。後下クロス部材1052Bの右部とは、後下クロス部材1052Bを左右方向LRに3等分したときに最も右方Rに位置する部分である。後下クロス部材1052Bの中間部とは、後下クロス部材1052Bを左右方向LRに3等分したときに真ん中に位置する部分である。支持部Fは、前記の通り、前後方向fbに延びる軸である。ただし、支持部Fは、ヘッドパイプ1211から僅かに下方dに傾いた状態で後方bにも延びている。後下クロス部材1052Bは、支持部Fを中心にヘッドパイプ211に対して回転可能である。
【0153】
左サイド部材1053は、上下方向udに延びている。従って、左サイド部材1053が延びる方向は、ヘッドパイプ1211が延びる方向と平行である。左サイド部材1053は、ヘッドパイプ1211の左方lに配置されている。左サイド部材1053は、左前輪1031の上方uであって左緩衝装置1033の左上方luに配置されている。左サイド部材1053は、支持部Dにより上クロス部材1051に支持されている。支持部Dは、左サイド部材1053の上部、及び、上クロス部材1051の左部に位置している。支持部Dは、前後方向fbに延びる軸である。左サイド部材1053は、支持部Dを中心に上クロス部材1051に対して回転可能である。
【0154】
また、左サイド部材1053は、支持部Gにより前下クロス部材1052A及び後下クロス部材1052Bに支持されている。支持部Gは、左サイド部材1053の下部、前下クロス部材1052Aの左部及び後下クロス部材1052Bの左部に位置している。支持部Gは、前後方向fbに延びる軸である。左サイド部材1053は、支持部Gを中心に前下クロス部材1052A及び後下クロス部材1052Bに対して回転可能である。
【0155】
左ブラケット1317は、左サイド部材1053の下端部に支持されている。左ブラケット1317は、左中心軸Y1を中心に左サイド部材1053に対して回転可能である。左中心軸Y1は、左サイド部材1053の中心軸である。従って、左中心軸Y1は、上下方向udに延びている。
【0156】
右サイド部材1054は、上下方向udに延びている。従って、右サイド部材1054が延びる方向は、ヘッドパイプ1211が延びる方向と平行である。右サイド部材1054は、ヘッドパイプ1211の右方rに配置されている。右サイド部材1054は、右前輪1032の上方uであって右緩衝装置1034の右上方ruに配置されている。右サイド部材1054は、支持部Eにより上クロス部材1051に支持されている。支持部Eは、右サイド部材1054の上部、及び、上クロス部材1051の右部に位置する。支持部Eは、前後方向fbに延びる軸である。右サイド部材1054は、支持部Eを中心に上クロス部材1051に対して回転可能である。
【0157】
また、右サイド部材1054は、支持部Hにより前下クロス部材1052A及び後下クロス部材1052Bに支持されている。支持部Hは、右サイド部材1054の下部、前下クロス部材1052Aの右部及び後下クロス部材1052Bの右部に位置している。支持部Hは、前後方向fbに延びる軸である。右サイド部材1054は、支持部Hを中心に前下クロス部材1052A及び後下クロス部材1052Bに対して回転可能である。
【0158】
右ブラケット1327は、右サイド部材1054の下端部に支持されている。右ブラケット1327は、右中心軸Y2を中心に右サイド部材1054に対して回転可能である。右中心軸Y2は、右サイド部材1054の中心軸である。従って、右中心軸Y2は、上下方向udに延びている。
【0159】
以上のように、上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054は、上クロス部材1051と下クロス部材1052とが相互に平行な姿勢を保ち、左サイド部材1053と右サイド部材1054とが相互に平行な姿勢を保つように連結されている。
【0160】
また、左緩衝装置1033は、左サイド部材1053の右下方rdに配置されている。左緩衝装置1033は、左ブラケット1317に支持されている。具体的には、左緩衝装置1033の上端部は、左ブラケット1317に固定されている。更に、左緩衝装置1033は、左前輪1031を支持している。従って、左サイド部材1053は、左ブラケット1317及び左緩衝装置1033を介して、左前輪1031を支持している。すなわち、リンク機構1005は、左前輪1031を支持している。このような、左緩衝装置1033は、左サイド部材1053と共に左右方向LRに傾斜する。
【0161】
また、右緩衝装置1034は、右サイド部材1054の左下方ldに配置されている。右緩衝装置1034は、右ブラケット1327に支持されている。具体的には、右緩衝装置1034の上端部は、右ブラケット1327に固定されている。更に、右緩衝装置1034は、右前輪1032を支持している。従って、右サイド部材1054は、右ブラケット1327及び右緩衝装置1034を介して、右前輪1032を支持している。すなわち、リンク機構1005は、右前輪1032を支持している。このような、右緩衝装置1034は、右サイド部材1054と共に左右方向LRに傾斜する。
【0162】
[操舵動作]
以下に、リーン車両1bの操舵動作について
図12を参照しながら説明する。
図12は、リーン車両1bを左操舵させた状態のリーン車両1bの前部を下方dに見た図である。
【0163】
図12に示すように、ライダーがハンドル1060を左操舵すると、下方dに見たときに、ステアリングシャフト1062が反時計回りに回転する。中央ブラケット1337は、ステアリングシャフト1062の下端部に固定されているので、下方dに見たときに、ステアリングシャフト1062と共に反時計回りに回転する。
【0164】
タイロッド1067は、中央ブラケット1337の回転に伴って、左方lかつ後方bに平行移動する。タイロッド1067の左端部は、左ブラケット1317の前端部に支持されている。左ブラケット1317は、左中心軸Y1(
図10参照)を中心に回転可能である。そのため、タイロッド1067の平行移動に伴って、左ブラケット1317は、下方dに見たときに、反時計回りに回転する。また、タイロッド1067の右端部は、右ブラケット1327の前端部に支持されている。右ブラケット1327は、右中心軸Y2(
図10参照)を中心に回転可能である。そのため、タイロッド1067の平行移動に伴って、右ブラケット1327は、下方dに見たときに、反時計回りに回転する。
【0165】
左前輪1031は、左緩衝装置1033を介して左ブラケット1317に接続されている。そのため、左ブラケット1317の回転に伴って、下方dに見たときに、左前輪1031が左中心軸Y1(図
10参照)を中心に反時計回りに回転する。また、右前輪1032は、右緩衝装置1034を介して右ブラケット1327に接続されている。そのため、右ブラケット1327の回転に伴って、下方dに見たときに、右前輪1032が右中心軸Y2(
図10参照)を中心に反時計回りに回転する。
【0166】
なお、ライダーがハンドル1060を右操舵した場合には、上述した各要素は、ライダーがハンドル1060を左操舵した場合と逆方向(すなわち、時計回り)に回転する。各要素の動きは左右が逆になるのみであるので、これ以上の説明を省略する。
【0167】
[傾斜動作]
以下に、リーン車両1bの傾斜動作について図面を参照しながら説明する。
図13は、車体フレーム1021が左方Lに傾斜した状態のリーン車両1bの前部を後方bに見た図である。
【0168】
車体フレーム1021は、ロール軸Axを中心に回転することにより、左方L又は右方Rに傾斜する。ロール軸Axは、前後方向FBに延びる軸である。より詳細には、
図9に示すように、ロール軸Axは、直立状態の車体フレーム1021において、後輪1004が地面に接している点を通過し、かつ、ステアリングシャフト1062に直交する直線である。
【0169】
また、ロール角θは、ロール軸Axを中心に車体フレーム1021が回転することに伴って変化する車体フレーム1021のロール軸Ax回りにおける回転角である。リーン車両1bのロール角θは、リーン車両1aのロール角θと同じであるので説明を省略する。
【0170】
リンク機構1005は、
図13に示すように、左前輪アクスル1314が右前輪アクスル1324より上方uに位置するように上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054と車体フレーム1021とが相対変位することにより、左旋回時に車体フレーム1021を左方Lに傾斜させる。このとき、ロール角θは正の値を取る。また、リンク機構1005は、右前輪アクスル1324が左前輪アクスル1314より上方uに位置するように上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054と車体フレーム1021とが相対変位することにより、右旋回時に車体フレーム1021を右方Rに傾斜させる。このとき、ロール角θは負の値を取る。以下では、車体フレーム1021が左方Lに傾斜する場合を例に挙げて説明する。
【0171】
図13に示すように、リンク機構1005の形状が変化することにより、直立状態の車体フレーム1021が左方Lに傾斜する。具体的には、
図10に示すように、車体フレーム1021が直立状態であるリーン車両1bでは、上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054は、長方形状をなしている。一方、
図13に示すように、車体フレーム1021が左方Lに傾斜しているリーン車両1bでは、上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054は、平行四辺形状をなしている。
【0172】
ライダーが車体フレーム1021を左方Lに傾斜させると、ヘッドパイプ1211が左方Lに傾斜する。ヘッドパイプ1211が左方Lに傾斜すると、上クロス部材1051は、後方bに見たときに、支持部Cを中心にヘッドパイプ1211に対して反時計回りに回転する。同様に、下クロス部材1052は、後方bに見たときに、支持部Fを中心にヘッドパイプ1211に対して反時計回りに回転する。これにより、上クロス部材1051は、後方bに見たときに、下クロス部材1052に対して左方Lに移動する。
【0173】
上クロス部材1051の移動により、左サイド部材1053は、後方bに見たときに、支持部Dを中心に上クロス部材1051に対して時計回りに回転する。同様に、右サイド部材1054は、後方bに見たときに、支持部Eを中心に上クロス部材1051に対して時計回りに回転する。また、上クロス部材1051の移動により、左サイド部材1053は、後方bに見たときに、支持部Gを中心に下クロス部材1052に対して時計回りに回転する。同様に、右サイド部材1054は、後方bに見たときに、支持部Hを中心に下クロス部材1052に対して時計回りに回転する。これにより、左サイド部材1053及び右サイド部材1054は、ヘッドパイプ1211と平行な状態を保ったまま、左方Lに傾斜する。
【0174】
左ブラケット1317は、左サイド部材1053の下端部に支持されている。そのため、左サイド部材1053の左方Lへの傾斜に伴い、左ブラケット1317は、左方Lに傾斜する。左緩衝装置1033は、左ブラケット1317に支持されているので、左ブラケット1317の左方Lへの傾斜に伴い、左方Lに傾斜する。左前輪1031は、左緩衝装置1033の下端部に支持されているので、左緩衝装置1033の左方Lへの傾斜に伴い、左方Lに傾斜する。
【0175】
右ブラケット1327は、右サイド部材1054の下端部に支持されている。そのため、右サイド部材1054の左方Lへの傾斜に伴い、右ブラケット1327は、左方Lに傾斜する。右緩衝装置1034は、右ブラケット1327に支持されているので、右ブラケット1327の左方Lへの傾斜に伴い、左方Lに傾斜する。右前輪1032は、右緩衝装置1034の下端部に支持されているので、右緩衝装置1034の左方Lへの傾斜に伴い、左方Lに傾斜する。
【0176】
後輪1004(図13には図示せず)は、車体フレーム1021に支持されている。そのため、後輪1004は、車体フレーム1021と共に左方Lに傾斜する。
【0177】
なお、車体フレーム1021が右方Rに傾斜する場合には、上述した各要素は、車体フレーム1021が左方Lに傾斜する場合と逆方向に動作する。各要素の動きは左右が逆になるのみであるので、これ以上の説明を省略する。
【0178】
[アクチュエータ制御装置]
次に、リーン車両1bのアクチュエータ制御装置1606について図面を参照しながら説明する。
図14は、アクチュエータ制御装置1606のブロック図である。
【0179】
図14に示すように、リーン車両1bは、リーンアクチュエータ1600、ロール角速度センサ1602、速度センサ1604及びアクチュエータ制御装置1606を更に備える。
【0180】
リーンアクチュエータ1600は、車体フレーム1021と上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053及び右サイド部材1054とを相対変位させる姿勢制御用トルクTdを出力する。姿勢制御用トルクTdは、車体フレーム1021の姿勢を制御するためのトルクである。ここで、車体フレーム1021を傾斜させるためには、下クロス部材1052にトルクを付与する必要がある。リーントルクTlは、下クロス部材1052に付与されるトルクであって、速度Vで走行するリーン車両1bの車体フレーム1021をロール角速度ωで変化させるのに必要な大きさのトルクである。リーントルクTlは、支持部F回りに発生するモーメントである。後方bに見たときに、リーントルクTlが反時計回りに発生している場合には、下クロス部材1052がリーントルクTlにより反時計回り(正方向)に回転させられる。後方bに見たときに、リーントルクTlが時計回りに発生している場合には、下クロス部材1052がリーントルクTlにより時計回り(負方向)に回転させられる。リーンアクチュエータ1600は、ライダーが下クロス部材1052に加えるリーントルクTlをアシストする姿勢制御用トルクTdを出力する。
【0181】
リーンアクチュエータ1600は、車体フレーム1021の支持部Fに固定されている。リーンアクチュエータ1600は、電気モータ及びギアの組み合わせである。電気モータはトルクを発生する。電気モータが発生したトルクは、ギアを介して下クロス部材1052に姿勢制御用トルクTdとして出力される。これにより、リーンアクチュエータ1600は、ヘッドパイプ1211に対して支持部Fを中心に下クロス部材1052を回転させる。
【0182】
ロール角速度センサ1602は、ロール角θの単位時間当たりの変化量であるロール角速度ωを検出する。リーン車両1bにおけるロール角速度ωは、リーン車両1aにおけるロール角速度ωと同じであるので説明を省略する。ロール角速度センサ1602は、例えば、車体フレーム1021に対して変位できないように車体フレーム1021に支持されている。リーン車両1bでは、ロール角速度センサ1602は、リーンアクチュエータ1600に固定されている。
【0183】
速度センサ1604は、リーン車両1bの速度Vを検出する。速度Vは、リーン車両1bが前進しているときに正の値を取る。
【0184】
アクチュエータ制御装置1606は、例えば、リーンアクチュエータ1600の制御用のIC(Integrated Circuit)である。ただし、アクチュエータ制御装置1606は、一つのICにより実現されている必要はなく、1以上のIC、1以上の電子部品及び1以上の回路基板の組み合わせであってもよい。
【0185】
アクチュエータ制御装置1606は、ロール角速度センサ1602からロール角速度ωを取得する。すなわち、ロール角速度センサ1602が検出したロール角速度ωの電気信号(以下では、単にロール角速度ωと呼ぶ)が、アクチュエータ制御装置1606に入力されてくる。
【0186】
アクチュエータ制御装置1606は、速度センサ1604から速度Vを取得する。すなわち、速度センサ1604が検出した速度Vの電気信号(以下では、単に速度Vと呼ぶ)が、アクチュエータ制御装置1606に入力されてくる。
【0187】
アクチュエータ制御装置1606は、ライダーがハンドル1060を操作することによりステアリングシャフト1062においてステアリングシャフト1062回りに発生する操舵トルクTであって、アクチュエータ制御装置1606外からアクチュエータ制御装置1606に入力されてくる操舵トルクTが存在する場合には操舵トルクTに基づかず、かつ、アクチュエータ制御装置1606外からアクチュエータ制御装置1606に入力されてくるロール角θが存在する場合にはロール角θに基づかず、かつ、速度センサ1604が検出した速度V及びロール角速度センサ1602が検出したロール角速度ωに基づいて、リーンアクチュエータ1600を制御する。従って、アクチュエータ制御装置1606は、トルクセンサ等が検出した操舵トルクT、及び、ロール角センサ等が検出したロール角θを用いない。
【0188】
アクチュエータ制御装置1606は、
図14に示すように、トルク推定部1614及び電流決定部1616を含んでいる。トルク推定部1614は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、リーントルクTlの推定値である推定リーントルクTl(m,n)を決定する。m及びnは、整数である。トルク推定部1614は、表3に示す推定リーントルク決定テーブルを記憶している。
【0189】
【0190】
推定リーントルク決定テーブルには、速度V(m)とロール角速度ω(n)とに対応する推定リーントルクTl(m,n)が記録されている。リーン車両1bにおける速度V(m)及びロール角速度ω(n)は、リーン車両1における速度V(m)及びロール角速度ω(n)と同じであるので説明を省略する。
【0191】
また、nが正である場合(ロール角速度ω(n)が正の値である場合)、推定リーントルクTl(m,n)は正の値を取る。そのため、推定リーントルクTl(m,n)は、後方bに見たときに、下クロス部材1052を反時計回り(正方向)に回転させるリーントルクである。このとき、nが大きくなるにしたがって(ロール角速度ω(n)が大きくなるにしたがって)、推定リーントルクTl(m,n)が大きくなる。また、mが大きくなるにしたがって(速度V(m)が大きくなるにしたがって)、推定リーントルクTl(m,n)が大きくなる。
【0192】
一方、nが負である場合((ロール角速度ω(n)が負の値である場合))、推定リーントルクTl(m,n)は負の値を取る。そのため、推定リーントルクTl(m,n)は、後方bに見たときに、下クロス部材1052を時計回り(負方向)に回転させるリーントルクである。このとき、nが小さくなるにしたがって(ロール角速度ω(n)が小さくなるにしたがって)、推定リーントルクTl(m,n)が小さくなる(ただし、推定リーントルクTl(m,n)の絶対値は大きくなる)。また、mが大きくなるにしたがって(速度V(m)が小さくなるにしたがって)、推定リーントルクTl(m,n)が小さくなる(ただし、推定リーントルクTl(m,n)の絶対値は大きくなる)。
【0193】
トルク推定部1614は、アクチュエータ制御装置1606が取得した速度Vに最も近い速度V(m)を特定する。また、トルク推定部1614は、アクチュエータ制御装置1606が取得したロール角速度ωに最も近いロール角速度ω(n)を特定する。そして、トルク推定部1614は、表3に基づいて、速度V(m)及びロール角速度ω(n)に対応する推定リーントルクTl(m,n)を決定する。
【0194】
電流決定部1616は、トルク推定部1614が決定した推定リーントルクTl(m,n)に基づいて、リーンアクチュエータ1600を制御する。具体的には、電流決定部1616は、推定リーントルクTl(m,n)に基づいて、リーンアクチュエータ1600に出力すべき制御用電流I(m,n)を決定する。そこで、電流決定部1616は、表4に示す制御用電流決定テーブルを記憶している。
【0195】
【0196】
制御用電流決定テーブルには、推定リーントルクTl(m,n)と制御用電流I(m,n)とが対応付けられて記録されている。制御用電流I(m,n)は、リーンアクチュエータ1600が推定リーントルクTl(m,n)のアシスト率(例えば、20%)に相当する姿勢制御用トルクTdを下クロス部材1052に出力するのに必要な電流である。すなわち、リーンアクチュエータ1600が、推定リーントルクTl(m,n)の20%に相当する姿勢制御用トルクTdを下クロス部材1052に出力する。これにより、ライダーは、推定リーントルクTl(m,n)の80%に相当するトルクが下クロス部材1052に付与されるように車体フレーム1021を傾斜させればよい。このように、リーンアクチュエータ1600は、ライダーの車体フレーム1021の傾斜をアシストする。なお、アシスト率は、任意の値であり、20%以外の値であってもよい。そのため、ライダーが車体フレーム1021をより小さな力で傾斜できるようにする場合には、アシスト率は20%より大きな値となる。ライダーが車体フレーム1021をより大きな力で傾斜できるようにする場合には、アシスト率は20%より小さな値となる。なお、アシスト率は、負の値であってもよい。この場合、リーンアクチュエータ1600は、ライダーが車体フレーム1021を傾斜させることの抵抗となる姿勢制御用トルクTdを出力する。
【0197】
nが正である場合、制御用電流I(m,n)は正の値を取る。このとき、nが大きくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が大きくなる。また、mが大きくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が大きくなる。一方、nが負である場合、制御用電流I(m,n)は負の値を取る。このとき、nが小さくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が小さくなる(ただし、制御用電流I(m,n)の絶対値は大きくなる。)。また、mが大きくなるにしたがって、制御用電流I(m,n)が小さくなる(ただし、制御用電流I(m,n)の絶対値は大きくなる。)。
【0198】
リーンアクチュエータ1600は、アクチュエータ制御装置1606が出力する制御用電流I(m,n)により姿勢制御用トルクTdを下クロス部材1052に出力する。正の値の制御用電流I(m,n)が入力されてきた場合、リーンアクチュエータ1600は、下クロス部材1052を反時計回りに回転させる姿勢制御用トルクTdを出力する。姿勢制御用トルクTdの絶対値は、制御用電流I(m,n)の絶対値が大きくなるほどに大きくなる。このとき、車体フレーム1021は、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に時計回り(正方向)にロール角速度ωで回転する。負の値の制御用電流I(m,n)が入力されてきた場合、リーンアクチュエータ1600は、下クロス部材1052を時計回りに回転させる姿勢制御用トルクTdを出力する。姿勢制御用トルクTdの絶対値は、制御用電流I(m,n)の絶対値が大きくなるほどに大きくなる。このとき、車体フレーム1021は、後方Bに見たときに、ロール軸Axを中心に反時計回り(負方向)にロール角速度ωで回転する。
【0199】
次に、アクチュエータ制御装置1606が行う動作について図面を参照しながら説明する。
図15は、アクチュエータ制御装置1606が行う動作を示したフローチャートである。アクチュエータ制御装置1606は、図示しない記憶装置に記憶されたソフトウエアを実行することにより、以下に説明する動作を行う。
【0200】
本処理は、リーン車両1bのイグニッション電源がON状態にされることにより開始される。イグニッション電源がON状態である間は、ロール角速度センサ1602は、ロール角速度ωをアクチュエータ制御装置1606に出力し続ける。また、速度センサ1604は、速度Vをアクチュエータ制御装置1606に出力し続ける。
【0201】
トルク推定部1614は、ロール角速度センサ1602からロール角速度ωを取得する(ステップS11)。更に、トルク推定部1614は、速度センサ1604から速度Vを取得する(ステップS12)。
【0202】
次に、トルク推定部1614は、ロール角速度ωに最も近いロール角速度ω(n)を特定する。更に、トルク推定部1614は、速度Vに最も近い速度V(m)を特定する。そして、トルク推定部1614は、表3の推定リーントルク決定テーブルを用いて、ロール角速度ω(n)及び速度V(m)に対応する推定リーントルクTl(m,n)を決定する(ステップS13)。
【0203】
次に、アクチュエータ制御装置1606は、ステップS13で決定した推定リーントルクTl(m,n)に対応する制御用電流I(m,n)を決定する(ステップS14)。電流決定部1616は、制御用電流I(m,n)をリーンアクチュエータ1600に出力する。リーンアクチュエータ1600は、制御用電流I(m,n)に応じた姿勢制御用トルクTdを下クロス部材1052に出力する。この後、本処理は、ステップS11に戻る。イグニッション電源がON状態からOFF状態に切り替えられるまで、ステップS11~ステップS14の処理が繰り返される。
【0204】
[効果]
アクチュエータ制御装置1606によれば、従来とは異なる手法で、リーンアクチュエータ1600の制御を行うことができる。より詳細には、車体フレーム1021のロール角θを変化させる場合には、ライダーは、自身の体を左方L又は右方Rに傾斜させる。これにより、下クロス部材1052にリーントルクTlが付与されて、下クロス部材1052がヘッドパイプ1211に対して回転する。その結果、車体フレーム1021のロール角θが変化して、車体フレーム1021の姿勢変化が発生する。このようにライダーは、下クロス部材1052を回転させるリーントルクTlを入力パラメータとして、車体フレーム1021の姿勢の制御を行うことができる。
【0205】
ところで、ライダーが自身の体を左方L又は右方Rに大きく傾斜させると、下クロス部材1052を回転させるリーントルクTlの絶対値が大きくなり、車体フレーム1021のロール角速度ωの絶対値が大きくなる。一方、ライダーが自身の体を左方L又は右方Rに小さく傾斜させると、下クロス部材1052を回転させるリーントルクTlの絶対値が小さくなり、車体フレーム1021のロール角速度ωの絶対値が小さくなる。従って、下クロス部材1052を回転させるリーントルクTlとロール角速度ωとの間には相関性が存在する。よって、車体フレーム1021の姿勢の制御において、ロール角速度ωを入力パラメータとして用いることができる。そこで、アクチュエータ制御装置1606では、アクチュエータ制御装置1606は、ロール角速度ωに基づいて、リーンアクチュエータ1600を制御している。
【0206】
なお、アクチュエータ制御装置1606は、操舵トルクT及びロール角θに基づくことなく、リーンアクチュエータ1600を制御できる。より詳細には、リーン車両1bでは、リーントルクTlとロール角速度ωとの間に相関性があるので、ロール角速度ωが検出されれば、操舵トルクT及びリーントルクTlが検出されなくてもよい。従って、アクチュエータ制御装置1606は、従来ではリーンアクチュエータ1600の制御に利用していた操舵トルクTに基づくことなく、リーンアクチュエータ1600を制御できる。
【0207】
更に、以下の理由により、アクチュエータ制御装置1606のアクチュエータ制御装置1606は、ロール角θに基づくことなく、リーンアクチュエータ1600を制御している。車体フレーム1021のロール角θを変化させる場合には、回転している左前輪1031及び右前輪1032を傾斜させる必要がある。回転している左前輪1031及び右前輪1032には角運動量が発生している。そのため、ライダーは、左前輪1031及び右前輪1032に外力を加えることによって、左前輪1031及び右前輪1032が発生している角運動量の絶対値を大きく変化させずに、左前輪1031及び右前輪1032が発生している角運動量の向きを変化させる。ただし、左前輪1031及び右前輪1032が発生している角運動量の向きの変化させるための外力によるモーメントの絶対値は、ロール角速度ωの影響を受けるものの、ロール角θの影響を受けない。例えば、単位時間当たりに左前輪1031及び右前輪1032のロール角θを45度から50度に変化させる場合に必要なモーメントの絶対値と、単位時間辺りに左前輪1031及び右前輪1032のロール角θを50度から45度に変化させる場合に必要なモーメントの絶対値とは同じである。よって、本願発明者は、リーントルクTlとロール角θとの間に高い相関性が存在しないと考えた。これにより、ロール角θとロール角速度ωとの間に高い相関性が存在しないと言える。よって、アクチュエータ制御装置1606は、ロール角速度ωが検出されれば、ロール角θに基づくことなく、車体フレーム1021の姿勢を制御するための姿勢制御用トルクTdを出力するリーンアクチュエータ1600を制御できる。
【0208】
以上の理由により、アクチュエータ制御装置1606では、アクチュエータ制御装置1606は、操舵トルクT及びロール角θに基づくことなく、ロール角速度ωに基づいて、リーンアクチュエータ1600を制御できる。その結果、アクチュエータ制御装置1606は、従来とは異なる手法で、リーンアクチュエータ1600を制御することができる。
【0209】
また、リーン車両1bでは、ロール角速度センサ1602は、車体フレーム1021に対して変位できないように、車体フレーム1021に支持されている。そのため、ロール角速度センサ1602の姿勢変化が車体フレーム1021の姿勢変化に対して大きく遅延することが抑制されるようになる。その結果、ロール角速度センサ1602のロール角速度ωの検出精度が向上する。
【0210】
(その他の実施形態)
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。
【0211】
当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態例に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【0212】
なお、リーン車両1,1a,1bは、操舵トルクTを検出するトルクセンサを備えていてもよい。ただし、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、トルクセンサが検出した操舵トルクTに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御する。また、アクチュエータ制御装置1606は、トルクセンサが検出した操舵トルクTに基づかずに、リーンアクチュエータ1600を制御する。
【0213】
なお、リーン車両1,1a,1bは、ロール角θを検出するロール角検出センサを備えていてもよい。ただし、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角検出センサが検出したロール角θに基づかずに、操舵アクチュエータ600を制御する。また、アクチュエータ制御装置1606は、ロール角検出センサが検出したロール角θに基づかずに、リーンアクチュエータ1600を制御する。
【0214】
ただし、リーン車両1,1aにおいて、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角速度センサ602が検出したロール角速度ωを積分してロール角θを算出してもよい。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、算出したロール角θを用いて、車体フレーム21の姿勢の制御を行ってもよい。また、リーン車両1bにおいて、アクチュエータ制御装置1606は、ロール角速度センサ1602が検出したロール角速度ωを積分してロール角θを算出してもよい。アクチュエータ制御装置1606は、算出したロール角θを用いて、車体フレーム1021の姿勢の制御を行ってもよい。
【0215】
なお、リーン車両1,1aは、リーン車両1bのように2つの前輪及び1以上の後輪を備える車両であってもよい。リーン車両1bは、1以上の後輪を備えていればよい。
【0216】
なお、リーン車両1bのリンク機構1005は、パラレログラムリンク方式のリンク機構である。しかしながら、リンク機構1005は、パラレログラムリンク方式のリンク機構に限らず、例えば、ダブルウィッシュボーン方式のリンク機構であってもよい。
【0217】
なお、リーン車両1aでは、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、推定操舵トルクT(m,n)を決定した後、推定操舵トルクT(m,n)に基づいて、制御用電流I(m,n)を決定している。しかしながら、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、制御用電流I(m,n)を決定してもよい。この場合、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度V(m)とロール角速度ω(n)とに対応する制御用電流I(m,n)が記録されたテーブルを記憶していればよい。また、推定操舵トルクT(m,n)及び制御用電流I(m,n)の決定には、テーブルの代わりに数式やマップが用いられてもよい。
【0218】
なお、リーン車両1bでは、アクチュエータ制御装置1606は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、推定リーントルクTl(m,n)を決定した後、推定リーントルクTl(m,n)に基づいて、制御用電流I(m,n)を決定している。しかしながら、アクチュエータ制御装置1606は、速度V及びロール角速度ωに基づいて、制御用電流I(m,n)を決定してもよい。この場合、アクチュエータ制御装置1606は、速度V(m)とロール角速度ω(n)とに対応する制御用電流I(m,n)が記録されたテーブルを記憶していればよい。また、推定操舵トルクT(m,n)及び制御用電流I(m,n)の決定には、テーブルの代わりに数式やマップが用いられてもよい。
【0219】
また、リーン車両1aにおける、速度V及びロール角速度ωに基づく操舵アクチュエータ600の制御方法は、一例であり、上述した制御方法に限らない。そのため、速度V及びロール角速度ωに基づく操舵アクチュエータ600の制御方法において、推定操舵トルク決定テーブル及び制御用電流決定テーブルが用いられなくてもよい。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、例えば、操舵アクチュエータ600に出力すべき基本制御用電流を記憶している。基本制御用電流は、一定の値であってもよいし、速度V及びロール角速度ω以外のパラメータ(例えば、温度)により変動する値であってもよい。そして、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度V及びロール角速度ωにより定まる係数をこの制御用電流に掛けることで、制御用電流を決定してもよい。
【0220】
また、リーン車両1bにおける、速度V及びロール角速度ωに基づくリーンアクチュエータ1600の制御方法は、一例であり、上述した制御方法に限らない。そのため、速度V及びロール角速度ωに基づくリーンアクチュエータ1600の制御方法において、推定リーントルク決定テーブル及び制御用電流決定テーブルが用いられなくてもよい。アクチュエータ制御装置1606は、例えば、リーンアクチュエータ1600に出力すべき基本制御用電流を記憶している。基本制御用電流は、一定の値であってもよいし、速度V及びロール角速度ω以外のパラメータ(例えば、温度)により変動する値であってもよい。そして、アクチュエータ制御装置1606は、速度V及びロール角速度ωにより定まる係数をこの制御用電流に掛けることで、制御用電流を決定してもよい。
【0221】
なお、ロール角速度センサ602は、操舵アクチュエータ600以外の位置に支持されてもよい。ロール角速度センサ602は、リーン車両1aがIMU(Inertial Measurement Unit)を備える場合には、IMUのロール角速度センサであってもよい。IMUは、リーン車両1aの慣性を検知するユニットである。この場合、ロール角速度センサ602は、IMUの筐体に支持される。IMUは、エンジンの振動によるノイズがIMU内の各種センサに伝わることを抑制するために、ラバーマウントを介して車体フレーム21に支持される。よって、ロール角速度センサ602がIMUに含まれる場合には、ロール角速度センサ602は、車体フレーム21に対して僅かに変位できるように支持されている。なお、ロール角速度センサ1602も、ロール角速度センサ602と同様に、IMUに含まれてもよい。
【0222】
なお、リーン車両1,1aは、例えば、オフロードタイプの自動二輪車、スクータタイプの自動二輪車、モペッドタイプの自動二輪車であってもよい。
【0223】
なお、ロール軸Axは、ロール角速度センサ602,1602を通過してもよい。これにより、ロール角速度センサ602,1602のロール角速度ωの検出精度が更に高くなる。
【0224】
なお、姿勢制御用トルクTdは、車体フレーム1021のロール軸Ax回りの姿勢の制御以外に用いられてもよい。姿勢制御用トルクTdは、車体フレーム1021のヨー軸回りの姿勢の制御以外に用いられてもよいし、車体フレーム1021のピッチ軸回りの姿勢の制御以外に用いられてもよい。
【0225】
なお、補助操舵トルクTcは、リーン車両1aが低速走行しているときに、車体フレーム21が左方L又は右方Rに傾斜することを抑制するためにステアリングシャフト62に出力されてもよい。より詳細には、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が傾斜抑制の制御を行う条件は、例えば、0km/h<V≦20km/hである。車体フレーム21が左方Lに傾斜しているときに前輪3が左操舵されると、負の値のロール角速度ωが発生し、車体フレーム21が右方Rに傾斜しているときに前輪3が右操舵されると、正の値のロール角速度ωが発生する。
【0226】
そこで、電流決定部616は、車体フレーム21が左方Lに傾斜した場合(ロール角速度ωが正の値である場合)には、正の値の制御用電流I(m,n)を出力する。操舵アクチュエータ600は、正の値の補助操舵トルクTcをステアリングシャフト62に出力する。その結果、前輪3が左操舵され、車体フレーム21が直立状態に戻ろうとする。電流決定部616は、車体フレーム21が右方Rに傾斜した場合(ロール角速度ωが負の値である場合)には、負の値の制御用電流I(m,n)を出力する。操舵アクチュエータ600は、負の値の補助操舵トルクTcをステアリングシャフト62に出力する。その結果、前輪3が右操舵され、車体フレーム21が直立状態に戻ろうとする。これにより、リーン車両1aにおいて、車体フレーム21が左方L又は右方Rに傾斜することが抑制される。なお、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角速度ωに加えて、ヨー角速度に基づいて、操舵アクチュエータ600を制御してもよい。ヨー角速度とは、上下方向UDに延びる軸を中心に車体フレーム21が回転するときの角速度である。また、リーン車両1aの特性に応じて、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606がリーン車両1aの傾斜動作をアシストするように操舵アクチュエータ600を制御してもよい。
【0227】
なお、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、以下に説明する制御を行ってもよい。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度Vが例えば20km/hより大きいときには、表1の推定操舵トルク決定テーブル及び表2の制御用電流決定テーブルに基づいて、操舵アクチュエータ600を制御する。リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、速度Vが例えば20km/h以下のときには、上記傾斜抑制の制御により、操舵アクチュエータ600を制御する。
【0228】
なお、姿勢制御用トルクTdは、リーン車両1bが低速走行しているときに、車体フレーム1021が左方L又は右方Rに傾斜することを抑制するために上クロス部材1051に出力されてもよいし、下クロス部材1052に出力されてもよい。より詳細には、アクチュエータ制御装置1606が傾斜抑制の制御を行う条件は、0km/h<V≦20km/hである。電流決定部1616は、車体フレーム1021が左方Lに傾斜した場合(ロール角速度ωが正の値である場合)には、負の値の制御用電流I(m,n)を出力する。リーンアクチュエータ1600は、負の値の姿勢制御用トルクTdを下クロス部材1052に出力する。その結果、後方bに見たときに、下クロス部材1052が車体フレーム1021に対して時計回りに回転し、車体フレーム21が直立状態に戻ろうとする。電流決定部1616は、車体フレーム1021が右方Rに傾斜した場合(ロール角速度ωが負の値である場合)には、正の値の制御用電流I(m,n)を出力する。リーンアクチュエータ1600は、正の値の姿勢制御用トルクTdを下クロス部材1052に出力する。その結果、後方bに見たときに、下クロス部材1052が車体フレーム1021に対して反時計回りに回転し、車体フレーム1021が直立状態に戻ろうとする。これにより、リーン車両1bにおいて、車体フレーム1021が左方L又は右方Rに傾斜することが抑制される。なお、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角速度ωに加えて、ヨー角速度を用いて、リーンアクチュエータ1600を制御してもよい。また、リーン車両1bの特性に応じて、アクチュエータ制御装置1606がリーン車両1bの傾斜動作をアシストするようにリーンアクチュエータ1600を制御してもよい。
【0229】
なお、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、操舵アクチュエータ600の制御においてロール角速度ωを用い、速度Vを用いなくてもよい。また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606は、ロール角速度ωに加えて、ロール角速度ω以外のパラメータに基づいて、操舵アクチュエータ600を制御してもよい。また、アクチュエータ制御装置1606は、リーンアクチュエータ1600の制御においてロール角速度ωを用い、速度Vを用いなくてもよい。また、アクチュエータ制御装置1606は、ロール角速度ωに加えて、ロール角速度ω以外のパラメータに基づいて、リーンアクチュエータ1600を制御してもよい。
【0230】
なお、リーンアクチュエータ1600は、下クロス部材1052に姿勢制御用トルクTdを出力する代わりに、上クロス部材1051に姿勢制御用トルクTdを出力してもよい。また、リーンアクチュエータ1600は、左サイド部材1053に姿勢制御用トルクTdを出力してもよいし、右サイド部材1054に姿勢制御用トルクTdを出力してもよい。
【0231】
なお、ロール角速度センサ602とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とは、電気信号線で接続されていてもよいし、光ファイバで接続されていてもよい。速度センサ604とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とは、電気信号線で接続されていてもよいし、光ファイバで接続されていてもよい。また、ロール角速度センサ602と速度センサ604とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とは、CAN(Controller Area Network)により接続されていてもよいし、CAN以外の接続方式により接続されていてもよい。CANでは、ロール角速度センサ602と速度センサ604とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606を接続する配線に種々の情報が多重化されて伝送される。CAN以外の接続方式とは、例えば、ロール角速度センサ602とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とが配線で接続され、速度センサ604とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とが配線で接続される。ロール角速度センサ602とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とを接続する配線には、ロール角速度ωのみが伝送される。速度センサ604とリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606とを接続する配線には、速度Vのみが伝送される。
【0232】
なお、ロール角速度センサ1602とアクチュエータ制御装置1606とは、電気信号線で接続されていてもよいし、光ファイバで接続されていてもよい。速度センサ1604とアクチュエータ制御装置1606とは、電気信号線で接続されていてもよいし、光ファイバで接続されていてもよい。また、ロール角速度センサ1602と速度センサ1604とアクチュエータ制御装置1606とは、CANにより接続されていてもよいし、CAN以外の接続方式により接続されていてもよい。CANでは、ロール角速度センサ1602と速度センサ1604とアクチュエータ制御装置1606を接続する配線に種々の情報が多重化されて伝送される。CAN以外の接続方式とは、例えば、ロール角速度センサ1602とアクチュエータ制御装置1606とが配線で接続され、速度センサ1604とアクチュエータ制御装置1606とが配線で接続される。ロール角速度センサ1602とアクチュエータ制御装置1606とを接続する配線には、ロール角速度ωのみが伝送される。速度センサ1604とアクチュエータ制御装置1606とを接続する配線には、速度Vのみが伝送される。
【0233】
なお、リーン車両1bは、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606及び操舵アクチュエータ600を更に備えていていもよい。この場合、リーン車両1bでは、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が操舵アクチュエータ600を制御し、アクチュエータ制御装置1606がリーンアクチュエータ1600を制御する。リーン車両1bのリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606の動作は、例えば、リーン車両1aのリーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606と同じである。また、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606及びアクチュエータ制御装置1606は、速度V(m)やロール角速度ω(n)に応じて、アシスト量を変化させてもよい。例えば、リーン車両1bが低速走行しているときには、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が操舵アクチュエータ600によるアシスト量を大きくし、アクチュエータ制御装置1606がリーンアクチュエータ1600によるアシスト量を小さくする。一方、リーン車両1bが高速走行しているときには、リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置606が操舵アクチュエータ600によるアシスト量を小さくし、アクチュエータ制御装置1606がリーンアクチュエータ1600によるアシスト量を大きくする。ただし、アシスト量の変化のさせ方はこれに限らない。
【0234】
なお、リーン車両1,1aは、ドライブバイワイヤが採用されていてもよい。すなわち、ハンドル60と前輪3とが機械的に接続されていなくてもよい。また、ハンドル60と1以上の操舵輪3oとが機械的に接続されていなくてもよい。この場合、ハンドル60の操作に応じて、操舵アクチュエータ600が1以上の操舵輪3oを操舵する。この際、ハンドル60に加わった力は、1以上の操舵輪3oには伝達されない。この場合、ハンドル60の操作に応じて、操舵アクチュエータ600が前輪3を操舵する。この際、ハンドル60に加わった力は、前輪3には伝達されない。
【符号の説明】
【0235】
1,1a:リーン車両
2,1002:車両本体部
3:前輪
3o:1以上の操舵輪
4,1004:後輪
7,1007:操舵機構
21,1021:車体フレーム
24,1024:シート
25,1025:パワーユニット
60,1060:ハンドル
62,1062:ステアリングシャフト
64:フロントフォーク
64L,1033:左緩衝装置
64R,1034:右緩衝装置
66:アッパーブラケット
68:アンダーブラケット
211,1211:ヘッドパイプ
600:操舵アクチュエータ
602,1602:ロール角速度センサ
604,1604:速度センサ
606:リーン車両用操舵アクチュエータ制御装置
614,1614:トルク推定部
616,1616:電流決定部
1005:リンク機構
1031:左前輪
1032:右前輪
1051:上クロス部材
1052:下クロス部材
1053:左サイド部材
1054:右サイド部材
1067:タイロッド
1314:左前輪アクスル
1317:左ブラケット
1324:右前輪アクスル
1327:右ブラケット
1337:中央ブラケット
1052A:前下クロス部材
1052B:後下クロス部材
1600:リーンアクチュエータ
1606:アクチュエータ制御装置
Ax:ロール軸