(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/48 20060101AFI20221128BHJP
H01H 13/52 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
H01H13/48
H01H13/52 F
(21)【出願番号】P 2020558175
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041341
(87)【国際公開番号】W WO2020105339
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2018217434
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃
(72)【発明者】
【氏名】田澤 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】舂井 克敏
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-119678(JP,U)
【文献】特開2011-258379(JP,A)
【文献】実開昭55-102724(JP,U)
【文献】特開2005-100714(JP,A)
【文献】中国実用新案第202042403(CN,U)
【文献】中国実用新案第200986869(CN,Y)
【文献】特開2001-118457(JP,A)
【文献】実開平02-089737(JP,U)
【文献】特開平03-214521(JP,A)
【文献】特開2012-230926(JP,A)
【文献】中国実用新案第204884966(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、前記開口部に連通する収納部とを有する筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記収納部の内部に配置される固定接点部材と、
前記収納部の内部で前記固定接点部材よりも前記開口部側に配置され、前記開口部側にドーム状に突出し、反転動作可能なドーム部と、前記ドーム部の外周部に設けられる基部とを有する可動接点部材と、
前記可動接点部材に対して前記固定接点部材とは反対側に設けられ、前記可動接点部材の反転動作方向に弾性変形可能な板ばねと、
前記開口部から突出し、前記板ばねを介して前記可動接点部材を前記固定接点部材側に押圧可能な硬質材料製の押圧部材と
を含み、
前記板ばねは、
本体部と、
前記本体部から平面視で外側に延在して前記可動接点部材の前記基部の上に位置し、前記本体部に対して弾性変形する複数の脚部と
を有
し、
前記板ばねの前記本体部から延在する前記複数の脚部のすべてが前記可動接点部材の前記基部の上面に接触している、プッシュスイッチ。
【請求項2】
前記複数の脚部は、前記押圧部材が押圧されていない初期位置にある状態で、前記可動接点部材に係合しており、前記押圧部材が押圧されることによって弾性変形する、請求項1記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記複数の脚部は、側面視で前記本体部から前記可動接点部材に向かって斜め方向に延在する、請求項1又は2記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
前記収納部は平面視で矩形状であり、
前記複数の脚部は4本あり、
前記4本の脚部は、それぞれ、平面視で前記収納部の4つの角部に向かって延在する、請求項1乃至3のいずれか一項記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記収納部は平面視で長方形であり、
前記4本の脚部は、それぞれ、平面視で前記収納部の4つの角部まで延在する、請求項4記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
前記収納部は平面視で矩形状であり、4つの角部を有し、
前記複数の脚部は4本あり、
前記可動接点部材の前記基部の外形は、前記収納部の形状に沿って矩形状であり、
前記板ばねの前記本体部から延在する前記4本の脚部のすべてが前記収納部の前記4つの角部に向かってそれぞれ延在し、前記4本の脚部のすべてが前記可動接点部材の前記基部の前記上面に接触している、請求項1乃至3のいずれか一項記載のプッシュスイッチ。
【請求項7】
前記複数の脚部は、先端側で前記可動接点部材の面が前記可動接点部材側に突出するように折り曲げられる折り曲げ部、又は、先端側で前記可動接点部材の面が前記可動接点部材側に突出するように湾曲される湾曲部を有し、
前記折り曲げ部又は前記湾曲部が前記可動接点部材に係合する、請求項1乃至
6のいずれか一項記載のプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドーム型の可動接点部材を押圧するために、ラバー製のステムを用いたプッシュスイッチがある。ラバー製のステムが押圧されると、可動接点部材が撓み始める前にラバー製のステムのみが弾性変形して潰される動作領域があり、この動作領域がプリストロークの領域として利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ラバー製のステムがさらに押圧されてプリストロークの動作領域が終わり、可動接点部材が反転動作を開始するメインストロークの動作領域に入っても、ラバー製のステムの弾性変形が生じるので、メインストロークの動作領域における操作ストローク量は、可動接点部材の操作ストローク量にラバー製のステムの弾性変形量を加えたものが操作ストローク量になる。このため、可動接点部材に反転動作を行わせるためのストローク(メインストローク)のショートストローク化を図りたい場合には限界があった。
【0005】
そこで、ショートストローク化を容易に実現できるプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態のプッシュスイッチは、開口部と、前記開口部に連通する収納部とを有する筐体と、前記筐体に取り付けられ、前記収納部の内部に配置される固定接点部材と、前記収納部の内部で前記固定接点部材よりも前記開口部側に配置され、前記開口部側にドーム状に突出し、反転動作可能なドーム部と、前記ドーム部の外周部に設けられる基部とを有する可動接点部材と、前記可動接点部材に対して前記固定接点部材とは反対側に設けられ、前記可動接点部材の反転動作方向に弾性変形可能な板ばねと、前記開口部から突出し、前記板ばねを介して前記可動接点部材を前記固定接点部材側に押圧可能な硬質材料製の押圧部材とを含み、前記板ばねは、本体部と、前記本体部から平面視で外側に延在して前記可動接点部材の前記基部の上に位置し、前記本体部に対して弾性変形する複数の脚部とを有し、前記板ばねの前記本体部から延在する前記複数の脚部のすべてが前記可動接点部材の前記基部の上面に接触している。
【発明の効果】
【0007】
ショートストローク化を容易に実現できるプッシュスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1のプッシュスイッチ100を示す斜視図である。
【
図3】金属プレート120A、120Bを示す図である。
【
図4A】プッシュスイッチ100のFS特性を示す図である。
【
図4B】プッシュスイッチ100のFS特性を示す図である。
【
図4C】プッシュスイッチ100のFS特性を示す図である。
【
図4D】プッシュスイッチ100のFS特性を示す図である。
【
図4E】プッシュスイッチ100のFS特性を示す図である。
【
図4F】プッシュスイッチ100のFS特性を示す図である。
【
図5A】プッシュスイッチ100をオン/オフする際の操作音のレベルの周波数分布を示す図である。
【
図5B】プッシュスイッチ100をオン/オフする際の操作音のレベルの周波数分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のプッシュスイッチを適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、実施の形態1のプッシュスイッチ100を示す斜視図である。
図2は、プッシュスイッチ100の分解図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、説明の便宜上、Z軸負方向側を下側又は下、Z軸正方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0011】
プッシュスイッチ100は、筐体110、金属プレート120A、120B、メタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、130C、メタルスプリング140、押圧部材150、及びフレーム160を含む。以下では、金属プレート120A、120Bについては、単独で示す
図3も用いて説明する。
図3は、金属プレート120A、120Bを示す図である。
【0012】
プッシュスイッチ100は、メタルコンタクト130Aによって金属プレート120Aと金属プレート120Bとの電気的な導通状態が変化することでオン(導通状態)とオフ(非導通状態)とが切り替わる。
【0013】
プッシュスイッチ100は、オフ(非導通状態)の時には、メタルコンタクト130Aは金属プレート120B(周辺固定接点121B)には接触しているが、金属プレート120A(中央固定接点121A)には接触していない。すなわち、金属プレート120Aと金属プレート120Bとは電気的に接続されておらず、プッシュスイッチ100はオフ(非導通状態)である。
【0014】
また、プッシュスイッチ100は、押圧部材150を下方向に押圧していない初期位置(
図1参照)から押圧部材150を下方向に押圧し始めると、まずメタルスプリング140のみが弾性変形し、リーフスプリング130B、130Cとメタルコンタクト130Aは弾性変形しない動作領域に入る。この動作領域における押圧部材150の下方向のストローク(変位)をプリストロークと称す。プリストロークの状態では、メタルコンタクト130Aは反転動作せず、金属プレート120Aに接触していないため、プッシュスイッチ100はオフ(非導通状態)である。
【0015】
また、メタルスプリング140の中央部がリーフスプリング130Cに接触し始めると、プッシュスイッチ100は、プリストロークの動作領域からメインストロークの動作状態に遷移する。
【0016】
メインストロークの動作領域で押圧部材150を下方向に押圧すると、メタルスプリング140の中央部がリーフスプリング130C、130Bの中央部を下方向に押圧し、リーフスプリング130C、130Bの中央部がメタルコンタクト130Aの中央部を下方向に押圧する。そして、リーフスプリング130C、130Bとメタルコンタクト130Aとが反転動作を行うと、メタルコンタクト130Aが金属プレート120Aに接触して、金属プレート120Aと金属プレート120Bとがメタルコンタクト130Aを介して電気的に接続され、プッシュスイッチ100がオン(導通状態)になる。
【0017】
プリストロークを実現するためにメタルスプリング140を用いると、メインストロークの動作領域におけるプリストローク用の弾性部材(メタルスプリング140)の弾性変形量を減らすことができるため、従来のようにラバー製の押圧部材(ステム)を用いる場合よりも、メインストロークの動作領域のショートストローク化を図ることができる。以下、プッシュスイッチ100の構成の詳細について説明する。
【0018】
筐体110は、樹脂製であり、金属プレート120A、120Bを保持する。筐体110と金属プレート120A、120Bは、インサート成型によって一体的に作製される。筐体110は、開口部111と、開口部111に連通する収納部112とを有する。開口部111は、Z軸正方向側の面に形成されている。収納部112は、開口部から下側に向かって形成されている。開口部111及び収納部112は、平面視で四隅(4つの角部)が面取りされた矩形状であり、X軸方向の長さとY軸方向の長さとが略等しい。すなわち、ここでは開口部111及び収納部112は、平面視で正方形である。
【0019】
収納部112の底部には金属プレート120Aの中央固定接点121Aと、金属プレート120Bの周辺固定接点121Bとが配置され、収納部112内に表出している。収納部112内では、中央固定接点121Aと周辺固定接点121Bの上側に、メタルコンタクト130Aとリーフスプリング130B、130Cがこの順に重ねて配置され(
図2参照)、さらにその上にメタルスプリング140と押圧部材150が重ねられている。メタルスプリング140は、収納部112に収納され、押圧部材150の突出部152は開口部111から上方向に突出している(
図1参照)。
【0020】
金属プレート120Aは、
図3に示すように、中央固定接点121Aと、端子122Aとを有する。金属プレート120Aは、一例として銅製である。中央固定接点121Aは、収納部112の底部の中央部に表出しており、押圧部材150が下方向に押圧されていない状態では、メタルコンタクト130Aには接触しておらず、押圧部材150が下方向に押圧されてメタルコンタクト130Aが反転動作を行うと、メタルコンタクト130Aに接触する。端子122Aは、筐体110のX軸負方向側に突出している。
【0021】
金属プレート120Bは、周辺固定接点121Bと、端子122Bとを有する。金属プレート120Bは、一例として銅製である。周辺固定接点121Bは、収納部112の底部の周縁部に表出しており、押圧部材150が下方向に押圧されていない初期位置にある状態(
図1参照)において、メタルコンタクト130AのX軸方向両側の端部と、Y軸方向両側の端部とに接触しており、押圧部材150が下方向に押圧された状態においてもメタルコンタクト130Aに接触する。端子122Bは、筐体110のX軸正方向側に突出している。
【0022】
メタルコンタクト130Aは、金属部材製の金属ばねであり、基部131Aと、上側にドーム状に突出し反転動作可能なドーム部132Aを有する(
図2参照)。
【0023】
基部131Aは、平面視で開口部111及び収納部112の形状及びサイズに合わせた矩形形状を有し、ドーム部132Aの周囲に位置する。基部131Aは、周辺固定接点121Bに接触している。なお、基部131Aの形状は、上述のような矩形形状ではなく、例えば、ドーム部132Aの外周部から収納部112の四隅方向へ各々独立して脚状に延設されたような形状であってもよい。
【0024】
ドーム部132Aは、基部131Aの中央部に位置し、基部131Aに対して上側に凸の状態から下側に凸の状態に反転動作可能である。すなわち、ドーム部132Aの反転動作方向は、ドーム部132Aが凸となる向きが変化する方向であり、上側に凸の状態から下側に凸の状態に変化する方向である。メタルコンタクト130Aは、可動接点部材の一例である。メタルコンタクト130Aは、一例として、ステンレス製である。
【0025】
メタルコンタクト130Aは、ドーム部132Aの頂部が中央固定接点121Aの上方に位置するとともに、基部131Aが周辺固定接点121Bに接触した状態で配置されている。そのため、ドーム部132Aは、ドーム部132Aが上側から押圧されて反転動作して下側に凸になると、反転したドーム部132Aが中央固定接点121Aに接触し、メタルコンタクト130Aが中央固定接点121Aと周辺固定接点121Bを導通させる。メタルコンタクト130Aは、下面に銀めっきが施されている。下面は、電流が流れる中央固定接点121A及び周辺固定接点121Bと接触するからである。また、ドーム部132Aが反転動作することで、操作者に操作感触を与えることができる。
【0026】
このようなメタルコンタクト130Aは、平面視で略矩形状に成型された板金にパンチング処理でドーム部132Aを形成することによって作製される。
【0027】
リーフスプリング130Bは、メタルコンタクト130Aから銀めっきを取り除いた構成を有する。このため、リーフスプリング130Bは、基部131Bとドーム部132Bと有する。リーフスプリング130Bは、メタルコンタクト130Aに重ねて配置される。
【0028】
リーフスプリング130Cは、リーフスプリング130Bと同一の構成を有するため、基部131Cとドーム部132Cと有する。リーフスプリング130Cは、リーフスプリング130Bに重ねて配置される。
【0029】
メタルスプリング140は、4本の脚部141と、中央部142とを有する金属製の板ばねである。中央部142は、4本の脚部141の中央に位置し、平面視で円形の平板状の部分である。
【0030】
4本の脚部141は、平面視で中央部142から等間隔(90度間隔)で外側に向かうように、かつ、側面視で中央部142から斜め下方向に向かうように延在している。このようなメタルスプリング140は、略十字状に切断された板金にパンチング処理で脚部141を形成することによって作製される。また、各脚部141は、収納部112の四隅に向かって延在しているため、脚部141を長くすることができる。
【0031】
各脚部141は、折り曲げ部141Aを有する。脚部141は、中央部142から折り曲げ部141Aに向かって斜め下方向に延在し、折り曲げ部141Aで折り曲げられ、先端に向かって斜め上方向に延在する形状を有する。
【0032】
脚部141の高さ(折り曲げ部141Aから中央部142に接続される付け根までのZ軸方向の長さ)は、リーフスプリング130Cのドーム部132Cの高さ(基部131Cに対するドーム部132Cの頂部の高さ)よりも高く設定されている。また、4個の折り曲げ部141Aの位置は、平面視でリーフスプリング130Cのドーム部132Cよりも外側にある。
【0033】
メタルスプリング140は、平面視で4本の脚部141と、リーフスプリング130Cの基部131Cの四隅との位置を合わせてリーフスプリング130Cに重ねられた状態で、4個の折り曲げ部141Aが基部131Cの四隅の上面に接触し、中央部142とドーム部132Cとの間に隙間が生じ、かつ、脚部141とドーム部132Cとの間に隙間が生じる形状を有する。
【0034】
このため、メタルスプリング140を平面視で位置を合わせてリーフスプリング130Cに重ねると、メタルスプリング140は、4本の脚部141の折り曲げ部141Aがリーフスプリング130Cの基部131Cの四隅の上面にそれぞれ当接した状態で、中央部142がリーフスプリング130Cのドーム部132Cから離間した状態になる。
【0035】
メタルスプリング140は、押圧部材150によって中央部142が下方向に押圧されると、脚部141が中央部142から外側に押し広げられるように弾性変形するので、中央部がリーフスプリング130Cのドーム部132Cに近づく。
【0036】
このようにメタルスプリング140が弾性変形して、脚部141の折り曲げ部141Aよりも中央部142側の部分、又は、中央部142のどちらかがリーフスプリング130Cのドーム部132Cに接触するまでの動作領域が、プリストロークの動作領域になる。
【0037】
メタルスプリング140は、押圧部材150によってさらに下方に押圧されると、リーフスプリング130Cのドーム部132Cを下方に押し下げるメインストロークの動作領域に遷移する。
【0038】
押圧部材150は、基部151と突出部152とを有し、基部151と突出部152の下端側とが収納部112に収納される。基部151は、円錐台形の突出部152の下端の周囲に設けられた円盤状の部分であり、基部151の中央部の上面から突出部152が突出している。押圧部材150は、所謂ステムである。
【0039】
押圧部材150は、硬質材料製であり、一例として、弾性変形が殆ど生じない合成樹脂、金属、又はセラミック等で作製される。すなわち、硬質材料とは、弾性変形が殆ど生じない合成樹脂、金属、又はセラミック等であり、理想的には弾性を有しない材料である。プッシュスイッチ100は、メインストロークの動作領域において、押圧部材150の弾性変形によるストロークの増大を抑制するために、押圧部材150を弾性変形が殆ど生じない硬質材料製にしている。
【0040】
フレーム160は、基部161及び脚部162を有する。基部161は、平面視で矩形状であり、開口部161Aを有する。基部161は、筐体110の上面に重ねて配置され、開口部161Aは、押圧部材150の突出部152を挿通させることができる開口径を有する。
【0041】
脚部162は、基部161のY軸方向両側に2本ずつ設けられており、それぞれZ軸負方向へ突出し、先端がX軸方向かつ、平面視で内側を向く方向に折り曲げられた係合部162Aを有する。各脚部162は、筐体110の側面に密着し、係合部162Aは筐体110の側面の突起に係合する。
【0042】
図2に示すメタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、130C、メタルスプリング140を筐体110の収納部112に収納し、メタルスプリング140の上に押圧部材150を配置した状態で、筐体110の上からフレーム160を被せて固定すると、
図1に示すようにプッシュスイッチ100が完成する。
【0043】
この状態で、メタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、130C、メタルスプリング140、及び押圧部材150は、ガタつかないように保持されている。
【0044】
なお、基部161のX軸方向の両側に、筐体110の側面の凹部に係合する係合部を設けてもよい。
【0045】
以上のような構成を有するプッシュスイッチ100は、一例として、車両の室内における各種操作系のスイッチとして用いることが可能である。このような場合には、押圧部材150の突出部152を薄い樹脂シート等で覆われてもよい。
【0046】
また、車両の走行によって生じる振動によってプッシュスイッチ100のメタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、130C、メタルスプリング140、及び押圧部材150がガタつかないようにするために、
図1に示す初期位置よりも押圧部材150を少し下方に押し込んだ状態で取り付けられることがある。このような場合には、プレストロークの範囲内で押圧部材150を下方向に押圧した状態で取り付ければよい。なお、このように押圧部材150を下方向に押圧した状態で取り付けることにより、プッシュスイッチ100の個体差を吸収するようにしてもよい。
【0047】
図4A乃至
図4Fは、プッシュスイッチ100のFS(Force-Stroke)特性を示す図である。横軸が押圧部材150を下方に押し込むストローク(S)であり、縦軸が押圧部材150を下方に押し込む際に必要な力(F)である。力(F)は操作荷重である。
【0048】
図4Aは、メタルスプリング140及び押圧部材150だけでのFS特性を示し、
図4Bは、メタルコンタクト130Aとリーフスプリング130B、130CだけでのFS特性を示し、
図4Cは、プッシュスイッチ100全体のFS特性を示す。
【0049】
また、比較用のプッシュスイッチとして、メタルスプリング140及び押圧部材150の代わりに、従来のように弾性変形することによってプリストロークを実現する押圧部材を含むプッシュスイッチのFS特性を示す。
図4Dは、比較用のプッシュスイッチの押圧部材単独でのFS特性を示し、
図4Eは、メタルコンタクト130Aとリーフスプリング130B、130CだけでのFS特性を示し、
図4Fは、比較用のプッシュスイッチ全体でのFS特性を示す。なお、
図4Bと
図4EのFS特性は等しい。
【0050】
図4Aに示すように、メタルスプリング140及び押圧部材150だけでのFS特性は、ストロークが0.0mmから約0.55mmくらいまでは操作荷重が線形的に立ち上がり、ストロークが約0.55mmに達すると、操作荷重をそれ以上増やしても、ストロークは略一定になる特性を示した。押圧部材150は、弾性変形が殆ど生じない硬質材料製であることから、
図4Aに示すFS特性は殆どメタルスプリング140だけのFS特性であることを確認できた。さらに、メタルスプリング140はその弾性変形を妨げる剛体に接触すると、それ以上操作ストロークが増えないことも確認できた。
【0051】
また、
図4Bに示すように、メタルコンタクト130Aとリーフスプリング130B、130CだけでのFS特性は、ストロークが約0.35mmに達するまでは操作荷重が略ゼロであり、ストロークが約0.47mmで操作荷重がピークになり、ストロークが約0.6mmで操作荷重が極小値を取り、ストロークが約0.6mmの時点でそれ以上押圧できない状態になることを示した。これは、ストロークが約0.47mmの時点でメタルコンタクト130Aとリーフスプリング130B、130Cのドーム部132A、132B、132Cが反転し始め、ストロークが約0.6mmの時点で完全に反転した状態になることを示している。完全に反転した状態は、プッシュスイッチ100がオンになる状態である。
図4Bからは、メタルコンタクト130Aとリーフスプリング130B、130Cがその弾性変形を妨げる剛体に接触すると、それ以上操作ストロークが増えないことも確認できた。
【0052】
また、
図4Cは、プッシュスイッチ100全体のFS特性であり、ストロークが約0.34mm付近でメタルコンタクト130Aがリーフスプリング130Cを押圧し始めるように、
図4Aと
図4BのFS特性を合成した特性になっている。プレストロークが終了してメインストロークが開始するのは、約0.34mmであり、メインストロークが完了するのは、約0.59mmである。
【0053】
このため、プッシュスイッチ100では、メインストロークの動作領域でオンにするのに必要なストロークを0.25mmにすることができ、ショートストローク化を実現できることが分かった。これは、メインストロークの動作領域において、押圧部材150の弾性変形が殆ど生じなかったためである。
【0054】
一方、比較用のプッシュスイッチでは、
図4Dに示すように、硬質材料ではない材料からなり弾性変形する押圧部材だけでのFS特性は、ストロークが0.0mmから約0.3mmくらいまで操作荷重が非線形的に立ち上がった後に、ストロークが約0.65mmくらいまでは操作荷重が少し低下している。ストロークが約0.65mm以上になると、操作荷重が急激に増大している。ただし、
図4Aと比較すると、その増大の仕方は緩やかである。これはストロークが約0.65mmの位置で剛体に接触して弾性変形が一旦止められた後に、押圧部材が押しつぶされることにより弾性変形しているためである。
【0055】
図4Eに示すメタルコンタクト130Aとリーフスプリング130B、130CだけでのFS特性は
図4Bと同一であるため、説明を省略する。
【0056】
また、
図4Fは、比較用のプッシュスイッチ全体のFS特性であり、ストロークが約0.4mmの位置で押圧部材がリーフスプリング130Cに接触するように、
図4Dと
図4EのFS特性を合成した特性になっている。プレストロークが終了してメインストロークが開始するのは、約0.39mmであり、比較用のプッシュスイッチがオンになるのは、約0.72mmである。
【0057】
このため、比較用のプッシュスイッチでは、メインストロークの動作領域でオンにするのに必要なストロークは約0.33mmであり、プッシュスイッチ100よりもストロークが約30%長いことが分かった。このように比較用のプッシュスイッチでストロークが長くなったのは、メインストロークの動作領域において、メタルコンタクト130Aおよびリーフスプリング130B、130Cが弾性変形するだけでなく、押圧部材の弾性変形が生じたためである。すなわち、メタルコンタクト130Aおよびリーフスプリング130B、130Cが弾性変形を開始する前に、押圧部材が押しつぶされるため、その分のストロークが長くなっている。
図4Fのメインストロークが始まった直後(0.4mm直後)の操作荷重の立ち上がり方が、
図4Eの操作荷重の立ち上がり方に対して緩やかなのは、押圧部材が押しつぶされた分の成分が合成されているためである。
【0058】
図5A及び
図5Bは、プッシュスイッチ100をオン/オフする際の操作音のレベルの周波数分布を示す図である。プッシュスイッチ100としては、FS特性の極大値に対する極小値の低下率が20%のものと30%のものを準備した。この低下率が大きいほど、押圧部材150を手で操作したときに操作者が得るクリック感が強いことになる。
【0059】
また、ここでは比較用に、メタルスプリング140及び押圧部材150の代わりに、従来のように弾性変形することによってプリストロークを実現する押圧部材を含む比較用のプッシュスイッチの操作音のレベルも示す。
【0060】
なお、プッシュスイッチ100をオンする際の操作音のレベルとは、メインストロークの動作領域において、プッシュスイッチ100がオンになるまで押圧部材150を下方に押圧したときに生じる操作音のレベルである。これは比較用のプッシュスイッチにおいても同様である。
【0061】
また、プッシュスイッチ100をオフする際の操作音のレベルとは、プッシュスイッチ100がオンの状態において、押圧部材150を開放し(典型的には押圧部材150を押す手を離し)、押圧部材150が初期位置に戻るときの操作音のレベルである。
【0062】
図5Aに示すように、プッシュスイッチ100をオンする際の操作音のレベルは、低下率が20%のものと30%のもので略等しく、また、比較用のプッシュスイッチも略等しいレベルであった。
【0063】
また、
図5Bに示すように、プッシュスイッチ100をオフする際の操作音のレベルは、比較用のプッシュスイッチに比べて、低下率が20%と30%の両方のプッシュスイッチ100において低減されていることが分かった。このようにオフにする際の操作音が低減されたのは、押圧部材150が初期位置に戻る際にメタルスプリング140に掛かる負荷が4本の脚部141に分散されたためと考えられる。
【0064】
このように、ショートストローク化を図っても、プッシュスイッチ100をオンする際の操作音は、比較用のプッシュスイッチと同レベルであり、プッシュスイッチ100をオフする際の操作音は、比較用のプッシュスイッチよりも低減されていることが分かった。
【0065】
以上のように、実施の形態によれば、メタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、130Cの積層体と、押圧部材150との間に、プリストローク用のメタルスプリング140を設けるとともに、押圧部材150を硬質材料製で殆ど弾性変形しないステムにしたことにより、比較用のプッシュスイッチと比べて、メインストロークの動作領域においてオンするまでのストロークを大幅に短くできることが分かった。
【0066】
このようなショートストローク化は、プリストローク用のメタルスプリング140と、硬質材料製で殆ど弾性変形しない押圧部材150とによって、比較的容易に実現することができる。
【0067】
したがって、ショートストローク化を容易に実現できるプッシュスイッチ100を提供することができる。
【0068】
比較用のプッシュスイッチのように、弾性変形する押圧部材を含む場合には、
図4Dに示すように操作荷重に応じて押圧部材は変形し続けるため、ショートストローク化を実現することは容易ではない。
【0069】
これに対して、実施の形態のプッシュスイッチ100は、メタルスプリング140でプリストロークを実現し、メインストロークの動作領域ではメタルスプリング140が完全に押し潰されて殆ど変形しない状態になるとともに、押圧部材150を殆ど弾性変形しない硬質材料製にしたため、比較的容易にショートストローク化を実現することができる。
【0070】
また、押圧部材150を殆ど弾性変形しないため、長期にわたって安定したストロークでの操作が可能になる。
【0071】
また、以上では、メタルスプリング140が4本の脚部141を有するため、プリストロークの動作領域における操作荷重を大きくすることができる。また、操作荷重による負荷が4本の脚部141に分散されるため、長寿命化を図るとともに、オフ時の操作音を低減することができる。
【0072】
また、以上では、メタルスプリング140の脚部141が弾性変形する形態について説明したが、中央部142が弾性変形してもよい。例えば、中央部142が非押圧状態で上に凸のドーム型であり、反転動作可能な構成であってもよい。この場合には、脚部141は弾性変形可能でも、弾性変形しない構成であってもよい。
【0073】
また、以上では、メタルスプリング140の脚部141が中央部142から側面視で斜め下方向に延在する形態について説明したが、脚部141は、中央部142とZ軸方向において等しい高さで水平方向(XY平面の方向)に延在していてもよい。この場合には、例えば、リーフスプリング130Cの基部131Cと脚部141との間に、スペーサを設けることによって、非押圧状態でメタルスプリング140とリーフスプリング130Cとの間に隙間が生じるようにすればよい。
【0074】
また、以上では、メタルスプリング140の脚部141の折り曲げ部141Aが基部131Cの四隅の上面に接触する形態について説明した。メタルスプリング140は、板金をパンチング処理で打ち抜くことによって作製されるため、側面は打ち抜かれた面である。このように、折り曲げ部141Aが基部131Cの上面に接触する構成では、メタルスプリング140が下方に押圧された際に、メタルスプリング140の側面(打ち抜かれた面)が基部131Cの上面に接触することはないので、メタルスプリング140の動作に伴って、側面(打ち抜かれた面)から削れ粉が発生することを抑制でき、削れ粉による電気的な接触不良の発生を抑制することができる。
【0075】
また、以上では、メタルスプリング140の脚部141が中央部142から折り曲げ部141Aに向かって斜め下方向に延在し、折り曲げ部141Aで折り曲げられ、先端に向かって斜め上方向に延在する形状を有する形態について説明した。このような構成では、押圧部材150の突出部152が斜め方向から押圧されても、4本の脚部141に均等に荷重が掛かり易い。また、このような構成により、リーフスプリング130Cと押圧部材150との間で、メタルスプリング140を安定的に配置することができる。
【0076】
しかしながら、脚部141は、折り曲げ部141Aで水平方向に折り曲げられていてもよい。このような構成の場合には、メタルスプリング140が下方に押圧された際に、脚部141の折り曲げ部141Aよりも先端側は、リーフスプリング130Cの基部131Cの上面から離間するので、メタルスプリング140の側面(打ち抜かれた面)が基部131Cの上面に接触することはなく、メタルスプリング140の動作に伴って、側面(打ち抜かれた面)から削れ粉が発生することを抑制でき、削れ粉による電気的な接触不良の発生を抑制することができる。
【0077】
また、以上では、メタルスプリング140の脚部141が折り曲げ部141Aで折り曲げられている形態について説明したが、脚部141は折り曲げられておらず、先端がリーフスプリング130Cの基部131Cの上面に接触していてもよい。先端も側面(打ち抜かれた面)の一部であるが、削れ粉の発生による影響が殆ど生じないような場合には、このような構成であってもよい。
【0078】
また、以上では、メタルスプリング140の脚部141が4本ある形態について説明したが、脚部141は3本であってもよいし、動作の安定性が確保できるのであれば2本であってもよい。
【0079】
また、以上では、開口部111及び収納部112は平面視で正方形である形態について説明したが、X軸方向又はY軸方向に長い長方形であってもよい。この場合には、脚部141の長さをより長くすることができ、プリストロークの量をより多く取ることができる。このため、プッシュスイッチ100の仕様等に応じて、操作荷重を設定し易い構成にすることができる。
【0080】
また、以上では、プッシュスイッチ100が、メタルコンタクト130Aに重ねられるリーフスプリング130B、130Cを含む形態について説明した。リーフスプリング130B、130Cは、メインストロークの動作領域における操作荷重を大きくするために設けられている。このため、リーフスプリング130B、130Cが不要な場合には、プッシュスイッチ100は、リーフスプリング130B、130Cを含まなくてもよく、1枚だめ(リーフスプリング130Bだけ)を含んでもよく、3枚以上含んでもよい。
【0081】
また、以上では、押圧部材150の基部151の下面が平坦である形態について説明したが、基部151の下面の中央に突起を設けてもよい。このような突起を設けると、押圧部材150でメタルスプリング140の中央部142を押圧し易くなる。
【0082】
以上、本発明の例示的な実施の形態のプッシュスイッチについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0083】
なお、本国際出願は、2018年11月20日に出願した日本国特許出願2018-217434に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0084】
100 プッシュスイッチ
110 筐体
120A、120B 金属プレート
130A メタルコンタクト
130B、130C リーフスプリング
140 メタルスプリング
150 押圧部材
160 フレーム