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特許7183299レンズ用熱可塑性樹脂及びそれを含むレンズ
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  • 特許-レンズ用熱可塑性樹脂及びそれを含むレンズ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】レンズ用熱可塑性樹脂及びそれを含むレンズ
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20221128BHJP
   C08G 64/30 20060101ALI20221128BHJP
   C08G 63/64 20060101ALI20221128BHJP
   C08G 64/16 20060101ALI20221128BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C08G64/02
C08G64/30
C08G63/64
C08G64/16
G02B1/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020559286
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2019048495
(87)【国際公開番号】W WO2020122122
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2018232991
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬介
(72)【発明者】
【氏名】松井 学
(72)【発明者】
【氏名】柳田 高恒
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
(72)【発明者】
【氏名】常守 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】今里 健太
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-020518(JP,A)
【文献】特開平02-180954(JP,A)
【文献】特開平02-222416(JP,A)
【文献】特開2015-010127(JP,A)
【文献】特開2015-137355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 63/00-64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する第1の構造単位と:
【化1】
(式中、R、R、R、及びRは、夫々独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基又は炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、又はハロゲン原子を示し;シクロブタン環はシス・トランス異性体混合物、シス異性体単独、トランス異性体単独のいずれかを示す);
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(TMC)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BPAF)、または6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロビインダン(SBI)に由来する第2の構造単位と
を有し、
前記第1の構造単位を、50mol%超95mol%以下で含み、かつ
以下の数式(A)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有する、ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートであるレンズ用熱可塑性樹脂:
<1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.853 (A)
【請求項2】
下記式(2)で表される炭酸ジエステルに由来する末端芳香族基をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂:
【化2】
(式中、R及びRは、夫々独立に、置換又は無置換の芳香族基である)。
【請求項3】
屈折率(n)が、1.470超1.600以下である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項4】
アッベ数(ν)が、25以上50以下の範囲である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項5】
以下の数式(C)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂:
≧1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.800 (C)
【請求項6】
ガラス転移温度が、130℃~170℃の範囲である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項7】
縦100mm×横100mm×厚さ3mmの成形板についてJIS K7373に準拠して測定した初期色相(YI)が、4.0以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項8】
複素環式アミンを実質的に含んでいない、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項9】
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、前記第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、アルカリ金属触媒及び/又はアルカリ土類金属触媒の存在下でエステル交換反応させることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、前記第2の構造単位をもたらすジカルボン酸化合物と、炭酸ジエステルとを、チタン化合物触媒の存在下又はアルミニウム触媒及びリン化合物触媒の存在下でエステル化及び/又はエステル交換反応させることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物の第三級アミン含有量が、1000重量ppm以下である、請求項又は10に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物のホウ酸含有量が、100重量ppm以下である、請求項11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂を含む、光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ用熱可塑性樹脂及びそれを含むレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の機器で用いられるプラスチック製の撮像レンズには、低複屈折化及び収差補正能力の向上が強く求められている。従来、このような撮像レンズでは、互いに異なる光学特性(屈折率、アッベ数)を有する複数のレンズの組み合わせ、及びレンズ形状の組み合わせによって、収差補正を行っている。
【0003】
例えば、撮像レンズ用途の高屈折率かつ低アッベ数の樹脂として、特許文献1は、ビスフェノールAを原料として使用せず、特定のモノマーを使用したポリカーボネートを開示している。
【0004】
なお、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(以下、TMCBDと称す)をモノマーとして用いたポリカーボネートが従来から知られている(特許文献2~6及び非特許文献1)。また、TMCBDを製造するための方法が、特許文献7に記載されており、TMCBDの原料を製造するための方法が、非特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/010318号
【文献】特公昭38-26798号公報
【文献】特開昭63-92644号公報
【文献】特開平2-222416号公報
【文献】特開平11-240945号公報
【文献】特開2015-137355号公報
【文献】特表平8-506341号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】CAREY CECIL GEIGER, JACK D.DAVIES, WILLIAM H.DALY,Aliphatic-Aromatic Copolycarbonates Derived from 2,2,4,4-Tetramethyl-1,3-cyclobutanediol,Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 1995, Vol.33, 2317-2327
【文献】Bulletin of the Faculty of Engineering, Hokkaido University, 67:155-163(1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
撮像レンズは、上述のように互いに異なる光学特性を有するレンズを組み合わせて設計される。したがって、1枚のレンズがどのような屈折率及びアッベ数を有するべきかは、他のレンズの屈折率及びアッベ数に依存するため、一概に定義することができない。
【0008】
一方で、屈折率とアッベ数とは負の相関関係があり、高い屈折率の樹脂は、低いアッベ数を有し、低い屈折率の樹脂は、高いアッベ数を有するという関係がある。
【0009】
したがって、撮像レンズの設計者は、特定の屈折率及び特定のアッベ数を有するレンズを採用しようとしても、そのようなレンズが存在していないことがあるため、設計するにあたって採用できるレンズには、制限がある。
【0010】
また、特定の屈折率及び特定のアッベ数を提供できる樹脂が存在していたとしても、色相、耐熱性、成形性、吸水率等の他の特性が、撮像レンズ用の樹脂として適切とはならないことがあり、そのような点においても、撮像レンズの設計者が採用できるレンズには制限がある。
【0011】
そこで、本発明は、撮像レンズの設計者が様々な種類のレンズを採用できるようにするために、レンズの種類に幅を与えることができるレンズ用の熱可塑性樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
以下の式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する第1の構造単位と:
【化1】
(式中、R、R、R、及びRは、夫々独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基又は炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、又はハロゲン原子を示し;シクロブタン環はシス・トランス異性体混合物、シス異性体単独、トランス異性体単独のいずれかを示す);
ジヒドロキシ化合物又はジカルボン酸化合物に由来する第2の構造単位と
を有し、かつ
以下の数式(A)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有する、
レンズ用熱可塑性樹脂:
<1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.853 (A)
《態様2》
下記式(2)で表される炭酸ジエステルに由来する末端芳香族基をさらに含む、態様1に記載の熱可塑性樹脂:
【化2】
(式中、R及びRは、夫々独立に、置換又は無置換の芳香族基である)。
《態様3》
前記第2の構造単位が、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、複素環式ジヒドロキシ化合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、複素環式ジカルボン酸化合物及び芳香族ジカルボン酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物からもたらされる、態様1又は2に記載の熱可塑性樹脂。
《態様4》
前記第1の構造単位を、50mol%超95mol%以下で含む、態様1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
《態様5》
屈折率(n)が、1.470超1.600以下である、態様1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
《態様6》
アッベ数(ν)が、25以上50以下の範囲である、態様1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
《態様7》
以下の数式(C)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有する、態様1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂:
≧1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.800 (C)
《態様8》
ガラス転移温度が、130℃~170℃の範囲である、態様1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
《態様9》
縦100mm×横100mm×厚さ3mmの成形板についてJIS K7373に準拠して測定した初期色相(YI)が、4.0以下である、態様1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
《態様10》
複素環式アミンを実質的に含んでいない、態様1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
《態様11》
ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートである、態様1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
《態様12》
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、前記第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、アルカリ金属触媒及び/又はアルカリ土類金属触媒の存在下でエステル交換反応させることを特徴とする、態様1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
《態様13》
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、前記第2の構造単位をもたらすジカルボン酸化合物と、炭酸ジエステルとを、チタン化合物触媒の存在下又はアルミニウム触媒及びリン化合物触媒の存在下でエステル化及び/又はエステル交換反応させることを特徴とする、態様1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
《態様14》
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物の第三級アミン含有量が、1000重量ppm以下である、態様12又は13に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
《態様15》
前記第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物のホウ酸含有量が、100重量ppm以下である、態様12~14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
《態様16》
態様1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂を含む、光学レンズ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の熱可塑性樹脂及び従来の樹脂の屈折率とアッベ数との関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のレンズ用熱可塑性樹脂は、後述の式(1)に由来する構造単位を有する熱可塑性樹脂であれば特に制限されないが、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが本発明の効果の点から好ましく、特にポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートから構成されることが好ましい。また、本発明は、以下に記載のような熱可塑性樹脂のレンズへの使用又は使用方法に関する。
【0015】
本発明のレンズ用熱可塑性樹脂は、以下の式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する第1の構造単位と:
【化3】
(式中、R、R、R、及びRは、夫々独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基又は炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、又はハロゲン原子を示し;シクロブタン環は、シス・トランス異性体混合物、シス異性体単独、トランス異性体単独のいずれかを示す);
ジヒドロキシ化合物又はジカルボン酸化合物に由来する第2の構造単位と
を有し、かつ
以下の数式(A)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有する:
<1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.853 (A)
【0016】
図1に示すように、従来の樹脂では、屈折率(n)及びアッベ数(ν)とは、以下の数式(B)を満たすような関係となっていた:
≧1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.853 (B)
【0017】
それに対して、本発明者らは、熱可塑性樹脂が式(1)の繰返し単位を含む場合に、屈折率とアッベ数との関係が、従来の関係から特異的になることを見出した。具体的には、熱可塑性樹脂が式(1)の繰返し単位を含む場合、従来よりも、特定の屈折率に対してアッベ数が小さくなる傾向になることを見出した。
【0018】
このような関係の屈折率とアッベ数とを有する樹脂が存在することによって、撮像レンズの設計者は、様々な種類のレンズを採用できるようになるために、レンズの設計において非常に有利になる。また、式(1)の繰返し単位を含む、熱可塑性樹脂は色相、成形性、耐熱性、吸水率等のレンズに求められる特性においても、有利となることがわかった。
【0019】
従来から、TMCBDをモノマーとして用いた熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート及びその屈折率については知られていたものの、そのようなポリカーボネートが、特異的に低いアッベ数を有するという点は知られていなかった。したがって、そのようなポリカーボネートが、レンズの設計時に有用となるということも知られていなかった。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂が、このような屈折率とアッベ数とを発現する理由としては、理論に拘束されないが、式(1)の繰返し単位を含む熱可塑性樹脂は、主鎖中のシクロブタン骨格が、ポリマーの主鎖の方向を複雑に捻れさせている可能性が考えられる。
【0021】
本明細書において、「屈折率(n)」は、25℃で測定した波長589nmの屈折率であり、実施例に記載した方法によって測定される。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂が有する屈折率(n)は、1.470超1.600未満の範囲である。屈折率(n)は、1.475以上、1.480以上、1.485以上、1.490以上、1.495以上、又は1.500以上であってもよく、1.590以下、1.570以下、1.550以下、1.530以下、1.520以下、1.510以下、又は1.500以下であってもよい。例えば、屈折率(n)は、1.475以上1.550以下であってもよく、1.480以上1.540以下であってもよく、1.485以上1.530以下であってもよく、1.490以上1.520以下であってもよい。
【0023】
本明細書において、「アッベ数(ν)」は、25℃で測定した波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出され、これらは実施例に記載した方法によって測定される:
ν=(n-1)/(n-n
(ここで、n:波長589nmでの屈折率、n:波長656nmでの屈折率、n:波長486nmでの屈折率を表す)。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂が有するアッベ数(ν)は、25以上50以下の範囲であることが好ましい。アッベ数(ν)は、28以上、30以上、又は35以上であってもよく、45以下、42以下、40以下、又は38以下であってもよい。例えば、アッベ数(ν)は、28以上45以下であってもよく、30以上、42以下であってもよい。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂は、以下の数式(C)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有していてもよい:
≧1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.800 (C)
【0026】
ただし、本発明の熱可塑性樹脂は、以下の数式(D)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有していてもよい:
≧1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+α (D)
ここで、αは、1.830、1.820、1.810又は1.805である。
【0027】
また、本発明における熱可塑性樹脂は、以下の数式(E)を満たす屈折率(n)及びアッベ数(ν)を有していてもよい:
<1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+β (E)
ここで、βは、1.852、1.850、1.845又は1.840である。
【0028】
本発明における熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、130℃以上、135℃以上、140℃以上であってもよく、170℃以下、160℃以下、155℃以下、又は150℃以下であってもよい。例えば、本発明の熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、130℃以上160℃以下、又は140℃以上150℃以下である。
【0029】
本発明における熱可塑性樹脂の粘度平均分子量は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、15000以上、18000以上、又は20000以上であってもよく、30000以下、25000以下、又は22000以下であってもよい。例えば、本発明の熱可塑性樹脂の粘度平均分子量は、15000以上30000以下又は18000以上22000以下であってもよい。
【0030】
本発明における熱可塑性樹脂の配向複屈折(Δn)の絶対値は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、8.0×10-3以下、6.5×10-3以下、5.0×10-3以下、又は3.0×10-3以下であることが好ましい。このような範囲であれば、光学歪が小さくなり、光学レンズ材料として好適である。
【0031】
本発明における熱可塑性樹脂は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、波長320nmにおける光線透過率が30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、特に好ましくは50%以上である。このような範囲であれば、耐光性が良好である傾向にある。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、波長350nmにおける光線透過率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは65%以上である。このような範囲であれば、耐光性が良好である傾向にある。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂の初期色相(YI)は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、10.0以下、8.0以下、7.0以下、又は6.0以下であることが好ましい。
【0034】
本発明における熱可塑性樹脂の1000時間耐候性試験後の色相(YI)は、実施例に記載した方法によって測定した場合に、13.0以下、12.0以下、10.0以下、9.0以下、又は8.0以下であることが好ましい。また、その初期色相との色差(ΔYI=YI-YI)は、7.0以下、6.0以下、5.0以下、3.0以下、又は2.0以下であることが好ましい。
【0035】
本発明における熱可塑性樹脂は、レンズ用の樹脂として好適な物性が得られる観点から、第1の構造単位を、50mol%超95mol%以下で含むことが好ましい。第1の構造単位は、55mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、75mol%以上、80mol%以上、又は85mol%以上であってもよく、90mol%以下、85mol%以下、又は80mol%以下で熱可塑性樹脂に含まれていてもよい。例えば、第1の構造単位は、60mol%以上90mol%以下、70mol%以上90mol%以下であってもよい。構造単位の組成比は、H NMR法にて測定することができる。
【0036】
本発明における熱可塑性樹脂は、レンズ用の樹脂として好適な物性が得られる観点から、第2の構造単位を、5mol%以上50mol%未満で含むことが好ましい。第2の構造単位は、10mol%以上、又は15mol%以上、20mol%以上、又は25mol%以上であってもよく、45mol%以下、40mol%以下、30mol%以下、25mol%以下、又は20mol%以下で熱可塑性樹脂に含まれていてもよい。例えば、第2の構造単位は、10mol%以上30mol%以下であってもよい。構造単位の組成比は、H NMR法にて測定することができる。
【0037】
以下、本発明の熱可塑性樹脂について、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート及び、ポリエステルを例にとって説明する。
【0038】
なお、本明細書において、「ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」との記載は、その熱可塑性樹脂が本発明の有利な効果を提供できる限り、ジヒドロキシ化合物のジヒドロキシ基を除いた部分の構造の単位をいう。したがって、例えば、「ジヒドロキシ化合物」が、本発明の熱可塑性樹脂に2つのエステル結合を形成する場合に、「ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」とは、ジヒドロキシ化合物によってもたらされた熱可塑性樹脂中の繰り返し単位のうち、その2つのエステル結合を除いた部分を意味する。「ジカルボン酸化合物に由来する構造単位」についても同様に解釈される。
【0039】
したがって、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する第1の構造単位とは、熱可塑性樹脂中で、以下の構造のうち連結基Xを除いた部分となる:
【化4】
【0040】
連結基Xは、熱可塑性樹脂中で、それぞれ別の構造を有することができ、例えばそれぞれ独立して、エステル結合、及びカーボネート結合からなる群より選択される。連結基Xは、他の「ジヒドロキシ化合物に由来する第1の構造単位」と連結する連結基であってもよく、「ジヒドロキシ化合物又はジカルボン酸化合物に由来する第2の構造単位」とを連結する連結基であってもよく、他の繰り返し単位と連結するための連結基であってもよい。
【0041】
第1の構造単位をAと表し、第2の構造単位Aと表すと、本発明の熱可塑性樹脂は、-(X-A)-、-(X-A)-、及び/又は-(X-A-X-A)-という繰返し単位を含む。本発明の熱可塑性樹脂は、ランダムポリマーであってもよく、交互ポリマーであってもよく、ブロックポリマーであってもよい。
【0042】
<ポリカーボネート>
本発明におけるポリカーボネートは、連結基として、少なくともカーボネート基を有する熱可塑性樹脂であり、例えば、下記の第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、下記の第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応して得られる。特に炭酸ジエステルとのエステル交換反応によって得られた本発明におけるポリカーボネートは、ピリジンを触媒にホスゲン等を用いて得られるポリカーボネートと比較して、ピリジンまたはその酸塩化物を含んでいないため、色相が優れている。したがって、本発明におけるポリカーボネートは、ピリジンを実質的に含んでいないことが好ましい。例えば、ピリジンまたはその酸塩化物は、H NMRを測定し、1,1,2,2-テトラブロモエタンを内標として、内標とピリジンまたはその酸塩化物に基づくシグナル強度比より求め、500重量ppm以下、100重量ppm以下、又は50重量ppm以下であることができる。
【0043】
〈第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物〉
本発明におけるポリカーボネートは、以下の式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する第1の構造単位を有する:
【化5】
(式中、R、R、R、及びRは、夫々独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、又はハロゲン原子を示し;シクロブタン環は、シス・トランス異性体混合物、シス異性体単独、トランス異性体単独のいずれかを示す)。
【0044】
式(1)において、R、R、R、及びRは、夫々独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、又はハロゲン原子を示す。式中、R、R、R、及びRは、夫々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。
【0045】
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、2-メチル-1,3-シクロブタンジオール、2,4-ジメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2-エチル-1,3-シクロブタンジオール、2,4-ジエチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラエチル-1,3-シクロブタンジオール、2-ブチル-1,3-シクロブタンジオール、2,4-ジブチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラブチル-1,3-シクロブタンジオール等が挙げられる。最も好適なジヒドロキシ化合物は、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールである。これらのジヒドロキシ化合物は2種類以上併用して用いてもよい。
【0046】
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、シス-トランス異性体混合物であることが好ましい。その比率は限定されるものではないが、シス異性体比率の下限としては30mol%以上が好ましく、45mol%以上がより好ましく、50mol%以上がさらに好ましい。シス異性体比率の上限としては90mol%以下が好ましく、85mol%以下がより好ましく、80mol%以下がさらに好ましい。シス異性体がこのような範囲であれば、ポリマーの成形性が良好となる傾向がある。シス異性体比率は、H NMR法にて測定することができる。
【0047】
前記式(1)で表されるシクロブタン環を含有するジヒドロキシ化合物は製造するために、下記式(10)で表されるケテンの付加又は二量化によりジケテンを生成し、次いで水素添加することによってシクロブタン環を含有するジヒドロキシ化合物を合成することができる。
【0048】
【化6】
(式(10)中、R19、R20は夫々独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、又はハロゲン原子を示す。)
【0049】
本発明で好ましく使用される2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールの合成例としては、下記(I)の合成例が例示される。
【0050】
【化7】
【0051】
合成例(I)は、イソ酪酸を出発物質とし、熱分解によって生成するジメチルケテンの付加、又は二量化反応を進行させ、次いで水素添加することによって製造する方法である。ここで、無水イソ酪酸又はイソ酪酸を原料とすることは工業的に有利な方法であり、特許文献7に詳細が記載されている。
【0052】
上記(I)の合成例において、熱分解によるケテンの製造には、触媒としてリン酸トリエチルに代表される種々のリン化合物が添加されるとともに収率を向上させるために少量の第三級アミン化合物を添加することが北海道大学の研究報告(非特許文献1)に記載されている。
【0053】
本発明者らは、そのような製法で得られた第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物を熱可塑性樹脂のモノマーとして用いた場合、そのジヒドロキシ化合物に残留した第三級アミンが、熱可塑性樹脂の色相及び透明性に悪影響を与えることを見出した。重合触媒として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アミンを用いたとしても、色相が悪くならないにもかかわらず、第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物に残留している第三級アミンが多い場合に、ポリマーの色相が悪化するという点は予想外であった。
【0054】
そこで、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物中に含まれる第三級アミン量は1000重量ppm以下であることが好ましく、500重量ppm以下が好ましく、100重量ppm以下がより好ましい。ただし、そのジヒドロキシ化合物の第三級アミン量は、0.1重量ppm以上、1.0重量ppm以上、10重量ppm以上、又は100重量ppm以上であってもよい。第三級アミンの具体的な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、トリデシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルアニリンなど挙げられる。特に第三級アミンとしては工業的な観点からもトリエチルアミンが好ましく用いられる。ジヒドロキシ化合物中の第三級アミン含有量は、イオンクロマトグラフィー法にて陽イオン交換カラム、電気伝導度検出器を用いて定量することができる。なお、本発明においては、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、該ジヒドロキシ化合物を製造する際に第三級アミンを使用したものを対象とすることができる。
【0055】
さらに、ジメチルケテンを生成するその他の方法としては、ジメチルマロン酸無水物の脱炭酸による方法、N-イソブチリルフタルイミドの熱分解による方法、α-カルボメトキシ-α,β-ジメチル-β-ブチロラクトンの熱分解による方法、ジメチルケテン二量体の熱分解による方法等が挙げられる。
【0056】
ジメチルケテンの付加又は二量化反応後の環状ジケトンに水素を付加させる方法としては、金属水素化物を用いる方法、金属触媒存在下で水素ガスを作用させる方法が一般的に用いられる。金属水素化物を用いる方法としては、水素化アルミニウムリチウム等のアルミニウム系還元剤を用いる方法、又は水素化ホウ素ナトリウム等のホウ素系還元剤を用いる方法が挙げられる。工業的利用において、化合物の安定性、取り扱い性からホウ素系還元剤が適しており、水素化ホウ素ナトリウムが還元剤として使用されることが多い。ホウ素系還元剤を用いた水添反応において副生成物としてホウ酸が生成されることが特徴である。
【0057】
本発明者らは、そのような製法で得られた第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物を熱可塑性樹脂のモノマーとして用いた場合、そのジヒドロキシ化合物に残留したホウ酸が、熱可塑性樹脂の色相及び透明性に悪影響を与えることを見出した。
【0058】
そこで、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物中に含まれるホウ酸含有量が100重量ppm以下であり、80重量ppm以下が好ましく、50重量ppm以下がより好ましく、20重量ppm以下がさらに好ましい。ただし、そのジヒドロキシ化合物のホウ酸含有量は、0.1重量ppm以上、1.0重量ppm以上、5重量ppm以上、又は10重量ppm以上であってもよい。ジヒドロキシ化合物中のホウ酸含有量は、シリル化剤を用いた誘導体化によるガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて定量することができる。なお、本発明においては、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、該ジヒドロキシ化合物を製造する際にホウ素系還元剤を使用したものを対象とすることができる。
【0059】
〈第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物〉
本発明におけるポリカーボネートは、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する第1の構造単位と、ジヒドロキシ化合物に由来する第2の構造単位を含む。第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物としては、レンズ用のポリカーボネートの構造単位となることができる化合物であれば、特に限定されない。
【0060】
例えば、第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物としては、ヘテロ原子を有していてもよく、かつ/又は分岐していてもよい、直鎖又は環状の、置換又は無置換の炭化水素系ジヒドロキシ化合物、特に炭素数2~50の炭化水素系ジヒドロキシ化合物であってもよい。
【0061】
具体的には、第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、複素環式ジヒドロキシ化合物、及び芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、特に国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のようなジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類を有するジヒドロキシ化合物類が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は2種類以上併用して用いてもよい。
【0062】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、置換基を有していてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~30の脂肪族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、好ましくは下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を使用することができる。
【化8】
(式(3)中、mは2~12の整数を示す)
【0063】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0064】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、置換基を有していてもよい、単環式又は多環式の、炭素数3~30の脂環式ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例としては、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールなどが挙げられる。好ましくはシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、及びペンタシクロペンタデカンジメタノールである。
【0065】
複素環式ジヒドロキシ化合物としては、置換基を有していてもよい、単環式又は多環式若しくは縮合多環式の、炭素数3~30の複素環式ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。複素環式ジヒドロキシ化合物の具体例としては、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、イソソルビド、イソマンニド、イソイジドなどが挙げられる。好ましくはイソソルビドである。
【0066】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、置換基を有していてもよい、単環式又は多環式若しくは縮合多環式の、炭素数6~50の芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
【0067】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物を使用することができる。
【0068】
【化9】
(式(4)中、Wは下記式(5)~(8)からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基、単結合、又は下記式(9)のいずれかの結合を表し、X及びYはそれぞれ独立して0又は1~4の整数であり、R及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、及び炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。LおよびLは、それぞれ独立に2価の連結基(例えば、メチレン基)を示し、oおよびpはそれぞれ独立に0または1を示す)
【0069】
【化10】
(式(5)中、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
【0070】
【化11】
(式(6)中、R13及びR14はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
【0071】
【化12】
(式(7)中、Uは4~11の整数を表し、かかる複数のR15及びR16はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1~3のアルキル基から選択される基を表す。)
【0072】
【化13】
(式(8)中、R17及びR18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、及びハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基から選択される基を表す。)
【0073】
【化14】
前記式(4)におけるWが単結合である構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例としては、4,4’-ビフェノール及び4,4’-ビス(2,6-ジメチル)ジフェノール等が挙げられる。
【0074】
Wが式(5)である構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例としては、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、及びα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。好ましくはビスフェノールMである。
【0075】
Wが式(6)である構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(通常“BPEF”と称される)、9,9-ビス(4-(ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン等が挙げられる。好ましくは9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンである。
【0076】
Wが式(7)である構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(通常“ビスフェノールZ”と称される)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、及び1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3メチルシクロヘキサン(通常“ビスフェノール3MZ”と称される)、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。好ましくは1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3メチルフェニル)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0077】
Wが式(8)である構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-3-メトキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2-フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2-クロロフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、及び1,1-ビス(2,3-ジメチルー4-ヒドロキシフェニル)デカン等が例示される。好ましくはビスフェノールA、ビスフェノールC、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカンである。
【0078】
Wが式(9)のいずれかである構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド及びビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好ましくは3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィドである。
【0079】
上記二価フェノールの中でも、式(5)ではビスフェノールM、式(6)では9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、式(7)では1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、式(8)ではビスフェノールA、ビスフェノールC、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、並びに式(9)では3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィドが好ましい。好ましくは9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンである。
【0080】
さらに式(4)以外の構成単位に誘導される二価フェノールとして、好適には2,6-ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、炭素数1~3のアルキル基で置換されたレゾルシノール、3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3-トリメチルインダン-5-オール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-5-オール、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロビインダン、1-メチル-1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-イソプロピルシクロヘキサン、1-メチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、及びエチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル等が例示される。好ましくは6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロビインダンである。
【0081】
前記オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物は、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、イソソルビド、ビスフェノールM、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロビインダンが好ましく、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロビインダンがより好ましい。
【0083】
かかる第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物のその他詳細については、ポリカーボネートに関するジヒドロキシ化合物を開示している文献、例えばWO03/080728号パンフレット、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報、及び特開2002-117580号公報等を参照することができる。なお、例示した化合物は、本発明で熱可塑性樹脂の構成単位として使用し得るジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。
【0084】
〈炭酸ジエステル〉
本発明におけるポリカーボネートは、上記の第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物とを、炭酸ジエステルとのエステル交換反応によって得ることができる。炭酸ジエステルの種類としては、本発明におけるポリカーボネートを製造できるのであれば特に限定されない。
【0085】
好ましくは、炭酸ジエステルは、以下の式(2)を有する化合物である:
【化15】
(式(2)中、R、Rは夫々独立に、置換若しくは無置換の芳香族基である。)
【0086】
本発明のポリカーボネートは、上記式(2)で表される炭酸ジエステルに由来する末端芳香族基、特に末端フェニル基を有し、実施例に記載した方法で測定した場合に、該末端芳香族基濃度が30μeq/g以上であり、好ましくは40μeq/g以上、特に好ましくは50μeq/g以上であり、上限は160μeq/g以下が好ましく、より好ましくは140μeq/g以下、さらに好ましくは100μeq/g以下である。
【0087】
末端芳香族基の濃度が、このような範囲であれば、重合直後や成型時の色相が良く、かつ紫外線曝露後の色相も良好であり、かつ熱安定性も良好である傾向にある。末端芳香族基の濃度を制御するには、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重合時の圧力や温度を制御する方法等が挙げられる。
【0088】
《ポリカーボネートの製造方法》
本発明におけるポリカーボネートの製造方法によって、第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、アルカリ金属触媒及び/又はアルカリ土類金属触媒の存在下でエステル交換反応させることを含む。本発明の方法によって、上記の本発明のポリカーボネートを得ることができる。したがって、本発明の製造方法の各構成については、本発明のポリカーボネートに関して説明した各構成を参照することができる。
【0089】
本発明におけるポリカーボネートは、通常のポリカーボネートを製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造することができる。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0090】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0091】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6~12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm-クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97~1.10モル、より好ましくは1.00~1.06モルである。
【0092】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、等が挙げられる。
【0093】
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0094】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0095】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
【0096】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0097】
その他のエステル交換触媒としては亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、オスミウムの塩が挙げられ、例えば、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)チタンテトラブトキシド(IV)等が用いられる。国際公開第2011/010741号及び特開2017-179323号公報において使用されている触媒を用いてもよい。
【0098】
さらに、アルミニウム又はその化合物とリン化合物とからなる触媒を用いてもよい。その場合、使用する全モノマー単位の合計1モルに対して、8×10-5モル以上、9×10-5モル以上、1×10-4モル以上であってもよく、1×10-3モル以下、8×10-4モル以下、6×10-4モル以下で使用することができる。
【0099】
アルミニウム塩としては、アルミニウムの有機酸塩及び無機酸塩を挙げることができる。アルミニウムの有機酸塩としては、例えば、アルミニウムのカルボン酸塩を挙げることができ、具体的にはギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、及びサリチル酸アルミニウムを挙げることができる。アルミニウムの無機酸塩としては、例えば、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びホスホン酸アルミニウムを挙げることができる。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、及びアルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキシドを挙げることができる。
【0100】
リン化合物としては、例えば、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、及びホスフィン系化合物を挙げることができる。これらの中でも特に、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、及びホスフィンオキサイド系化合物を挙げることができ、特にホスホン酸系化合物を挙げることができる。
【0101】
これらの重合触媒の使用量は、ジヒドロキシ成分1モルに対し好ましくは0.1μモル~500μモル、より好ましくは0.5μモル~300μモル、さらに好ましくは1μモル~100μモルである。
【0102】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0103】
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0104】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5~50モルの割合で、より好ましくは0.5~10モルの割合で、更に好ましくは0.8~5モルの割合で使用することができる。
【0105】
<ポリエステルカーボネート>
本発明におけるポリエステルカーボネートは、連結基として、少なくともカーボネート基及びエステル基を有する熱可塑性樹脂であり、例えば、上記の式(1)で表されるジヒドロキシ化合物とジカルボン酸化合物とから製造される。なお、本明細書において、ジカルボン酸化合物とは、少なくとも2つのカルボン酸基又はカルボン酸エステル基を有する化合物をいう。また、本発明におけるポリエステルカーボネートは、さらに上記の式(1)表されるジヒドロキシ化合物とは異なるジヒドロキシ化合物に由来する第3の構造単位を有していてもよい。
【0106】
本発明におけるポリエステルカーボネートの第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物、第3の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物、およびポリカーボネートの部分については、前述のポリカーボネートで説明した第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物、第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物及びポリカーボネートの部分の記載を参照することができる。
【0107】
本発明におけるポリエステルカーボネートの第2の構造単位をもたらすジカルボン酸化合物としては、前述のポリカーボネートで説明した第2の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物の2つのヒドロキシ基を、共にカルボン酸基及び/又はカルボン酸エステル基に置き換えた化合物を用いることができる。
【0108】
例えば、本発明におけるポリエステルカーボネートの第2の構造単位をもたらすジカルボン酸化合物としては、マロン酸性、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸化合物、2,6-デカリンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸化合物、複素環式ジカルボン酸化合物及びフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸化合物、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸化合物を挙げることができ、主として1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)―1,1’ビナフチル、9,9’-ビス(2―カルボキシエトキシ)フルオレンまたはそれらのエステル形成性誘導体(例えば、ジメチルテレフタレート)が好ましく挙げられる。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。
【0109】
本発明におけるポリエステルカーボネートの製造に用いるカーボネート前駆物質としては例えばホスゲン、ジフェニルカーボネート、上記二価フェノール類のビスクロロホーメート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、ジ-p-クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0110】
《ポリエステルカーボネートの製造方法》
本発明におけるポリエステルカーボネートを製造する方法としては、通常のポリエステルカーボネートの製造に用いる方法が任意に採用される。例えばジヒドロキシ化合物とジカルボン酸又はジカルボン酸クロライドとホスゲンとの反応、又はジヒドロキシ化合物とジカルボン酸とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応が好ましく採用される。
【0111】
ジヒドロキシ化合物、ジカルボン酸又はその酸クロライドとホスゲンとの反応では、非水系で酸結合剤及び溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として例えばフェノールやp-tert-ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0~40℃、反応時間は数分~5時間が好ましい。
【0112】
エステル交換反応では、不活性ガス存在下にジヒドロキシ化合物とジカルボン酸又はそのジエステルとビスアリールカーボネートを混合し、減圧下通常120~350℃、好ましくは150~300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1~4時間程度である。また、エステル交換反応では反応促進のために重合触媒を用いることができる。このような重合触媒としてはアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又は重金属化合物を主成分として用い、必要に応じて更に含窒素塩基性化合物を従成分として用いるのが好ましい。
【0113】
アルカリ金属化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0114】
含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0115】
その他のエステル交換触媒としては、上記のポリカーボネートの製造方法において、エステル交換触媒として挙げた触媒を同様に使用することができる。
【0116】
本発明のポリエステルカーボネートは、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01~50倍モル、好ましくは0.3~20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0117】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を13.3~133Paの圧力、200~320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
【0118】
《ポリエステル》
本発明におけるポリエステルは、連結基として、少なくともエステル基を有する熱可塑性樹脂であり、例えば、上記の式(1)で表されるジヒドロキシ化合物とジカルボン酸化合物とから製造される。
【0119】
本発明のポリエステルにおけるこれらの第1の構造単位をもたらすジヒドロキシ化合物については、前述のポリカーボネートで説明したのと同様の事が言える。また、第2の構造単位をもたらすジカルボン酸化合物については、前述のポリエステルカーボネートで説明したのと同様の事が言える。
【0120】
《ポリエステルの製造方法》
本発明の熱可塑性樹脂がポリエステルである場合は、ジヒドロキシ化合物成分とジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とをエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、得られた反応生成物を重縮合反応させ、所望の分子量の高分子量体とすればよい。
【0121】
重合方法としては、直接重合法、エステル交換法等の溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の公知の方法から適宜の方法を選択して製造できる。界面重合法を用いる場合、ジカルボン酸クロリドを水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、芳香族ジヒドロキシ化合物および重合触媒を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下、好ましくは25℃以下の温度で0.5~8時間撹拌しながら重合反応を行う方法が挙げられる。
【0122】
有機相に用いる溶媒としては、水と相溶せず本発明のポリエステル樹脂を溶解する溶媒が好ましい。そのような溶媒としては、例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系炭化水素系溶媒が挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンが好ましい。
【0123】
水相に用いるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液が挙げられる。
【0124】
溶融重合法による反応は、通常、ジヒドロキシ化合物とジカルボン酸化合物またはそのジエステルを混合し、通常、120~350℃、好ましくは150~300℃、より好ましくは180~270℃で反応させることが好ましい。減圧度は段階的に変化させ、最終的には0.13kPa以下にして生成した水、アルコール等のヒドロキシ化合物を系外に留去させ、反応時間は通常1~10時間程度である。
【0125】
また、溶融法において重合速度を速めるためにエステル交換触媒、および重合触媒を用いることができる。エステル交換触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、マンガン、マグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、コバルト、ナトリウム、リチウム、鉛元素を含む化合物などを用いることができる。具体的にはこれらの元素を含む酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等が挙げることができる。この中でも、熱可塑性樹脂の溶融安定性、色相、ポリマー不溶異物の少なさの観点からマンガン、マグネシウム、亜鉛、チタン、コバルトの酸化物、酢酸塩、アルコラート等の化合物が好ましい。これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。重合触媒としては、それ自体公知のものを採用でき、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物またはアルミニウム化合物が好ましい。このような化合物としては、例えばアンチモン、チタン、ゲルマニウム、スズ、アルミニウムの酸化物、酢酸塩、カルボン酸塩、水素化物、アルコラート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等を上げることができる。また、これらの化合物は二種以上組み合わせて使用できる。中でも、この中でも、熱可塑性樹脂の溶融安定性、色相の観点からスズ、チタン、ゲルマニウム化合物が好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸化合物1molに対して、1×10-8~1×10-3molの範囲が好ましい。
【0126】
本発明のポリエステル樹脂は、分子量調整や熱安定性向上のため、末端封止剤を使用しても良い。末端封止剤としては、単官能ヒドロキシ化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、ケテンイミン化合物等が挙げられる。
【0127】
《樹脂組成物》
本発明の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、充填剤などの添加剤を適宜添加して樹脂組成物として用いることができる。具体的な離型剤、熱安定剤としては、国際公開2011/010741号パンフレットに記載されたものが好ましく挙げられる。
【0128】
特に好ましい離型剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。また、離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。また、熱可塑性樹脂に配合させる離型剤としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0129】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤及びヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
【0130】
また、特に好ましいリン系の熱安定剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが使用される。また、ポリカーボネート熱可塑性樹脂へのリン系熱安定剤の含有量としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0131】
また、特に好ましい硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)である。また、熱可塑性樹脂への硫黄系熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0132】
また、好ましいヒンダードフェノール系熱安定剤としては、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0133】
熱可塑性樹脂中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量としては、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部が好ましい。
【0134】
リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
【0135】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
【0136】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、より好ましくは、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]である。
【0137】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0138】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2.4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0139】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、特に2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)が好適である。
【0140】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、及び1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
【0141】
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましくは0.01~3.0重量部であり、かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂の成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0142】
《レンズ》
本発明の熱可塑性樹脂又はそれを含む上記のような樹脂組成物は、光学レンズ、特に撮像レンズに好適である。
【0143】
光学レンズを射出成型で製造する場合、シリンダー温度230~350℃、金型温度70~180℃の条件にて成形することが好ましい。さらに好ましくは、シリンダー温度250~300℃、金型温度80~170℃の条件にて成形することが好ましい。シリンダー温度が350℃より高い場合では、熱可塑性樹脂が分解着色し、230℃より低い場合では、溶融粘度が高く成形が困難になりやすい。また金型温度が180℃より高い場合では、熱可塑性樹脂から成る成形片が金型から取り出すことが困難になりやすい。他方、金型温度が、70℃未満では、成型時の金型内で樹脂が早く固まり過ぎて成形片の形状が制御しにくくなったり、金型に付された賦型を十分に転写することが困難になりやすい。
【0144】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形を用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要が無く、軽量化及び成形コストの低減化が可能になる。したがって、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【0145】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、成形流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05~3.0mm、より好ましくは0.05~2.0mm、さらに好ましくは0.1~2.0mmである。また、直径が1.0mm~20.0mm、より好ましくは1.0~10.0mm、さらに好ましくは、3.0~10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
【0146】
本発明の熱可塑性樹脂からなるレンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッチングなど任意の方法により成形される。この中でも、製造コストの面から金型成形がより好ましい。
【実施例
【0147】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0148】
《評価方法》
(1)シス異性体比率(NMR)
日本電子(株)製JNM-ECZ400S/L1のH NMRにて測定し、TMCBDのシス異性体比率(モル比)を算出した。
試料 50mg
溶媒 重ジメチルスルホキシド 0.6mL
積算回数:512回
【0149】
(2)第三級アミン量
下記装置、条件にてTMCBD中のトリエチルアミンの定量を行った。定量には所定濃度のトリエチルアミン水溶液を用いて検量線を作成した。
イオンクロマトグラフィー装置:ダイオネクス社ICS-2000、
陽イオン測定用カラム:ダイオネクス社IonPac CS17(30℃)
溶離液:5mmol/Lメタンスルホン酸
流速:1.0mL/分
検出器:電気伝導度(オートサプレッサ使用)
試料導入量:100μL
【0150】
(3)ホウ酸含有量
下記装置、条件にてTMCBD中のホウ酸の定量を行った。定量には所定濃度のホウ酸水溶液を用いて検量線を作成した。
GC-MS分析装置:アジレント社GC6890N、MSD5975B
カラム:アジレント社19091S-433 HP-5MS
測定条件:流量1mL/分、カラムオーブン50~310℃、測定時間60分
シリル化法:試料10mgをアセトニトリルに溶解し、ピリジン0.1mLとBSTFA(シリル化剤)0.1mLを添加し、フィルター濾過後1μLを装置に注入
【0151】
(4)組成比
日本電子(株)製JNM-ECZ400S/L1(共鳴周波数400MHz)を用いて常温でのH NMRスペクトルを測定し、各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より熱可塑性樹脂中の各構造単位の組成比を算出した。
熱可塑性樹脂量 40mg
溶媒 重クロロホルム0.6mL
【0152】
(5)熱可塑性樹脂中のフェノール含有量
熱可塑性樹脂1.25gを塩化メチレン7mLに溶解後、総量が25mlとなるようにアセトンを添加して再沈澱処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmメンブランフィルターでろ過し、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
【0153】
(6)末端フェニル基濃度
上記の熱可塑性樹脂組成比の測定と同様にしてH NMRを測定し、末端フェニル基濃度を、1,1,2,2-テトラブロモエタンを内標として、内標と末端フェニル基に基づくシグナル強度比より求めた。
【0154】
(7)粘度平均分子量
熱可塑性樹脂の粘度平均分子量を、以下の方法で測定した。熱可塑性樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。そして、下記式により算出されるMvを粘度平均分子量とした。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:0.7
Mv:粘度平均分子量
【0155】
(8)ガラス転移温度
樹脂組成物のガラス転移温度をTAインスツルメント社製の熱分析システムDSC-2910を使用して、JIS K7121に従い窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0156】
(9)初期色相
熱可塑性樹脂ペレットを100℃で12時間乾燥し、射出成形機(東芝機械株式会社製EC100NII-2Y)に供給し、樹脂温度260℃、金型温度80℃にて成形板(幅100mm×横100mm×厚さ3mm)を成形した。成形板の初期色相(YI)をJIS K7373に準拠して、日本電飾工業(株)製SE-2000(C光源、視野角2°)により測定した。
【0157】
(10)分光光線透過率(320nm、350nm)
上記成形板(厚さ3mm)の光線透過率を、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U4100)を用いて測定した。
【0158】
(11)耐候性試験後の色相及び色差
スガ試験機株式会社製スーパーキセノンウェザーメーターを用いて、63℃、相対湿度50%の条件下、上記成形板を1000時間静置し、成形板の色相(YI)をJIS K7373に準拠して、日本電飾工業(株)製SE-2000(C光源、視野角2°)により測定し、色差(ΔYI=YI-YI)を算出した。
【0159】
(12)屈折率(n)及びアッベ数
熱可塑性樹脂3gを塩化メチレン50mlに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストしてフィルムを作製した。室温にて十分に乾燥させた後、120℃で8時間乾燥して、厚さ約100μmのフィルムを作製した。
【0160】
作製したフィルムをATAGO製DR-M2アッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)及びアッベ数(波長:486nm、589nm、656nmにおける屈折率から下記式を用いて算出)を測定した。
ν=(n-1)/(n-n
なお、本明細書においては、
:波長589nmでの屈折率、
:波長656nmでの屈折率、
:波長486nmでの屈折率を意味する。
【0161】
(13)配向複屈折の絶対値(|Δn|)
上記の手法により作製した厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM-220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折の絶対値を求めた。
|Δn|=|Re/d|
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
【0162】
(14)光学歪み:製造例に記載の手法により成形した非球面レンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろから光漏れを目視することにより光学歪を評価した。評価は以下の3段階の基準で行った。
・殆ど光漏れが無い
・僅かに光漏れが認められる
・光漏れが顕著である
【0163】
《製造例》
(TMCBDの調製)
各例で用いたTMCBDを以下のように調製して不純物を低減させた。原料のTMCBDを富士フイルム和光純薬より購入した。そのTMCBDのシス異性体比率は60mol%、ホウ酸含有量は250重量ppm、トリエチルアミン含有量は1350ppmであった。
TMCBDをトルエンに溶解後、40℃のイオン交換水を用いて、洗浄水のpHが7~8となった時点で、洗浄水を分離した。得られたトルエン溶液からトルエンを完全に留去し白色粉末を得た後、80℃で48時間真空乾燥した。これにより得られたTMCBDのシス異性体比率は60mol%、ホウ酸含有量は80重量ppm、トリエチルアミン含有量は1350重量ppmであった。続いて、トルエンに溶解後、1%塩酸水溶液にて水洗を2回行い、その後イオン交換水で洗浄し、洗浄水のpHが7~8となった時点で、トルエンを完全留去した。得られた白色粉末を80℃で48時間真空乾燥した。最終的に得られたTMCBDのシス異性体比率は60mol%、ホウ酸含有量は80重量ppm、トリエチルアミン含有量は350重量ppmであった。
【0164】
<実施例1>
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下TMCと略す)259重量部、TMCBD(シス異性体比率60mol%、ホウ酸含有量80重量ppm、トリエチルアミン含有量350重量ppm)360重量部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)714重量部、及び触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAHと略す)9.1×10-2重量部と酢酸リチウム5.8×10-2重量部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。
【0165】
その後、2時間をかけて240℃まで昇温を行い、副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応器内の圧力を101.3kPaから13.4kPaまで減圧した。続いて、反応器内の圧力を13.4kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。内圧を絶対圧で13.4kPaから2kPaまで減圧し、さらに260℃まで温度を上げ、留出するフェノールを系外に除去した。その後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。予め定めた所定の攪拌動力となったときに重縮合反応を終了した。反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながらペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットについて各種評価を行い、評価結果を表1に記載した。
【0166】
樹脂の重量を基準としてトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを0.05重量%とグリセリンモノステアレートを0.10重量%加えて、ベント付きφ15mm二軸押出機を用いてペレット化した。該ペレットを120℃で4時間乾燥後、シリンダー温度280℃、金型温度130℃で射出成形し、厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mmのレンズを得た。得られた非球面レンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪を評価したところ、僅かに光漏れが認められる程度であった。
【0167】
〈実施例2及び3〉
TMCとTMCBDとの量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び3のポリカーボネートを得た。
【0168】
〈実施例4〉
TMC259重量部とTMCBD360重量部の代わりに、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(以下SBIと略す)308重量部とTMCBD336重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネートを得た。実施例1と同様の方法で光学歪を評価したところ、殆ど光漏れは認められなかった。
【0169】
〈実施例5及び6〉
SBIとTMCBDとの量を変更したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5及び6のポリカーボネートを得た。
【0170】
〈実施例7〉
TMC259重量部とTMCBD360重量部の代わりに、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)252重量部とTMCBD384重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネートを得た。実施例1と同様の方法で光学歪を評価したところ、殆ど光漏れは認められなかった。
【0171】
〈実施例8及び9〉
BCFとTMCBDとの量を変更したこと以外は、実施例7と同様にして、実施例8及び9のポリカーボネートを得た。
【0172】
〈実施例10〉
TMC259重量部とTMCBD360重量部の代わりに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下BPAFと略す)459重量部とTMCBD283重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネートを得た。実施例1と同様の方法で光学歪を評価したところ、僅かに光漏れが認められる程度であった。
【0173】
〈実施例11及び12〉
BPAFとTMCBDとの量を変更したこと以外は、実施例10と同様にして、実施例11及び12のポリカーボネートを得た。
【0174】
〈実施例13〉
TMC155重量部、TMCBD360重量部、DPC673重量部、ジメチルテレフタレート(DMTと略す)及び触媒としてチタンテトラブトキシド11.3×10-2重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルカーボネートを得た。実施例1と同様の方法で光学歪を評価したところ、僅かに光漏れが認められる程度であった。
【0175】
〈実施例14~16〉
ジヒドロキシ化合物と量を変更したこと以外は、実施例13と同様にして、実施例14、15、及び16のポリエステルカーボネートを得た。
【0176】
〈実施例17〉
TMC259重量部とTMCBD360重量部の代わりに、TMC83重量部とTMCBD350重量部と量を変更し、さらにBPAF213重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネートを得た。実施例1と同様の方法で光学歪を評価したところ、僅かに光漏れが認められる程度であった。
【0177】
《結果》
ポリカーボネートに関する結果を、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0178】
ポリエステルカーボネートに関する結果を、以下の表2にまとめる。
【表2】
【0179】
各種ポリマーの屈折率等に関するデータを、以下の表3にまとめる。
【表3】
【0180】
実施例1~17及び表3に記載の各種ポリマーの屈折率とアッベ数を図1にプロットした。
【0181】
図1の「従来技術の限界線」で示されているように、TMCBDホモポリマー以外の様々な従来技術のホモポリマーでは、屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、以下の数式(B)を満たすような関係となっていることが分かる:
≧1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.853 (B)
【0182】
これらのポリカーボネートを構成するモノマー同士を1:1の重量比で共重合させた場合、屈折率とアッベ数は、それらのホモポリマーの屈折率とアッベ数とのおおよそ中間の値になることが知られている。したがって、従来技術の樹脂では、屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、「従来技術の限界線」で示された上記の数式(B)の関係を満たすことになる。
【0183】
それに対して、本発明のTMCBDを含む共重合体は、数式(B)を満たさず、以下の数式(A)を満たしていることが分かる:
<1.156×10-4×ν-1.289×10-2×ν+1.853 (A)
【0184】
実施例1~17の熱可塑性樹脂は、レンズ用の樹脂として、色相に優れており、低複屈折であり、耐熱性及び成形性についても優れていた。また、実施例1~17の熱可塑性樹脂は、実質的に複素環式アミンを含有していないため、その点からも色相に優れているといえる。
図1