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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20221128BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20221128BHJP
   F04D 29/32 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
F02B37/00 301Z
F04D29/28 C
F04D29/32 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020565551
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2019000705
(87)【国際公開番号】W WO2020144854
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】横山 隆雄
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-040428(JP,A)
【文献】特開平11-082061(JP,A)
【文献】特開2007-247645(JP,A)
【文献】国際公開第96/013656(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/081061(WO,A1)
【文献】米国特許第08356469(US,B1)
【文献】特開平08-061061(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02597547(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00 ー 39/00
F01D 5/00
F02C 5/00 , 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を共有する第1コンプレッサ部及び第1タービン部を備えるターボチャージャであって、
前記第1コンプレッサ部は、
前記ターボチャージャの周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第1コンプレッサ翼と、
前記複数の第1コンプレッサ翼が配置された第1コンプレッサ流路と、
を含み、
前記第1タービン部は、
前記周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第1タービン動翼と、
前記複数の第1タービン動翼が配置され、内燃機関からの排気ガスが供給される第1タービン流路と、
を含み、
前記複数の第1コンプレッサ翼は、前記ターボチャージャの径方向において前記複数の第1タービン動翼の内側に配置され、
前記第1コンプレッサ流路と前記第1タービン流路は、前記複数の第1コンプレッサ翼と前記複数の第1タービン動翼とに接続する仕切壁部によって仕切られ、
前記仕切壁部は、前記径方向における前記第1コンプレッサ翼の外側端と前記径方向における前記第1タービン動翼の内側端とに接続し、
前記第1コンプレッサ部は、ラジアルコンプレッサであり、
前記第1コンプレッサ流路は、前記第1コンプレッサ流路の入口から前記第1コンプレッサ翼に気体を導くように構成されたコンプレッサ入口流路部と、前記第1コンプレッサ翼を通過した気体を前記第1コンプレッサ流路の出口に導くコンプレッサ出口流路部とを含み、
前記コンプレッサ出口流路部は、前記径方向において前記第1コンプレッサ翼の外側に設けられたコンプレッサ側スクロール流路部と、前記第1コンプレッサ翼を通過した気体を前記コンプレッサ側スクロール流路部に導くディフューザ流路部と、を含み、
前記ターボチャージャは、
前記第1コンプレッサ部から吐出された気体を前記内燃機関に供給するための第1流路であって、前記コンプレッサ側スクロール流路部に導かれた圧縮された気体を前記内燃機関へ供給するための第1流路をさらに備えるターボチャージャ
【請求項2】
前記第1タービン部は、軸流タービンである、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項3】
前記第1タービン部は、半径流入式の軸流タービンである、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項4】
前記第1タービン部は、斜流タービンである、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項5】
回転軸を共有する第1コンプレッサ部及び第1タービン部を備えるターボチャージャであって、
前記第1コンプレッサ部は、
前記ターボチャージャの周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第1コンプレッサ翼と、
前記複数の第1コンプレッサ翼が配置された第1コンプレッサ流路と、
を含み、
前記第1タービン部は、
前記周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第1タービン動翼と、
前記複数の第1タービン動翼が配置され、内燃機関からの排気ガスが供給される第1タービン流路と、
を含み、
前記複数の第1コンプレッサ翼は、前記ターボチャージャの径方向において前記複数の第1タービン動翼の外側に配置され、
前記第1コンプレッサ流路と前記第1タービン流路は、前記複数の第1コンプレッサ翼と前記複数の第1タービン動翼とに接続する仕切壁部によって仕切られ、
前記仕切壁部は、前記径方向における前記第1コンプレッサ翼の内側端と前記径方向における前記第1タービン動翼の外側端とに接続し、
前記第1コンプレッサ流路は、前記第1コンプレッサ流路の入口から前記第1コンプレッサ翼に気体を導くように構成されたコンプレッサ入口流路部と、前記第1コンプレッサ翼を通過した気体を前記第1コンプレッサ流路の出口に導くコンプレッサ出口流路部とを含み、
前記第1タービン流路は、前記第1タービン流路の入口から前記第1タービン動翼に気体を導くタービン入口流路部と、前記第1タービン動翼を通過した気体を前記第1タービン流路の出口に導くタービン出口流路部とを含み、
前記タービン入口流路部又は前記タービン出口流路部のうち少なくとも一方は、前記回転軸の軸線方向に沿って延在する筒状の案内筒で構成され、
前記コンプレッサ入口流路部又は前記コンプレッサ出口流路部のうち少なくとも一方は、前記案内筒の外周側に配置され前記ターボチャージャの前記径方向に沿って延在する筒状体で構成された、ターボチャージャ
【請求項6】
前記第1タービン部は、ラジアルタービンであり、
前記第1コンプレッサ部は、軸流コンプレッサ、斜流コンプレッサ又はラジアルコンプレッサである、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項7】
前記第1タービン部は、半径流入式の軸流タービンであり、
前記第1コンプレッサ部は、軸流コンプレッサである、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項8】
前記第1タービン部は、軸流タービンであり、
前記第1コンプレッサ部は、軸流コンプレッサである、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項9】
前記第1コンプレッサ部及び前記第1タービン部は前記回転軸の一端側に配置され、
前記ターボチャージャは、前記回転軸の他端側に配置された第2コンプレッサ部を更に備える、請求項1乃至の何れか1項に記載のターボチャージャ
【請求項10】
前記第1コンプレッサ部から吐出された気体を前記内燃機関に供給するための第1流路と、
前記第2コンプレッサ部から吐出された気体を前記内燃機関に供給するための第2流路であって、前記第1流路と合流する第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一方に設けられ、前記第1流路又は前記第2流路の流量を調整可能な流量調整部と、
を更に備える、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項11】
前記回転軸の他端側に配置された第2タービン部を更に備え、
前記第2コンプレッサ部は、
前記周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第2コンプレッサ翼と、
前記複数の第2コンプレッサ翼が配置された第2コンプレッサ流路と、
を含み、
前記第2タービン部は、
前記周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第2タービン動翼と、
前記複数の第2タービン動翼が配置された第2タービン流路と、
を含み、
前記複数の第2コンプレッサ翼は、前記径方向において前記複数の第2タービン動翼の外側又は内側に配置され、
前記第2コンプレッサ流路と前記第2タービン流路は、前記複数の第2コンプレッサ翼と前記複数の第2タービン動翼とに接続する仕切壁部によって仕切られた、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項12】
前記第2コンプレッサ部から吐出された気体を前記第1コンプレッサ部に導くための第3流路と、
前記第1タービン部から吐出された気体を前記第2タービン部に導くための第4流路と、
を更に備える、請求項11に記載のターボチャージャ
【請求項13】
前記第1タービン部は、前記第1タービン動翼と、前記第1タービン動翼の上流側に設けられたタービン静翼と、からなるタービン段落を複数含む、請求項に記載のターボチャージャ
【請求項14】
前記第1コンプレッサ翼と前記第1タービン動翼とは、同一材料で一体的に構成された、請求項1乃至13の何れか1項に記載のターボチャージャ
【請求項15】
前記第1コンプレッサ翼と前記第1タービン動翼とは、互いに異なる材料で構成された、請求項1乃至13の何れか1項に記載のターボチャージャ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機械の一種である過給機は、例えば特許文献1に記載されるように、回転軸の一端側に設けられたコンプレッサと、回転軸の他端側に設けられたタービンとを備えている。この従来の過給機では、排気ガスの流れを受けてタービンが回転し、タービンの回転力が回転軸を介してコンプレッサに伝達されてコンプレッサで空気が圧縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-115560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の過給機では、回転軸の一端側にコンプレッサが設けられ、回転軸の他端側にタービンが設けられているため、軸方向の寸法が大きくなりやすい。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、軸方向に小型化可能な回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、
回転軸を共有する第1コンプレッサ部及び第1タービン部を備える回転機械であって、
前記第1コンプレッサ部は、
前記回転機械の周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第1コンプレッサ翼と、
前記複数の第1コンプレッサ翼が配置された第1コンプレッサ流路と、
を含み、
前記第1タービン部は、
前記周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第1タービン動翼と、
前記複数の第1タービン動翼が配置された第1タービン流路と、
を含み、
前記複数の第1コンプレッサ翼は、前記回転機械の径方向において前記複数の第1タービン動翼の外側又は内側に配置され、
前記第1コンプレッサ流路と前記第1タービン流路は、前記複数の第1コンプレッサ翼と前記複数の第1タービン動翼とに接続する仕切壁部によって仕切られる。
【0007】
上記(1)に記載の回転機械によれば、第1コンプレッサ翼が径方向において第1タービン動翼の外側又は内側に配置されており、第1コンプレッサ翼と第1タービン動翼とが仕切壁部を介して接続されている。このため、回転軸の一端側と他端側にコンプレッサとタービンをそれぞれ設ける場合と比較して、軸方向に小型化され軽量化された回転機械を実現することができる。
【0008】
また、第1コンプレッサ流路と第1タービン流路とを仕切る仕切壁部が第1コンプレッサ翼と第1タービン動翼とに接続しているため、第1コンプレッサ翼と第1タービン動翼のうち径方向における内側に配置された翼と仕切壁部との間に隙間がない。このため、従来のターボチャージャと比較して、コンプレッサの翼の先端(径方向外側端)と流路壁との間のリーク流れ又はタービンの動翼の先端(径方向外側端)と流路壁との間のリーク流れを抑制して高性能な回転機械を実現することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の回転機械において、
前記複数の第1コンプレッサ翼は、前記径方向において前記複数の第1タービン動翼の内側に配置され、
前記仕切壁部は、前記径方向における前記第1コンプレッサ翼の外側端と前記径方向における前記第1タービン動翼の内側端とに接続する。
【0010】
上記(2)に記載の回転機械は、ターボチャージャに好適に使用することができる。ターボチャージャでは、タービンは高温の排気ガスが供給されてコンプレッサよりも高温になりやすい。このため、上記(1)に記載の回転機械において、仮に第1タービン動翼を第1コンプレッサ翼の径方向内側に配置した場合には、第1コンプレッサ翼の重さを高温の第1タービン動翼によって支える必要が生じ、第1タービン動翼の設計をする上で強度上の制約が生じやすい。これに対し、上記(2)に記載のように第1コンプレッサ翼を第1タービン動翼の径方向内側に配置することによって、第1タービン動翼よりも低温の第1コンプレッサ翼によって第1タービン動翼を支持することができるため、第1タービン動翼の設計自由度を高めることができる。
【0011】
また、第1コンプレッサ翼の径方向外側端と仕切壁部とが接続しているため第1コンプレッサ翼と仕切壁部との間に隙間がなく、従来のターボチャージャと比較して、コンプレッサの翼の先端と流路壁との間のリーク流れを抑制してターボ効率を向上することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の回転機械において、
前記第1コンプレッサ部は、ラジアルコンプレッサである。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の回転機械において、
前記第1タービン部は、軸流タービンである。
【0014】
上記(4)に記載の回転機械によれば、回転機械の作動時におけるコンプレッサ出口流路部の圧力がタービン出口流路部の圧力よりも大きくなるように設計できる。これにより、コンプレッサ出口流路部からタービン出口流路部へのリーク流れが発生し、このリーク流れが仕切壁部の内周面の境界層の吸い込みに寄与する。したがって、通常のターボチャージャにおいて発生するコンプレッサ翼の先端側のサージ流れを緩和することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の回転機械において、
前記第1タービン部は、半径流入式の軸流タービンである。
【0016】
上記(5)に記載の回転機械によれば、回転機械の作動時におけるコンプレッサ入口流路部の圧力がタービン出口流路部の圧力と同程度になるように設計できるため、コンプレッサ入口流路部からタービン出口流路部へのリーク流れを抑制できる。また、回転機械の作動時におけるコンプレッサ入口流路部の圧力がタービン出口流路部の圧力よりも若干高くなるように設計することにより、コンプレッサ出口流路部からタービン入口流路部へのリーク流れが発生し、このリーク流れが仕切壁部の内周面の境界層の吸い込みに寄与する。したがって、通常のターボチャージャにおいて発生するコンプレッサ翼の先端側のサージ流れを緩和することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の回転機械において、
前記第1タービン部は、斜流タービンである。
【0018】
上記(6)に記載の回転機械によれば、斜流タービンとして構成された第1タービン部により、回転数及び圧力比を調整することが可能となる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の回転機械において、
前記複数の第1コンプレッサ翼は、前記径方向において前記複数の第1タービン動翼の外側に配置され、
前記仕切壁部は、前記径方向における前記第1コンプレッサ翼の内側端と前記径方向における前記第1タービン動翼の外側端とに接続する。
【0020】
上記(7)に記載の回転機械によれば、第1タービン動翼の外側端と仕切壁部とが接続しているため第1タービン動翼と仕切壁部との間に隙間がない。このため、タービン動翼の先端と流路壁との間のリーク流れを抑制して高性能な回転機械を実現することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の何れかに記載の回転機械において、
前記第1タービン部は、ラジアルタービンであり、
前記第1コンプレッサ部は、軸流コンプレッサ、斜流コンプレッサ又はラジアルコンプレッサである。
【0022】
上記(8)に記載のように内周側の第1タービン部がラジアルタービンである場合には、外周側の第1コンプレッサ部の設計自由度を高めることができ、用途に合わせて第1コンプレッサ翼の形状を決めることができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の回転機械において、
前記第1タービン部は、半径流入式の軸流タービンであり、
前記第1コンプレッサ部は、軸流コンプレッサである。
【0024】
上記(9)に記載の回転機械によれば、回転機械の作動時におけるコンプレッサ入口流路部の圧力とタービン出口流路部の圧力が同程度となり、コンプレッサ出口流路部の圧力とタービン入口流路部の圧力が同程度となるように設計することが可能なため、コンプレッサ部とタービン部との間のリーク流れを効果的に抑制することができる。また、半径流入式の軸流タービンはラジアルタービンに対して運用可能な圧力比の範囲が広いため、ラジアルタービンの定常運用範囲外のサイクルにも対応することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の回転機械において、
前記第1タービン部は、軸流タービンであり、
前記第1コンプレッサ部は、軸流コンプレッサである。
【0026】
上記(10)に記載の回転機械によれば、回転機械の作動時におけるコンプレッサ入口流路部の圧力とタービン出口流路部の圧力が同程度となり、コンプレッサ出口流路部の圧力とタービン入口流路部の圧力が同程度となるように設計することが可能なため、コンプレッサ部とタービン部との間のリーク流れを効果的に抑制することができる。また、軸流タービンはラジアルタービンに対して運用可能な圧力比の範囲が広いため、ラジアルタービンの定常運用範囲外のサイクルにも対応することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかに記載の回転機械において、
前記第1コンプレッサ部及び前記第1タービン部は前記回転軸の一端側に配置され、
前記回転機械は、前記回転軸の他端側に配置された第2コンプレッサ部を更に備える。
【0028】
上記(11)に記載の回転機械によれば、ターボチャージャに適用した場合に、軸流タービンとラジアルコンプレッサとを軸方向に組み合わせた従来のターボチャージャでは困難なコンプレッサの大流量化が容易となり、ターボチャージャとしての性能を向上させることができる。
【0029】
例えば、第2コンプレッサ部側のロータ外径を従来のターボチャージャのコンプレッサのロータ外径と同等とし、第1タービン部側(第1コンプレッサ部側)のロータ外径を従来のターボチャージャのタービンのロータ外径と同等とした場合、回転数を同等とすると、レスポンスを維持したままコンプレッサの流量を増加させることができる。
【0030】
また、例えば、第2コンプレッサ部側のロータ外径を従来のターボチャージャのコンプレッサのロータ外径より小さくしても、第1コンプレッサ部によって流量を補うことができる。この場合、第2コンプレッサ部の小型化により高周速化ができるため、軸流タービンの効率がピークとなる周速に対応する高い回転数で運転することが可能となり、ターボチャージャを高性能化することができる。
【0031】
また、スラスト力に大きな影響を与える第1コンプレッサ部の背圧と第2コンプレッサ部の背圧とが軸方向に相殺する構造となるため、軸系の信頼性を向上することができる。
【0032】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)に記載の回転機械において、
前記第1コンプレッサ部から吐出された気体を内燃機関に供給するための第1流路と、
前記第2コンプレッサ部から吐出された気体を前記内燃機関に供給するための第2流路であって、前記第1流路と合流する第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一方に設けられ、前記第1流路又は前記第2流路の流量を調整可能な流量調整部と、
を更に備える。
【0033】
上記(12)に記載の回転機械によれば、第1コンプレッサ部から第1流路を介して内燃機関に供給する気体の流量と第2コンプレッサ部から第2流路を介して内燃機関に供給する気体の流量の少なくとも一方を流量調整部によって調整することができるため、可変容量型のターボチャージャとして機能することができる。例えば、回転機械の起動時等の小流量時には、第1コンプレッサ部と第2コンプレッサ部のうち一方のみを駆動し、定常運転時等の大流量時は第1コンプレッサ部と第2コンプレッサ部の両方を使用することによって、可変容量型のターボチャージャとして機能することができる。
【0034】
(13)幾つかの実施形態では、上記(11)に記載の回転機械において、
前記回転軸の他端側に配置された第2タービン部を更に備え、
前記第2コンプレッサ部は、
前記回転軸の周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第2コンプレッサ翼と、
前記複数の第2コンプレッサ翼が配置された第2コンプレッサ流路と、
を含み、
前記第2タービン部は、
前記周方向に間隔をあけて設けられ、前記回転軸とともに回転するように構成された複数の第2タービン動翼と、
前記複数の第2タービン動翼が配置された第2タービン流路と、
を含み、
前記複数の第2コンプレッサ翼は、前記回転軸の径方向において前記複数の第2タービン動翼の外側又は内側に配置され、
前記第2コンプレッサ流路と前記第2タービン流路は、前記複数の第2コンプレッサ翼と前記複数の第2タービン動翼とを接続する仕切壁部によって仕切られる。
【0035】
上記(13)に記載の回転機械によれば、軸方向に小型化された高性能な2段過給装置を実現することができる。
【0036】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)に記載の回転機械において、
前記第2コンプレッサ部から吐出された気体を前記第1コンプレッサ部に導くための第3流路と、
前記第1タービン部から吐出された気体を前記第2タービン部に導くための第4流路と、
を更に備える。
【0037】
上記(14)に記載の回転機械によれば、軸方向に小型化された高性能な2段過給装置を実現することができる。例えば、2段過給装置として構成された回転機械のうち高圧側の第1タービン部を半径流入式の軸流タービンとして構成し、低圧側の第2タービン部を斜流タービンとして構成した場合、従来2つのハウジングが必要だった2段過給装置に対して、1つのハウジングで済み、2段過給装置の小型化及び軽量化が可能である。
【0038】
(15)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の回転機械において、
前記第1タービン部は、前記第1タービン動翼と、前記第1タービン動翼の上流側に設けられたタービン静翼と、からなるタービン段落を複数含む。
【0039】
上記(15)に記載の回転機械によれば、例えば小型のガスタービンに適用することができる。この場合、既存のタービン速度比U/COや流量特性を変更せずにガスタービンを軸方向に小型化し軽量化することができる。また、従来のガスタービンと比較して第1コンプレッサ翼と仕切壁部とが接続されていてコンプレッサ翼と仕切壁部との間に隙間がないため、コンプレッサ翼の先端と流路壁との間のリーク流れを抑制して高効率なガスタービンを実現することができる。
【0040】
(16)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の回転機械において、
前記第1コンプレッサ部及び前記第1タービン部は前記回転軸の一端側に配置され、
前記回転機械は、前記回転軸の他端側に接続されたモータを更に備え、
前記第1コンプレッサ部は、前記第1コンプレッサ翼を通過した気体を冷却対象に導くための第1ガイド部を備え、
前記第1タービン部は、前記冷却対象の冷却に使用された前記気体を前記第1タービン動翼に導くための第2ガイド部を備える。
【0041】
上記(16)に記載の回転機械によれば、第1ガイド部によって冷却対象に導かれた流体は、冷却対象を冷却した後に第1タービン部に導かれる。これにより、冷却対象の排熱を利用して第1タービン動翼で動力を回収し、モータの駆動力をアシストすることができる。したがって、従来捨てられていた排熱を有効活用して、モータの電力使用量を低減することができる。
【0042】
(17)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(16)の何れかに記載の回転機械において、
前記第1コンプレッサ翼と前記第1タービン動翼とは、同一材料で一体的に構成される。
【0043】
上記(1)乃至(16)の何れかに記載の回転機械を例えばガソリンエンジン用のターボチャージャとして使用する場合には、ガソリンエンジンの排気ガスが高温であるため、上記(17)に記載のように、第1コンプレッサ翼とタービン動翼は、耐熱性を考慮して、一般的なタービン材料を用いて同一材料で一体的に構成されてもよい。また、必要な耐熱性を満たす場合には、コンプレッサ翼及びタービン動翼は一般的なコンプレッサ材料を用いて同一材料で一体的に構成されていてもよい。
【0044】
(18)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(16)の何れかに記載の回転機械において、
前記第1コンプレッサ翼と前記第1タービン動翼とは、互いに異なる材料で構成される。
【0045】
上記(1)乃至(16)の何れかに記載の回転機械を比較的低い温度の排熱の回収に使用する場合(例えば燃料電池やディーゼルエンジンの排熱回収や、バイナリーサイクル等における排熱温度が比較的低いタービンの排熱回収に使用する場合)には、上記(18)に記載のようにコンプレッサ翼の材料とタービン動翼の材料とを分けても強度的に成立し易い。この場合、三次元金属積層造形法による加工を好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、軸方向に小型化可能な回転機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】一実施形態に係る回転機械2(2A)の概略断面図である。
図2A】回転機械2(2A)の径方向視における第1コンプレッサ翼、第1タービン動翼及び静翼の配置を示す図である。
図2B】回転機械2(2A)の回転軸4に接続するモータ21を示す図である。
図3】一実施形態に係る回転機械2(2B)の概略断面図である。
図4】回転機械2(2B)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。
図5】一実施形態に係る回転機械2(2C)の概略断面図である。
図6】回転機械2(2C)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。
図7】一実施形態に係る回転機械2(2D)の概略断面図である。
図8】回転機械2(2D)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。
図9】一実施形態に係る回転機械2(2E)の概略断面図である。
図10】回転機械2(2E)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。
図11】一実施形態に係る回転機械2(2F)の概略断面図である。
図12】一実施形態に係る回転機械2(2G)の概略断面図である。
図13】一実施形態に係る回転機械2(2H)の概略断面図である。
図14】一実施形態に係る回転機械2(2I)の概略断面図である。
図15】一実施形態に係る回転機械2(2J)の概略断面図である。
図16】一実施形態に係る回転機械2(2K)の概略断面図である。
図17】一実施形態に係る回転機械2(2L)の概略断面図である。
図18】一実施形態に係る回転機械2(2L)の概略断面図である。
図19】一実施形態に係る回転機械2(2M)の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0049】
図1は、一実施形態に係る回転機械2(2A)の概略断面図である。図2Aは、回転機械2(2A)の径方向視における第1コンプレッサ翼、第1タービン動翼及び静翼の配置を示す図である。図2Bは、回転機械2(2A)の回転軸4に接続するモータ21を示す図である。図3は、一実施形態に係る回転機械2(2B)の概略断面図である。図4は、回転機械2(2B)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。図5は、一実施形態に係る回転機械2(2C)の概略断面図である。図6は、回転機械2(2C)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。図7は、一実施形態に係る回転機械2(2D)の概略断面図である。図8は、回転機械2(2D)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。図9は、一実施形態に係る回転機械2(2E)の概略断面図である。
【0050】
図10は、回転機械2(2E)の径方向視における第1コンプレッサ翼及び第1タービン動翼の配置を示す図である。図11は、一実施形態に係る回転機械2(2F)の概略断面図である。図12は、一実施形態に係る回転機械2(2G)の概略断面図である。図13は、一実施形態に係る回転機械2(2H)の概略断面図である。図14は、一実施形態に係る回転機械2(2I)の概略断面図である。図15は、一実施形態に係る回転機械2(2J)の概略断面図である。図16は、一実施形態に係る回転機械2(2K)の概略断面図である。図17は、一実施形態に係る回転機械2(2L)の概略断面図である。図18は、一実施形態に係る回転機械2(2L)の概略断面図である。図19は、一実施形態に係る回転機械2(2M)の概略断面図である。
【0051】
以下では、回転機械2の周方向(回転機械2の回転軸4の周方向)を単に「周方向」と記載し、回転機械2の径方向(回転機械2の回転軸4の径方向)を単に「径方向」と記載し、回転機械2の軸方向(回転機械2の回転軸4の軸線方向)を単に「軸方向」と記載することとする。
【0052】
幾つかの実施形態では、例えば図1図19に示すように、回転機械2(2A~2M)は、回転軸4を共有する第1コンプレッサ部6及び第1タービン部8を備える。第1コンプレッサ部6は、周方向に間隔をあけて設けられ、回転軸4とともに回転するように構成された複数のコンプレッサ翼10(第1コンプレッサ翼)と、複数のコンプレッサ翼10が配置されたコンプレッサ流路12(第1コンプレッサ流路)とを含む。第1タービン部8は、周方向に間隔をあけて設けられ、回転軸4とともに回転するように構成された複数のタービン動翼14(第1タービン動翼)と、複数のタービン動翼14が配置されたタービン流路16(第1タービン流路)とを含む。
【0053】
コンプレッサ流路12は、コンプレッサ流路12の入口からコンプレッサ翼10に気体を導くように構成されたコンプレッサ入口流路部22と、コンプレッサ翼10を通過した気体をコンプレッサ流路12の出口に導くコンプレッサ出口流路部23とを含む。タービン流路16は、タービン流路16の入口からタービン動翼14に気体を導くタービン入口流路部28と、タービン動翼14を通過した気体をタービン流路16の出口に導くタービン出口流路部30とを含む。
【0054】
複数のコンプレッサ翼10は、径方向において複数のタービン動翼14の外側又は内側に配置される。コンプレッサ流路12とタービン流路16は、複数のコンプレッサ翼10と複数のタービン動翼14とに接続するように周方向に沿って延在する筒状の仕切壁部18によって仕切られている。すなわち、コンプレッサ流路12とタービン流路16は、複数のコンプレッサ翼10と複数のタービン動翼14とに接続するように周方向に沿って延在する筒状の仕切壁部18を共有している。このように、回転機械2(2A~2M)では、複数のコンプレッサ翼10、複数のタービン動翼14及び仕切壁部18が回転軸4とともにロータ20の少なくとも一部を構成するように構成される。
【0055】
上記回転機械2(2A~2M)によれば、コンプレッサ翼10が径方向においてタービン動翼14の外側又は内側に配置されており、コンプレッサ翼10とタービン動翼14とが仕切壁部18を介して接続されている。このため、回転軸4の一端側と他端側にコンプレッサとタービンをそれぞれ設ける場合と比較して、軸方向に小型化され軽量化された回転機械2を実現することができる。
【0056】
また、コンプレッサ流路12とタービン流路16とを仕切る仕切壁部18がコンプレッサ翼10とタービン動翼14とに接続しているため、コンプレッサ翼10とタービン動翼14のうち径方向における内側に配置された翼と仕切壁部18との間に隙間がない。このため、コンプレッサ翼10とタービン動翼14のうち径方向における内側に配置された翼と仕切壁部18との間にリーク流れが生じないため、高性能な回転機械を実現することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、例えば図1図18に示す回転機械2(2A~2L)は、ターボチャージャとして構成され、タービン流路16に不図示の内燃機関からの排気ガスが供給される。これにより、タービン動翼14が排気ガスの流れを受けて動力を回収し、タービン動翼14と一体的に回転するコンプレッサ翼10が空気を圧縮して内燃機関に供給する。なお、内燃機関の種類は特に限定されず、例えばガスエンジン、ガスタービン又はディーゼルエンジンであってもよい。また、内燃機関に代えて燃料電池を使用してもよい。この場合、燃料電池の排ガスはタービン流路16に供給され、コンプレッサ翼10を用いて圧縮した空気が燃料電池に供給される。
【0058】
幾つかの実施形態では、例えば図1図3及び図14図19に示すように、複数のコンプレッサ翼10は、径方向において複数のタービン動翼14の内側に配置され、仕切壁部18は、径方向におけるコンプレッサ翼10の外側端10aと径方向におけるタービン動翼14の内側端14aとに接続するように周方向に沿って延在する。
【0059】
回転機械2(2A~2L)をターボチャージャに適用する場合には、第1タービン部8は高温の排気ガスが供給されて第1コンプレッサ部6よりも高温になりやすい。このため、タービン動翼14をコンプレッサ翼10の内側に配置した場合には、コンプレッサ翼10の重さを高温のタービン動翼14によって支える必要が生じ、タービン動翼14の設計をする上で強度上の制約が生じやすい。これに対し、上記のようにコンプレッサ翼10をタービン動翼14の径方向内側に配置することによって、タービン動翼14よりも低温のコンプレッサ翼10によってタービン動翼14を支持することができるため、タービン動翼14の設計自由度を高めることができる。また、コンプレッサ翼10の外側端10aと仕切壁部18とが接続しているためコンプレッサ翼10と仕切壁部18との間に隙間がなく、従来のターボチャージャと比較して、コンプレッサ翼10の外側端10aと流路壁(仕切壁部18)との間のリーク流れが生じないため、ターボ効率を向上することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、例えば図5図7図9図11図13に示すように、複数のコンプレッサ翼10は、径方向において複数のタービン動翼14の外側に配置され、仕切壁部18は、径方向におけるコンプレッサ翼10の内側端10bと径方向におけるタービン動翼14の外側端14bとに接続するように周方向に沿って延在する。
【0061】
このように、回転機械2(2C~2H)によれば、タービン動翼14の外側端14bと仕切壁部18とが接続しているためタービン動翼14と仕切壁部18との間に隙間がなく、タービン動翼14の外側端14bと流路壁(仕切壁部18)との間のリーク流れが生じないため、高性能な回転機械を実現することができる。したがって、回転機械2(2C~2H)をターボチャージャに適用した場合には、従来のターボチャージャと比較して、タービン動翼14の外側端14bと流路壁(仕切壁部18)との間のリーク流れが生じないため、ターボ効率を向上することができる。
【0062】
次に、回転機械2(2A~2M)の各々の詳細構成について、回転機械2(2A)から順に説明する。
図1及び図2Aに示すように、回転機械2(2A)では、内周側の第1コンプレッサ部6はラジアルコンプレッサであり、外周側の第1タービン部8は軸流タービンである。コンプレッサ入口流路部22は、軸方向に沿って軸受5と反対側からコンプレッサ翼10に空気(気体)を流入させるように構成される。コンプレッサ出口流路部23は、径方向においてコンプレッサ翼10の外側に設けられたコンプレッサ側スクロール流路部24と、コンプレッサ翼10を通過した気体をコンプレッサ側スクロール流路部24に導くディフューザ流路部26と、を含む。タービン入口流路部28は、不図示の内燃機関の排気ガス(気体)を軸方向に沿って軸受5と反対側からタービン動翼14に流入させるように構成され、タービン入口流路部28には、タービン動翼14の上流側に周方向に間隔をあけて複数のタービン静翼32が設けられている。
【0063】
図2Aに示すように、コンプレッサ翼10の正圧面10cは回転軸4の回転方向における下流側を向いており、タービン動翼14の正圧面14cは回転軸4の回転方向における上流側を向いており、タービン静翼32の正圧面32cは回転軸4の回転方向において下流側を向いている。このように、コンプレッサ翼10の正圧面10cとタービン動翼14の正圧面14cとは、回転軸4の回転方向において互いに逆方向を向いている。また、径方向視において、コンプレッサ翼10とタービン動翼14とは部分的にオーバーラップしている。
【0064】
上記回転機械2(2A)では、タービン入口流路部28における高温高圧の排気ガスがタービン静翼32によって加速され、タービン動翼14にてその排気ガスから動力が回収される。タービン動翼14で回収した動力は内周側の第1コンプレッサ部6で消費される。
【0065】
図1に示す回転機械2(2A)において、コンプレッサ入口流路部22の圧力をP1、コンプレッサ側スクロール流路部24の圧力をP2、タービン入口流路部28におけるタービン静翼32の上流側の圧力をP3、タービン入口流路部28におけるタービン静翼32の径方向内側端32aとタービン動翼14の径方向内側端14aとの間の圧力をP4、タービン出口流路部30の圧力をP5とする。ここで、P1≒P4(≒P5)を満たす状態で作動するように回転機械2(2A)を設計することが可能なため、性能に大きく影響する圧力P1と圧力P4との差圧に起因するコンプレッサ入口流路部22とタービン入口流路部28との間のリーク流れ(コンプレッサ入口流路部22を形成する筒状の案内筒25と仕切壁部18との隙間を介したリーク流れ)を抑制することができ、ターボ効率の高い回転機械2(2A)を実現することができる。なお、「P4≒P5」の「≒」とは、例えば、タービン動翼14についての反動度(P4-P5)/(P3-P5)が-10%~30%となる程度にP4とP5が等しい状態を示してもよい。
【0066】
また、コンプレッサ側スクロール流路部24を構成するスクロールケーシング34とタービン出口流路部30における比較的冷めた熱源とが接するため、熱的な強度信頼性を向上させるレイアウトになっている。また、第1タービン部8は第1コンプレッサ部6による冷却が得られるため、強度的な信頼性を向上させることができる。
【0067】
また、P2>P5(≒P1)を満たすことにより、コンプレッサ出口流路部23からタービン出口流路部30へのリーク流れ(コンプレッサ出口流路部23とタービン出口流路部30とを仕切る環状の仕切板88と仕切壁部18との隙間を介したリーク流れ)が発生し、このリーク流れが仕切壁部18の内周面の境界層の吸い込みに寄与する。これにより、通常のターボチャージャにおいて発生するコンプレッサ部の翼先端側のサージ流れを緩和することができる。
【0068】
なお、図1に示す例示的な形態では、回転機械2(2A)は、ロータ20を収容するケーシングとして、案内筒25、外側ケーシング86、スクロールケーシング34、仕切板88及び軸受ケーシング90を含む。案内筒25は、コンプレッサ入口流路部22を内側に形成する。外側ケーシング86は、径方向における案内筒25の外側に配置され、案内筒25との間にタービン入口流路部28を形成するとともに、仕切板88との間にタービン出口流路部30を形成する。仕切板88は、タービン出口流路部30とコンプレッサ出口流路部23とを仕切るように設けられ、スクロールケーシング34との間にコンプレッサ出口流路部23を形成する。軸受ケーシング90は、回転軸4を回転可能に支持する軸受5を収容する。
【0069】
ロータ20を収容するケーシングの構成は特に限定されないが、上述のように案内筒25と外側ケーシング86とを別部品として構成することにより、メンテナンス時や各翼の加工時に案内筒25を外側ケーシング86から取り外してコンプレッサ翼10、タービン動翼14及びタービン静翼32へ容易にアクセスすることができる。また、外側ケーシング86と仕切板88とを別部品として構成することにより、メンテナンス時や各翼の加工時に外側ケーシング86を仕切板88から取り外してタービン動翼14へ容易にアクセスすることができる。
【0070】
また、一実施形態では、例えば図2Bに示すように、回転機械2(2A)の軸受5を挟んで回転軸4における第1コンプレッサ部6(図1参照)と反対側の端部に、回転軸4の回転をアシストするためのモータ21が接続されていてもよい。これにより、電動アシスト式のターボチャージャを簡素な構成により低コストで実現することができる。
【0071】
次に、図3及び図4を用いて回転機械2(2B)について説明する。
図3及び図4に示すように、回転機械2(2B)では、内周側の第1コンプレッサ部6はラジアルコンプレッサであり、外周側の第1タービン部8は半径流入式の軸流タービンである。コンプレッサ入口流路部22は、軸方向に沿って軸受5と反対側からコンプレッサ翼10に空気を流入させるように構成される。コンプレッサ出口流路部23は、径方向においてコンプレッサ翼10の外側に設けられたコンプレッサ側スクロール流路部24と、コンプレッサ翼10を通過した空気をコンプレッサ側スクロール流路部24に導くディフューザ流路部26と、を含む。タービン入口流路部28は、ロータ20の外周側に設けられたタービン側スクロール流路部36と、タービン側スクロール流路部36を通過した排気ガスの流れ方向を、径方向における内側に向かう方向から軸方向に沿う方向に変更するように構成されたベンド流路部38と、を含み、軸方向に沿って軸受5側からタービン動翼14に排気ガスを流入させるように構成される。このように、コンプレッサ翼10への空気の流入方向と、タービン動翼14における排気ガスの流入方向とは反対方向である。
【0072】
図4に示すように、コンプレッサ翼10の正圧面10cは回転軸4の回転方向における下流側を向いており、タービン動翼14の正圧面14cは回転軸4の回転方向における上流側を向いている。このように、コンプレッサ翼10の正圧面10cとタービン動翼14の正圧面14cとは、回転軸4の回転方向において互いに逆方向を向いている。また、径方向視において、コンプレッサ翼10とタービン動翼14とは部分的にオーバーラップしている。
【0073】
上記回転機械2(2B)では、タービン入口流路部28のタービン側スクロール流路部36からベンド流路部38を通った高温高圧の排気ガスが軸方向に沿って外周側のタービン動翼14に流入し、タービン動翼14にてその流体から動力が回収される。タービン動翼14で回収した動力は内周側の第1コンプレッサ部6で消費される。
【0074】
図3に示す回転機械2(2B)において、コンプレッサ入口流路部22の圧力をP1、コンプレッサ側スクロール流路部24の圧力をP2、タービン入口流路部28におけるタービン静翼32の上流側の圧力をP3、タービン出口流路部30の圧力をP5とする。ここで、単段のターボチャージャにおいては、半径流入式の軸流タービンを採用することにより、P1≒P5及びP2≒P3を満たす状態で作動するように回転機械2(2B)を設計することができるため、コンプレッサ入口流路部22とタービン出口流路部30との間のリーク流れ(コンプレッサ入口流路部22を構成する案内筒25と仕切壁部18との隙間を介したリーク流れ)を抑制するとともに、コンプレッサ出口流路部23とタービン入口流路部28との間のリーク流れ(コンプレッサ出口流路部23とタービン入口流路部28とを仕切る環状の仕切板88と仕切壁部18との隙間を介したリーク流れ)を抑制することができる。また、圧力損失によりややP2>P3となるため、回転機械2(2A)と同様に、コンプレッサ部6のサージ流れを緩和することができる。したがって、ターボ効率の高い回転機械2(2B)を実現することができる。
【0075】
また、上記回転機械2(2B)では、タービン側スクロール流路部36を形成するスクロールケーシング34に冷却媒体が流れる冷却流路40が設けられている。これにより、タービン入口流路部28からスクロールケーシング34に伝達される排気ガスの高熱の影響を緩和することができる。
【0076】
なお、図3に示す例示的な形態では、回転機械2(2B)は、ロータ20を収容するケーシングとして、案内筒25、外側ケーシング86、スクロールケーシング34、仕切板88及び軸受ケーシング90を含む。案内筒25は、コンプレッサ入口流路部22を内側に形成する。外側ケーシング86は、径方向における案内筒25の外側に配置され、案内筒25との間にタービン出口流路部30を形成するとともに、仕切板88との間にタービン入口流路部28を形成する。仕切板88は、タービン入口流路部28とコンプレッサ出口流路部23とを仕切るように設けられ、スクロールケーシング34との間にコンプレッサ出口流路部23を形成する。軸受ケーシング90は、回転軸4を回転可能に支持する軸受5を収容する。
【0077】
ロータ20を収容するケーシングの構成は特に限定されないが、上述のように案内筒25と外側ケーシング86とを別部品として構成することにより、メンテナンス時や各翼の加工時に案内筒25を外側ケーシング86から取り外してコンプレッサ翼10及びタービン動翼14へ容易にアクセスすることができる。また、外側ケーシング86と仕切板88とを別部品として構成することにより、メンテナンス時や各翼の加工時に外側ケーシング86を仕切板88から取り外してタービン動翼14へ容易にアクセスすることができる。
【0078】
次に、図5図10を用いて回転機械2(2C~2E)について説明する。
図5図7及び図9に示すように、回転機械2(2C~2E)では、内周側の第1タービン部8はラジアルタービンある。この場合、外周側の第1コンプレッサ部6は、図5及び図7に示すように軸流コンプレッサであってもよいし、図9に示すようにラジアルコンプレッサであってもよいし、斜流コンプレッサであってもよい。このように、内周側の第1タービン部8がラジアルタービンである場合には、外周側の第1コンプレッサ部6の設計自由度を高めることができ、用途に合わせてコンプレッサ翼10の形状を決めることができる。
【0079】
図5に示す回転機械2(2C)では、コンプレッサ入口流路部22は、軸方向に沿って軸受5側からコンプレッサ翼10に気体を流入させるように構成され、タービン入口流路部28は、径方向に沿ってタービン動翼14に気体を流入させるように構成される。図7及び図9に示す回転機械2(2D,2E)では、コンプレッサ入口流路部22は、軸方向に沿って軸受5と反対側からコンプレッサ翼10に気体を流入させるように構成され、タービン入口流路部28は、径方向に沿ってタービン動翼14に気体を流入させるように構成される。また、図5及び図7に示す回転機械2(2C、2D)では、コンプレッサ出口流路部23には、周方向に間隔をあけて複数のディフューザ翼42が設けられる。
【0080】
図6図8及び図10に示すように、回転機械2(2C~2E)では、コンプレッサ翼10の正圧面10cは回転軸4の回転方向における下流側を向いており、タービン動翼14の正圧面14cは回転軸4の回転方向における上流側を向いている。このように、コンプレッサ翼10の正圧面10cとタービン動翼14の正圧面14cとは、回転軸4の回転方向において互いに逆方向を向いている。また、径方向視において、コンプレッサ翼10とタービン動翼14とは部分的にオーバーラップしている。
【0081】
なお、軸流コンプレッサはラジアルタービンに比べて単段当りの使用圧力比が小さいため、コンプレッサ出口流路部23の圧力P2とタービン側スクロール流路部36の圧力P3とは、P2≒P3を満たさない。つまり、第1タービン部8と第1コンプレッサ部6とがバランスせず、タービン動翼14にて回収する動力が余るため、ターボチャージャとして構成するよりも、発電機や被駆動機に回転軸4を連結することで発電装置や動力駆動装置として好適に利用することができる。
【0082】
回転機械2(2C~2E)は、回転軸4に例えば他の過給機を連結して2段過給装置として構成してもよいし、回転軸4に負荷吸収体(被駆動機)を連結してもよい。この場合、回転機械2(2C~2E)は、他の過給機又は負荷吸収体で消費されずに余った動力を第1コンプレッサ部6により別のプロセスで使用するサイクルにおいて好適に使用される。
【0083】
次に、図11を用いて回転機械2(2F)について説明する。
回転機械2(2F)では、内周側の第1タービン部8は半径流入式の軸流タービンあり、外周側の第1コンプレッサ部6は、軸流コンプレッサである。タービン入口流路部28は、ロータ20の外周側に設けられたタービン側スクロール流路部36と、タービン側スクロール流路部36を通過した排気ガスの流れ方向を、径方向における内側に向かう方向から軸方向に沿う方向に変更するように構成されたベンド流路部38と、を含み、軸方向に沿って軸受5側からタービン動翼14に排気ガスを流入させるように構成される。コンプレッサ入口流路部22は、軸方向に沿って軸受5と反対側からコンプレッサ翼10に空気を流入させるように構成される。すなわち、コンプレッサ翼10への空気の流入方向と、タービン動翼14における排気ガスの流入方向とは反対方向である。
【0084】
上記回転機械2(2F)では、タービン入口流路部28のタービン側スクロール流路部36からベンド流路部38を通った高温高圧の排気ガスがタービン動翼14に流入し、タービン動翼14にてその排気ガスから動力が回収される。タービン動翼14で回収した動力は外周側の第1コンプレッサ部6で消費される。
【0085】
次に、図12及び図13を用いて回転機械2(2G,2H)について説明する。
図12に示すように、回転機械2(2G)では、内周側の第1タービン部8は軸流タービンあり、外周側の第1コンプレッサ部6は軸流コンプレッサである。
【0086】
回転機械2(2G)では、タービン入口流路部28は、軸方向に沿って軸受5と反対側からタービン動翼14に気体を流入させるように構成される。タービン入口流路部28には、タービン動翼14の上流側に周方向に間隔をあけて複数のタービン静翼32が設けられている。コンプレッサ入口流路部22は、軸方向に沿って軸受5側からコンプレッサ翼10に気体を流入させるように構成される。コンプレッサ出口流路部23には、周方向に間隔をあけて複数のディフューザ翼42が設けられる。このように、コンプレッサ翼10への気体の流入方向と、タービン動翼14における排気ガスの流入方向とは反対方向である。
【0087】
図13に示すように、回転機械2(2H)では、内周側の第1タービン部8は半径流入式の軸流タービンであり、外周側の第1コンプレッサ部6は軸流コンプレッサである。タービン入口流路部28は、ロータ20の外周側に設けられたタービン側スクロール流路部36と、タービン側スクロール流路部36を通過した排ガスの流れ方向を、径方向における内側に向かう方向から軸方向に沿う方向に変更するように構成されたベンド流路部38と、を含み、軸方向に沿って軸受5側からタービン動翼14に気体を流入させるように構成される。コンプレッサ入口流路部22は、軸方向に沿って軸受5と反対側からコンプレッサ翼10に気体を流入させるように構成される。このように、コンプレッサ翼10への気体の流入方向と、タービン動翼14における排気ガスの流入方向とは反対方向である。
【0088】
このように、上記回転機械2(2G,2H)では、タービン入口流路部28を通った高温高圧の排気ガスが内周側のタービン動翼14に軸方向に沿って流入し、タービン動翼14にてその流体から動力が回収される。タービン動翼14で回収した動力は外周側の第1コンプレッサ部6で消費される。
【0089】
図11図13に示した回転機械2(2G~2H)によれば、軸流タービンはラジアルタービンに対して運用可能な圧力比の範囲が広い(例えば圧力比1.1程度の低圧力比でも圧力比5以上の高圧力比でも高性能な設計ができる)ため、ラジアルタービンの定常運用範囲(例えば圧力比1.5~4)外のサイクルにも対応することができる。
【0090】
また、従来の典型的なターボチャージャに用いられる小型のタービンでは、タービン動翼の翼高さが小さく、チップクリアランスの影響が大きくなるためチップリーク(タービン動翼の先端と流路壁との隙間のリーク流れ)による損失が大きくなりやすい。特に、軸流タービンはラジアルタービンに比べてチップリーク損失が大きくなりやすい。この点、図11図13に示した回転機械2(2G~2H)によれば、第1タービン部8のタービン動翼14の外側端14bは仕切壁部18に接続しており、第1タービン部8のチップリークを略0%まで低減することができるため、大幅な性能向上が可能である。
【0091】
また、図11図13に示した回転機械2(2G~2H)によれば、コンプレッサ入口流路部22の圧力P1、コンプレッサ出口流路部23の圧力P2、タービン入口流路部28におけるタービン静翼32の上流側の圧力P3、及びタービン出口流路部30の圧力P5について、P1≒P5、及びP2≒P3を満たす状態で作動するように回転機械2(2A)を設計することが可能なため、コンプレッサ流路12とタービン流路16との間のリーク流れを効果的に抑制することが可能である。
【0092】
次に、図14を用いて回転機械2(2I)について説明する。
回転機械2(2I)では、回転軸4の一端側に上述した第1コンプレッサ部6及び第1タービン部8を含む回転機械2(2A)が配置され、回転軸4の他端側に第2コンプレッサ部44が配置されている。図示する形態では、第2コンプレッサ部44はラジアルコンプレッサである。
【0093】
回転機械2(2I)によれば、軸流タービンとラジアルコンプレッサとを軸方向に組み合わせた従来のターボチャージャでは困難なコンプレッサの大流量化が容易となり、ターボチャージャとしての性能を向上させることができる。
【0094】
例えば、第2コンプレッサ部44側のロータ外径を従来のターボチャージャのコンプレッサのロータ外径と同等とし、第1タービン部8側(第1コンプレッサ部6側)のロータ外径を従来のターボチャージャのタービンのロータ外径と同等とした場合、回転数を同等とすると、レスポンスを維持したままコンプレッサの流量を増加させることができる。
【0095】
また、例えば、第2コンプレッサ部44側のロータ外径を従来のターボチャージャのコンプレッサのロータ外径より小さくしても、第1コンプレッサ部6によって流量を補うことができる。この場合、第2コンプレッサ部44の小型化により高周速化ができるため、軸流タービンの効率がピークとなる周速に対応する高い回転数で運転することが可能となり、ターボチャージャを高性能化することができる。
【0096】
また、スラスト力に大きな影響を与える第1コンプレッサ部6の背圧と第2コンプレッサ部44の背圧とが軸方向に相殺する構造となるため、軸系の信頼性を向上することができる。
【0097】
なお、図14に示す例示的な回転機械2(2I)では、回転軸4の一端側に上述した回転機械2(2A)が配置された形態を示したが、回転機械2(2I)における回転軸4の一端側には、回転機械2(2A)に代えて、上述した回転機械2(2B~2H)の何れかを配置してもよい。
【0098】
次に、図15を用いて回転機械2(2J)について説明する。
回転機械2(2J)では、上述した回転機械2(2I)における軸流タービンとして構成された外周側の第1タービン部8に代えて、斜流タービンとして構成された第1タービン部8を外周側に備える。この場合、斜流タービンとして構成された第1タービン部8により、回転数及び圧力比を調整することが可能となる。
【0099】
また、回転機械2(2J)は、第1コンプレッサ部6から吐出された空気を内燃機関46に供給するための第1流路48と、第2コンプレッサ部44から吐出された空気を内燃機関46に供給するための第2流路50と、流量調整部52とを備える。第2流路50は、第1流路48と合流するように構成され、流量調整部52は、第1流路48及び第2流路50の少なくとも一方に設けられ、第1流路48又は第2流路50の流量を調整可能に構成される。図示する例示的形態では、流量調整部52は、第1流路48に設けられた流量制御弁54を含む。また、回転機械2(2J)には、内燃機関46の排気ガスを第1タービン部8の入口に供給するための排気ガス流路51が設けられている。一実施形態では、第1流路48又は第2流路50には、第1流路48又は第2流路から吐出された空気の余剰分を貯蔵するための不図示のタンクが接続されていてもよい。
【0100】
このように、回転機械2(2J)は、第1コンプレッサ部6から第1流路48を介して内燃機関46に供給する空気の流量と第2コンプレッサ部44から第2流路50を介して内燃機関46に供給する空気の流量の少なくとも一方を流量調整部52によって調整することができるため、可変容量型のターボチャージャとして機能することができる。例えば、回転機械2(2J)の起動時等の小流量時には、第1コンプレッサ部6と第2コンプレッサ部44のうち一方のみを駆動し、定常運転時等の大流量時は第1コンプレッサ部6と第2コンプレッサ部44の両方を使用することによって、可変容量型のターボチャージャとして機能することができる。
【0101】
次に、図16を用いて回転機械2(2K)について説明する。
回転機械2(2K)では、回転軸4の一端側に上述した第1コンプレッサ部6及び第1タービン部8を含む回転機械2(2B)が配置され、回転軸4の他端側に第2コンプレッサ部44及び第2タービン部56が配置されている。図示する形態では、内周側の第2コンプレッサ部44はラジアルコンプレッサであり、外周側の第2タービン部56は斜流タービンである。
【0102】
第2コンプレッサ部44は、周方向に間隔をあけて設けられ、回転軸4とともに回転するように構成された複数のコンプレッサ翼58(第2コンプレッサ翼)と、複数のコンプレッサ翼58が配置されたコンプレッサ流路60(第2コンプレッサ流路)と、を含む。第2タービン部56は、周方向に間隔をあけて設けられ、回転軸4とともに回転するように構成された複数のタービン動翼62(第2タービン動翼)と、複数のタービン動翼62が配置されたタービン流路64(第2タービン流路)と、を含む。
【0103】
複数のコンプレッサ翼58は、径方向において複数のタービン動翼62の内側に配置される。コンプレッサ流路60とタービン流路64は、複数のコンプレッサ翼58と複数のタービン動翼62とに接続するように周方向に沿って延在する筒状の仕切壁部66によって仕切られている。すなわち、コンプレッサ流路60とタービン流路64は、複数のコンプレッサ翼58と複数のタービン動翼62とに接続するように周方向に沿って延在する筒状の仕切壁部66を共有する。このように、回転機械2(2K)では、複数のコンプレッサ翼58、複数のタービン動翼62及び仕切壁部66が回転軸4とともにロータ20の少なくとも一部を構成するように構成される。
【0104】
回転機械2(2K)は、第2コンプレッサ部44から吐出された空気を第1コンプレッサ部6に導くための第3流路68と、第1タービン部8から吐出された排気ガスを第2タービン部56に導くための第4流路70とを備えており、2段過給装置として構成されている。すなわち、不図示の内燃機関からの排気ガスが第1タービン部8、第4流路70及び第2タービン部56を順に流れ、第1タービン部8のタービン動翼14及び第2タービン部56のタービン動翼62にて動力を回収される。また、第2コンプレッサ部44、第3流路68及び第1コンプレッサ部6を順に流れて圧縮された気体が内燃機関に供給される。
【0105】
上記回転機械2(2K)では、斜流タービンとして構成された第2タービン部56によって回転数及び圧力比を調整することが可能である。
【0106】
また、2段過給装置として構成された回転機械2(2K)のうち高圧側の第1タービン部8を半径流入式の軸流タービンとして構成し、低圧側の第2タービン部56を斜流タービンとして構成しているため、従来2つのハウジングが必要だった2段過給装置に対して、1つのハウジングで済み、2段過給装置の小型化及び軽量化が可能である。
【0107】
なお、図16に示す例示的な回転機械2(2K)では、回転軸4の一端側に上述した回転機械2(2B)が配置された2段過給装置を示したが、回転機械2(2K)における回転軸4の一端側には、回転機械2(2B)に代えて、上述した回転機械2(2A,2C~2H)の何れかを配置してもよい。
【0108】
次に、図17及び図18を用いて回転機械2(2L)について説明する。
回転機械2(2L)では、内周側の第1コンプレッサ部6はラジアルコンプレッサであり、外周側の第1タービン部8は複数段の軸流タービンである。
【0109】
図17に示すように、第1タービン部8は、タービン動翼14と、複数のタービン動翼14の上流側に設けられたタービン静翼32と、からなるタービン段落72を複数備える。すなわち、第1タービン部8には、タービン静翼32とタービン動翼14とが軸方向に交互に配置されている。
【0110】
回転機械2(2L)は、例えば小型のガスタービンに適用することができる。この場合、コンプレッサ流路12おいてコンプレッサ翼10で圧縮された空気は燃焼器74に供給されてバーナ76から供給される燃料の燃焼に使用され、燃焼ガスがタービン流路16に供給されてタービン動翼14にて動力が回収される。
【0111】
この場合、既存のタービン速度比U/COや流量特性を変更せずにガスタービンを軸方向に小型化し軽量化することができる。また、従来のガスタービンと比較してコンプレッサ翼10と仕切壁部18とが接続されていてコンプレッサ翼10と仕切壁部18との間に隙間がないため、コンプレッサ翼の先端側のリーク損失をなくすことができる。
【0112】
また、図18に示すように、回転機械2(2L)の回転軸4には、発電機又はポンプ等の被駆動機78が設けられてもよい。
【0113】
次に、図19を用いて回転機械2(2M)について説明する。
回転機械2(2M)では、内周側の第1コンプレッサ部6は冷却ファンとして機能する軸流コンプレッサであり、外周側の第1タービン部8は軸流タービンである。第1コンプレッサ部6及び第1タービン部8は回転軸4の一端側に配置され、回転軸4の他端側にはモータ21が接続される。
【0114】
第1コンプレッサ部6は、コンプレッサ翼10を通過した流体を冷却対象に導くための第1ガイド部80を含み、第1タービン部8は、冷却対象82の冷却に使用された流体をタービン動翼14に導くための第2ガイド部84を含む。冷却対象82は特に限定されないが、例えばPCの内部の発熱部であってもよいし、半導体等であってもよい。
【0115】
回転機械2(2M)によれば、第1ガイド部80によって冷却対象に導かれた流体は、冷却対象を冷却した後に第1タービン部8に導かれる。これにより、冷却対象の排熱を利用してタービン動翼14で動力を回収し、モータ21の駆動力をアシストすることができる。したがって、従来捨てられていた排熱を有効活用して、冷却ファンのモータ21の電力使用量を低減することができる。
【0116】
なお、上述した回転機械2(2A~2M)では、コンプレッサ翼10、仕切壁部18及びタービン動翼14は、フープ力を利用して強度を上げるために、一体的にブリスクとして構成されていてもよい。この場合、コンプレッサ翼10とタービン動翼14とは、同一材料で一体的に構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。コンプレッサ翼10とタービン動翼14とを同一材料で一体的に構成する場合には、用途及び形状に見合った加工法、削りだし、溶接及び鋳物等の使用が可能であるが、製品重量の観点からは、コンプレッサ翼10の材料とタービン動翼14の材料を分けて、三次元金属積層造形法による加工を行ってもよい。
【0117】
また、上述した回転機械2(2A~2M)を例えばガソリンエンジン用のターボチャージャとして使用する場合には、ガソリンエンジンの排気ガスが比較的高温であるため、コンプレッサ翼10、仕切壁部18及びタービン動翼14は、耐熱性を考慮して、一般的なタービン材料を用いて一体的に構成されていてもよい。
【0118】
また、上述した回転機械2(2A~2M)を比較的低い温度の排熱の回収に使用する場合(例えば燃料電池やディーゼルエンジンの排熱回収や、バイナリーサイクル等における排熱温度が比較的低いタービンの排熱回収に使用する場合)には、コンプレッサ翼10の材料とタービン動翼14の材料とを分けても強度的に成立し易く、この場合は、三次元金属積層造形法による加工を好適に使用することができる。また、必要な耐熱性を満たす場合には、コンプレッサ翼10、仕切壁部18及びタービン動翼14は一般的なコンプレッサ材料を用いて構成されていてもよい。
【0119】
このように、回転機械2を排熱回収に使用する場合には、排熱温度によって第1コンプレッサ部6の材料及び第1タービン部8の材料を適切に選択することにより、コスト及び安全性の最適化を行うことができる。
【0120】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0121】
2 回転機械
4 回転軸
5 軸受
6 第1コンプレッサ部
8 第1タービン部
10 コンプレッサ翼(第1コンプレッサ翼)
10a 外側端
10b 内側端
10c 正圧面
12 コンプレッサ流路(第1コンプレッサ流路)
14 タービン動翼(第1タービン動翼)
14a 内側端
14b 外側端
14c 正圧面
16 タービン流路(第1タービン流路)
18,19,66 仕切壁部
20 ロータ
21 モータ
22 コンプレッサ入口流路部
23 コンプレッサ出口流路部
24 コンプレッサ側スクロール流路部
25 案内筒
26 ディフューザ流路部
28 タービン入口流路部
30 タービン出口流路部
32 タービン静翼
32a 内側端
32c 正圧面
34 コンプレッサハウジング
36 タービン側スクロール流路部
37 スクロールケーシング
38 ベンド流路部
40 冷却流路
42 ディフューザ翼
44 第2コンプレッサ部
46 内燃機関
48 第1流路
50 第2流路
51 排気ガス流路
52 流量調整部
54 流量制御弁
56 第2タービン部
58 コンプレッサ翼(第2コンプレッサ翼)
60 コンプレッサ流路(第2コンプレッサ流路)
62 タービン動翼(第2タービン動翼)
64 タービン流路(第2タービン流路)
68 第3流路
70 第4流路
72 タービン段落
74 燃焼器
76 バーナ
78 被駆動機
80 第1ガイド部
82 冷却対象
84 第2ガイド部
86 外側ケーシング
88 仕切板
90 軸受ケーシング
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19