(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】成形装置
(51)【国際特許分類】
B21D 37/16 20060101AFI20221128BHJP
B21D 26/041 20110101ALN20221128BHJP
【FI】
B21D37/16
B21D26/041
(21)【出願番号】P 2021000204
(22)【出願日】2021-01-04
(62)【分割の表示】P 2017054888の分割
【原出願日】2017-03-21
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 雅之
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-342447(JP,A)
【文献】特開2007-210027(JP,A)
【文献】特開2012-000654(JP,A)
【文献】特開昭50-033153(JP,A)
【文献】特開2011-035014(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0027557(KR,A)
【文献】特開昭50-106261(JP,A)
【文献】特開2012-221893(JP,A)
【文献】特開2018-153859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/16
B21D 26/033-26/47
H05B 3/00
H05B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の金型と、
前記一組の金型とは別体の部材であり、前記一組の金型間に配置される金属材料に対し、電気的に接続可能な電極と、
前記電極が前記金属材料に電気的に接続された状態において、前記電極を介して前記金属材料に通電可能な電力供給部と、
内部に流体を流す流路を有さない部材を前記電極に接触させ、前記部材の熱を放熱することで前記電極を冷却する冷却部と、を備える、
成形装置。
【請求項2】
前記冷却部は、前記部材の外側から当該部材の熱を放熱する放熱部、及び通電されることによって前記電極から吸熱して前記電力供給部側へ放熱する吸熱放熱部の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記放熱部は、前記部材の表面に立設される、請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記放熱部は、前記電極から離間した位置に配置される、請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記放熱部、及び前記吸熱放熱部を有する、請求項2~4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項6】
前記金属材料は金属パイプ材料であり、
前記金属パイプ材料に気体を供給して膨張成形する気体供給部を更に備える、請求項1~5の何れか一項に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属パイプ材料を加熱すると共に当該金属パイプ材料内に気体を供給して金属パイプを成形する成形装置が知られている。このような成形装置として、例えば特許文献1には、一対の金型と、一対の金型間に配置される金属パイプ材料に電気的に接続可能な電極と、電極が金属パイプ材料に電気的に接続された状態において、電極を介して金属パイプ材料に通電可能な電力供給部と、を備える成形装置が記載されている。この成形装置は、金属パイプ材料に通電することで生じるジュール熱によって、金属パイプ材料を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した成形装置では、金属パイプ材料に通電する際に、電極も電極自体に生じるジュール熱によって加熱される。また、電極は、加熱された金属パイプ材料からの熱伝導によっても加熱される。
【0005】
ところで、電極が加熱されると以下の問題が生じる。すなわち、電極が加熱されると電極の抵抗値が高くなり金属パイプ材料に流れる電流値が低くなるため、金属パイプ材料の加熱効率が悪化する。また、電極の温度変化に応じて電極の抵抗値が変動するため、金属パイプ材料への電流供給の制御が難しくなる。更に、一般的に電極には金型と電気的に絶縁するための絶縁材が設けられており、電極が加熱されると絶縁材の劣化が促進される。従って、電極が加熱されることによる電極の温度上昇を抑制することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、電極の温度上昇を抑制することができる成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形装置は、一組の金型と、一組の金型間に配置される金属パイプ材料に電気的に接続可能な電極と、電極が金属パイプ材料に電気的に接続された状態において、電極を介して金属パイプ材料に通電可能な電力供給部と、電力供給部と電極との間に電気的に接続され、電力供給部により通電されることによって電極側から吸熱すると共に電力供給部側に放熱する通電放熱部と、を備える。
【0008】
この成形装置では、電力供給部により電極を介して金属パイプ材料に通電することで生じるジュール熱によって、金属パイプ材料を加熱する。このとき、電力供給部と電極との間に電気的に接続された通電放熱部にも通電されることとなる。通電放熱部は、通電されると電極側から吸熱する。このため、電極の温度上昇を抑制することができる。
【0009】
本発明の成形装置では、電力供給部は、電力を出力する電源と、電源によって出力された電力を伝送するブスバーと、ブスバーを冷却する冷却部と、を有し、通電放熱部は、ブスバーと電極との間に電気的に接続されていてもよい。ここで、通電放熱部は通電されると電力供給部側に放熱するため、電力供給部側に設けられたブスバーが加熱される。しかしながら、この成形装置では、冷却部によってブスバーが冷却される。このため、ブスバーの温度上昇を抑制することができる。
【0010】
本発明の成形装置では、通電放熱部は、電極に接触していてもよい。この場合、通電放熱部が通電されることにより電極から直接吸熱することができる。よって、電極の温度上昇を一層抑制することができる。
【0011】
本発明の成形装置では、通電放熱部は、電力供給部と電極との間に複数並列に電気的に接続されていてもよい。この場合、電力供給部が通電されることにより電極側から吸熱することができる熱量を増大させることができる。よって、電極の温度上昇を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極の温度上昇を抑制することができる成形装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】電極周辺の拡大図であって、(a)は電極が金属パイプ材料を保持した状態を示す図、(b)は電極にシール部材を押し付けた状態を示す図、(c)は電極の正面図である。
【
図3】成形装置の加熱機構の配置を示す平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による成形装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
〈成形装置の構成〉
図1は、成形装置の概略構成図である。
図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11からなるブロー成形金型(金型)13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
【0016】
ブロー成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)16を備える。下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。
【0017】
更に、下型11の左右端(
図1における左右端)近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(下側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置されることで、下側電極17,18は、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14に接触する。これにより、下側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0018】
下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
【0019】
ブロー成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド81に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)24を備える。このキャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられる。
【0020】
上型12の左右端(
図1における左右端)近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(上側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置された状態において、上側電極17,18は、下方に移動することで、上型12と下型11との間に配置された金属パイプ材料14に接触する。これにより、上側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0021】
上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材101がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材101は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータの可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80のスライド81側に保持されている。
【0022】
パイプ保持機構30の右側部分において、電極18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されていて(
図2参照)、当該凹溝18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の右側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0023】
パイプ保持機構30の左側部分において、電極17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されていて(
図2参照)、当該凹溝17aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の左側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0024】
図1に示されるように、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、上記スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その中心から離間した位置にて左右端から突出して延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
【0025】
加熱機構50は、
図3に示されるように、電力供給部55と、通電放熱部56とを備える。電力供給部55は、電極17,18が金属パイプ材料14に電気的に接続された状態において、通電放熱部56及び電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能とされている。電力供給部55は、直流電流Cとして電力を出力する電源51と、電源51に接続され、電源51によって出力された電力を電源51と通電放熱部56との間で伝送するブスバー52と、ブスバー52に介設されたスイッチ53と、ブスバー52を冷却する冷却部57と、を有する。
【0026】
通電放熱部56は、n型ペルチェ素子56aを一対の銅製部材56c,56cで両側から挟んで構成されたn型ペルチェ電流リード56Aと、p型ペルチェ素子56bを一対の銅製部材56c,56cで両側から挟んで構成されたp型ペルチェ電流リード56Bと、を有する。n型ペルチェ素子56aは、例えばBi、Te、Ce、Sb、Mg、及びSiのうちの少なくとも1つの元素を含有する金属(例えば、Bi-Te、Ce-Sb-Te等)によって構成されていてもよい。p型ペルチェ素子56bは、例えばBi、Te、Co、Sb、Mn、及びSiのうちの少なくとも1つの元素を含有する金属(例えば、Bi-Te、Co-Sb等)によって構成されていてもよい。
【0027】
この加熱機構50では、電源51から出力された直流電流Cは、ブスバー52によって電送され、n型ペルチェ電流リード56Aを介して電極17に入力される。そして、直流電流Cは、金属パイプ材料14を通過して、電極18に入力される。そして、直流電流Cは、p型ペルチェ電流リード56Bを介し、ブスバー52によって伝送されて電源51に入力される。
【0028】
n型ペルチェ電流リード56Aは、直流電流Cが通電されることによって、n型ペルチェ素子56aと直流電流Cの下流側の銅製部材56cとの境界部B1から吸熱すると共に、n型ペルチェ素子56aと直流電流Cの上流側の銅製部材56cとの境界部B2に放熱する。一方、p型ペルチェ電流リード56Bは、直流電流Cが通電されることによって、p型ペルチェ素子56bと直流電流Cの上流側の銅製部材56cとの境界部B3から吸熱すると共に、p型ペルチェ素子56bと直流電流Cの下流側の銅製部材56cとの境界部B4に放熱する。
【0029】
n型ペルチェ電流リード56Aは、ブスバー52と電極17との間に電気的に接続されている。より具体的には、n型ペルチェ電流リード56Aは、直流電流Cの上流側の銅製部材56cがブスバー52の電源51側の端部52aに接触するように設けられている。また、n型ペルチェ電流リード56Aは、直流電流Cの下流側の銅製部材56cが電極17に接触するように設けられている。これにより、n型ペルチェ電流リード56Aは、電力供給部55により通電されることによって電極17側から吸熱すると共に電力供給部55側に放熱する。
【0030】
p型ペルチェ電流リード56Bは、ブスバー52と電極18との間に電気的に接続されている。より具体的には、p型ペルチェ電流リード56Bは、直流電流Cの下流側の銅製部材56cがブスバー52の電源51側の端部52bに接触するように設けられている。また、p型ペルチェ電流リード56Bは、直流電流Cの上流側の銅製部材56cが電極18に接触するように設けられている。これにより、p型ペルチェ電流リード56Bは、電力供給部55により通電されることによって電極18側から吸熱すると共に電力供給部55側に放熱する。
【0031】
冷却部57は、ブスバー52を空冷するための機構であり、より具体的には、ブスバー52の表面に立設された複数のフィンである。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を焼入れ温度(AC3変態点温度以上)まで加熱する。
【0032】
図1に戻り、一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに合わさる形状に構成されている(
図2参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは
図2(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
【0033】
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14を膨張させるための作動圧力を有するガスを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。
【0034】
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、
図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、駆動機構80及びスイッチ53等を制御する。
【0035】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0036】
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、
図1~
図3を参照して、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。最初に、焼入れ可能な鋼種の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
【0037】
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。この挟持は電極17,18に形成される凹溝17a,18a、及び絶縁材91,101に形成される凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。
【0038】
なお、このとき、
図2(a)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している。また、上側電極17,18の下面と下側電極17,18の上面とは、それぞれ互いに接触している。ただし、金属パイプ材料14の両端部全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に電極17,18が当接するような構成であってもよい。
【0039】
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50のスイッチ53をONにする。そうすると、電力供給部55の電源51からブスバー52及び通電放熱部56を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。また、これと共に、電極17,18に存在する抵抗により、電極17,18自体がジュール熱によって発熱する。更に、電極17,18は、加熱された金属パイプ材料14からの熱伝導によっても加熱される。
【0040】
このとき、通電放熱部56は、電力供給部55により通電されることによって電極17,18側の境界部B1,B3から吸熱すると共に電力供給部55側の境界部B2,B4に放熱する。なお、熱電対21の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御される。
【0041】
続いて、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対してブロー成形金型13を閉じる。これにより、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とが組み合わされ、下型11と上型12との間のキャビティ部内に金属パイプ材料14が配置密閉される。
【0042】
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする。このとき、
図2(b)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面18bに沿うように漏斗状に変形する。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面17bに沿うように漏斗状に変形する。シール完了後、ブロー成形金型13を閉じると共に、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティ部の形状に沿うように成形する。
【0043】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。
【0044】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0045】
上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行い、型開きを行うことにより、例えば略矩形筒状の本体部を有する金属パイプを得る。
【0046】
〈成形装置の作用効果〉
以上説明したように、成形装置10では、電力供給部55により電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電することで生じるジュール熱によって、金属パイプ材料14を加熱する。このとき、電力供給部55と電極17,18との間に電気的に接続された通電放熱部56にも通電されることとなる。通電放熱部56は、通電されると電極17,18側から吸熱する。このため、電極17,18の温度上昇を抑制することができる。
【0047】
また、成形装置10では、電極17,18の温度上昇を抑制するために、電極17,18を水冷するのではなく、ペルチェ素子によるペルチェ効果を利用している。一般的に電極17,18を水冷する場合には、冷却水等による漏電又は短絡を抑制するために電極17,18等の絶縁を行う必要があり、その結果、電極17,18の周辺の構造が複雑化し易い。これに対して、成形装置10では、電極17,18を水冷しないため、電極17,18の周辺の構造を簡素化することができる。
【0048】
また、成形装置10では、電力供給部55は、電力を出力する電源51と、電源51によって出力された電力を伝送するブスバー52と、ブスバー52を冷却する冷却部57と、を有し、通電放熱部56は、ブスバー52と電極17,18との間に電気的に接続されている。ここで、通電放熱部56は通電されると電力供給部55側に放熱するため、電力供給部55側に設けられたブスバー52が加熱される。しかしながら、この成形装置10では、冷却部57によってブスバー52が冷却される。このため、ブスバー52の温度上昇を抑制することができる。
【0049】
また成形装置10では、通電放熱部56は、電極17,18に接触している。このため、通電放熱部56が通電されることにより電極17,18から直接吸熱することができる。よって、電極17,18の温度上昇を一層抑制することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、n型ペルチェ電流リード56A及びp型ペルチェ電流リード56Bの少なくとも一方において、銅製部材56c,56cに代えて、銅合金(銅と、電気抵抗の小さいAl又はAl合金と、の合金)製の部材が用いられてもよい。
【0051】
また、通電放熱部56は、電極17,18にそれぞれ接触していなくてもよい。例えば、通電放熱部56と電極17,18との間に、ブスバー52とは別のブスバー等が介設されていてもよい。
【0052】
また、冷却部57は、ブスバー52を空冷するためのフィンでなくてもよく、例えば、ブスバー52を水冷するための冷却水路であってもよい。なお、ブスバー52は電極17,18から離れた位置に設けられていることから、冷却水等による漏電又は短絡を抑制するためにブスバー52等の絶縁を行っても、電極17,18の周辺の構造は複雑化し難い。
【0053】
また、通電放熱部56は、電力供給部55と電極17,18との間に複数並列に電気的に接続されていてもよい。この場合、電力供給部55が通電されることにより電極17,18側から吸熱することができる熱量を増大させることができる。よって、電極17,18の温度上昇を一層抑制することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…成形装置、13…ブロー成形金型(金型)、14…金属パイプ材料、17,18…電極、51…電源、52…ブスバー、55…電力供給部、56…通電放熱部、57…冷却部。