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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】半田合金及び半田粉
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/22 20060101AFI20221128BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20221128BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20221128BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B23K35/22 310C
B23K35/26 310A
B23K35/363 C
C22C13/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021007656
(22)【出願日】2021-01-21
(62)【分割の表示】P 2019012696の分割
【原出願日】2014-07-11
(65)【公開番号】P2021073097
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2013215735
(32)【優先日】2013-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上住 義明
(72)【発明者】
【氏名】行田 圭吾
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184169(JP,A)
【文献】特開2009-154170(JP,A)
【文献】特開2009-131872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
C22C 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Snを90.0~99.8wt%含有し、Agを0.1~6wt%を含有し、Asを質量割合30ppm~100ppm含有し、残部がCuである半田合金からなる半田粉と、ロジン系フラックスと、を含有する半田ペーストであって、
前記半田粉は、BET比表面積が0.01~0.10m /gである半田ペースト(但し、Agを2.9wt%、Cuを0.5wt%、Feを3ppm、Asを50ppm、Alを1ppm、Pbを12ppm、Sbを6ppm含み、残部がSnである半田合金からなる半田粉を含むものを除く。)。
【請求項2】
前記半田合金は、Cuを0.1~3.0wt%を含有するものである請求項1に記載の半田ペースト。
【請求項3】
Sn、Ag、Cu及びAsからなり、 Snを90.0~99.8wt%含有し、Agを0.1~6wt%を含有し、Cuを0.1~3.0wt%を含有し、Asを質量割合30ppm~100ppm含有する半田合金からなる半田粉と、ロジン系フラックスと、を含有する半田ペーストであって、
前記半田粉は、BET比表面積が0.01~0.10m /gである半田ペースト(但し、Agを2.9wt%、Cuを0.5wt%、Feを3ppm、Asを50ppm、Alを1ppm、Pbを12ppm、Sbを6ppm含み、残部がSnである半田合金からなる半田粉を含むものを除く。)。
【請求項4】
前記半田合金は、Asを30質量ppm~53質量ppm含有するものである請求項1~3の何れかに記載の半田ペースト。
【請求項5】
前記半田合金は、Ag100質量部に対して0.06~0.30質量部のAsを含むものである請求項1~4の何れかに記載の半田ペースト。
【請求項6】
前記半田合金は、Cu100質量部に対して0.30~1.80質量部のAsを含むものである請求項1~5の何れかに記載の半田ペースト。
【請求項7】
前記半田粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が5μm~50μmである請求項1~の何れかに記載の半田ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田ペーストを作製するための半田合金及び半田粉に関し、特にペースト作製後の粘度上昇を抑制し得る半田合金及び半田粉に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の表面実装では、一般的にスクリーン印刷法やディスペンサ法等によってプリント回路基板に半田ペーストを印刷塗布或いは吐出塗布し、その上に表面実装部品を搭載し、リフロー炉等を用いて加熱溶融させて部品を接続する方法が採られている。また、バンプの原材料にも半田ペーストが用いられるなど、電子部品、電子モジュール、プリント配線板等の製造において、半田ペーストは極めて重要な役割を果たしている。
【0003】
この種の半田ペーストは、ロジン(松脂)、活性剤、増粘剤、溶剤などを混合して加熱溶融させ、自然放置若しくは攪拌しながら冷却して液状のフラックスを調製した後、フラックスの温度が室温まで下がった時点で、フラックスと半田粉とを混合及び攪拌して製造するのが一般的である。
【0004】
ところが、この種の半田ペーストは、半田粉とフラックス中の活性剤等とが反応してペースト粘度が経時的に上昇し、印刷不良、ぬれ不良、接続不良などの様々な問題を招来するという課題を抱えていた。特に近年、環境問題等の観点からSn-Pb系の半田から鉛フリー半田に移行しつつあり、鉛フリー半田の場合にはぬれ性等を確保するために活性の高いフラックスが用いられることが多いため、このような粘度上昇の問題はより一層深刻化したものであった。
また、電子部品の高密度化に伴い、印刷工程において狭ピッチ印刷性や連続印刷性(印刷寿命)等が求められるようになり、このような観点からも半田ペーストの粘度上昇抑制は重要な課題となりつつあった。
【0005】
そこで従来、半田ペーストの経時変化を防止するための方法として、次のような発明が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1(特開昭55-94793号公報)には、半田粉末とフラックスが直接に接触するのを防止する目的で、半田粉末をフラックスに対して難溶性で且つ熱により溶融または破壊される被覆剤(例えばゼラチン)で半田粉末を被覆する方法が開示されている。
【0007】
特許文献2(特開2001-294901号公報)には、表面にリン酸系アニオン界面活性剤を設けたことを特徴とする半田粉末が提案されており、半田合金粉末のまわりにリン酸系アニオン界面活性剤で皮膜を形成し、半田粉末表面をカバーすることによりフラックス中へのZnの溶出を防止することができ、経時変化を少なくすることができる効果が示されている。
【0008】
特許文献3(特開2004-209494号公報)には、半田粒子表面に平均厚さ約2.5~6nmの酸化錫からなる酸化皮膜を形成することにより、ペースト作製後の経時的粘度上昇を抑制し得る半田ペースト用半田粉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭55-94793号公報
【文献】特開2001-294901号公報
【文献】特開2004-209494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、半田ペーストを作製するための半田合金及び半田粉に関し、従来の技術思想とは異なる新たな技術思想に基づき、ペースト作製後の粘度上昇を抑制することができる、新たな半田合金及び半田粉を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、Snと、Ag、Bi、Sb、Zn、In及びCuからなる群から選ばれる1種又は2種以上と、を含み、かつ、20ppm~100ppmのAsを含むことを特徴とする半田合金を提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明が提案する半田合金は、Snを主成分とするSn系半田合金に微量のAs(砒素)を含有させることで、半田ペースト作製後の粘度上昇を抑制することができるようにしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。ただし、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<本半田合金>
本実施形態の一例に係る半田合金(「本半田合金」と称する)は、Snを主成分とし、微量のAs(砒素)を含有していれば、他の構成元素は、半田として機能し得る金属原料の組合せからなるものであれば特に限定するものではない。
【0015】
なお、「半田としての機能」とは、金属材料を接合(ろう付け)することができる機能、すなわち、接合する金属より低融点を有し、溶融し流動して固化することにより、金属材料どうしを接合できる機能を意味する。
【0016】
Sn及びAs(砒素)以外の他の組成としては、例えば、Ag、Bi、Sb、Zn、In及びCuからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む組成であればよい。
具体的には、Sn-Sb系合金、Sn-Bi系合金、Sn-Zn系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag系合金或いはこれらの合金にAg、Sb、Bi、Ga、Ge、Zn、Cu、Zn、In等の他元素のいずれか一種又は二種以上を組み合わせた半田合金(例えばSn-Ag-Cu系合金、Sn-Ag-Cu-Bi系合金、Sn-Ag-Cu-Bi-In系合金、Sn-Ag-Bi-In系合金など)、その他を採用することができる。
【0017】
本半田合金においては、20ppm~100ppmのAsを含むことが重要である。Asの含有量が多ければ多いほど、半田ペースト作製後の粘度上昇を抑制することができる一方、Asの含有量が100ppmより多くなっても、粘度上昇抑制効果が高まらず、逆に溶融し難くなるなどの問題が生じる可能性がある。
かかる観点から、Asの含有量は、20ppm~100ppmであることが重要であり、中でも30ppm以上或いは95ppm以下、その中でも40ppm以上或いは90ppm以下であるのが好ましい。
【0018】
より具体的な例としては、Snを90.0~99.8wt%或いはそれ以上含有し、Agを0.1~6wt%含有し、Asを30ppm~100ppm含有し、残部がBi、Sb、Zn、In及びCuからなる群から選ばれる1種又は2種以上である半田合金を挙げることができる。
このような半田合金の中でも、Ag100質量部に対して0.06~0.30質量部のAsを含むことがより好ましく、中でも特に0.10質量部以上或いは0.29質量部以下、その中でも特に0.11質量部以上或いは0.29質量部以下の割合でAsを含むことがさらに好ましい。
【0019】
また、Snを90.0~99.8wt%或いはそれ以上含有し、Cuを0.1~3.0wt%含有し、Asを30ppm~100ppm含有し、残部がBi、Sb、Zn、In及びAgからなる群から選ばれる1種又は2種以上である半田合金を挙げることができる。
このような半田合金の中でも、Cu100質量部に対して0.30~1.80質量部のAsを含むことがより好ましく、中でも特に0.50質量部以上或いは1.75質量部以下、その中でも特に0.55質量部以上或いは1.70質量部以下の割合でAsを含むことがさらに好ましい。
【0020】
なお、本半田合金は純度99.5%以上、特に純度99.9%以上のものが好ましい。本発明の効果が許められる範囲において不可避不純物の存在は許容されるものである。
【0021】
本半田合金の融点は、特に限定するものではなく、用途に応じて選択すればよい。一般的な半田付作業の条件を考慮すると、120~350℃であるのが好ましく、例えばSn-Bi系合金の場合には特に140~240℃であるのが好ましい。
【0022】
(製造方法)
本半田合金の製法は、特に限定するものではない。あらかじめAsを微量含有する半田合金原料を溶融した後、微粉化処理することが好ましい。この際、微粉化処理としては、例えばガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法、水アトマイズ法、油アトマイズ法、真空アトマイズ法、回転電極法、回転冷却流体法、遠心噴霧法、超音波噴霧法など、溶融物を用いて乾式法或いは湿式法により微粉化された半田合金を用いることができる。
【0023】
<本半田粉>
本半田合金を用いてなる半田粉(「本半田粉」と称する)のD50、すなわち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50は、印刷性の観点から、5μm~50μmであるのが好ましく、特に10μm以上或いは40μm以下であるのが好ましい。
なお、本半田粉の粒径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社 商品名:マイクロトラック)等により測定可能である。
【0024】
(比表面積)
本半田粉の比表面積は、ペーストの粘性、溶融性の観点から、0.01~0.10m/gであるのが好ましく、中でも0.02m/g以上或いは0.04m/g以下であるのがより一層好ましい。
本半田粉の比表面積が上記範囲になるように調製する方法としては、例えば本半田粉の球形化度・粒度をコントロールする方法を挙げることができる。ただし、この方法に限定するものではない。
【0025】
(酸素濃度)
本半田粉の酸素濃度は、ペーストの粘性、溶融性の観点から、50ppm~150ppmであるのが好ましく、中でも91ppm以上或いは133ppm以下、その中でも99ppm以上或いは125ppm以下であるのがより一層好ましい。
本半田粉の酸素濃度が上記範囲になるように調製する方法としては、例えば本半田粉球形化度・粒度をコントロールする方法を挙げることができる。ただし、この方法に限定するものではない。
【0026】
<本半田ペースト>
本半田粉と、フラックスとを混合することにより、半田ペースト(以下「本半田ペースト」と称する。)を得ることができる。例えば、フラックス原料を混合して加熱溶融させ、自然放置若しくは攪拌しながら冷却してフラックスを調製した後、フラックスの温度が室温まで下がった時点で、本半田粉と混合及び攪拌して本半田ペーストを製造することができる。
【0027】
この際、本半田粉とフラックスの混合割合を特に限定するものではない。本半田合金80~95質量部と、フラックス5~20質量部とを混合するのが一般的である。
【0028】
(フラックス)
本半田ペーストに用いるフラックスは、例えばロジン(松脂)、活性剤、増粘剤、溶剤などを混合して調製することができる。より具体的には、これらの成分を混合して加熱溶融させ、自然放置若しくは攪拌しながら冷却して調製することができる。
【0029】
フラックスは、一般的に、フラックスベースとしてのロジン(松脂)、活性剤、増粘剤(チキソ剤)、溶剤などから調製することができる。代表的組成例としては、ロジン40~60質量%、活性剤0.5~3質量%、増粘剤(チキソ剤)3~8質量%、溶剤30~50質量%である。但し、フラックスとして機能するものであれば特に限定するものではない。
【0030】
フラックスベースとしては、例えば、ガムロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、その他各種ロジン誘導体や、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂等の合成樹脂等のいずれか、或いはこれら二種以上の組合せからなる混合物を用いることができる。
【0031】
活性剤としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩(例、ジフェニルグアニジンHBr、ジエチルアミン臭化水素酸塩、トリエタノールアミンHBr、シクロへキシルアミン塩酸塩等)などのアミンハロゲン化塩、或いは、蟻酸、酢酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸、乳酸等の有機モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、グルタミン酸等の有機ジカルボン酸、或いはこれらの無水物、またハロゲン化炭化水素などの誘導体のいずれか、或いはこれら二種以上の組合せからなる混合物を用いることができる。
【0032】
増粘剤(チキソ剤)としては、例えば、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等のいずれか、或いはこれら二種以上の組合せからなる混合物を用いることができる。
その他、増粘目的で半田ペースト用に配合される材料であれば、チキソ剤として用いることができる。
【0033】
溶剤としては、例えばアルコール、ケトン、エステル、芳香族系の溶剤を用いることができる。より具体的には、例えばベンジルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ターピネオール、トルエン、キシレン、テトラリン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルなどの一種又はこれらの二種以上の組合せから混合液を用いることができる。
その他、フラックスベース(ロジン)及び活性剤を溶解し得る媒体であれば、溶剤として用いることができる。
【0034】
本半田ペーストは、常法にしたがって、例えばメタルマスク版等を通して半田印刷機を用いて基板上に半田印刷し、その上に、電子部品を実装してリフロー炉内を通過させることで、熱サイクル環境下に曝されても、熱応力を緩和することができる半田接合部を形成することができる。
【0035】
<用語の説明>
本発明において「不可避不純物」とは、最終製品を得るまでの製造過程において,意図して導入するまでもなく含まれてくる成分の意味であり、10ppm未満の微量成分であって、製品の特性に影響を及ぼさないため、存在するままにされている不純物の意味である。例えば鉄(Fe)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。
【0036】
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例・比較例による半田粉の作製>
表1の組成となるように、それぞれ塊状の純金属である純Sn(3N)、純Ag(3N)、純Cu(3N)、純Bi(3N)、純In(3N)及び純As(4N)を秤量して混合し、アルミナ坩堝を用いてAr雰囲気下で熔解させた。熔解後、遠心噴霧によって、D50を約25μmとした半田粉(サンプル)を作製した。
なお、作製した半田粉についてICP分析を行い、表1の組成になったことを確かめた。また、不可避不純物である鉄(Fe)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)及びアルミニウム(Al)の含有量はそれぞれ10ppm未満であることを同時に確認した。
【0039】
<D10、D50、D90の測定>
半田粉(サンプル)2gをIPA50mL中に入れて超音波を照射して(3分間)分散させた後、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「マイクロトラック(商品名)MT-3000EXII(型番)」)により、体積基準粒度分布によるD10、D50、D90を測定した。
【0040】
<比表面積の測定>
Mountech社製の比表面積測定装置(Macsorb(HM model-1208)を用いて、JIS R 1626:1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2流動法の(3.5)一点法」に準拠して、半田粉のBET比表面積(SSA(BET))の測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。
【0041】
<酸素濃度の測定>
半田粉(サンプル)の酸素濃度を、酸素窒素分析装置(堀場製作所社製 製品名「EMGA620」)を使用して測定した。
【0042】
<半田ペーストの作製及び粘度上昇率の測定>
フラックス(アルコールベースのロジン系)10質量部と、実施例・比較例で得られた半田粉90質量部とを混合して攪拌して半田ペーストを作製し、粘度変化を測定した。
【0043】
半田ペーストの粘度は、作製した半田ペーストを25℃に保持し、スパイラル式粘度計(マルコム社製、商品名:PCU-205)を使用して、回転数10rpmの条件で初期粘度(単位:Pa・s)を測定した。
また、作製し半田ペーストを25℃で2週間保持し、前記同様にスパイラル式粘度計(マルコム社製、商品名:PCU-205)を使用して、回転数10rpmの条件で2週間後の粘度(単位:Pa・s)を測定した。
そして、2週間後の粘度(単位:Pa・s)を初期粘度(単位:Pa・s)で除した値を粘度上昇率(%)とし、結果を表1に示した。
この際、2週間後の粘度上昇率(%)が、170(%)以上であった場合を「×(poor)」と評価し、140(%)以上170(%)未満であった場合を「○(:good)」と評価し、140(%)未満であった場合を「◎(:very good)と評価した。
【0044】
<半田ペーストの溶融性評価>
作製した半田ペーストを、リフロー炉(山陽精工製 SMTscope SK-8000)を用いて窒素雰囲気中で昇温速度120℃/minで250℃まで加熱した後、100℃/minで室温まで冷却させ、生成された溶融物の外観を20倍の顕微鏡で観察することにより溶融性を評価した。
この際、溶融しきれない半田粒子が観察されない場合を「○(:good)」、溶融しきれない半田粒子が観察された場合を「×(poor)」と評価した。
【0045】
【表1】
【0046】
上記試験及びこれまで発明者が行ってきた試験の結果、半田合金に微量、すなわち20ppm~100ppm程度のAsを添加することで、半田ペースト作製後の粘度上昇を抑制することができることが分かった。
なお、上記実施例は、3種類の組成についての実施例であるが、これまで発明者が行ってきた試験の結果からすると、少なくとも、Snと、Ag、Bi、Sb、Zn、In及びCuからなる群から選ばれる1種又は2種以上とを含む組成の半田合金については、上記実施例と同様の効果が得られるものと考えることができる。