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特許7183328発電セル及び樹脂枠付き電解質膜・電極構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】発電セル及び樹脂枠付き電解質膜・電極構造体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0273 20160101AFI20221128BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20221128BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20221128BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221128BHJP
【FI】
H01M8/0273
H01M8/0258
H01M8/1004
H01M8/10 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021054485
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022151929
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小田 優
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 嵩瑛
(72)【発明者】
【氏名】青木 智史
(72)【発明者】
【氏名】山脇 琢磨
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-146434(JP,A)
【文献】特開2019-079736(JP,A)
【文献】特開2014-182967(JP,A)
【文献】国際公開第2013/171939(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に接合された樹脂枠部材とを有する樹脂枠付き電解質膜・電極構造体と、
前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の一方面に積層された第1セパレータと、
前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の他方面に積層された第2セパレータと、
を備えた発電セルであって、
前記電解質膜・電極構造体は、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に配置される第1電極と、前記電解質膜の他方面に配置され前記第1電極よりも平面寸法が大きい第2電極とを有し、
前記第1セパレータは、前記電解質膜・電極構造体の発電領域に対向して第1反応ガスを流すための第1反応ガス流路と、前記発電セルの厚み方向に貫通した第1連通孔と、前記第1反応ガス流路と前記第1連通孔とを連通する第1バッファ部とを有し、
前記第2セパレータは、前記電解質膜・電極構造体の前記発電領域に対向して第2反応ガスを流すための第2反応ガス流路と、前記発電セルの厚み方向に貫通した第2連通孔と、前記第2反応ガス流路と前記第2連通孔とを連通する第2バッファ部とを有し、
前記第1電極の外周部は、前記第1バッファ部よりも前記第1反応ガス流路側である内方に位置し、
前記第2電極の外周部は、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体と前記第2セパレータとの積層方向において、前記樹脂枠部材と前記第2バッファ部との間に配置されている、発電セル。
【請求項2】
請求項1記載の発電セルにおいて、
前記第2バッファ部の深さは、前記第1バッファ部の深さよりも深い、発電セル。
【請求項3】
請求項2記載の発電セルにおいて、
前記第1バッファ部には、前記第2バッファ部に流れる前記第2反応ガスよりも高い圧力の前記第1反応ガスが流れる、発電セル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の発電セルにおいて、
前記樹脂枠部材は、第1枠状シートと、前記第1枠状シートに接合された第2枠状シートとを有する、発電セル。
【請求項5】
請求項4記載の発電セルにおいて、
前記第1電極は、前記電解質膜の一方面に配置された第1電極触媒層を有し、
前記第2電極は、前記電解質膜の他方面に配置された第2電極触媒層を有し、
前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とにより触媒被覆膜が構成され、
前記触媒被覆膜の外周部における前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とが、前記第1枠状シートの内周部と前記第2枠状シートの内周部とにより挟持されている、発電セル。
【請求項6】
請求項4記載の発電セルにおいて、
前記第1電極は、前記電解質膜の一方面に配置された第1電極触媒層と、前記第1電極触媒層に重なる第1ガス拡散層とを有し、
前記第2電極は、前記電解質膜の他方面に配置された第2電極触媒層と、前記第2電極触媒層に重なり前記第1ガス拡散層よりも平面寸法が大きい第2ガス拡散層とを有し、
前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とは平面寸法が互いに異なっており、
前記第1枠状シートの内周部は、前記電解質膜・電極構造体の外周部に重なる第1重なり部を有するとともに、前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層のうち大きい電極触媒層と前記第1ガス拡散層とにより挟持され、
前記第2枠状シートの内周部は、前記電解質膜・電極構造体の前記外周部に重なる第2重なり部を有するとともに、前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層のうち小さい電極触媒層と前記第2ガス拡散層とにより挟持されている、発電セル。
【請求項7】
請求項6記載の発電セルにおいて、
前記第1枠状シートと前記第2枠状シートとは、接着層により接合されている、発電セル。
【請求項8】
請求項7記載の発電セルにおいて、
前記第1枠状シートの内周部に設けられた前記接着層は、前記大きい電極触媒層に当接しており、
前記第2枠状シートの内周部に設けられた前記接着層は、前記小さい電極触媒層に当接している、発電セル。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の発電セルにおいて、
前記樹脂枠部材は、1枚の枠状シートによって構成されている、発電セル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の発電セルにおいて、
前記第1反応ガス流路及び前記第2反応ガス流路の長さ方向における前記第2電極の前記第1電極よりも外方に突出する第1突出寸法は、前記第1反応ガス流路及び前記第2反応ガス流路の幅方向における前記第2電極の前記第1電極よりも外方に突出する第2突出寸法よりも大きい、発電セル。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の発電セルにおいて、
前記第1バッファ部又は前記第2バッファ部は、ガイド流路用突起及びエンボスの一方又は両方を有する、発電セル。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の発電セルにおいて、
前記樹脂枠部材の内周部と前記第1電極の外周部とが重なる重なり部は、前記第1反応ガス流路よりも外側に位置する、発電セル。
【請求項13】
電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に接合された樹脂枠部材とを有する樹脂枠付き電解質膜・電極構造体であって、
前記電解質膜・電極構造体は、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に配置される第1電極と、前記電解質膜の他方面に配置され前記第1電極よりも平面寸法が大きい第2電極とを有し、
前記第1電極は、前記電解質膜の一方面に配置された第1電極触媒層と、前記第1電極触媒層に重なる第1ガス拡散層とを有し、
前記第2電極は、前記電解質膜の他方面に配置された第2電極触媒層と、前記第2電極触媒層に重なり前記第1ガス拡散層よりも平面寸法が大きい第2ガス拡散層とを有し、
前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とにより触媒被覆膜が構成され、
前記樹脂枠部材は、第1枠状シートと、前記第1枠状シートに接合された第2枠状シートとを有し、
前記触媒被覆膜の外周部における前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とが、前記第1枠状シートの内周部と前記第2枠状シートの内周部とにより挟持されており、
前記樹脂枠部材は、前記触媒被覆膜に重ならない非重なり部を有し、
前記第1ガス拡散層の外周端は、前記非重なり部よりも内方に位置し、
前記第2ガス拡散層の外周部は、前記非重なり部に重なる、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電セル及び樹脂枠付き電解質膜・電極構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の一方面にアノード電極が配置され、電解質膜の他方面にカソード電極が配置されてなる電解質膜・電極構造体(MEA)と、MEAの両側にそれぞれ配置されたセパレータ(バイポーラ板)とを備えた燃料電池(発電セル)は公知である。通常、所定の数の発電セルが積層されることにより燃料電池スタックが構成される。燃料電池スタックは、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池車両(燃料電池電気自動車等)に組み込まれている。
【0003】
燃料電池では、電解質膜・電極構造体の発電領域に沿って反応ガスを流す反応ガス流路と、燃料電池の積層方向に沿って反応ガスを流す連通孔と、反応ガス流路と連通孔との間で反応ガスを流路幅方向に配流又は集流するためのバッファ部とが設けられる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-172924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アノード電極の外周部及びカソード電極の外周部がバッファ部に重なる位置に配置されている場合、アノード電極及びカソード電極が存在する箇所でのバッファ部の深さ(流路高さ)が制限され、圧力損失が大きくなり、発電領域でのガス分配が不均一となる。一方、バッファ部の深さの確保を優先すると、燃料電池の単セル当たりの厚みが増大する。
【0006】
本発明は、単セル当たりの厚みの増大を抑制しつつ、バッファ部での圧力損失の増大を抑制し、バッファ部の性能を高めることができる発電セル及び樹脂枠付き電解質膜・電極構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に接合された樹脂枠部材とを有する樹脂枠付き電解質膜・電極構造体と、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の一方面に積層された第1セパレータと、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の他方面に積層された第2セパレータと、を備えた発電セルであって、前記電解質膜・電極構造体は、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に配置される第1電極と、前記電解質膜の他方面に配置され前記第1電極よりも平面寸法が大きい第2電極とを有し、前記第1セパレータは、前記電解質膜・電極構造体の発電領域に対向して第1反応ガスを流すための第1反応ガス流路と、前記発電セルの厚み方向に貫通した第1連通孔と、前記第1反応ガス流路と前記第1連通孔とを連通する第1バッファ部とを有し、前記第2セパレータは、前記電解質膜・電極構造体の前記発電領域に対向して第2反応ガスを流すための第2反応ガス流路と、前記発電セルの厚み方向に貫通した第2連通孔と、前記第2反応ガス流路と前記第2連通孔とを連通する第2バッファ部とを有し、前記第1電極の外周部は、前記第1バッファ部よりも前記第1反応ガス流路側である内方に位置し、前記第2電極の外周部は、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体と前記第2セパレータとの積層方向において、前記樹脂枠部材と前記第2バッファ部との間に配置されている、発電セルである。
【0008】
本発明の第2の態様は、電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に接合された樹脂枠部材とを有する樹脂枠付き電解質膜・電極構造体であって、前記電解質膜・電極構造体は、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に配置される第1電極と、前記電解質膜の他方面に配置され前記第1電極よりも平面寸法が大きい第2電極とを有し、前記第1電極は、前記電解質膜の一方面に配置された第1電極触媒層と、前記第1電極触媒層に重なる第1ガス拡散層とを有し、前記第2電極は、前記電解質膜の他方面に配置された第2電極触媒層と、前記第2電極触媒層に重なり前記第1ガス拡散層よりも平面寸法が大きい第2ガス拡散層とを有し、前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とにより触媒被覆膜が構成され、前記樹脂枠部材は、第1枠状シートと、前記第1枠状シートに接合された第2枠状シートとを有し、前記触媒被覆膜の外周部における前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とが、前記第1枠状シートの内周部と前記第2枠状シートの内周部とにより挟持されており、前記樹脂枠部材は、前記触媒被覆膜に重ならない非重なり部を有し、前記第1ガス拡散層の外周端は、前記非重なり部よりも内方に位置し、前記第2ガス拡散層の外周部は、前記非重なり部に重なる、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1電極の外周部は第1バッファ部よりも第1反応ガス流路側である内方に位置し、第2電極の外周部は樹脂枠部材と第2バッファ部との間に配置されている。このため、第1バッファ部においては第1電極の外周部が重ならないため、第1バッファ部の深さ(流路高さ)を確保しやすい。従って、単セル当たりの厚みの増大を抑制しつつ、バッファ部での圧力損失の増大を抑制し、バッファ部の性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る発電セルの分解斜視図である。
図2図1に示した発電セルの断面図である。
図3】第2セパレータの平面図である。
図4】他の態様(第1変形例)に係る発電セルの断面図である。
図5】他の態様(第2変形例)に係る発電セルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、発電セル(燃料電池)10は、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体(以下、「樹脂枠付きMEA12」という)と、樹脂枠付きMEA12の両側にそれぞれ配置されたセパレータ14とを備える。発電セル10は、例えば、横長(又は縦長)の長方形状の固体高分子型燃料電池である。
【0012】
複数の発電セル10は、例えば、水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に積層されるとともに、積層方向の締付荷重(圧縮荷重)が付与されて、燃料電池スタックが構成される。燃料電池スタックは、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池電気自動車(図示せず)に搭載される。
【0013】
発電セル10の矢印B方向(水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔18a、冷却媒体入口連通孔20a及び燃料ガス出口連通孔16bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔18aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、冷却媒体入口連通孔20aは、冷却媒体を供給する。燃料ガス出口連通孔16bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス入口連通孔18a、冷却媒体入口連通孔20a及び燃料ガス出口連通孔16bは、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0014】
発電セル10の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給する燃料ガス入口連通孔16a、冷却媒体を排出する冷却媒体出口連通孔20b、及び酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口連通孔18bが設けられる。燃料ガス入口連通孔16a、冷却媒体出口連通孔20b及び酸化剤ガス出口連通孔18bは、矢印C方向に配列して設けられる。
【0015】
発電セル10では、樹脂枠付きMEA12が金属製のセパレータ14により挟持される。以下、樹脂枠付きMEA12の一方面側に配設されたセパレータ14を「第1セパレータ14a」ともいい、樹脂枠付きMEA12の他方面側に配設されたセパレータ14を「第2セパレータ14b」ともいう。第1セパレータ14a及び第2セパレータ14bは、横長(又は縦長)の長方形状を有する。
【0016】
樹脂枠付きMEA12は、電解質膜・電極構造体12a(以下、「MEA12a」という)と、MEA12aの外周部に接合されるとともに該外周部を周回する樹脂枠部材22とを備える。
【0017】
図2に示すように、MEA12aは、電解質膜23と、電解質膜23の一方の面に設けられたアノード電極24と、電解質膜23の他方の面に設けられたカソード電極26とを有する。電解質膜23は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。電解質膜23は、アノード電極24及びカソード電極26に挟持される。電解質膜23は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。樹脂枠部材22は、その内周部がMEA12aの外周部に接合された平面形状が長方形の枠状の樹脂フィルム(サブガスケット)である。
【0018】
図1に示すように、樹脂枠部材22、第1セパレータ14a及び第2セパレータ14bの矢印B方向の各々の一端部には、燃料ガス出口連通孔16b、酸化剤ガス入口連通孔18a及び冷却媒体入口連通孔20aが設けられる。樹脂枠部材22、第1セパレータ14a及び第2セパレータ14bの矢印B方向の各々の他端部には、燃料ガス入口連通孔16a、酸化剤ガス出口連通孔18b及び冷却媒体出口連通孔20bが設けられる。
【0019】
セパレータ14は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。第1セパレータ14aと第2セパレータ14bとは、外周を溶接、ろう付け、かしめ等により一体に接合され、接合セパレータ32を構成する。互いに隣接する第1セパレータ14aと第2セパレータ14bとの間には、冷却媒体入口連通孔20aと冷却媒体出口連通孔20bとに連通する冷却媒体流路42が、矢印B方向に延在して形成される。
【0020】
第1セパレータ14aの樹脂枠付きMEA12に向かう表面14asには、燃料ガス入口連通孔16aと燃料ガス出口連通孔16bとに連通する燃料ガス流路38が設けられる。具体的に、燃料ガス流路38は、第1セパレータ14aと樹脂枠付きMEA12との間に形成される。燃料ガス流路38は、MEA12aの発電領域に対向して燃料ガスを流すための流路である。燃料ガス流路38は、矢印B方向に延在する複数本の流路用突起38aを有する。各流路用突起38aは波形状を有していてもよい。これらの流路用突起38aの間に、複数本の流路溝が形成される。
【0021】
第1セパレータ14aの表面14asには、燃料ガス入口連通孔16aと燃料ガス流路38とを連通(連結)する第1入口バッファ部39aと、燃料ガス流路38と燃料ガス出口連通孔16bとを連通(連結)する第1出口バッファ部39bとが設けられる。第1入口バッファ部39aは、燃料ガス入口連通孔16aから導入された燃料ガスを燃料ガス流路38の幅方向に配流(分配)する。第1出口バッファ部39bは、燃料ガス流路38を通過した燃料ガスを、燃料ガス流路38の幅方向に集め、燃料ガス出口連通孔16bへと送る。
【0022】
第1入口バッファ部39a及び第1出口バッファ部39bは、それぞれ樹脂枠部材22に向かって突出する複数の凸部50を有する。図1において、複数の凸部50は、複数の線状ガイド流路用突起50tである。複数の凸部50は、点状に分散配置された複数のエンボスであってもよい。以下では、第1入口バッファ部39a及び第1出口バッファ部39bを総称して「第1バッファ部39」と呼ぶ場合がある。
【0023】
第1セパレータ14aの表面14asには、流体(燃料ガス、酸化剤ガス又は冷却媒体)の漏れを防止するための第1シールライン44が第1セパレータ14aと一体に設けられる。第1シールライン44は、第1セパレータ14aの外周部を周回する。第1シールライン44は、樹脂枠部材22に向かって膨出(突出)するとともに、樹脂枠部材22に気密及び液密に当接する。
【0024】
第1シールライン44は、複数のビードシール構造45を有する。複数のビードシール構造45は、燃料ガス流路38を囲む波形状の周縁ビードシール45aと、連通孔16a、16b、18a、18b、20a、20bを個別に囲む複数の連通孔ビード部45bとを有する。周縁ビードシール45aは、燃料ガス流路38、燃料ガス入口連通孔16a及び燃料ガス出口連通孔16bを周回し且つこれらを連通させる。周縁ビードシール45a及び連通孔ビード部45bの平面形状はストレート形状であってもよい。
【0025】
図3に示すように、第2セパレータ14bの樹脂枠付きMEA12に向かう表面14bsには、酸化剤ガス入口連通孔18aと酸化剤ガス出口連通孔18bとに連通する酸化剤ガス流路40が設けられる。具体的に、酸化剤ガス流路40は、第2セパレータ14bと樹脂枠付きMEA12との間に形成される。酸化剤ガス流路40は、MEA12の発電領域に対向して酸化剤ガスを流すための流路である。酸化剤ガス流路40は、矢印B方向に延在する複数本の流路用突起40aを有する。各流路用突起40aは波形状を有していてもよい。これらの流路用突起40aの間に、複数本の流路溝が形成される。
【0026】
第2セパレータ14bの表面14bsには、酸化剤ガス入口連通孔18aと酸化剤ガス流路40とを連通(連結)する第2入口バッファ部41aと、酸化剤ガス流路40と酸化剤ガス出口連通孔18bとを連通(連結)する第2出口バッファ部41bとが設けられる。第2入口バッファ部41aは、酸化剤ガス入口連通孔18aから導入された酸化剤ガスを酸化剤ガス流路40の幅方向に配流(分配)する。第2出口バッファ部41bは、酸化剤ガス流路40を通過した酸化剤ガスを、酸化剤ガス流路40の幅方向に集め、酸化剤ガス出口連通孔18bへと送る。
【0027】
第2入口バッファ部41a及び第2出口バッファ部41bは、それぞれ樹脂枠部材22に向かって突出する複数の凸部52を有する。図3において、複数の凸部52は、複数の線状ガイド流路用突起52tである。複数の凸部52は、点状に分散配置された複数のエンボスであってもよい。以下では、第2入口バッファ部41a及び第2出口バッファ部41bを総称して「第2バッファ部41」と呼ぶ場合がある。
【0028】
第2セパレータ14bの表面14bsには、流体の漏れを防止するため、この第2セパレータ14bの外周部を周回する第2シールライン46が第2セパレータ14bと一体に設けられる。第2シールライン46は、樹脂枠部材22に向かって膨出するとともに、樹脂枠部材22に気密及び液密に当接する。
【0029】
第2シールライン46は、複数のビードシール構造47を有する。複数のビードシール構造47は、波形状の周縁ビードシール47aと、連通孔16a、16b、18a、18b、20a、20bを個別に囲む複数の連通孔ビード部47bとを有する。周縁ビードシール47aは、酸化剤ガス流路40、酸化剤ガス入口連通孔18a及び酸化剤ガス出口連通孔18bを周回し且つこれらを連通させる。周縁ビードシール47a及び連通孔ビード部47bの平面形状はストレート形状であってもよい。
【0030】
次に、図2を参照し、樹脂枠付きMEA12の具体的な構造を説明する。
【0031】
アノード電極24は、電解質膜23の一方の面23aに接合される第1電極触媒層24aと、第1電極触媒層24aに積層される第1ガス拡散層24bとを有する。第1ガス拡散層24bの厚みは、第1電極触媒層24aの厚みよりも相当に厚い。カソード電極26は、電解質膜23の他方の面23bに接合される第2電極触媒層26aと、第2電極触媒層26aに積層される第2ガス拡散層26bとを有する。第2ガス拡散層26bの厚みは、第2電極触媒層26aの厚みよりも相当に厚い。電解質膜23と第1電極触媒層24aと第2電極触媒層26aとにより触媒被覆膜27(CCM:Catalyst Coated Membrane)が構成されている。カソード電極26の平面寸法は、アノード電極24の平面寸法よりも大きい。具体的にはカソード電極26を構成する第2ガス拡散層26bの平面寸法は、アノード電極24を構成する第1ガス拡散層24bの平面寸法よりも大きい。
【0032】
第1電極触媒層24aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第1ガス拡散層24bの表面に一様に塗布されて形成される。第2電極触媒層26aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第2ガス拡散層26bの表面に一様に塗布されて形成される。第1電極触媒層24a及び第2電極触媒層26aの平面形状は、いずれも長方形である。
【0033】
第1電極触媒層24aの平面寸法は、第2電極触媒層26aの平面寸法よりも大きい。従って、第1電極触媒層24aの外周部は、当該外周部の全周に亘って、第2電極触媒層26aの外周端に対して外方に突出している。第1電極触媒層24aの平面寸法は、電解質膜23の平面寸法と略同一である。第2電極触媒層26aの平面寸法は、電解質膜23の平面寸法よりも小さい。従って、第2電極触媒層26aの外周端は、当該外周端の全周に亘って、電解質膜23の外周端よりも内方に位置する。
【0034】
第1ガス拡散層24b及び第2ガス拡散層26bは、カーボンペーパ又はカーボンクロス等から形成される。第1ガス拡散層24b及び第2ガス拡散層26bの平面形状は、いずれも長方形である。第1ガス拡散層24bの平面寸法は、電解質膜23の平面寸法及び第1電極触媒層24aの平面寸法と略同一である。図示しないが、第1ガス拡散層24b及び第2ガス拡散層26bの各々における電解質膜23側の全面にはマイクロポーラス層が形成されている。
【0035】
樹脂枠部材22は、2枚の枠状シート(樹脂シート)を有する。具体的には、樹脂枠部材22は、第1枠状シート22aと、第1枠状シート22aに接合された第2枠状シート22bとを有する。MEA12aにおいて、樹脂枠部材22の内周端(第1枠状シート22aの内周端22ae及び第2枠状シート22bの内周端22be)よりも内側が、発電領域である。
【0036】
第1枠状シート22a及び第2枠状シート22bは樹脂材料により構成される。第1枠状シート22a及び第2枠状シート22bの構成材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)又は変性ポリオレフィン、PI(ポリイミド)等が挙げられる。
【0037】
第1枠状シート22aと第2枠状シート22bとは、接着層22cにより、第1枠状シート22aと第2枠状シート22bの全周に亘って直接接合される。第1枠状シート22aと第2枠状シート22bとは、平面寸法が互いに略同一に設定されている。第1枠状シート22aと第2枠状シート22bとは、平面寸法が互いに異なっていてもよい。第1枠状シート22aと第2枠状シート22bとは、厚みが互いに略同一に設定されている。第1枠状シート22aと第2枠状シート22bとは、厚みが互いに異なっていてもよい。
【0038】
樹脂枠部材22の内周部とアノード電極24の外周部とが重なる重なり部54(具体的には、第1枠状シート22aの内周部と第1ガス拡散層24bの外周部とが重なる部位)は、燃料ガス流路38を構成する流路用突起38aに設けられた段部38sに重なる。段部38sは、流路用突起38aのガス流れ方向(矢印B方向)の端部に設けられており、流路用突起38aの一般部38nよりもベースプレート部15aからの突出高さが低い。一般部38nは、段部38sよりも内方の部分である。段部38sは、第1ガス拡散層24bの外周部を第2ガス拡散層26b側に向かって押さえている。
【0039】
アノード電極24の外周部(第1電極触媒層24aの外周部及び第1ガス拡散層24bの外周部)は、第1バッファ部39よりも内方(燃料ガス流路38側)に位置する。従って、第1バッファ部39の凸部50は、第1ガス拡散層24bの外周部を介さずに、樹脂枠部材22に直接当接している。
【0040】
一方、カソード電極26の外周部(第2ガス拡散層26bの外周部)は、樹脂枠付きMEA12と第2セパレータ14bとの積層方向において、樹脂枠部材22と第2バッファ部41との間に配置されている。従って、第2バッファ部41の凸部52は、第2ガス拡散層26bに当接し、第2ガス拡散層26bを支持している。酸化剤ガス流路40を構成する流路用突起40aは、段部40sを有する。段部40sは、流路用突起40aのガス流れ方向(矢印B方向)の端部に設けられており、流路用突起40aの一般部40nよりもベースプレート部15bからの突出高さが低い。一般部40nは、段部40sよりも内方の部分である。段部40sは、第2バッファ部41の凸部52よりも内方で、第2ガス拡散層26bを第1ガス拡散層24b側に向かって押さえている。
【0041】
このように、第1ガス拡散層24bの外周部が第1バッファ部39よりも内方に位置し、第2ガス拡散層26bの外周部が樹脂枠部材22と第2バッファ部41との間に位置している。第2バッファ部41の深さH2(流路高さ)は、第1バッファ部39の深さH1(流路高さ)よりも深い。すなわち、第2バッファ部41の凸部52の突出高さは、第1バッファ部39の凸部50の突出高さよりも高い。第1バッファ部39の深さH1(凸部50の突出高さ)は、燃料ガス流路38の流路用突起38aの突出高さT1と同程度でもよく、あるいは突出高さT1と異なっていてもよい。第2バッファ部41の深さH2(凸部52の突出高さ)は、酸化剤ガス流路40の流路用突起40aの突出高さT2よりも高い。なお、第2バッファ部41の深さH2は、流路用突起40aの突出高さT2と同じであってもよい。
【0042】
触媒被覆膜27の外周部における電解質膜23と第1電極触媒層24aと第2電極触媒層26aとが、第1枠状シート22aの内周部と第2枠状シート22bの内周部とにより挟持されている。
【0043】
第1枠状シート22aの内周部は、当該内周部の全周に亘って、MEA12aの外周部に重なる第1重なり部22akを有する。第1枠状シート22aの内周端22aeは、第1ガス拡散層24bの外周端24beよりも内方に位置する。第1枠状シート22aの内周部は、第1電極触媒層24aと第1ガス拡散層24bとにより挟持されている。第1枠状シート22aの内周部に設けられた接着層22cは、電解質膜23の一方の面23aに当接している。
【0044】
第2枠状シート22bの内周部は、MEA12aの外周部に重なる第2重なり部22bkを有する。第2枠状シート22bの内周端22beは、第2ガス拡散層26bの外周端26beよりも内方に位置する。第2枠状シート22bの内周部は、第2電極触媒層26aと第2ガス拡散層26bとにより挟持されている。第2枠状シート22bの内周部に設けられた接着層22cは、電解質膜23の他方の面23bに当接している。
【0045】
樹脂枠部材22は、触媒被覆膜27に重ならない非重なり部22fを有する。非重なり部22fは、樹脂枠部材22のうち、触媒被覆膜27の外周端よりも外方の部分である。第1ガス拡散層24bの外周端24beは、樹脂枠部材22の非重なり部22fよりも内方(燃料ガス流路38側)に位置する。一方、第2ガス拡散層26bの外周部は、樹脂枠部材22の非重なり部22fに重なる。
【0046】
図3に示すように、第2ガス拡散層26bの平面寸法は、第1ガス拡散層24bの平面寸法よりも大きい。従って、第2ガス拡散層26bの外周部は、当該外周部の全周に亘って、第1ガス拡散層24bの外周端24beに対して外方に突出している。図3において、第1突出寸法L1は、長方形状の発電セル10(図1)の長手方向(燃料ガス流路38及び酸化剤ガス流路40の長さ方向;B方向)における第2ガス拡散層26bの第1ガス拡散層24bよりも外方に突出する長さである。第2突出寸法L2は、発電セル10の短手方向(燃料ガス流路38及び酸化剤ガス流路40の幅方向;C方向)における第2ガス拡散層26bの第1ガス拡散層24bよりも外方に突出する長さである。第1突出寸法L1は、第2突出寸法L2よりも大きい。なお、第2突出寸法L2はゼロ(発電セル10の短手方向における第1ガス拡散層24bと第2ガス拡散層26bの寸法が同じ)であってもよい。
【0047】
このように構成される発電セル10の動作について、以下に説明する。
【0048】
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔18aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔16aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔20aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0049】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔18aから第2セパレータ14bの酸化剤ガス流路40に導入され、矢印B方向に移動してMEA12aのカソード電極26に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔16aから第1セパレータ14aの燃料ガス流路38に導入され、燃料ガス流路38に沿って矢印B方向に移動し、MEA12aのアノード電極24に供給される。発電セル10に供給される燃料ガスの圧力は、発電セル10に供給される酸化剤ガスの圧力よりも高い。従って、第1バッファ部39には、第2バッファ部41に流れる酸化剤ガスよりも高い圧力の燃料ガスが流れる。
【0050】
MEA12aでは、カソード電極26に供給される酸化剤ガスと、アノード電極24に供給される燃料ガスとが、第2電極触媒層26a及び第1電極触媒層24a内で電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
【0051】
次いで、図1において、カソード電極26に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔18bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極24に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔16bに沿って矢印A方向に排出される。
【0052】
また、冷却媒体入口連通孔20aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ14aと第2セパレータ14bとの間の冷却媒体流路42に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、MEA12aを冷却した後、冷却媒体出口連通孔20bから排出される。
【0053】
本実施形態は、以下の作用効果を奏する。
【0054】
本実施形態では、図2に示すように、アノード電極24の外周部は第1バッファ部39よりも内方(燃料ガス流路38側)に位置し、カソード電極26の外周部は樹脂枠部材22と第2バッファ部41との間に配置されている。このため、第1バッファ部39においてはアノード電極24(第1ガス拡散層24b)の外周部が重ならないため、第1バッファ部39の深さH1(流路高さ)を確保しやすい。従って、単セル当たりの厚みの増大を抑制しつつ、第1バッファ部39での圧力損失の増大を抑制し、第1バッファ部39の性能を高めることができる。
【0055】
第1バッファ部39には、第2バッファ部41に流れる酸化剤ガスよりも高い圧力の燃料ガスが流れる。このため、樹脂枠部材22には、第1バッファ部39側から第2バッファ部41側に向かってガス差圧Pに基づく繰返し応力が作用する。この場合、樹脂枠部材22は第2ガス拡散層26bの外周部によって支持されるため、ガス差圧Pに基づく繰返し応力による樹脂枠部材22の損傷を抑制することができる。また、樹脂枠部材22の厚みをより薄くすることができる。
【0056】
樹脂枠部材22は、第1枠状シート22aと、第1枠状シート22aに接合された第2枠状シート22bとを有する。このような張り合わせ構造により、樹脂枠部材22とアノード電極24及びカソード電極26との重なり部を薄くして接合による段差の拡大を抑制することができる。また、樹脂枠部材22の強度を向上させることができる。
【0057】
触媒被覆膜27の外周部における電解質膜23と第1電極触媒層24aと第2電極触媒層26aとが、第1枠状シート22aの内周部と第2枠状シート22bの内周部とにより挟持されている。このため、セパレータ14に由来する鉄成分(Feコンタミ)が、触媒被覆膜27の外端部を介して電解質膜23(発電領域)に入り込むことを防止することができ、電解質膜23の劣化を抑制することができる。
【0058】
樹脂枠部材22の内周部とアノード電極24の外周部とが重なる重なり部54は、流路用突起38aの一般部38nよりも低い段部38sに重なる。このため、重なり部54での局所的な面圧上昇を回避することができる。
【0059】
図4に示す態様(第1変形例)に係る発電セル10Aの樹脂枠付きMEA12Aにおいて、第1電極触媒層24aの外周部及び第2電極触媒層26aの外周部は、第1枠状シート22aの内周部と第2枠状シート22bの内周部との間に配置されている。第1電極触媒層24aの外周部は、第1枠状シート22aの内周部と電解質膜23の外周部との間に配置されている。第1枠状シート22aの内周部は、接着層22cを介して第1電極触媒層24aの外周部に接合されている。第2電極触媒層26aの外周部は、第2枠状シート22bの内周部と電解質膜23の外周部との間に配置されている。第2枠状シート22bの内周部は、接着層22cを介して第2電極触媒層26aの外周部及び電解質膜23の外周部(他方の面23b)に接合されている。従って、第2電極触媒層26aの外端面と電解質膜23の外端面との間には接着層22cが充填されている。
【0060】
図5に示す態様(第2変形例)に係る発電セル10Bの樹脂枠付きMEA12Bにおいて、樹脂枠部材60は、1枚の樹脂製の枠状シート62によって構成されている。枠状シート62は、接着層22cを介して電解質膜23の外周部に接合されている。図5の態様によれば、樹脂枠部材60の構造を簡素化することができる。
【0061】
上記の実施形態をまとめると以下のようになる。
【0062】
上記の実施形態は、電解質膜・電極構造体(12a)と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に接合された樹脂枠部材(22)とを有する樹脂枠付き電解質膜・電極構造体(12)と、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の一方面に積層された第1セパレータ(14a)と、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の他方面に積層された第2セパレータ(14b)と、を備えた発電セル(10)であって、前記電解質膜・電極構造体は、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に配置される第1電極(24)と、前記電解質膜の他方面に配置され前記第1電極よりも平面寸法が大きい第2電極(26)とを有し、前記第1セパレータは、前記電解質膜・電極構造体の発電領域に対向して第1反応ガスを流すための第1反応ガス流路(38)と、前記発電セルの厚み方向に貫通した第1連通孔(16a、16b)と、前記第1反応ガス流路と前記第1連通孔とを連通する第1バッファ部(39)とを有し、前記第2セパレータは、前記電解質膜・電極構造体の前記発電領域に対向して第2反応ガスを流すための第2反応ガス流路(40)と、前記発電セルの厚み方向に貫通した第2連通孔(18a、18b)と、前記第2反応ガス流路と前記第2連通孔とを連通する第2バッファ部(41)とを有し、前記第1電極の外周部は、前記第1バッファ部よりも前記第1反応ガス流路側である内方に位置し、前記第2電極の外周部は、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体と前記第2セパレータとの積層方向において、前記樹脂枠部材と前記第2バッファ部との間に配置されている、発電セルを開示している。
【0063】
前記第2バッファ部の深さ(H2)は、前記第1バッファ部の深さ(H1)よりも深い。
【0064】
前記第1バッファ部には、前記第2バッファ部に流れる前記第2反応ガスよりも高い圧力の前記第1反応ガスが流れる。
【0065】
前記樹脂枠部材は、第1枠状シート(22a)と、前記第1枠状シートに接合された第2枠状シート(22b)とを有する。
【0066】
前記第1電極は、前記電解質膜の一方面に配置された第1電極触媒層(24a)を有し、前記第2電極は、前記電解質膜の他方面に配置された第2電極触媒層(24a)を有し、前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とにより触媒被覆膜(27)が構成され、前記触媒被覆膜の外周部における前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とが、前記第1枠状シートの内周部と前記第2枠状シートの内周部とにより挟持されている。
【0067】
前記第1電極は、前記電解質膜の一方面に配置された第1電極触媒層(24a)と、前記第1電極触媒層に重なる第1ガス拡散層(24b)とを有し、前記第2電極は、前記電解質膜の他方面に配置された第2電極触媒層(26a)と、前記第2電極触媒層に重なり前記第1ガス拡散層よりも平面寸法が大きい第2ガス拡散層(26b)とを有し、前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とは平面寸法が互いに異なっており、前記第1枠状シートの内周部は、前記電解質膜・電極構造体の外周部に重なる第1重なり部(22ak)を有するとともに、前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層のうち大きい電極触媒層と前記第1ガス拡散層とにより挟持され、前記第2枠状シートの内周部は、前記電解質膜・電極構造体の前記外周部に重なる第2重なり部(22bk)を有するとともに、前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層のうち小さい電極触媒層と前記第2ガス拡散層とにより挟持されている。
【0068】
前記第1枠状シートと前記第2枠状シートとは、接着層(22c)により接合されている。
【0069】
前記第1枠状シートの内周部に設けられた前記接着層は、前記大きい電極触媒層に当接しており、前記第2枠状シートの内周部に設けられた前記接着層は、前記小さい電極触媒層に当接している。
【0070】
前記樹脂枠部材は、1枚の枠状シート(62)によって構成されている。
【0071】
前記第1反応ガス流路及び前記第2反応ガス流路の長さ方向における前記第2電極の前記第1電極よりも外方に突出する第1突出寸法(L1)は、前記第1反応ガス流路及び前記第2反応ガス流路の幅方向における前記第2電極の前記第1電極よりも外方に突出する第2突出寸法(L2)よりも大きい。
【0072】
前記第1バッファ部又は前記第2バッファ部は、ガイド流路用突起(50t、52t)及びエンボスの一方又は両方を有する。
【0073】
前記樹脂枠部材の内周部と前記第1電極の外周部とが重なる重なり部54は、前記第1反応ガス流路よりも外側に位置する。
【0074】
上記の実施形態は、電解質膜・電極構造体(12a)と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に接合された樹脂枠部材(22)とを有する樹脂枠付き電解質膜・電極構造体(12)であって、前記電解質膜・電極構造体は、電解質膜(23)と、前記電解質膜の一方面に配置される第1電極(24)と、前記電解質膜の他方面に配置され前記第1電極よりも平面寸法が大きい第2電極(26)とを有し、前記第1電極は、前記電解質膜の一方面に配置された第1電極触媒層(24a)と、前記第1電極触媒層に重なる第1ガス拡散層(24b)とを有し、前記第2電極は、前記電解質膜の他方面に配置された第2電極触媒層(26a)と、前記第2電極触媒層に重なり前記第1ガス拡散層よりも平面寸法が大きい第2ガス拡散層(26b)とを有し、前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とにより触媒被覆膜(27)が構成され、前記樹脂枠部材は、第1枠状シート(22a)と、前記第1枠状シートに接合された第2枠状シート(22b)とを有し、前記触媒被覆膜の外周部における前記電解質膜と前記第1電極触媒層と前記第2電極触媒層とが、前記第1枠状シートの内周部と前記第2枠状シートの内周部とにより挟持されており、前記樹脂枠部材は、前記触媒被覆膜に重ならない非重なり部(22f)を有し、前記第1ガス拡散層の外周端(24be)は、前記非重なり部よりも内方に位置し、前記第2ガス拡散層の外周部は、前記非重なり部に重なる、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体を開示している。
【0075】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10、10A…発電セル 12、12A…樹脂枠付き電解質膜・電極構造体
12a…MEA 14a…第1セパレータ
14b…第2セパレータ 22…樹脂枠部材
24…アノード電極 26…カソード電極
39…第1バッファ部 41…第2バッファ部
図1
図2
図3
図4
図5