(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】音響信号によりコンタクト装置の接触状態を判定するための測定デバイスを有するコンタクト装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20221128BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G01N29/07
G01N29/11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021133730
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】10 2020 122 065.0
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン キップ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027560(JP,A)
【文献】特開2003-153899(JP,A)
【文献】特開2013-089596(JP,A)
【文献】特開昭58-156851(JP,A)
【文献】特開昭55-088988(JP,A)
【文献】特開平03-261879(JP,A)
【文献】特開2001-242211(JP,A)
【文献】特開2010-074938(JP,A)
【文献】特開2019-066322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0194191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0254355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
H01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクト装置(1)であって、
前記コンタクト装置(1)の接触状態を判定するための測定デバイス(2)と、
第1の開接触状態(T)で互いに電気的に絶縁され、第2の閉接触状態(K)で互いに電気的に接続される少なくとも2つの電気コンタクト(4)と
、
前記少なくとも2つの電気コンタクト(4)を保持する、電気的に絶縁された共通のキャリア(18)と、を備え、
前記共通のキャリア(18)は、前記少なくとも2つの電気コンタクト(4)の材料よりも低い音響伝達性を有する減衰要素(20)として機能するように構成されており、
前記測定デバイス(2)は、音響信号(28)を前記少なくとも2つの
電気コンタクト(4)のうちの第1のコンタクト(8)に結合するように構成されている音響信号伝送器(6)と、前記少なくとも2つの
電気コンタクト(4)のうちの第2のコンタクト(12)に音伝達方式で接続されている信号受信器(10)と
、を備え
ており、
前記測定デバイス(2)は、前記第1のコンタクト(8)から前記第2のコンタクト(12)へ伝送される、前記音響信号(28)を表す測定信号(30、32)に基づいて前記コンタクト装置(1)の前記接触状態を判定するように構成されており、
前記測定信号(30、32)は、前記音響信号(28)の以下の測定パラメータ、すなわち、
- 進行時間(t)、
- 音圧、
- 音エネルギー、および
- 音強度(I)
のうちの少なくとも1つを含む、
コンタクト装置(1)。
【請求項2】
前記音響信号伝送器(6)は、超音波範囲の前記音響信号(28)を結合するように構成されている、
請求項1に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項3】
前記測定デバイス(2)は、前記音響信号(28)の
前記測定パラメー
タのうちの少なくとも
2つを表す
前記測定信号(30、32)を出力するように構成されている、
請求項1または2に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項4】
前記測定デバイス(2)は、前記音響信号(28)の前記音強度(I)を表す第1の測定信号(30)と、前記音響信号(28)の前記進行時間(t)を表す第2の測定信号(32)とを出力するように構成されている、
請求項3に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項5】
前記共通のキャリア(18)は、前記コンタクト装置(1)のハウジング壁である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項6】
前記コンタクト装置(1)は、前記第1のコンタクト(8)および/または前記第2のコンタクト(12)に対して可動なブリッジコンタクト(22)を備え、
前記ブリッジコンタクト(22)を介して、前記第1のコンタクト(8)と前記第2のコンタクト(12)とは前記第2の閉接触状態(K)で互いに電気的に接続される、
請求項1から5のいずれか一項に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項7】
信号伝送器(6)および/または信号受信器(10)が、接触端部(24)の反対側に配置された対応する前記コンタクト(8、12)の端部(26)に配置されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のコンタクト装置(1)を備える電気スイッチングデバイス(27)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定デバイスを有するコンタクト装置および接触状態を測定するための方法に関し、特に、高電圧範囲および/または高電流範囲のためのコンタクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコンタクト装置は、閉位置で互いに導電接続され、絶縁位置で互いに電気的に絶縁される2つのコンタクトを有する。コンタクト装置は、コンタクトが絶縁されているか閉じているかを判定可能な検出器を備えることができる。この場合、接触状態は、作動要素の位置を介して間接的にのみ測定される。しかしながら、これは、例えば、コンタクトのうちの1つがコンタクトブリッジに溶着されている故障の状態を検出できないか、または開もしくは閉と誤って示すおそれがあることを意味する。したがって、そのようなコンタクト装置は安全でない。また、電場および/または磁場の変化を記録する検出器は、スイッチングされた電圧のレベルおよび種類に主に依存するため、異なるコンタクト装置に対して自由に使用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、2つのコンタクトの接触状態をより確実に汎用性のある方式で検出することができる解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、これは、コンタクト装置の接触状態を検出するための測定デバイスを有し、第1の開接触状態で互いに電気的に絶縁され、第2の閉接触状態で互いに電気的に接続される少なくとも2つの電気コンタクトを有するコンタクト装置によって解決される。測定デバイスは、音響信号、特に音波を少なくとも2つのコンタクトのうちの第1のコンタクトに結合するように構成されている音響信号発生器と、少なくとも2つのコンタクトのうちの第2のコンタクトに音伝達方式で(in a sound-conducting manner)接続されている信号受信器とを備える。
【0005】
少なくとも2つのコンタクトを有するコンタクト装置の接触状態を測定するための本発明による方法において、これは、音響信号を少なくとも2つのコンタクトのうちの第1のコンタクトに結合し、少なくとも2つのコンタクトのうちの第2のコンタクトで音響信号を受信することによって解決される。
【0006】
本発明はさらに、
- コンタクト装置の1つのコンタクトからコンタクト装置の別のコンタクトへ伝送される音響信号を表す測定信号を供給するステップであって、測定信号は音響信号の以下のパラメータ、すなわち、
- 進行時間、
- 音圧、
- 音エネルギー、および
- 音強度
のうちの少なくとも1つを表す少なくとも1つの測定パラメータを含む、ステップと、
- 少なくとも1つの測定パラメータに基づいてコンタクト装置の接触状態を判定するステップと、
を含む、コンピュータ実装方法に関する。
【0007】
本発明による解決策によって、接触状態がコンタクトを介して直接測定されることを保証する。音響信号は、固体伝播音(structure-borne sound)により、コンタクト装置のコンタクトを介して信号伝送器から信号受信器へ伝達される。信号伝送器は音響信号を1つのコンタクトに結合し、信号受信器は信号を別のコンタクトで受信するため、伝送に基づく測定が行われる。信号伝送器と信号受信器とが同一のコンタクトに配置され、音響信号の反射が作動要素(actuating element)に記録される、反射に基づく間接的な測定とは対照的に、より高レベルの安全が保証される。例えば、一方のコンタクトを他方のコンタクトに対して動かすための作動要素の位置の反射測定では、作動要素が溶着による影響を受けない状態であるため、コンタクトの溶着を検出することができない。
音響信号は、磁気信号または電気信号とは対照的に、電圧の種類およびレベルとは無関係であるため、例えば、ライトブリッジ、短絡、および/または溶着によって生じる故障を確実に検出することができる。さらに、測定デバイスおよび方法を、必要以上の手間なしに異なるコンタクトデバイスに適用することができる。
【0008】
本発明による解決策を、以下のさらなる発展および構成によりさらに改良することができる。これらの発展および構成は各々それ自体有利であり、互いに任意に組み合わせることができる。
【0009】
第1の好ましい構成において、信号伝送器および/または信号受信器を対応するコンタクトに直接接続することができる。これにより、音響信号のパラメータに大きい影響を与えることなく、音響信号をコンタクトに直接結合することができ、またはコンタクトによって受信することができるため、測定信号の評価または供給をさらに簡略化することができる。
【0010】
しかしながら、信号伝送器および/または信号受信器は、少なくとも1つの電気絶縁体、特にセラミック板などのガルバニック絶縁体を介して対応するコンタクトに間接的に接続することができると好ましい。これにより、信号伝送器および/または信号受信器の電気部品と、対応する電気コンタクトとの接触による短絡を防ぐことができる。
【0011】
電気絶縁体は、対応するコンタクトの材料と同様の、特に同一の音伝達性を有する材料から形成することができる。音伝達性は、材料の密度、横収縮係数、弾性係数、および剪断弾性係数によって決まる。電気絶縁体の適切な材料を選択することによって、音波、特に固体伝播音のパラメータの変動が、絶縁体とコンタクトとの移行部において避けられる。
【0012】
信号伝送器および/または信号受信器は、特に16kHz以上の超音波範囲の音響信号を結合または受信するように特に構成することができる。超音波は人の可聴範囲を超えているため、望ましくない騒音公害を測定デバイスによって防ぐことができる。
【0013】
信号伝送器および/または信号受信器は、特に、広い測定範囲にわたって高い精度および信頼性を提供することのできる圧電素子であってよい。さらに、これらの圧電素子は長期的な安定性があり、小型である。
【0014】
好ましい構成において、デバイス、特に測定デバイスは、以下のパラメータ、すなわち、進行時間、音圧、音エネルギー、および音強度のうちの少なくとも1つを表す測定信号を出力するように構成することができる。
【0015】
エラーに対する脆弱性を低くして接触状態の可能な限り最も正確な測定値を得るためには、音強度を表す測定信号が特に有利であり得る。そのため、特に超音波の場合、空気路または埃の層があると、音強度が減衰する。これにより、コンタクト間の距離または互いに接触しているコンタクト間に生じる接触阻止層を検出することが可能になる。
【0016】
測定信号が信号伝送器から信号受信器への音波の伝播時間を表すことになっている場合、音波のゼロ交差(zero crossing)、すなわち相変化を進行時間の基準点と考えることができる。音波の残りの音パラメータと比較すると、音波のゼロ交差は、外乱、例えば音反射、音伝達、吸音、および音放散による影響を受けないか、または少なくとも影響を受けにくい。したがって、音波が少なくとも2つのコンタクトを介して信号伝送器から信号受信器へ進むのに必要な時間を考慮すると、非常に正確な測定信号を出力することができる。この正確さにより、コンタクト装置の接触状態だけでなく、互いに当接するように構成されている2つのコンタクト間の距離についての結論も導き出すことができる。
【0017】
さらに好ましい構成において、測定デバイスは、音波の進行時間を表す測定信号と音強度を表す測定信号とを出力するように構成することができる。音強度を表す測定信号を使用して、接触状態を表す出力値を、ほとんど手間をかけずに生成することができ、この出力値を使用して、例えば回路を実装することもできる。より精密な距離の分析が必要な場合、音波の進行時間を表す測定信号によって出力値を生成することができる。
【0018】
測定を連続的に行って、故障をいつでも記録できるようにすることが好ましい。特に、これにより、高電圧による電気アークを生じさせるおそれのある、短絡によるコンタクトの浮上の発生、すなわち短時間の絶縁を検出することが可能になる。これは、安全な動作を保証するためにコンタクト装置を交換すべきであることを示す。
【0019】
連続測定の代わりとして、時間間隔をおいて、特に均一な時間間隔をおいて測定を行うこともできる。例えば、信号伝送器は、スイッチング信号に応じて音響信号を少なくとも2つのコンタクトのうちの第1のコンタクトに結合することができる。連続動作を避けることにより、測定デバイスの摩耗を低減させることができる。コンピュータ実装方法において、例えば、命令ユニットをこのために設けることができ、この命令ユニットを介してスイッチング信号を制御することができる。
【0020】
コンタクト装置は、互いに対して可動な2つのコンタクトを備えることができる。したがって、例えば、コンタクト装置は、リレーの場合のようにスイッチング装置であってよい。コンタクトは接触端部を備えることができ、この接触端部により、コンタクトは閉接触状態で互いに当接する。例えば、一方のコンタクトをコンタクト装置において固定して保持することができ、他方のコンタクトを可動にすることができる。可動なコンタクトを、例えば、アクチュエータによって動かすことができる。
【0021】
さらに好ましい構成によれば、3つ以上のコンタクトをコンタクト装置に設けることもできる。例えば、コンタクト装置は3つのコンタクトを備えることができ、1つのコンタクトをブリッジコンタクトとして構成することができる。このブリッジコンタクトは、他の2つのコンタクトまたはそのうちの少なくとも一方に対して可動であり、ブリッジコンタクトを介して、他の2つのコンタクトが閉接触状態で互いに電気的に接続される。これにより、固体伝播音がブリッジコンタクトを介して一方のコンタクトから他方のコンタクトへ伝達される。
【0022】
3つ以上のコンタクトがコンタクト装置に設けられる場合、信号伝送器が、コンタクト装置のスイッチング列の最初の位置に配置されたコンタクトに音伝達方式で接続され、信号受信器が、スイッチング列の最後の位置に配置されたコンタクトに音伝達方式で接続されることが好ましい。これにより、スイッチング列に存在するすべてのコンタクトを介して、音響信号を信号伝送器から信号受信器へ直接伝達することができる。
【0023】
最初の位置に配置されたコンタクトと最後の位置に配置されたコンタクトとの両方を、コンタクト装置において固定して保持することができる。中間のコンタクトは、2つの固定コンタクトに対して可動であってよく、ブリッジコンタクトとして機能することができる。
【0024】
スイッチング列のすべてのコンタクトを同一の材料から形成することができ、またはスイッチング列のすべてのコンタクトが少なくとも略同一の音伝達性を有することが好ましい。これにより、固体伝播音の伝播の特性がスイッチング列全体にわたって基本的に一定のままになるため、測定信号の評価を容易にすることができる。
【0025】
電気的に絶縁された減衰要素を少なくとも2つのコンタクト間に配置して、絶縁状態であっても減衰要素を介して、少なくとも2つのコンタクトのうちの第1のコンタクトから少なくとも2つのコンタクトのうちの第2のコンタクトへ固体伝播音を伝達することができるようになっている。したがって、完全に絶縁状態であっても音響信号を信号受信器によって記録することができるため、パラメータ、例えば音強度を表す測定信号を判定することができる。この測定信号は、開接触状態についての基準信号に対応し得る。この基準信号を使用して、測定デバイスが適切に機能していることを保証することができる。
【0026】
減衰要素が少なくとも2つのコンタクトよりも低い音伝達率を有することにより、少なくとも閉接触状態で、コンタクトを介して伝達される固体伝播音が減衰要素を介して伝達される固体伝播音に重なるようにすることができると好ましい。減衰要素を介して伝達される固体伝播音を使用して、例えば、測定デバイスを較正することもできる。
【0027】
さらなる好ましい構成において、減衰要素を、少なくとも2つのコンタクトが堅固に固定されるキャリアとして実現することができる。減衰要素は、例えばハウジング壁であってよい。
【0028】
少なくとも2つのコンタクトは、少なくとも閉位置でさらなるコンタクトに当接することにより電気接続を確立するように構成されている接触端部を各々備えることができる。音響信号をコンタクト全体にわたって指向的に伝達するために、信号伝送器および/または信号受信器は、接触端部から離れた方を向くコンタクトの端部で対応するコンタクトに接続されることが好ましい。
【0029】
測定信号は、例えばコンピュータ実装方法で評価することができる。このために、評価ユニットを設けることができ、この評価ユニットは、測定信号を使用して、接触するコンタクト、特に直接接触するコンタクト間の接触状態および/または距離を表す出力値を判定する。評価ユニットによって判定された出力値を出力する出力ユニットを設けることができると好ましい。
【0030】
コンピュータ実装方法を実行するように構成されているプロセッサ、特に信号プロセッサを備える、データ処理のためのシステムを設けることができると好ましい。
【0031】
コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行されると、コンピュータ実装方法をコンピュータに実行させる命令を格納することができる。
【0032】
コンピュータ実装方法を、特に動作中に連続して実行することができ、評価ユニットは、信号伝送器および/または信号受信器に接続することができる。あるいは、測定信号またはさらにはその推移を格納可能な記憶ユニットを設けることができる。必要であれば、例えば、評価ユニットに結合された読出しユニットによって、記憶ユニットから読み出すことができる。
【0033】
上記の構成のいずれかによる測定デバイスを後付けキットとして構成することができ、この場合、測定デバイスは、少なくとも2つのコンタクトを備えるコンタクト装置に組み込むように構成される。
【0034】
以下で、図面を参照しながら、本発明を好ましい構成を用いてより詳細に説明する。図示する好ましいさらなる発展および構成は互いに独立しており、応用事例において必要に応じて互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1の開接触状態における、本発明によるコンタクト装置の例示的な構成の概略正面図である。
【
図2】第2の閉接触状態における、
図1の例示的な構成の概略正面図である。
【
図3】本発明によるコンタクト装置の例示的な構成の概略ブロック図である。
【
図4】接触する関係にあるコンタクト同士の距離の増加に伴う音強度の推移の概略図である。
【
図5】接触する関係にあるコンタクト同士の距離の増加に伴う進行時間の推移の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および
図2は、コンタクト装置1の第1の例示的な実施形態を示す。
【0037】
コンタクト装置1は、コンタクト装置1の接触状態を検出するための測定デバイス2と、第1の開接触状態T(
図1参照)で互いに電気的に絶縁され、第2の閉接触状態K(
図2参照)で互いに電気的に接続される少なくとも2つの電気コンタクト4とを備える。測定デバイス2は、音響信号、特に音波を少なくとも2つのコンタクト4のうちの第1のコンタクト8に結合するように構成されている音響信号伝送器6と、少なくとも2つのコンタクト4のうちの第2のコンタクト12に音伝達方式で接続されている信号受信器10とを備える。
【0038】
信号伝送器6と信号受信器10とをコンタクト装置の異なるコンタクトに結合することによって、コンタクトを介して音波を直接伝達することができる。音響信号は、固体伝播音により、コンタクト装置のコンタクトを介して信号伝送器から信号受信器へ伝達される。音響信号は、磁気信号または電気信号とは対照的に、電圧の種類およびレベルとは無関係であるため、例えば、ライトブリッジ、短絡、および/または溶着によって生じる故障を確実に検出することができる。さらに、測定デバイス2および方法を、必要以上の手間なしに異なるコンタクト装置で使用することができる。
【0039】
信号伝送器6を、約16kHz以上の超音波範囲の音響信号を第1のコンタクト8に結合するように構成し、信号受信器10を、音響信号を第2のコンタクト12から受信するように構成することができる。このために、信号伝送器6および信号受信器10は圧電素子14であり得ることが好ましく、圧電素子14により、小型で低摩耗の測定デバイス2を提供することができる。
【0040】
電気絶縁体16、特にガルバニック絶縁体を、信号伝送器6と第1のコンタクト8との間、および信号受信器10と第2のコンタクト12との間に配置して、コンタクトと信号伝送器または信号受信器との間の確実な電気絶縁を保証することができる。電気絶縁体16を、例えば、少なくとも電気コンタクト4の材料と同様の音伝達性を有するセラミック材料から形成することができる。これにより、音響信号のパラメータの大きい変動なしに、電気絶縁体16を介して信号伝送器6から第1のコンタクト8へ音響信号を結合することができ、また電気絶縁体16を介して第2のコンタクト12から信号受信器10によって音響信号を受信することができる。
【0041】
図1および
図2に見られるように、第1のコンタクト8と第2のコンタクト12とをコンタクト装置1において固定して保持することができる。第1のコンタクト8と第2のコンタクト12とを共通のキャリア18、例えばハウジング壁に保持することができる。キャリア18は、コンタクト4の材料よりも低い音響伝達性を有する減衰要素20として機能することができる。したがって、開状態Tで、減衰要素20を介して第1のコンタクト8と第2のコンタクト12との間で音響信号を伝送することにより、測定デバイス2が動作可能な状態であることを確認することができる。
【0042】
電気コンタクト4、特に第1のコンタクト8と第2のコンタクト12とを開くまたは閉じるために、ブリッジコンタクト22として機能するさらなる電気コンタクト4を設けることができる。ブリッジコンタクト22は、第1のコンタクト8および第2のコンタクト12に対して可動に保持することができ、ブリッジコンタクト22は、第1のコンタクト8および第2のコンタクト12それぞれに面した当接面23を備え、この当接面は、開接触状態Tにおいて第1のコンタクト8および第2のコンタクト12のうちの少なくとも一方から離間し、閉接触状態Kにおいて第1のコンタクト8および第2のコンタクト12の対応する接触端部24に当接する。これにより、ブリッジコンタクト22を介した電流の伝達だけでなく、固体伝播音の伝達も保証される。
【0043】
第1のコンタクト8と第2のコンタクト12とが互いに接続されると、信号伝送器から信号受信器への固体伝播音の伝播のための連続経路が保証される。したがって、閉接触状態Kにおいて、信号伝送器6から信号受信器10へ音波を最小の抵抗で伝達することができる。しかしながら、ブリッジコンタクト22を第1のコンタクト8および第2のコンタクト12のうちの少なくとも一方から離すことによって閉接触状態Kが解消されると、接触端部24と当接面23との間にエアブリッジが生成され、これは、特に超音波範囲の音波に対する減衰効果を有する。さらに、信号伝送器から信号受信器へ到達するために音波が進まなければならない距離が増加する。
【0044】
信号伝送器6および/または信号受信器10を、接触端部24から離れた方を向く対応するコンタクト8、12の端部26に配置して、音響信号がコンタクト全体にわたって指向的に伝播するようにし、測定エラーを避けることができると好ましい。
【0045】
当然、コンタクト装置1は、互いに対して可動で、閉接触状態Kで互いに直接当接する2つのコンタクトを備えることもできる。
【0046】
コンタクト装置1は、電気スイッチングデバイス27の一部であってよい。
【0047】
さらに、後付けキットが、少なくとも2つのコンタクトを備えるコンタクト装置に組み込み可能な測定デバイス2を備えることができる。
【0048】
測定デバイス2は、以下のパラメータ、すなわち、進行時間、音圧、音エネルギー、および音強度のうちの少なくとも1つを表す信号を出力するように構成することができる。
【0049】
この例示的な構成によれば、測定デバイス2を、音響強度を表す測定信号と音響信号の進行時間を表す測定信号とを出力するように構成することができる。
【0050】
当接面23と接触端部24との間に位置する空気または埃の接触阻止層によって音強度が減衰される場合があるため、音強度を表す測定信号を考慮することによって、電気接触が行われているか否かを表すことができる。
【0051】
音響信号の進行時間の測定は、音響信号のゼロ交差、すなわち相変化に特に関連し得る。これにより、信号伝送器6における音響信号のゼロ交差が開始点と考えられ、信号受信器10における音響信号のゼロ交差が終点と考えられる。これは、他の音パラメータとは対照的に、音響信号の相変化が外乱、例えば音反射の影響を受けにくいため好ましい。音響信号の進行時間は音響信号の進行経路に比例するため、進行時間を表す測定信号を考慮する際に、互いに直接当接するように構成されているコンタクト4間の距離を判定することができる。
【0052】
2つの測定信号を組み合わせることにより、故障を避ける、または少なくとも検出することができる。例えば、アーク放電を生じさせて2つのコンタクトが互いに溶着するおそれのある浮上の発生を、高短絡電流で検出することができる。
【0053】
測定を連続的に行って、接触状態の変化をいつでも記録できるようにすることが好ましい。しかしながら、測定デバイスの連続動作を避けるべきである場合には、測定を間歇的(in a pulsed manner)に、例えばスイッチング信号に応じて行うこともできる。
【0054】
図3は、測定デバイスの例示的な構成の概略ブロック図である。
【0055】
コンピュータ実装方法において、2つの測定信号のうちの少なくとも1つを読み出すことができ、コンタクト装置の接触状態をその測定パラメータに基づいて判定することができる。
【0056】
ブロック図は、音響信号28を第1のコンタクトに結合する信号伝送器6と、音強度Iを有する、進行時間tの後の音響信号28を受信する信号受信器10とを示す。信号受信器10により受信された音響信号28に基づいて、音響信号28の音強度Iを表す測定信号30と音響信号28の進行時間tを表す測定信号32とを出力することができる。
【0057】
これらの測定信号30、32を記憶ユニット34に格納することができる。記憶ユニット34は、コンピュータシステムCに組み込むことができ、または少なくともコンピュータシステムCによって読み出すことができる。このために、コンピュータシステムCは、記憶ユニット34に格納された測定信号30、32にアクセス可能な読出しユニット36を有することができる。
【0058】
読み出された測定信号30、32は、評価ユニット38によって評価することができ、対応する接触状態を判定することができる。評価ユニット38を出力ユニット40に結合することができ、この出力ユニット40は、出力値42に基づいて、少なくとも閉接触状態で互いに当接する2つのコンタクト間の接触状態および/または距離を出力する。
【0059】
特に、コンピュータシステムCは、データ処理システムであってよく、コンピュータ実装方法を実行するように構成されているプロセッサ44を備えることができる。
【0060】
方法を実行するための命令、例えば、コンピュータシステムCに方法を実行させる命令を、コンピュータ可読記憶媒体46に格納することができる。
【0061】
コンピュータシステムは、コンタクト装置に組み込むことができ、またはコンタクト装置から切り離すことができる。コンピュータシステムCがコンタクト装置から切り離される場合には、接続を行うことが可能であり、この接続によって測定信号にアクセスすることができる。
【0062】
コンピュータシステムは、命令ユニット(図示せず)を備えていてもよく、命令ユニットは、信号伝送器6に結合可能であり、信号伝送器によって音響信号を第1のコンタクト8に結合させることができる。
【0063】
図4は、コンタクト間の距離に応じた音強度の推移を示す例示図である。
【0064】
図4において、音強度Iは縦座標、接触する関係にあるコンタクト同士の距離xは横座標に示される。
【0065】
コンタクト間の距離0で、すなわちコンタクトが互いに当接しているときに、信号受信器における音響信号の音強度は最大に達する。コンタクトが互いに離れると、コンタクト間のエアブリッジにより音強度は連続的に低下する。この場合、値が閾値50を下回ると、接触状態が閉状態Kから開状態Tへ変化する。閾値50は概略的にのみ図示されているが、コンタクト装置に応じて変化し得る。閾値を、例えば、較正によってシステムに格納することができ、この閾値は、接触するコンタクト間で電流が生じない値を表す。したがって、音強度Iの値が閾値50を超える場合には、閉接触状態Kを表す出力値を出力することができる。
【0066】
特にコンタクト間の正確な距離を分析するには、音強度を考慮することは、反射などによる追加の変動を受けるため、あまり適切ではない。コンタクト間の正確な距離について提示する場合には、残りの音量と比較して変動を受けにくく、音強度と平易に組み合わせることができることから、進行時間を考慮することがより適切である。
【0067】
コンタクト間の距離xに応じた進行時間tの推移を示す図を
図5に示す。
【0068】
ここでも、閾値50を指定することができ、閾値50を下回る値は閉接触状態Kを示唆し、閾値50を超える値は開接触状態Tを示唆する。
【符号の説明】
【0069】
1 コンタクト装置
2 測定デバイス
4 電気コンタクト
6 信号伝送器
8 第1の電気コンタクト
10 信号受信器
12 第2の電気コンタクト
14 圧電素子
16 電気絶縁体
18 キャリア
20 減衰要素
22 ブリッジコンタクト
23 当接面
24 接触端部
26 接触端部から離れた方を向く端部
27 電気スイッチングデバイス
28 音響信号
30 測定信号
32 測定信号
34 記憶ユニット
36 読出しユニット
38 評価ユニット
40 出力ユニット
42 出力値
44 プロセッサ
46 記憶媒体
50 閾値
C コンピュータシステム
I 音強度
K 閉接触状態
T 開接触状態
t 進行時間
x 距離