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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】容器の金型および容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/48 20060101AFI20221128BHJP
   B29B 11/08 20060101ALI20221128BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20221128BHJP
   B29C 33/76 20060101ALI20221128BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20221128BHJP
   B29C 49/12 20060101ALI20221128BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20221128BHJP
   B29C 49/64 20060101ALI20221128BHJP
   B29C 49/78 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
B29C49/48
B29B11/08
B29C33/42
B29C33/76
B29C49/06
B29C49/12
B29C49/42
B29C49/64
B29C49/78
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021502359
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020007959
(87)【国際公開番号】W WO2020175607
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019035927
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】丸山 康秀
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 忠彦
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-355885(JP,A)
【文献】特開平04-174668(JP,A)
【文献】特開昭49-126765(JP,A)
【文献】特開平07-205997(JP,A)
【文献】特開平05-237923(JP,A)
【文献】特開平7-148829(JP,A)
【文献】特開平7-148830(JP,A)
【文献】特開平8-300453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
B29C 33/00-33/76
B65D 1/00- 1/48
A61J 1/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の胴部の形状を規定する型空間を有する割型と、
前記容器の底面の形状を規定する底型面を有し、前記割型に対し進退可能な底型と、を備え、
前記割型は、前記型空間の底部側に連絡されるとともに前記底型を受ける底型受け部を有し、
前記割型に対して前記底型を型閉じしたときに、前記底型受け部の前記底型面に対向する面と前記底型面との間が、前記容器の径方向に突出する構造体の形状を規定する空間をなし、
前記割型の前記底型受け部の内周には、前記構造体の径方向の突出量または前記構造体の外周形状を規定する第1スペーサー部材が交換可能に取り付けられる
容器の金型。
【請求項2】
容器の胴部の形状を規定する型空間を有する割型と、
前記容器の底面の形状を規定する底型面を有し、前記割型に対し進退可能な底型と、を備え、
前記割型は、前記型空間の底部側に連絡されるとともに前記底型を受ける底型受け部を有し、
前記割型に対して前記底型を型閉じしたときに、前記底型受け部の前記底型面に対向する面と前記底型面との間が、前記容器の径方向に突出する構造体の形状を規定する空間をなし、
前記底型は、前記型閉じしたときの前記底型面の位置を調整し、前記構造体の厚さを規定する第2スペーサー部材の取付部を有する
容器の金型。
【請求項3】
前記底型は、前記型閉じしたときの前記底型面の位置を調整し、前記構造体の厚さを規定する第2スペーサー部材の取付部を有する
請求項1に記載の容器の金型。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の容器の金型を用いた容器の製造方法であって、
有底形状の加熱された樹脂製のプリフォームを前記割型の前記型空間内に配置する工程と、
前記プリフォームを延伸ロッドで延伸させる工程と、
前記プリフォームに加圧流体を導入して、前記底型受け部に膨出するように容器をブロー成形する工程と、
前記底型を型閉じし、前記膨出した容器の部位を前記底型受け部と前記底型面で圧縮して前記容器に前記構造体を形成する工程と、を有する
容器の製造方法。
【請求項5】
前記プリフォームを射出成形する工程と、
射出成型後の保有熱を含む前記プリフォームを加熱して温度調整する工程と、をさらに有する
請求項4に記載の容器の製造方法。
【請求項6】
前記温度調整のときに、前記プリフォームの胴部の首部側が底部側よりも高い温度に加熱される
請求項5に記載の容器の製造方法。
【請求項7】
前記構造体を形成した後に、前記延伸ロッドと前記底型面で容器底面部を挟み込み、容器底面部に薄膜状の部位を形成する工程をさらに有する
請求項5または請求項6に記載の容器の製造方法。
【請求項8】
前記温度調整のときに、前記プリフォームを収容する第1部材と前記プリフォーム内に挿入される第2部材によって、前記プリフォームの底部に形成されるゲート部が挟み込まれて潰される
請求項7に記載の容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の金型および容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器の底部に、例えば吊り具や脚部などの構造体が形成された容器が種々提案されている(例えば、特許文献1~6参照)。この種の容器の製造方法としては、例えば、ダイレクトブロー成形法やストレッチブロー成形法が用いられうる。
【0003】
ダイレクトブロー成形法で製造される容器は、一般的にストレッチブロー成形法で製造される容器と比べて美的外観や寸法精度等の面で劣る。また、ダイレクトブロー成形法によると、ブロー成型後に容器に残存するバリの切除やその切除面のトリミングといった後工程が必要になり、廃棄される樹脂の量も多い。このような背景の下、比較的に加工が困難な形状の容器であってもストレッチブロー成形法で製造したいという要望が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-355885号公報
【文献】特開2005-169698号公報
【文献】特開2016-37313号公報
【文献】特開2017-512686号公報
【文献】特開平8-244749号公報
【文献】米国特許第9254604号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストレッチブロー成形法を適用して、例えば、径方向に突出する固形状の構造体を容器の底面側に形成することは比較的困難であり、さらなる工夫が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る容器の金型は、容器の胴部の形状を規定する型空間を有する割型と、容器の底面の形状を規定する底型面を有し、割型に対し進退可能な底型と、を備える。割型は、型空間の底部側に連絡されるとともに底型を受ける底型受け部を有する。割型に対して底型を型閉じしたときに、底型受け部の底型面に対向する面と底型面との間が、容器の径方向に突出する構造体の形状を規定する空間をなす。
また、割型の底型受け部の内周には、構造体の径方向の突出量または構造体の外周形状を規定する第1スペーサー部材が交換可能に取り付けられてもよい。
また、底型は、型閉じしたときの底型面の位置を調整し、構造体の厚さを規定する第2スペーサー部材の取付部を有していてもよい。
【0007】
本発明の一態様に係る容器の製造方法は、一の態様の容器の金型を用いるものであって、有底形状の加熱された樹脂製のプリフォームを割型の型空間内に配置する工程と、プリフォームを延伸ロッドで延伸させる工程と、プリフォームに加圧流体を導入して、底型受け部に膨出するように容器をブロー成形する工程と、底型を型閉じし、膨出した容器の部位を底型受け部と底型面で圧縮して容器に構造体を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ストレッチブロー成形法を適用して、径方向に突出する固形状の構造体を底面側に有する容器を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)は容器の正面図であり、(B)は容器の底面図であり、(C)は容器のIc-Ic線断面図である。
図2】ブロー成形装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図3】(A)、(B)は温度調整用金型の構成例を模式的に示す図である。
図4】(A)はブローキャビティ割型および底型の型開き位置における図であり、(B)はブローキャビティ割型の型閉じ位置(底型の上昇前)における図であり、(C)はブローキャビティ割型および底型の型閉じ位置(底型の上昇後)における図である。
図5】ブローキャビティ割型と底型の型閉じ状態を示す拡大図である。
図6】第1スペーサー部材および底型の構成例を示す分解斜視図である。
図7】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
図8】ブロー成形部での工程を示す図である。
図9図8の続きの図である。
図10図9の続きの図である。
図11図10の続きの図である。
図12】第2実施形態の温度調整部における動作例を示す図である。
図13】第2実施形態のブロー成形部における動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面において、容器およびプリフォームの厚さ、形状などは模式的に示したもので、実際の厚さや形状などを示すものではない。
【0011】
(第1実施形態)
<容器の構成例>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る樹脂製の容器10の構成例を説明する。
図1(A)は容器10の正面図であり、図1(B)は容器10の底面図であり、図1(C)は容器のIc-Ic線断面図である。図1において容器の軸線方向Lを矢印で示す。
【0012】
容器10は、例えば薬剤の輸液などに使用される容器であって、後述する有底円筒形状のプリフォーム20からストレッチブロー成形法により製造される。
容器10は、正面視で略矩形状に形成された胴部11と、胴部11の上側中央に形成されて容器10の出入口となる首部12と、胴部11の下側中央に形成されて底面側が閉塞されている底筒部13とを有する。底筒部13の底面には、底筒部13の径方向外側に張り出した構造体の一例である環状のフランジ14が形成されている。なお、底筒部13の底面部13aには後工程で輸液用の開口などが形成されてもよい。
【0013】
容器10の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器10の用途に応じて適宜選択することができる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0014】
<ブロー成形装置の説明>
次に、図2を参照して容器10を製造するためのブロー成形装置100について説明する。図2は、ブロー成形装置100の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態のブロー成形装置100は、プリフォーム20を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0015】
ブロー成形装置100は、射出成形部110と、温度調整部120と、ブロー成形部130と、取り出し部140と、搬送機構150とを備える。射出成形部110、温度調整部120、ブロー成形部130および取り出し部140は、搬送機構150を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0016】
搬送機構150は、図2の紙面垂直方向(Z方向)の軸を中心に回転する回転板(不図示)を備える。回転板には、プリフォーム20または容器10の首部を保持するネック型151(図2では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構150は、回転板を回転させることで、ネック型151で首部が保持されたプリフォーム20(または容器10)を、射出成形部110、温度調整部120、ブロー成形部130、取り出し部140の順に搬送する。
【0017】
射出成形部110は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、プリフォーム20を製造する。射出成形部110には、プリフォームの原材料である樹脂材料を供給する射出装置112が接続されている。
射出成形部110においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構150のネック型151とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置112から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部110でプリフォーム20が製造される。
【0018】
なお、射出成形部110の型開きをしたときにも、搬送機構150のネック型151は開放されずにそのままプリフォーム20を保持して搬送する。射出成形部110で同時に成形されるプリフォーム20の数(すなわち、ブロー成形装置100で同時に成形できる容器10の数)は、適宜設定できる。
【0019】
温度調整部120は、プリフォーム20を収容可能な温度調整用金型(加熱ポットまたは温調ポット)121を有する。温度調整部120は、温度調整用金型121にプリフォーム20を収容し、射出成形部110で製造されたプリフォーム20の延伸部分(胴部や底部)の温度を最終ブローに適した温度(例えばPETで約90~100℃、PPで約130~140℃(約135℃前後))に調整する。
【0020】
図3(A)は、温度調整用金型121の構成例を模式的に示す図である。
温度調整用金型121は、プリフォーム20の首部より下の部分(胴部および底部)を収容する空間を有する。温度調整用金型121に対しては、プリフォーム20の軸方向にプリフォーム20を外部から加熱する複数のヒータ122a、122bが配置されている。
そのため、各々のヒータ122a、122bの温度を変化させることで、プリフォーム20の温度を軸方向に変化させることができる。本実施形態では、首部側のヒータ122aの底部側のヒータ122bよりも高い温度に設定される。なお、プリフォーム20の内側の中空部に加熱ロッド(不図示)を非接触で挿入し、プリフォーム20を内外同時に温度調整(加熱または冷却)してもよい。
【0021】
ここで、温度調整用金型121は、その内部に所定温度(例えば40~80℃)の温調媒体を循環的に流通させる温調回路(ヒータ(温調媒体流通回路))を内蔵した構造としても構わない。より好適には、図3(B)に示すように、温度調整用金型を、温調回路(ヒータ(温調媒体流通回路)122a、122b)を内蔵した一対の割型(121a、121b)により構成し、プリフォーム20を収容する空間の上方のみ拡径させた形状とさせるのが望ましい。さらに、プリフォーム20を収容する空間の深さ(長さ)は、プリフォーム20の長さと略同一に設定され、例えば、プリフォーム20の長さに対して0.95~1.10倍、好ましくは1.0±0.02倍に設定されているのが望ましい。図3(B)に示す温度調整用金型121a、121bを用いてプリフォーム20を予備ブロー(温度調整部120における圧縮エアによる延伸処理)することにより、プリフォーム20は温度調整用金型121の内面に接触して温度調整される。このとき、プリフォーム20の胴部上方のみが拡径(延伸)されて薄肉になり容器10の形状に近づく一方、胴部下方や底部はほとんど拡径されずに射出成形部110と略同等の厚さが維持される。これにより、良好な品質(外観や肉厚分布(物性))の容器10が最終ブロー(ブロー成形部130における圧縮エアおよび延伸ロッドによる延伸処理)で製造可能になる。つまり、温度調整用金型121でプリフォーム20を予備ブローすることにより、プリフォーム20の温度や内部熱量、肉厚の分布状況を好適に調整できる。具体的には、最終ブローで膨張されるプリフォーム20において、環状のフランジ14が形成される底部側に好適に肉を残すことが可能になる。
【0022】
ブロー成形部130は、温度調整部120で温度調整されたプリフォーム20に対してブロー成形を行い、容器10を製造する。
ブロー成形部130は、容器10の形状に対応するブロー成形金型131と、プリフォーム20を延伸させる延伸ロッド132と、ブローノズル(不図示)と、後述の底型60を昇降させる昇降機構133と、を備えている。
【0023】
図4を参照して、ブロー成形金型131の構成例を説明する。図4(A)はブローキャビティ割型および底型の型開き位置における図であり、図4(B)はブローキャビティ割型の型閉じ位置(底型の上昇前)における図であり、図4(C)はブローキャビティ割型および底型の型閉じ位置(底型の上昇後)における図である。
【0024】
ブロー成形金型131は、一対のブローキャビティ割型40,40と、一対の収容部(ブローキャビティ固定板)50,50と、底型60と、を備えている。
【0025】
ブローキャビティ割型40,40は、フランジ14を除いた容器10の主要部(胴部11および底筒部13)の形状を規定する型空間Sを有する型材である。ブローキャビティ割型40,40は、図4(A)の上下方向(Z方向)に沿ったパーティング面で分割され、図4(A)の左右方向(X方向)に開閉可能に構成される。
【0026】
ブローキャビティ割型40,40において容器の型空間Sの下側には、底型60を受ける底型受け部41が形成されている。底型受け部41は、型空間Sにおいて容器10の底筒部13の底部側と連絡し、その内径が底筒部13よりも広い円筒形状の空間を有している。底型受け部41の下側は開口されており、ブローキャビティ割型40,40の下側から底型60を挿入可能である。
【0027】
底型受け部41で型空間Sと連絡している上側の段差部分には、一対の第1スペーサー部材42,42がそれぞれブローキャビティ割型40,40に交換可能に取り付けられている。一対の第1スペーサー部材42,42は、後述の図5に示すように半割円筒形状である。
一対の第1スペーサー部材42,42は、ブローキャビティ割型40,40とパーティング面が一致するようにボルト(不図示)などを用いてブローキャビティ割型40,40にそれぞれ取り付けられる。
【0028】
一対の第1スペーサー部材42,42は、型閉じしたときに円筒形状をなす。第1スペーサー部材42,42の内周面は、容器10のフランジ14の突出量(図5に示すフランジの径寸法幅D)やフランジ14の外周形状を規定する。なお、本実施形態でのフランジ14の形状は円形である。
【0029】
一対の収容部50,50は、ブローキャビティ割型40,40を隔てて配置され、それぞれ対応するブローキャビティ割型40を収容する。また、収容部50は、ブローキャビティ割型40,40の開閉機構(不図示)と接続され、ブローキャビティ割型40,40を図4(A)の左右方向(X方向)に移動させる。
また、図4(A)の収容部50は底型60の昇降を許容する空間を備えている。
【0030】
型60は、ブローキャビティ割型40,40の下側に配置され、容器10の底面の形状を規定する型材である。底型60は、図4(B)、(C)に示すようにブロー成形装置100の昇降機構133と連結され、型閉じしたブローキャビティ割型40,40に対して昇降により進退可能である。
【0031】
図5は、ブローキャビティ割型40,40と底型60の型閉じ状態を示す拡大図である。図6は、第1スペーサー部材42,42および底型60の構成例を示す分解斜視図である。
【0032】
型60は、底型本体61と、位置決めリング部材62と、割リング状の押さえ部材63と、第2スペーサー部材64と、ストッパー部材65とを有する。
【0033】
底型本体61は、昇降機構133との連結部を有し、底型60の組立状態において昇降機構133からの力を受ける部材である。底型本体61は、一端側から他端側に向けて外径が段階的に大きくなる段付の円筒形であり、大径部61aと小径部61bを有している。底型本体61において、大径部61aと小径部61bをつなぎ円周形状をなす段差面61cには複数のボルト穴が開口されている。大径部61aの外周には、押さえ部材63を受ける溝61eが周方向に沿って環状をなすように形成されている。
【0034】
また、小径部61bの径寸法は、第1スペーサー部材42,42の内径に対応する寸法に設定され、底型本体61の小径部61bを第1スペーサー部材42,42の内側に挿入することが可能である。底型本体61の小径部61bの先端は、型空間Sおよび底型受け部41の上面41aに臨む底型面61dをなしている。本実施形態において底型面61dの形状は平坦である。
型60が上昇した状態では、底型受け部41の上面41aと底型本体61の底型面61dとの間でプリフォーム20が圧縮され、これにより容器10のフランジ14が成形される。
【0035】
位置決めリング部材62は、型閉じされたブローキャビティ割型40,40に対し、底型60を位置決めするための部材である。位置決めリング部材62の外径は、底型受け部41の内径に対応する寸法に設定され、底型60が昇降するときには位置決めリング部材62の外周面が底型受け部41の内周面と接触するように構成される。
【0036】
また、位置決めリング部材62の内径は、底型本体61の大径部61aの外径に対応する寸法に設定され、位置決めリング部材62の厚さは、底型本体61の大径部61aの高さに対応する寸法に設定される。そのため、位置決めリング部材62の下端は、底型本体61の大径部61aの外周に支持される。また、位置決めリング部材62の上端は、底型本体61の外周に形成された溝61eに嵌合した割リング状の押さえ部材63で押さえられ、上下方向の動きが規制される。
【0037】
第2スペーサー部材64は、リング状部材であり、厚さの異なる部材に交換可能である。第2スペーサー部材64の内径は、底型本体61の小径部61bの径に対応する寸法に設定される。また、第2スペーサー部材64には、底型本体61のボルト穴と対応する位置に挿通穴が設けられている。
【0038】
第2スペーサー部材64は、底型本体61の小径部61bに挿入され、底型本体61の段差面61cに当接された状態で固定される。
また、第2スペーサー部材64は、底型60が上昇した状態における底型面61dの位置を調整するために用いられる。第2スペーサー部材64の厚さを調整することで、底型60が上昇した状態において、図5に示す底型受け部41の上面41aと底型60の底型面61dとの間隔が変化し、容器10のフランジ14の厚さ寸法(図5に示す厚さT)を調整することができる。
【0039】
ストッパー部材65は、樹脂製のリング状部材である。ストッパー部材65の内径は、底型本体61の小径部61bの径に対応する寸法に設定される。そのため、ストッパー部材65は、底型本体61の小径部61bに挿入可能である。また、ストッパー部材65には、底型本体61のボルト穴と対応する位置に挿通穴が設けられている。
【0040】
図5に示すように、ストッパー部材65は、底型本体61の段差面61cとの間で第2スペーサー部材64を挟み込むように配置される。ストッパー部材65は、底型60が上昇したときにブローキャビティ割型40の底型受け部41と接触し、底型60の損傷を防ぐ機能を担う。
【0041】
型60を組み立てるときには、底型本体61の大径部61aに位置決めリング部材62を挿入し割リング状の押さえ部材63で固定した後、底型本体61の小径部61bに、第2スペーサー部材64と、ストッパー部材65を取り付ける。そして、挿通穴を挿通するように配置されたボルト66を、ボルト穴に螺合することで底型60の各部材が固定される。
【0042】
ここで、ブローキャビティ割型40,40に取り付けられる一対の第1スペーサー部材42,42と、底型本体61の形状を変更することで、容器10のフランジ14の形状を変更することが可能である。また、底型60の第2スペーサー部材64を変更することで、容器10のフランジ14の厚さを調整することが可能である。さらに、底型60において底型本体61の底型面61dの形状を変更することで、例えば、容器10の底筒部13の底面形状を変えることができる。
【0043】
図2に戻って、取り出し部140は、ブロー成形部130で製造された容器10の首部12をネック型151から開放し、容器10をブロー成形装置100の外部へ取り出すように構成されている。
【0044】
<ブロー成形方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置100によるブロー成形方法について説明する。図7は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【0045】
まず、射出成形部110において、射出キャビティ型、射出コア型およびネック型151で形成された型空間に射出装置112から樹脂を射出し、有底円筒形状のプリフォーム20が製造される(ステップS101)。
【0046】
続いて、搬送機構150の回転板が所定角度回転し、射出成型時の保有熱を含んだ状態のプリフォーム20が温度調整部120に搬送される。温度調整部120においては、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる(ステップS102)。
【0047】
ここで、温度調整部120の温度調整用金型121においては、軸方向に配置された複数のヒータ122a、122bの温度差により、プリフォーム20の胴部では首部側が底部側よりも高い温度に加熱される。そのため、温度調整後のプリフォーム20の胴部の温度は首部側が底部側よりも高くなる。
【0048】
続いて、搬送機構150の回転板が所定角度回転し、温度調整されたプリフォーム20がブロー成形部130に搬送される。
ブロー成形部130においてプリフォーム20が所定の位置に配置されると、図8に示すように、ブローキャビティ割型40,40が型閉じされる(ステップS103)。図8に示す状態において、底型60は昇降機構133と連結されるが、底型60の位置は、ブローキャビティ割型40,40に対して下方に退避した位置にある。
【0049】
その後、図9に示すように、プリフォーム20内に延伸ロッド132が挿入され、延伸ロッド132の下降により、プリフォーム20が鉛直方向のみに僅かに延伸される(ステップS104)。
【0050】
続いて、図10に示すように、プリフォーム20内に、ブローノズルから加圧流体の一例であるブローエアーが導入される。同時に、延伸ロッド132も更に下降される。これにより、底型受け部41に膨出するようにプリフォーム20が容器10にブロー成形される(ステップS105)。このときのブローキャビティ割型40,40の温度は、60℃以上に設定することが好ましい。なお、最終ブロー成形において、プリフォーム20を加圧する媒体は空気に限定されることなく、空気以外の気体や水等の液体を加圧媒体としてもよい。
【0051】
ここで、ホットパリソン方式のブロー成形では、プリフォーム20の保有する内部熱量(保有熱)が大きいほどプリフォーム20が変形しやすくなる。上記のように、温度調整後のプリフォーム20の胴部の温度は首部側が底部側よりも高くなり、プリフォーム20の胴部では首部側が底部側よりも内部熱量が大きくなる。すなわち、プリフォーム20の胴部は、首部側の方が底部側よりも内部熱量が大きいので変形しやすい。
【0052】
したがって、プリフォーム20にブローエアーが導入されると、プリフォーム20の胴部では内部熱量の大きい首部側が先行して延伸され、内部熱量の小さい底部側が遅れて延伸される。これにより、プリフォーム20の底部側が過剰に延伸されなくなり、容器10の底筒部13の底面側に肉が残りやすくなる。
【0053】
このブロー成形時に延伸ロッド132を上昇させた後、底型60がZ方向に移動して上昇し、図11に示すように、容器10の底筒部13の底面側から膨出した部分が底型60に押圧される。このときの底型60の温度は、60℃以上に設定することが好ましい。なお、簡単のため、図11では延伸ロッド132の図示は省略している。
そうすると、図5に示す底型受け部41の上面41a、第1スペーサー部材42,42の内周面、底型本体61の底型面61dとの間でプリフォーム20が圧縮される。これにより、容器10の底筒部13の底面が平坦に加工されるとともに、底筒部13の底面にフランジ14が形成される(ステップS106)。
【0054】
容器10のフランジ14の成形が終了すると、容器10からブローエアーの排気と延伸ロッド132の引き抜き(さらなる上昇)が行われ、ブローキャビティ割型40,40および底型60が型開きされる(ステップS107)。これにより、ブロー成形後の容器10が移動可能となる。
【0055】
続いて、搬送機構150の回転板が所定角度回転し、容器10が取り出し部140に搬送される。取り出し部140において、容器10の首部12がネック型151から開放され、容器10がブロー成形装置100の外部へ取り出される(ステップS108)。
以上で、ブロー成形方法の一連の工程が終了する。その後、搬送機構150の回転板を所定角度回転させることで、上記のS101からS108の各工程が繰り返される。
【0056】
本実施形態によれば、プリフォーム20を延伸ロッド132で延伸させて容器10をブロー成形し、その後に底型60を型閉じして底型受け部41に膨出した容器10の部位を底型受け部41の上面41a、底型60の底型面61dで圧縮する。これにより、ストレッチブロー成形法で成形された容器10の底面側に、径方向に突出する固形状の構造体(フランジ14)を形成することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、第1スペーサー部材42,42、底型本体61、第2スペーサー部材64を交換することで、容器10に形成される固形状の構造体の形状(厚さ、幅および形状)を変更することができる。そのため、例えば、各々の構造体が異なっている複数種類の容器10を少量多品種生産するときにも容易に対応できる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態の変形例であって、容器10の底筒部13においてフランジ14を除く底面部13aに薄膜状の部位を形成する例を説明する。
なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の要素には同一符号を付し、重複説明はいずれも省略する。
【0059】
第2実施形態では、温度調整部120での温度調整工程と、ブロー成形部130でのブロー成形工程が、以下のように第1実施形態と相違する。
【0060】
図12(A)~(C)は、第2実施形態の温度調整部120における動作例を示す図である。
図12(A)は、ネック型151に保持されて搬送されるプリフォーム20を示している。プリフォーム20の底部には、射出成形時のホットランナーのゲート痕であるゲート部21がプリフォーム20の外側に突出するように形成されている。
【0061】
図12(B)は、プリフォーム20が温度調整用金型121に収容された状態を示している。第2実施形態の温度調整用金型121は、図3(B)に示す割型121a、121bと同様である。ただし、第2実施形態の温度調整用金型121は、プリフォーム20のゲート部21に臨む底部中央の部分に空気の逃げ穴がなく、温度調整用金型121の底部中央の部分はプリフォーム20の底部形状に倣った曲面である点で図3(B)の例と相違する。
【0062】
第2実施形態において、プリフォーム20が温度調整用金型121に収容されると、プリフォーム20のゲート部21は、温度調整用金型121の底部中央の曲面と接触する。温度調整部120でのプリフォーム20は射出成形時の保有熱を有し、変形しやすい状態にある。そのため、温度調整用金型121に接触したゲート部21は温度調整用金型121の底部の曲面に倣って変形しうる。ただし、図12(B)においても、プリフォーム20の底部中央にはゲート部21の樹脂が残り、比較的に厚肉の状態にある。
【0063】
プリフォーム20が温度調整用金型121に収容された後、図12(B)に示すように、プリフォーム20の底部に向けて加熱ロッド123がプリフォーム20内に挿入される。加熱ロッド123は、少なくともその先端部より上方側にヒータが内蔵され加熱されている。図12(C)に示すように、加熱ロッド123はプリフォーム20の底部中央を内側から押圧する。すると、加熱ロッド123の先端部と温度調整用金型121の間でプリフォーム20が挟み込まれ、挟み込まれた部分の樹脂が周囲に逃げてプリフォーム20の底部中央が薄肉となる。以上のようにして、温度調整部120において、プリフォーム20の底部中央の肉厚を周囲よりも薄くすることができる。また、上述の挟み込み処理の前または後にプリフォーム20を予備ブローして、プリフォーム20を胴部上方が拡径して胴部下方や底部が拡径していない形状に変形させるのが望ましい。さらに、予備ブローされたプリフォーム20は所定時間、温度調整用金型121と加熱ロッド123により、内外同時に温度調整させるのが好ましい。これにより、プリフォーム20に対し、最終ブローに適した肉厚分布と温度分布が付与できる。
その後、上記のプリフォーム20は、ブロー成形部130に搬送される。
【0064】
図13(A)、(B)は、第2実施形態のブロー成形部130における動作例を示す図である。
第2実施形態のブロー成形部130の動作は、図7のS103~S106の工程(図8図11)までは第1実施形態と同様である。
【0065】
ステップS106で底筒部13の底面にフランジ14が形成された後、図13(A)に示すように、延伸ロッド132が底型60に向けて降下する。そして、図13(B)に示すように、延伸ロッド132と底型60の底型面61dとの間で容器10の底面部13aが挟み込まれて押圧変形する。これにより、容器10の底面部13aの中央に、周囲より肉厚の薄い薄膜状の部位が形成される。
【0066】
その後、図7のS107の工程と同様に、延伸ロッド132の引き抜きが行われ、ブローキャビティ割型40,40および底型60が型開きされる。これにより、ブロー成形部130から容器10が移動可能となる。
【0067】
第2実施形態のブロー成形部130では、容器10の底面側にフランジ14を形成した後に、延伸ロッド132と底型60の間で容器10の底面部13aを押圧変形させて、底面部13aに周囲より肉厚の薄い薄膜状の部位を形成する。これにより、後工程において底面部13aの薄膜状の部位に穿刺等で輸液用の開口などを形成しやすくなり、容器10の使いやすさを一層向上させることができる。
【0068】
第2実施形態の温度調整部120では、加熱ロッドと温度調整用金型121によってプリフォーム20のゲート部21を挟み込み、ゲート部21の樹脂を周囲に移動させてプリフォーム20の底部中央を予め薄肉にしている。これにより、容器10の底面部13aに薄膜状の部位を形成するときの加工性が向上し、容器10の歩留まりを向上させることができる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0070】
例えば、上記実施形態での容器10はあくまで一例にすぎず、本発明の容器の全体形状は種々変更することができる。また、フランジ14の外周形状は、円形に限定されず、例えば多角形や歯車状であってもよい。また、容器10の底部側に形成される固形状の構造体はフランジに限定されることなく、例えば、円柱、多角柱、円錐、多角錐、円錐台、多角錐台、半球あるいはこれらの形状を組み合わせた任意の形状の構造体を形成することができる。また、容器10の底面形状は平坦面に限定されることなく、適宜変更することが可能である。
【0071】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
10…容器、11…胴部、12…首部、13…底筒部、14…フランジ、20…プリフォーム、21…ゲート部、40…ブローキャビティ割型、41…底型受け部、42…第1スペーサー部材、60…底型、61…底型本体、61d…底型面、64…第2スペーサー部材、100…ブロー成形装置、110…射出成形部、120…温度調整部、121…温度調整用金型、122a、122b…ヒータ、123…加熱ロッド、130…ブロー成形部、131…ブロー成形金型、132…延伸ロッド、133…昇降機構、140…取り出し部、150…搬送機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13