(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】医薬製剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20221128BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221128BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221128BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
(21)【出願番号】P 2021516266
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017711
(87)【国際公開番号】W WO2020218518
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019084695
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591166400
【氏名又は名称】富士製薬工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505272984
【氏名又は名称】株式会社キノファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】稲田 俊行
(72)【発明者】
【氏名】下平 隆樹
(72)【発明者】
【氏名】金山 良成
(72)【発明者】
【氏名】小野木 博
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲夫
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048315(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095494(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/020198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4545
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核粒子と該核粒子を被覆する被覆層とを備える顆粒の形態の医薬製剤であって、
前記核粒子が、薬物、第1の核粒子成分、第2の核粒子成分および界面活性剤を含んでなり、
前記薬物は、下記一般式(I)
【化1】
[式中、WはSまたはOを表す]
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物であり、
前記第1の核粒子成分は、針状および略柱状から選択される形状を有する少なくとも1種の結晶セルロースであり、
前記第2の核粒子成分は、略球状の少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤であり、
前記第1の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)に対する前記第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)の比が1:0.1~1:1.1であり、
前記第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)が15~110μmであり、
前記第1の核粒子成分の平均アスペクト比が1.8~10.0であり、
前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.7であり、
前記核粒子が第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との間に空隙を有する、前記医薬製剤。
【請求項2】
前記被覆層が、前記核粒子に隣接して位置する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記薬物が、前記第1の核粒子成分および第2の核粒子成分の少なくとも一方の表面に付着している、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記薬物が、下記式(I-a)
【化2】
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記薬物および前記界面活性剤が前記核粒子の空隙に保持されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.5である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との平均アスペクト比の差が0.5以上である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記第2の核粒子成分が、少なくとも2つの異なる成分からなる、請求項1~
7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との質量比が1:1~1:10である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記第1の核粒子成分および第2の核粒子成分の総質量と、前記界面活性剤の質量との質量比が1:0.01~1:0.6である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記界面活性剤と前記薬物との質量比が1:0.1~1:10である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記第1の核粒子成分および第2の核粒子成分の総質量と、前記被覆層の質量との質量比が1:0.05~1:0.3である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記第2の核粒子成分が、糖類および無機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記第2の核粒子成分が、ブドウ糖、果糖、乳糖、乳糖水和物、ショ糖、白糖、圧縮糖、精製粉末砂糖、アルギン酸アンモニウム、デンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、マンニトール、ソルビトール、リン酸塩、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート類、デキストリン、デキストロース、ポリメタクリレート、パルミトステアリン酸グリセリン、イソマルト、ラクチトール、カオリン、ラクチトール、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、トレハロース、キシリトール、アルファー化デンプン、変性アルファー化デンプン、タピオカデンプン、塩化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つのものである、請求項1~
13のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記非イオン性界面活性剤がポリソルベートである、請求項
15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記被覆層が、水溶性コーティング剤を含む、請求項1~
16のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記水溶性コーティング剤が、ポリアルキレングリコール、多糖類、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一つの成分である、請求項
17に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記水溶性コーティング剤が、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタアクリル酸コポリマー、ビニルピリジンコポリマー、アルキルビニルピリジンコポリマー、アミノセルロース誘導体、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリレートコポリマー、セルロースアセテート-N,N-ジ-n-ブチルヒドロキシルプロピルエーテル、ビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とのコポリマー、アルキルビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とのコポリマー、ビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とビニルモノマーとのコポリマー、アルキルビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とビニルモノマーとのコポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジン-メタクリル酸コポリマー、ポリ-2-(ビニルフェニル)グリシン、モルホリノ-N-β-エチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、セルロースアセテートフタレート、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、ゼイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
17または
18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記医薬製剤の凝集度が70%以下である、請求項1~
19のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記医薬製剤の凝集度が前記核粒子の凝集度よりも低い、請求項1~
20のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記医薬製剤の体積分布基準の50%粒子径(D50)が100~400μmである、請求項1~
21のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項23】
請求項1~
22のいずれか一項に記載の医薬製剤を含んでなり、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、散剤および丸剤からなる群から選択される剤形を有する製剤。
【請求項24】
核粒子と該核粒子を被覆する被覆層とを備える顆粒の形態の医薬製剤の製造方法であって、
(a)第1の核粒子成分と、第2の核粒子成分とを混合して核粒子混合物を得る工程、
(b)界面活性剤と溶媒との混合物に薬物を溶解または懸濁して混合液を得る工程、
(c)工程(a)で得られた核粒子混合物と、工程(b)で得られた混合液とを接触させて第1の核粒子成分、第2の核粒子成分、薬物および界面活性剤を含む核粒子を得る工程、および、
(d)工程(c)で得られた核粒子を被覆して医薬製剤を得る工程
を含み、
前記薬物は、下記一般式(I)
【化3】
[式中、Wは、SまたはOを表す]
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物であり、
前記第1の核粒子成分は、針状および略柱状から選択される形状を有する少なくとも1種の結晶セルロースであり、
前記第2の核粒子成分は、略球状の少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤であり、
前記第1の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)に対する前記第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)の比が1:0.1~1:1.1であり、
前記第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)が15~110μmであり、
前記第1の核粒子成分の平均アスペクト比が1.8~10.0であり、
前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.7であり、
前記核粒子が第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との間に空隙を有する、前記製造方法。
【請求項25】
前記被覆層が、前記核粒子に隣接して位置する、請求項
24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記薬物が、前記第1の核粒子成分および第2の核粒子成分の少なくとも一方の表面に付着している、請求項
24または
25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記薬物が、下記式(I-a)
【化4】
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物である、請求項
24~
26のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項28】
前記薬物および前記界面活性剤が前記核粒子の空隙に保持されている、請求項
24~
27のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項29】
前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.5である、請求項
24~28のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項30】
前記第2の核粒子成分が、少なくとも2つの異なる成分からなる、請求項
24~
29のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項31】
(e)工程(d)で得られた医薬製剤に薬学的に許容可能な添加剤を加えて造粒して、顆粒状の製剤を得る工程をさらに含む、請求項
24~
30のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項32】
(e’)工程(d)で得られた医薬製剤を、ゼラチン、または植物由来の原料からなる皮膜に封入して、カプセル状の製剤を得る工程をさらに含む、請求項
24~
30のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項33】
請求項1~
22のいずれか一項に記載の医薬製剤を打錠成形して錠剤を得る工程を含む、錠剤の製造方法。
【請求項34】
請求項1~
22のいずれか一項に記載の医薬製剤をカプセルに封入する工程を含んでなる、カプセル剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、先に出願された日本国における特許出願である特願2019-84695号(出願日:2019年4月25日)に基づく優先権の主張を伴うものである。この先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
本発明は、医薬製剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
CDK9阻害剤であるN-[5-フルオロ-2-(1-ピペリジニル)フェニル]イソニコチンチオアミドを始めとするアニリン誘導体が、ウイルス産生を抑制する抗ウイルス薬として用いられ得ることが知られている(例えば、非特許文献1~4)。
【0004】
しかしながら、CDK9阻害剤の中には、水に対する溶解性が低いため、製剤中に含有された阻害剤が有効量溶解して十分な薬効を示すことが困難なものも存在している。
【0005】
一般に、難水溶性薬物を治療上有効量含み得る固形製剤としては、ソフトカプセル剤が広く用いられている(例えば、特許文献1)。しかしながら、ソフトカプセル剤は、錠剤等の他の固形製剤と比較して直径が大きい場合もあるため、嚥下能力の低い小児や高齢者、嚥下能力が低下した患者等には服用しにくいという問題がある。また、ソフトカプセル剤では、その性質上、製造方法によっては液漏れしやすいというリスクがある。さらには、ソフトカプセル剤は柔らかく、容易に変形することから、人による目視により、または専用の検査機械を用いて変形の有無を検査しなければなら等、製造コストの面からも、錠剤等の他の固形製剤と比較して高いという問題点がある。
【0006】
一方で、難水溶性薬物を錠剤に配合する場合には、打錠前に難水溶性薬物が溶媒に溶解されるが、錠剤の製剤化に用いられ得る量の溶媒に有効量の難水溶性薬物を溶解することが困難である。
【0007】
また、薬物と可溶化物質とが組み合わされて配合された顆粒を含む薬物製剤が知られており、可溶化物質として界面活性剤が用いられ得ること、顆粒がコーティングされ得ることが知られている(例えば、特許文献2)。しかしながら、界面活性剤は、付着性・粘着性を有し、流動性を低下させることから、錠剤等の医薬製剤の調製に用いる場合には配合量が制限されるという問題点がある。
【0008】
このように、CDK9阻害剤等の難水溶性薬物を医薬製剤中に多量に含有させるために界面活性剤等の可溶化物質を用いる場合には、製剤化の過程で十分な流動性を得ることができないため、流動性の低さが製剤化に影響を及ぼす錠剤等の製剤化において治療上有効量の薬物を配合することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2003-508386号公報
【文献】特表2007-517062号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ajiro et. al., Clin Cancer Res. 2018 Sep 15;24(18):4518-4528. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-17-3119. Epub 2018 Apr 30
【文献】Tanaka et. al., Antiviral Res. 2016 Sep;133:156-64. doi: 10.1016/j.antiviral.2016.08.008. Epub 2016 Aug 8
【文献】Okamoto et. al., Antiviral Res. 2015 Nov;123:1-4. doi: 10.1016/j.antiviral.2015.08.012. Epub 2015 Aug 21
【文献】Yamamoto et. al., J Clin Invest. 2014 Aug;124(8):3479-88. doi: 10.1172/JCI73805. Epub 2014 Jul 8
【発明の概要】
【0011】
このような状況に鑑み、治療上有効量のCDK9阻害剤を含み、実際の製造に耐え得る優れた流動性を有する医薬製剤の開発が求められている。
【0012】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の形状を有する核粒子成分と共に薬物(CDK9阻害剤)を含む核粒子と、該核粒子を被覆する被覆層とを備える医薬製剤を調製したところ、該医薬製剤に界面活性剤および薬物を多量に含有させることができ、かつ、優れた流動性を有することを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0013】
本発明には、以下の発明が包含される。
[1]核粒子と該核粒子を被覆する被覆層とを備える顆粒の形態の医薬製剤であって、
前記核粒子が、薬物、第1の核粒子成分、第2の核粒子成分および界面活性剤を含んでなり、
前記薬物は、下記一般式(I)
【化1】
[式中、WはSまたはOを表す]
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物であり、
前記第1の核粒子成分は、針状および略柱状から選択される形状を有する少なくとも1種の結晶セルロースであり、
前記第2の核粒子成分は、略球状の少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤である、前記医薬製剤。
[2]前記薬物が、下記式(I-a)
【化2】
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物である、[1]に記載の医薬製剤。
[3]前記第1の核粒子成分の平均アスペクト比が1.8以上である、[1]または[2]に記載の医薬製剤。
[4]前記第1の核粒子成分の平均アスペクト比が1.8~10.0である、[3]に記載の医薬製剤。
[5]前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.7である、[1]~[4]のいずれかに記載の医薬製剤。
[6]前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.5である、[5]に記載の医薬製剤。
[7]前記第1の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)に対する前記第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)の比が1:1.1以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の医薬製剤。
[8]前記第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との平均アスペクト比の差が0.5以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の医薬製剤。
[9]前記第2の核粒子成分が、少なくとも2つの異なる成分からなる、[1]~[8]のいずれかに記載の医薬製剤。
[10]前記第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との質量比が1:1~1:10である、[1]~[9]のいずれかに記載の医薬製剤。
[11]前記第1の核粒子成分および第2の核粒子成分の総質量と、前記界面活性剤の質量との質量比が1:0.01~1:0.6である、[1]~[10]のいずれかに記載の医薬製剤。
[12]前記界面活性剤と前記薬物との質量比が1:0.1~1:10である、[1]~[11]のいずれかに記載の医薬製剤。
[13]前記第1の核粒子成分および第2の核粒子成分の総質量と、前記被覆層の質量との質量比が1:0.05~1:0.3である、[1]~[12]のいずれかに記載の医薬製剤。
[14]前記第2の核粒子成分が、糖類および無機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤である、[1]~[13]のいずれかに記載の医薬製剤。
[15]前記第2の核粒子成分が、ブドウ糖、果糖、乳糖、乳糖水和物、ショ糖、白糖、圧縮糖、精製粉末砂糖、アルギン酸アンモニウム、デンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、マンニトール、ソルビトール、リン酸塩、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート類、デキストリン、デキストロース、ポリメタクリレート、パルミトステアリン酸グリセリン、イソマルト、ラクチトール、カオリン、ラクチトール、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、トレハロース、キシリトール、アルファー化デンプン、変性アルファー化デンプン、タピオカデンプン、塩化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つのものである、[1]~[14]のいずれかに記載の医薬製剤。
[16]前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、[1]~[15]のいずれかに記載の医薬製剤。
[17]前記非イオン性界面活性剤がポリソルベートである、[16]に記載の医薬製剤。
[18]前記被覆層が、水溶性コーティング剤を含む、[1]~[17]のいずれかに記載の医薬製剤。
[19]前記水溶性コーティング剤が、ポリアルキレングリコール、多糖類、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一つの成分である、[18]に記載の医薬製剤。
[20]前記水溶性コーティング剤が、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタアクリル酸コポリマー、ビニルピリジンコポリマー、アルキルビニルピリジンコポリマー、アミノセルロース誘導体、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリレートコポリマー、セルロースアセテート-N,N-ジ-n-ブチルヒドロキシルプロピルエーテル、ビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とのコポリマー、アルキルビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とのコポリマー、ビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とビニルモノマーとのコポリマー、アルキルビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とビニルモノマーとのコポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジン-メタクリル酸コポリマー、ポリ-2-(ビニルフェニル)グリシン、モルホリノ-N-β-エチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、セルロースアセテートフタレート、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、ゼイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である、[18]または[19]に記載の医薬製剤。
[21]前記医薬製剤の凝集度が70%以下である、[1]~[20]のいずれかに記載の医薬製剤。
[22]前記医薬製剤の凝集度が前記核粒子の凝集度よりも低い、[1]~[21]のいずれかに記載の医薬製剤。
[23]前記医薬製剤の体積分布基準の50%粒子径(D50)が100~400μmである、[1]~[22]のいずれかに記載の医薬製剤。
[24][1]~[23]のいずれかに記載の医薬製剤を含んでなり、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、散剤および丸剤からなる群から選択される剤形を有する製剤。
[25]核粒子と該核粒子を被覆する被覆層とを備える顆粒の形態の医薬製剤の製造方法であって、
(a)第1の核粒子成分と、第2の核粒子成分とを混合して核粒子混合物を得る工程、
(b)界面活性剤と溶媒との混合物に薬物を溶解または懸濁して混合液を得る工程、
(c)工程(a)で得られた核粒子混合物と、工程(b)で得られた混合液とを接触させて第1の核粒子成分、第2の核粒子成分、薬物および界面活性剤を含む核粒子を得る工程、および、
(d)工程(c)で得られた核粒子を被覆して医薬製剤を得る工程
を含み、
前記薬物は、下記一般式(I)
【化3】
[式中、Wは、SまたはOを表す]
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物であり、
前記第1の核粒子成分は、針状および略柱状から選択される形状を有する少なくとも1種の結晶セルロースであり、
前記第2の核粒子成分は、略球状の少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤である、前記製造方法。
[26]前記薬物が、下記式(I-a)
【化4】
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物である、[25]に記載の製造方法。
[27]前記第1の核粒子成分の平均アスペクト比が1.8以上である、[25]または[26]に記載の製造方法。
[28]前記第1の核粒子成分の平均アスペクト比が1.8~10.0である、[27]に記載の製造方法。
[29]前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.7である、[25]~[28]のいずれかに記載の製造方法。
[30]前記第2の核粒子成分の平均アスペクト比が1.0~1.5である、[29]に記載の製造方法。
[31]前記第1の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)に対する前記第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)の比が1:1.1以下である、[25]~[30]のいずれかに記載の製造方法。
[32]前記第2の核粒子成分が、少なくとも2つの異なる成分からなる、[25]~[31]のいずれかに記載の製造方法。
[33](e)工程(d)で得られた医薬製剤に薬学的に許容可能な添加剤を加えて造粒して、顆粒状の製剤を得る工程をさらに含む、[25]~[32]のいずれかに記載の製造方法。
[34](e’)工程(d)で得られた医薬製剤を、ゼラチン、または植物由来の原料からなる皮膜に封入して、カプセル状の製剤を得る工程をさらに含む、[25]~[32]のいずれかに記載の製造方法。
[35][1]~[23]のいずれかに記載の医薬製剤を打錠成形して錠剤を得る工程を含む、錠剤の製造方法。
[36][1]~[23]のいずれか一項に記載の医薬製剤をカプセルに封入する工程を含んでなる、カプセル剤の製造方法。
【0014】
本発明によれば、治療上有効量の薬物を含み、実際の製造に耐え得る優れた流動性を有する顆粒の形態の医薬製剤を提供することができる。また、本発明によれば、医薬製剤の流動性の低下をもたらす凝集を抑制することができる。その結果、医薬製剤において優れた流動性が実現されるため、流動性の低下により製剤化が阻害される錠剤等の医薬製剤に対しても、難水溶性成分を多量に配合することができる。さらに、本発明の医薬製剤は、長期間保存した場合でも、核粒子に含まれる界面活性剤が医薬製剤の表面に漏出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1AおよびBは、第1の核粒子成分(針状結晶セルロース)の電子顕微鏡写真である。
図1Aは針状結晶セルロース(CEOLUS KG-1000)の電子顕微鏡写真であり、
図1Bは針状結晶セルロース(CEOLUS UF-702)の電子顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、第2の核粒子成分(略球状粒子:乳糖水和物)の電子顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、第2の核粒子成分(略球状粒子:トウモロコシデンプン)の電子顕微鏡写真である。
【発明の具体的説明】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。本明細書中において、「AまたはB」なる表現を用いて記載した場合は、特に記載がなくまた文脈から限定的に解釈される場合を除き、一方あるいは両者のいずれも含む意味である。
【0017】
[医薬製剤]
本発明の医薬製剤は、核粒子と該核粒子を被覆する被覆層とを備える顆粒の形態の医薬製剤である。以下、核粒子および被覆層のそれぞれについて説明する。
【0018】
<核粒子>
核粒子は、薬物、第1の核粒子成分、第2の核粒子成分および界面活性剤を含んでなり、第1の核粒子成分は針状および/または略柱状の結晶セルロース(以下、単に「針状結晶セルロース」という場合がある。)であり、第2の核粒子成分は略球状を有する少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤である。
【0019】
核粒子は、形状が大きく異なる第1の核粒子成分と第2の核粒子成分とを含んでなるため、第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との間に多くの空隙を形成し得る。その結果、核粒子中に、液体成分が内包し得る表面積が大きく生じるため、核粒子中に多量の液体成分を含有し得る。そして、核粒子が、液体成分として、可溶化剤として用いられる界面活性剤を多量に含有し得ることから、難水溶性の薬物を溶解または懸濁させることができる。理論に拘束されるものではないが、このようなメカニズムにより、核粒子中に多量の難溶性の薬物を含有する医薬製剤を製造することが可能となると考えられる。
【0020】
(第1の核粒子成分)
本発明の一実施態様によれば、核粒子に使用される第1の核粒子成分は、針状結晶セルロースである。本発明で用いられる第1の核粒子成分である針状結晶セルロースは、医薬製剤の調製において添加され得る結晶セルロースに由来する。針状結晶セルロースとしては、本発明の効果が奏されるのに十分な割合の針状および/または略柱状の結晶を含んでいればよい。第1の核粒子成分における針状および/または略柱状の結晶セルロースの割合の下限値は、特に限定されないが、結晶(粒子)の個数として、好ましくは60%、より好ましくは70%、より一層好ましくは80%である。また、上限値は、例えば、100%、98%、95%、90%等とすることができる。第1の核粒子成分における針状および/または略柱状の結晶セルロースの割合の範囲は、特に限定されないが、結晶(粒子)の個数として、好ましくは60~100%、より好ましくは70~100%、より一層好ましくは80~100%である。本明細書において「針状結晶セルロース」とは、電子顕微鏡により測定される画像上(平面に転写された形状)の結晶セルロースの長軸方向の断面において、縦横の長さに顕著な差がある結晶セルロースをいう。ここで、縦横の長さに顕著な差は、例えば、アスペクト比で表すことができる。
【0021】
具体的には、第1の核粒子成分の平均アスペクト比は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、第2の核粒子成分の平均アスペクト比よりも大きく、下限値としては、好ましくは1.8、より好ましくは2.2、より一層好ましくは2.5である。また、第1の核粒子成分の平均アスペクト比の上限値は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、10、8等とすることができる。また、第1の核粒子成分の平均アスペクト比の範囲としては、特に限定されないが、好ましくは1.8~10、より好ましくは2.2~10、より一層好ましくは2.5~10である。本明細書において、核粒子成分の「アスペクト比」とは、電子顕微鏡を用いた粒子画像解析における、核粒子成分の短径に対する長径の比の値(長径/短径)を意味する。また、核粒子成分の「平均アスペクト比」とは、任意に選択した10個以上の核粒子成分のアスペクト比を測定し、アスペクト比の値の上位10%および下位10%の核粒子成分のアスペクト比の値を除外した核粒子成分のアスペクト比の平均値を意味する。
【0022】
第1の核粒子成分の量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、医薬製剤の総質量に対して、好ましくは5~50質量%である。
【0023】
(第2の核粒子成分)
本発明の一実施態様によれば、核粒子に使用される第2の核粒子成分は、略球状の薬学的に許容可能な添加剤である。本明細書において「略球状」とは、電子顕微鏡により測定される画像上(平面に転写された形状)において、縦横の長さに顕著な差が無い球状に近似する形状をいい、針状および略柱状を含まない。したがって、一つの実施態様によれば、第2の核粒子成分は非針状かつ非柱状の薬学的に許容可能な添加剤である。「略球状」は、電子顕微鏡により測定される画像が必ずしも完全な球状そのものである必要はなく、例えば、歪んだ球状、楕円体状、多面体状(立方体状を含む)、角が取れた多面体状であってもよい。
【0024】
第2の核粒子成分の平均アスペクト比は、第1の核粒子成分の平均アスペクト比よりも小さく、好ましくは1.0~1.65、より好ましくは1.0~1.5であり、より一層好ましくは1.0~1.3、さらにより一層好ましくは1.0~1.2である。第2の核粒子成分に関し、核粒子成分のアスペクト比および核粒子成分の平均アスペクト比は、それぞれ第1の核粒子成分について定義したものと同様である。
【0025】
本発明の医薬製剤における第2の核粒子成分の量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、医薬製剤の総質量に対して、好ましくは30~90質量%である。
【0026】
第2の核粒子成分の粒子径は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)が、第1の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)に対する比(第1の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50):第2の核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50))として、好ましくは1:1.1以下であり、より好ましくは1:0.8以下、より一層好ましくは1:0.5以下、さらにより一層好ましくは1:0.1以下となるように調整される。
【0027】
第2の核粒子成分は、1種の成分を単独で用いてもよく、2種以上の成分を組み合わせて用いてもよいが、好ましくは体積分布基準の50%粒子径(D50)が異なる2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いられる。例えば、第2の核粒子成分が2種の成分から構成される場合、それぞれの成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)は異なることが好ましい。なお、本発明において、核粒子成分が2種以上の成分を含む場合、核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)は、核粒子成分を構成する成分の全質量に対する各成分の質量の割合を算出し、各成分についてその割合と体積分布基準の50%粒子径(D50)との積を算出し、それらの積の合計として算出される。例えば、核粒子成分が2種の成分AおよびBを含み、成分AおよびBの質量がそれぞれaおよびbであり、AおよびBの体積分布基準の50%粒子径(D50)がそれぞれD50
AおよびD50
Bである場合、核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)は以下の式により算出される:
【数1】
。
【0028】
第2の核粒子成分を構成する成分は、薬学的に許容可能な成分であれば特に限定されないが、例えば、糖類(糖、糖水和物、糖アルコール等を含む)、無機化合物等が挙げられる。
【0029】
糖としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖等の単糖類、乳糖およびショ糖等の二糖類、デンプン等の多糖類等が挙げられる。デンプンとしては、例えば、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン等が挙げられる。糖としては、好ましくはトウモロコシデンプンが用いられる。
【0030】
糖水和物としては、特に限定されないが、例えば、上述した糖の任意の水和物が挙げられ、好ましくは乳糖水和物が用いられる。
【0031】
糖アルコールとしては、特に限定されないが、任意の糖に由来する糖アルコールが挙げられ、好ましくはマンニトールまたはソルビトールが用いられる。
【0032】
無機化合物としては、特に限定されないが、無水リン酸カルシウム等のリン酸塩等が挙げられる。
【0033】
第1の核粒子成分は、第2の核粒子成分よりも大きい平均アスペクト比を有し、第1および第2の核粒子成分の平均アスペクト比の差が大きいことが好ましい。具体的には、第1および第2の核粒子成分の平均アスペクト比の差(第1の核粒子成分の平均アスペクト比-第2の核粒子成分の平均アスペクト比)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、より一層好ましくは0.7以上である。
【0034】
第1および第2の核粒子成分の混合物(核粒子混合物)のかためかさ密度とゆるみかさ密度との差(かためかさ密度-ゆるみかさ密度)は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、下限値としては、好ましくは0.15、より好ましくは0.16、より一層好ましくは0.17、上限値としては、好ましくは0.25、より好ましくは0.24、より一層好ましくは0.23であり、範囲としては、好ましくは0.15~0.25、より好ましくは0.16~0.24、より一層好ましくは0.17~0.23である。なお、本発明において、かためかさ密度およびゆるみかさ密度は、例えば、市販の粉体特性評価装置(パウダテスタ(登録商標)PT-R、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、パウダテスタを用いて、第17改正日本薬局方に記載されている、かさ密度およびタップ密度測定法第3法の測定用容器と同サイズの円筒容器へ核粒子混合物を篩いを通して上方から均一に供給し、上面をすり切って秤量することによって疎充填の状態のかさ密度(ゆるみかさ密度)を測定する。次いで、この容器の上に補助円筒をはめ、この上縁まで核粒子混合物を加えてタッピングを180回行なう。終了後、補助円筒を外して容器の上面で核粒子混合物をすり切って秤量し、タッピング後の密充填した場合のかさ密度(かためかさ密度)を測定する。
【0035】
第1および第2の核粒子成分を構成する粒子の径(粒子径)は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、第1の核粒子成分については、体積分布基準の50%粒子径(D50)として、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~150μm、より一層好ましくは70~100μmである。また、第2の核粒子成分については、体積分布基準の50%粒子径(D50)として、好ましくは1~300μm、より好ましくは5~200μm、より一層好ましくは10~150μmである。本発明における核粒子成分を構成する粒子の径および体積分布基準の50%粒子径は、いずれも、例えば、市販の粒度分布計(例えば、Mastersizer3000、Spectris製)を用いて、レーザー回折法(測定方法:乾式、散乱強度:1%以上、光散乱モデル:Mie散乱理論)により測定することができる。なお、体積分布基準の50%粒子径(D50)とは、レーザー回折法により測定して得られた体積基準粒度分布において、全体積を100%とした累積体積分布曲線における50%となる体積の粒子径を意味する。
【0036】
第1および第2の核粒子成分の総質量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、医薬製剤の総質量に対して、例えば、20~90重量%である。
【0037】
第1の核粒子成分と第2の核粒子成分との質量比(第1の核粒子成分の質量:第2の核粒子成分の質量)は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば1:1~1:10である。
【0038】
(界面活性剤)
本発明の医薬製剤は、核粒子中において、薬物をその中に溶解または懸濁し得る界面活性剤を含む。界面活性剤としては、薬学的に許容可能なものである限り特に限定されないが、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば、第1級アミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルポリオキシエチレンアミン等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、ロジン酸塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、リン酸アルキル塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、N-アルキルβ-アミノプロピオン酸、N-アルキルスルホベタイン、N-アルキルヒドロキシスルホベタイン、レシチン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのうち、界面活性剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、より好ましくはポリソルベート、より一層好ましくはポリソルベート80である。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、界面活性剤は、例えば、水、アルコール等に溶解させて用いてもよい。
【0039】
界面活性剤の量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、核粒子成分の総量に対する質量比(核粒子成分の総質量:界面活性剤の質量)として、下限値が、好ましくは1:0.001、より好ましくは1:0.01である。また、上限値は、特に限定されないが、好ましくは1:0.6、より好ましくは1:0.4、より一層好ましくは1:0.3である。また、核粒子成分の総量に対する界面活性剤の質量比の範囲は、特に限定されないが、好ましくは1:0.001~1:0.6、より好ましくは1:0.01~1:0.4、より一層好ましくは1:0.01~1:0.3である。
【0040】
(薬物)
本発明の医薬製剤は、核中に、下記一般式(I)
【化5】
[式中、WはSまたはOを表す]
で表されるアニリン誘導体もしくはその薬学的に許容可能な塩、またはそれらの水和物含んでなる。薬物は、上述した界面活性剤中に溶解または懸濁した状態(以下、「混合液」という場合がある。)で存在することが好ましい。なお、本明細書において「溶媒または懸濁」とは、薬物の一部が溶解し、他の一部が懸濁している状態も包含する。
【0041】
一般式(I)で表される薬物としては、具体的には、下記の式(I-a)で表されるN-[5-フルオロ-2-(1-ピペリジニル)フェニル]イソニコチンチオアミド(FIT-039)を挙げることができる。
【化6】
【0042】
本発明の医薬製剤は、上記薬物に加えて他の薬物を含んでいてもよい。他の薬剤としては、例えば、抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫力強化剤等を挙げることができる。
【0043】
本発明の医薬製剤における薬物の量は、本発明の医薬製剤が所望の効果を奏する限り特に限定されないが、核粒子成分の総量に対する質量比(薬物の質量:核粒子成分の総質量)として、下限値が、好ましくは0.01:1、より好ましくは0.02:1、より一層好ましくは0.03:1である。また、上限値は、特に限定されないが、好ましくは0.5:1、より好ましくは0.2:1である。また、核粒子成分の総量に対する薬物の質量比の範囲は、特に限定されないが、好ましくは0.01:1~0.5:1、より好ましくは0.02:1~0.5:1、より一層好ましくは0.03:1~0.2:1である。
【0044】
また、本発明の医薬製剤における薬物の量は、本発明の医薬製剤が所望の効果を奏する限り特に限定されないが、界面活性剤に対する質量比(薬物の質量:界面活性剤の質量)として、下限値が、好ましくは0.05:1、より好ましくは0.1:1、より一層好ましくは0.5:1である。また、上限値は、特に限定されないが、好ましくは5:1、より好ましくは3:1である。また、界面活性剤に対する薬物の質量比の範囲は、特に限定されないが、好ましくは0.05:1~5:1、より好ましくは0.1:1~5:1、より一層好ましくは0.5:1~3:1である。
【0045】
本発明の医薬製剤における核粒子の凝集度は、特に限定されないが、好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下、より一層好ましくは50%以下である。
【0046】
凝集度の測定は、市販の粉体特性評価装置を用いて行うことができる。粉体特性評価装置としては、例えば、パウダテスタ(登録商標)PT-R(ホソカワミクロン株式会社製)が挙げられる。測定条件は、例えば、以下の通りである。
篩目開き:(上段)710μm、(中段)355μm、(下段)250μm
試料採取量:2gまたは3g
振動時間:119秒
【0047】
上記の条件下で、下記式の各項目の値を測定する。
X=[上段の篩に残った粉体質量]/投入した粉体質量×100
Y=[中段の篩に残った粉体質量]/投入した粉体質量×100×0.6
Z=[下段の篩に残った粉体質量]/投入した粉体質量×100×0.2
上記X、Y、Zの3つの値の合計をもって、凝集度(%)とする。
【0048】
<被覆層>
被覆層は、核粒子を被覆して、核粒子に含まれる界面活性剤や薬物が医薬製剤の表面に漏出することを抑制することができる。被覆層により界面活性剤の漏出が抑制される結果、医薬製剤の凝集が抑制され、医薬製剤の流動性の低下を抑制することができる。
【0049】
被覆層を構成する成分としては、特に限定されないが、例えば、水溶性コーティング剤等が挙げられる。水溶性コーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
一つの実施形態によれば、水溶性コーティング剤は、好ましくはポリアルキレングリコールおよび多糖類またはその誘導体から選択される少なくとも一つの成分を含む。
【0051】
多糖類またはその誘導体としては、好ましくはセルロース誘導体であり、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。セルロース誘導体は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0053】
また、別の好ましい実施形態によれば、被覆層に使用されるコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタアクリル酸コポリマー、ビニルピリジンコポリマー、アルキルビニルピリジンコポリマー、アミノセルロース誘導体、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリレートコポリマー、セルロースアセテート-N,N-ジ-n-ブチルヒドロキシルプロピルエーテル、ビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とのコポリマー、アルキルビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とのコポリマー、ビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とビニルモノマーとのコポリマー、アルキルビニルピリジンとアクリル酸系遊離酸とビニルモノマーとのコポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジン-メタクリル酸コポリマー、ポリ-2-(ビニルフェニル)グリシン、モルホリノ-N-β-エチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、セルロースアセテートフタレート、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、ゼイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマー等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
一つの実施形態によれば、コーティング剤は可塑剤と組み合わせて用いてもよい。可塑剤としては、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、セバシン酸ジブチル、ソルビトール、デキストリン、フタル酸ジエチル、グリセリン、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、精製水、ソルビトールソルビタン液、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クロロブタノール等が挙げられる。これらの可塑剤のうち、好ましくはポリアルキレングリコール、より好ましくはポリエチレングリコール(マクロゴール)が用いられる。これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
被覆層を構成する成分は、そのまま用いてもよいが、必要に応じて水、アルコール等に溶解して用いてもよい。
【0056】
本発明の医薬製剤における被覆層の量は、本発明の医薬製剤が所望の効果を奏する限り特に限定されないが、核粒子の総質量に対する質量比(被覆層の質量:核粒子の総質量)として、下限値が、好ましくは0.001:1、より好ましくは0.002:1である。また、上限値は、特に限定されないが、好ましくは0.1:1、より好ましくは0.05:1、より一層好ましくは0.02:1である。また、核粒子の総質量に対する被覆層の質量比の範囲は、特に限定されないが、好ましくは0.001:1~0.1:1、より好ましくは0.002:1~0.05:1、より一層好ましくは0.002:1~0.02:1である。
【0057】
<その他の成分>
本発明の医薬製剤は、本発明の効果を妨げない限り、上述した核粒子および被覆層を構成する成分とは異なる薬学的に許容可能な添加剤を含んでいてもよい。添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、流動化剤、甘味料、香料、着色料等が挙げられる。これらの添加物は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。また、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明の医薬製剤は、核粒子を被覆する被覆層を備えることから、核粒子に含まれる界面活性剤や薬物の医薬製剤からの漏出が抑制され、その結果、医薬製剤の凝集を抑制することができる。
【0059】
医薬製剤の凝集度は、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、より一層好ましくは50%以下である。医薬製剤の凝集度の測定は、上述した核粒子の凝集度の測定と同様の方法により行うことができる。
【0060】
また、医薬製剤の凝集度は、核粒子の凝集度よりも改善している(低い)ことが好ましい。
【0061】
医薬製剤の粒子径は、特に限定されないが、好ましくは体積分布基準の50%粒子径(D50)が100~400μmであり、より好ましくは120~250μmである。医薬製剤の体積分布基準の50%粒子径(D50)の測定は、上述した核粒子成分の体積分布基準の50%粒子径(D50)の測定と同様の方法により行うことができる。
【0062】
本発明の医薬製剤は、そのまま用いてもよいが、各種の剤形を有する製剤として用いてもよい。製剤の剤形としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが例えば、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤等が挙げられる。これらのうち、好ましくは顆粒剤、錠剤およびカプセル剤である。また、カプセル剤としてはハードカプセル剤が挙げられる。
【0063】
[医薬製剤の製造方法]
本発明の医薬製剤の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。医薬製剤の製造における条件は、核粒子成分、界面活性剤、薬物、被覆層成分の種類等により、適宜調整することができる。薬物としては、上述した一般式(I)で表される薬物が用いられる。具体的には、本発明の医薬製剤は、例えば、以下の手順に従って製造することができる。まず、針状および/または略柱状の結晶セルロースである第1の核粒子成分と、略球状の少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤である第2の核粒子成分とを、流動層造粒機(例えば、FD-MP-01D、株式会社パウレック製)を用いて混合して、核粒子混合物(一次粒子)を得る。一方で、界面活性剤に薬物を添加して、撹拌機(NZ-1200、東京理化器械株式会社製)を用いて撹拌して、薬物が溶解または懸濁した混合液(薬物液)を得る。次いで、得られた混合物と混合液とを流動層造粒機を用いて接触させて、混合物中の核粒子に混合液を付着させて核粒子を得る。ここで、混合物と混合液との接触は、例えば、混合液を混合物に噴霧する方法、混合液中に混合物を浸漬する方法等により行われる。次いで、核粒子成分を必要に応じて乾燥させた後、被覆層を構成する成分(被覆層成分)で核粒子を被覆する。ここで、核粒子の被覆は、例えば、被覆層成分を核に噴霧する方法、被覆層成分中に核粒子を浸漬する方法等により行われる。次いで、核粒子と該核粒子を被覆する被覆層とを有する粒子を乾燥させて、医薬製剤を得る。
【0064】
医薬製剤を打錠成形する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。打錠成形における条件は、特に限定されず、核粒子成分、界面活性剤、薬物、被覆層成分の種類等により、適宜調整することができる。医薬製剤を打錠成形する方法としては、例えば、医薬製剤をロータリー式打錠機、単発式打錠機等の打錠機を用いて打錠する方法が挙げられる。これらのうち、ロータリー打錠機を用いて医薬製剤を打錠成形することが好ましい。ロータリー打錠機としては、例えば、菊水製作所株式会社製のVIRGO 0512SS2AY等が挙げられる。錠剤が、本発明の医薬製剤の他に薬学的に許容可能な添加物を含む場合には、予め本発明の医薬製剤と薬学的に許容可能な添加物とを混合した後に打錠する。医薬製剤と添加剤とを混合する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。医薬製剤と添加剤とを混合する方法としては、例えば、V型混合機等の混合機を用いて混合する方法が挙げられる。具体的には、株式会社徳寿工作所製のV型混合機(TCV-20)を用いて混合することができる。
【0065】
医薬製剤をカプセル剤とする方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、医薬製剤を、ゼラチン、または植物由来の原料等からなるカプセル皮膜に充填することによって製造される。カプセル皮膜への充填は、特に限定されず、例えば、オーガー式粉末充填、ダイコンプレス式粉末充填、バイブレーション式粉末充填等の公知の方法により行うことができる。例えば、オーガー式粉末充填では、通常ゼラチン皮膜で形成された互いに一端の開いた帽状容体の内部にホッパーから落下供給された粉末または顆粒の医薬製剤を撹拌羽根とオーガーの回転圧力によって直接カプセルボディに所定量充填した後、それら容体を同軸的に結合することによりカプセル剤を製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例においては、特段の記載がない限り、「平均粒子径(D50)」は「体積分布基準の50%粒子径」を意味する。
【0067】
[核粒子の調製方法]
略球状粒子として、乳糖水和物(SuperTab(登録商標)、平均粒子径(D50)120μm、DFE Pharma製)、およびトウモロコシデンプン(局方コーンスターチ、平均粒子径(D50)15μm、日本食品化工株式会社製)、針状および/または略柱状の結晶セルロースとして、結晶セルロース(CEOLUS UF-702、平均粒子径(D50)140μm、旭化成株式会社製)、および結晶セルロース(CEOLUS KG-1000、平均粒子径(D50)80μm、旭化成株式会社製)を準備し、電子顕微鏡(VE-7800、KEYENCE製)によって画像測定を行った。
図1AおよびBは、それぞれ針状および/または略柱状の結晶セルロースCEOLUS KG-1000およびCEOLUS UF-702の電子顕微鏡写真であり、
図2は乳糖水和物(略球状粒子)の電子顕微鏡写真であり、
図3はトウモロコシデンプン(略球状粒子)の電子顕微鏡写真である
【0068】
表1に示す処方に従って、略球状粒子として、乳糖水和物(SuperTab(登録商標)、平均アスペクト比1.39、平均粒子径(D50)120μm、DFE Pharma製)、およびトウモロコシデンプン(局方コーンスターチ、平均アスペクト比1.23、平均粒子径(D50)15μm、日本食品化工株式会社製)、針状結晶セルロースとして、結晶セルロース(CEOLUS UF-702、平均アスペクト比2.63、平均粒子径(D50)140μm、旭化成株式会社製)、および(CEOLUS KG-1000、平均アスペクト比4.20、平均粒子径(D50)80μm、旭化成株式会社製)を、それぞれ355μm篩で篩過し、ポリエチレン袋に入れて予備混合した。なお、各核粒子成分の平均アスペクト比は、電子顕微鏡(VE-7800、KEYENCE製)を用いて粒子画像を取得し、画像解析により測定した、それぞれ任意に選択した10個の粒子のアスペクト比を測定し、アスペクト比の値の上位10%および下位10%の粒子のアスペクト比の値を除外した粒子のアスペクト比の平均値を意味する。また、表1において、特に示さない場合、数値の単位はg(グラム)である。
【0069】
【0070】
次いで、各実施例および比較例の混合物を流動層造粒機(FD-MP-01D、株式会社パウレック製)に投入し、表2に示す条件で核粒子混合物(一次粒子)を混合した(予熱工程)。
【表2】
【0071】
<核粒子混合物のかさ密度の測定>
比較例1、実施例1および2の処方で得られたそれぞれの核粒子混合物(一次粒子)について、かためかさ密度およびゆるみかさ密度を測定した。具体的には、パウダテスタ(登録商標)PT-R(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、第17改正日本薬局方に記載されている、かさ密度およびタップ密度測定法第3法の測定用容器と同サイズの円筒容器に核粒子混合物を篩いを通して上方から均一に供給し、上面をすり切って秤量することによって疎充填の状態のかさ密度(ゆるみかさ密度)を測定。次いで、この容器の上に補助円筒をはめ、この上縁まで核粒子混合物を加えてタッピングを180回行ない、終了後、補助円筒を外して容器の上面で核粒子混合物をすり切って秤量し、タッピング後の密充填した場合のかさ密度(かためかさ密度)を測定した。さらに、各核粒子混合物について、かためかさ密度とゆるみかさ密度の差(かためかさ密度-ゆるみかさ密度)を算出した。結果を表3に示す。また、実施例3の処方で得られた核粒子混合物(一次粒子)について、同様の方法によりかためかさ密度およびゆるみかさ密度を測定した。実施例3の核粒子混合物のかためかさ密度とゆるみかさ密度の差(かためかさ密度-ゆるみかさ密度)は0.221であった。
【0072】
【0073】
また、表1に示す処方に従って、各界面活性剤を500mLビーカーに投入し、撹拌機(NZ-1200、東京理化器械株式会社製)を用いて400~900rpmで撹拌・混合した。均一になるまで撹拌・混合した後、各薬物を添加して、さらに撹拌・混合して薬物液を得た。
【0074】
次いで、流動層造粒機(FD-MP-01D、株式会社パウレック製)を用いて、上記で得られた各核粒子混合物(一次粒子)に薬物液を噴霧して、一次粒子に薬物液が付着した核粒子を得た(造粒工程)。流動層造粒機の設定条件は上記表2の通りとした。
【0075】
<核粒子の凝集度の測定>
得られた実施例1および2、および比較例の医薬製剤の核粒子について、粉体特性評価装置(パウダテスタ(登録商標)PT-R、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて凝集度を測定した。粉体特性評価装置の設定条件は以下の通りとした。
篩目開き:(上段)710μm、(中段)355μm、(下段)250μm
試料採取量:2gまたは3g
振動時間:119秒
【0076】
上記の条件下で、下記式の各項目の値を測定した。
X=[上段の篩に残った粉体質量]/投入した粉体質量×100
Y=[中段の篩に残った粉体質量]/投入した粉体質量×100×0.6
Z=[下段の篩に残った粉体質量]/投入した粉体質量×100×0.2
上記X、Y、Zの3つの値の合計をもって、凝集度(%)とした。結果を上記表3に示す。
【0077】
また、表1に示す処方に従って、各被覆層成分をステンレス容器に投入し、撹拌機(NZ-1200、東京理化器械株式会社製)を用いて400~900rpmで撹拌・混合して被覆層溶液を得た。
【0078】
次いで、流動層造粒機(FD-MP-01D、株式会社パウレック製)を用いて、上記で得られた各核粒子に被覆層溶液を噴霧し、60℃で15分間乾燥させて、核粒子が被覆層溶液で被覆された医薬製剤を得た。流動層造粒機の設定条件は表4の通りとした。
【表4】
【0079】
得られた実施例1および2、および比較例1の医薬製剤の凝集度を、上述した核粒子の凝集度の測定と同様の方法により測定した。結果を上記表3に示す。
【0080】
表3の結果から、核粒子成分として第2の核粒子成分のみを用いた比較例1の処方では、医薬製剤の凝集が著しく生じたため、医薬製剤の凝集度(被覆後の凝集度)を測定することができなかった。さらに、比較例1の処方では、医薬製剤を顆粒の形態として製造することはできず、打錠して錠剤を製造することもできなかった。一方、核粒子成分として第1の核粒子成分(結晶セルロース)と第2の核粒子成分とを組み合わせた実施例1および2の処方では、医薬製剤の凝集が抑制され、良好な流動性を有していた。さらに、実施例1および2の処方では、医薬製剤を顆粒の形態として製造することができ、打錠して錠剤を製造することもできた。実施例3の処方でも同様に、医薬製剤を顆粒の形態として製造でき、打錠して錠剤を製造することもできた。また、実施例1~3の第1および第2の核粒子成分の配合を変えて、第1の核粒子成分のD50:第2の核粒子成分のD50の比を1:1.1とした処方で医薬製剤を製造した場合でも、医薬製剤の凝集が抑制され、流動性が良好であることが確認されている。なお、第1の核粒子成分としてCEOLUS KG-1000(平均アスペクト比4.20、平均粒子径(D50)80μm、旭化成株式会社製)を配合して第1の核粒子成分のD50:第2の核粒子成分のD50の比を1:1.1以下に調整した場合にも、医薬製剤の凝集が抑制され、流動性が良好であることが確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、治療上有効量の難水溶性薬物(CDK9阻害剤)を含み、実際の製造に耐え得る優れた流動性を有する医薬製剤を提供することができる。