(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】空気清浄装置及び空気清浄方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/015 20060101AFI20221128BHJP
B60H 3/00 20060101ALI20221128BHJP
F24F 8/40 20210101ALI20221128BHJP
F24F 1/008 20190101ALI20221128BHJP
【FI】
A61L9/015
B60H3/00 F
F24F8/40
F24F1/008
(21)【出願番号】P 2021527367
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011422
(87)【国際公開番号】W WO2020261668
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019119788
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-028433(JP,A)
【文献】特開2019-076481(JP,A)
【文献】特開2005-058463(JP,A)
【文献】特開2011-056191(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150735(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/015-12
B01D 53/34
B60H 3/00
F24F 8/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内の空気中に含まれる臭気成分を除去する清浄部と、
前記空間内の前記空気を前記清浄部に供給し、前記清浄部で清浄された清浄空気を前記空間内に排出する循環部と、を有し、
前記清浄部は、前記臭気成分を分解する浄化物質を発生させる浄化物質発生部を備える空気清浄装置であって、
前記臭気成分を前記浄化物質で分解した際に発生する反応生成物の濃度を測定する反応生成物濃度測定部と、
単位時間当たりの前記反応生成物の濃度の増加量が所定値以下になった場合に、前記浄化物質発生部を制御して、前記浄化物質の発生量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記浄化物質発生部で生じる前記浄化物質の発生量と前記空間の体積とに基づいて算出された、単位時間当たりの前記反応生成物の濃度の増加量を、前記所定値とすることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
単位時間当たりの前記反応生成物の濃度の増加量が、一定であることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記空間内の前記空気を前記空間の外側に排出する換気モードと、
前記浄化物質発生部で低濃度の前記浄化物質を発生させ、前記清浄部で前記低濃度の前記浄化物質を用いて浄化された空気を前記低濃度の前記浄化物質と共に前記空間に排出する浄化物質常用モードと、
前記浄化物質発生部で高濃度の前記浄化物質を発生させ、前記清浄部で前記高濃度の前記浄化物質を用いて浄化された空気を前記高濃度の前記浄化物質と共に前記空間に排出する浄化物質燻蒸モードと、
のいずれかのモードに制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記空間内の前記臭気成分を検知する臭い検知部をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記空間内の人の有無を検知する人検知部をさらに有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記空気中の前記浄化物質の濃度を検知する浄化物質濃度測定部をさらに有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の空気清浄装置。
【請求項8】
前記浄化物質が、オゾン又は次亜塩素酸であることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の空気清浄装置。
【請求項9】
前記浄化物質が次亜塩素酸であり、
前記浄化物質の濃度を測定する浄化物質濃度測定部が、前記次亜塩素酸と反応して発光する蛍光試薬を用いて、前記次亜塩素酸の濃度を算出することを特徴とする請求項8に記載の空気清浄装置。
【請求項10】
前記反応生成物が、水、二酸化炭素及び塩酸の何れか一つ以上であることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の空気清浄装置。
【請求項11】
空間内に浄化物質を発生させて、前記浄化物質により前記空間内の空気中に含まれる臭気成分を除去する空気清浄方法であって、
前記臭気成分を前記浄化物質で分解した際に発生する反応生成物の濃度を測定する濃度測定工程と、
単位時間当たりの前記反応生成物の濃度の増加量が所定値以下になった場合に、前記浄化物質の発生量を調整する調整工程と、
含むことを特徴とする空気清浄方法。
【請求項12】
前記反応生成物が、水、二酸化炭素及び塩酸の何れか一つ以上であることを特徴とする請求項11に記載の空気清浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄装置及び空気清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内部や建物の室内等の空気に含まれる、悪臭物質や揮発性有機化合物(VOC)等の臭気成分を、オゾンや次亜塩素酸等を酸化剤として利用して、除去(脱臭)及び殺菌することで、臭気成分を含む空気を清浄化する空気清浄装置がある。
【0003】
このような空気清浄装置として、例えば、ファン、オゾン発生器、切換ダンパ、コントロールユニット及び臭気センサを備えた、車両の換気・脱臭装置がある(例えば、特許文献1参照)。従来の、車両の換気・脱臭装置では、臭気センサで検知された車内の臭気濃度に応じて、コントロールユニットにより、ファン、オゾン発生器及び切換ダンパを制御して、換気モード、オゾン常用モード及びオゾン燻蒸モードの3つのモードの切換えを行っている。車内にしみついた強烈な異臭を脱臭する際には、オゾン燻蒸モードを選択して、基準値を超える高濃度のオゾンを所定時間発生させて、車内にしみついた強烈な異臭を効果的に脱臭している。
【0004】
臭気センサは、一般に、酸化物半導体や有機半導体で形成された半導体素子を用いて形成された半導体式センサである場合が多い。半導体式センサでは、半導体素子の表面に負電荷吸着している酸素が臭気成分と反応(表面反応)し、半導体素子の表面の酸素が離脱して臭気成分が吸着することによって、半導体素子の抵抗値が変化する。半導体式センサは、この性質を利用して、空気中の臭気成分の濃度を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の、車両の換気・脱臭装置では、異臭の強さに関わらず、車両内にオゾンをタイマーで一律に所定時間発生させているだけであるため、脱臭が十分でなかったり、脱臭を過剰にやり過ぎる可能性が高かった。脱臭が十分でないと、車両内の異臭が十分除去されず残るため、車両の使用者に対して不快感を与えることになる。一方、脱臭を過剰にやり過ぎると、オゾンを過剰に発生させることになるため、無駄な電力消費や脱臭作業に必要以上に時間を要することになる。
【0007】
そのため、空気中の臭気成分を除去する、オゾンや次亜塩素酸等のような浄化物質の発生量を適切に抑制する必要がある。
【0008】
本発明の一態様は、脱臭が終了した最適なタイミングで浄化物質の発生を停止できる空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気清浄装置の一態様は、空間内の空気中に含まれる臭気成分を除去する清浄部と、前記空間内の前記空気を前記清浄部に供給し、前記清浄部で清浄された清浄空気を前記空間内に排出する循環部と、を有し、前記清浄部は、前記臭気成分を分解する浄化物質を発生させる浄化物質発生部を備える空気清浄装置であって、前記臭気成分を前記浄化物質で分解した際に発生する反応生成物の濃度を測定する反応生成物濃度測定部と、単位時間当たりの前記反応生成物の濃度の増加量が所定値以下になった場合に、前記浄化物質発生部を制御して、前記浄化物質の発生量を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る空気清浄装置の一態様は、脱臭が終了した最適なタイミングで浄化物質の発生を停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る空気清浄装置を車両に適用した状態を示す図である。
【
図3】空気清浄方法を説明するフローチャートである。
【
図4】時間と反応生成物の濃度との関係の一例を示す図である。
【
図5】単位時間と反応生成物の濃度の増加量との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0013】
<空気清浄装置>
一実施形態に係る空気清浄装置について説明する。本実施形態では、一例として、空気清浄装置を車両の室内空間(空間)の空気中に含まれる臭気成分を清浄する場合について説明する。なお、臭気成分とは、悪臭物質や揮発性有機化合物(VOC)等をいい、たばこ臭、ペット臭もしくは人体から出る体臭、又は加齢臭等をいう。具体的には、悪臭物質として、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、イソブタノール等が挙げられ、揮発性有機化合物として、トルエン及びキシレン等が挙げられる。また、臭気成分を清浄する際に用いる浄化物質として、オゾン、次亜塩素酸、過酸化水素等が挙げられる。以下、臭気成分がトルエンで、浄化物質がオゾンである場合について説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る空気清浄装置を車両に設置した状態を示す図である。なお、
図1では、車両は停車しており、車内から人やペット(動物)等は出て、車内には人やペット(動物)等がいない状態である。
【0015】
図1に示すように、空気清浄装置10は、清浄部20、循環部30、検知部40及び制御装置50を有する。そして、清浄部20、循環部30及び検知部40は、車両12の室内の空間(室内空間)Sに設置されており、制御装置50の本体は、空間Sの外側であって車両12内に設けられている。また、清浄部20及び循環部30は、空気清浄装置10の装置本体11内に設けられている。
【0016】
装置本体11は、清浄部20及び循環部30を収容する内部空間を備えるケーシングを有する。内部空間は、吸入した空気を所定方向に流通させるための通気路を構成する。装置本体11のケーシングとしては、例えば、筒状や直方体状等に形成されたものを用いることができる。
【0017】
(清浄部)
清浄部20は、空間S内の空気を清浄するものであり、浄化物質発生部21及び集塵フィルタ22を有する。清浄部20は、浄化物質発生部21及び集塵フィルタ22を空気の送風方向に沿ってこの順に備えている。
【0018】
浄化物質発生部21は、後述する送風機32で取り込んだ空気中の酸素を原料として、空気中にオゾンを発生させるものであり、オゾン発生部として機能する。そして、浄化物質発生部21は、制御装置50の、後述する制御部51(
図2参照)と電気的に接続され、制御部51(
図2参照)によって制御される。浄化物質発生部21は、オゾンを発生できるものであれば、どのような方式のものでも用いることができる。例えば、浄化物質発生部21として、放電電極と対向電極とを互いに向かい合った状態で交互に配置してなる放電式のものを用いることができる。この放電式では、両電極に電圧を印加すると両電極間で放電が生じる。放電を生じている電極間に空気を通過させることにより、空気中に含まれる酸素が活性化され、解離又は励起された酸素の一部がオゾン(O
3)に変化する。これにより、空気中にオゾンが発生する。そして、発生したオゾンは、空気に含まれた状態で搬送される。オゾンは、空気中に含まれる臭気成分と酸化反応して、臭気成分を分解し、除去する。
【0019】
臭気成分が、例えばトルエンである場合、下記式(1)のように、臭気成分はオゾンと反応して、反応生成物である、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分解される。
C7H8+6O3→7CO2+4H2O ・・・(1)
【0020】
浄化物質発生部21でのオゾンの発生量(オゾン発生量)は、後述する制御部51(
図2参照)により、放電量を調整することにより、制御(増減、稼働、又は停止等)できる。
【0021】
集塵フィルタ22は、浄化物質発生部21より空気の流れ方向の下流側に設けられている。集塵フィルタ22は、空気中の煤塵等の固形物を捕集するものである。集塵フィルタ22は、空気中の煤塵等を捕集できるものであればよく、例えば、金属細線、天然繊維又は合成繊維からなる不織布をプリーツ形状に形成したもの等を用いることができる。
【0022】
(循環部)
循環部30は、吸気口31、送風機32及び排気口33を有する。
【0023】
吸気口31は、空間S内の空気を装置本体11の内部に吸入するためのものである。吸気口31は、装置本体11の側面にスリット状に形成されている。なお、吸気口31は、装置本体11の上面や下面に形成されていてもよい。
【0024】
送風機32は、装置本体11内の浄化物質発生部21よりも空気の流れ方向の上流側であって、吸気口31の近傍に設けられる。そして、送風機32は、制御装置50の制御部51(
図2参照)と電気的に接続され、制御部51(
図2参照)によって制御される。送風機32は、例えば、プロペラ形の羽根によって回転軸方向に風を送る軸流ファンを用いることができる。送風機32は、図示しないモータと、前記モータの回転軸に固定される複数の羽根とで構成される。送風機32は、外部電源より給電され、前記モータが駆動して前記羽根を回転させることにより、装置本体11の内部空間内に空気を吸込み、吸入された空気を浄化物質発生部21、集塵フィルタ22の順に通過させ、排気口33から空間S内に放出させる。なお、送風機32の回転数は、後述する制御部51(
図2参照)により制御される。
【0025】
排気口33は、装置本体11内の清浄部20で清浄された空気(清浄空気)を車内の空間Sに排出するためのものである。排気口33は、装置本体11の側面にスリット状に形成されている。なお、吸気口31は、装置本体11の上面に形成されていてもよい。
【0026】
(検知部)
検知部40は、浄化物質濃度測定部である浄化物質濃度センサ41、反応生成物濃度測定部である反応生成物濃度センサ42、臭い測定部である臭気センサ43及び人検知部である人感知センサ44を有する。これらのセンサは、それぞれ、空間S内に設けられている。また、検知部40は、制御装置50の制御部51(
図2参照)と電気的に接続され、それぞれの検知信号を制御部51(
図2参照)に送信する。
【0027】
浄化物質濃度センサ41は、空間S内の空気のオゾン濃度を測定するものであり、オゾン濃度センサとして機能する。浄化物質濃度センサ41は、半導体素子を備える半導体式センサ等を用いることができる。半導体式センサでは、前記半導体素子の表面にオゾンが吸着して、半導体素子の抵抗値が変化することにより、オゾン濃度が測定される。
【0028】
浄化物質濃度センサ41は、空間S内の吸気口31に近い位置に設けられることが好ましい。吸気口31に近い位置の方が排気口33に近い位置よりも、空間S内に放出されたオゾンが臭気成分と反応した後の状態のオゾン濃度が測定され易い。そのため、空間Sの空気に含まれるオゾン濃度を安定して測定できる。なお、浄化物質濃度センサ41は、空間S内で、装置本体11から遠い位置に設置されていてもよい。
【0029】
反応生成物濃度センサ42は、臭気成分をオゾンで分解した際に発生する反応生成物の一つである水の濃度(水分濃度(湿度))を測定する。反応生成物濃度センサ42としては、公知の水分濃度計(水分計)等を用いることができる。水分濃度計の形式は限定されず、水分濃度計として、例えば、高分子静電容量式の湿度センサ等を用いることができる。反応生成物濃度センサ42は、空間S内の水分濃度を測定できる位置に設けられていればよい。
【0030】
臭気センサ43は、空間S内の臭気成分の濃度を測定する。臭気センサ43は、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化半導体を使用した半導体式センサ等を用いることができる。半導体式センサでは、半導体素子の表面で表面に吸着している酸素が臭気成分と反応(表面反応)し、酸素が離脱することによって、半導体素子の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化から、空気中の臭気成分の濃度が測定される。なお、臭気センサ43は、半導体式以外の他の方式でもよい。
【0031】
人感知センサ44は、空間S内の人の有無を検知する。人感知センサ44は、例えば、赤外線で人やペット等の動物の熱を感知する赤外線式センサ等を用いることができる。なお、本実施形態では、人検知部として、好適に人感知センサ44を用いたが、人又は動物の有無を検知できるセンサであればよく、例えば、カメラで動作を検知するタイプの人検知部であってもよい。
【0032】
(制御装置)
制御装置50は、
図2に示すように、本体である制御部51と、制御部51に接続されている操作部52と、表示部53を有する。なお、本実施形態では、制御部51は空間Sの外側であって車両12内に設けられ、操作部52、及び表示部53は空間S内に設けられる。
【0033】
制御部51は、浄化物質発生部21及び送風機32等の空気清浄装置10を構成する各部材並びに表示部53を制御可能にこれらと接続されている。制御部51は、制御プログラムや各種記憶情報を格納する記憶手段と、制御プログラムに基づいて動作する演算手段とを有する。制御部51は、演算手段が記憶手段に格納されている制御プログラム等を読み出して実行することで実現される。
【0034】
制御部51は、検知部40からの測定結果を受信する。制御部51は、検知部40の測定結果に基づいて、浄化物質発生部21で発生させるオゾンの発生量及び送風機32の回転速度を制御する。具体的には、制御部51は、浄化物質濃度センサ41で測定されたオゾン濃度、反応生成物濃度センサ42で測定された水分濃度、臭気センサ43で測定された空間S内の臭気成分の濃度及び人感知センサ44で検知された人の有無の検知結果の信号を受信する。制御部51は、これらのセンサから受信した信号に基づいて、空気中のオゾン濃度、水分濃度、又は臭気成分の濃度を算出したり、人の有無を判断し、浄化物質発生部21にオゾンを発生させる信号、又は送風機32に送風機32を回転させる信号を出力する。出力された信号に基づいて、浄化物質発生部21の放電量、又は送風機32の回転速度が制御されることで、オゾン発生量、又は空気の送風量が調整される。
【0035】
制御部51は、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下になった場合に、浄化物質発生部21を制御して、オゾンの発生量を制御する。
【0036】
制御部51は、浄化物質発生部21で発生させるオゾンの発生量及び空間Sの体積と、単位時間当たりの反応生成物(例えば、水やCO2等)の濃度の増加量との関係を、予め記憶手段に記憶させておいてもよい。本実施形態では、記憶手段には、浄化物質発生部21で発生させるオゾンの発生量及び空間Sの体積と、単位時間当たりの水分濃度の増加量との関係が記憶されていることが好ましい。この場合、制御部51は、記憶手段に記憶されている記憶値と、浄化物質濃度センサ41で測定された実測値とを比較して、単位時間当たりの、空間S内の水分濃度の増加量が所定値以下か否か判断できる。
【0037】
制御部51は、浄化物質発生部21及び送風機32を制御して、空気清浄装置10の運転状態を、換気モード、浄化物質常用モード(以下、本実施形態では、オゾン常用モードという)及び浄化物質燻蒸モード(以下、本実施形態では、オゾン燻蒸モードという)の3つの運転モードのいずれかに制御できる。
【0038】
換気モードは、浄化物質発生部21でオゾンを発生させずに、装置本体11内に吸入された空気を装置本体11内から空間Sに排出する運転モードである。換気モードでは、制御部51は、浄化物質発生部21の運転を停止し、送風機32のみ運転させるように制御する。
【0039】
オゾン常用モードは、浄化物質発生部21で低濃度のオゾンを発生させ、清浄部20で低濃度のオゾンを用いて清浄された清浄空気を低濃度のオゾンと共に、装置本体11内から空間Sに排出する運転モードである。オゾン常用モードでは、制御部51は、送風機32を運転させると共に、浄化物質発生部21で低濃度のオゾンを発生させるように制御する。
【0040】
オゾン燻蒸モードは、浄化物質発生部21で高濃度のオゾンを発生させ、清浄部20で高濃度のオゾンを用いて清浄された清浄空気を高濃度のオゾンと共に、装置本体11内から空間Sに排出する運転モードである。オゾン燻蒸モードでは、制御部51は、送風機32を稼働させると共に、浄化物質発生部21で高濃度のオゾンを発生させるように制御する。
【0041】
なお、浄化物質発生部21で発生させるオゾン濃度は、浄化物質発生部21を通過する空気量に対する浄化物質発生部21で発生するオゾン発生量の比(オゾン濃度=オゾン発生量/浄化物質発生部21を通過する空気量)より求められる。
【0042】
オゾン発生量が一定であっても、空気量が変動すると、装置本体11内から空間Sに排出されるオゾン濃度は変動する。そのため、オゾン濃度を高濃度又は低濃度に調整する際には、次の3つの方法のいずれかを用いることができる。1つ目の方法は、浄化物質発生部21で発生させるオゾン発生量を変動させて、送風機32による空気の送風量を一定とする方法である。2つ目の方法は、浄化物質発生部21で発生させるオゾン発生量を一定として、送風機32による空気の送風量を変動する方法である。3つ目の方法は、浄化物質発生部21で発生させるオゾン発生量と送風機32による空気の送風量との両方を変動させる方法である。本実施形態では、車内の空間Sを空気が安定して循環させると共に、制御を容易に行う点から、上記の、1つ目の方法を用いることが好ましい。
【0043】
オゾン濃度が低濃度とは、オゾン濃度が人体に安全な基準値以下の範囲の濃度をいい、0.1ppm以下であり、好ましくは0.05ppm以下である。
【0044】
また、オゾン濃度が高濃度とは、オゾン濃度が人体に安全な基準値よりも高い濃度であり、臭気成分の分解を効率よく行うためには濃度が高い方が好ましいが、人体への影響が懸念される。そのため、高濃度オゾンを用いるオゾン燻蒸モードは、人感知センサ44で人やペット等が車内の空間Sにいないことを確認してから実施することが好ましい。
【0045】
操作部52は、空間S内に配設され、外部からの操作により、浄化物質発生部21におけるオゾン発生の有無及びオゾン発生量と、送風機32の稼働の有無及びその回転数等を制御する信号を制御部51に送信する機能を有する。
【0046】
表示部53は、空間S内に配設され、浄化物質発生部21におけるオゾン発生の有無及びオゾン発生量、送風機32の稼働の有無及びその回転数、浄化物質濃度センサ41で測定されたオゾン濃度、反応生成物濃度センサ42で測定された水分濃度、臭気センサ43で測定された空間S内の臭気成分の濃度並びに人感知センサ44で検知された人の有無等を表示する機能を有する。また、表示部53は、後述する、空気清浄方法の終了を表示する。
【0047】
(運転動作)
上記構成を有する空気清浄装置10の運転動作について説明する。空気清浄装置10では、作業員が制御装置50の図示しない電源を入れると、制御部51が通電され、空気清浄装置10の運転が開始する。作業員は、操作部52で、運転モードを、換気モード、オゾン常用モード、又はオゾン燻蒸モードのいずれかを選択する。まず、換気モードを行う場合について説明する。
【0048】
(1.換気モード)
作業員が操作部52を操作して運転モードを換気モードにすると、操作部52から運転モードを換気モードにする信号が制御部51に送信される。制御部51は、操作部52の信号を受けて、送風機32を駆動させる信号を送風機32に出力することで、送風機32の羽根を回転させる。これにより、空間S内の空気は、吸気口31から装置本体11内に吸引される。装置本体11内に吸入された空気は、浄化物質発生部21を通過し、集塵フィルタ22で空気中の煤塵等の固形物が除去される。固形物が除去された空気を、清浄空気ともいう。集塵フィルタ22を通過した清浄空気は、送風機32で圧送され、排気口33から空間S内に排出される。排気口33から空間Sに排出された清浄空気は、空間S内を拡散して、臭気成分を含む空気と混合され、臭気成分を含む空気となる。空気は、空間S内の自然対流により循環する。空間S内を循環している空気の一部は、吸気口31から装置本体11内に吸引され、空気清浄装置10で再び清浄される。空間S内の空気が空気清浄装置10で繰り返し清浄されることで、空間S内の空気は、煤塵等の固形物の濃度が低い空気となる。
【0049】
(2.オゾン常用モード)
次に、運転モードをオゾン常用モードとする場合について説明する。作業員が操作部52を操作して運転モードをオゾン常用モードにすると、操作部52から運転モードをオゾン常用モードにする信号を制御部51に送信される。制御部51は、操作部52の信号を受けて、送風機32を駆動させる信号を送風機32に出力することで、送風機32の羽根を回転させると共に、低濃度のオゾンを発生させる信号を浄化物質発生部21に出力することで、浄化物質発生部21を運転させる。吸気口31から装置本体11内に吸引された空気は、浄化物質発生部21に到達すると、空気は浄化物質発生部21内を通りながら空気中に低濃度のオゾンが混合される。浄化物質発生部21を通過した、低濃度のオゾンを含む空気は、集塵フィルタ22で空気中の煤塵等の固形物が除去された後、送風機32で圧送され、排気口33から空間S内に排出され、空間S内を拡散する。
【0050】
オゾンを含む空気が浄化物質発生部21から空間S内を拡散している間で、空気中に含まれる臭気成分等はオゾンと酸化反応することにより分解して除去される。これにより、空気は、脱臭及び減菌される。また、空気中に含まれている臭気成分のみならず、車内のシートや壁等に付着している臭気成分等もオゾンと接触すると、オゾンと酸化反応することにより、脱臭及び殺菌される。一方、浄化物質発生部21で空気中に混合されたオゾンは、空気中の臭気成分と反応することで消失する。
【0051】
なお、浄化物質発生部21でオゾンを発生させている場合、固形物の除去の他に、オゾンで脱臭及び減菌された空気も、清浄空気という。また、清浄空気とは、空気中に臭気成分を完全に含まない場合だけでなく、臭気成分をごく微量含んでいる場合も含む。
【0052】
排気口33から空間Sに排出された清浄空気は、空間S内を拡散して、臭気成分を含む空気と混合されることで、臭気成分を含む空気となる。空気は、空間S内を循環する。循環している空気の一部は、装置本体11内に吸引され、空気清浄装置10で再び清浄される。空間S内の空気が空気清浄装置10で繰り返し清浄されることで、空間S内の空気は、固形物の濃度が低く、脱臭及び殺菌された空気となる。
【0053】
空間S内の空気中のオゾン濃度、水分濃度及び臭気成分の濃度は、浄化物質濃度センサ41、反応生成物濃度センサ42及び臭気センサ43で測定される。これらの測定結果は、制御部51に送られる。
【0054】
また、車両12内の人の有無は、人感知センサ44で検出され、検出結果は制御部51に送られる。
【0055】
制御部51は、これらの各センサの検出結果に基づいて、浄化物質発生部21及び送風機32を、それぞれ制御する信号を出力する。
【0056】
(3.オゾン燻蒸モード)
次に、運転モードをオゾン燻蒸モードとする場合について説明する。オゾン燻蒸モードは、制御部51が浄化物質発生部21に高濃度のオゾンを発生させる信号を出力して、浄化物質発生部21から高濃度のオゾンを発生させること以外は、オゾン常用モードと同じ動作を示す。
【0057】
オゾン燻蒸モードでは、空気中に臭気成分が存在している間は、オゾンは臭気成分と反応して消費されるが、装置本体11内に吸入された空気に浄化物質発生部21より新たに高濃度のオゾンが供給されている。そのため、空気中のオゾンと反応する臭気成分がなくなると、空気中のオゾン濃度は一定の割合で上昇する。なお、オゾンは、空気が浄化物質発生部21から空間S中に放出される過程で自然に分解して消失するが、その分解速度は、オゾンが臭気成分等と反応して分解する速度や、浄化物質発生部21より空気中に供給されるオゾンの供給速度よりもはるかに低い。そのため、オゾン濃度の増減を判断する上では、オゾンの分解速度は特に考慮しなくてもよい。
【0058】
また、オゾン燻蒸モードでは、人体に影響を及ぼす可能性のある高濃度オゾンを用いるため、人感知センサ44で空間S内に人やペット等がいないことを確認してから動作開始することが望ましい。また、オゾン発生の停止後もオゾン濃度が安全な濃度以下になってから乗車するように乗車の可否をユーザに知らせる、又は安全な濃度以下になってからドアロックを解錠する等の工夫が望ましい。
【0059】
<空気清浄方法>
次に、上記構成を有する空気清浄装置10を用いて空気の清浄を行う空気清浄方法の一例について、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、ここでは、臭気成分がトルエンである場合について説明する。
【0060】
図3は、空気清浄方法を説明するフローチャートであり、
図4は、時間と、水分濃度及びトルエン濃度との関係の一例を示す図である。
図3に示すように、制御部51は、運転モードとしてオゾン燻蒸モードを選択して、浄化物質発生部21及び送風機32を運転させて、空間Sの空気を吸気すると共に、浄化物質発生部21で高濃度のオゾンを発生させる(ステップS11)。
【0061】
高濃度のオゾンを発生させると、固形物が除去され、脱臭及び減菌された清浄空気が空気清浄装置10の排気口33から排出され、空間S中に拡散する。車両12の空間S内の空気中のオゾン濃度が上昇し、空間S内のトルエンがオゾンと反応して分解されることで、下記式(1)のように、反応生成物として水及びCO2が発生する。
C7H8+6O3→7CO2+4H2O ・・・(1)
【0062】
そのため、
図4に示すように、空間S内の高濃度のオゾンを発生させる時点P1の後、オゾンによるトルエンの分解が継続して生じることで、これらの濃度が上昇する。高濃度のオゾンの発生前、すなわちトルエンの分解前の水分濃度をM1、殆どのトルエン、又は全てのトルエンが分解された後の水分濃度をM2とした時、水分濃度は、M1からM2に向かって増加傾向となる。一方、高濃度のオゾンの発生前のトルエン濃度をM11、殆どのトルエン、又は全てのトルエンが分解された後のトルエン濃度をM12とした時、トルエン濃度は、M11からM12に向かって減少傾向となる。
【0063】
続いて、
図3に示すように、反応生成物濃度センサ42で空間S内の水分濃度を測定する(濃度測定工程:ステップS12)。
【0064】
水分濃度の測定結果は制御部51に送られる。
【0065】
次に、制御部51は、反応生成物濃度センサ42で測定された、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下か否か算出する(ステップS13)。
【0066】
なお、本実施形態において、所定値とは、単位時間当たりの水分濃度の増加量が、例えば3.0%以下であることをいい、同一か、ほぼ同程度であることが好ましい。同程度とは、±1.0%の誤差を許容する範囲をいう。
【0067】
単位時間当たりの水分濃度の増加量を算出する方法として、例えば、下記式(I)のように、単位時間ΔTの開始時における水分濃度の値の、単位時間ΔTの終了時における水分濃度の値と単位時間ΔTの開始時における水分濃度の値との差に対する割合を用いることができる。
((単位時間ΔTの終了時における水分濃度の値)-(単位時間ΔTの開始時における水分濃度の値))/(単位時間ΔTの開始時における水分濃度の値) ・・・(I)
【0068】
また、単位時間ΔTにおける水分濃度の値に代えて、単位時間ΔTにおける水分濃度の和の平均値、又は単位時間ΔTの中間の時間における水分濃度の値等を用いることができる。
【0069】
ステップS13において、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値を超えている場合(ステップS13:No)、制御部51は、浄化物質発生部21を運転させた状態を継続しておく。そして、制御部51は、反応生成物濃度センサ42で空間S内の水分濃度を測定し(ステップS12)、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下か否か算出する(ステップS13)。浄化物質発生部21の運転開始から所定時間は、オゾンは臭気成分(ここでは、トルエン)と反応して反応生成物(水及びCO2)が生じるため、反応生成物の一つである水分の濃度は継続して増加する。
【0070】
例えば、
図4に示すように、時間T1では、浄化物質発生部21より高濃度のオゾンが新たに空気中に供給されている。そのため、オゾンはトルエンと反応して反応生成物(CO
2及び水)が生じ、水分濃度は、M1からM2に向かって増加する。なお、時間T1及びT2の長さ、トルエンの濃度の変化具合並びに水分濃度の変化具合は、車両の空間S内のトルエンの濃度等に依存する。
【0071】
ステップS13において、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下の場合(ステップS13:Yes)には、制御部51は、浄化物質発生部21での高濃度オゾンの発生を停止する(調整工程:ステップS14)。オゾンの発生開始から所定時間経過して空間S内に存在する殆ど全てのトルエンが分解されると、トルエンの分解は終了する。この結果、空間S内にはオゾンと反応する物質がほぼ無くなるため、反応生成物(CO2及び水)の濃度は殆ど増加しなくなり、所定値以下になる。
【0072】
例えば、
図4に示すように、時点P2で、空間S内にはオゾンと反応するトルエンがほぼ無くなっているため、時間T2では、単位時間当たりの水分濃度の増加量は、所定値以下の状態であり、ほぼ一定となる。
【0073】
単位時間当たりの水分濃度の増加量が1回でも所定値以下となった場合には、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下であると判断できるが、これに限定されない。単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下であると判断する指標として、例えば、
図5に示すように、単位時間ΔT当たりの水分濃度の増加量ΔCが、連続して複数回(例えば、3回以上)、ほぼ同じである場合を用いることができる。この場合には、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下であると判断できる。
【0074】
単位時間当たりの水分濃度の増加量は、一定であることが好ましい。水分濃度の増加量が一定であれば、制御部51は、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下であると判断し易くなるので、空間内Sの全ての臭気成分が除去されたことがより確実に検知しやすい。
【0075】
図3に示すように、制御部51は、反応生成物濃度センサ42で測定された、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下であると判断したら、浄化物質発生部21での高濃度オゾンの発生を停止(強制終了)する(
図4の時点P3参照)。これにより、空間S内に余計に発生させるオゾン量を低減できる。
【0076】
なお、空間S中のオゾン濃度を低下させられればよいため、浄化物質発生部21を停止する以外に、浄化物質発生部21を停止せずに、高濃度オゾンの発生から低濃度オゾンの発生に切り換え、オゾン濃度を徐々に低下させる。そして、最後に換気モードに切り換えるか、浄化物質発生部21を停止してオゾンの発生を停止するように制御にしてもよい。
【0077】
浄化物質発生部21の運転が停止すると、浄化物質発生部21からオゾンが空間Sに供給されるのが停止するので、空間Sに新たに発生するオゾンはなくなり、分解されるトルエンも殆ど残っていない。そのため、空間S内の水分濃度は一定となる。なお、空間S内のオゾンは、自然に分解するため、空間S内のオゾン濃度は、徐々に低下する。
【0078】
以上のように、空気清浄装置10は、反応生成物濃度センサ42と、制御部51を備える。制御部51は、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下になった場合に、浄化物質発生部21を制御して、オゾンの発生量を制御する。浄化物質発生部21より発生したオゾンは、空間S内に供給されると、空間S内に存在する臭気成分(例えば、トルエン等)を分解し、反応生成物の一つである水が生じる。空間S内の全ての臭気成分がオゾンにより分解されると、オゾンと反応する物質がほぼ無くなり、新たに生成される水がなくなるため、空間S内の水分濃度は増加しなくなる。そのため、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下になった場合には、空間S内に存在する臭気成分が存在していないといえる。そこで、空気清浄装置10は、単位時間当たりの水分濃度の増加量が所定値以下となった場合には、制御部51は浄化物質発生部21を制御して、浄化物質発生部21より供給されるオゾンの発生量を制御する。よって、空気清浄装置10は、空間S内の脱臭の終了をより的確に判断できるので、脱臭が終了した最適なタイミングでオゾンの発生を停止できる。
【0079】
空気清浄装置10は、浄化物質発生部21で余計なオゾンを発生させることを抑えることができるので、無駄なエネルギーの消費を低減しつつ、臭気成分を効率良く除去することができる。よって、空気清浄装置10によれば、次の車両の使用者に不快感を与えるのを低減することができると共に、無駄な電力消費を抑えつつ脱臭作業に必要以上に時間を要するのを低減することができる。
【0080】
また、空気清浄装置10は、オゾンの発生を最適なタイミングで停止することで、空間S内に余計なオゾンが残るのを低減することができるので、臭気センサ43が半導体式センサであっても、臭気センサ43は、臭気成分の濃度を安定して測定できる。例えば、臭気センサ43が半導体式センサである場合、脱臭時に発生させたオゾンが車両の空間S内に存在していると、半導体素子の表面に吸着する酸素イオンが増加してしまうため、臭気センサ43の臭気成分の測定性能を低下させる可能性がある。そのため、臭気成分が車両や建物等の空間内に残っていても、臭気センサ43が臭気成分の濃度を少なく測定して、臭気成分の濃度を正確に測定できない可能性がある。その結果、浄化物質発生部21の運転を停止する可能性がある。本実施形態では、空間S内に余計なオゾンが残るのを低減することができるので、臭気センサ43が半導体式センサであっても、臭気センサ43の半導体素子の表面に余分に吸着する酸素イオンの量が抑えられる。そのため、空気清浄装置10は、臭気センサ43に半導体式センサを用いても、オゾンが臭気センサ43の半導体素子の半導体表面に余分に吸着するのを低減できるので、臭気センサ43が臭気成分を検知する性能が低下することを抑えることができる。よって、空気清浄装置10は、臭気センサ43で、臭気成分の濃度を高精度で安定して測定できる。
【0081】
空気清浄装置10は、制御部51で、オゾンの発生量と空間Sの体積とに基づいて、算出された、単位時間当たりの水分濃度の増加量を、所定値として予め決定することができる。制御部51は、実測値を所定値と比較することで、単位時間当たりの、空間S内の水分濃度の増加量が所定値に到達しているか否か容易に判断できる。これにより、制御部51は、浄化物質発生部21を制御するための判断がより行いやすくなる。
【0082】
本実施形態では、単位時間当たりの水分濃度の増加量は、一定であることが好ましい。なお、一定とは、単位時間当たりの水分濃度の増加量がほぼゼロであることをいう。空間S内の全ての臭気成分がオゾンにより分解され、オゾンと反応する物質がほぼ無くなると、空間S内の水分濃度は増加しない。水分濃度の増加量が一定であれば、空間S内の全ての臭気成分が除去されたことをより確実に測定できる。そのため、単位時間当たりの水分濃度の増加量が一定となったタイミングで浄化物質発生部21の運転を停止(強制終了)することで、空間S内に余計に生じるオゾンの量を低減でき、より最適にオゾンの発生を停止できる。よって、空気清浄装置10によれば、無駄なエネルギーの消費をより低減しつつ、臭気成分をより効率良く除去できる。
【0083】
空気清浄装置10は、制御部51で、換気モード、オゾン常用モード及びオゾン燻蒸モードの3つのモードのいずれかに制御する。これにより、空気清浄装置10は、空間S内の臭気成分の濃度に応じて適切に空気を清浄できる。
【0084】
空気清浄装置10は、臭気センサ43を備えることが好ましい。空気清浄装置10は、臭気センサ43を備えることで、空間S内の臭気成分を検知できる。
【0085】
空気清浄装置10は、人感知センサ44を備えることが好ましい。空気清浄装置10は、人感知センサ44を備えることで、空間S内に人が存在しているか否か確認できる。これにより、空気清浄装置10がオゾン燻蒸モードで運転している場合、空気清浄装置10は、空間S内に人が存在していない状態で、安定してオゾン燻蒸モードを行うことができる。
【0086】
空気清浄装置10は、浄化物質濃度センサ41を備えることが好ましい。空気清浄装置10は、浄化物質濃度センサ41を備えることで、空間S内のオゾンの濃度を測定できる。
【0087】
以上のように、空気清浄装置10が車両12の車内の空間S内の空気を清浄する場合について説明したが、空気清浄装置10は、上述の通り、空間S内の空気を最適なタイミングで清浄することができる。そのため、空気清浄装置10は、車両12以外に、例えば、電車の車内、飛行機の機内、建物の室内等に設置して、それらの空間内の空気を清浄する空気清浄装置としても好適に用いることができる。また、空気清浄装置10は、お店の厨房、公共施設等に設置されている分煙室の間仕切空間、ゴミ収集場の建屋空間、エアコンや冷蔵庫等の内部の貯蔵空間及び等の脱臭を行う送風経路等に設けられてもよい。
【0088】
なお、本実施形態では、空間S内に設けられる反応生成物濃度センサ42は、応生成物の濃度として水分濃度を測定しているが、CO2の濃度を測定するCO2濃度センサ等を用いてもよい。CO2濃度センサとしては、非分散型赤外線(NDIR(Nondispersive infrared))方式のセンサ等の公知のガスセンサを用いることができる。
【0089】
本実施形態では、反応生成物濃度センサ42として、水分濃度を測定するセンサと、CO2濃度を測定するセンサとの両方を設けてもよい。
【0090】
本実施形態では、清浄部20及び循環部30を有した装置本体11が、車両12の室内の空間Sに設置されているが、これに限定されない。例えば、装置本体11を車両12内であるが空間S外に設け、循環部30の吸気口31及び排気口33が空間S内に向けて開口した構成でもよい。
【0091】
本実施形態では、浄化物質発生部21が臭気成分を清浄する浄化物質としてオゾンを発生させているが、空気中に含まれる臭気成分を分解して、反応生成物を生成できる物質であればよく、例えば、次亜塩素酸(HClO)、過酸化水素(H2O2)等の酸化剤を発生させてもよい。
【0092】
浄化物質発生部21が浄化物質としてHClOを発生させる場合、反応生成物濃度センサ42は、空間S内の空気中の塩酸濃度を測定できる塩酸濃度センサを用いることができる。このとき、例えば、下記式(2)のように、臭気成分をR-Hとして表したとき、臭気成分は、HClOと反応して、反応生成物である塩酸(HCl)を生じる。そのため、反応生成物濃度センサ42は、空間S内の空気中の塩酸濃度を測定できる塩酸濃度センサを用いて塩酸を検出することができる。
R-H+HOCl+H2O→R-OH+HCl+H2O ・・・(2)
【0093】
浄化物質発生部21が浄化物質として次亜塩素酸を発生させる場合、浄化物質濃度センサ41は、空間S内の空気中の次亜塩素酸濃度を測定できる次亜塩素酸濃度センサを用いることができる。浄化物質濃度センサ41は、例えば、浄化物質発生部21で発生させた次亜塩素酸と反応して発光する蛍光試薬を備える測定装置を用いることができる。浄化物質濃度センサ41内に設けた蛍光試薬は、次亜塩素酸と接触することにより発光する。浄化物質濃度センサ41は、蛍光試薬の発光の有無及び発光強度に応じて、空間Sの空気に含まれる次亜塩素酸の有無及び次亜塩素酸の濃度を安定して測定できる。また、浄化物質濃度センサ41としては、上記の測定装置の他に、カーボンナノチューブを用いた塩酸ガスセンサは、小型で高感度であり、好適に用いることができる。
【0094】
本実施形態では、浄化物質発生部21と送風機32とが装置本体11内に一緒に組み込まれているが、装置本体11内に一緒に組み込まれていなくてもよい。
【0095】
本実施形態では、送風機32は、装置本体11内の浄化物質発生部21よりも空気の流れ方向の上流側に設けられているが、浄化物質発生部21よりも空気の流れ方向の下流側に設けられていてもよい。
【0096】
本実施形態では、清浄部20が集塵フィルタ22を含んでいるが、空気中の煤塵等の固形物の捕集が必要ない場合等には、清浄部20は、集塵フィルタ22を備えなくてもよい。
【0097】
本実施形態では、集塵フィルタ22を用いて、空気中の煤塵等の固形物を捕集しているが、空気中から煤塵等の固形物を除去できればよい。例えば、集塵フィルタ22に代えて電気集塵機を用いてもよい。電気集塵機は、空気に高電圧を印加して空気中に含まれるほこり等を帯電させて集塵板に吸着させて取り除く装置である。電気集塵機を利用することにより、集塵フィルタ22を利用した場合よりもメンテナンスサイクルが長くなり、メンテナンスの回数を減らすことができる。
【0098】
本実施形態では、制御装置50は、制御部51を車両12内であって空間Sの外側に設け、操作部52及び表示部53を空間S内に設けているが、これに限定されない。制御装置50は、装置本体11内に設けてもよいし、制御部51だけを装置本体11内に設けてもよい。また、制御装置50の操作部52及び表示部53は、車両12の外側に設けてもよいし、制御装置50を車両12の外側に設けてもよい。
【0099】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0100】
本出願は、2019年6月27日に日本国特許庁に出願した特願2019-119788号に基づく優先権を主張するものであり、特願2019-119788号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0101】
10 空気清浄装置
20 清浄部
21 浄化物質発生部
30 循環部
32 送風機
40 検知部
41 浄化物質濃度センサ(浄化物質濃度測定部)
42 反応生成物濃度センサ(反応生成物濃度部)
43 臭気センサ(臭い測定部)
44 人感知センサ(人検知部)
51 制御部
S 空間