(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】マルチモード成分を有する偏光無依存型フォトニックデバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20221128BHJP
G02B 6/14 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G02F1/025
G02B6/14
(21)【出願番号】P 2021539347
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2020089905
(87)【国際公開番号】W WO2020228711
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100132481
【氏名又は名称】赤澤 克豪
(74)【代理人】
【識別番号】100115635
【氏名又は名称】窪田 郁大
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ドゥメイ
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188956(JP,A)
【文献】特開2010-217845(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105204113(CN,A)
【文献】特開平10-073790(JP,A)
【文献】国際公開第2012/120306(WO,A2)
【文献】特開2005-062500(JP,A)
【文献】特表2017-534926(JP,A)
【文献】特開2015-079053(JP,A)
【文献】特表2018-512626(JP,A)
【文献】特開2014-182213(JP,A)
【文献】米国特許第09647426(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0205578(US,A1)
【文献】岡山 秀彰他,TM0-TE1偏波変換器とパワー分岐素子を使用した偏波ダイバーシティ用Si光導波路素子,第76回応用物理学会秋季学術講演会[講演予稿集],03-239、14p-PA4-2,公益社団法人応用物理学会,2015年,p. 1
【文献】CHEN, Zeyu et al.,Bridged Coupler and Oval Mode Converter Based Silicon Mode Division (De)Multiplexer and Terabit WDM-MDM System Demonstration,Journal of Lightwave Technology,IEEE,2018年07月,Vol. 36, No. 13,pp. 2757 - 2766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G02B 6/12 - 6/14
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる偏光状態で伝播する第1の成分及び第2の成分を有する光信号を受信し、両者が同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードで伝播するように、前記第1の成分及び前記第2の成分の一方又は両方を変換するように構成される第1のモードコンバータと、
前記第1のモードコンバータの光出力を受信し、制御されたゲイン、
又は前記制御されたゲインと制御された位相シフト
との両方を、前記第1のモードコンバータによって出力される前記第1の成分及び前記第2の成分の両方に適用するように構成されるモジュレータと、
前記モジュレータの光出力を受信することであって、前記光出力は、前記同じ偏光状態の前記それぞれ異なるモードで伝播する前記第1の成分及び前記第2の成分を含む、ことを行い、前記第1の成分及び前記第2の成分をそれぞれ異なる偏光状態で伝播させるために、前記モジュレータによって出力される前記第1の成分及び前記第2の成分の一方又は両方を変換するように構成される第2のモードコンバータと、
前記第1のモードコンバータの入力に作動的に接続された、又は前記第2のモードコンバータの出力に作動的に接続された追加モジュレータと、
を含
み、
前記追加モジュレータは、他の制御されたゲイン、又は前記他の制御されたゲインと他の制御された位相シフトとの両方を、前記第1の成分及び前記第2の成分の両方に適用するように構成され、
前記モジュレータは、前記同じ偏光状態の前記それぞれ異なるモードのそれぞれにわたって変調強度の第1の相違を示すことがあり、前記追加モジュレータは、前記それぞれ異なる偏光状態のモードにわたって変調強度の第2の相違を示すことがあり、変調強度の前記第2の相違は、変調強度の前記第1の相違を補償するように構成される、
フォトニックデバイス。
【請求項2】
前記モジュレータは、前記同じ偏光状態の前記それぞれ異なるモードの両方を搬送するように構成されるマルチモード導波路を含み、前記モジュレータは、前記制御されたゲイン、
又は前記制御されたゲインと前記制御された位相シフト
との両方を、前記マルチモード導波路の範囲内で、前記それぞれ異なるモードのそれぞれに同時に適用するようにさらに構成される、
請求項1に記載のフォトニックデバイス。
【請求項3】
前記モジュレータは、前記マルチモード導波路に作動的に接続され、且つキャリア注入効果を利用して、前記制御されたゲイン、
又は前記制御されたゲインと前記制御された位相シフト
との両方を適用するように構成されるp-i-n接合構造をさらに含む、
請求項2に記載のフォトニックデバイス。
【請求項4】
前記モジュレータは、前記マルチモード導波路に作動的に接続され、且つ熱光学効果を利用して、前記制御されたゲイン、
又は前記制御されたゲインと前記制御された位相シフト
との両方を適用するように構成されるヒーター又はクーラーをさらに含む、
請求項2、3のいずれか1項に記載のフォトニックデバイス。
【請求項5】
前記モジュレータは、前記同じ偏光状態の前記それぞれ異なるモードのそれぞれについて同じ又は類似の変調強度を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のフォトニックデバイス。
【請求項6】
前記同じ又は類似の変調強度は、前記モジュレータのマルチモード導波路との、前記同じ偏光状態の前記それぞれ異なるモードのそれぞれの対応する同じ又は類似のモードオーバーラップによるものである、
請求項5に記載のフォトニックデバイス。
【請求項7】
前記マルチモード導波路は、リブ導波路であり、前記モードオーバーラップは、少なくとも部分的に前記リブ導波路の幅によるものとして構成される、
請求項6に記載のフォトニックデバイス。
【請求項8】
前記モジュレータは、可変光減衰器、移相器、又はそれらの組み合わせである、
請求項1~
7のいずれか1項に記載のフォトニックデバイス。
【請求項9】
前記フォトニックデバイスは、シリコンオンインシュレータ構造で製造される、
請求項1~
8のいずれか1項に記載のフォトニックデバイス。
【請求項10】
前記第1のモードコンバータの前で、前記第1の成分は、横方向電気(TE)偏光状態のモードで伝播し、前記第2の成分は、横方向磁気(TM)偏光状態のモードで伝播する、
請求項1~
9のいずれか1項に記載のフォトニックデバイス。
【請求項11】
前記第1のモードコンバータは、モード変換せずに前記第1の成分を通過させ、モード次数及び偏光状態の両方について前記第2の成分を変換する、
請求項1~
10のいずれか1項に記載のフォトニックデバイス。
【請求項12】
前記第1のモードコンバータは、前記第2の成分を、基本モードから1次モードに変換する、
請求項
11に記載のフォトニックデバイス。
【請求項13】
前記第2のモードコンバータは、モード変換せずに前記第1の成分を通過させ、モード次数及び偏光状態の両方について前記第2の成分を変換する、
請求項
11又は12に記載のフォトニックデバイス。
【請求項14】
前記第2のモードコンバータは、偏光状態の変換をせずに前記第2の成分を通過させ、偏光状態について前記第1の成分を変換する、
請求項
11又は12に記載のフォトニックデバイス。
【請求項15】
フォトニックデバイスにおいて光信号を変調するための方法であって、前記光信号は、最初、それぞれ異なる偏光状態で伝播する第1の成分及び第2の成分を有し、前記方法は、
両者が同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードで伝播するように、前記第1の成分及び前記第2の成分の一方又は両方を変換するステップと、
前記変換するステップの後、制御されたゲイン、
又は前記制御されたゲインと制御された位相シフト
との両方を、前記第1の成分及び前記第2の成分の両方に適用するステップと、
前記適用す
るステップの後、前記第1の成分及び前記第2の成分をそれぞれ異なる偏光状態で伝播させるために、前記第1の成分及び前記第2の成分の一方又は両方を変換するステップと、
を含み、前記方法は、前記第1の成分及び前記第2の成分が前記それぞれ異なる偏光状態で伝播しているとき、他の制御されたゲイン、又は前記他の制御されたゲインと他の制御された位相シフトとの両方を、前記第1の成分及び前記第2の成分の両方に追加的に適用するステップをさらに含み、
前記適用するステップでは、前記同じ偏光状態の異なるモードの間で変調強度の第1の相違が生じることがあり、前記追加的に適用するステップでは、前記それぞれ異なる偏光状態のモードの間で変調強度の第2の相違が生じることがあり、変調強度の前記第2の相違は、変調強度の前記第1の相違を補償するように構成される、
方法。
【請求項16】
前記制御されたゲイン、
又は前記制御されたゲインと前記制御された位相シフト
との両方は、単一のマルチモード導波路構造内をコプロパゲートする間、前記第1の成分及び前記第2の成分の両方に同時に適用される、
請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記制御されたゲイン、
又は前記制御されたゲインと前記制御された位相シフト
との両方は、前記同じ偏光状態の前記それぞれ異なるモードのそれぞれについて、同じ又は類似の変調強度を有するモジュレータを利用して適用される、
請求項
15又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
この出願は、2019年5月13日に出願され、「マルチモード成分を有する偏光無依存型フォトニックデバイス」と題された米国特許出願番号16/410,430の優先権の利益を主張し、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光学又はフォトニックデバイスの分野、特に、マルチモード成分を有する偏光無依存型フォトニックデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
シリコンフォトニクス(SiPh)は、製造コストの低さ、既存のCMOS技術の活用、及びコンパクトさのため、通信システムにおいて多くの潜在的なアプリケーションを有する。現在、信号トランシーバは、シリコンフォトニクスデバイスの主要な商用アプリケーションである。典型的なアプリケーションは、低ファイバ-チップ挿入損失を要求し又はそれから利益を得るだろう。偏光無依存は、多くのアプリケーションの要件でもある。
【0004】
ナノフォトニックシリコン導波路は、典型的に高い複屈折を有する。p-i-n接合ベース移相器及びモジュレータなどの能動デバイスは、また、シリコンコア内での所謂、横方向電気(TE)及び横方向磁気(TM)光学モードオーバーラップ(又は閉込め)の相違から生じる偏光依存性を有する。偏光依存性は、同じ光信号の異なる部分が異なるコンディションの影響を受けるときに問題を含むことができる。
【0005】
シリコンナノフォトニック回路の偏光依存性は、「偏光ダイバーシティ」として知られるものを通じて効果的に対処できる。このアプローチにおいて、光信号の両方の偏光成分は、シリコン光学チップに入った後すぐに分離され、一方の成分が他方と同じ偏光に変換される。次いで、2つの成分は、2つの同一であるが別個の回路によって処理され、その後、直交偏光に戻るように一方の成分が変換され、シリコン光学チップを出るときに他方と結合される。偏光ダイバーシティのいくつかの実装において、2つの成分は、同一であるが逆向きのフォトニック回路で処理される。任意のケースにおいて、偏光ダイバーシティを実装することが要求される偏光スプリッタ及びコンバータは、損失、偏光依存損失、及び偏光クロストークなどの、光信号に対するいくつかの減損をもたらす。このこと及びフォトニック回路の重複は、もしそれが使用される場合、これらのフォトニックデバイスのサイズ、複雑さ、及びコストを増加させる。
【0006】
可変光減衰器(VOA)は、典型的には、専用高速モジュレータより低い周波数でのチャネル等化又は変調に利用できる便利な汎用光学コンポーネントである。VOAは、キャリアの注入によって(例えば、接合へ印加される電流を介して)光信号を制御可能に減衰できるp-i-n接合を利用して実装できる。他のVOA実装は、統合されたマッハツェンダ干渉計を利用する。そのようなモジュレータは、p-i-n接合又は典型的に熱光学移相器と称される局所的に加熱された導波路セクションを利用して駆動できる光位相変化によって駆動される。
【0007】
ミクロンスケールシリコン導波路は、偏光無依存型デバイスをもたらすことができる。しかし、そのようなプラットフォームにおけるキャリア注入デバイスは、現在、変調周波数が最大で約1MHzに制限されている。
【0008】
従って、光信号を調整(例えば、減衰、位相シフト、又はその両方)するためのフォトニックデバイスへのニーズがあり、それは先行技術の1つ以上の限定の対象にならない。
【0009】
この背景情報は、出願人によって本発明に関連する可能性があると信じられている情報を明らかにするために提供される。必ずしも自白を意図するものではなく、前述の情報のいずれもが本発明に対する先行技術を構成するものと解釈されるべきでない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施形態の目的は、マルチモード成分を有する偏光無依存型フォトニックデバイスを提供することである。これは、バイモード導波路を有する偏光無依存型モジュレータであってよい。様々な実施形態によれば、可変光減衰器などの偏光無依存型光電(フォトニック)モジュレータデバイスが提供される。発明は、比較可能な既存の偏光無依存型デバイスに比べて、低減された減損、複雑さ又はコスト、又はそれらの組み合わせを示しうる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、第1及び第2のモードコンバータの間に位置するモジュレータを有するフォトニックデバイスが提供される。第1のモードコンバータは、それぞれ異なる偏光状態で伝播する第1の成分及び第2の成分を有する光信号を受信し、両者が同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードで伝播するように、第1の成分及び第2の成分の一方又は両方を変換するように構成される。モジュレータは、第1のモードコンバータの光出力を受信し、制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方を、第1のモードコンバータによる出力として第1の成分及び第2の成分の両方に適用するように構成されている。第2のモードコンバータは、モジュレータの光出力を受信することであって、光出力は、同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードで伝播する第1の成分及び第2の成分を含む、ことを行い、第1の成分及び第2の成分をそれぞれ異なる偏光状態で伝播させるために、モジュレータによって出力される第1の成分及び第2の成分の一方又は両方を変換するように構成される。フォトニックデバイスは、シリコンオンインシュレータ構造で製造されうる。
【0012】
様々な実施形態において、モジュレータは、同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードの両方を搬送するように構成されるマルチモード導波路を含み、モジュレータは、制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方を、マルチモード導波路の範囲内で、それぞれ異なるモードのそれぞれに同時に適用するようにさらに構成される。モジュレータは、マルチモード導波路に作動的に接続されたp-i-n接合構造を含んでよく、モジュレータは、キャリア注入効果を利用して、制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方を適用するように構成されうる。モジュレータは、同じ偏光状態の前述したそれぞれ異なるモードのそれぞれについて同じ又は類似の変調強度を有しうる。同じ又は類似の変調強度は、モジュレータのマルチモード導波路との、同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードのそれぞれの対応する同じ又は類似のモードオーバーラップによるものでありうる。マルチモード導波路は、リブ導波路であってよく、モードオーバーラップは、少なくとも部分的にリブ導波路の幅を構成することによって構成されうる。モジュレータは、可変光減衰器、移相器、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0013】
様々な実施形態において、モードコンバータは、バイレベルテーパモードコンバータである。
【0014】
いくつかの実施形態において、追加モジュレータが、第1のモードコンバータの入力に作動的に接続され、又は第2のモードコンバータの出力に作動的に接続され、追加モジュレータは、モジュレータと協力し、第1の成分及び第2の成分が異なる偏光状態で伝播しているときに、他の制御されたゲイン、他の制御された位相シフト、又はその両方を、光信号の第1の成分及び第2の成分の両方に適用するように構成される。第1のモジュレータは、同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードのそれぞれにわたって、変調強度にの第1の相違を示してよく、追加モジュレータは、異なる偏光状態のモードにわたって変調強度の第2の相違を示してよい。変調強度における第2の相違は、少なくとも部分的に、変調強度における第1の相違を補償する。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1のモードコンバータの前で、第1の成分は、横方向電気(TE)偏光状態のモードで伝播し、第2の成分は、横方向磁気(TM)偏光状態のモードで伝播する。いくつかの実施形態において、第1のモードコンバータは、モード変換せずに第1の成分を通過させ、モード次数及び偏光状態の両方について第2の成分を変換する。第2の成分は、基本モードから1次モードに変換されうる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、フォトニックデバイス内の光信号を変調するための方法が提供される。光信号は、最初、それぞれ異なる偏光状態で伝播する第1の成分及び第2の成分を有する。方法は、両者が同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードで伝播するように、第1の成分及び第2の成分の一方又は両方を変換するステップを含む。方法は、変換するステップの後、制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方を、第1の成分及び第2の成分の両方に適用するステップを含む。方法は、制御されたゲインを適用するステップの後、第1の成分及び第2の成分をそれぞれ異なる偏光状態で伝播させるために、第1の成分及び第2の成分の一方又は両方を変換するステップを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方は、単一のマルチモード導波路構造内をコプロパゲートする間、第1の成分及び第2の成分の両方に同時に適用される。制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方は、同じ偏光状態のそれぞれ異なるモードのそれぞれについて、同じ又は類似の変調強度を有するモジュレータを利用して適用される。
【0018】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の成分及び第2の成分が異なる偏光状態で伝播しているとき、制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方の適用と協同的に、他の制御されたゲイン、他の制御された位相シフト、又はその両方を、光信号の第1の成分及び第2の成分の両方に適用するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に従って提供されるフォトニックデバイスを示すブロック図である。
【
図2A】本発明の実施形態に従って提供されるフォトニックデバイスを示す。
【
図3A】本発明の実施形態による、フォトニックデバイスのマルチモードモジュレータの断面図である。
【
図3B】本発明の実施形態による、TE0モードのモード強度プロファイル及びマルチモードモジュレータの導波路コアとのモードオーバーラップを示す。
【
図3C】本発明の実施形態による、TE1モードのモード強度プロファイル及びマルチモードモジュレータの導波路コアとのモードオーバーラップを示す。
【
図3D】本発明の実施形態による、TM0モードのモード強度プロファイル及びマルチモードモジュレータの導波路コアとのモードオーバーラップを示す。
【
図4A】
図3Aに関連する本発明の実施形態の性能の態様の例を示す。
【
図4B】
図3Aに関連する本発明の実施形態の性能の態様の例を示す。
【
図5】偏光ダイバーシティを組み込んだ、本発明の実施形態の代替実装を示す。
【
図6】中点偏光回転を組み込んだ、本発明の実施形態の代替の実装を示す。
【
図7】追加モジュレータが提供される、本発明の他の実施形態に従って提供されるフォトニックデバイスを示す。
【
図8】本発明の実施形態による、フォトニックデバイスにおいて光信号を変調するための方法を示す。
【0021】
添付の図を通して同様の参照番号によって同様の特徴が識別されることに注意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、この発明が属する分野の当業者によって共通理解されるものと同じ意味を有する。
【0023】
用語「モード」は、光信号(又はその成分)が伝播する空間モードを指す。本明細書で使用されるとき、モードは、導波路モードを指す。モードは、例えば、モードを横方向電気(TE)モードと横方向磁気(TM)モードとにグループ化するように偏光状態によって分類できる。TEモードは、TE0(基本モード)、TE1(1次モード)、TE2などを含み、一方、TMモードは、TM0、TM1、TM2などを含む。TE又はTMに続く異なる数値は、異なるモード次数に対応し、一般に、モードの断面の複雑さ(例えば、最大値及び最小値の数)を示しうる。本明細書で使用されるとき、モード次数は、水平又は面内モードを指し、本明細書で論じられる構造は、垂直方向に高次モードを有することはないため、垂直方向のそうした数字は省略される。2つの数値を使用するインデックスモード(例えば、TEx,y又はTMx,y、ここで、x及びyは0から上の所与の整数)などの他のラベリング慣習も利用でき、本発明の実施形態に組み込まれることを理解されたい。
【0024】
用語「モジュレータ」は、光信号の振幅、位相、又は振幅と位相の両方を調整するように動作可能なフォトニックデバイスを指す。多くの場合において、調整は、入力制御信号に基づいて変更できる。調整は、キャリア信号を介してデータを伝送するために必ずしも実行されるとは限らない。モジュレータの例は、VOA及び移相器を含む。
【0025】
用語「横方向電気」(TE)は、導波路光学モードの2つの主要な偏光状態の一方を指す。その用語は、モード電界の主成分が、集積型導波路について、フォトニック集積回路の平面に向けられている光学的な空間モードのクラスを説明するために使用される。
【0026】
用語「横方向磁気」(TM)は、導波路光学モードの2つの主要な偏光状態の他方を指す。その用語は、モード電界の主成分が、集積型導波路について、フォトニック集積回路の平面に対して垂直に向けられている光学的な空間モードのクラスを説明するために使用される。
【0027】
単一モード導波路は、所与の偏光状態について単一の空間モードをサポートする光導波路を指す。マルチモード導波路は、所与の1つ以上の偏光状態についての複数の空間モードをサポートする光導波路を指す。
【0028】
用語「シリコンオンインシュレータ」は、数ミクロンの熱酸化物層によって分離される、シリコン基板上のシリコンの薄層を含む集積型フォトニクスのプラットフォームを指す。薄層は、導波路を形成するためにエッチングされる。酸化物層及び金属層などの1つ以上のさらなる層が、パターン化されたシリコン層の上部に堆積され、電気的接続及び他の機能を追加するためにパターン化される。
【0029】
リッジ導波路は、断面がほぼ長方形であり、典型的には、薄いシリコン層又はいくつかの堆積層のフルエッチパターニングによって形成される光導波路を指す。
【0030】
リブ導波路は、導波路コアを形成する高架リブを囲む材料のスラブを残す、材料層(例えば、シリコン)の部分的なエッチングによって形成される光導波路を指す。
【0031】
本発明の実施形態は、相対的に、より大きな作用上の相違(例えば、異なる偏光状態を有することによるもの)を有する2つの光学モードが、相対的に、より小さな作用上の相違(例えば、同じ偏光状態を有することによるもの)を有する2つの光学モードに変換される、マルチモードモジュレータ及び関連方法を提供する。作用の相違は、所与のモジュレータによってなされる同じ変調入力に応じた相違、例えば、2つのモードについてのモジュレータの変調ゲインの相違によるもの、に対応することができる。変換は、光学モードの1つだけを変換することを含みうる。変換に続いて、例えば、キャリア注入の仕組みで動作するマルチモードモジュレータによって変調が実行される。変調に続いて、例えば、第1のモード変換の効果を逆にするために、他のモード変換が実行されてよい。
【0032】
本発明につながる重要な洞察は、同じ偏光状態の異なる空間モードが、異なる偏光状態の空間モードより容易に一緒に処理できるという所見である。モジュレータ(減衰器、移相器、及び類似デバイス)は、典型的に偏光依存型であり、同じ又は類似の調整(例えば、減衰)を同じ偏光状態の2つのモード(例えば、TE0及びTE1)に適用するモジュレータは、同じ又は類似の調整を2つの異なる偏光状態の2つのモード(例えば、TE0及びTM0)に適用するモジュレータより容易に構築されることは発明者によって認識されている。そのようなモジュレータは、本明細書ではマルチモードモジュレータと称される。従って、本発明の実施形態は、信号を、減衰作用などのモジュレータ作用にかける前に入力信号上での適切な偏光状態変換(典型的には、モード変換と一緒に)を実行することを含む。その作用の後、信号は、第2の偏光状態変換、モード変換、又はそれらの組み合わせを介して、その元の形に戻るように又は他の適切な形に変換されることができる。
【0033】
図1は、ブロック図形式で、本発明の実施形態に従って提供されるフォトニックデバイス100を示す。デバイスは、第1のモードコンバータ110と、モジュレータ120(マルチモードアクチュエータとも称される)と、第2のモードコンバータ130とを含み、全てが作動的に直列で接続される。第1のモードコンバータ110は、光信号の2つの成分X及びYを伝播する入力導波路に接続されうる。これらの2つの成分は、同じ全体信号又は異なる多重化信号の態様であることができる。X成分及びY成分は、異なる直交偏光状態の空間モードを介して入力導波路内を伝播し、即ち、X及びY成分の一方は、TE状態のモード(又は、できる限り、複数のモード)に従って伝播し、一方で、他方は、TM状態のモード(又は、できる限り、複数のモード)に従って伝播する。入力導波路は、フォトニックデバイス100を含む、より大きなフォトニック回路の内部導波路、又は、できる限り、フォトニックデバイスに接続された外部導波路であってよい。簡単のために、X成分が、単一モード、典型的にはTE0又はTM0などの基本モードに従って伝播していると仮定できる。しかし、X成分が、高次モードに従って、又は複数のモードに従って伝播しているとすることも可能である。
【0034】
コントローラ150は、提供され、電気的な制御信号をモジュレータ120に提供するように構成されうる。これは、制御された量のキャリア注入位相シフト、熱光学位相シフト、又はそれらの組み合わせを生じさせるように、制御された電気的な駆動信号を、モジュレータのコンポーネントに提供することを含みうる。
【0035】
いくつかの実施形態において、追加モジュレータ105又は135が提供されることができる。追加モジュレータ105は、第1のモードコンバータ110の入力に接続され、一方、追加モジュレータ135は、第2のモードコンバータ130の出力に接続される。追加モジュレータの目的及び動作は、例えば、
図7に関連して説明される。モジュレータ120及び追加モジュレータ(存在するとき)は、両方がコントローラ150に接続され、例えば、各モジュレータによって行われる変調の一部で、光信号を変調するために一緒に動作するように構成されている。
【0036】
第1のモードコンバータ110は、両方の成分が相互に同じ偏光状態で続けて伝播するが、また、X成分がY成分とは異なる空間モードに従って伝播するように、これらの成分を変換するために、X及びY成分の一方(又は、できる限り両方)に作用する。例えば、X成分は、変えられずに第1のモードコンバータを通過してよく、一方、Y成分は、X成分と同じ偏光状態を有するが、X成分とは異なるモードを有するように変換されることができる。X及びY成分が異なるモードを有するようにさせることは、2つの成分の望まない混合を回避する。
【0037】
より具体的な例において、X成分は、TE0に従って入力導波路内を伝播してよく、Y成分は、TM0に従って入力導波路内を伝播してよい。第1のモードコンバータ110は、X成分を実質的に変えずに通過させる一方、Y成分をTM0からTE1へと変換する。しかし、他の変換も可能であることに注意されたい。従って、いくつかの実施形態において、第1のモードコンバータ110は、X又はYのいずれかの成分を基本モードから高次モードへと変換し、一方で、その偏光状態も変える。このことは、X及びY成分が、TE又はTMモードのいずれかである同じ偏光状態の異なる空間モードで伝播するという結果になる。
【0038】
第1のモードコンバータ110の出力は、モジュレータ120に提供される。モジュレータは、同じ又は少なくとも類似の方式で第1のモードコンバータによって出力される全てのモードに同時に作用するように構成されている単一のデバイスである。このことは、同じ又は類似の振幅調整(例えば、減衰)、位相シフト、又はその両方を、これらのモードの全てに適用することを含む。それとして、モジュレータ120は、X及びY信号成分の両方を一緒に、同じ又は類似の方式で扱う。上述したように、また、以下でさらに論じられるように、そうしたモジュレータは、同じ方式で異なる偏光状態の信号成分を扱うことになるものよりも構築することが容易である。可能なモジュレータ構築及び動作の詳細は、本明細書の他の場所で論じられる。
【0039】
明確性のために、2つのモードに適用される減衰、位相シフト、又はその両方の量は、次の意味で類似であってよい。X信号成分は、2つのモードの一方で伝播し、時間tでの値x(t)を有すると仮定する。同様に、Y信号成分は、2つのモードの他方で伝播し、時間tでの値y(t)を有する。減衰を受けると、X成分は、値ax(t)を有するように変えられ、Y成分は、値by(t)を有するように変えられる。減衰量が類似である場合、比a/bは1に近く、例えば、0.95と1.05との間である。同様に、位相シフトを受けると、φ_x(t)と表示される瞬間X位相成分は、値φ_x(t)+cを有するように変えられ、φ_y(t)と表示される瞬間Y位相成分は、時間tでの値φ_y(t)+dを有するように変えられる。位相シフト量が類似である場合、正規化された相違(c-d)/(2*pi)は0に近く、例えば、-0.05と0.05との間である。減衰及び位相シフトの両方が生じることもできることに注意されたい。
【0040】
モジュレータ120は、(コントローラ150から)提供された制御信号に応答し、X及びY信号成分を、例えば、制御信号に見合った、ある減衰量(VOAのケースで)、ある位相シフト量(移相器のケースで)、又はその両方を適用することによる、特別な方式で変調してよい。ある位相シフト量が(やむを得ない)減衰作用の副産物として適用されることがあり、同様に、ある減衰量が位相シフト作用の副産物として適用されることがあることに注意されたい。
【0041】
モジュレータ120は、X及びY成分が伝播している複数の空間モードをサポートするマルチモード導波路内に形成されうる。既に上述したように、モジュレータによって受信されるとき、X及びY成分は、同じ偏光状態の異なる空間モードで伝播しており、例えば、Xは、TE0に従って伝播しうるし、Yは、TE1に従って伝播しうる。モジュレータ120は、偏光方向の変化をもたらさない断熱性モード変換を実装するように構成されうる。
【0042】
モジュレータ120は、p-i-n接合に作動的に接続された導波路を含み、キャリア注入効果を介して光信号成分を制御可能に変調するように構成されうる。モジュレータ120は、熱ヒーター又はクーラーに作動的に接続された導波路を含み、熱光学効果を介して光信号成分を制御可能に変調するように構成されうる。これは、例えば、モジュレータが主に移相器であるときのケースでありうる。
【0043】
モジュレータ120の出力は、第2のモードコンバータ130に提供される。第2のモードコンバータは、X成分がY成分とは異なる偏光状態で伝播するように、これらの成分を変換するために、X及びY成分の一方(できる限り、両方)に作用するように構成される。伝播モードは変更されてもよい。例えば、X成分は、再び変えられなくてよく、一方、Y成分は、反対の偏光状態を有するように変換される。第2のモードコンバータは、X及びY成分をそれらの元の伝播モード及び偏光状態に戻すために、第1のモードコンバータの変換動作を本質的に逆にしうる。
【0044】
より具体的な例において、第2のモードコンバータ130への入力で、X成分は、TE0に従って伝播していてもよいし、Y成分は、TE1に従って伝播していてもよい。第2のモードコンバータ130は、実質的に変えずにX成分を通過させてよく、一方で、Y成分をTE1からTM0に戻すように変換する。しかし、他の変換も可能であることに注意されたい。従って、第2のモードコンバータ130は、X又はY成分のいずれかを、高次モードから基本モードに変換してよく、一方で、その偏光状態も変える。これは、X及びY成分が異なる偏光状態、且つできる限り同じ次数のモード(例えば、基本モード)で伝播する結果をもたらす。
【0045】
代替的に、第2のモードコンバータは、その偏光状態を変えるようにX信号成分に作用してよく、一方、Y成分の偏光状態を変えないままにする。そのようにして、TEモードがTMモードに又はその逆に変えられるように、装置全体の出力は、その入力に関して偏光について回転されうる。X及びY成分のモード次数は、変えられないままであっても変えられてもよい。例えば、Yのモード次数は、基本モード(例えば、TE0又はTM0)に変換されてよい。
【0046】
第2のモードコンバータは出力導波路に作動的に接続されてよく、そこに提供されるX及びY成分を受信するように構成され、これらの成分が第2のモードコンバータ130によって提供される偏光状態及び空間モード(例えば、TE0及びTM0)で、伝播させる。追加モジュレータ135は、存在するとき、第2のモードコンバータと出力導波路との間に挿入される。
【0047】
1つ以上の追加フォトニックコンポーネントは、第1のモードコンバータ110とモジュレータ120との間、又は、モジュレータ120と第2のモードコンバータ130との間に接続できることが考慮される。しかし、別途の補償がない限り、異なる空間モード(例えば、TE0対TE1)に従って伝播する信号の特性の潜在的な分岐のために、コンポーネントの数、及びモードコンバータ間の導波路長を制限することが要求されうる。これは、異なる伝播速度、異なる減衰率などによるものでありうる。
【0048】
図2Aは、本発明の他の実施形態に従って提供されるフォトニックデバイス200を示す。フォトニックデバイス200は、
図1に示したフォトニックデバイス100の特別な実装である。デバイス200は、VOAとして提供されうる。
【0049】
フォトニックデバイス200は、導波路形式のp-i-n接合222を含み、且つ導波路224が少なくとも2つの横方向モードをサポートするモジュレータ220を含む。フォトニックデバイス200は、偏光状態の一方(TM又はTE)の基本モードを、代替偏光状態の高次モードに変換する第1のモードコンバータ210も含む。例えば、第1のモードコンバータ210は、TM0をTE1に変換できる。そのような例において、コンバータ210の前で、TM0を介して伝播する入力信号の任意の成分は、コンバータの後で、この成分がTE1を介して伝播するように変換される。同時に、第1のモードコンバータ210は、代替偏光状態の基本モード(例えば、TE0)を変えずに通過させる。
【0050】
フォトニックデバイス200は、第1のモードコンバータ210の逆の機能を実行するように構成された第2のモードコンバータ230も含む。即ち、第2のモードコンバータ230は、(例えば、第1のモードコンバータが変換する偏光状態である)偏光状態の高次モードを他の偏光状態の基本モードに変換する。例えば、第2のモードコンバータ230はTE1からTM0に変換できる。そのような例において、コンバータ230の前で、TE1を介して伝播する入力信号の任意の成分は、コンバータの後で、この成分がTM0を介して伝播するように変換される。同時に、第2のモードコンバータ230は、他の偏光状態の基本モード(例えば、TE0)を変えずに通過させる。
【0051】
当業者によって容易に理解されるように、モードコンバータは、リッジ導波路からリブ導波路への移行を導入し、伝播方向に沿った断面を、モードクロスオーバーを生成するように変えることでシリコン導波路内に実装されることができる。
【0052】
本発明の実施形態によれば、第1のモードコンバータ、第2のモードコンバータ、又はその両方は、バイレベルテーパモードコンバータ構造として提供されることができる。そのような応用可能な構造は、Jing Wang et al., "Proposal for fabrication-tolerant SOI polarization splitter-rotator based on cascaded MMI couplers and an assisted bi-level taper", Optics Express vol. 22 no 23 p 27869 (2014)及びYangjin Ma et al., "Symmetrical polarization splitter/rotator design and application in a polarization insensitive WDM receiver", Optics Express vol. 23 no. 12 p. 16052 (2015)において説明されており、その両方は、参照によって本明細書に組み込まれる。そのようなモードコンバータは、TE0モードの形でのX信号成分と、TM0モードの形でのY信号成分とを受信し、Y信号成分をTE1モードに変換でき、一方で、X信号成分のモード及び偏光を変えないままにする。これらのモードコンバータは、逆の方式で動作することもでき、TE0モードの形でのX信号成分とTE1モードの形でのY信号成分とを受信し、Y信号成分をTM0モードに変換し、一方で、X信号成分のモード及び偏光を変えないままにする。
【0053】
モジュレータ220内で、導波路224は、第1のモードコンバータ210から光信号を受信し、第2のモードコンバータ230に向けて光信号を伝播する。導波路224は、キャリア注入を介して制御可能に導波路224の光学特性に影響を与えるp-i-n接合構造222に統合される。p-i-n接合222は、キャリアが制御可能な強度でp-i-n接合222に注入されるように動作する電気的制御回路に作動的に接続される。キャリアがp-i-n接合222に注入されるとき、それは、関連する導波路224内を伝播する光信号の制御可能な減衰を引き起こすように作用する。この減衰は、複数の伝播モードの成分を含めることに影響を与える。制御可能な減衰に加えて又は代替的に、p-i-n接合は、導波路224内を伝播する光信号の制御可能な位相シフトを引き起こすように作用しうる。
【0054】
導波路224内での所与のモードの減衰(又は位相シフト、又はその両方)が、キャリア注入の僅かな変化に応じて変えられることができる量は、その特定のモードについて、デバイスの変調強度を特徴付ける。変調強度は、実質的に、光学モードそれぞれと、排他的でない場合にシリコン内にしっかり位置する注入キャリアとのオーバーラップ(モードオーバーラップと称される)に比例する。従って、変調強度は、導波路断面におけるシリコン材料とのモードオーバーラップに依存する。導波路断面は、典型的に、シリコンと、シリカなどの少なくとも1つの周辺材料とを含む。
【0055】
導波路断面に依存して、TE状態のモード(TEモードとも称される)と、TM状態のモード(TMモードとも称される)との間のモードオーバーラップは著しく異なる。これは、220nm厚シリコンオンインシュレータ(SOI)構造の典型的な単一モード導波路のケースであるとして観察されている。220nm厚SOIのスラブ又はマルチモード導波路において、TMモードは、一般に、シリコンとのTEモードより小さいオーバーラップを有することが観測できる。220nm厚SOIのマルチモード導波路を含むモジュレータにおいて、同じ偏光状態の2つのモードについてシリコン材料とのモードオーバーラップは、異なる偏光状態の2つのモードのシリコン材料とのモードオーバーラップよりも互いにより類似させることができるということになる。従って、例えば、TM0モード成分がTE1モード成分に変換されるとき(本発明の実施形態においてなされるように)、次いで、p-i-n接合において、両方のモードの減衰(又は位相シフト、又はその両方)は、TM0モードが変換されていない場合よりも、より類似させることができる。各モードのシリコン材料とのモードオーバーラップの値は、リブの幅、エッチング深さ、ドーピングプロファイル、及び波長を含む、導波路モジュレータの断面の構成に依存する。
【0056】
より具体的には、220nm厚シリコンプラットフォームのケースにおいて、1.5マイクロメートルのリブ幅と、130nmのエッチング深さとを有するリブ導波路内で、シリコンとのTE0及びTE1モードオーバーラップは、1550nm波長でほぼ同じになる。従って、第1のモードコンバータ210の形で、p-i-n接合の前にTM0からTE1へのモードコンバータを追加することで、最初にTE0及びTM0モードにそれぞれ接続される、入力信号のX及びY成分の減衰(又は位相シフト、又はその両方)は、実質的に等しくされ、従って、モジュレータは、より偏光無依存であるとみなすことができる。実施形態において、第2のモードコンバータ230は、Y成分をTE0モードに戻すように復元し、出力された光信号を、デバイスの入力でのものと類似の形式に復元する。第2のモードコンバータ230は、第1のモードコンバータ210と同じ一般的な構造を有しうるが、デバイス200を通る光の伝播の方向に対して逆方向に向けられる。
【0057】
図2Bは、本発明の実施形態によるフォトニックデバイス200の3次元透視図を示す。
【0058】
図3Aは、本発明の実施形態によるモジュレータ220の断面図を示す。モジュレータの導波路222は、シリカ(SiO
2)基板の上に載置されるシリコン部310を含むリブ導波路として構成される。しかし、他の材料も利用されうる。この例示的実施形態において、シリコン厚は220nmであり、シリコン部310の全幅315は1.8マイクロメートルであり、シリコン部310のリブ幅317は1.5マイクロメートルである。導電部320及び325は、その拡大された基部でシリコン部310の側端に接続されている。P++とラベリングされた導電部320と、N++とラベリングされた導電部325と、導波路コアを形成する非ドープシリコン部310とは、p-i-n接合として知られるものを形成する。コントローラによって供給される電圧及び電流の一方又は両方のいずれかを介した順方向バイアス下で、p-i-n接合は、非ドープ領域310内に正及び負のキャリアを生成する。
【0059】
導波路は、例えば、その幅を構成することによって、モジュレータを通って信号が伝播することが予期されることを介して少なくとも2つのモードをサポートするように構成される。例えば、導波路は、TE0及びTE1モードの両方をサポートするように構成されうる。
【0060】
図3Bは、例示的実施形態による、
図3Aの導波路内でのTE0モード355の光強度プロファイルを示す。このケースでのシリコン部310とのモードオーバーラップは約0.82である。比較のために、
図3Cは、例示的実施形態による、
図3Aの同じ導波路内でのTE1モード360の光強度プロファイルを示す。このケースでのシリコン部310とのモードオーバーラップも約0.82である。従って、変調強度が実質的にモードオーバーラップに比例するため、変調強度は、TE0とTE1とについて実質的に等しくされている。逆に、
図3Dは、例示的実施形態による、
図3Aの導波路内でのTM0モード365の光強度プロファイルを示す。このケースにおけるシリコン部310とのモードオーバーラップは約0.50である。それとして、TM0は、TE0及びTE1よりも著しく低い変調強度を経験するだろう。本例において、TE0とTE1との間の微分群遅延(DGD)は、約0.3ps/mmであると計算でき、一方で、TE0とTM0との間のDGDは約2ps/mmである。DGDは、2つの対象モード間での伝播速度差を表す。TE0及びTE1についてのより小さいDGDは、TE0及びTE1を一緒に扱うことを容易にし、一方、これらの2つのモードを介して伝播される信号成分の広がりを軽減する。
【0061】
図4A及び4Bは、さらなる例を通じて、
図3Aに関する本発明の例示的実施形態についてリブ幅に関する性能の変化を示す。
図4Aは、色々なリブ幅について、1.2ボルトの制御信号での、TE0 405及びTE1 410の両方について有効屈折率変化を示す。理解できるように、リブ幅が約0.8マイクロメートルを超えるとき、TE0及びTE1の両方は同様に振る舞い、従って、デバイスの変調強度は、これらのリブ幅で、TE0及びTE1の両方について類似している。
図4Bは、1.5マイクロメートルのリブ幅について、一連の制御信号電圧にわたって変化する、TE0 425と、TE1 430と、TM0 435とについての有効屈折率を示す。理解できるように、TE0 425と、TE1 430とについての有効屈折率変化は、示された電圧範囲の全体にわたって類似しており、従って、デバイスの変調強度は、TE0及びTE1の両方において、この電圧範囲にわたって類似している。TE0及びTE1変調は、従って、リブ幅変化に対する顕著な耐性を持って実質的に同じ(0.15dB範囲内)にされることができる。有効屈折率は典型的に位相シフトに関連している一方、それは、減衰性能の代用測定として同様に利用できる。
【0062】
図2A及び2Bのデバイス200は、典型的な偏光ダイバーシティ設計に要求されるであろうものよりも顕著に少ないコンポーネントを含む。偏光ダイバーシティ実装において、X及びY信号成分のそれぞれの経路内に、それの、第2の導波路のTE0モードへの変換を通じてTE1成分を分離及び結合することを提供する少なくとも2つの追加光学コンポーネントがあるだろう。また、典型的に、第2の能動コンポーネント(p-i-n接合など)があるだろう。従って、デバイス200は、先行技術と比較して、より低い複雑さ、より小さいフットプリント、及び低減された減損を潜在的に示す。このことは、挿入損失は、SiPh技術の採用のための重要な要素になることができるため、コスト低減及び市場機会の増加につながることができる。
【0063】
図5は、比較のために例示的な偏光ダイバーシティ実装を示し、それは必ずしも認められた先行技術ではない。上で論じられたような本発明の実施形態とは対照的に、
図5の例示的実装は、第1のモジュレータを利用してX信号成分を扱い、第2の別途のモジュレータを利用してY信号成分を扱う。
【0064】
デバイス200は、また、中点偏光回転アプローチに比べて性能上の利点を与えうる。基本モード偏光状態(即ち、TE0及びTM0)の両方が回転される導波路偏光回転子は、損失(1dBのオーダー)があるか又は高い偏光クロストーク(-10dBのオーダー)を示すかのいずれか、又はその両方である。このアプローチは、モジュレータ(例えば、VOA)に、2つの部分に分離されることも要求し、複雑さを増加させ、導波路移行から、余分な損失をもたらす。
【0065】
図6は、比較のために、中点偏光回転アプローチを適用する例示的なデバイスを示し、それは必ずしも認められた先行技術ではない。上で論じられたような本発明の実施形態とは対照的に、
図6の例示的な実装は、変調の前に、2つの異なる偏光状態の信号成分を同じ偏光状態の2つの異なるモードに変換しない。むしろ、2つの偏光状態についてモジュレータの変調強度の相違のバランスをとるために、変調作用は、その間で実行される偏光回転作用を伴って、2つの別々であるが類似のモジュレータによって2回実行される。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光学デバイスは、第1のモードコンバータの前又は第2のモードコンバータの後のいずれかに追加モジュレータを含むことができる。
図7は、
図2のフォトニックデバイス200の第1のモードコンバータ210の入力に接続される追加モジュレータ710内の、そのような光学デバイス700を示す。追加モジュレータ710は、モジュレータ220と同様に構築でき、例えば、リブ導波路を囲むp-i-n接合を含み、p-i-n接合は、電気制御信号に作動的に接続される。断熱性テーパ705、715は、追加モジュレータ710の入力及び出力にそれぞれ接続されうる。
【0067】
発明の実施形態において、
図7のデバイスにおいて例示されたように、導波路断面が、η_TE1>η_TE0>η_TM0又はη_TE1<η_TE0<η_TM0であって、η_iがモードiとシリコン材料とのモードオーバラップであるような場合、変調の等化は、(テーパ705、715及び追加モジュレータ710を含む)第1のセクションではTM0として、(デバイス200を含む)第2のセクションではTE1としてY成分を伝播させることによって達成できる。このことは、第1及び第2のセクションの両方に起因するY成分の蓄積された減衰を、両セクション内をTE0モードで伝播するX成分の減衰と実質的に同じにする。そのような実施形態は、例えば、300nm厚シリコン層から製造され、かつ1.5マイクロメートルのリッジ幅を有するデバイスに実装でき、例えば、所望のモードオーバーラップ条件を有することができる。300nmシリコン内のモードオーバーラップは、η_TE1=0.87、η_TE0=0.90、及びη_TM0=0.92である。
【0068】
より一般的に、信号のX成分が、第1の偏光状態の第1のモード(例えば、TE0)に従って伝播するとき、信号のY成分は、第2の偏光状態のモード(例えば、TM0)に従ってデバイスの第1の部分を伝播させられ、かつ第1の偏光状態の第2のモード(例えば、TE1)に従ってデバイスの第2の部分を伝播させられることができる。さらに、デバイスの第1の部分は、(上記の追加減衰器に対応する)第1の減衰器を含むことができ、デバイスの第2の部分は、第2の減衰器を含むことができる。例えば、モードオーバーラップのために、第1の減衰器は、第2の偏光状態のモードに対し、第1の偏光状態の第1のモードに対してよりも高くなる変調強度を示すことができる。また、第2の減衰器は、第1の偏光状態の第2のモードに対し、第1の偏光状態の第1のモードに対してよりも低くなる変調強度を示すことができる。2つの減衰器を順に作用させることになり、モード変換が点在することになるが、これらの2つのモードオーバーラップの相違はバランスがとれる傾向にある。このことは、X及びY成分について、よりバランスがとれた減衰をもたらす。言い換えると、第1の減衰器は、第2の減衰器における変調強度の任意の相違を補償するように作用しうる。同様の効果は、位相シフト、又は位相シフトと減衰との組み合わせについて得ることができる。
【0069】
図7に示した実施形態は、本明細書で論じされた他の実施形態、例えば、偏光ダイバーシティアプローチに関するものに同様の利点を与える。しかし、追加モジュレータ710は複雑さを加え、追加的なリブからリッジへの導波路移行を必要としうることに注意されたい。リブからリッジへの移行は、220nmのSOI実装において、0.05dBのオーダーでの挿入損失を有するように設計できることに注意されたい。そのような実施形態は、追加モジュレータの必要にもかかわらず、各個別の減衰器において、異なるモードの変調強度が正確に一致していなくてもよいという点で依然として利点を有しうる。
【0070】
図8は、本発明の実施形態による、フォトニックデバイスにおいて光信号を変調するための方法800を示す。光信号は、最初、それぞれ異なる偏光状態(TE及びTM状態)で伝播する第1の成分と第2の成分とを有し、方法は、そのような光信号を受信するステップ810を含みうる。方法は、第1の成分及び第2の成分の一方又は両方を、同じ偏光状態のそれぞれ異なるモード(例えば、TE0及びTE1)で両者が伝播するように変換するステップ820をさらに含む。方法は、変換の後、制御されたゲイン、制御された位相シフト、又はその両方を、第1の成分及び第2の成分の両方に適用するステップ830をさらに含む。方法は、制御されたゲインを適用するステップの後、それぞれ異なる偏光状態(TE及びTM状態)で第1の成分及び第2の成分を伝播させるように、第1の成分及び第2の成分の一方又は両方を変換するステップ840をさらに含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、変換するステップは、一方の成分だけに適用されてよい。例えば、第2(Y)の信号成分は、動作820においてTM0からTE1に変換され、動作840においてTE1からTM0に戻るように変換されてよく、一方、第1(X)の信号成分は、動作820及び840の両方で実質的に変化されなくてよい。先の議論及び装置説明の観点から直ちに理解されるように、方法800の他の特徴及び変形が含まれることができる。
【0072】
本発明の実施形態は、パイロットトーン生成又は他のアプリケーションで使用するためのVOAの部分として提供されうる。本発明の実施形態は、熱光位相モジュレータなどの位相モジュレータの部分として、又は、必要と思われる、偏光無依存型カプラを実装できるという条件で、マッハツェンダデバイスに提供されうる。
【0073】
本発明の実施形態は、複数の、できる限り全てのモードが同じ導波路内で同時に作動される(例えば、変調される)マルチモードアクチュエータ(本明細書ではマルチモードモジュレータとも称される)を提供する。マルチモードアクチュエータは、入力光信号の偏光成分の一方を、入力信号の他方の偏光成分とは異なる偏光状態を有し、且つ異なる空間モードを有するモードに変換するモードコンバータの前に置かれうる。マルチモードアクチュエータは、出力信号が入力信号と同じ偏光特性を有するようにモードコンバータの前置き及び後置きの両方とされてよい。代替的に、マルチモードアクチュエータは、出力信号が、入力信号に関して逆の偏光特性を有するようにモードコンバータの前置き及び後置きとされてよい。
【0074】
説明の目的で、技術の具体的な実施形態が本明細書で説明されたけれども、技術の範囲から逸脱することなく様々な修正がなされうることが認識されるであろう。従って、明細書及び図面は、添付された特許請求の範囲によって画定される発明の説明と単にみなされるべきものであり、本発明の範囲内に含まれる任意の及び全ての修正、変形、組み合わせ、又は均等物をカバーすると考えられる。特に、マシンによって読み取り可能な信号を格納するための、技術の少なくとも1つの方法に従ってコンピュータの動作を制御するための、そして、技術のシステムに従って、その一部又は全てのコンポーネントを構造化するための、コンピュータプログラム製品又はプログラム要素、或いは、磁気又は光ワイヤ、テープ又はディスクなどのプログラムストレージ又はメモリデバイスを提供することは技術の範囲内である。
【0075】
本明細書で論じされた方法に関連する動作は、少なくとも部分的にコンピュータプログラム製品内のコード化された命令を利用することによって実装できる。言い換えると、コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラム製品がメモリにロードされ、無線通信デバイスのマイクロプロセッサ上で動作されるときに方法を実行するための、ソフトウェアコードが記録されているコンピュータ可読媒体である。コンピュータ(例えば、コントローラ)は、本明細書で論じされたようなモジュレータなどのデバイスを指揮又は駆動することができる。
【0076】
さらに、方法の各動作は、パーソナルコンピュータ、サーバ、PDAなどの任意のコンピューティングデバイス上で、1つ以上のプログラム要素、モジュール、又は、C++、Javaなどの任意のプログラム言語から生成されたオブジェクトの、1つ以上又は一部に従って実行されうる。加えて、各動作、又は、各動作を実装するファイル又はオブジェクトなどは、特定用途向けハードウェア、又はその目的のために設計された回路モジュールによって実行されてよい。
【0077】
発明の上述した実施形態は例であり、多くの方法で変形できることは明らかである。そうした現在又は将来の変形は、本発明の精神及び範囲からの逸脱と見なされず、全てのそうした修正は、当業者にとって明らかであるように、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。