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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】水素及び酸素生成のための電気分解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20221128BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20221128BHJP
   C25B 9/21 20210101ALI20221128BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20221128BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20221128BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/21
C25B9/23
C25B13/02 301
C25B15/08 304
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021545701
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 KR2019011905
(87)【国際公開番号】W WO2020184796
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0027310
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516357351
【氏名又は名称】テックウィン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TECHWIN Co., LTD
【住所又は居所原語表記】(Songjeong-dong) 60, Jikji-daero 474beon-gil, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ブン イク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン シク
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒョン ス
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003059(JP,A)
【文献】特開2015-117407(JP,A)
【文献】特開2002-173789(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0010089(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04,9/00,9/21,9/23,
13/02,15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽の陽極部に設置される陽極と、
前記電解槽の陰極部に設置される陰極と、
前記電解槽を陽極部と陰極部に区画する隔膜と、
前記陽極部に電解質としてアルカリ溶液を供給するアルカリ溶液供給部と、
前記陰極部に電解質として酸性溶液を供給する酸性溶液供給部と、
前記陽極部及び前記陰極部のそれぞれから発生した電気分解水を排出する第1及び第2排出部と、を含み、
前記陽極部では、アルカリ溶液の水酸化物イオンが電極反応を介して酸素を生成し、前記陰極部では、酸性溶液の水素イオンが電極反応を介して水素を生成するのであり、
電気分解の際に全反応で必要とする理論的標準電位は0.401Vであることを特徴とする、水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項2】
前記隔膜は、陽イオン及び陰イオンのそれぞれを透過することができる多孔質隔膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項3】
前記多孔質隔膜には水分解触媒が設置されることを特徴とする、請求項2に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項4】
前記隔膜は、イオンを選択的に透過する特性を持つ陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の中から選択されたいずれか一つのイオン交換膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項5】
前記イオン交換膜の一側面には水分解触媒層が設置されることを特徴とする、請求項4に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項6】
前記隔膜は、
前記陽極と対向するように前記陽極部の側に配置される陰イオン交換膜と、
前記陰極と対向するように前記陰極部の側に配置され、前記陰イオン交換膜と隣接して設置される陽イオン交換膜と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項7】
前記隔膜は、前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間に設置される水分解触媒層をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項8】
前記水分解触媒層は、水を吸収することが可能な吸水剤をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項9】
前記隔膜は、前記陽イオン交換膜、前記陰イオン交換膜及び前記水分解触媒層が一体に形成された両性イオン交換膜を含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【請求項10】
前記電解槽で電気分解に使用された後に排出される電気分解水を再生して、前記陽極部と前記陰極部にて、それぞれ電解反応により消耗された水酸化物イオンと水素イオンを補うことができる電解質再生手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の水素及び酸素生成のための電気分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解装置に係り、より詳細には、電解質を電気分解して水素と酸素を発生する電気分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気分解方式によって水素と酸素を発生させる水電解装置は、代表的に、アルカリ水電解(AEL)と高分子電解質膜水電解(PEMEL)に区分される。
【0003】
図1は従来のアルカリ水電解を説明するための概略構成図である。図1を参照すると、アルカリ水電解(AEL)は、電解質としてアルカリ溶液を使用し、多孔質の隔膜10を用いて電気分解を行う。このとき、陽極(酸化極20)では、アルカリ溶液の水酸化イオン(OH)が酸化して酸素(O)を生成する反応が起こり、この時の理論的標準電位は0.401Vである。
【0004】
また、陰極(還元極30)では、水(HO)分解反応が起こって水素(H)と水酸化物イオン(OH)を生成する。この時の理論的標準電位は-0.828Vである。よって、全反応は、水(HO)が分解されながら水素(H)と酸素(O)を生成し、この時の水電解全体の理論的標準電位は1.229Vとなる。そして、隔膜10を介しては、相互間のドナン(Donnan)平衡によってイオンの濃度を合わせるために、陽イオンと陰イオンが、それぞれ陰極部と陽極部に移動してイオンバランスを維持する。
【0005】
図1のアルカリ水電解についての電解反応式と理論的な標準電位差は、次の反応式1の通りである。
【0006】
[反応式1]
陽極反応:4OH→O+2HO+4e、E=0.401V
陰極反応:4HO+4e→2H+4OH、E=-0.828V
全反応:2HO→2H+O、E=1.229V
【0007】
図2は、従来の高分子電解質膜水電解を説明するための概略構成図である。図2を参照すると、高分子電解質膜水電解装置は、電解質として酸性溶液、隔膜として陽イオン交換膜10’をそれぞれ用いて電気分解を行う。このとき、陽極20では、水(HO)分解を介して酸素(O)と水素イオン(H)を生成するのであり、この時の理論的標準電位は1.229Vである。陰極30では、水素イオン(H)が反応して水素(H)を生成するのであり、この時の理論的標準電位は0.00Vである。したがって、全反応は、アルカリ水電解と同様に、水(HO)が分解されながら水素(H)と酸素(O)を生成し、アルカリ水電解と同じ理論的標準電位である1.229Vで電位差を発生する。この時、隔膜である陽イオン交換膜10’の選択的イオン透過特性によって、陽極部の陽イオンのみが陰極部に移動して、全体的なイオンバランスを維持する。
【0008】
図2の高分子電解質膜水電解についての電解反応式及び理論的な標準電位差は、次の反応式2の通りである。
【0009】
[反応式2]
陽極反応:2HO→O+4H+4e、E=1.229V
陰極反応:4H+4e→2H、E=-0.00V
全反応:2HO→2H+O、E=1.229V
【0010】
一方、上述した従来の電気分解装置は、単位水電解での電気分解のために1.229Vの電圧が必要となるので、単位水電解の数を増加させると、それに比例して電力消費量が増加するので、これによる費用を無視することは難しい。
【0011】
したがって、電力消費量を削減することができるように改善された電気分解装置の開発が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電力消費量を削減することができるように改善された電気分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の水素及び酸素生成のための電気分解装置は、電解槽の陽極部に設置される陽極と、前記電解槽の陰極部に設置される陰極と、前記電解槽を陽極部と陰極部に区画する隔膜と、前記陽極部に電解質としてアルカリ溶液を供給するアルカリ溶液供給部と、前記陰極部に電解質として酸性溶液を供給する酸性溶液供給部と、前記陽極部及び前記陰極部のそれぞれから発生した電気分解水を排出する第1及び第2排出部と、を含み、
前記陽極部では、アルカリ溶液の水酸化物イオンが電極反応を介して酸素を生成し、前記陰極部では、酸性溶液の水素イオンが電極反応を介して水素を生成することを特徴とする。
【0014】
これにより、電力消費量を大幅に削減することができる電気分解装置を提供することができる。
【0015】
ここで、前記隔膜は、陽イオン及び陰イオンのそれぞれを透過させることができる多孔質隔膜を含むことが好ましい。
【0016】
これにより、隔膜を介して、陽極部の陽イオンが陰極部へと透過され、陰極部の陰イオンは陽極部へと透過されることで、イオン平衡を維持するようにすることができる。
【0017】
また、前記多孔質隔膜には、水分解触媒が内在されることが良い。
【0018】
これにより、水分解を介して、水酸化イオンと水素イオンをそれぞれ陽極部と陰極部に提供することで、イオン平衡が、より効果的に行われるようにすることができる。
【0019】
また、前記隔膜は、イオンを選択的に透過する、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜の中から選択された、いずれか一つのイオン交換膜を含むことが良い。
【0020】
これにより、陽イオン交換膜を使用する場合には、陽イオンに対する選択的透過特性を用いて、陰極部の陰イオンは透過されないようにするとともに、陽極部の陽イオンが陰極部へと透過されることにより陰極部で塩を形成して、イオン平衡を成り立たせるようにすることができる。
【0021】
また、陰イオン交換膜を使用する場合には、陰イオンに対する選択的透過特性を用いて、陽極部の陽イオンは透過されないようにするとともに、陰極部の陰イオンが陽極部へと透過されることにより陽極部で塩を形成して、イオン平衡を成り立たせるようにすることができる。
【0022】
また、前記イオン交換膜の一側面には、水分解触媒層が設置されることが好ましい。
【0023】
ここで、水分解触媒層は、陽イオン交換膜の場合には陽極部と接した側面に位置し、陰イオン交換膜の場合には陰極部と接した側面に位置することが良い。
【0024】
これにより、水分解触媒層により発生する水酸化物イオンと水素イオンによって、溶液上の水素イオンと水酸化物イオンの消耗を減らすことで、より好ましくイオン平衡を成り立たせるようにすることができる。
【0025】
また、前記隔膜は、前記陽極と対向するように前記陽極部の側に配置される陰イオン交換膜と、前記陰極と対向するように前記陰極部の側に配置され、前記陰イオン交換膜と隣接して設置される陽イオン交換膜と、を含むことが良い。
【0026】
また、前記隔膜は、前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間に設置される水分解触媒層をさらに含むことが良い。
【0027】
これにより、陽極部及び陰極部のそれぞれにおいて電解質の変化がなくなるので、塩を別途分離又は処理することなく継続的に使用することができる。
【0028】
また、前記水分解触媒層は、水を吸収することが可能な吸水剤をさらに含むことが良い。これにより、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間で水を効果的に吸収して水分解効率を高めることができる。
【0029】
また、前記隔膜は、前記陽イオン交換膜、前記陰イオン交換膜及び前記水分解触媒層が一体に形成された両性イオン交換膜を含むことが良い。
【0030】
これにより、隔膜の製造、設置及び維持管理が容易であるという利点がある。
【0031】
また、前記電解槽にて電気分解に使用された後に排出される電気分解水を再生して、前記陽極部と前記陰極部でそれぞれ電解反応により消耗された水酸化物イオンと水素イオンを補うことができる電解質再生手段をさらに含むことが好ましい。
【0032】
これにより、電解反応中に消耗される電解質を再生して、継続的な電解反応が行われるようにすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の電気分解装置によれば、陽極部へアルカリ溶液を供給し、陰極部へ酸性溶液を供給して、それぞれ陽極反応及び陰極反応を介して水素と酸素を生成することができ、電極反応時の全体標準電位を著しく下げて、電力消費量を削減することができる。
【0034】
特に、隔膜の種類を多様に適用し、隔膜に触媒層を選択的に設置することにより、陽極部と陰極部のイオン平衡が維持されるようにしながら、酸素と水素を生成することができる。
【0035】
また、電解反応により生成された塩は、別途の処理過程を介してアルカリ溶液と酸性溶液に変換して電解質として再利用できるように供給することができるという利点がある。
【0036】
また、隔膜として両性イオン交換膜を使用する場合には、電解質からの塩の生成を抑制して、塩の処理及び分離の過程なしに、使用された電解水を再利用することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】従来のアルカリ水電解装置を説明するための概略構成図である。
図2】従来の高分子電解質膜水電解装置を説明するための概略構成図である。
図3】本発明の第1実施例に係る電気分解装置を示す概略構成図である。
図4】本発明の第2実施例に係る電気分解装置を示す概略構成図である。
図5】本発明の第3実施例に係る電気分解装置を示す概略構成図である。
図6】本発明の第4実施例に係る電気分解装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照して、本発明の電気分解装置を詳細に説明する。
【0039】
図3を参照すると、本発明の第1実施例に係る電気分解装置100は、電解槽として、(1)陽極111が設置される陽極部110、(2)陰極121が設置される陰極部120、(3)陽極部110と陰極部120を区画する隔膜130、(4)前記陽極部110に電解質としてアルカリ溶液を供給するためのアルカリ溶液供給部141、(5)前記陰極部120に電解質として酸性溶液を供給するための酸性溶液供給部143、並びに、(6)前記陽極部110及び前記陰極部120のそれぞれから生成された電気分解水を排出するための第1及び第2排出部151、153を備える電解槽を含む。
【0040】
具体的には、電気分解装置100は、装置本体、つまり電解槽101の内部が、隔膜130によって陽極部110と陰極部120に区画される。陽極部110内には陽極111が設置され、陰極部120には陰極121が設置される。
【0041】
前記隔膜130は、多孔質隔膜131であることが好ましく、さらに好ましくは、隔膜130には、水の分解が行われ得る触媒層133が内在されて設置される。
【0042】
また、前記触媒層133は、図面上において、多孔質隔膜131の一部分にのみ備えられたものと示しているが、これは、図面の説明の便宜のためのもので、好ましくは、多孔質隔膜131の全領域において触媒層133が内在するように構成することが良い。
【0043】
前記陽極部110には、電解質としてアルカリ溶液を供給するためのアルカリ溶液供給部141が連結され、前記陰極部120には、電解質として酸性溶液を供給するための酸性溶液供給部143が連結される。そして、陽極部110及び陰極部120のそれぞれには、電気分解によって生成された塩を排出するための第1及び第2排出部151、153が連結される。
【0044】
前記構成を有する本発明の第1実施例に係る電気分解装置100は、陽極部110では、下記反応式3のような陽極反応が行われることにより、酸素(O)を生成する。この時、陽極反応時の理論的標準電位は0.401Vとなる。
【0045】
[反応式3]
4OH→O+2HO+4e、E=0.401V
【0046】
また、陰極部120には、陰極反応が下記反応式4のように行われ、水素が生成される。そして、陰極反応時の理論的標準電位は0.00Vとなる。
【0047】
[反応式4]
4H+4e→2H、E=0.00V
【0048】
そして、全反応は下記反応式5のとおりであり、全反応時の標準電位は0.401Vとなる。
【0049】
[反応式5]
2HO→2H+O、E=0.401V
【0050】
また、前記陽極部110の陽イオンは、隔膜130を介して陰極部120に移動し、陰極部120の陰イオンは、隔膜130を介して陽極部110に移動することにより、全体的にイオンの平衡が成り立つようになる。
【0051】
そして、前記隔膜130に内在した触媒層133は、多孔質隔膜131にて水を分解して水酸化イオン(OH)と水素イオン(H)を生成する。生成された水酸化イオン(OH)は陽極部110、水素イオン(H)は陰極部120にそれぞれ移動することにより、イオン平衡を維持することができる。
【0052】
そして、前記陽極部110及び陰極部120にて電気分解によって生成された塩は、第1及び第2排出部151、153を介して外部に排出される。ここで、第1及び第2排出部151、153のそれぞれは、塩の使用先に供給されて使用できる。また、生成された塩は、電解槽101の外部に設置される別途の電解質再生手段160を介して、酸とアルカリ溶液に転換された後、前記アルカリ溶液供給部141及び酸性溶液供給部143のそれぞれに供給されて再利用されるようにすることもできる。
【0053】
この時、電解質再生手段160は、電気分解の後にイオンの平衡を取るようにするために、生成された塩を、さらに酸とアルカリ溶液に再生させる手段であって、イオン吸着方式、電気分解方式、電気透析方式、水分解電気透析方式、化学的反応又は触媒反応の方式などの多様な方式を用いることができ、本発明では、これらの方式のいずれかに限定されず、塩を酸とアルカリに転換することができる工程、すなわち手段であれば、適用が可能である。
【0054】
上述したように、本発明の第1実施例によれば、陽極部110にはアルカリ溶液を供給し、陰極部120には酸性溶液を供給するようにして、電気分解を介して酸素と水素を生成することができる。ここで、電気分解の際に全反応で必要とする理論的標準電位は0.401Vであって、従来技術に比べて著しく下げることができる。したがって、電気分解による消費電力を削減することができるため、経済的に使用することができる。また、陽極部110と陰極部120のイオン平衡を維持して安定した電気分解反応が連続して行われるようにすることができる。
【実施例
【0055】
図4を参照すると、本発明の第2実施例に係る電気分解装置100’は、(1)電解槽101内の陽極部110に設置される陽極111と、(2)陰極部120に設置される陰極121と、(3)陽極部110と陰極部120を区分する隔膜130’と、(4)前記陽極部110に電解質としてアルカリ溶液を供給するためのアルカリ溶液供給部141と、(5)前記陰極部120に電解質として酸性溶液を供給するための酸性溶液供給部143と、(6)前記陽極部110及び陰極部120のそれぞれで生成された電気分解水を排出するための第1及び第2排出部151’、153と、を備える。
【0056】
前記陽極111及び陰極121のそれぞれにおける陽極反応及び陰極反応は、先立って図3を介して説明した第1実施例の場合と同様である。
【0057】
前記隔膜130’は、陽イオン交換膜132を含む。このような陽イオン交換膜132は、陽極部110の陽イオンを陰極部120へと透過させるとともに、陰極部120の陰イオンが陽極部110へと透過することを遮断する。したがって、陽極部110から隔膜130’を透過して陰極部120に移動した陽イオンは、陰極部120の陰イオンと反応して塩を生成することにより、イオン平衡を維持することができる。
【0058】
このように陰極部120で生成された塩は、未反応の残留酸性溶液と共に、第2排出部153を介して塩の使用先又は電解質再生手段160に供給される。
【0059】
前記第1排出部151’は、陽極部110での電気分解後の反応残留アルカリ溶液を含む水溶液(HO)を排出する。
【0060】
また、前記陽イオン交換膜132の一側面には触媒層133が設置されることが好ましい。このとき、触媒層133は、陽イオン交換膜132の陽極部側の側面に設置されることが好ましい。触媒層133では、水分解触媒の触媒反応を介して水が分解されて、水酸化イオン(OH)と水素イオン(H)を生成する。生成された水素イオン(H)は、陽イオン交換膜を介して陰極部120に移動して、陰極121反応によって消耗された水素イオン(H)を補う。水酸化イオン(OH)は、陽イオン交換膜を透過せずに陽極部110に残留することで、陽極部110の陽極111反応により消耗される水酸化イオン(OH)を補う。これに伴い、電解反応とイオン平衡のために移動するイオンで形成される陰極部120の塩の生成量が下がるか、或いは生成されなくなって、溶液状態をより健全に維持させることができる。
【0061】
ここで、前記触媒層133は、図面上において、陽イオン交換膜132の一側面に一部だけを示しているが、これは、図面の説明の便宜のためのものに過ぎず、実際の実施では、陽イオン交換膜132の一側面の領域全体に触媒層133が設置されるように構成することが好ましい。
【0062】
そして、前記陽極部110には、電解質としてアルカリ溶液を供給するためのアルカリ溶液供給部141が連結され、前記陰極部120には、電解質として酸性溶液を供給するための酸性溶液供給部145が連結される。
【0063】
また、前記陰極部120で生成されて第2排出部153を介して排出された塩溶液は、別途、又は第1排出部151’の電気分解水と一緒に、電解槽の外部の電解質再生手段160を介して、酸とアルカリ溶液に再生産して電解槽へ再供給されるように構成できる。
【0064】
前記構成を有する本発明の第2実施例に係る電気分解装置100’の場合にも、陽極反応時の理論的標準電位は0.401Vであり、陰極反応時の標準電位は0.00Vである。したがって、全体反応時の標準電位は0.401Vであって、従来技術に比べて電力使用量を大幅に減らすことができる。
【0065】
図5を参照すると、本発明の第3実施例に係る電気分解装置100”は、(1)電解槽101内の陽極部110に設置される陽極111と、(2)陰極部120に設置される陰極121と、(3)陽極部110と陰極部120を区分する隔膜130”と、(4)前記陽極部110に電解質としてアルカリ溶液を供給するためのアルカリ溶液供給部141と、(5)前記陰極部120に電解質として酸性溶液を供給するための酸性溶液供給部143と、(6)前記陽極部110及び前記陰極部120のそれぞれで生成された塩と電気分解水を排出するための第1及び第2排出部151、153’と、を備える。
【0066】
ここで、前記隔膜130”は、陰イオン交換膜134を含む。陰イオン交換膜134は、陰極部120で生成された陰イオンを陽極部110へと透過させるとともに、陽極部110の陽イオンが陰極部120へと透過することを遮断する。よって、陽極部110では、陰極部120から移動した陰イオンが陽イオンと反応して塩を生成する。
【0067】
前記陰イオン交換膜134の一側面には、触媒層133がさらに構成されることが好ましい。実施例に係る前記触媒層133は、陰イオン交換膜134の陰極部120の側面に設置され、水を分解して水酸化イオン(OH)と水素イオン(H)を生成する。陰極部120で触媒層133によって生成された水酸化イオン(OH)は、陰イオン交換膜134を介して陽極部110に移動し、図4の説明のように、電解反応から消耗される水素イオン(H)と水酸化イオン(OH)を補うことにより、電解質溶液の健全性をより一層高めることができる。
【0068】
前記第1排出部151は、陽極部110で生成された塩を使用先へ排出するように連結され、第2排出部153’は、陰極部120で生成された電気分解水(HO)を外部へ排出するように連結される。
【0069】
また、前記陽極部110で生成されて第1排出部151を介して排出された塩溶液は、別途、又は第2排出部153’の電気分解水と一緒に、電解槽の外部の電解質再生手段160を介して、酸とアルカリ溶液に再生産されて電解槽へ再供給されるように構成することが好ましい。
【0070】
図5に示すように、電気分解装置100”の場合にも、全体的な反応での標準電位が0.401Vであって、従来技術に比べて電力使用量を大幅に減らすことができる。
【0071】
図6を参照すると、本発明の第4実施例に係る電気分解装置200は、電解槽201内の陽極部110に設置される陽極111と、陰極部120に設置される陰極121と、陽極部110と陰極部120を区分する隔膜230と、前記陽極部110に電解質としてアルカリ溶液を供給するためのアルカリ溶液供給部141と、前記陰極部120に電解質として酸性溶液を供給するための酸性溶液供給部143と、前記陽極部110及び陰極部120のそれぞれで使用された電解水を排出するための第1及び第2排出部151”、153”と、を備える。
【0072】
ここで、前記隔膜230は、陰極部120側に設置される陽イオン交換膜232と、陽極部110側に設置される陰イオン交換膜234と、を備える。好ましくは、隔膜230は、陽イオン交換膜232と陰イオン交換膜234との間には触媒層233が設置される。
【0073】
前記構成によれば、陽極部110では、前述した陽極反応が同一に行われ、陰極部120でも陰極反応が同一に行われる。このような電極反応によりイオン平衡が崩れるのであるが、崩れたイオン平衡を合わせるために、陽極部110の陽イオンは陰極部へ移動しようとし、陰極部120の陰イオンは陽極部110へ移動しようとする。ところが、それぞれのイオン交換膜232、234の選択的透過特性のために移動できなくなる。
【0074】
その代わりに、各イオン交換膜232、243の間に位置した水が、水素イオン(H)と水酸化イオン(OH)に水分解されることで、水酸化イオン(OH)は陽極部110に透過されて移動し、水素イオン(H)は陰極部120に透過されて移動することにより、イオン平衡を合わせることができる。
【0075】
ここで、好ましくは、陽イオン交換膜232と陰イオン交換膜234との間に触媒層233が挿入されて設置されることがよい。このような触媒層233には、外部の水を吸収することができる吸水剤を含むことがさらに好ましい。
【0076】
前記吸水剤は、水(HO)との親和力が大きい物質であって、キトサン(Chitosan)、ポリ(アクリルアミド)(poly(acrylamide), PAM)、ポリ(エチレンオキシド)(poly(ethylene oxide), PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(poly(vinyl alcohol), PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(poly(vinylpyrrolidone), PNVP)、及びポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)(poly(hydroxyethyl acrylate), PHEA)などといった親水性高分子物質、シリカゲル、エアロゲルなどといった無機系親水性物質、親水性化学物質などの、自身の形態は維持しながら水(HO)に対する吸収性の高い物質を、使用することができる。したがって、触媒層233は、水を吸収して、より効果的に水分解反応が起こるようにし、水酸化イオン(OH)と水素イオン(H)が生成されるようにすることで、陽極部110と陰極部120とのイオン平衡を、効果的に成り立たせるようにすることができる。
【0077】
ここで、前記第1乃至第4実施例で説明した触媒層133、233は、Fe及びCrから選択される少なくとも一つについての水酸化物又は酸化物、並びに、Pt、Pd、Rh、Ir、Re、Os、Ru、Niなどの物質群よりなる酸化物又は水酸化物などで形成されうる。
【0078】
また、さらに好ましくは、隔膜230は、陽イオン交換膜232と陰イオン交換膜234を基本構成とするが、内部の触媒層233が陽イオン交換膜232と陰イオン交換膜234との間に介在されて一体型に形成された、いわゆる両性イオン交換膜からなることがよい。この場合、設置作業が容易であり、サイズを減らしてコンパクトに製作することができる。
【0079】
また、両性イオン膜で一体型に製作して設置すると、電極反応時に隔膜にかかる抵抗を減らすことができるのであり、従来の水電解方式と同一であるように電解質の変化がなくなって、別途の塩を分離又は処理せずに、継続的に使用することができるという利点がある。
【0080】
前記構成を有する第4実施例に係る電気分解装置200は、陽極部110と陰極部120のそれぞれにて、前述のような陽極反応と陰極反応がそれぞれ行われ、全反応で0.401Vの標準電位を持つようになって電力消費量を削減することができる。
【0081】
そして、陽極部110へは、アルカリ溶液供給部141を介してアルカリ溶液が電解質として供給され、陰極部120へは、酸性溶液供給部143を介して酸性溶液が電解質として供給される。陽極部110と陰極部120のそれぞれでは、流入した電解質の変化なしにそのまま維持されることにより、塩を別途処理するか或いは分離する必要がなくなる。陽極部110で電気分解に使用されたアルカリ溶液は、第1排出部151”を介して排出され、アルカリ溶液供給部141へと再循環されて再利用できる。また、陰極部120で電気分解に使用された酸性溶液は、第2排出部153”を介して排出され、酸性溶液供給部143へと再循環されて再利用できる。
【0082】
このとき、第1排出部151”と第2排出部153”から排出される電気分解水は、電解槽の外部の電解質再生手段160を介して、一部失われるおそれのある酸とアルカリ溶液をさらに生成して、電解槽へと再供給されるように構成することができる。
【0083】
このように、塩を分離及び処理する必要がなくなって装置を簡素化及び小型化することができる。特に、電解質から塩を分離するか或いは別途処理する必要がないので、そのまま再利用することができて費用を削減することができるという利点がある。
【0084】
また、図5及び図6では示していないが、図3及び図4を介して説明した電解質再生手段160を適用し、酸とアルカリ溶液に再生産して電解槽へ再供給されるように構成することができるものと理解されるべきである。
【0085】
以上、本発明の特定の実施例について説明及び図示されたが、本発明は、記載された実施例に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく、様々に修正及び変形することができることは、当該技術分野における通常の知識を有する者に自明であろう。したがって、それらの修正例又は変形例は、本発明の技術思想や観点から、個別的に理解されてはならないのであり、変形した実施例は、本発明の特許請求の範囲に属するというべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6