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7183449工業用内視鏡画像処理装置、工業用内視鏡システム、工業用内視鏡画像処理装置の作動方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】工業用内視鏡画像処理装置、工業用内視鏡システム、工業用内視鏡画像処理装置の作動方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20221128BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G02B23/24 B
A61B1/00 552
A61B1/045 610
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021561067
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046545
(87)【国際公開番号】W WO2021106140
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀彰
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/135966(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/077253(WO,A1)
【文献】特開2011-206251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0341600(US,A1)
【文献】国際公開第2017/081821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24 - 23/26
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に対して処理を行うことにより、前記被検体の3次元形状モデルを作成するように構成された工業用内視鏡画像処理装置であって、
制御部を有し、前記制御部は、
前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、
前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する推定部と、
前記推定部により得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出する第1の変位量算出部と、
前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知する挿抜状態検知装置から出力される検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出する第2の変位量算出部と、
前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成するスケール情報生成部と、を有し、
前記制御部は、
前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定する
ことを特徴とする工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項2】
前記スケール情報生成部は、前記検知信号に基づいて前記挿入部の変位方向を検知し、当該検知した前記挿入部の変位方向が抜去方向であれば前記スケール情報を生成する処理を行う一方で、当該検知した前記挿入部の変位方向が挿入方向であれば前記スケール情報を生成する処理を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項3】
前記スケール情報生成部は、前記第1の変位量に基づいて前記撮像部の変位速度に相当する第1の変位速度を算出し、前記第2の変位量に基づいて前記挿入部の変位速度に相当する第2の変位速度を算出し、所定の時間幅における前記第1の変位速度の変動状態と、前記所定の時間幅における前記第2の変位速度の変動状態と、の間の相関の高さに基づいて前記スケール情報を生成する処理を行うか否かを決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項4】
前記スケール情報生成部は、前記先端部を前記挿入部の長手軸方向に対して交差する方向へ向けるための制御が行われている場合には、前記スケール情報を生成する処理を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項5】
前記挿抜状態検知装置は、前記挿入部が挿入されている前記被検体に対する相対位置が変化しない位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項6】
前記挿抜状態検知装置は、前記被検体の内部に前記挿入部を挿入するための挿入口付近の所定の位置に固定される
ことを特徴とする請求項5に記載の工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項7】
前記スケール情報生成部は、前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、スケールが不明な前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項8】
前記制御部が、前記3次元座標位置に基づき、前記複数の特徴点に対応する前記ワールド座標系の前記3次元座標位置を含む3次元点群座標を取得する
請求項1に記載の工業用内視鏡画像処理装置
【請求項9】
前記制御部が、少なくとも1つの前記3次元点群座標に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルを作成する
請求項8に記載の工業用内視鏡画像処理装置。
【請求項10】
細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像するように構成された内視鏡と、
制御部を有し、前記制御部は、
前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、
前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する推定部と、
前記推定部により得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出する第1の変位量算出部と、
前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知して検知信号を出力する挿抜状態検知装置と、
前記挿抜状態検知装置から出力される前記検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出する第2の変位量算出部と、
前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成するスケール情報生成部と、
を有し、
前記制御部は、
前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定
することを特徴とする工業用内視鏡システム。
【請求項11】
細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に対して処理を行うことにより、前記被検体の3次元形状モデルを作成するように構成された工業用内視鏡画像処理装置の作動方法であって、
制御部を有し、前記制御部は、
前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、
前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する推定部と、
前記推定部が、前記内視鏡画像群に基づいて前記撮像部の自己位置を推定し、
第1の変位量算出部が、前記推定部により得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出し、
第2の変位量算出部が、前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知する挿抜状態検知装置から出力される検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出し、
スケール情報生成部が、前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成し、
前記制御部は、
前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定する
ことを特徴とする工業用内視鏡画像処理装置の作動方法。
【請求項12】
細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に対して処理を行うことにより、前記被検体の3次元形状モデルを作成するように構成された工業用内視鏡画像処理装置の作動方法のプログラムであって、
前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、
前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する機能と、
推定して得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出する機能と、
前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知する挿抜状態検知装置から出力される検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出する機能と、
前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成する機能と、を有し、
前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定する機能と、
工業用内視鏡画像処理装置のコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用内視鏡画像処理装置、工業用内視鏡システム、工業用内視鏡画像処理装置の作動方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業分野の内視鏡検査は、タービン及びエンジン等の被検体を非破壊で検査するための手法として従来利用されている。また、工業分野の内視鏡検査においては、例えば、測距または姿勢検出に用いられる物理的な構成要素(モーションセンサ等)を内視鏡に極力設けることなく、被検体の内部に存在する不具合箇所のサイズ等のような当該被検体の検査に有用な情報を得るための手法として、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)に係る手法の採用が近年検討されている。そして、例えば、日本国特開2017-129904号公報には、実空間に存在する物体を撮像して得られた画像に対してVisual SLAM(以降、VSLAMとも称する)に係る手法を適用することにより当該物体のサイズを推定する観点が開示されている。
【0003】
ここで、工業分野の内視鏡検査においてVSLAMに係る手法を用いた場合には、例えば、実空間に存在する被検体と、当該被検体の内部に挿入される内視鏡に設けられた撮像部と、の間の相対的な位置関係に応じた情報が取得されるとともに、当該取得した情報に基づいて当該被検体の3次元形状が順次復元される。
【0004】
但し、従来知られているVSLAMに係る手法によれば、実空間におけるスケールと、当該手法を用いて復元された3次元形状モデルのスケールと、の間の対応関係を特定することができない。そのため、工業分野の内視鏡検査においてVSLAMに係る手法を用いた場合には、実空間におけるスケールが未知の被検体を検査する際の検査効率が低下してしまうおそれがある、という課題が生じている。そして、日本国特開2017-129904号公報には、前述の課題を解消可能な手法について特に開示等されていない。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、実空間におけるスケールが未知の被検体を検査する際の検査効率を向上させることが可能な工業用内視鏡画像処理装置、工業用内視鏡システム、工業用内視鏡画像処理装置の作動方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の工業用内視鏡画像処理装置は、細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に対して処理を行うことにより、前記被検体の3次元形状モデルを作成するように構成された内視鏡画像処理装置であって、制御部を有し、前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する推定部と、前記推定部により得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出する第1の変位量算出部と、前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知する挿抜状態検知装置から出力される検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出する第2の変位量算出部と、前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成するスケール情報生成部と、を有し、前記制御部は、前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定する
【0007】
本発明の一態様の工業用内視鏡システムは、細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像するように構成された内視鏡と、制御部を有し、前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する推定部と、前記推定部により得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出する第1の変位量算出部と、前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知して検知信号を出力する挿抜状態検知装置と、前記挿抜状態検知装置から出力される前記検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出する第2の変位量算出部と、前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成するスケール情報生成部と、を有し、前記制御部は、前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定する。
【0008】
本発明の一態様の工業用内視鏡画像処理装置の作動方法は、細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に対して処理を行うことにより、前記被検体の3次元形状モデルを作成するように構成された工業用内視鏡画像処理装置の作動方法であって、制御部を有し、前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する推定部と、前記推定部が、前記内視鏡画像群に基づいて前記撮像部の自己位置を推定し、第1の変位量算出部が、前記推定部により得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出し、第2の変位量算出部が、前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知する挿抜状態検知装置から出力される検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出し、スケール情報生成部が、前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成し、前記制御部は、前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定する
本発明の一態様のプログラムは、細長な挿入部の先端部に設けられた撮像部により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に対して処理を行うことにより、前記被検体の3次元形状モデルを作成するように構成された工業用内視鏡画像処理装置の作動方法のプログラムであって、制御部を有し、前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記内視鏡画像群において、マッチングする複数の特徴点を抽出し、前記複数の特徴点に基づいて前記撮像部の自己位置を推定する機能と、推定して得られた前記撮像部の自己位置の推定結果に基づき、前記撮像部の変位量に相当する第1の変位量を算出する機能と、前記被検体の内部に挿入された前記挿入部の挿抜状態を検知する挿抜状態検知装置から出力される検知信号に基づき、前記挿入部の長手軸方向に対して平行な方向の変位量に相当する第2の変位量を算出する機能と、前記被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、前記第1の変位量と前記第2の変位量とを関連付けたスケール情報を生成する機能と、を有し、前記制御部は、前記撮像部の前記自己位置の推定結果と、前記スケール情報に基づき、前記被検体の前記3次元形状モデルが生成される3次元空間のワールド座標系における前記撮像部の3次元座標位置を特定する機能と、をコンピュータに実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る内視鏡画像処理装置を含む内視鏡システムの外観構成の一例を示す図。
図2】実施形態に係る内視鏡画像処理装置を含む内視鏡システムの構成を説明するためのブロック図。
図3】挿入部の挿入方向及び抜去方向と、撮像部の視野方向と、の間の関係を説明するための図。
図4】実施形態に係る内視鏡画像処理装置において行われる処理等を説明するためのフローチャート。
図5】被検体内に挿入された挿入部に撓みが発生している状態の一例を示す図。
図6】被検体内に挿入された挿入部に撓みが発生していない状態の一例を示す図。
図7A】被検体内に挿入された挿入部に撓みが発生している状態の一例を示す図。
図7B】被検体内に挿入された挿入部において発生した撓みが抜去操作により解消される様子を示す図。
図7C】被検体内に挿入された挿入部において発生した撓みが抜去操作により解消される様子を示す図。
図7D】被検体内に挿入された挿入部において発生した撓みが抜去操作により完全に解消された状態の一例を示す図。
図7E】被検体内に挿入された挿入部において発生した撓みが抜去操作により完全に解消された状態の一例を示す図。
図8A】変位速度VZの時間的な変化の一例を示す図。
図8B】変位速度VLの時間的な変化の一例を示す図。
図9A】変位速度VZの時間的な変化の一例を示す図。
図9B】変位速度VLの時間的な変化の一例を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明を行う。
【0011】
内視鏡システム1は、例えば、図1に示すように、内視鏡2と、内視鏡2を接続可能な本体装置3と、を有して構成されている。また、本体装置3には、画像等を表示可能な表示部35が設けられている。図1は、実施形態に係る内視鏡画像処理装置を含む内視鏡システムの外観構成の一例を示す図である。
【0012】
内視鏡2は、タービン及びエンジン等の被検体の内部に挿入可能な細長形状を具備して形成された挿入部5と、挿入部5の基端側に設けられた操作部6と、操作部6から延出したユニバーサルコード7と、を有して構成されている。また、内視鏡2は、ユニバーサルコード7により、本体装置3に対して着脱自在に接続されるように構成されている。
【0013】
挿入部5は、先端部11と、湾曲自在に形成された湾曲部12と、可撓性を有する長尺な可撓管部13と、を先端側から順に設けて構成されている。
【0014】
操作部6には、湾曲部12を所望の方向に湾曲させるための操作を行うことが可能なジョイスティックを有して構成された湾曲操作子6aが設けられている。また、操作部6には、図示しないが、例えば、フリーズボタン、湾曲ロックボタン、及び、記録指示ボタン等のような、内視鏡システム1において利用可能な機能に応じた1つ以上の操作ボタンが設けられている。
【0015】
先端部11には、図2に示すように、1つ以上の光源部21と、撮像部22と、が設けられている。なお、図2においては、図示の便宜上、2つの光源部21が先端部11に設けられている場合を例示している。図2は、実施形態に係る内視鏡画像処理装置を含む内視鏡システムの構成を説明するためのブロック図である。
【0016】
光源部21は、発光素子21aと、照明光学系21bと、を有して構成されている。
【0017】
発光素子21aは、例えば、LEDを有して構成されている。また、発光素子21aは、本体装置3から供給される発光素子駆動信号に応じた光量を有する照明光を発生するように構成されている。
【0018】
照明光学系21bは、例えば、照明レンズを含む光学系として構成されている。また、照明光学系21bは、発光素子21aから発せられた照明光を先端部11の外部の被写体へ照射するように構成されている。
【0019】
撮像部22は、観察光学系22aと、撮像素子22bと、を有するカメラとして構成されている。
【0020】
観察光学系22aは、例えば、結像レンズを含む光学系として構成されている。また、観察光学系22aは、光源部21からの照明光の照射に応じて先端部11の外部の被写体から発せられる戻り光(反射光)が入射されるとともに、当該戻り光を撮像素子22bの撮像面上に結像するように構成されている。
【0021】
撮像素子22bは、例えば、CCDまたはCMOSのようなイメージセンサを有して構成されている。また、撮像素子22bは、本体装置3から供給される撮像素子駆動信号に応じて駆動するように構成されている。また、撮像素子22bは、観察光学系22aにより結像された戻り光を撮像することにより撮像信号を生成し、当該生成した撮像信号を本体装置3へ出力するように構成されている。
【0022】
湾曲部12は、例えば、複数の湾曲駒を有して構成されている。また、湾曲部12は、可撓管部13、操作部6及びユニバーサルコード7の内部に挿通された複数の湾曲用ワイヤBW各々の先端部に接続されている。また、湾曲部12は、複数の湾曲用ワイヤBW各々の牽引状態に応じて湾曲することにより、先端部11を挿入部5の長手軸方向に対して交差する方向へ向けることができるように構成されている。
【0023】
すなわち、内視鏡2は、細長な挿入部5の先端部11に設けられた撮像部22により被検体の内部を撮像するように構成されている。
【0024】
本体装置3は、図2に示すように、光源駆動部31と、撮像素子駆動部32と、湾曲駆動部33と、画像生成部34と、表示部35と、記憶部36と、入力I/F(インターフェース)部37と、制御部38と、を有して構成されている。また、本体装置3には、USBメモリ等のような可搬型の外部記憶装置51を接続するための接続ポート(不図示)が設けられている。
【0025】
光源駆動部31は、例えば、光源駆動回路を具備して構成されている。また、光源駆動部31は、制御部38の制御に応じ、発光素子21aを駆動させるための発光素子駆動信号を生成して出力するように構成されている。
【0026】
撮像素子駆動部32は、例えば、撮像素子駆動回路を具備して構成されている。また、撮像素子駆動部32は、制御部38の制御に応じ、撮像素子22bを駆動させるための撮像素子駆動信号を生成して出力するように構成されている。
【0027】
湾曲駆動部33は、例えば、モータ等を有して構成されている。また、湾曲駆動部33は、複数の湾曲用ワイヤBW各々の基端部に接続されている。また、湾曲駆動部33は、制御部38の制御に応じ、複数の湾曲用ワイヤBWの牽引量を個別に変化させることができるように構成されている。すなわち、湾曲駆動部33は、制御部38の制御に応じ、当該複数の湾曲用ワイヤBW各々の牽引状態を変化させることができるように構成されている。
【0028】
画像生成部34は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により構成されている。また、画像生成部34は、撮像素子22bから出力される撮像信号に対して所定の信号処理を施すことにより内視鏡画像を生成するとともに、当該生成した内視鏡画像を制御部38へ順次出力するように構成されている。
【0029】
表示部35は、例えば、液晶パネルを具備して構成されている。また、表示部35は、制御部38から出力される表示画像を表示画面に表示するように構成されている。また、表示部35は、表示画面に表示されるGUI(グラフィカルユーザインターフェース)ボタン等に対するタッチ操作を検出するとともに、当該検出したタッチ操作に応じた指示を制御部38へ出力するタッチパネル35aを有して構成されている。
【0030】
記憶部36は、例えば、メモリ等のような記憶媒体を具備して構成されている。また、記憶部36には、例えば、内視鏡システム1の各部の制御に用いられるプログラム、及び、後述のVSLAMに係る処理を行うためのプログラム等のような、制御部38の動作に対応する種々のプログラムが格納されている。また、記憶部36には、制御部38によるVSLAMに係る処理において用いられる内視鏡画像等を格納することができるように構成されている。
【0031】
入力I/F部37は、ユーザの入力操作に応じた指示を制御部38に対して行うことが可能なスイッチ等を具備して構成されている。
【0032】
制御部38は、例えば、CPU等のような1つ以上のプロセッサ38aを有して構成されている。また、制御部38は、タッチパネル35aまたは入力I/F部37の操作に応じてなされた指示に基づき、光源駆動部32及び撮像素子駆動部33に対する制御を行うことができるように構成されている。また、制御部38は、湾曲操作子6aの操作に応じてなされた指示に基づき、湾曲部12を湾曲させるための制御を湾曲駆動部33に対して行うことができるように構成されている。また、制御部38は、画像生成部34から出力される内視鏡画像等に対してGUIボタン等を重畳した表示画像を生成して表示部35へ出力することができるように構成されている。また、制御部38は、画像生成部34から出力される内視鏡画像と、後述のVSLAMに係る処理により作成した被検体の3次元形状モデルと、を含む表示画像を生成して表示部35へ出力することができるように構成されている。また、制御部38は、画像生成部34から出力される内視鏡画像をJPEG等の静止画像用のフォーマット、及び、MPEG4等の動画像用のフォーマットを用いてエンコードして外部記憶装置51に格納させることができるように構成されている。また、制御部38は、タッチパネル35aまたは入力I/F部37の操作に応じてなされた指示に基づき、外部記憶装置51に格納された画像を読み込むとともに、当該読み込んだ画像に応じた表示画像を生成して表示部35へ出力することができるように構成されている。また、制御部38は、表示部35へ出力する表示画像に対して色空間変換、インターレース/プログレッシブ変換及びガンマ補正等の所定の画像処理を施すように構成されている。
【0033】
制御部38は、撮像部22の動作と、挿抜状態検知装置41の動作と、を同期させるための同期信号を生成し、当該生成した同期信号を撮像素子駆動部32及び挿抜状態検知装置41へ出力するように構成されている。また、制御部38は、前述の同期信号を出力しつつ、画像生成部34から順次出力される複数の内視鏡画像を含む内視鏡画像群と、挿抜状態検知装置41から出力される検知信号と、に基づいてVSLAMに係る処理を行うように構成されている。
【0034】
なお、本実施形態においては、VSLAMに係る処理として、例えば、画像生成部34から出力される内視鏡画像群においてマッチングする複数の特徴点(対応点)を抽出する処理、当該複数の特徴点に対応する撮像部22の自己位置を推定して推定結果を取得する処理、及び、当該複数の特徴点及び当該推定結果に応じた被検体の3次元形状モデルを環境マップとして作成する処理が少なくとも含まれているものとして説明を行う。また、制御部38により行われる処理の具体例については、後程説明する。
【0035】
本実施形態においては、プロセッサ38aが、記憶部36から読み込んだプログラムを実行することにより、制御部38と同様の処理及び動作等を行うものであってもよい。また、本実施形態においては、制御部38が、プロセッサ38aの代わりに、例えば、FPGA等の集積回路を有して構成されていてもよい。
【0036】
すなわち、本体装置3は、内視鏡画像処理装置としての機能を有し、挿入部5の先端部11に設けられた撮像部22により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に対して処理を行うことにより、当該被検体の3次元形状モデルを作成するように構成されている。
【0037】
ここで、本実施形態においては、内視鏡2を用いた被検体の検査が行われる際に、挿入部5の挿抜状態を検知可能な挿抜状態検知装置41が併用される。
【0038】
挿抜状態検知装置41は、本体装置3との間で信号等を送受信することができるように構成されている。また、挿抜状態検知装置41は、被検体の内部に挿入された挿入部5の挿抜状態を検知するとともに、当該検知した挿入部5の挿抜状態を示す検知信号を生成して本体装置3へ出力するように構成されている。また、挿抜状態検知装置41には、例えば、挿入部5を挿通した状態で挿入部5を長手軸方向に沿って変位させることが可能な形状を有して形成された貫通孔(不図示)が形成されている。また、挿抜検知装置41は、ローラ41aと、エンコーダ41bと、を有して構成されている。
【0039】
ローラ41aは、例えば、挿抜状態検知装置41の貫通孔の内部における所定の位置に設けられている。また、ローラ41aは、挿抜検知装置41の貫通孔の内部に挿通されている挿入部5の外表面に接触した状態において、挿入部5の変位方向に応じた回転方向に回転するとともに、挿入部5の変位量に応じた回転量だけ回転することができるように構成されている。
【0040】
エンコーダ41bは、制御部38から出力される同期信号により設定されるタイミングにおいて、ローラ41aの回転方向及び回転量に応じた波形を有する検知信号を生成して本体装置3へ出力するように構成されている。
【0041】
具体的には、エンコーダ41bは、制御部38から出力される同期信号により設定されるタイミングにおいて、例えば、A相及びB相の2つの位相に対応する2種類のパルス信号を生成し、当該生成した2種類のパルス信号を検知信号として本体装置3へ出力するように構成されている。
【0042】
以上に述べたような構成を有する挿抜状態検知装置41によれば、被検体の内部に挿入された挿入部5を前進させた場合と、当該被検体の内部に挿入された挿入部5を後退させた場合と、において、互いに異なる波形を有する検知信号を本体装置3へ出力することができる。また、以上に述べたような構成を有する挿抜状態検知装置41によれば、被検体の内部に挿入された挿入部5を変位させた際の変位量に応じて異なる波形を有する検知信号を本体装置3へ出力することができる。すなわち、以上に述べたような構成を有する挿抜状態検知装置41によれば、被検体の内部に挿入された挿入部5の挿抜状態として、挿入部5の長手軸方向における変位量及び変位方向をそれぞれ検知することができる。
【0043】
続いて、本実施形態の作用について説明する。なお、以降においては、管路等の管状の被検体の内部に挿入部5を挿入して検査を行うものとして説明する。
【0044】
ユーザは、内視鏡2を用いて被検体の検査を行う前に、当該被検体の内部に挿入部5を挿入するための挿入口付近の所定の位置に挿抜検知装置41を固定する。
【0045】
なお、本実施形態によれば、挿入部5が挿入されている被検体に対する相対位置が変化しない位置に挿抜検知装置41が配置されていればよい。そのため、本実施形態によれば、例えば、前述の挿入口から離れた位置に挿抜検知装置41が固定されていてもよい。
【0046】
ユーザは、内視鏡システム1の各部の電源を投入した後、被検体の内部へ挿入部5を挿入するための挿入操作を行うことにより、当該被検体の内部の所望の部位に先端部11を到達させる。そして、このようなユーザの操作に応じ、発光素子21aから発せられた照明光が被検体の内部の被写体に照射され、当該被写体からの反射光を撮像することにより生成された撮像信号が撮像素子22bから出力され、当該撮像信号に基づいて生成された内視鏡画像が画像生成部34から制御部38へ順次出力される。また、ユーザは、被検体の内部の所望の部位に先端部11を到達させた後、当該被検体の内部から挿入部5を抜去するための抜去操作を行う。
【0047】
前述のユーザの挿入操作によれば、先端部11の前方に相当する撮像部22の視野方向と、挿入部5の長手軸方向における挿入部5の基端側から先端側へ向かう方向に相当する挿入方向(図3参照)と、を一致させることができる。また、前述のユーザの抜去操作によれば、撮像部22の視野方向と、挿入部5の長手軸方向における挿入部5の先端側から基端側へ向かう方向に相当する抜去方向(図3参照)と、を一致させることができる。図3は、挿入部の挿入方向及び抜去方向と、撮像部の視野方向と、の間の関係を説明するための図である。
【0048】
制御部38は、本体装置3と挿抜状態検知装置41との間において信号等を送受信可能な状態になったことを検知した際に、撮像部22の動作と、挿抜状態検知装置41の動作と、を同期させるための同期信号を生成し、当該生成した同期信号を撮像素子駆動部32及び挿抜状態検知装置41へ出力する。
【0049】
具体的には、制御部38は、撮像部22の撮像素子22bが撮像信号を出力する周期と、挿抜状態検知装置41のエンコーダ41bが検知信号を出力する周期と、を所定の周期(例えば1/60秒)に揃えるための同期信号を生成し、当該生成した同期信号を撮像素子駆動部32及び挿抜状態検知装置41へ出力する。
【0050】
制御部38は、先端部11が被検体の内部に配置されている期間中において、前述の同期信号を出力しつつ、画像生成部34から出力される内視鏡画像群と、挿抜状態検知装置41から出力される検知信号と、に基づき、例えば、図4に示すような処理を行う。このような処理の詳細について、以下に説明する。図4は、実施形態に係る内視鏡画像処理装置において行われる処理等を説明するためのフローチャートである。
【0051】
制御部38は、画像生成部34から出力される内視鏡画像群においてマッチングする複数の特徴点CPを抽出するための処理を行う(図4のステップS1)。
【0052】
具体的には、制御部38は、例えば、画像生成部34から出力される内視鏡画像群に対してORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)のようなアルゴリズムを適用することにより、当該内視鏡画像群においてマッチングする複数の特徴点CPを抽出する。
【0053】
制御部38は、図4のステップS1の処理により抽出された複数の特徴点CPに基づき、撮像部22の自己位置を推定するための処理を行う(図4のステップS2)。
【0054】
具体的には、制御部38は、例えば、5点アルゴリズム等の手法を用いて取得したE行列(Essential Matrix)に基づく処理を行うことにより、複数の特徴点CPに対応する撮像部22の自己位置を推定する。
【0055】
すなわち、制御部38は、推定部としての機能を具備し、内視鏡2により被検体の内部を撮像して得られた内視鏡画像群に基づいて撮像部22の自己位置を推定するように構成されている。
【0056】
制御部38は、図4のステップS1の処理により抽出された複数の特徴点CPと、図4のステップS2の処理により得られた撮像部22の自己位置の推定結果と、に基づき、当該複数の特徴点CPの抽出に用いた内視鏡画像群の中から1つ以上の処理対象画像IGを取得するための処理を行う(図4のステップS3)。
【0057】
具体的には、制御部38は、例えば、図4のステップS1の処理により抽出された特徴点CPの個数、及び、図4のステップS2の処理により撮像部22の自己位置の最新の推定結果が取得されてからの経過時間等に基づいて1つ以上の処理対象画像IGを取得する。
【0058】
制御部38は、図4のステップS2の処理により得られた撮像部22の自己位置の推定結果に基づき、撮像部22の変位量ΔZを算出するための処理を行う(図4のステップS4)。
【0059】
具体的には、制御部38は、変位量ΔZを算出するための処理として、例えば、時刻T1における推定結果として得られた撮像部22の自己位置と、当該時刻T1よりも後の時刻T2における推定結果として得られた撮像部22の自己位置と、の間の距離を算出する処理を行う。
【0060】
すなわち、制御部38は、第1の変位量算出部としての機能を具備し、図4のステップS2の処理により得られた撮像部22の自己位置の推定結果に基づき、撮像部22の変位量に相当する第1の変位量を算出するように構成されている。
【0061】
制御部38は、エンコーダ41bから出力される検知信号に基づき、挿入部5の変位量ΔLを算出するための処理を行う(図4のステップS5)。
【0062】
具体的には、制御部38は、エンコーダ41bから出力される検知信号に基づき、挿入部5の変位量ΔLを算出するための処理として、例えば、時刻T1における挿入部5の変位量ΔL1と、時刻T2における挿入部5の変位量ΔL2と、の間の差分値を算出する処理を行う。
【0063】
なお、本実施形態においては、挿入部5の長手軸方向の変位量が変位量ΔLとして算出される。すなわち、制御部38は、第2の変位量算出部としての機能を具備し、挿抜状態検知装置41から出力される検知信号に基づき、挿入部5の長手軸方向の変位量に相当する第2の変位量を算出するように構成されている。
【0064】
制御部38は、図4のステップS4の処理により算出した変位量ΔZと、図4のステップS5の処理により算出した変位量ΔLと、を関連付けることによりスケール情報SJを生成する処理を行う(図4のステップS6)。
【0065】
すなわち、スケール情報SJは、スケールが不明な変位量ΔZに対し、挿入部5の挿抜状態に応じて計測される物理量に相当する変位量ΔLの長さを付与した情報として生成される。また、制御部38は、スケール情報生成部としての機能を具備し、被検体の3次元形状モデルの作成に係る処理において用いられる情報として、変位量ΔZと変位量ΔLとを関連付けたスケール情報を生成するように構成されている。
【0066】
制御部38は、図4のステップS2の処理により得られた撮像部22の自己位置の推定結果と、スケール情報SJと、に基づき、被検体の3次元形状モデルが作成される3次元空間のワールド座標系における撮像部22の3次元座標位置を特定するための処理を行う(図4のステップS7)。
【0067】
制御部38は、図4のステップS7の処理により得られた撮像部22の3次元座標位置に基づき、1つ以上の処理対象画像IGにおける複数の特徴点CPに対応するワールド座標系の3次元座標位置を含む3次元点群座標を取得するための処理を行う(図4のステップS8)。
【0068】
そして、制御部38は、例えば、図4の一連の処理を複数回繰り返し行うことにより複数の3次元点群座標を取得し、さらに、当該取得した複数の3次元点群座標を1つに統合するための高密度化処理を行うことにより被検体の3次元形状モデルを作成する。
【0069】
以上に述べたように、本実施形態によれば、変位量ΔZと変位量ΔLとの間の対応関係を示すスケール情報SJに基づいて撮像部22の3次元座標位置が特定されるとともに、当該特定された撮像部22の3次元座標位置に応じて3次元点群座標が取得されるため、当該取得した3次元点群座標を用いて高精度な被検体の3次元形状モデルを作成することができる。従って、本実施形態によれば、実空間におけるスケールが未知の被検体を検査する際の検査効率を向上させることができる。
【0070】
本実施形態によれば、図4のステップS6の処理が、被検体の内部に挿入部5が挿入されている状態において1回以上行われればよい。すなわち、本実施形態によれば、制御部38が、図4の処理を繰り返し行っている最中において少なくとも1つのスケール情報SJを生成するようにすればよい。
【0071】
本実施形態によれば、例えば、湾曲部12を湾曲させることにより先端部11を挿入部5の長手軸方向に対して交差する方向へ向けるための制御が制御部38により行われている場合、すなわち、撮像部22の視野方向と、挿入部5の変位方向(挿入方向または抜去方向)と、が一致しない状態で変位量ΔLが算出され得る場合において、図4のステップS4~ステップS7の処理に相当するスケール情報SJに係る処理が行われないようにしてもよい。
【0072】
なお、スケール情報SJに係る処理には、当該スケール情報SJを生成する処理、及び、当該スケール情報SJを用いた処理が含まれる。そのため、スケール情報SJに係る処理が行われない場合には、図4のステップS8の処理の代わりに、図4のステップS2の処理により得られた撮像部22の自己位置の推定結果に基づき、1つ以上の処理対象画像IGにおける複数の特徴点CPに対応するワールド座標系の3次元座標位置を含む3次元点群座標を取得するための処理が制御部38により行われるようにすればよい。
【0073】
本実施形態は、軟性の(可撓性を有する)挿入部5が設けられた内視鏡2を含む内視鏡システム1に限らず、硬性の(可撓性を有しない)挿入部が設けられた内視鏡を含む他の内視鏡システムに対しても略同様に適用することができる。
【0074】
ところで、軟性の挿入部5が設けられた内視鏡2においては、ユーザによる挿入操作に応じ、例えば、図5に示すような撓みが発生し得る。そして、図5のような撓みが発生した状態においては、先端部11(撮像部22)の実際の変位量ΔZrと、挿抜状態検知装置41から出力される検知信号に基づいて算出される挿入部5の変位量ΔLと、が乖離することに起因し、スケール情報SJの正確性を確保することができない場合がある。図5は、被検体内に挿入された挿入部に撓みが発生している状態の一例を示す図である。
【0075】
そのため、内視鏡2を含む内視鏡システム1において本実施形態を適用する場合には、例えば、図6に示すような、挿入部5に撓みが発生していない状態において、スケール情報SJに係る処理が行われることが望ましい。また、ユーザにより挿入部5の抜去操作が行われている最中においては、挿入部5が抜去方向に変位することにより図5のような撓みが解消され得るため、変位量ΔZrと変位量ΔLとが一致しやすくなる。図6は、被検体内に挿入された挿入部に撓みが発生していない状態の一例を示す図である。
【0076】
すなわち、内視鏡2を含む内視鏡システム1において本実施形態を適用する場合には、例えば、制御部38が、挿抜状態検知装置41から出力される検知信号に基づいて挿入部5の変位方向を検知し、当該検知した挿入部5の変位方向が抜去方向であればスケール情報SJに係る処理を行う一方で、当該検知した挿入部5の変位方向が挿入方向であればスケール情報SJに係る処理を行わないようにすればよい。そして、このような処理によれば、スケール情報SJの正確性を確保することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、挿入部5の変位方向が抜去方向である場合に生成されるスケール情報SJの正確性をさらに向上させるための処理が制御部38により行われるようにしてもよい。このような本実施形態の変形例に係る処理について、以下に説明する。なお、以降においては、既述の動作等を適用可能な部分に関する具体的な説明を適宜省略するものとする。
【0078】
ユーザは、内視鏡システム1の各部の電源を投入した後、被検体の内部へ挿入部5を挿入するための挿入操作を行うことにより、当該被検体の最奥部に先端部11を到達させる。また、ユーザは、被検体の最奥部に先端部11を到達させた後、当該被検体の内部から挿入部5を抜去するための抜去操作を行う。
【0079】
制御部38は、例えば、挿抜状態検知装置41から出力される検知信号に基づいて検知した挿入部5の変位方向が抜去方向である場合に、図4のステップS4の処理により得られた変位量ΔZを所定の単位時間TPで除することにより、撮像部22の変位速度VZを算出する。また、制御部38は、例えば、挿抜状態検知装置41から出力される検知信号に基づいて検知した挿入部5の変位方向が抜去方向である場合に、図4のステップS5の処理により得られた変位量ΔLを所定の単位時間TPで除することにより、挿入部5の変位速度VLを算出する。また、制御部38は、所定の時間幅TWにおける変位速度VZの変動状態と、当該所定の時間幅TWにおける変位速度VLの変動状態と、の間の相関の高さに基づき、図4のステップS6の処理(スケール情報SJの生成)を行うか否かを決定する。
【0080】
ここで、ユーザによる挿入操作に応じて先端部11が被検体の最奥部に到達した状態においては、例えば、図7Aに示すような撓みが発生し得る。そのため、挿入部5に撓みが発生した場合には、例えば、図7B及び図7Cに示すように、挿入部5の抜去が開始されてから挿入部5の撓みが完全に解消されるまでの期間において、変位量ΔZrと変位量ΔLとが乖離しやすい状態が継続する。また、例えば、図7D及び図7Eに示すように、ユーザによる挿入部5の抜去操作に応じて挿入部5の撓みが完全に解消された以降の期間においては、変位量ΔZrと変位量ΔLとが乖離し難くなる。なお、図7A図7Eにおいては、挿抜状態検知装置41の図示を省略しているものとする。図7Aは、被検体内に挿入された挿入部に撓みが発生している状態の一例を示す図である。図7B及び図7Cは、被検体内に挿入された挿入部において発生した撓みが抜去操作により解消される様子を示す図である。図7D及び図7Eは、被検体内に挿入された挿入部において発生した撓みが抜去操作により完全に解消された状態の一例を示す図である。
【0081】
そして、図7Aの状態が時刻taにおいて発生し、図7Bの状態が時刻tbにおいて発生し、図7Cの状態が時刻tcにおいて発生し、図7Dの状態が時刻tdにおいて発生し、かつ、図7Eの状態が時刻teにおいて発生した場合には、変位速度VZの時間的な変化を図8Aのように表すことができるとともに、変位速度VLの時間的な変化を図8Bのように表すことができる。図8Aは、変位速度VZの時間的な変化の一例を示す図である。図8Bは、変位速度VLの時間的な変化の一例を示す図である。
【0082】
制御部38は、所定の時間幅TWにおける変位速度VZの変動状態と、当該所定の時間幅TWにおける変位速度VLの変動状態と、の間の相関が低い期間、すなわち、時刻taから時刻tdまでの期間Paにおいては、図4のステップS6の処理を行わないようにする。また、制御部38は、所定の時間幅TWにおける変位速度VZの変動状態と、当該所定の時間幅TWにおける変位速度VLの変動状態と、の間の相関が高い期間、すなわち、時刻tdの直後から時刻teまでの期間Pbにおいて、図4のステップS6の処理を行う。
【0083】
なお、本変形例に係る制御部38の処理は、図8A及び図8Bに示したような場合に限らず、例えば、図9A及び図9Bに示すような場合に対しても略同様に適用することができる。図9Aは、変位速度VZの時間的な変化の一例を示す図である。図9Bは、変位速度VLの時間的な変化の一例を示す図である。
【0084】
具体的には、制御部38は、所定の時間幅TWにおける変位速度VZの変動状態と、当該所定の時間幅TWにおける変位速度VLの変動状態と、の間の相関が低い期間に相当する期間Pcにおいては、図4のステップS6の処理を行わないようにすればよい。また、制御部38は、所定の時間幅TWにおける変位速度VZの変動状態と、当該所定の時間幅TWにおける変位速度VLの変動状態と、の間の相関が高い期間に相当する期間Pdにおいて、図4のステップS6の処理を行うようにすればよい。
【0085】
以上に述べたように、本変形例に係る制御部38の処理によれば、被検体の内部から挿入部5が抜去されている期間のうち、変位量ΔZrと変位量ΔLとが乖離し難い期間においてスケール情報SJが生成される。そのため、本変形例に係る制御部38の処理によれば、挿入部5の変位方向が抜去方向である場合に生成されるスケール情報SJの正確性をさらに向上させることができる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更や応用が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図9A
図9B