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▶ ブッシュ プロテクティブ ジャーマニー ゲーエムベーハー ウンド コー. カーゲーの特許一覧

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  • 特許-光学検査用の防弾パネルとその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】光学検査用の防弾パネルとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F41H 5/04 20060101AFI20221128BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
F41H5/04
B32B18/00 C
B32B18/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022516145
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 NO2020050231
(87)【国際公開番号】W WO2021049948
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】20191092
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522283664
【氏名又は名称】ブッシュ プロテクティブ ジャーマニー ゲーエムベーハー ウンド コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】ジョナッセン, トム
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン, パル フランシス
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-121774(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064277(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229480(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0269995(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0219749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0263525(US,A1)
【文献】米国特許第07849779(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 1/00-13/00
B32B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
到来する弾丸を変形させて抑制するように配置されたセラミックプレート(1)と、
該セラミックプレート(1)の前面(11)全体を本質的に覆うように配置され、プラスチック母材(26)と強化繊維(27)とからなる透明繊維強化表面複合層(2)と、
前記セラミックプレート(1)の裏面(12)を本質的に覆うように配置された繊維強化外傷軽減複合層(3)とを備え、
前記透明繊維強化表面複合層(2)が、前記前面(11)に向かって連続した接合部(4)を形成し、該接合部(4)が損傷していない前記透明繊維強化表面複合層(2)を通して見ることができる基本的な第1の光学特性(43)を有し、
前記前面(11)に向かう前記接合部(4)は、該接合部(4)が局所的に破壊されて局所剥離(42)が形成された部位を、前記透明繊維強化表面複合層(2)を通して見ることができる第2の光学特性(44)を取得する防弾プレート。
【請求項2】
前記プラスチック母材(26)が、昼光または近似昼光において透明である請求項1に記載の防弾プレート。
【請求項3】
前記強化繊維(27)が、プラスチック母材(26)中において損傷していない場合に、昼光または近似昼光において透明である請求項2に記載の防弾プレート。
【請求項4】
前記強化繊維(27)の屈折率(λ2)が、前記プラスチック母材(26)の屈折率(λ1)と実質的に類似している請求項3に記載の防弾プレート。
【請求項5】
前記セラミックプレート(1)の前記前面(11)が実質的に黒色である請求項1から請求項4のいずれかに記載の防弾プレート。
【請求項6】
前記セラミックプレート(1)が炭化ホウ素BCを主成分として形成されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の防弾プレート。
【請求項7】
前記透明繊維強化表面複合層(2)の前記プラスチック母材(26)が、ポリエステルまたはPETである請求項1から請求項6のいずれかに記載の防弾プレート。
【請求項8】
前記強化繊維(27)がガラス繊維からなり、前記強化繊維(27)と前記プラスチック母材(26)との間に接着形成剤が封入されている請求項1から請求項7のいずれかに記載の防弾プレート。
【請求項9】
前記第1の光学特性(43)は、当初、黒色で光沢があり、均一な反射性を有する請求項1から請求項8のいずれかに記載の防弾プレート。
【請求項10】
前記第2の光学特性(44)は、灰色で皴があり、または不明瞭な反射性を有する請求項1から請求項9のいずれかに記載の防弾プレート。
【請求項11】
光学的に検出可能な防弾プレートの製造方法であって、
セラミックプレート(1)と、
該セラミックプレート(1)の前面(11)の全体を本質的に覆うように配置され、プラスチック母材(26)と強化繊維(27)とからなり、前記プラスチック母材を配置すると透明になる繊維強化表面複合層(2)と、
前記セラミックプレート(1)の裏面(12)を本質的に覆うように配置された繊維強化外傷軽減複合層(3)とを含む複合配置を製造するステップと、
真空バッグ内へ前記複合配置を配置し、該複合配置を真空鋳造し、その後、前記真空バッグからの取り出すステップとを含み、
それによって得られる透明な前記繊維強化表面複合層(2)が、前記前面(11)に向かって連続した接合部(4)を形成し、前記接合部(4)が損傷していない透明な前記繊維強化表面複合層(2)を通して見ることができる基本的な第1の光学特性(43)を有し、
前記前面(11)に向かう前記接合部(4)は、該接合部(4)が局所的に破壊されて局所剥離(42)が形成された部位を、透明な前記繊維強化表面複合層(2)を通して見ることができる第2の光学特性(44)を取得する防弾プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防弾パネルに関する。より具体的には、本発明は、そのセラミックプレートの完全性を確認するために視覚的に検出することができる防弾パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
防弾チョッキに、銃撃および爆発時に発生する銃弾および薬莢などの破片を阻止および/または変形させるための防弾プレートが使用されていることが知られている。セラミックコアを繊維強化複合層により包んだこのようなプレートの検査は、関連する分析器とともに超音波により行われる。検査は、トランスデューサから超音波信号を防弾プレートに送り、それを別のトランスデューサまたは同じトランスデューサによって検出することにより行われる。ある方法によれば、超音波信号を送受信する4つの超音波トランスデューサが使用される。防弾プレートのセラミックが損傷して亀裂が発生すると、プレートの亀裂の破断線において超音波信号が反射される。そのため、損傷していないプレートとは異なる反射パターンを示す。このようなプレートの検査には、使用前または日常管理に伴う超音波による検査が含まれる。この方法による防弾プレートの検査には、超音波装置と分析器、これを使用する専門知識、および制御を実行する時間を必要とするという点において、現場に近い状況のユーザにとっては大きな欠点となる。好ましくは、プレートの品質のより徹底した分析を実験室において行うか、超音波分析装置を前線に持ち込むことである。この方法は高価であり、現場における使用には適用できない。したがって、防弾チョッキ用の防弾プレートの検査方法として、器具を使用せず、効率的であって、現場において適用可能な方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、添付の独立請求項において定義される。本発明の実施形態は、従属請求項において定義される。
【0004】
添付の図を参照して、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の一実施形態に係る損傷した防弾プレートを示す写真である。
図2】本発明の一実施形態に係る損傷していない防弾プレートの、図1に示すA-A線に沿った仮想の断面を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る損傷していない防弾プレートの、図1に示すA-A線に沿った仮想の断面を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る損傷した防弾プレートの一部を拡大した、図1に示すB-B線に沿った仮想の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1を参照すると、セラミックプレート1の亀裂は、最上層およびその下の目に見える転位として示されている。最上層は、透明繊維強化複合層2である表面層である。図示の実施形態においては、黒色炭化ホウ素B4Cプレート1が使用されている。実質的に透明繊維強化表面複合層2に対するセラミックプレートの接合面が損傷した領域においては、反射はライトグレーまたは白色に近くなる。これらの損傷した領域の反射率は、接合面が損傷していない領域の反射率とは明らかに異なり、反射は多かれ少なかれ黒く、つまり黒色炭化ホウ素プレートを直接見ていることになる。
【0007】
本発明は、以下の特徴を有する防弾プレートである。
- 拳銃から到来する弾丸、例えば7.62ライフル弾、またはマシンガン弾を変形させて抑制するように適合されたセラミックプレート1を備える。セラミックプレート1は、硬くまた高密度でなければならず、通常、炭化ホウ素、炭化ケイ素などの焼結体によって作られ、発射物の衝撃によって、発射物がセラミックを損傷しても、その表面を変形させて砕くことができるようにする。板厚は、戦闘場面において、どのような弾丸および弾速になるかによる。また、到来する発射物が、砲弾の破片および爆発による同様の破片であると想像することもできる。
- さらに、セラミックプレート1の前面11全体を本質的に覆うように配置され、プラスチック母材26と強化繊維27とからなる透明繊維強化表面複合層2と、
- セラミックプレート1の裏面12を本質的に覆うように配置された繊維強化外傷軽減複合層3とを備え、
- 透明繊維強化表面複合層2が、前面11に向かって連続した接合部4を形成し、接合部4が損傷していない部位を、透明繊維強化表面複合層2を通して見ることができる基本的な第1の光学特性43を有し、
- 前面11に向かう接合部4は、接合部4が局所的に破壊されて局所剥離42が形成された部位を、透明繊維強化表面複合層2を通して見ることができる第2の光学特性44を有する。
【0008】
本発明の一実施形態において、プラスチック母材26は、昼光または近似昼光において透明である。本発明の一実施形態においては、強化繊維27も、昼光または近似昼光において透明である。
【0009】
本発明の一実施形態においては、強化繊維27の屈折率λ2は、プラスチック母材26の屈折率λ1と実質的に近似している。これは、透明プラスチック母材26中の透明母材ウェット強化繊維27が、特に内部光の屈折を形成しないことを意味し、したがって、繊維強化表面複合層2は、セラミックプレート1上において完全に透明であると同様に認識されることを意味している。また、透明繊維強化表面複合層2は、通常、強化繊維27の織りによる多少の不均一な表面構造により、母材よりもやや広い表面積を持って現れるが、強化繊維27の布のウェブ構造自体は、透明繊維強化表面複合層2内においてほとんど見えなくなる(図1参照)。
【0010】
本発明の一実施形態においては、セラミックプレート1の前面11は、実質的に黒色である。より具体的な実施形態においては、セラミックプレート1は、図1の写真に示されるように、実質的に黒色である炭化ホウ素B4Cを主成分とするものである。この材料は、透明な母材26に対する接合部または接合面4を完全に接触させて覆った場合には、昼間は黒色に見える。
【0011】
本発明の一実施形態においては、透明繊維強化表面複合層2におけるプラスチック母材26が、ポリエステル、すなわち、熱硬化性樹脂である。本発明の別の実施形態においては、透明繊維強化複合層2におけるプラスチック母材26は、PET、すなわち熱可塑性樹脂であり、いずれも透明化することができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、防弾プレートは、ガラス繊維からなる強化繊維27を用いることができ、ガラス繊維は、強化繊維27とプラスチック母材26との間に接着形成剤により固着されることが好ましい。これにより、透明繊維強化表面複合層2は、セラミックプレート1の材料よりも引張強度は高いが延性に富んでいる。したがって、セラミックプレート1が完全に、または部分的に破砕されても、透明繊維強化表面複合層2がセラミックプレート1の破片を保持することができる。これはまた、図1に示されるように、セラミックプレート1に亀裂41が発生した場合に、プレートはその外観において形状的に損傷していないように見え、到来する破片に対して少なくとも何らかの保護を提供し続けることを意味する。
【0013】
本発明の背景は、発明者らが、元々黒色の炭化ホウ素プレート1を、前面11において透明なガラス繊維補強複合層により覆った防弾パネルを製造していたことにある。通常は、白いセラミック製の防弾プレートを使用するが、ここでは黒色を使用した。機械的強度および構造単位以外はともかく、PETのプラスチック母材26とガラス繊維の強化繊維27とを備えた透明繊維強化表面複合層2により防弾パネルをラミネートしたものである(図4参照)。防弾パネルをテストベンチにおいて射撃したところ、打たれた衝撃の周辺においては、炭化ホウ素プレート1自体が貫通し、境界領域が破断し、衝撃の周辺約1cmから2cmの境界においては、複合層が灰色がかり明るくなることが確認された。また、いくつかの衝撃から放射状に広がる灰色がかった明るい線も観察され、最上層に向かって接合面に灰色のすべり領域として現れるのと同様の現象が起きているためではないか、すなわち亀裂に沿って透明繊維強化表面複合材2の最上層が剥離する現象ではないかと推測した。これは、損傷時に空気層0からの反射が明るくなるか、あるいは、時折空気があちこちに存在する剪断されたガラス繊維と母材との間の内部反射によるものと思われる。兵士は、時々コンクリートの床や石、階段、スチールデッキなどの硬い面あるいは鋭利な角に防弾プレートを置いたり、誤って硬いものに落下させたりすることがあるため、本発明者らは、衝撃損傷を受けた被弾していないプレートにも適用できると想定した。一実施形態においては、本発明はまた、輸送、落下、および軽微な衝撃または打撃から保護することを目的とする着脱可能な保護カバー5を備えている。
【0014】
次に、黒色炭化ホウ素のセラミックプレートにより防弾パネルを作成し、ガラス強化繊維27と透明母材26とを有する透明繊維強化表面複合層2を最上層に、裏面に本発明において定義される繊維強化外傷軽減複合層3を積層した。次に、防弾パネルにハンマー打撃を与えると、その打撃の1つは、透明繊維強化表面複合材の最上層を損傷するだけで、その中に「ローズ」98を残した。しかし、パネルの中央へのその後のはるかに強いハンマー打撃により、図1における主損傷9と呼ばれるものを形成した。灰色の反射光線93が、パネル内の主損傷9の中心91から延びてメインビームパターンを形成する。セラミックプレート1の明るい部分に沿った領域を調べたところ、セラミックプレート1の亀裂94が、透明複合層、すなわち透明繊維強化表面複合材2の最上層内およびその下の層の両方において、目に見える剥離42として繰り返されていることを発見した。
【0015】
透明繊維強化複合層2の透明度は、ガラス繊維27およびプラスチック母材26の屈折率の類似性によるものであり、類似性が高いほど、ガラスと母材との間の内部光の屈折が少なくなる。このために重要なことは、ガラス繊維のフィラメントにサイジングという、ガラスとPETなどのプラスチックとの2つの全く異なる材料要素の接着を確保するコーティングが挿入されていることである。特殊なポリエステル母材(熱硬化性プラスチック)に合わせた特殊なサイジングを施したガラス繊維もあるが、図1の写真のような熱可塑性PETおよびガラス繊維を使用すれば、透明性は十分に確保される。
【0016】
白色セラミックプレートの使用も試みられ、損傷していない接合面および接合部4上の実質的に光沢のある均一な白色反射と、亀裂周辺のよりあいまいな灰色の剥離42との区別がはっきりと確認されている。また、炭化ケイ素セラミックプレートも使用されている。炭化ホウ素プレートは白色セラミックプレート1の5倍から10倍の価格であり、したがって高価なセラミックが割れているのか、全体が割れているのかを知ることは気になるところである。
【0017】
また、本発明は、光学的に検出可能な防弾プレートの製造方法を包含する。本発明は、光学的に検出可能な防弾プレートの製造方法であって、
- セラミックプレート(1)と、
- セラミックプレート(1)の前面(11)の全体を本質的に覆うように配置され、プラスチック母材(2)と強化繊維(27)とからなり、母材を配置すると透明になる繊維強化表面複合層(2)と、
- セラミックプレート(1)の裏面(12)を本質的に覆うように配置された繊維強化外傷軽減複合層(3)とを含む複合配置を製造するステップと、
- 真空バッグ内に複合配置を配置し、複合配置を真空鋳造し、その後、真空バッグからの取り出すステップとを含み、
- それによって得られる透明繊維強化表面複合層(2)が、前面(11)に向かって連続した接合部(4)を形成し、接合部(4)が損傷していない透明繊維強化表面複合層(2)を通して見ることができる基本的な第1の光学特性(43)を有し、
前面(11)に向かう接合部(4)は、接合部(4)が局所的に破壊されて局所剥離(42)が形成された部位を、透明繊維強化表面複合層(2)を通して見ることができる第2の光学特性(44)を取得する防弾プレートの製造方法である。
【0018】
上述したすべての実施形態は、本方法のさらなる特徴として成り立つことができる。
【0019】
このように、セラミックプレート1は、プラスチック母材26と強化繊維27とからなる透明繊維強化表面複合層2により被覆されている。この層は、本質的にセラミックプレート1の前面11の全体を覆うように配置されているが、裏面の複合層3を覆うことも可能である(以下を参照)。セラミックプレート1の裏面には、繊維強化外傷軽減複合層3がセラミックプレート1の裏面12に本質的に配置されている。これは、プラスチックの外層、好ましくは、上記の透明繊維強化複合層2により覆われている。セラミックプレート1を、加熱、溶融および冷却、熱可塑性母材をPETとして設定する際、場合によっては、熱処理中に硬化ポリマ樹脂を硬化させる時に、真空を形成する真空バッグを使用しなければならない。
図1
図2
図3
図4