(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】光学的エフェクト顔料
(51)【国際特許分類】
C09C 3/00 20060101AFI20221129BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20221129BHJP
H01F 41/16 20060101ALI20221129BHJP
H01F 1/04 20060101ALI20221129BHJP
C22C 19/07 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C09C3/00
C09D11/037
H01F41/16
H01F1/04
C22C19/07 C
(21)【出願番号】P 2019564168
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 ES2018070437
(87)【国際公開番号】W WO2019002645
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ルイ ケベド, アンドレ
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-065673(JP,A)
【文献】特開平07-331109(JP,A)
【文献】特表2005-509691(JP,A)
【文献】特開2009-102620(JP,A)
【文献】特表2005-512761(JP,A)
【文献】特表2016-534187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層(34a、35a、36a、34b、35b、36b、39、40、41、43、44、48a、49a、48b、49b)及び磁性素子(33、38、45、50)を含む光学的エフェクト顔料であって、
前記複数の層(34a、35a、36a、34b、35b、36b、39、40、41、43、44、48a、49a、48b、49b)が、少なくとも1つの吸収体層(34a、34b、39、43、48a、48b)及び少なくとも1つの誘電体層(35a、35b、40、44、49a、49b)を含み、
前記磁性素子(33、38、45、50)が、前記エフェクト顔料の面に対する面外磁化を有することを特徴とする、光学的エフェクト顔料。
【請求項2】
少なくとも2つの反射体層(36a、36b)をさらに含み、
前記層(34a、35a、36a、34b、35b、36b)が層の2つのスタック(31、32)に並べられ、
前記層の2つのスタック(31、32)が非対称であり、前記2つのスタック(31、32)の間に位置する前記磁性素子(33)を有する、請求項1に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項3】
層の両スタック(31、32)に組み込まれた発光材料をさらに含み、
層の一方のスタックに組み込まれた発光材料が、層の他方のスタックに取り込まれた発光材料とは異なることを特徴とする、請求項2に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項4】
前記発光材料が前記誘電体層(35a、35b)に組み込まれていることを特徴とする、請求項3に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項5】
前記発光材料が、前記層のスタック(31、32)の各々に追加の層を形成していることを特徴とする、請求項3に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項6】
少なくとも1つの反射体層(41)をさらに含み、
前記層(39、40、41)が層の単一スタック(37)に並べられ、
前記磁性素子(38)が前記少なくとも1つの反射体層(41)の隣に位置する、請求項1に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項7】
前記層(43、44)が、少なくとも1つの吸収体層(43)及び少なくとも1つの誘電体層(44)を含む、層の単一スタック(42)に並べられ、
前記磁性素子(45)が反射体層としても機能する、請求項1に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項8】
前記層(48a、49a、48b、49b)が層の2つのスタック(46、47)に並べられ、
層の各スタック(46、47)が、少なくとも1つの吸収体層(48a、48b)及び少なくとも1つの誘電体層(49a、49b)を含み、
前記磁性素子(50)が、層の両スタック(46、47)用の反射体層としても機能する、請求項1に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項9】
前記磁性素子(33、38、45、50)が1つの磁性体層からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項10】
前記磁性素子(33、38、45、50)が、面外磁化を有する複数の磁性体層からなる、請求項1~
8のいずれか一項に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項11】
前記磁性素子(33、38)が、白金又はクロムのいずれかとコバルトとの合金でできている、請求項2又は6に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項12】
前記吸収体層(34a、34b、39、43、48a、48b)が、クロム、アルミニウム、ニッケル、銀、銅、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウム及びニオブ、並びにそれらの対応する酸化物、硫化物及び炭化物;炭素、黒鉛、ケイ素、ゲルマニウム、サーメット及び酸化第二鉄並びにその組み合わせの群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項13】
前記誘電体層(35a、35b、40、44、49a、49b)が、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、五酸化タンタル、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ユウロピウム、酸化鉄、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、酸化サマリウム、三酸化アンチモン、一酸化ケイ素、三酸化セレン、酸化スズ、三酸化タングステン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び金属フッ化物並びにその組み合わせの群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項14】
前記反射体層(36a、36b、41)が、アルミニウム、銀、銅、金、白金、スズ、チタン、パラジウム、ニッケル、コバルト、ロジウム、ニオブ、クロム、イリジウム及びその組み合わせの群から選ばれる、請求項2又は6に記載の光学的エフェクト顔料。
【請求項15】
キャリア、及び請求項1~14のいずれか一項に記載の顔料を含む、インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、セキュリティ印刷を含む種々の目的に使用される光学的エフェクト顔料の分野、特に複数の層及び磁性素子を含むエフェクト顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]光学的エフェクト顔料は、様々な名前の中でも「光学的可変顔料」(OVP)とも呼ばれ、次の基本的特徴を示す粒子である:a)細長い薄片、板又は小板形状を有し、したがって、2つの面を有し、b)エフェクト顔料の構造は幾つかの層から構成され、c)エフェクト顔料の層の数、組成、厚さ及び屈折率に主として依存する光学的効果を与える。光学的効果は、色変化効果、ホログラフィー効果及び発光効果を含む。名前「光学的エフェクト顔料」、「エフェクト顔料」又は単に「顔料」は、本特許の全体にわたって使用されるものとする。
【0003】
[0003]エフェクト顔料には、特に化粧品、コーティング及びセキュリティ印刷の領域で、多くの産業用途がある。顔料は、典型的にはモノマー又はポリマー及び光開始剤で構成されるキャリア又はニスなどの液体媒体中で分散させることができる。UV光又は他の刺激にさらされた時、前記成分は網状になり、顔料を基材上の固定位置に保持する透明な固体マトリックスを形成する。本発明によるエフェクト顔料はそれらの分野のうちのいずれでも使用することができるが、特にセキュリティ印刷に使用することができる。
【0004】
[0004]セキュリティ印刷は、銀行券、小切手、パスポート、身分証明書及び他の有価文書などの品目の印刷に関係がある。様々な反偽造技法が、この分野で使用され、反偽造技法のうちの1つが、光学的可変インク(OVI)とも呼ばれる色変化インクである。色変化インクで印刷された文書、又はより一般には、文書の一部は、文書を見る角度に依存して、すなわち文書の表面への光の入射角に依存してその色が変化するように見える。この角度依存の色外観は、色複写設備によって再現することができないので、これにより、特にスクリーン印刷又は彫刻凹版印刷において非常に有効で、広く使用されている印刷技法となっている。異なる色外観効果は、分散したエフェクト顔料を含むキャリアから作られた印刷インクの使用により達成される。
【0005】
[0005]米国特許第3087828号(HOWARD R.LINTON)28/06/1961「真珠光沢顔料組成物」は、顔料の反射コアである雲母基材と、半透明層とを有する、基本的なエフェクト顔料構造体を教示している。より複雑な構造体が存在するが、最近、より一般的なのは「誘電体/金属/誘電体」層構造を有する顔料である。これらの顔料の光学的可変性は、干渉効果によるものであり、それによって顔料に当たる光は、部分的に反射され部分的に透過又は回折される。部分的に透過又は回折された部分は、顔料の反射体層に達して、反射されて戻り、入射光の波長、層の厚さ及び入射角などの因子に依存して別の部分と建設的又は破壊的に干渉する。
【0006】
[0006]述べられているように、エフェクト顔料は、セキュリティ印刷の領域だけでなく、コーティングされたアルミニウムフレークに基づいた産業用コーティング組成物(例えば自動車塗料)の製作又はマニュキュア液などの化粧品配合物に使用されている。明るさ及び色シフトの点でより劣った品質であるが、文書が高品質のカラープリンター又はスキャナーによって再現することができ、その光学的可変部分は市販のエフェクト顔料を使用して加えることができるので、これらのコーティングが安価に入手可能であることにより、エフェクト顔料のセキュリティ潜在性が弱まっている。
【0007】
[0007]この欠点は、エフェクト磁性顔料、すなわち、エフェクト顔料の層の1つが、磁気特性(すなわち、どちらかの層は磁性又は磁化可能である)を有するエフェクト顔料を設計することによって取り組まれてきた。文書を認証するためにセンサーによって磁性を検出することができるので、磁性体層は主に隠されたセキュリティ機能として機能する。国際公開第02/073250号(SICPA HOLDING S.A.)19/09/2002の[0017]、[0023]、
図2は、対称的な7層の構造「吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体」を有する磁性顔料を開示している。
【0008】
[0008]磁性エフェクト顔料の別の利点は、印刷又は乾燥プロセス中の顔料の空間的配向を、ある程度まで制御することが可能になることである。このことは、顔料の基材上の配向がそれらの光学的効果を決定するので、重要である。典型的には、これは、印刷機又は乾燥機によって設置された一式の磁石又は電磁石によって生成された外部磁界へ磁性顔料をさらすことにより行われる。磁性顔料が液体媒体中で分散すると仮定すれば、磁性顔料は自由に移動し、したがって、そのような外部磁界に応答する。液体媒体が印刷又は乾燥工程の間に蒸発すると、顔料は基材に固着され、もはや外部磁界によって影響を受けない。
【0009】
[0009]物理学の基本原理によれば、磁性又は磁化可能な材料は、例えば地球の磁界に対するコンパスのように、常に外部磁界と平行にその磁化を整列させる。したがって、磁性顔料が液体媒体中で分散されている場合に起こる、印刷機によって生成された磁界に対するエフェクト磁性顔料の磁化の整列は、常にそのような磁界と平行になる。関連する疑問は、顔料が外部磁界に対して空間でどのようにそれ自体を配向させるかである。その疑問は、別の因子、すなわち顔料の磁性又は磁化可能な要素の磁化に依存する。先行技術の磁性エフェクト顔料の磁性体層などの、細長い粒子の一部を形成する薄い磁性又は磁化可能な層は、面内磁化とも呼ばれる平行磁化を示すことが知られている。平行又は面内の磁化は、顔料の磁性又は磁化可能な層の磁化が、前記層の面と平行であることを意味する(前記層が顔料の不可欠な一部でので、言及の簡略のために、以降は、「顔料の磁化」とは、「顔料の磁性又は磁化可能な層の磁化」を意味する。同様に、そのような磁化は、より正確には(rectius)、顔料の磁性又は磁化可能な層の面と平行であることは容易に理解されるだろうが、そのような磁化が「顔料の面」に関して又は単に「面に対して」平行又は面外であると言われる)。前記面内磁化の影響の下で、そのような磁性又は磁化可能な層を組み込んだ公知の顔料は、そのような磁界と平行になる位置に空間的に外部磁界に関してそれら自体を配向させる。磁性又は磁化可能な層(すなわち層の材料の優先的磁化方向)の容易軸が、層の面内に含まれるので、平行磁化が生じる。
【0010】
[0010]上記のことは、印刷機の磁石によって発生された磁界によって、及び顔料が液体媒体中で分散されている間に、印刷基材上の顔料の配向を制御することができることを示唆するが、それは顔料が前記磁界と平行して必然的に空間的にそれら自体を配向させるからである。したがって、所望による磁界の方向の変更によって、顔料の空間的な配向は変化する。
【0011】
[0011]しかし、先行技術の磁性エフェクト顔料が印刷基材に持つ位置の別の様相は、磁界によって、すなわち、基材上で顔料のどの面が「フェースダウン」になり、どの面が「フェースアップ」になるかを制御することはできない。面に関する顔料の言及された平行磁化は、この様相に影響がない。液体媒体中の磁性顔料は、その平行磁化によって、磁界に関して平行な位置で拘束されるが、しかし、その磁界方向のまわりで自由に回転する。磁化が顔料の面と平行であると、磁界方向のまわりのこの自由回転は「フェースアップ-フェースダウン」動作を示唆し、その結果、顔料は、基材にランダムにどちらかの面を向けがちになる。これは、基材上で目に見える面を予め決めることができないことを意味し、したがって、磁性顔料は、いかなる面が基材に上向きになっても、2つの面が同一であるので、光学的効果は同じになることを保証するためには、対称的な層状構造を含めて設計されなければならない。例えば、前述の文書、国際公開第02/073250A号で開示されている顔料には、「両面に等しい特性を与えるために」対称的な構造を有する[0017]。同じ文書の中で開示されている別の実施形態、
図3、[0018]の中で、磁性体層が唯一の反射体層に隣接し、単独で1つの反射体層側に沿って光学的性質を有する磁性構造をもたらす。しかしながら、本実施形態は、[0024]から明らかなように、顔料ではなく、制御された方法で適用される箔を指し:「デバイスは、続いて基材に面する磁性体層を有する基材に、例えば、適切な接着剤を使用することによって適用される[制御された方法で、上方に向いた光学的性質を有する反射体側に]」ことが留意されなければならない。
【0012】
[0012]エフェクト顔料に関係のある他の現技術水準の文書において、磁界と平行して整列する顔料に対する言及が、同様にある、例えば米国特許出願公開第20090072185号(VIAVI SOLUTIONS INC.)19/03/2009の要約は;外部磁界の影響下の液体キャリア中の磁性薄片について記述しており、薄片は互いに並んで引き合って、より高い反射率をコーティングに与えるリボンを形成する。顔料の磁化は「面内磁気異方性」である[0009]。米国特許第7047883号(VIAVI SOLUTIONS INC.)23/05/2006は、キャリア中の磁性薄片を整列させるための装置と関連方法に関する。
図5Cにおいて示されるように、磁性薄片の配向は磁界の線と平行である。米国特許第7955695号(VIAVI SOLUTIONS INC.)07/06/2011は、いわゆるすりつぶされた磁性又は磁化可能な顔料粒子を含む光学的効果層(OEL)に関し、図面、例えば
図4、6及び8は、顔料が空間的に磁界と平行に配向していることを示す。
【0013】
[0013]この背景に対して、本特許において提案されるエフェクト顔料は、磁性又は磁化可能な要素を持ち、顔料の面に関するその磁化が面外であり、基材上で顔料のどの面が「フェースアップ」、どの面が「フェースダウン」になるか予め決定することを可能にする機能を有する。これはエフェクト顔料の製作及び性能において重要な利点を提供する。
【0014】
(発明の概要)
[0014]本発明は、複数の層及び磁性素子を含むエフェクト顔料に関する。本特許において言及される「磁性素子」は、磁気特性を示す顔料成分のいずれか、例えば1つ又は複数の磁性体層であってもよい。「磁気特性」とは、どちらの場合も磁性容易軸に沿って磁性素子が磁化されるか、又は、磁化可能であることを意味する。本発明において、エフェクト顔料はその磁性素子に面外磁化を有すること、すなわち、その容易磁軸は、顔料の面に主として垂直であることそれ自体を特徴とする。「主として垂直の」容易磁軸は、顔料の面に対して水平な線と45°と135°の間の角度が好ましく、60°と120°の間の角度がより好ましく、80°と100°の間の角度がより好ましく、画定することを意味する。
【0015】
[0015]
図1は、従来の面内磁化を有する先行技術のエフェクト磁性顔料(1)の略図を含む。顔料は、キャリア中で分散されて印刷インクを形成する。印刷インクは水平の磁界(2)にさらされる。顔料(1)は、層の第1のスタック(3)、層の第2のスタック(4)(スタックを構成する個々の層は示さず)及び磁性体層(5)を含む多重膜構造を有する。それぞれのスタックの層は、それらが同じ配置、組成、厚さ及び屈折率を有するという点で対称的である。顔料(1)は磁界(2)を軸に回っている。図面は、回転で3段階の系列を表す。第1の段階(A)において、層の第1のスタック(3)は上方に向き、第2の段階(B)において、顔料(1)は回転の中間にあり、第3の段階(C)において、顔料(1)は回転を終え、したがって、(A)で下方に向いていた層の第2のスタック(4)は、今は上方に向いている、などである。磁界を軸にするこの自由回転の結果、キャリアが基材に塗布される場合、顔料(1)が、層の第1(3)又は第2(4)のスタックに当たるかはランダムであり得る。よって、見る側の顔料がすべて同じ光学的効果を生み出すことを保証するためには、面内磁化を有する二重スタック顔料には対称的な層状構造がなければならず、その理由は、対称的な層状構造により、顔料が基材上でどちらの側で留まるかが無関係なものとなるからである。
【0016】
[0016]従来の面内磁化を有するエフェクト磁性顔料の上記の挙動は、磁界の方向に依存しない。面内磁化を有する顔料が、垂直、曲がった、又は半径方向の磁界などの異なる方向の磁界にさらされても、同じ自由回転が起こる。面に対する磁化が平行であれば、磁界の方向が何であろうと、顔料は、必ず磁界の方向と平行な空間的配向になる。異なる磁界は、基材に関して顔料の空間的配向を変えるが、しかし、ともかく、磁界を軸に回る、記述された「フェースアップ-フェースダウン運動」が、ランダムな位置になって、なお起こる。これを説明するために、
図2は、
図1と同じ先行技術の顔料の同じ略図を示し、垂直磁界の影響下のこの時、
図1の顔料に関して顔料(1)がその空間的配向を変えたことが認識されるが、しかしなお、垂直磁界を軸とする同一の「フェースアップ-フェースダウン」回転にさらされる。
【0017】
[0017]
図3は、本発明による顔料(6)の略図を含む。顔料(6)は、磁界(7)を軸にその回転(A、B、C)の3つの異なる段階の水平磁界(7)の下にある。前記顔料(6)は、そのために、そして
図1及び2の顔料とは対照的に面外磁化を示し、顔料(6)は、磁界(7)に関して主として垂直の位置で空間的に指向する。顔料(6)は磁界を軸に回転するが、しかし、前記配向により、回転は左から右までであり、また、顔料は反転せず、回転(A、B、C)の段階には無関係に、層(8)の1つのスタックは絶えず見上げ、別の(9)は、絶えず下を見ていることを意味する。キャリアが基材に塗布される場合、すべての顔料(6)は層の同じスタックにある(この例では、層の第2のスタック(9)に、層の第1のスタック(8)が上向きで)。再び、仮に垂直磁化された顔料が異なる方向の磁界にさらされても、
図4が垂直磁界に関して説明するように何も変わらない。
【0018】
[0018]最後に、従来の面内磁化を有するエフェクト顔料の挙動を図示するために、幾つかの顔料(10)が基材(11)を覆って液体キャリア中で分散され、曲がった磁界(12)にさらされた場合の先行技術例は
図5に示される。顔料は、層の第1(13)及び第2(14)のスタック、並びに中間に磁性体層(15)を有する。顔料(10)の面と平行な矢印(16)は、磁化がそれらの面と平行であることを示す。3つの現象は観察することができる:第1に、顔料(10)の磁化の整列は、他の顔料又は他の磁性若しくは磁化可能な要素のように、原理の問題として、磁界(12)と平行な矢印(16)によって表されるように、磁界(12)の方向に対して常に平行になる。第2に、磁界(12)の方向に関する顔料(10)の空間的配向に関して、顔料(10)は、面に関して面内磁化を有するので、顔料(10)は磁界(12)と平行してそれら自体で配向する。そして第3に、それらの面に関する前記面内磁化に起因する、磁界(12)を軸とする自由回転「フェースアップ-フェースダウン」により、幾つかの顔料(10)は、基材上で層の第1のスタック(13)が上方へ向き、層の第2のスタック(14)の幾つかが上方へ向き、ランダムに起こる様相は、制御することができない。
【0019】
[0019]本発明の第1の好ましい実施形態によれば、エフェクト顔料は、層の2つのスタックに並べられた複数の層を含み、また、それは磁性素子を含む。磁性素子は、層の2つのスタック間に位置する、磁性又は磁化可能な層を含み、顔料の面に関するその磁化は面外である。層の2つのスタックは、それぞれのスタックが異なる数の層を含むか、又は、それぞれのスタックの層が異なる材料からなるか、又はそれらの厚さ若しくは屈折率が異なるかのいずれかの意味で、非対称構造を有する。本特許において、非対称機能は、層の前記2つの非対称のスタックは二重光学的効果を生み出す、すなわち、層の1つのスタックによって生み出される光学的効果は、他方によって生み出される光学的効果と異なることを示唆する。
【0020】
[0020]この二重光学的エフェクト顔料は、層に対称性を維持しなければならず、そのため、両層に唯1つの同じ光学的効果を生み出す、面に関して面内磁化を有する既存の二重スタック顔料とは対照的に、1種の顔料を用いて2つの別個の光学的効果を得ることができるという重要な利点を与える。顔料の面に関する垂直磁化により、基材への顔料の堆積を制御することができるので、二重光学的効果は、実現することができる。
【0021】
[0021]請求される顔料は、特にセキュリティ印刷において、異なる分野の応用を有する。特に層の2つの非対称スタックを有する第1の実施形態に関する当分野での顔料の使用のうちの1つは、注目している文書の両面から見られる宿命である、例えば印刷基材がポリマーのように透明な場合に、セキュリティ機能に関係する。この場合、基材に印刷されたセキュリティ機能は、基材の一方に1つの光学的効果、及び逆の側に異なる光学的効果を生み出す。光学的効果は、基材に当たる位置が予測不可能であることによって、両面は対称的でなければならず、そのため、透明基材の両側に同じ光学的効果を起こすので、既存の面内磁化された顔料をもってしては可能ではなく、セキュリティ機能として役に立たない。
【0022】
[0022]
図6は、前記第1の好ましい実施形態において、請求されるエフェクト顔料の前述の有利な応用を例示する。層の第1(17)及び第2(18)のスタック並びに磁性体層(19)を有する幾つかの面外磁化された顔料(16)が、半径方向の磁界(20)にさらされ、透明基材(21)にわたって液体キャリアに分散される。第1と第2のスタック(17、18)は非対称である。顔料(16)の矢印(22)は、顔料の面に関して垂直であり、顔料(16)の磁化が面に関して主として垂直であることを示す。しかし、物理学の前述の基本原理によれば、磁界に関する顔料の磁化の整列は、そのような磁界と常に平行であることは念頭に置いておかねばならず、よって、半径方向の磁界を示す矢印(20)及び顔料(16)の矢印(22)は、互いに平行である。見てわかるように、磁界(20)に対する顔料(16)の磁化の前記整列は、必ず、顔料(16)の空間的配向を引き起こし、それは、面に関する、請求される顔料の面外磁化により磁界(20)に対して主として垂直である。この挙動は、従来の面内磁化により、磁界(12)に関する顔料(10)の空間的配向が平行であった、
図5に観察されたそれとは異なる。
【0023】
[0023]
図3及び4に対して既に説明があり、
図6に認識することができるように、面外磁化に従うと、磁界(20)を軸とするそれらの自由回転は左から右までであり、また、顔料(16)は反転しないので、顔料(16)はすべて同じ側を上に向ける。本実施形態において、層(17、18)のスタックが非対称であるので、層の第1のスタック(17)によって生み出される光学的効果は、層の第2のスタック(18)によって生み出される光学的効果とは異なる。基材(21)が透明であるので、上から見ると、光学的効果は、その裏面から見られた時生み出す光学的効果とは異なる。その上、この例において、磁界が半径方向(20)であるので、いわゆる「ローリングバー効果」があり、それによって観察者は正反射帯域を見ることになるので、画像が傾くにつれて、観察者の方へ近づいたり遠ざかったりする。これは既知のセキュリティ印刷効果であり、基本的に、米国特許出願公開第2005/0106367号(VIAVI SOLUTIONS INC.)19/05/2005に記述され、そして、コーティングにわたって曲面を模倣する顔料粒子の配向に基づく。請求される二重スタック、非対称及び面外磁化された顔料の透明基材上の使用は、対称的な顔料を使用しなければならないことの制約による既知の片側の効果とは対照的に両側の、ローリングバー効果を達成する。
【0024】
[0024]この第1の好ましい実施形態において請求される顔料は、ホログラフィーの箔又はパッチへの代替案を提示し、注目している文書が回転すると、その外観が変わり、一般に回折光学的可変画像デバイス(DOVID)として知られている。これは、矢印(24)によって示され、面外磁化を有する、幾つかの磁化された顔料(23)を示す
図7によって例示することができ、基材(25)を覆って液体キャリアに分散され、わずかに曲がった磁界(26)を受ける。顔料(23)の磁化の整列は、磁界(26)に関して厳密に平行であり、説明したように、必然的に、面外磁化された顔料(23)は、空間で磁界(26)に対して垂直にそれら自体で配向する原因となる。面外磁化を有する請求される顔料の堆積における予測可能性により、層のスタックは対称的である必要がない。したがって、例において、顔料は層の非対称のスタック(27、28)を用いて構築され、そのため、注目している文書は、見る人の位置に依存して同じ側に対して2つ
の光学的効果を示す。本実施形態の利点は、ホログラフィーデバイスを文書にホットスタンピンクする既知でより高価な方法の代わりに、この種の光学的効果が、印刷技法、例えば、シルクスクリーン、又は彫刻凹版の使用により文書に組み込むことができることである。
【0025】
[0025]磁界の方向の再配列によって、例えば、反転した分極を有する半径方向の磁界を有する
図8に示されるように、二重スタック、非対称及び面外磁化された顔料を使用して、さらなる光学的効果を達成することができる。この例において、液体キャリアに分散された顔料(29)は、2つの分極(30.1、30.2)を有する磁界に対してそれら自体で垂直に並び、それらに影響する分極(30.1、30.2)にしたがって、上向き又は下向きの、層の一方又は他方のスタックを有する基材に堆積される。しかし、同じ分極によって影響を受けた顔料はすべて、同じようになる;そのため、2つの異なる光学的効果が同じ基材の2つの別個の領域に生み出される。垂直磁化された顔料の使用、及び基質への制御された堆積という利点のおかげで、本実施形態の顔料を用いる単一の印刷インクが層の非対称スタックによって生み出される2つの別個の光学的効果を獲得するので、この光学的効果を得るために、異なる色のインクで2度同じ基材を毎回印刷する必要はない。
【0026】
[0026]第1の実施形態の変形において、また印刷文書用の追加のセキュリティ対策として、エフェクト顔料は、エネルギー源によって励起された時、電磁波の形で応答を発する発光材料を含む。発光材料は誘電体層(35a、35b)に加えることができるのが好ましく、又は、それは、それぞれの追加の層として層のスタック(31、32)の各々に加えられた発光層の形で組み込むことができる。いずれの場合も、発光材料は、顔料の各側の異なる発光応答を得るために、各層に異なる機能を持ち、これは、唯1つの顔料で二重の応答が得られる別の例である。
【0027】
[0027]本発明の第2の好ましい実施形態によれば、エフェクト顔料の層は、吸収体層、誘電体層及び反射体層を含む層の1つのスタックに並べられ、顔料は、また面外磁化を有する少なくとも1つの磁性体層からなる磁性素子を含む。
【0028】
[0028]既に言及したように、所望の光学的効果が生み出されることを保証するためには、本発明の第1の好ましい実施形態によれば、二重スタック磁性エフェクト顔料は2つの異なる光学的効果を生み出すことができるが、それらの面に関して平行磁化を有する公知のセキュリティ顔料は、層の2つの対称的なスタックを必要とする。ここで、この第2の好ましい実施形態は、面外磁化を有する単一スタックの顔料が、面内磁化を有する対称的な二重スタック顔料と同じ光学的効果を与えるという長所を持つ。その理由は、すべての顔料は、光学的効果を生み出すために、磁性素子を基材に対して下方へ向け、また層の単一スタックを上方へ向けて基材にあることを保証するために垂直磁化を使用することができるという先の記述から明白である。したがって、層の追加のスタックは不必要になり、なしにすることができ、かなりの製造費削減につながる。
【0029】
[0029]発明の第3の好ましい実施形態によれば、エフェクト顔料の層は、吸収体層及び誘電体層を含み、反射体層を含まない層の単一スタックに並べられる。顔料は、また面外磁化を有する少なくとも1つの磁性体層からなる磁性素子を含む。前記磁性素子はニッケル粒子とアルミニウムを含む。アルミニウムの存在は、磁性素子が反射体層と同様に機能することを可能にする。そのため、本実施形態は、エフェクト顔料の構造のまた別の層を省くことができる。
【0030】
[0030]第4の好ましい実施形態によれば、エフェクト顔料の層は、各々が吸収体層と誘電体層を含み、反射体層を含まない、層の2つのスタックに並べられる。顔料は、また面外磁化を有する少なくとも1つの磁性体層からなる磁性素子を含む。前記磁性素子はニッケル粒子及びアルミニウムを含む。アルミニウムの存在は、層の両スタック用の反射体層と同様に磁性素子が機能することを可能にする。したがって、本実施形態は、二重スタックエフェクト顔料の構造の二層の節約を可能にする。
【0031】
[0031]面外磁化を有する請求されるエフェクト顔料は、最新式の公知の面内磁化を有するエフェクト顔料とは対照的に、垂直方向の容易軸を有する2つの一軸磁気異方性(異なる物理的な起源の)の組み合わせが、容易軸がより強いものの方向に当たり、その大きさはそれらの間の差異である、単一の一軸異方性を生み出すという物理学の一般的な原理に基づく、この効果は、磁性素子が薄層である場合に特に重要である。請求される顔料は、Kuに対して垂直な方向にそれより弱い形状異方性Ksを生成する、適切な幾何学的形状が与えられる、異方性定数Kuを有する磁性体層で作られる。結果として生じる異方性は、有効な異方性Kef = Ku - Ksを有する。この現象は、とりわけ、GRAHAMらIntroduction to magnetic materials. New Jersey: Wiley, 2009. p.234-238に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】水平磁界を軸にする回転の異なる段階の面内磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図2】垂直磁界を軸にする回転の異なる段階の面内磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図3】水平磁界を軸にする回転の異なる段階の面外磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図4】垂直磁界を軸にする回転の異なる段階の面外磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図5】曲がった磁界の下の基材上の面内磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図6】半径方向の磁界の下の基材上の面外磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図7】曲がった磁界の下の基材上の面外磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図8】分極した磁界の下の基材上の面外磁化を有するエフェクト顔料を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態によるエフェクト顔料を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態によるエフェクト顔料を示す図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態によるエフェクト顔料を示す図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態によるエフェクト顔料を示す図である。
【実施形態の説明】
【0033】
[0044]
図9に関して、第1の好ましい実施形態によれば、磁性素子を有するエフェクト顔料は、層の第1(31)及び第2(32)のスタック並びに磁性体層(33)を含み、前記磁性体層(33)は、層の第1(31)及び第2(32)のスタックの中間に位置し、顔料の面に対する面外磁化を有する。
【0034】
[0045]層の第1のスタック(31)は、少なくとも1つの吸収体層(34a)、少なくとも1つの誘電体層(35a)及び少なくとも1つの反射体層(36a)を含む。層の第2のスタック(32)は、少なくとも1つの反射体層(36b)、少なくとも1つの誘電体層(35b)及び少なくとも1つの吸収体層(34b)を含む。層の第1のスタック(31)は、層の第2のスタック(32)とは異なる立体配置を有し、層(34a、34b、35a、35b、36a、36b)の少なくとも1つが、その相対物とは異なり、例えば、それは異なる材料からなるか、又は異なる厚さ若しくは異なる屈折率を持ち;又は、層の第1(31)及び第2(32)のスタックが異なる数の層を有し、どんな場合も二重光学的効果を生み出す。
【0035】
[0046]吸収体層(34a、34b)は、クロム、アルミニウム、ニッケル、銀、銅、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウム及びニオブ並びにそれらの対応する酸化物、硫化物及び炭化物を含む金属の吸収体から構成される。他の適切な吸収体材料は、炭素、黒鉛、ケイ素、ゲルマニウム、サーメット、酸化第二鉄又は他の金属酸化物、誘電体マトリックス中で混合された金属、及び可視スペクトルの選択的又は非選択的な吸収体として働くことができる他の物質を含む。当業者に公知の、上記の吸収体材料の様々な組み合わせ、混合物、化合物又は合金が、吸収体層を形成するために使用されてもよい。本実施形態において、吸収体層の厚さは2~40nmが好適であり、3~30nmがより好適であり、3.5~15nmがなおより好適であり、これらの範囲は、本明細書に記述されたすべての実施形態に適当である。
【0036】
[0047]誘電体層(35a、35b)は、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)、ダイヤモンド状炭素、酸化インジウム(In2O3)、インジウムスズ酸化物(ITO)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化セリウム(CeO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ユウロピウム(Eu2O3)、(II)二鉄(III)酸化物(Fe3O4)及び酸化第二鉄(Fe2O3)などの酸化鉄、窒化ハフニウム(HfN)、炭化ハフニウム(HfC)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ネオジム(Nd2O3)、酸化プラセオジム(Pr6O11)、酸化サマリウム(Sm2O3)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、一酸化ケイ素(SiO)、三酸化セレン(Se2O3)、酸化スズ(SnO2)、三酸化タングステン(WO3)、及びそれらの材料の組み合わせを含む高屈折率材料から構成される。また、前記誘電体層(35a、35b)は、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、金属フッ化物、例えばフッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化セリウム(CeF3)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化アルミニウムナトリウム(例えばNa3AlF6、Na5Al3F14)、フッ化ネオジム(NdF3)、フッ化サマリウム(SmF3)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)、その組み合わせ、又は約1.65以下の屈折率を有する任意の他の低屈折率材料を含む低率材料から構成することができる。例えば、有機モノマー及びポリマーは、ジエン又はアクリラート(例えばメタクリラート)、ペルフルオロアルケンなどのアルケン、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はその組み合わせを含む低率材料として利用することができる。誘電体層の厚さはエフェクト顔料色を決定し、約200~800nmである。
【0037】
[0048]反射体層(36a、36b、41)は、アルミニウム、銀、銅、金、白金、スズ、チタン、パラジウム、ニッケル、コバルト、ロジウム、ニオブ、クロム、イリジウム、及びその組み合わせ又は合金を含む様々な反射材料から構成することができる。適切な厚さは、10~2000nmが好適であり、20~1000nmがより好適であり、50~100nmがさらにより好適であり、これらの範囲は、記述された第1及び第2の実施形態について適切である。
【0038】
[0049]相対する層の材料又は厚さに関して記述された許容域内のすべての、材料の変動及び/又は厚さの変動;及び層のうちの1つの屈折率の変動、又はスタック(31、32)のうちの1つの層の数の変動が、非対称の層状構造を含意し、そのため、層の2つのスタック(31、32)によって生み出される光学的効果は異なることは当業者に明らかである。
【0039】
[0050]面外磁化を有する磁性体層(33)に関して、その組成はコバルト系であるが、それは、この鉱物結晶構造により、主として垂直の容易軸で薄層を作ることが非常に適切であるからである。磁気結晶異方性定数を増加させるために、コバルトは白金又はクロムと合金化している。CoPt及びCoCr単層及び多層構造を使用することができるが、単層構造が好ましい。前記合金の化学量論は、合金の比率が層の面外異方性を最適化するので、Co75Pt25及びCo90Cr10である。磁性体層(33)の厚さは、20~1000nmが好適であり、30~150nmがより好適であり、50~100nmがさらにより好適であり、これらの範囲は、第1及び第2の実施形態について適切である。
【0040】
[0051]第1の実施形態の変形において、エフェクト顔料は、少なくとも2つの誘電体層(35a、35b)に加えられる発光材料を含む。適切な発光材料は、国際公開第02/040599号(FLEX PRODUCTS INC.)23/05/2002に開示されている。発光材料の添加は、堆積に使用されるターゲットに誘電材料と一緒に発光材料を含むことによって、以下に記述されるのと同じ堆積方法によってなされる。さらなる変形において、発光材料は、層のスタック(31、32)の各々に加えられる発光層の形で組み込むことができる。これらの層に適している材料は前述の国際公開第02040599号に述べられているものと同じである。発光材料は、以下に言及される他の層に適用可能な同じ方法に従って加えられる。発光応答は可視スペクトル内にあってもよいが、そうでなくてもよい。後者の場合、応答は適切なセンサーを使用して検出されなければならない。本発明の重要な機能は、層のそれぞれのスタック(31、32)に組み込まれる発光材料が異なるということであり、そのために、顔料は、二重光学的効果を異なる発光応答の形でその面の各々に示す。
【0041】
[0052]
図10に関して、第2の好ましい実施形態によれば、磁性素子を有するエフェクト顔料は、層のスタック(37)及び磁性体層(38)を含み、前記磁性体層は垂直磁化を有する。層のスタック(37)は、吸収体層(39)、誘電体層(40)、及び反射体層(41)を含み、磁性体層(38)は反射体層(41)の隣に位置する。この第2の好ましい実施形態において、層のスタック(37)及び磁性体層(38)を構築する層の材料組成及び厚さは、第1の実施形態に記述されるものと同じである。
【0042】
[0053]
図11に関して、本発明の第3の好ましい実施形態によれば、磁性素子を有するエフェクト顔料は、上に記述されるのと同じ機能を有する、吸収体層(43)及び誘電体層(44)を含む層のスタック(42)を含む。層のスタック(42)は反射体層を含まない。磁性素子は、磁性ナノ粒子を含有するAl2O3からなる層(45)である。アルミニウム系組成物により、この素子は、また反射体層として働く。垂直異方性を達成するために、前記磁性体層(45)は埋め込まれたニッケル粒子を含む。近似のニッケル粒径は20nmである。磁性体層(45)の厚さは10~2000nmが好適であり、20~1000nmがより好適であり、50~150nmがより好適である。
【0043】
[0054]
図12に関して、本発明の第4の好ましい実施形態によると、磁性素子を含むエフェクト顔料は、層の第1のスタック(46)及び層の第2のスタック(47)を含み、その各々は吸収体層(48a、48b)及び誘電体層(49a、49b)を含み、上に記述されたものと同じ機能を有し、そのどちらも反射体層を含まない。磁性素子は磁性ナノ粒子を含むAl2O3からなる層(50)である。アルミニウム系組成物により、磁性素子は、また反射体層として働く。垂直異方性を達成するために、前記磁性体層(50)は埋め込まれたニッケル粒子を含む。近似のニッケル粒径は20nmである。磁性体層(50)の厚さは、10~2000nmが好適であり、20~1000nmがより好適であり、50~150nmがより好適である。
【0044】
[0055]記述された実施形態に一致する、請求される顔料は、物理気相蒸着法(PVD)の既知技法に従ってキャリア基板に連続層の材料堆積によって製作される。キャリアには、柔軟な織物、例えば剥離剤塗工ポリエチレンテレフタラート(PET)箔が好適である。蒸着は高真空塗工機でロールツーロール法として実行することができる。材料は、材料に特異的な適切な蒸発源、及び当業者に公知の方法、例えばスパッタリング、反応性スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、熱蒸着、電子ビーム及びレーザー光線支援の蒸発又はイオンビーム蒸発を使用して蒸発させられる。
【0045】
[0056]第1及び第2の実施形態に組み込まれるようなCoPt合金からなる磁性体層(33、38)は、電子ビーム同時蒸着、層のスタック(37)又はスタック(31、32)を製造するために使用することもできる技法によって得られる。磁性体層(33、38)の組成は、Ptの堆積速度が0.05nm/秒で保持されている間、Coの堆積速度の変更により制御される。槽のベース圧は、蒸発の前にはおよそ5x10-9トールであり、蒸発中には5x10-7トールより十分低くなければならない。この方法によれば、180℃~400℃の温度で保持されたAl2O3基材に堆積させられたCo75Pt25の層は、YAMADAらのMagnetic properties of electron beam evaporated CoPt alloy thin films. IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS. September 1997, vol.33, no.5, p.3622-3624に記載されているように1.5x107erg/cm3の強い垂直磁気異方性を示す。
【0046】
[0057]第1及び第2の実施形態に組み込まれるようなCoCr合金からなる磁性体層(33、38)は、両素子が、幾つかの電解クロムペレットがグリッドパターンで一定間隔に置かれたコバルトターゲットから、高周波スパッタリングによって同時堆積する方法によって得られる。層の組成はクロムペレットの表面積の変更により制御される。CoCrの合金ターゲットも高周波スパッタリングに使用することができる。高周波スパッタリングは、真空槽及び基板ホルダを約300℃で焼いた後にアルゴンガス雰囲気中で行われる。バックグラウンド圧力は2x10-7トールの下で維持した。層の厚さはスパッタ時間によって制御される。堆積速度は、主として高周波電力密度及びアルゴン圧によって影響を受ける。許容できる堆積速度は0.33ミクロン/時間であり、アルゴン圧は0.01トールであり、高周波電力密度は0.44ワット/cm2である。この方法はIWASAKIら、Co-Cr recording films with perpendicular magnetic anisotropy. IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS.September 1978, vol.MAG-14, no.5, p.849-851に記載されている。
【0047】
[0058]第3の実施形態に組み込まれるような反射体特性を有する磁性体層(45)は、以下のようにKRAUSらSynthesis and magnetic properties of Ni-Al2O3 thin films. J. appl. phys.1997, no.82, p.1189-1195において述べられているゾルーゲル技法によって得られる。ゾルーゲル層は、2-メトキシエタノール中のニッケル2-エチルヘキサノアート及びアルミニウムトリ-sec-ブトキシドから調製された溶液の化学量論量の混合により派生したNiAl2O4スピネル前駆体から堆積する。ニッケル溶液は、ニッケル2-エチルヘキサノアートを2-メトキシエタノールと1:5のモル比で混合することにより調製され、140℃で12時間還流し、遠心分離し、傾瀉して0.6M溶液を生成する。別のフラスコ中で、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドを1:10のモル比で2-メトキシエタノールに溶かし、140℃で30分間還流する。体積は140℃の温度及び200mmHgで蒸留によって減少する。その後、酢酸は7:1のモル比でアルミニウム前駆体に加える。透明になるまで、この溶液を120℃で撹拌し室温に冷やす。磁性体層(45)は、(100)Siウェーハ、(1102)Al2O3電子グレード基材、又は研磨融解石英プレートに3000rpmで0.4M NiAl2O4前駆体溶液をスピンキャストすることによって生成される。様々な厚さの層は、前駆体溶液の連続塗布及び乾燥によって形成される。堆積したままの膜は、空気中1200℃で5分間加熱することによりスピネルに変換される。形成されたら、スピネルは、Kidd Electronicsの高速熱アニール(RTA)を使用して、水素(低いpO2)中でNi+Al2O3に還元される。RTAは、99.99%の水素で3回パージされ、還元は、50℃/秒の加熱速度、5分間を使用して、200cc/分H2流中で、950℃で実行される。