(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】加飾シート及び加飾樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20221129BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221129BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20221129BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20221129BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B27/00 E
B29C45/14
B29C45/26
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2017066326
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2016069694
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】高山 健太
(72)【発明者】
【氏名】片岡 咲恵
(72)【発明者】
【氏名】名木 義幸
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】横山 大輔
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-091655(JP,A)
【文献】特開2010-082912(JP,A)
【文献】特開2015-114464(JP,A)
【文献】特開2004-050777(JP,A)
【文献】特開2012-051218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、透明樹脂フィルムと、接着層と、支持フィルムとをこの順に備える積層体であり、
前記透明樹脂フィルムは両面が平滑であり、
前記支持フィルムは、前記接着層側の表面が凹凸形状を有し、
前記接着層は、ポリオールとイソシアネート系硬化剤を用いた2液硬化型ウレタン樹脂により形成されており、
前記支持フィルムは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びアクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種により形成されており、
前記支持フィルムには、着色、塗装、又は模様の形成がされており、
前記支持フィルムの
前記凹凸形状の凸部の平坦部分における前記接着層の厚みが、5μm以上である、加飾シート。
【請求項2】
前記支持フィルムと前記接着層との間に、着色層を備えており、
前記着色層の前記接着層側の表面が凹凸形状を有する、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記支持フィルムは、凹部の深さが5~100μmである前記凹凸形状を有している、請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記接着層が、前記支持フィルムの前記凹凸形状の凹部を埋めている,請求項1~3のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項5】
前記接着層の前記支持フィルム側に保護層を備えている、請求項1~4のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項6】
少なくとも、透明樹脂フィルムと、接着層と、支持フィルムとをこの順に備える積層体から構成された加飾シートの製造方法であって、
前記支持フィルムは、前記接着層側の表面が凹凸形状を有し、
前記接着層は、ポリオールとイソシアネート系硬化剤を用いた2液硬化型ウレタン樹脂により形成されており、
前記支持フィルムは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びアクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種により形成されており、
前記支持フィルムには、着色、塗装、又は模様の形成がされており、
前記支持フィルムの
凹凸形状の凸部の平坦部分における前記接着層の厚みが、5μm以上であり、
前記支持フィルムの一方側の表面に凹凸形状を形成する工程と、
前記支持フィルムの凹凸形状側に前記接着層を形成する工程と、
前記接着層の上から前記透明樹脂フィルムを積層する工程と、
を備える、加飾シートの製造方法。
【請求項7】
前記接着層を形成する工程において、前記支持フィルムの凹凸形状側に接着剤を塗布して、前記接着層を形成する、請求項6に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項8】
少なくとも、射出樹脂層と、支持フィルムと、接着層と、透明樹脂フィルムとをこの順に備えており、
前記樹脂フィルムは両面が平滑であり、
前記支持フィルムは、前記接着層側の表面が凹凸形状を有し、
前記接着層は、ポリオールとイソシアネート系硬化剤を用いた2液硬化型ウレタン樹脂により形成されており、
前記支持フィルムは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びアクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種により形成されており、
前記支持フィルムには、着色、塗装、又は模様の形成がされており、
前記支持フィルムの前記
凹凸形状の凸部の平坦部分における前記接着層の厚みが、5μm以上である、加飾樹脂成形品。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の加飾シートを、真空成形型により真空成形して成形シートを得る工程と、
前記成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、前記支持フィルム側から流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に前記成形シートを一体化させる工程と、
を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート及びこれを用いた加飾樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内外装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させた加飾樹脂成形品が使用されている。このような加飾樹脂成形品の製造においては、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられている。かかる成形法の代表的な例としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、当該加飾シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出することにより樹脂と加飾シートとを一体化するインサート成形法等が挙げられる。
【0003】
このようなインサート成形法等に用いられる加飾シートにおいては、射出成形において射出される樹脂と直接接触する最裏面に、支持フィルムが設けられることがある。支持フィルムは、加飾シートに剛性を付与して形状を保持する機能を発揮する。
【0004】
また、このような加飾シートの裏面や内部に凹凸形状を設けることで、表面は平滑でありながら視覚的立体感を有する加飾樹脂成形品を製造する技術が知られている。このような目的で使用される加飾シートとしては、例えば、透明基材フィルムと着色層とを有し、該着色層の側から該透明基材フィルムの側にエンボスを設けたものが知られている(特許文献1)。このような構成の加飾シートでは、シートの裏面に凹凸形状が露出しており、当該凹凸面に射出樹脂が直接積層されるため、射出成型時の熱圧によって凹凸形状が消失しやすいという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1においては、当該凹凸面上にさらに支持フィルムを積層することで凹凸面を埋め、加飾シートの裏面を平坦にした構成も提案されている。しかしながら、このような構成の加飾シートの場合は、支持フィルムと凹凸形状の凹部(加飾シートの表側に凸の部分)の間に空隙が発生しやすい。そして、このような空隙が、真空成形や射出成形の際に膨張し、当該膨張によって透明基材フィルムが表面側に突出して、加飾シートの表面平滑性が損なわれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、表面は平滑でありながら視覚的な立体感を樹脂成形品に対して好適に付与することができる加飾シートを提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品、及びその製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、透明樹脂フィルムと、接着層と、支持フィルムとをこの順に備える積層体であり、透明樹脂フィルムの両面が平滑であり、さらに、支持フィルムの接着層側の表面が凹凸形状を有する加飾シートは、表面は平滑でありながら視覚的な立体感を樹脂成形品に対して好適に付与することができることを見出した。
【0009】
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、透明樹脂フィルムと、接着層と、支持フィルムとをこの順に備える積層体であり、
前記透明樹脂フィルムは両面が平滑であり、
前記支持フィルムは、前記接着層側の表面が凹凸形状を有する、加飾シート。
項2. 前記支持フィルムと前記接着層との間に、着色層を備えており、
前記着色層の前記接着層側の表面が凹凸形状を有する、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記支持フィルムは、凹部の深さが5~100μmである前記凹凸形状を有している、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記支持フィルムの平坦部分における前記接着層の厚みが、5μm以上である、項1~3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記接着層が、前記支持フィルムの前記凹凸形状の凹部を埋めている,項1~4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 前記接着層の前記支持フィルム側に保護層を備えている、項1~5のいずれかに記載の加飾シート。
項7. 少なくとも、透明樹脂フィルムと、接着層と、支持フィルムとをこの順に備える積層体から構成された加飾シートの製造方法であって、
前記支持フィルムの一方側の表面に凹凸形状を形成する工程と、
前記支持フィルムの凹凸形状側に前記接着層を形成する工程と、
前記接着層の上から前記透明樹脂フィルムを積層する工程と、
を備える、加飾シートの製造方法。
項8. 前記接着層を形成する工程において、前記支持フィルムの凹凸形状側に接着剤を塗布して、前記接着層を形成する、項7に記載の加飾シートの製造方法。
項9. 前記接着層を形成する工程において、前記支持フィルムの凹凸形状側に溶融樹脂を塗布して、前記接着層を形成する、項7に記載の加飾シートの製造方法。
項10. 少なくとも、射出樹脂層と、支持フィルムと、接着層と、透明樹脂フィルムとをこの順に備えており、
前記樹脂フィルムは両面が平滑であり、
前記支持フィルムは、前記接着層側の表面が凹凸形状を有する、加飾樹脂成形品。
項11. 項1~6のいずれかに記載の加飾シートを、真空成形型により真空成形して成形シートを得る工程と、
前記成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、前記支持フィルム側から流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に前記成形シートを一体化させる工程と、
を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面は平滑でありながら視覚的な立体感を樹脂成形品に対して好適に付与することができる加飾シートを提供することができる。さらに、本発明によれば、当該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品、及びその製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。
【
図2】本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。
【
図3】本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。
【
図4】本発明の加飾シートの一例の略図的断面図である。
【
図5】本発明の加飾シートを用いて製造される加飾樹脂成形品の一例の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも、透明樹脂フィルムと、接着層と、支持フィルムとをこの順に備える積層体であり、透明樹脂フィルムの両面が平滑であり、さらに、支持フィルムの接着層側の表面が凹凸形状を有することを特徴とする。本発明の加飾シートは、このような構成を備えていることにより、表面は平滑でありながら視覚的な立体感を樹脂成形品に対して好適に付与することができる。すなわち、本発明の加飾シートにおいては、表面側に位置する透明樹脂フィルムの両面は平滑である一方、裏面側(射出樹脂層側)に位置する支持フィルムの表面に凹凸形状が形成されており、さらに、支持フィルムの凹凸形状が形成された面に接着層が形成されているため、支持フィルムの凹凸形状の凹部が接着層や着色層などによって埋められやすく、当該凹部には空隙が発生し難い。このため、インサート成形法などの真空成形や射出成形の際に空隙が膨張して、加飾シートの表面平滑性が損なわれることが、好適に抑制されつつ、視覚的な立体感が発揮される。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
【0014】
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、例えば、
図1~
図4に示されるように、透明樹脂フィルム3と、接着層2と、支持フィルム1とがこの順に積層された積層構造を有する。また、例えば
図2に示されるように、本発明の加飾シートにおいては、本発明の加飾シートを用いて製造される加飾樹脂成形品に装飾性を付与することなどを目的として、支持フィルム1と接着層2との間に、必要に応じて着色層4を備えてもよい。なお、後述の通り、本発明の加飾シートが着色層4を有する場合、着色層4の接着層2側の表面が凹凸形状を有している。当該凹凸形状は、着色層4が、支持フィルム1の凹凸形状を有する表面上に形成されていることによって形成されている。すなわち、着色層4の凹凸形状と、支持フィルム1の凹凸形状とは、対応した形状を有している。本発明の加飾シートには、加飾シートまたは加飾樹脂成形品に付与する機能に応じて、その他の層を1層以上積層してもよい。
【0015】
また、
図4に示されるように、接着層2の支持フィルム側1には、保護層5を備えていてもよい。例えば、接着層2を溶融樹脂の塗布により形成する場合には、保護層5の上に溶融樹脂を塗布することにより、前述の凹凸形状が溶融樹脂の熱によって平坦化することを抑制することができる。また、保護層5の支持フィルム側1には、保護層5の密着性を向上させることなどを目的として、プライマー層6を備えていてもよい。
【0016】
本発明の加飾シートの積層構造として、透明樹脂フィルム/接着層/支持フィルムが積層された積層構造;透明樹脂フィルム/接着層/着色層/支持フィルムが積層された積層構造;透明樹脂フィルム/接着層/保護層/着色層/支持フィルムが積層された積層構造;透明樹脂フィルム/接着層/保護層/プライマー層/着色層/支持フィルムが積層された積層構造などが挙げられる。
図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、透明樹脂フィルム/接着層/支持フィルムがこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
図2及び
図3に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、透明樹脂フィルム/接着層/着色層/支持フィルムがこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
図4に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、透明樹脂フィルム/接着層/保護層/プライマー層/着色層/支持フィルムがこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
【0017】
加飾シートを形成する各層の組成と構成
[支持フィルム1]
支持フィルム1は、加飾シートに剛性を付与して形状を保持し、インサート成形法などによる真空成形などに適した加飾シートとするために設けられる層である。さらに、本発明においては、支持フィルム1が、後述の接着層2側の表面が凹凸形状を有することにより、表面は平滑でありながら視覚的な立体感を樹脂成形品に対して好適に付与するために設けられる。
【0018】
支持フィルム1は、インサート成形法などに適したものとしつつ、凹凸形状による視覚的な立体感を好適に発揮する観点から、熱可塑性樹脂により形成されていることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂;アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。支持フィルム1は、後述の射出樹脂層7と同じ樹脂により形成されていることが好ましく、例えば射出樹脂層7がABS樹脂により形成されている場合には、支持フィルム1もABS樹脂により形成されていることが好ましく、射出樹脂層7がポリプロピレンにより形成されている場合には、支持フィルム1もポリプロピレンにより形成されていることが好ましい。支持フィルム1を形成している樹脂は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0019】
支持フィルム1の厚みとしては、特に制限されないが、インサート成形法などに適したものとしつつ、凹凸形状による視覚的な立体感を好適に発揮する観点から、好ましくは100μm~500μm程度、より好ましくは200μm~400μm程度が挙げられる。
【0020】
支持フィルム1は、隣接する層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。支持フィルム1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、支持フィルム1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、支持フィルム1を構成する樹脂の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
【0021】
また、支持フィルム1には、着色剤などを配合した着色、色彩を整えるための塗装、デザイン性を付与するための模様の形成などがなされていてもよい。
【0022】
支持フィルム1は、接着層2側の表面が凹凸形状を有している。支持フィルム1が当該凹凸形状を有していることにより、本発明の加飾シートにおいては、透明樹脂フィルム3の両面が平滑であっても、加飾樹脂成形品に対して、凹凸形状による視覚的な立体感を好適に付与することができる。すなわち、前述の通り、支持フィルム1が接着層2側の表面に凹凸形状を有しているため、当該凹凸形状の凹部が、接着層2や、着色層4、保護層5、プライマー層6などによって埋められやすく(例えば、
図2~
図4を参照)、当該凹部には空隙が発生し難い。このため、インサート成形法などの真空成形や射出成形の際に空隙が膨張して、加飾シートの表面平滑性が損なわれることが好適に抑制され、結果として、表面が平滑でありながら、凹凸形状による視覚的な立体感を好適に発揮することができる。
【0023】
凹凸形状による視覚的な立体感を好適に付与する観点からは、
図1に示されるように、支持フィルム1は、凹部の深さdが5μm~100μmである凹凸形状を有していることが好ましい。すなわち、支持フィルム1に形成された凹凸形状の少なくとも一部は、凹部の深さdが5μm~100μmであることが好ましい。凹部の深さdとしては、より好ましくは8μm~60μmが挙げられる。なお、凹部の深さは、例えば、顕微鏡による断面観察により測定することができる。
【0024】
当該凹部は、
図1~3に示されるように、後述の接着層2によって埋められていることが好ましい。これにより、凹部に前述の空隙が形成されることが好適に抑制され、加飾シートの表面平滑性が損なわれることがより一層効果的に抑制される。なお、後述の通り、当該凹部は、後述の着色層4、保護層5、プライマー層6などによって少なくとも一部が埋められていてもよい。なお、着色層4の接着層2側の表面には、凹凸形状が形成されているため、着色層4の当該凹凸形状の凹部は、後述の接着層2によって埋められていることが好ましい。また、保護層5を有する場合にも、保護層5の接着層2側の表面には、凹凸形状が形成されているため、保護層5の当該凹凸形状の凹部は、後述の接着層2によって埋められていることが好ましい。なお、保護層5やプライマー層6を有する場合、着色層4の凹凸形状の凹部は、保護層5やプライマー層6によっても埋められている(
図4を参照)。
【0025】
支持フィルム1の当該凹凸形状は、例えば、支持フィルム1の表面にエンボス加工を施すことにより、好適に形成することができる。エンボス加工は、公知の方法であり、表面を加熱軟化させた支持フィルム1をエンボス版で加圧して、エンボス版に形成された凹凸模様を支持フィルム1の表面に賦形し、冷却し、固定化する方法である。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。
【0026】
本発明の加飾シートにおいて、着色層4を設ける場合には、エンボス加工などによって、支持フィルム1の表面に凹凸形状を設けてから、印刷法などにより着色層4を形成してもよいし、平坦な支持フィルム1の表面に着色層4を形成し、着色層4の上からエンボス加工を行い、支持フィルム1及び着色層4に凹凸形状を設けてもよい。いずれの場合にも、接着層2側の表面が凹凸形状を有する着色層を設けることができる。なお、着色層4を設ける場合、
図2に示す態様のように、支持フィルム1の凹部の底部に接着層2が到達せずに着色層4が存在していてもよいし、
図3に示す態様のように、凹部の底部に接着層2が到達していてもよい。支持フィルム1にエンボス加工によって凹凸形状を付与する場合に、着色層4の上からエンボス加工を行うことにより、
図3に示す態様のような加飾シートを得ることができる。これらの点は、保護層5やプライマー層6を設ける場合についても、同様である。
【0027】
[接着層2]
接着層2は、支持フィルム1と透明樹脂フィルム3との間に配置され、これらの層を接着するために設けられる。さらに、本発明においては、支持フィルム1の凹凸形状の上に接着層2が設けられているため、当該凹凸形状の凹部が接着層2によって好適に埋められ、当該凹部に前述の空隙が生じることを効果的に抑制することができる。前述の通り、本発明の加飾シートに着色層4、保護層5、プライマー層6などがを設ける場合には、これらの層の凹凸形状の上に接着層2が設けられ、当該凹凸形状の凹部が接着層2によって好適に埋められる。
【0028】
図1に示されるように、本発明においては、支持フィルム1の凹凸形状の個々の凹部の全てが、それぞれ、接着層2によって埋められていることが好ましい。また、
図2~
図4に示されるように、着色層4、保護層5、プライマー層6などを有する場合には、支持フィルム1の凹凸形状の個々の凹部の一部が、それぞれ、接着層4によって埋められており、着色層4、保護層5、プライマー層6などの凹凸形状の個々の凹部の全てが、それぞれ、接着層2によって埋められていることが好ましい。
【0029】
接着層2を構成する素材としては、特に制限されないが、好ましくは熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレンや塩素化したポリオレフィン、α-メチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン-4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でもよいし、それぞれの樹脂を混合して用いてもよい。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、ポリオールとイソシアネート系硬化剤を用いた2液硬化型ウレタン樹脂等が挙げられる。上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0032】
接着層2を構成する素材としては、支持フィルム1と透明樹脂フィルム3の接着性を高めると共に、凹凸形状による意匠性を真空成形後においても良好とする観点から、ポリオールとイソシアネート系硬化剤を用いた2液硬化型ウレタン樹脂が好ましく、上記ポリオールとしてポリエステルポリオールを用いることが特に好ましい。また、溶融状態での流動性に優れる観点から、ポリエチレンを用いることも特に好ましい。
【0033】
接着層2は、接着剤を構成する樹脂をグラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により塗布することにより形成することができる。また、接着層2は、溶融状態の樹脂を押し出しなどで塗布することにより形成することもできる。接着剤は、主に溶剤によって粘度の調整を行うのに対して、溶融状態の樹脂は、溶融温度によって粘度を好適に調整することができる。このため、本発明の加飾シートをインサート成形法などに適したものとしつつ、凹凸形状による視覚的な立体感を好適に発揮する観点から、接着層2は、溶融状態の樹脂(特に熱可塑性樹脂)を用いて形成されていることが好ましい。
【0034】
例えば、
図1に示されるように、支持フィルム1の平坦部分における接着層2の厚みwとしては、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm~15μm程度が挙げられる。
【0035】
[透明樹脂フィルム3]
透明樹脂フィルム3は、加飾シートの表面平滑性を担保しつつ、支持フィルム1の凹凸形状による視覚的な立体感を奏するために設けられる層である。
【0036】
透明樹脂フィルム3を構成する素材としては、特に制限されないが、インサート成形法などによって加飾シートを好適に成形する観点からは、好ましくは熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、好ましくは、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体)、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、成形性ポリエステル樹脂等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等)などが挙げられる。これらの中でも、透明性と成形性に優れる観点から、アクリル樹脂、成形性ポリエステル樹脂等が特に好ましい。
【0037】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体等が挙げられる。アクリル樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0038】
成形性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、非晶性ポリエステル等が挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントに高結晶性で高融点の芳香族ポリエステルを使用し、ソフトセグメントにはガラス転移温度が-70℃以下の非晶性ポリエーテル等を使用したブロックポリマー等がある。また、高結晶性で高融点の芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレートが使用され、非晶性ポリエーテルとしては、ポリテトラメチレングリコール等が使用される。また、前記非晶質ポリエステルとしては、代表的には、エチレングリコール-1,4-シクロヘキサンジメタノール-テレフタル酸共重合体がある。透明樹脂フィルム3は、1種類の熱可塑性樹脂により構成されていてもよいし、2種類以上の熱可塑性樹脂により構成されていてもよい。
【0039】
透明樹脂フィルム3は、単層であってもよいし、複数の層により構成されていてもよい。また、透明樹脂フィルム3には、必要に応じて、安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0040】
本発明の加飾シートにおいては、透明樹脂フィルム3の両面が平滑である。これにより、表面は平滑でありながら視覚的な立体感を樹脂成形品に対して好適に付与することが可能となる。なお、本発明において、透明樹脂フィルム3の両面が平滑とは、少なくとも、前述の支持フィルム1のような凹凸形状が透明樹脂フィルム3の両面に設けられていないことをいう。透明樹脂フィルム3の両面は、JISB0601:2001の算術平均粗さRaが、1μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。なお、当該算術平均粗さRaは、接触式表面粗さ計(例えば、東京精密製のハンディサーフE-35A)などを用いて測定することができる。
【0041】
透明樹脂フィルム3の厚みとしては、特に制限されないが、インサート成形法などによる加飾シートの優れた成形性を担保しつつ、支持フィルム1の凹凸形状による視覚的な立体感を奏する観点からは、好ましくは30μm~300μm程度、好ましくは100μm~200μm程度が挙げられる。なお、当該厚みは、透明樹脂フィルム3が複数の層により構成されている場合には、複数の層の総厚である。
【0042】
透明樹脂フィルム3の表面、裏面、又は表裏両面には、透明樹脂フィルム3に接する他層との密着性向上や、濡れ性の調整などの表面改質等を目的として、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理等が施されていてもよい。
【0043】
[着色層4]
着色層4は、加飾樹脂成形品に装飾性を付与することなどを目的として、支持フィルム1と接着層2の間などに、必要に応じて設けられる層である。着色層4は、例えば、着色層形成用のインキを、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の従来公知の印刷方法で支持フィルム層1に印刷することにより形成することができる。また、着色層4は剥離性を有する基材フィルム上に形成した後、転写によって支持フィルム1上に形成してもよい。
【0044】
着色層形成用のインキは、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなる。バインダーの樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等より選択される1種単独の樹脂、又は2種以上の混合樹脂が用いられる。
【0045】
上記着色層形成用の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に着色剤を添加したものであり、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、前述した透明樹脂フィルム3に使用される熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0046】
着色剤としては各種の色を呈する公知のものが使用できるが、カーボンブラック、鉄黒等の無機顔料が好ましく、着色層4中における着色剤の含有量としては、10質量%~50質量%が好ましい。着色層4を、黒色又は略黒色とすることで他色にはないカーボン調の特異な立体的深み感を有する意匠とすることができる。
【0047】
支持フィルム1の平坦部分における着色層4の厚さとしては、特に制限されないが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm~10μm程度が挙げられる。
【0048】
また、着色層4は、金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は、特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。この場合の着色層4(金属薄膜層)の厚みとしては、特に限定されないが、加飾シートの意匠性や成形性を高める観点からは、光学濃度(OD値)が0.6~1.8程度、好ましくは0.8~1.5程度が挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。なお、本発明において、着色層4の厚みとは、凹凸形状の凹部が形成されていない部分における厚みをいう。
【0049】
[保護層5]
保護層5は、支持フィルム1に形成された前述の凹凸形状の平坦化の抑制などを目的として、必要に応じて設けられる層であり、特に、溶融樹脂を用いて接着層2を形成する場合に好適に設けられる。保護層5は、樹脂により形成することができる。
【0050】
保護層5を構成する樹脂としては、特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が使用できるが、耐熱性に優れることから熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、電離放射線硬化性樹脂としては、特に制限されないが、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜混合したものが挙げられ、成形性に優れる観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートが好ましい。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、好ましくは、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。
【0052】
また、保護層5を構成する樹脂としては、これらの電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物も挙げられる。
【0053】
支持フィルム1の平坦部分における保護層5の厚さとしては、特に制限されないが、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm~20μm程度が挙げられる。
【0054】
保護層5は、保護層5を形成する樹脂を用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の従来公知の印刷方法で形成される。また、保護層5を電離放射線硬化性樹脂で構成する場合には、上記の印刷方法によって電離放射線硬化性樹脂を含む組成物からなる塗膜を形成後、紫外線、電子線、X線等の電離放射線を照射して塗膜を硬化することにより保護層5を形成できる。
【0055】
[プライマー層6]
プライマー層6は、保護層5とその下に位置する層(例えば着色層4、支持フィルム1)との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて含まれる層である。プライマー層6は、樹脂により形成することができる。
【0056】
プライマー層6を形成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
上記ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。
【0058】
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋材としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
【0059】
支持フィルム1の平坦部分におけるプライマー層6の厚さとしては、特に制限されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは1μm~3μm程度が挙げられる。
【0060】
プライマー層6は、プライマー層6を形成する樹脂を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
【0061】
本発明の加飾シートは、例えば、次の工程を備える方法により好適に製造することができる。
支持フィルム1の一方側の表面に凹凸形状を形成する工程
支持フィルム1の凹凸形状側に接着層2を形成する工程
接着層2の上から透明樹脂フィルム3を積層する工程
【0062】
接着層2を接着剤により形成する場合、接着層2を形成する工程において、支持フィルム1の凹凸形状側に接着剤を塗布して、接着層2を形成することができる。また、接着層2を溶融樹脂により形成する場合、接着層2を形成する工程において、支持フィルム1の凹凸形状側に溶融樹脂を塗布して、接着層2を形成することができる。
【0063】
本発明の加飾シートの製造方法において、必要に応じて、前述の着色層4、保護層5、プライマー層6を設けてもよい。これらの層を設ける方法については、前述の通りである。
【0064】
2.加飾樹脂成形品
本発明においては、前述の本発明の加飾シートを用いて、好適に加飾樹脂成形品を製造することができる。具体的には、加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに射出樹脂7(成形樹脂)を一体化させることにより成形されてなるものである。すなわち、
図5に示されるように、本発明の加飾樹脂成形品は、射出樹脂層7と、支持フィルム1と、接着層2と、透明樹脂フィルムとをこの順に備えており、樹脂フィルムは両面が平滑であり、支持フィルム1は、接着層2側の表面が凹凸形状を有する。本発明の加飾樹脂成形品は、必要応じて、前述の着色層4などを有している。
【0065】
加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートを用いて、例えば、インサート成形法等の射出成形法により作製される。本発明の加飾シートでは、これらの成形法における射出成形時において、加飾シートと射出成形型との間に、射出樹脂が流れ込む問題が発生し難い。よって、本発明の加飾シートをインサート成形法に適用して、加飾樹脂成形品を製造することが好ましい。
【0066】
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、支持フィルム1側から流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に成形シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0067】
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、支持フィルム1側から流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
【0068】
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、通常120℃~200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180℃~320℃程度とすることができる。
【0069】
本発明の加飾樹脂成形品において、射出樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。射出樹脂層を形成する成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
【0070】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。本発明の加飾シートの支持フィルム1との密着性に優れることから、これらの中でも、ABS樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
本発明の加飾樹脂成形品は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0074】
<実施例1>
支持フィルムとしての着色ABSフィルム(厚み400μm)の片面に、グラビア印刷によって着色層(厚み1μm、黒ベタ)を形成した。次に、着色層4の上から、エンボス版を用いて凹凸模様(深さ50μm、碁盤目状のカーボン柄)を賦形した。次に、凹凸面に、ポリエステルポリオール及びイソシアネート系硬化剤からなる接着剤を塗工及び乾燥して接着層(支持フィルムの平坦部分における厚みが10μm)を形成した。さらに、接着層の上から、透明樹脂フィルムとしての両面が平滑な透明アクリルフィルム(厚み125μm)を積層して、加飾シートを得た。
【0075】
<実施例2>
厚み25μmのPETフィルムの上に、グラビア印刷によりアクリル-ウレタン共重合体を塗工してプライマー層(厚み1μm)を形成した。次に、プライマー層の上に、グラビア印刷によって着色層(厚み1μm、黒ベタ)を形成して積層体を得た。次に、支持フィルムとしての着色ABSフィルム(厚み400μm)の片面に、得られた積層体の着色層側を転写し、PETフィルムをプライマー層から剥離することにより、プライマー層/着色層/支持フィルムが積層された積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのプライマー層の上から、エンボス版を用いて凹凸模様(深さ50μm、碁盤目状のカーボン柄)を賦形した。次に、ポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレートを主成分とする樹脂組成物をグラビア印刷により凹凸面に塗工し、さらに電子線を照射して硬化させて、保護層(支持フィルムの平坦部分における厚みが10μm)を形成した。さらに、保護層の上の凹凸面に、溶融したポリエチレン(310℃)を凹凸面に押し出して、接着層(支持フィルムの平坦部分における厚みが50μm)を形成し、さらに、接着層の上から透明樹脂フィルムとしての両面が平滑な透明アクリルフィルム(厚み125μm)を積層して、加飾シートを得た。
【0076】
<比較例1>
透明樹脂フィルムとしての両面が平滑な透明アクリルフィルム(厚み125μm)の片面に、グラビア印刷によって着色層(厚み1μm、黒ベタ)を形成した。次に、着色層の上から、エンボス版を用いて凹凸模様(深さ50μm、碁盤目状のカーボン柄)を形成した。次に、着色層の上に、着色ABSフィルム(厚み400μm)を熱ラミネートによって積層することで加飾シートを得た。
【0077】
<平滑性評価>
上記で得られた各加飾シートを、それぞれ、180℃に加熱し、延伸倍率が100~300%となる部分を有する真空成形型を用いて真空成形(予備成形)を行った。成形後の加飾シート及び成形前の加飾シートの透明樹脂フィルム側の表面について、手触りによる凹凸感を評価した。また、加飾シートの透明樹脂フィルム側の表面を様々な角度(加飾シートの真上方向を90°とし、水平方向を0°とした)から観察し、意匠性を評価した。評価基準は、以下の通りである。評価結果を表1に示す。
A:手触りで凹凸は感じられず、目視による観察で全ての角度で透明アクリルフィルムの表面が平坦に感じられた。
B:手触りでは凹凸が感じられないが、目視による観察で透明アクリルフィルムの表面に凹凸がある意匠に感じられた。
C:手触りで凹凸が感じられ、目視による観察でも透明アクリルフィルムの表面に凹凸がある意匠に感じられた。
D:手触りで凹凸が明確に感じられ、目視による観察でも透明アクリルフィルムの表面に凹凸がある意匠に感じられた。
【0078】
<意匠性評価>
上記の平滑性評価において成形した各加飾シートの透明樹脂フィルム側の表面を様々な角度(加飾シートの真上方向を90°とし、水平方向を0°とした)から観察し、以下の基準により意匠性を評価した。評価結果を表1に示す。
A:全ての角度でカーボン柄の立体的な意匠を感じられ、エンボス版の形状が備えるシャープな形状の意匠が感じられた。
B:全ての角度でカーボン柄の立体的な意匠を感じられたが、エンボス版の形状が備える意匠と比較すると、僅かにシャープさが劣っていた。
C:90°の方向から観察した場合には、カーボン柄の立体感は僅かに低かったが、45°及び60°の方向から観察した場合には、奥行きのある意匠が感じられた。
D:全ての角度でカーボン柄の平坦な意匠が感じられ、立体的な意匠感は全く感じられなかった。
【0079】
【符号の説明】
【0080】
1…支持フィルム
2…接着層
3…透明樹脂フィルム
4…着色層
5…保護層
6…プライマー層
7…射出樹脂層