(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6461 20110101AFI20221129BHJP
H01R 12/72 20110101ALI20221129BHJP
【FI】
H01R13/6461
H01R12/72
(21)【出願番号】P 2018031841
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田篭 創
(72)【発明者】
【氏名】栗林 宏明
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0006182(US,A1)
【文献】特開2010-287560(JP,A)
【文献】特開平11-204204(JP,A)
【文献】特開2014-041797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
13/56-13/72
24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の部品搭載面に配される絶縁ハウジングと、
各々が相手方コネクタ装置のシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び上記回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子部に接続される接続端部を有した複数の第1のシグナルコンタクトと各々が相手方コネクタ装置のグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び上記回路基板の部品搭載面に設けられたグラタウンド端子部に接続される接続端部を有した複数の第1のグラウンドコンタクトとが、上記回路基板の部品搭載面に沿うことになる方向に配列されて上記絶縁ハウジングにより支持されて成る第1のコンタクト列と、
各々が相手方コネクタ装置のシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び上記回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子部に接続される接続端部を有した複数の第2のシグナルコンタクトと各々が相手方コネクタ装置のグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び上記回路基板の部品搭載面に設けられたグラタウンド端子部に接続される接続端部を有した複数の第2のグラウンドコンタクトとが、上記回路基板の部品搭載面に沿うことになる方向に配列されて上記絶縁ハウジングにより支持されて成る第2のコンタクト列と、
上記絶縁ハウジングの外面部に装着されて接地電位が与えられる導電性シェルと、
を備えて構成され、
上記第1のコンタクト列に含まれる上記複数の第1のシグナルコンタクト及び上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々の上記接触端部が成す第1の接触端部列と上記第2のコンタクト列に含まれる上記複数の第2のシグナルコンタクト及び上記複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々の上記接触端部が成す第2の接触端部列とが、上記第2の接触端部列が上記回路基板の部品搭載面と上記第1の接触端部列との間に位置する並行列として配されて、上記第1のコンタクト列に含まれる上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における上記接触端部と上記接続端部との間に位置する部分の長さが、上記第2のコンタクト列に含まれる上記複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における上記接触端部と上記接続端部との間に位置する部分の長さよりその二倍を越えない範囲で大に選定されたもとで、上記複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々は、上記接触端部と上記接続端部との間において上記
接地電位が与えられた部分に接続されず、上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における上記接触端部と上記接続端部との間の中間部が上記導電性シェルに接続されたことを特徴とするコネクタ装置。
【請求項2】
上記第1のコンタクト列に含まれる上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における上記接触端部と上記接続端部との間に位置する部分の長さが、上記第2のコンタクト列に含まれる上記複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における上記接触端部と上記接続端部との間に位置する部分の長さよりその二倍を越えない範囲で大となるように選定されたもとで、上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における上記接触端部と上記中間部との間に位置する部分の長さと、上記中間部と上記接続端部との間に位置する部分の長さのいずれもが、上記複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における上記接触端部と上記接続端部との間に位置する部分の長さ以下とされることを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。
【請求項3】
上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々が、該第1のグラウンドコンタクトにおける上記接触端部と上記中間部との間に位置する部分の長さと、上記中間部と上記接続端部との間に位置する部分の長さとが実質的に等しいものとされることを特徴とする請求項2記載のコネクタ装置。
【請求項4】
上記第1のコンタクト列を成す上記複数の第1のシグナルコンタクト及び上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々が、上記接触端部と上記接続端部との間の部分を部分的に上記絶縁ハウジングから該絶縁ハウジングの外部に露出させて成る露出部分を有するものとされ、該露出部分が上記導電性シェルにおける覆い部分によって覆われるものとされることを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。
【請求項5】
上記導電性シェルにおける覆い部分が、上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における上記中間部に当接する接点部が形成されたものとされることを特徴とする請求項4記載のコネクタ装置。
【請求項6】
上記第1のコンタクト列に含まれる上記複数の第1のシグナルコンタクト及び上記複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々の上記露出部分を覆う絶縁カバー部材を備え、該絶縁カバー部材が、上記導電性シェルにおける覆い部分に形成された上記接点部を通す透孔が形成されたもとで、上記導電性シェルにおける覆い部分によって覆われるものとされることを特徴とする請求項5記載のコネクタ装置。
【請求項7】
上記導電性シェルが、上記絶縁ハウジングの外面部を覆う第1のシェル部材と該第1のシェル部材とは別体に形成されて上記第1のシェル部材との電気的接続がなされる第2のシェル部材とを含んで構成され、上記第2のシェル部材が、上記導電性シェルにおける覆い部分を成すことを特徴とする請求項4記載のコネクタ装置。
【請求項8】
上記絶縁ハウジングが、上記相手方コネクタ装置における上記シグナルコンタクト及び上記グラウンドコンタクトを支持した絶縁ハウジングが嵌合連結される嵌合口部を有するものとされることを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の特許請求の範囲に記載された発明は、回路基板に取り付けられたもとで複数の同軸ケーブル等の信号伝送部材が接続された相手方コネクタ装置が嵌合連結されるものとされて、信号伝送部材の回路基板との電気的接続に用いられるコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の比較的細い同軸ケーブル等の高周波信号伝送部材を、各種の電気部品が搭載される回路基板に電気的に接続するにあたっては、回路基板の部品搭載面に取り付けられて当該回路基板との電気的接続がなされる基板側コネクタ装置と、高周波信号伝送部材が接続されて基板側コネクタ装置との嵌合連結状態におかれる信号伝送部材側コネクタ装置と、が用いられることが多い。基板側コネクタ装置からみると、信号伝送部材側コネクタ装置は基板側コネクタ装置にとっての相手方コネクタ装置となる。
【0003】
斯かる場合、基板側コネクタ装置は、例えば、相手方コネクタ装置の嵌合部が差し込まれる嵌合口部が設けられて回路基板の部品搭載面に配される絶縁ハウジングを備えており、その絶縁ハウジングに複数のシグナルコンタクト及び複数のグラウンドコンタクトが配列配置されて設けられている。そして、複数のシグナルコンタクトの夫々が、絶縁ハウジングの外部に突出して回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子に、例えば、半田付けによって接続される接続端部と、嵌合口部に差し込まれた相手方コネクタ装置の嵌合部におけるシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部とを有したものとされ、また、複数のグラウンドコンタクトの夫々が、絶縁ハウジングの外部に突出して回路基板の部品搭載面に設けられたグラウンド端子に、例えば、半田付けによって接続される接続端部と、嵌合口部に差し込まれた相手方コネクタ装置の嵌合部におけるグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部とを有したものとされる。さらに、基板側コネクタ装置は、外部への不要な電波放射及び外部からの不要な電波干渉を低減させるべく、例えば、金属板材製とされて絶縁ハウジングの外面部に装着されて、回路基板における接地電位部に接続される導電性シェルを備えたものとされる。
【0004】
また、基板側コネクタ装置の絶縁ハウジングにおける嵌合口部に差し込まれる嵌合部に複数のシグナルコンタクトの端部及び複数のグラウンドコンタクトの端部が配されるものとされた相手方コネクタ装置も、例えば、高周波信号伝送部材として複数の同軸ケーブルが、それらの各々がシグナルコンタクト及びグラウンドコンタクトに接続される状態をもって装着されたもとで、外部への不要な電波放射及び外部からの不要な電波干渉を低減させるべく、金属板材製とされた導電性シェルを備えたものとされる。そして、基板側コネクタ装置の絶縁ハウジングにおける嵌合口部に相手方コネクタ装置の絶縁ハウジングにおける嵌合部が差し込まれたときには、相手方コネクタ装置の嵌合部に配された複数のシグナルコンタクトの端部及び複数のグラウンドコンタクトの端部が、基板側コネクタ装置の複数のシグナルコンタクトの接触端部及び複数のグラウンドコンタクトの接触端部に夫々接触接続されるものとされ、また、相手方コネクタ装置の導電性シェルと基板側コネクタ装置の導電性シェルとが相互接触接続状態におかれる。
【0005】
上述のような基板側コネクタ装置においては、複数のシグナルコンタクト及び複数のグラウンドコンタクトが、絶縁ハウジングが回路基板の部品搭載面に配されたとき当該回路基板の部品搭載面に沿うことになる方向(以下、斯かる方向を回路基板面方向という。)に配列されて、絶縁ハウジングにより支持されたものされる。そして、複数のシグナルコンタクトが夫々有する複数の接触端部及び複数のグラウンドコンタクトが夫々有する複数の接触端部が、回路基板面方向に配列配置された状態におかれる。それに伴い、相手方コネクタ装置の絶縁ハウジングにおける嵌合部に配された複数のシグナルコンタクトの端部及び複数のグラウンドコンタクトの端部も、相手方コネクタ装置の嵌合部が基板側コネクタ装置の嵌合口部に差し込まれるとき回路基板面方向に配列配置されていることになるものとされる。
【0006】
このようなもとで、基板側コネクタ装置にあっては、その絶縁ハウジングが配される回路基板の部品搭載面上の専有面積を低減すべく、複数のシグナルコンタクトが夫々有する複数の接触端部及び複数のグラウンドコンタクトが夫々有する複数の接触端部をできるだけ蜜に配置し、しかも、相互近接したシグナルコンタクトの接触端部間のクロストーク等を抑制して信号伝送特性を良好に維持するようになすことが望まれる。そのため、従来にあっては、回路基板の部品搭載面に配される絶縁ハウジングを備え、その絶縁ハウジングに複数のシグナルコンタクト及び複数のグラウンドコンタクトが配列配置されて設けられて成る基板側コネクタ装置であって、複数のシグナルコンタクトが夫々有する複数の接触端部及び複数のグラウンドコンタクトが夫々有する複数の接触端部の配置態様に工夫が施されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
特許文献1に記載された従来提案されている基板側コネクタ装置(コネクタ(100))は、回路基板の部品搭載面に配される絶縁ハウジング(保持部材(150))と、その絶縁ハウジングによって保持された複数のシグナルコンタクト(信号コンタクト(110,120))及び複数のグラウンドコンタクト(130) と、絶縁ハウジングの大部分を覆う導電性シェル(シェル(160))とを備えている。複数のシグナルコンタクトの夫々は、絶縁ハウジングの外部に突出して回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子に接続される接続端部(被固定部(114,124))と、相手方コネクタ装置(相手側コネクタ)におけるシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部(接触部(112,122))とを有したものとされ、また、複数のグラウンドコンタクトの夫々は、絶縁ハウジングの外部に突出して回路基板の部品搭載面に設けられたグラウンド端子に接続される接続端部(被固定部(134))と、相手方コネクタ装置におけるグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部(接触部(132))とを有したものとされている。
【0008】
斯かる従来提案されている基板側コネクタ装置(以下、文献記載のコネクタ装置という。)にあっては、複数のシグナルコンタクトの接触端部(接触部(112,122))及び複数のグラウンドコンタクトの接触端部(接触部(132))が、それらが回路基板面方向に等間隔(等ピッチ)をもって配列配置されて形成する並行列である第1の列(第1列(L1)(上側の列))と第2の列(第2列(L2)(下側の列))とを成すものとされており、絶縁ハウジングが回路基板の部品搭載面に配されたもとにあっては、第1の列及び第2の列の夫々が回路基板の部品搭載面に平行とされていて、第2の列が回路基板の部品搭載面と第1の列との間に位置するものとされている。そして、第1の列及び第2の列の夫々にあっては、隣り合う二つのシグナルコンタクトの接触端部が一対のグラウンドコンタクトの接触端部によって挟まれた配置が繰り返されており、第1の列と第2の列とは、隣り合う二つのシグナルコンタクトの接触端部が一対のグラウンドコンタクトの接触端部によって挟まれた配置がその配列 1/2ピッチ(半間隔)だけずれるように配されている。
【0009】
このような文献記載のコネクタ装置が開示された特許文献1には、複数のシグナルコンタクトの接触端部(接触部(112,122))と複数のグラウンドコンタクトの接触端部(接触部(132))とを上述のような態様をもって配置することにより、複数のシグナルコンタクトが夫々有する複数の接触端部及び複数のグラウンドコンタクトが夫々有する複数の接触端部を蜜に配置したもとで、相互近接したシグナルコンタクトの接触端部間のクロストーク等を抑制して信号伝送特性を良好に維持することができることになる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の文献記載のコネクタ装置にあっては、各々が、隣り合う二つのシグナルコンタクトの接触端部が一対のグラウンドコンタクトの接触端部によって挟まれた配置が繰り返されて成るものとされた、上側の列(第1の列)と下側の列(第2の列)とが、夫々が回路基板の部品搭載面に平行とされていて、下側の列が回路基板の部品搭載面と上側の列との間に位置するものとされたもとにおいて、上側の列及び下側の列に含まれる接触端部を有した複数のグラウンドコンタクトの夫々が、その接続端部が共通の回路基板の部品搭載面に設けられたグラウンド端子に接続されたものとされている。それにより、上側の列に含まれる接触端部を有したグラウンドコンタクト(以下、上側グラウンドコンタクトという。)の接触端部から接続端部までの長さ(以下、第1の長さという。)は、下側の列に含まれる接触端部を有したグラウンドコンタクト(以下、下側グラウンドコンタクトという。)の接触端部から接続端部までの長さ(以下、第2の長さという。)より大となっている。
【0012】
そして、文献記載のコネクタ装置に相手方コネクタ装置が嵌合せしめられて、上側グラウンドコンタクト及び下側グラウンドコンタクトの夫々の接触端部が相手方コネクタ装置のグラウンドコンタクトの端部に接触接続されたもとにあっては、上側グラウンドコンタクトの接触端部及び接続端部のいずれもが接地電位が与えられた状態におかれるとともに、下側グラウンドコンタクトの接触端部及び接続端部のいずれもが接地電位が与えられた状態におかれる。斯かる状態のもとにおいては、上側グラウンドコンタクトは、第1の長さが 1/2波長に相当する特定の周波数を共振周波数とするものとされ、また、下側グラウンドコンタクトも、第2の長さが 1/2波長に相当する特定の周波数を共振周波数とするものとされる。そして、上側グラウンドコンタクト及び下側グラウンドコンタクトの夫々が、その共振周波数を有したシグナルに対しては、共振アンテナとして作用して当該共振周波数を有したシグナルを放射する。
【0013】
このような上側グラウンドコンタクトあるいは下側グラウンドコンタクトが共振アンテナとして作用して共振周波数を有したシグナルを放射する状態は、基板側コネクタ装置において不所望なクロストークが発生することになって、シグナル伝送特性の劣化をもたらす。そのため、文献記載のコネクタ装置の有効伝送周波数帯域は、上側グラウンドコンタクト及び下側グラウンドコンタクトの夫々の共振周波数のうちの低い方に相当する周波数に達しない周波数までの周波数帯域とされることになる。
【0014】
斯かるもとで、文献記載のコネクタ装置においては、上側グラウンドコンタクトの第1の長さが下側グラウンドコンタクトの第2の長さより大となっているので、上側グラウンドコンタクトの共振周波数が下側グラウンドコンタクトの共振周波数より低くなる。その結果、文献記載のコネクタ装置は、その有効伝送周波数帯域が、上側グラウンドコンタクトの共振周波数より低い周波数範囲までの周波数帯域に制限され、それを越えて下側グラウンドコンタクトの共振周波数に達しない周波数範囲にまで広げられた周波数帯域とすることはできないものとされるという不都合を伴っている。
【0015】
斯かる点に鑑み、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、回路基板の部品搭載面に配される絶縁ハウジングによって支持された複数のシグナルコンタクト及び複数のグラウンドコンタクトを備え、複数のシグナルコンタクトの夫々が回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子部に接続される接続端部と相手方コネクタ装置におけるシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部とを有するとともに、複数のグラウンドコンタクトの夫々が回路基板の部品搭載面に設けられたグラウンド端子部に接続される接続端部と相手方コネクタ装置におけるグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部とを有していて、複数のシグナルコンタクト及び複数のグラウンドコンタクトが夫々有する接触端部が、回路基板面方向に配列配置されて形成する並行列である第1の接触端部列と第2の接触端部列とを成すものとされたもとにおいて、有効伝送周波数帯域の拡大を図ることができるコネクタ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の特許請求の範囲における請求項1から請求項8までのいずれかに記載された発明(以下、本願発明という。)に係るコネクタ装置は、回路基板の部品搭載面に配される絶縁ハウジングと、各々が相手方コネクタ装置のシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子部に接続される接続端部を有した複数の第1のシグナルコンタクトと各々が相手方コネクタ装置のグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び回路基板の部品搭載面に設けられたグラタウンド端子部に接続される接続端部を有した複数の第1のグラウンドコンタクトとが、回路基板の部品搭載面に沿うことになる方向に配列されて絶縁ハウジングにより支持されて成る第1のコンタクト列と、各々が相手方コネクタ装置のシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子部に接続される接続端部を有した複数の第2のシグナルコンタクトと各々が相手方コネクタ装置のグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部及び回路基板の部品搭載面に設けられたグラタウンド端子部に接続される接続端部を有した複数の第2のグラウンドコンタクトとが、回路基板の部品搭載面に沿うことになる方向に配列されて絶縁ハウジングにより支持されて成る第2のコンタクト列と、絶縁ハウジングの外面部に装着されて接地電位が与えられる導電性シェルと、を備えて構成される。そして、斯かるもとで、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のシグナルコンタクト及び複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々の接触端部が成す第1の接触端部列と第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のシグナルコンタクト及び複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々の接触端部が成す第2の接触端部列とが、第2の接触端部列が回路基板の部品搭載面と第1の接触端部列との間に位置する並行列として配されて、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さが第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さよりその二倍を越えない範囲で大に選定されたもとで、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部と接続端部との間の中間部が導電性シェルに接続されたものとされる。
【0017】
特に、本願発明に係るコネクタ装置のうちの請求項2に記載されたものにあっては、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さが、第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さよりその二倍を越えない範囲で大となるように選定されたもとで、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から中間部までの長さと中間部から接続端部までの長さのいずれもが、複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さ以下とされる。
【0018】
さらに、本願発明に係るコネクタ装置のうちの請求項3に記載されたものにあっては、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々が、それにおける接触端部から中間部までの長さと中間部から接続端部までの長さとが実質的に等しいものとされる。
【0019】
上述のように構成される本願発明に係るコネクタ装置は、回路基板に取り付けられて用いられる基板側コネクタ装置を成すものとされる。そして、このような本願発明に係るコネクタ装置においては、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のシグナルコンタクト及び複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々の接触端部が成す第1の接触端部列と第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のシグナルコンタクト及び複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々の接触端部が成す第2の接触端部列とが、第2の接触端部列が回路基板の部品搭載面と第1の接触端部列との間に位置する並行列として配されて、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さが第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さよりその二倍を越えない範囲で大に選定されたもとで、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部と接続端部との間の中間部が導電性シェルに接続されたものとされる。
【0020】
それにより、複数の第1のシグナルコンタクト及び複数の第2のシグナルコンタクトの夫々が、その接触端部が相手方コネクタ装置のシグナルコンタクトの端部に接触接続されるとともにその接続端部が回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子部に接続され、また、複数の第1のグラウンドコンタクト及び複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々が、その接触端部が相手方コネクタ装置のグラウンドコンタクトの端部に接触接続されるとともにその接続端部が回路基板の部品搭載面に設けられたグラウンド端子部に接続されたもとにあっては、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々が、それにおける接触端部と接続端部と導電性シェルに接続された中間部との各々が接地電位が与えられたものとされる。それにより、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々は、接触端部から中間部までの長さが 1/2波長に相当する第1の共振周波数と中間部から接続端部までの長さが 1/2波長に相当する第2の共振周波数とを有するものとされる。
【0021】
複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から中間部までの長さ及び中間部から接続端部までの長さの夫々は、第2のグラウンドコンタクトにおける接触端部から接続端部までの長さ以下であるので、第1の共振周波数及び第2の共振周波数のいずれもは、仮に中間部が導電性シェルに接続されないものとしたときの、第1のグラウンドコンタクトにおける接触端部から接続端部までの長さが 1/2波長に相当する共振周波数より高いものとなる。そして、第1のグラウンドコンタクトにおける中間部の位置設定によって、第1の共振周波数及び第2の共振周波数のいずれをも、接触端部から接続端部までの長さが第1のグラウンドコンタクトより小に選定された第2のグラウンドコンタクトが有する当該接触端部から接続端部までの長さが 1/2波長に相当する共振周波数以上のものとすることが可能とされる。
【0022】
斯かる際における第1のグラウンドコンタクトにおける中間部の位置設定は、例えば、本願発明に係るコネクタ装置のうちの請求項2に記載されたもののように、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さが、第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さよりその二倍を越えない範囲で大となるように選定されたもとで、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々が、接触端部から中間部までの長さと中間部から接続端部までの長さとが実質的に等しいものとされることにより、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から中間部までの長さと中間部から接続端部までの長さのいずれもが、複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さ以下とされて行われる。
【発明の効果】
【0023】
上述の本願発明に係るコネクタ装置にあっては、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さが第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々における接触端部から接続端部までの長さよりその二倍を越えない範囲で大に選定されたもとで、複数の第1のグラウンドコンタクトの夫々が有する第1の共振周波数及び第2の共振周波数のいずれをも複数の第2のグラウンドコンタクトの夫々の共振周波数以上のものとすることが可能とされるので、共振周波数による制限を受ける有効伝送周波数帯域を、第1のグラウンドコンタクトの共振周波数により制限されることなく、接触端部から接続端部までの長さが第1のグラウンドコンタクトより小に選定された第2のグラウンドコンタクトの共振周波数に達しない周波数範囲にまで広げられた周波数帯域に拡大することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願発明に係るコネクタ装置の一例をそれが取り付けられた回路基板及びそれに嵌合連結される相手方コネクタ装置の一例と共に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示される本願発明に係るコネクタ装置の一例をそれから一部の部材が分離された状態をもって示す斜視図である。
【
図3】
図1に示される本願発明に係るコネクタ装置の一例をそれから一部の部材が除去された状態をもって示す斜視図である。
【
図4】
図1に示される本願発明に係るコネクタ装置の一例をそれが取り付けられた回路基板と共に示す正面図である。
【
図5】
図4における一点鎖線枠E内を拡大して示す拡大図である。
【
図6】
図1に示される相手方コネクタ装置の一例を単独で示す斜視図である。
【
図7】
図1に示される相手方コネクタ装置の一例をそれから一部の部材が除去あるいは分離された状態をもって示す斜視図である。
【
図8】
図1に示される相手方コネクタ装置の一例に内蔵された構造体をそれに接続された複数の同軸ケーブルと共に示す斜視図である。
【
図9】
図1に示される相手方コネクタ装置の一例に内蔵された構造体をそれに接続された複数の同軸ケーブルと共に示す平面図である。
【
図10】
図9に示される構造体の一部を複数の同軸ケーブルと共に示す斜視図である。
【
図11】
図9に示される構造体の一部を複数の同軸ケーブルと共に示す平面図である。
【
図12】回路基板に取り付けられた本願発明に係るコネクタ装置の一例に相手方コネクタ装置の一例が嵌合連結された状態を示す斜視図である。
【
図13】回路基板に取り付けられた本願発明に係るコネクタ装置の一例に相手方コネクタ装置の一例が嵌合連結された状態を示す平面図である。
【
図14】回路基板に取り付けられた本願発明に係るコネクタ装置の一例に相手方コネクタ装置の一例が嵌合連結された状態を示す側面図である。
【
図15】
図13におけるXV-XV線断面を部分的に示す断面図である。
【
図16】
図13における XVI-XVI 線断面を部分的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願発明を実施するための形態は、以下に述べられる本願発明についての実施例をもって説明される。
【実施例】
【0026】
図1は、本願発明に係るコネクタ装置の一例を、それが取り付けられた回路基板、及び、それに嵌合連結される相手方コネクタ装置と共に示し、
図2及び
図3は、本願発明に係るコネクタ装置の一例を、それから一部の部材が分離あるいは除去された状態をもって示す。
【0027】
図1において、本願発明に係るコネクタ装置の一例を成すコネクタ装置11は、回路基板12にそれにおける電気回路構成部との電気的接続がなされて取り付けられて基板側コネクタ装置として使用されるリセプタクルコネクタを成しており、回路基板12に取り付けられた状態のもとで、複数の同軸ケーブルが接続されたプラグコネクタを成す相手方コネクタ装置13が嵌合連結されるものとされている。そして、コネクタ装置11は、回路基板12の部品搭載面12aに配されるものとされた絶縁ハウジング14を備えており、絶縁ハウジング14は、合成樹脂等の絶縁材料によって形成されていて、相手方コネクタ装置13の嵌合部15が差し込まれる嵌合口部16(後述される
図4に示される。)が設けられたものとされている。
【0028】
図1~
図3に示されるように、絶縁ハウジング14の外面部には、例えば、金属板材によって形成された導電性シェル17が装着されている。導電性シェル17は、絶縁ハウジング14の外面部を覆う第1のシェル部材17Aと第1のシェル部材17Aとは別体に形成されて第1のシェル部材17Aとの電気的接続がなされる第2のシェル部材17Bとを含んで構成されている(
図2においては、第2のシェル部材17Bが第1のシェル部材17Aから分離せしめられて示されている。)。第1のシェル部材17Aには、回路基板12における接地電位部18に設けられた透孔に差し込まれる係合突起部19(
図2及び
図3に明瞭に示されている。)が設けられており、また、第2のシェル部材17Bには、回路基板12における接地電位部18に設けられた透孔に差し込まれる係合突起部20(
図2に明瞭に示されている。)と第1のシェル部材17Aに接触接続される接触突起部21(
図2に明瞭に示されている。)とが設けられている。
【0029】
そして、第1のシェル部材17Aに設けられた係合突起部19及び第2のシェル部材17Bに設けられた係合突起部20の夫々が、回路基板12における接地電位部18に設けられた透孔に差し込まれるとともに、第2のシェル部材17Bに設けられた接触突起部21が第1のシェル部材17Aに接触接続せしめられることにより、導電性シェル17が、第2のシェル部材17Bが第1のシェル部材17Aに電気的に接続されたもとで、回路基板12に固定されるとともに、接地電位部18からの接地電位が与えらるものとされる。
【0030】
図2に示されるように、導電性シェル17を構成する第1のシェル部材17Aによって外面部が覆われた絶縁ハウジング14にあっては、絶縁ハウジング14により支持された複数の第1のシグナルコンタクト25と複数の第1のグラウンドコンタクト26とが,絶縁ハウジング14が回路基板12の部品搭載面12aに配されたとき回路基板12の部品搭載面12aに沿うことになる方向である回路基板面方向に配列されて成る第1のコンタクト列と、複数の第1のシグナルコンタクト25及び複数の第1のグラウンドコンタクト26の一部が除去されて表される
図3に示されるように、絶縁ハウジング14により支持された複数の第2のシグナルコンタクト27と複数の第2のグラウンドコンタクト28とが、回路基板面方向に配列されて成る第2のコンタクト列とが設けられている。第1のコンタクト列においては、隣り合う二つの第1のシグナルコンタクト25が一対の第1のグラウンドコンタクト26によって挟まれた配置が繰り返されており、また、第2のコンタクト列においては、隣り合う二つの第2のシグナルコンタクト27が一対の第2のグラウンドコンタクト28によって挟まれた配置が繰り返されている。
【0031】
そして、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のシグナルコンタクト25の夫々は、相手方コネクタ装置13のシグナルコンタクト48の端部48a(後述される
図8及び
図9に示されている。)に接触接続される接触端部30(後述される
図4及び
図5に示されている。)及び回路基板12の部品搭載面12aに設けられたシグナル端子部(図示が省略されている。)に接続される接続端部31を有しており、また、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々は、相手方コネクタ装置13のグラウンドコンタクト49の端部49a(後述される
図8及び
図9に示されている。)に接触接続される接触端部32(後述される
図4及び
図5に示されている。)及び回路基板12の部品搭載面12aに設けられたグラウンド端子部(図示が省略されている。)に接続される接続端部33を有している。
【0032】
同様に、第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のシグナルコンタクト27の夫々は、相手方コネクタ装置13のシグナルコンタクト48の端部48a(後述される
図8及び
図9に示されている。)に接触接続される接触端部34(後述される
図4及び
図5に示されている。)及び回路基板12の部品搭載面12aに設けられたシグナル端子部(図示が省略されている。)に接続される接続端部35を有しており、また、第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々は、相手方コネクタ装置13のグラウンドコンタクト49の端部49a(後述される
図8及び
図9に示されている。)に接触接続される接触端部36(後述される
図4及び
図5に示されている。)及び回路基板12の部品搭載面12aに設けられたグラウンド端子部(図示が省略されている。)に接続される接続端部37を有している。
【0033】
斯かるもとで、複数の第1のシグナルコンタクト25の夫々の接続端部31,複数の第1のグウラウンドコンタクト26の夫々の接続端部33,複数の第2のシグナルコンタクト27の夫々の接続端部35及び複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々の接続端部37は、それらのいずれもが共通の回路基板12の部品搭載面12aに配されている。それに対して、
図4及び
図4における一点鎖線枠E内を拡大して示す
図5に示されるように、絶縁ハウジング14に設けられた嵌合口部16内において、複数の第1のシグナルコンタクト25の夫々の接触端部30及び複数の第1のグウラウンドコンタクト26の夫々の接触端部32が、隣り合う二つの接触端部30が一対の接触端部32によって挟まれた配置が繰り返される状態をもって回路基板面方向に配列されて成る、第1の接触端部列をなしているとともに、複数の第2のシグナルコンタクト27の夫々の接触端部34及び複数の第2のグウラウンドコンタクト28の夫々の接触端部36が、隣り合う二つの接触端部34が一対の接触端部36によって挟まれた配置が繰り返される状態をもって回路基板面方向に配列されて成る、第2の接触端部列を成している。
【0034】
そして、複数の第1のシグナルコンタクト25の夫々の接触端部30及び複数の第1のグウラウンドコンタクト26の夫々の接触端部32を含んだ第1の接触端部列と複数の第2のシグナルコンタクト27の夫々の接触端部34及び複数の第2のグウラウンドコンタクト28の夫々の接触端部36を含んだ第2の接触端部列とは、夫々が回路基板12の部品搭載面12aに沿う方向に伸びていて、第2の接触端部列が回路基板12の部品搭載面12aと第1の接触端部列との間に位置する並行列として配されている。
【0035】
このようなもとで、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々と第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々とは、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々における接触端部32から接続端部33までの長さが、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々における接触端部36から接続端部37までの長さよりその二倍を越えない範囲で大となるように選定されている。
【0036】
図2及び
図3に示されるように、第1のコンタクト列を成す複数の第1のシグナルコンタクト25及び複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々は、接触端部30と接続端部31との間の部分もしくは接触端部32と接続端部33との間の部分を部分的に絶縁ハウジング14からその外部に露出させて成る露出部分を有している。そして、斯かる第1のシグナルコンタクト25及び第1のグラウンドコンタクト26の夫々の露出部分は、後述される
図14に示されるように、
図2においては絶縁ハウジング14から分離されて示されている絶縁カバー部材38によって覆われ、さらに、絶縁カバー部材38を覆う第2のシェル部材17Bによって覆われるものとされている。このようにして第1のシグナルコンタクト25及び第1のグラウンドコンタクト26の夫々の露出部分を覆う第2のシェル部材17Bは、導電シェル17における覆い部分を成している。
【0037】
絶縁カバー部材38は、全体として板状体を成しており、第1のシグナルコンタクト25及び第1のグラウンドコンタクト26の夫々の露出部分を覆ったもとで複数の第1のグラウンドコンタクト26の露出部分に夫々対応することになる複数の部位の各々に、透孔39が形成されたものとされている。また、第2のシェル部材17Bには、絶縁カバー部材38を覆ったもとで複数の透孔39に夫々対応することになる複数の部位の各々に、内側、即ち、絶縁カバー部材38に向けて突出するものとされた接点部40が形成されている。斯かるもとで、第1のシグナルコンタクト25及び第1のグラウンドコンタクト26の夫々の露出部分が、絶縁カバー部材38によって覆われ、さらに、絶縁カバー部材38を覆う第2のシェル部材17Bによって覆われるものとされるときには、第2のシェル部材17Bに形成された接点部40が、絶縁カバー部材38に形成された透孔39を通じて、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々の露出部分に含まれる、第1のグラウンドコンタクト26における接触端部32と接続端部33との間の中間部41(後述される
図16に示されている。)に当接する。それにより、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々における中間部41が第2のシェル部材17Bを含んで構成される導電性シェル17に接続された状態が得られ、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々における中間部41に導電性シェル17を通じて接地電位が与えられる。
【0038】
斯かる際、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々は、例えば、接触端部32から中間部41までの長さ(以下、第1のコンタクト長という。)と中間部41から接続端部33までの長さ(以下、第2のコンタクト長という。)とが実質的に等しいものとされることにより、第1のコンタクト長及び第2のコンタクト長のいずれもが、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々における接触端部36から接続端部37までの長さ以下となるものとされる。複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々が第1のコンタクト長と第2のコンタクト長とが実質的に等しいものとされるときには、前述のように、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々における接触端部32から接続端部33までの長さが、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々における接触端部36から接続端部37までの長さよりその二倍を越えない範囲で大となるように選定されているので、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々における第1のコンタクト長及び第2のコンタクト長は、いずれもが、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々における接触端部36から接続端部37までの長さ以下とされることになる。
【0039】
一方、
図1に示される、プラグコネクタを成す相手方コネクタ装置13は、
図6に示されるように、合成樹脂等の絶縁材料によって形成されたインナー絶縁ハウジング42とアウター絶縁ハウジング44とを備えていて、インナー絶縁ハウジング42の外面部にはアウター導電性シェル43が装着されており、また、アウター絶縁ハウジング44にはインナー絶縁ハウジング42との係合状態をとる係合突出部45が設けられている。そして、インナー絶縁ハウジング42におけるその外面部にアウター導電性シェル43が装着された部分とアウター絶縁ハウジング44に設けられた係合突出部45とによって、前述のコネクタ装置11の絶縁ハウジング14に設けられた嵌合口部16に差し込まれる嵌合部15が構成されている。
【0040】
図7は、相手方コネクタ装置13を、それからアウター絶縁ハウジング44が除去され、さらに、外面部にアウター導電性シェル43が装着されたインナー絶縁ハウジング42が分離された状態をもって示す。
図7に示されるように、相手方コネクタ装置13には、パイプ状を成すケーブル保持部材46によって束ねられて保持された複数の同軸ケーブル47が接続されている。そして、相手方コネクタ装置13にあっては、
図6に示されるように、複数の同軸ケーブル47を保持したケーブル保持部材46が、アウター絶縁ハウジング44によって支持されており、それによって複数の同軸ケーブル47が固定される。また、外面部にアウター導電性シェル43が装着されたインナー絶縁ハウジング42内には、複数のシグナルコンタクト48及び複数のグラウンドコンタクト49を支持した一対のコンタクト支持部材50が重ねられて配される。一対のコンタクト支持部材50の夫々には、その外面部を部分的に覆うインナー導電性シェル51が装着されている。
【0041】
図8及び
図9に示されるように、一対のコンタクト支持部材50の夫々は、複数のシグナルコンタクト48及び複数のグラウンドコンタクト49を、隣り合う二つのシグナルコンタクト48が一対のグラウンドコンタクト49によって挟まれた配置が繰り返される態様をもって配列配置されたものとして支持している。一対のコンタクト支持部材50のうちの一方によって支持された複数のシグナルコンタクト48の夫々の一端部分が、コネクタ装置11における第1のシグナルコンタクト25の接触端部30に接触接続される端部48aを成すものとされており、また、一対のコンタクト支持部材50のうちの一方によって支持された複数のグラウンドコンタクト49の夫々の一端部分が、コネクタ装置11における第1のグラウンドコンタクト26の接触端部32に接触接続される端部49aを成すものとされている。同様に、一対のコンタクト支持部材50のうちの他方によって支持された複数のシグナルコンタクト48の夫々の一端部分が、コネクタ装置11における第2のシグナルコンタクト27の接触端部34に接触接続される端部48aを成すものとされており、また、一対のコンタクト支持部材50のうちの他方によって支持された複数のグラウンドコンタクト49の夫々の一端部分が、コネクタ装置11における第2のグラウンドコンタクト28の接触端部36に接触接続される端部49aを成すものとされている。
【0042】
一対のコンタクト支持部材50の夫々は、複数のシグナルコンタクト48及び複数のグラウンドコンタクト49の配列方向に沿って伸びて接地電位が与えられるグラウンドバー部材52を備えている。
図10及び
図11に示されるように、グラウンドバー部材52は、それに沿って配列された複数の同軸ケーブル47の夫々の中心導体47a及び内部絶縁体47bが貫通するものとされており、また、複数の同軸ケーブル47の夫々の外側導体との電気的接続がなされている。さらに、グラウンドバー部材52には、各々がそれからグラウンドバー部材52を貫通した同軸ケーブル47の中心導体47aの先端部側に突出するものとされた複数のグラウンドピン53が設けられていて、複数のグラウンドピン53の夫々には接地電位が与えられる。
【0043】
斯かるもとで、一対のコンタクト支持部材50の夫々において、グラウンドバー部材52を貫通した複数の同軸ケーブル47の中心導体47aが、コンタクト支持部材50によって支持された複数のシグナルコンタクト48の他端部分に夫々接続され、また、グラウンドバー部材52に設けられた複数のグラウンドピン53が、コンタクト支持部材50によって支持された複数のグラウンドコンタクト49の他端部分に夫々接続される。それにより、相手方コネクタ装置13における複数のシグナルコンタクト48の夫々が、同軸ケーブル47の中心導体47aに接続されたものとされるとともに、相手方コネクタ装置13における複数のグラウンドコンタクト49の夫々が、接地電位が与えられるグラウンドバー部材52に設けられたグラウンドピン53に接続された状態が得られる。
【0044】
図12(斜視図),
図13(平面図) 及び
図14(側面図)は、回路基板12にそれに設けられた電気回路構成部との電気的接続がなされて取り付けられたコネクタ装置11に、ケーブル保持部材46によって保持された複数の同軸ケーブル47が接続された相手方コネクタ装置13が嵌合連結された状態を示す。
【0045】
コネクタ装置11に対する相手方コネクタ装置13の嵌合連結は、相手方コネクタ装置13のインナー絶縁ハウジング42におけるその外面部にアウター導電性シェル43が装着された部分とアウター絶縁ハウジング44に設けられた係合突出部45とによって構成された嵌合部15が、コネクタ装置11の絶縁ハウジング14に設けられた嵌合口部16に差し込まれて行われる。このとき、図示が省略されているが、コネクタ装置11の絶縁ハウジング14に設けられた係止部が相手方コネクタ装置13のアウター絶縁ハウジング44に設けられた被係止部に係合することにより、コネクタ装置11に相手方コネクタ装置13が嵌合連結された状態が維持される。
【0046】
コネクタ装置11に相手方コネクタ装置13が嵌合連結された状態がとられたときには、
図13におけるXV-XV線断面を部分的に示す
図15に示されるように、コネクタ装置11の絶縁ハウジング14に設けられた嵌合口部16に相手方コネクタ装置13における嵌合部15が差し込まれたもとで、コネクタ装置11における第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のシグナルコンタクト25の夫々の接触端部30に、相手方コネクタ装置13における各々がその他端部分に同軸ケーブル47の中心導体47aが接続されたものとされた複数のシグナルコンタクト48のうちの対応するものの端部48aが、接触接続される。それにより、同軸ケーブル47の中心導体47aが、第1のシグナルコンタクト25を通じて当該第1のシグナルコンタクト25の接続端部31が接続された回路基板12の部品搭載面12aに設けられたシグナル端子部に接続される。
【0047】
それとともに、図示が省略されているが、コネクタ装置11における第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のシグナルコンタクト27の夫々の接触端部34にも、相手方コネクタ装置13における各々がその他端部分に同軸ケーブル47の中心導体47aが接続されたものとされた複数のシグナルコンタクト48のうちの対応するものの端部48aが、接触接続される。それにより、同軸ケーブル47の中心導体47aが、第2のシグナルコンタクト27を通じて当該第2のシグナルコンタクト27の接続端部35が接続された回路基板12の部品搭載面12aに設けられたシグナル端子部に接続される。
【0048】
また、
図13における XVI-XVI 線断面を部分的に示す
図16に示されるように、コネクタ装置11の絶縁ハウジング14に設けられた嵌合口部16に相手方コネクタ装置13における嵌合部15が差し込まれたもとで、コネクタ装置11における第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々の接触端部32に、相手方コネクタ装置13における各々がその他端部分にグラウンドバー部材52に設けられたグラウンドピン53が接続されたものとされた複数のグラウンドコンタクト49のうちの対応するものの端部49aが、接触接続される。複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々は、それにおける中間部41に導電性シェル17を構成する第2のシェル部材17Bに形成された接点部40が当接するものとされているので、第1のグラウンドコンタクト26の夫々の接触端部32に相手方コネクタ装置13における複数のグラウンドコンタクト49のうちの対応するものの端部49aが接触接続されることにより、それにおける、回路基板12の部品搭載面12aに設けられたグラウンド端子部に接続された接続端部33と接触端部32と中間部41との各々が接地電位が与えられたものとされる。
【0049】
それとともに、図示が省略されているが、コネクタ装置11における第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々の接触端部36に、相手方コネクタ装置13における各々がその他端部分にグラウンドバー部材52に設けられたグラウンドピン53が接続されたものとされた複数のグラウンドコンタクト49のうちの対応するものの端部49aが、接触接続される。それにより、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々は、それにおける回路基板12の部品搭載面12aに設けられたグラウンド端子部に接続された接続端部37と接触端部36との各々が接地電位が与えられたものとされる。
【0050】
このようなもとで、コネクタ装置11における第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々が、接触端部32から中間部41までの長さである第1のコンタクト長が 1/2波長に相当する第1の共振周波数と中間部41から接続端部33までの長さである第2のコンタクト長が 1/2波長に相当する第2の共振周波数とを有し、また、コネクタ装置11における第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々が、接触端部36から接続端部37までの長さが 1/2波長に相当する共振周波数を有することになる。そして、前述のように、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々が、第1のコンタクト長と第2のコンタクト長のいずれもが、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々における接触端部36から接続端部37までの長さ以下となるものとされているので、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々が有する第1の共振周波数及び第2の共振周波数の夫々が、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々が有する共振周波数以上とされることになる。それにより、コネクタ装置11は、複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々が有する共振周波数以下の周波数範囲を有効伝送周波数帯域とすることができるものとされる。
【0051】
上述のようなコネクタ装置11にあっては、第1のコンタクト列に含まれる複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々における接触端部32から接続端部33までの長さが第2のコンタクト列に含まれる複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々における接触端部36から接続端部37までの長さよりその二倍を越えない範囲で大に選定されたもとで、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々における接触端部32と接続端部33との間の中間部41が導電性シェル17に接続されたものとされることにより、複数の第1のグラウンドコンタクト26の夫々が有する第1の共振周波数及び第2の共振周波数のいずれをも複数の第2のグラウンドコンタクト28の夫々の共振周波数以上のものとすることが可能とされるので、共振周波数による制限を受ける有効伝送周波数帯域を、第1のグラウンドコンタクト26の共振周波数により制限されることなく、接触端部36から接続端部37までの長さが第1のグラウンドコンタクト26の接触端部32から接続端部33までの長さより小に選定された第2のグラウンドコンタクト28の共振周波数には達しない周波数範囲にまで広げられた周波数帯域に拡大することができることになる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のような本願発明に係るコネクタ装置は、回路基板の部品搭載面に配される絶縁ハウジングによって支持された複数のシグナルコンタクト及び複数のグラウンドコンタクトを備え、複数のシグナルコンタクトの夫々が回路基板の部品搭載面に設けられたシグナル端子部に接続される接続端部と相手方コネクタ装置におけるシグナルコンタクトの端部に接触接続される接触端部とを有するとともに、複数のグラウンドコンタクトの夫々が回路基板の部品搭載面に設けられたグラウンド端子部に接続される接続端部と相手方コネクタ装置におけるグラウンドコンタクトの端部に接触接続される接触端部とを有していて、複数のシグナルコンタクト及び複数のグラウンドコンタクトが夫々有する接触端部が、回路基板面方向に配列配置されて形成する並行列である第1の接触端部列と第2の接触端部列とを成すものとされたもとにおいて、有効伝送周波数帯域の拡大を図ることができるものとして、様々な電子機器等に広く適用され得るものである。
【符号の説明】
【0053】
11・・・コネクタ装置, 12・・・回路基板, 13・・・相手方コネクタ装置, 14・・・絶縁ハウジング, 15・・・嵌合部, 16・・・嵌合口部, 17・・・導電性シェル, 17A・・・第1のシェル部材, 17B・・・第2のシェル部材, 18・・・接地電位部, 19,20・・・係合突起部, 21・・・接触突起部, 25・・・第1のシグナルコンタクト, 26・・・第1のグラウンドコンタクト, 27・・・第2のシグナルコンタクト, 28・・・第2のグラウンドコンタクト, 30,32,34,36・・・接触端部, 31,33,35,37・・・接続端部, 38・・・絶縁カバー部材 39・・・透孔, 40・・・接点部, 41・・・中間部, 42・・・インナー絶縁ハウジング, 43・・・アウター導電性シェル, 44・・・アウター絶縁ハウジング, 45・・・係合突出部, 46・・・ケーブル保持部材, 47・・・同軸ケーブル, 47a・・・中心導体, 48・・・シグナルコンタクト, 48a・・・(シグナルコンタクト48の)端部, 49・・・グラウンドコンタクト, 49a・・・(グラウンドコンタクト49の)端部, 50・・・コンタクト支持部材, 51・・・インナー導電性シェル, 52・・・グラウンドバー部材, 53・・・グラウンドピン