(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】非水系インクジェットインキ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/36 20140101AFI20221129BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221129BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09D11/36
B41J2/01 501
B41M5/00 112
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2018093471
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征寿
(72)【発明者】
【氏名】浅井 太郎
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-214255(JP,A)
【文献】特開2007-177160(JP,A)
【文献】特開2015-221887(JP,A)
【文献】特開2007-131741(JP,A)
【文献】特開2012-040742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/36
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色剤と、有機溶剤(A)と、バインダー樹脂と、表面調整用添加剤(B)とを含有する非水系インクジェットインキ組成物であって、
前記有機溶剤(A)は、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)を1種以上と
、アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤とを含有し、
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含有
し、
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤が、3-メトキシブチルアセテートを含有し、
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)の全含有量が、有機溶剤(A)全量中35質量%以上、70質量%以下であり、
前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記非水系インクジェットインキ組成物全量中20質量%以上、60質量%以下であり、
前記表面調製用添加剤(B)は、3-メトキシブタノールに表面調製用添加剤を0.5質量%添加したときの25℃における表面張力が、未添加の3-メトキシブタノールに比べ6.0mN/m以上低下する、シリコン系および/またはシリコンアクリル系の界面活性剤を含有することを特徴とする非水系インクジェットインキ組成物。
【請求項2】
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)が、1気圧での沸点が165℃以下であるアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a’)を、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)全量中、50質量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の非水系インクジェットインキ組成物。
【請求項3】
前記表面調製用添加剤(B)が、シロキサン変性アクリル樹脂であって、
前記シロキサン変性アクリル樹脂が、アクリル樹脂とシロキサン系化合物とのグラフト共重合物であることを特徴とする請求項1または2記載の非水系インクジェットインキ組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤(A)が、有機溶剤(A)のみを1気圧50℃の環境下で200分静置したとき、静置前後における質量減少率が50質量%以上であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の非水系インクジェットインキ組成物。
【請求項5】
非浸透性基材への印刷用であることを特徴とする請求項1~4いずれか記載の非水系インクジェットインキ組成物。
【請求項6】
基材に、請求項1~5いずれか記載の非水系インクジェットインキ組成物を印刷したことを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた印刷性能を有し、高耐性かつ高画質の印刷物を得ることが可能な、主に非浸透性基材への印刷に適した非水系インクジェットインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、オフィスや家庭での出力機として広く用いられている。
【0003】
一方、産業用途においても、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機として利用されており、非水性(溶剤型、UV型)インクジェット用インキがPVC、PETなどのプラスチック基材に対して印刷が可能な印刷機が実際に市販され、屋外広告用途をはじめ様々な用途で用いられている。
【0004】
溶剤型の非水性インクジェット用インキでは塩化ビニル基材への印刷が主流であり、従来は有機溶剤としてシクロヘキサノン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートといったものが使用されていた(特許文献1、2)。また、近年は用途拡大のため様々な基材に印刷することが求められており、非浸透系フラットベット基材への対応が注目されている(特許文献3)。非浸透系基材に印字できるインキの例として、特許文献3ではポリシロキサン系添加剤を使用し、乳酸エステル系溶剤とグリコールモノエステル系溶剤を併用することで、インキ組成物の濡れ広がり性を向上させ、低印字部のスジムラを改善している。一方で、濡れ広がりすぎることにより高印字部において隣り合う液滴同士が混ざり合うモットリングの悪化や、インキ濃度が不均一化することがあり、印字率に関わらない高画質な印刷物を作製することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-056991号公報
【文献】特開2005-200469号公報
【文献】特開2012-201838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた印刷性能を有し、高耐性かつ印字率に関わらず高画質の印刷物を得ることが可能な、主に非浸透性基材への印刷に適した非水系インクジェットインキ組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す実施形態により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、少なくとも、着色剤と、有機溶剤(A)と、バインダー樹脂と、表面調整用添加剤(B)とを含有する非水系インクジェットインキ組成物であって、
前記有機溶剤(A)は、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)を1種以上と、アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤とを含有し、
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含有し、
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤が、3-メトキシブチルアセテートを含有し、
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)の全含有量が、有機溶剤(A)全量中35質量%以上、70質量%以下であり、
前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記非水系インクジェットインキ組成物全量中20質量%以上、60質量%以下であり、
前記表面調製用添加剤(B)は、3-メトキシブタノールに表面調製用添加剤を0.5質量%添加したときの25℃における表面張力が、未添加の3-メトキシブタノールに比べ6.0mN/m以上低下する、シリコン系および/またはシリコンアクリル系の界面活性剤を含有することを特徴とする非水系インクジェットインキ組成物に関する。
【0009】
さらに本発明は、前記アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)が、1気圧での沸点が165℃以下であるアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a’)を、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)全量中、50質量%以上含有することを特徴とする上記非水系インクジェットインキ組成物に関する。
【0010】
さらに本発明は、前記表面調製用添加剤(B)が、シロキサン変性アクリル樹脂であって、
前記シロキサン変性アクリル樹脂が、アクリル樹脂とシロキサン系化合物とのグラフト共重合物であることを特徴とする上記非水系インクジェットインキ組成物に関する。
【0011】
さらに本発明は、前記有機溶剤(A)が、有機溶剤(A)のみを1気圧50℃の環境下で200分静置したとき、静置前後における質量減少率が50質量%以上であることを特徴とする上記非水系インクジェットインキ組成物に関する。
【0014】
さらに本発明は、非浸透性基材への印刷用であることを特徴とする上記非水系インクジェットインキ組成物に関する。
【0015】
さらに本発明は、基材に、上記記載の非水系インクジェットインキ組成物を印刷したことを特徴とする印刷物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、優れた印刷性能を有し、高耐性かつ印字率に関わらず高画質の印刷物を得ることが可能な、主に非浸透性基材への印刷に適した非水系インクジェットインキ組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される変形例も含まれる。
【0018】
本発明では、少なくとも着色剤と、有機溶剤(A)と、バインダー樹脂と、表面調整用添加剤(B)とを含有する非水系インクジェットインキ組成物において、有機溶剤(A)として、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)を1種以上含有し、表面調整用添加剤(B)として、3-メトキシブタノールに0.5質量%添加したときの25℃における表面張力が、未添加の3-メトキシブタノールに比べ6.0mN/m以上低下するものを含有することで、高い保存安定性を有し、優れた印刷性能を発揮し、高耐性かつ高画質の印刷物を得ることを可能としている。以下に本発明の主要となる各成分について述べる。
【0019】
[有機溶剤(A)]
本発明では有機溶剤(A)として、下記一般式1で表されるアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)を1種以上含有することにより、印刷時の乾燥速度を向上させ、さらに連続印刷安定性やデキャップ性の観点で優れた印刷性能を発揮することを可能としている。
【0020】
R1-(O-R2)n-OH [一般式1]
(R1は炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1または2であることが好ましい。
R2は炭素数2~6のアルキレン基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数2~5であることがより好ましく、炭素数3または4であることがさらに好ましい。
nは1~4の整数を示し、1または2であることがより好ましい。)
【0021】
一般式1で表されるアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノールなどが挙げられ、これらのうち1種もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも連続印刷安定性の点、臭気の点、および乾燥性の点から1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むことが好ましく、中でも、バインダー樹脂の溶解性の点から、3-メトキシブタノールを含むことが特に好ましい。
【0022】
アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)の全含有量は、連続印字安定性、インキの乾燥性の点から、有機溶剤(A)全量中35~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
また、インキの乾燥性の点から、1気圧の沸点165℃以下であるアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a’)を、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)全量中50質量%以上含有することがより好ましい。
1気圧の沸点165℃以下であるアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a’)としては、1-メトキシ-2-プロパノール(沸点121℃)、3-メトキシブタノール(沸点158℃)が好ましく、バインダー樹脂溶解性の点から3-メトキシブタノールがより好ましい。
【0023】
また、前記有機溶剤(A)は、有機溶剤(A)のみを1気圧50℃の環境下で200分静置したとき、静置前後における質量減少率が50質量%以上であることが好ましい。質量減少率が50質量%以上となることにより、印刷時の乾燥性が良好になり、印字率に関わらずに高画質を実現することができる。
【0024】
さらに、前記有機溶剤(A)が、一般式2で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤および/または一般式3で表されるアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤を含有することにより、吐出時と乾燥時の表面張力をコントロールし、印字率や基材の浸透性に関わらない高画質を実現することができる。
【0025】
R3-(O-R4)m-OR5 [一般式2]
(R3およびR5は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1または2であることが好ましい。
R4は炭素数2~4のアルキレン基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数2または3であることがより好ましい。
mは1~4の整数を示し、1または2であることがより好ましい。)
【0026】
一般式2で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、等が挙げられる。
これらのうち1種もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。中でもインキの保存安定性、乾燥性の点からジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを含むことが好ましい。
【0027】
R6-CO-(O-R7)l-OR8 [一般式3]
(R6は炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1または2であることが好ましい。
R8は炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1~4であることが好ましい。
R7は炭素数2~6のアルキレン基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数2~4であることが好ましい。
lは1~6の整数を示し、1~4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい)
【0028】
一般式3で表されるアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、(ポリ)プロレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、(ポリ)ブチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネートなどが挙げられる。
これらのうち1種もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテートを含むことが、インキの保存安定性、乾燥性、塗膜耐性の点から特に好ましい。
【0029】
本発明ではインキの粘度や吐出性の調整を目的として、その他の溶剤も併用することが出来る。その他の溶剤としては、乳酸エステル、アルコキシアルキルアミド、アルカンジオール、環状エーテル、複素環系溶剤、及び炭化水素系溶剤などが挙げられる。
具体的には、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド、N,N-ジブチル-β-ブトキシプロピオンアミド、3-メチル-2-オキサゾリジノン、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、1-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。基材へのインキの浸透性の点から、3-メチル-2-オキサゾリジノン、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、ε-カプロラクトンがより好ましい。また、インキの保存安定性の観点からは3-メチル-2-オキサゾリジノン(沸点266℃)が好ましい。
【0030】
[表面調製用添加剤(B)]
アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)は、非水系インクジェットインキ組成物で一般的に使用される溶剤よりも表面張力が比較的高く、高画質を得ることが困難である。本発明では、表面調整用添加剤(B)として、3-メトキシブタノールに表面調整用添加剤を0.5質量%添加したときの25℃における表面張力が、未添加の3-メトキシブタノールに比べ6.0mN/m以上低下する特徴を持つ添加剤を含有することで、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤の表面張力を低下させ、印字率や基材の浸透性に関わらず高画質を実現することができた。
【0031】
表面調整用添加剤(B)としては、シリコン系、シリコンアクリル系、アクリル系、フッ素系、アセチレングリコール系等の界面活性剤が挙げられるが、前記の通り3-メトキシブタノールに対する表面張力低下能力が6.0mN/m以上あるものを含有すれば、いずれも使用できる。表面張力低下能力が6.0mN/m以上の界面活性剤は、表面調製用添加剤(B)全量に対して50質量%以上含有することが好ましい。
【0032】
中でもアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)に対する表面張力低下能力が高い点から、シリコン系、シリコンアクリル系の界面活性剤を含有することが特に好ましい。
シリコン系の表面調整用添加剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いることができる。
中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物、アラルキル変性ポリシロキサン化合物が耐擦性等の点で好ましい。
シリコンアクリル系の表面調整用添加剤としては、例えば、アクリル樹脂と、シロキサン系化合物とのグラフト共重合物である、シロキサン変性アクリル樹脂であることが好ましい。
【0033】
ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKF-353A、KF-354L、KF6017、X-22-6551、AW-3、日信化学工業株式会社製のSAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG503A、SAG008、SAG010、東レ・ダウコーニング株式会社製の8019ADDITIVE、8029ADDITIVE、8032ADDITIVE、8054ADDITIVE、8526ADDITIVE、8616ADDITIVE、57ADDITIVE、67ADDITIVE、L7001、L7002、L7604、FZ2105、FZ2110、FZ2123、FZ2191、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-300、302、306、307、333、330、377、エボニックデグサ社製のTEGO Glide 100,110、130、406、410、415、420、432、435、440、450等が挙げられる。
アラルキル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-322、323、信越化学工業(株)社製のKF-410、東レダウコーニング(株)製のSM 7001EX、SM 7002EX等が挙げられる。
シリコンアクリル系の表面調整用添加剤として、例えば、信越化学工業株式会社製のKP541、KP543、KP545、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-3550、BYK-SILCLEAN3700、楠本化成株式会社製のLHP-810等が挙げられる。
【0034】
表面調整用添加剤(B)の全含有量は、インキ全量を基準として、0.001~2質量%であることが好ましく、0.001~1質量%であることがより好ましく、0.03~0.5質量%であることが更に好ましく、0.1~0.3質量%であることが最も好ましい。
【0035】
[着色剤]
本発明の非水系インクジェットインキ組成物に使用される着色剤として、無機顔料、有機顔料及び染料等を用いることが出来る。これら着色剤は、印刷用途及び塗料用途のインキに一般的に使用される着色剤であってよく、発色性及び耐光性等の必要となる用途に応じて適切な着色剤を選択することができる。これら着色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いても良い。
【0036】
着色剤として顔料を用いる場合、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料、または有彩色の有機顔料が使用できる。
【0037】
本発明に好ましく用いられる有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、16、17、20、24、55、74、83、86、87、93、109、110、117、120、125、124、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、170、171、172、174、176、180、185、188、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、146、149、150、168、177、180、185、192、202、206、207、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、245、269、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック1、6、7等が挙げられる。
【0038】
これら顔料の、インキ中の含有量は、着色力、保存安定性、インクジェット粘度適性の点から、1~20質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましく、2~5質量%が最も好ましい。画像粒状感を低減するため淡色インクを用いる場合は、顔料の含有量を濃色インクの場合の1/10~1/2とすることが好ましく、1/5~1/3とすることがより好ましい。
【0039】
有機顔料の平均粒径は、D50が50~350nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が50nm以上では、耐光性と着色力が得られ、350nm以下では、インキ安定性や吐出性が良好になる。前記顔料の平均粒径は、インクジェットインキを酢酸エチルで200~1000倍に希釈し、日機装社製 MICROTRAC UPA150で測定した際の、メジアン径(D50)である。
【0040】
[顔料分散剤]
本発明の一実施形態として顔料を含むインキを構成する場合、顔料の分散性及びインキの保存安定性を向上させるために、顔料分散剤を使用することが好ましい。顔料分散剤としては、従来既知の化合物を使用することできるが、吐出特性、インキの保存安定性の点から、塩基性官能基を有する樹脂型分散剤を使用することが好ましい。
【0041】
顔料分散剤の例としては、ルーブリゾール社製のソルスパース32000、76400、76500、J200、及びJ180等; ビックケミー社製のDisperbyk-161、162、163、164、165、166、167、及び168等; 味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822等が挙げられる。
【0042】
顔料分散剤の重量平均分子量(以下Mw)は、5,000~50,000が好ましく、10,000~45,000がより好ましい。Mwが5,000以上であれば、インキに使用される有機溶剤中での顔料分散剤自体の安定性が良好のため、顔料分散体の安定性が向上する。50,000以下であると、バインダー樹脂との相溶性が良好となり、インキ塗膜の白化現象が抑制され、発色性が良好になる。
【0043】
さらに、顔料分散剤は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、Mw/Mnが2以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。
Mw/Mnが2以下であることにより、顔料の分散粒径のばらつきの少ない顔料分散体を得ることができ、顔料分散体の低粘度化と保存安定性の両立が可能となる。
【0044】
顔料分散剤の酸価(mgKOH/g)は5~20が好ましく、5~15がより好ましい。アミン価(mgKOH/g)は5~50が好ましく、20~50がより好ましく、25~40がさらに好ましい。顔料分散剤の酸価、アミン価が上記の範囲内である場合、顔料分散工程において、顔料分散体の粘度がインクジェットインキに相応しい程度の低粘度になるまでの時間が短くなり、さらに、インキの保存安定性が良好になるため好ましい。
【0045】
ここで、「Mw」は、一般的なゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)によりポリスチレン換算分子量として求めることができる。例えば、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8320GPC)で、展開溶媒にDMFを用いたときのポリスチレン換算分子量で示すことができる。
「酸価」とは、分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めることが出来る。「アミン価」とは、分散剤固形分1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0046】
顔料分散剤の含有量は、インキ全量中に0.1~10質量%含まれることが好ましく、0.1~5質量%含まれることがより好ましい。顔料分散剤を0.1質量%以上含有することで、インキの保存安定性が良好になり、10質量%以下であることでインキの粘度が好適な範囲となり、良好な吐出性が得られる。
【0047】
本発明のインキには、顔料誘導体も使用することができる。顔料誘導体は、顔料分散剤との吸着性を更に向上させ、保存安定性を良化させる目的で使用される。顔料誘導体としては、有機顔料残基に、スルホン酸基またはカルボキシル基等の酸性基を有する化合物が好ましく使用される。
【0048】
顔料誘導体の含有量は、顔料に対して0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。顔料誘導体が0.1質量%以上であると、安定性、発色性が良好になり、20質量%以下であるとインキの粘度が好適な範囲となり、保存安定性が良好となる。
【0049】
[バインダー樹脂]
本発明に使用されるバインダー樹脂としては、インキ塗膜の耐擦過性、耐アルコール性、延伸性、光沢性、基材汎用性などの機能を発揮するものを使用できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、塩酢ビ系樹脂、塩ビ系樹脂、ロジン変性樹脂、エチレン-酢ビ系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等一般的に使用される樹脂が使用できる。これらバインダー樹脂を単独で使用しても、2種類上を混合しても良い。
【0050】
バインダー樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製のダイヤナール(登録商標)BRシリーズのアクリル系樹脂として、BR-50、BR-52、MB-2539、BR-60、BR-64、BR-73、BR-75、MB-2389、BR-80、BR-82、BR-83、BR-84、BR-85、BR-87、BR-88、BR-90、BR-95、BR-96、BR-100、BR-101、BR-102、BR-105、BR-106、BR-107、BR-108、BR-110、BR-113、MB-2660、MB-2952、MB-3012、MB-3015、MB-7033、BR-115、MB-2478、BR-116、BR-117、BR-118、BR-122、ER-502;
ウイルバー・エリス社製のパラロイド(登録商標)シリーズのアクリル系樹脂として、A-11、A-12、A-14、A-21、B-38、B-60、B-64、B-66、B-72、B-82、B-44、B-48N、B-67、B-99N、DM-55;
BASF社製のJONCRYL(登録商標)シリーズのスチレン-アクリル系樹脂として、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、819、JDX-C3000、JDXC3080;
日信化学工業製のソルバイン(登録商標)シリーズの塩酢ビ系樹脂として、ソルバインCL、CNL、C5R、TA3、TA5R(懸濁重合品)、 ワッカー社製のVINNOL(登録商標)シリーズの塩酢ビ系樹脂として、VINNOL E15/45、E15/45M、E15/40M、E15/48A(乳化重合法品)、H15/50、H15/42、H14/36、E18/38、H40/43、H11/59、H15/45M(懸濁重合法品);
荒川化学社製のロジンエステル系樹脂として、スーパーエステル75、エステルガムHP、マルキッド33;
安原ケミカル社製のテルペンフェノール系樹脂として、YSポリスター T80;
サートマー社製のスチレン-マレイン酸系樹脂として、SMA2625P等が挙げられる。
【0051】
前記バインダー樹脂のうち、インキ塗膜の耐アルコール性、耐擦性、光沢性等の点から、塩酢ビ樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。これらをそれぞれ単独で使用しても2種類以上混合しても良い。
【0052】
塩酢ビ系樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体である。この重合法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の重合方法が挙げられる。本発明は、溶液重合または乳化重合により製造された塩酢ビ樹脂を使用することが好ましい。
塩化ビニルと酢酸ビニルの質量比として95:5~70:30が好ましく、90:10~80:20がより好ましい。
【0053】
アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルを含む重合体であり、本発明では、メタクリル酸エステルを含む重合体が好ましく、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸ブチル(BMA)の共重合体が好ましく使用される。MMAとBMAの質量比としては、100:0~60:40が好ましく、90:10~70:30がより好ましい。
【0054】
バインダー樹脂は、重量平均分子量(Mw)が3,000~70,000が好ましく、5,000~60,000がより好ましく、10,000~60,000がさらに好ましい。Mwが3,000以上であれば、インキ塗膜の耐性が十分に発揮され、70,000以下であれば、微小なインクジェットプリンターヘッドからの吐出に負荷がかからず好ましい。上記範囲においては、分散剤との相溶性に優れ、白化現象が抑制される。
【0055】
塩酢ビ系樹脂の重量平均分子量(Mw)は3,000~70,000が好ましく、5,000~60,000がより好ましく、30,000~60,000がさらに好ましい。
【0056】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~100,000が好ましく、5,000~70,000がより好ましく、10,000~45,000がさらに好ましい。
【0057】
アクリル系樹脂の酸価(mgKOH/g)は、0~100が好ましく、0~80がより好ましく、0~20がさらに好ましい。
【0058】
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、0~150℃が好ましく、20~100℃がより好ましく、40~80℃がさらに好ましい。
【0059】
バインダー樹脂は、インキ全量中に1~20質量%含まれることが好ましく、2~10質量%がより好ましく、3~8質量%がさらに好ましい。インキ全量中に1質量%以上含まれると、記録媒体表面へのインキの密着性が向上し、インキ塗膜の耐性が良化する。20質量%以下では、インキ粘度が低粘度となり、インクジェット吐出適性が向上するために好ましい。
【0060】
塩酢ビ系樹脂は、インキ全量中0.1~10質量%含有されることが好ましく、0.3~7質量%含有することがより好ましい。
【0061】
アクリル系樹脂は、インキ全量中1~20質量%含有されることが好ましく、1~10質量%含有することがより好ましい。
【0062】
[記録媒体]
本発明で用いられる記録媒体については特に限定はないが、軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニル、ポリスチレン、発泡スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、PET、ポリカーボネート等のプラスチック基材やこれらの混合品または変性品、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、段ボール等の紙基材、ガラス、ステンレス、アルミ等の金属基材等が挙げられる。中でも、価格、加工性の点からは、軟質塩化ビニルシート、硬質塩化ビニルシート、段ボールが好ましく用いられ、特に高画質で印刷できる点からは、非浸透性基材であるガラス、ステンレス、アルミが好ましく用いられる。
【0063】
[インクジェットインキの製造方法]
本発明のインキは公知の方法によって製造することができるが、具体的には、以下のように行われる。まず始めに、単一もしくは混合有機溶剤、顔料、配合する場合にはバインダー樹脂、分散剤等を混合した後、ペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって顔料を分散することで顔料分散体を調整し、得られた顔料分散体に、所望のインキ特性を有するように、有機溶剤の残部、バインダー樹脂の残部、その他添加剤(たとえば表面調整剤)を添加することで得られる。
【0064】
[インクジェットインキの物性]
本発明のインキは、インクジェットプリントヘッドからの吐出性、着弾後のドット形成の信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力は20~50mN/mであることが好ましく、21~40mN/mであることがより好ましく、22~30mN/mであることがさらに好ましい。同様の観点から、25℃における粘度は、2~20mPa・sが好ましく、3~15mPa・sがより好ましく、5~12mPa・sであることがさらに好ましい。
なお、表面張力の測定は、協和界面科学社製 自動表面張力計CBVP-Zを用いて、25℃の環境下で白金プレートをインキで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。粘度の測定は、東機産業社製 TVE25L型粘度計を用いて、25℃の環境下で、50rpm時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0066】
(表面張力低下能力評価)
3-メトキシブタノールに固形分0.5質量%となるように各種添加剤を加え、よく混合した後に表面張力を測定した。測定は、協和界面科学株式会社製 自動表面張力計 CBVP-Zを用いて、25℃環境下で、白金プレート使用したプレート法にて行った。また、同様にジエチレングリコールジエチルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートについても測定した。各種添加剤を加えた時の表面張力測定結果、および添加剤を加えていない溶剤の表面張力との差(Δ)について、表1に記載した。
【0067】
【0068】
(顔料分散液Iの製造例)
顔料としてピグメントブルー15:4を20部、顔料分散剤としてソルスパース32000を10部、ジエチレングリコールジエチルエーテル70部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液I(Cyan)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントレッド122に変更し、同様の操作にて顔料分散液I(Magenta)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントイエロー150に変更し、同様の操作にて顔料分散液I(Yellow)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントブラック7に変更し、同様の操作にて顔料分散液I(Black)を得た。
【0069】
(顔料分散液IIの製造例)
顔料としてピグメントブルー15:4を20部、顔料分散剤としてソルスパース32000を10部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート70部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液II(Cyan)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントレッド122に変更し、同様の操作にて顔料分散液II(Magenta)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントイエロー150に変更し、同様の操作にて顔料分散液II(Yellow)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントブラック7に変更し、同様の操作にて顔料分散液II(Black)を得た。
【0070】
(顔料分散液IIIの製造例)
顔料としてピグメントブルー15:4を20部、顔料分散剤としてソルスパース32000を10部、3-メトキシブタノール70部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液III(Cyan)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントレッド122に変更し、同様の操作にて顔料分散液III(Magenta)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントイエロー150に変更し、同様の操作にて顔料分散液III(Yellow)を得た。ピグメントブルー15:4をピグメントブラック7に変更し、同様の操作にて顔料分散液III(Black)を得た。
【0071】
(実施例1)
顔料分散液I(Cyan)を20部、バインダー樹脂としてダイヤナールBR-113を3.9部、表面調製用添加剤(B)としてBYK-3550を0.1部、3-メトキシブタノール50部、3-メトキシブチルアセテート26部をディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明のインクジェット用シアンインキを作成した。同様にして、顔料分散液I(Magenta、Yellow、Black)を用いてマゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキを作成した。作成したインクジェット用インキを、1組のインキセットとしてVJ-628(武藤工業株式会社製インクジェットプリンタ)に充填し、ポリ塩化ビニルシートを印刷媒体として25℃環境下で印刷評価を行った。
【0072】
(実施例2~実施例22、実施例28、比較例1~比較例7)
実施例1の有機溶剤(A)ならびに表面調製用添加剤(B)を表2~5の組成に替えて、実施例1と同様の操作にて、インキセットを作製した。
【0073】
(実施例23)
顔料分散液II(Cyan)を20部、バインダー樹脂としてダイヤナールBR-113を3.9部、表面調製用添加剤(B)としてBYK-3550を0.1部、3-メトキシブタノール50部、3-メトキシブチルアセテート26部をディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明のインクジェット用シアンインキを作成した。同様にして、顔料分散液II(Magenta、Yellow、Black)を用いてマゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキを作成した。作成したインクジェット用インキを、1組のインキセットとしてVJ-628(武藤工業株式会社製インクジェットプリンタ)に充填し、ポリ塩化ビニルシートを印刷媒体として25℃環境下で印刷評価を行った。
【0074】
(実施例24~実施例27、実施例29、比較例8)
実施例23の有機溶剤(A)ならびに表面調製用添加剤(B)を表4、5の組成に替えて、実施例23と同様の操作にて、インキセットを作製した。
【0075】
(実施例30)
顔料分散液III(Cyan)を20部、バインダー樹脂としてダイヤナールBR-113を3.9部、表面調製用添加剤(B)としてBYK-3550を0.1部、3-メトキシブタノール26部、イプシロン-カプロラクトン10部、L-乳酸エチル40部をディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明のインクジェット用シアンインキを作成した。同様にして、顔料分散液III(Magenta、Yellow、Black)を用いてマゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキを作成した。作成したインクジェット用インキを、1組のインキセットとしてVJ-628(武藤工業株式会社製インクジェットプリンタ)に充填し、ポリ塩化ビニルシートを印刷媒体として25℃環境下で印刷評価を行った。
【0076】
(実施例31)
実施例30の有機溶剤(A)ならびに表面調製用添加剤(B)を表4の組成に替えて、実施例30と同様の操作にて、インキセットを作製した。
【0077】
実施例および比較例で得られたインクジェットインキの性能を、下記の方法で評価した。なお、評価点は各色のインキのうち、最も評価の低いインキの評価点とした。
【0078】
(保存安定性評価)
作成したインキの粘度をE型粘度計(東機産業社製TVE-20L)を用いて、25℃回転数50rpmの条件で測定した。このインキを70℃の恒温機に保存し、経時前後でのインキの粘度変化を評価した。評価基準は下記のとおりであり、3以上を良好とした。
5:10週間保存後の粘度変化率が±10%未満
4:8週間保存後の粘度変化率が±10%未満
3:6週間保存後の粘度変化率が±10%未満
2:4週間保存後の粘度変化率が±10%未満
1:4週間保存後の粘度変化率が±10%以上
【0079】
(連続印字安定性評価)
上記プリンタにてインキ各色印字率100%のベタ画像(幅1m×長さ10m)を印字し、印字後に発生したノズル抜けの程度を確認した。評価基準は下記のとおりであり、3以上を良好とした。
5:ノズル抜けなし
4:ノズル抜け2%未満
3:ノズル抜け5%未満
2:ノズル抜け10%未満
1:ノズル抜け10%以上
【0080】
(デキャップ性評価)
上記プリンタのヘッドに評価インキを充填し、初期でノズル抜けがないことを印字、確認したのち、一定時間放置し、再度印字した。このときノズル抜けが発生するか否かを確認した。評価基準は下記のとおりであり、3以上を良好とした。
5:1週間放置後もノズル抜けしない
4:1日放置後もノズル抜けしない
3:3時間放置後もノズル抜けしない
2:1時間放置後もノズル抜けしない
1:1時間放置でノズル抜けが発生する
【0081】
(耐擦性評価)
上記プリンタにてインキ各色について印字率100%のベタ画像(各縦15cm×横3cm)を印字し、24時間室温で乾燥させた印刷物を学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業製 AB-301)により、摩擦子として金巾3号を用いて耐擦性評価を行った。荷重、往復回数を変え試験を行い、印字面の剥がれを評価した。評価基準は下記のとおりであり、3以上を良好とした。
5:1kg荷重、50往復で印字面が剥がれない
4:500g荷重、100往復で印字面が剥がれない
3:500g荷重、50往復で印字面が剥がれない
2:200g荷重、100往復で印字面が剥がれない
1:200g荷重、100往復で印字面が剥がれる
【0082】
(低印字部粒状感評価)
上記プリンタにてインキ各色について低印字率(10~40%)の均一ベタ画像(各縦1.5cm×横1.5cm)を印字し、印字後に目視にて低印字部の粒状感の有無を観察した。粒状感とは、ドットが融着することで下地が目立ち、画質が荒く見える現象である。印字率が低いほど粒状感が目立ちやすい。評価基準は下記のとおりであり、3以上を良好とした。
5:印字率10%にて粒状感なし
4:印字率20%にて粒状感なし
3・印字率30%にて粒状感なし
2:印字率40%にて粒状感なし
1:印字率40%にて粒状感あり
【0083】
(高印字部濃度不均一化評価)
上記プリンタにてインキ各色について高印字率(100~200%)の均一ベタ画像(各縦1.5cm×横1.5cm)を印字し、印字後に目視にて高印字部のインキ濃度の不均一化の有無を観察した。インキ濃度不均一化とは、画像印字物の各部位の色濃度について、一定濃度で印字されている中央部位と比較した際に、画像の端部位から中央部位にかけて、濃度が低い部位と高い部位が表れ、中央部位が近づくにつれて濃度が一定化する現象である。濃度不均一化は印字率が高いほど発生しやすい。評価基準は下記のとおりであり、3以上を良好とした。
なお、印字率100%は各単色の100%ベタ画像、印字率120%はシアン、マぜンタ、イエローのうち2色の各60%重ね画像、印字率160%はシアン、マぜンタ、イエローのうち2色の各80%重ね画像、印字率200%はシアン、マゼンタ、イエローのうち2色の各100%重ね画像について評価した。
5:印字率200%にてインキ濃度の不均一化なし
4:印字率160%にてインキ濃度の不均一化なし
3:印字率120%にてインキ濃度の不均一化なし
2:印字率100%にてインキ濃度の不均一化なし
1:印字率100%にてインキ濃度の不均一化あり
【0084】
(非浸透性基材描画性評価)
上記プリンタの基材をポリ塩化ビニルシートからガラス板に変更し、印字率を変えながら(100~200%)ベタ画像の印刷を行った。非浸透性基材においては印字率が高いほど、乾燥が遅くなり、にじみが発生しやすくなる。目視にてにじみがみられない状態を作画可能と判断した。評価基準は下記のとおりであり、3以上を良好とした。
5:印字率200%にて作画可能
4:印字率160%にて作画可能
3:印字率120%にて作画可能
2:印字率100%にて作画可能
1:印字率100%にて作画不可能
【0085】
なお、表1~5中で使用した成分は以下の通りである。
・樹脂(「ダイヤナールBR-113」三菱ケミカル社製アクリル樹脂、重量平均分子量30,000、ガラス転移点75℃、酸価3.5)
・BYK-3550(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコン変性アクリル)
・BYK-SILCLEAN3700(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、水酸基含有シリコン変性アクリル)
・LHP―810(商品名、楠本化成株式会社製、アクリルシリコーン系重合物)
・KP541(商品名、信越化学工業株式会社製、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー)
・BYK-322(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン)
・BYK-331(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
・BYK-333(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
・BYK-361N(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、アクリル系共重合物)
・MP(3-メトキシプロパノール、沸点121℃)
・MB(3-メトキシブタノール、沸点158℃)
・MMB(3-メトキシメチルブタノール、沸点174℃)
・DPM(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、沸点188℃)
・DPDM(ジプロピレングリコールジメチルエーテル、沸点171℃)
・MEDG(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、沸点176℃)
・DEDG(ジエチレングリコールジエチルエーテル、沸点189℃)
・MBA(3-メトキシブチルアセテート、沸点171℃)
・BGAc(エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、沸点192℃)
・ECL(イプシロン-カプロラクトン、沸点253℃)
・DAA(ジアセトンアルコール、沸点166℃)
・乳酸エチル(L-乳酸エチル、沸点154℃)
【0086】
表2~4に記載の通り、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤(a)を有機溶剤(A)全量中35質量%以上、80質量%以下含有することにより、保存安定性、連続印字安定性、デキャップ性を高い水準で満たすことができている。さらに、表1にて3-メトキシブタノールに添加することで表面張力を未添加の3-メトキシブタノールより6.0mN/m以上低下する表面調製用添加剤(B)を含有することにより、低印字部の粒状感、高印字部の濃度不均一化が現れにくくなり、非浸透性基材への描画を高い水準で行うことができる。また、アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤および/またはアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤を含有することで、耐擦性についても高い評価を得ている。一方、表5に記載の通り、比較例1~8では非浸透性基材への描画を満足するインキは得られず、各評価項目において低い水準となっている。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】