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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20221129BHJP
   F24H 8/00 20220101ALI20221129BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20221129BHJP
【FI】
F24H9/00 B
F24H8/00
F24H15/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018102949
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019207079
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翔
(72)【発明者】
【氏名】長尾 英也
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096593(JP,A)
【文献】特開2008-070092(JP,A)
【文献】特開2001-336826(JP,A)
【文献】特開平10-122666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 8/00
F24H 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、
このバーナにより発生された燃焼ガスから熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器と、
前記熱回収に伴って発生するドレンを、中和剤を用いて中和させてから排水可能な中和器と、
前記バーナの燃焼熱量と駆動燃焼時間との積に基づいて、前記中和剤の消費量に対応する中和剤消費量対応値Qを求め、かつこれを積算した中和剤積算消費量対応値ΣQが所定の基準値に達したか否かを判断する処理を実行可能な制御手段と、
を備えている、温水装置であって、
前記制御手段は、前記バーナの駆動燃焼の継続時間、前記バーナの停止時間、および前記バーナの駆動燃焼時におけるドレン発生量もしくはこれに対応する値のうち、少なくともいずれか1つのパラメータに基づいて、前記中和剤消費量対応値Qを補正するための補正値を設定し、この補正値を用いて前記中和剤消費量対応値Qを補正可能とされており、
前記補正値として、前記バーナの駆動燃焼の継続時間に基づいて設定される第1の補正値があり、
この第1の補正値は、前記バーナの駆動燃焼の開始初期よりもその後の所定時間経過時の方が、前記中和剤消費量対応値Qを小さくする値とされていることを特徴とする、温水装置。
【請求項2】
バーナと、
このバーナにより発生された燃焼ガスから熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器と、
前記熱回収に伴って発生するドレンを、中和剤を用いて中和させてから排水可能な中和器と、
前記バーナの燃焼熱量と駆動燃焼時間との積に基づいて、前記中和剤の消費量に対応する中和剤消費量対応値Qを求め、かつこれを積算した中和剤積算消費量対応値ΣQが所定の基準値に達したか否かを判断する処理を実行可能な制御手段と、
を備えている、温水装置であって、
前記制御手段は、前記バーナの駆動燃焼の継続時間、前記バーナの停止時間、および前記バーナの駆動燃焼時におけるドレン発生量もしくはこれに対応する値のうち、少なくともいずれか1つのパラメータに基づいて、前記中和剤消費量対応値Qを補正するための補正値を設定し、この補正値を用いて前記中和剤消費量対応値Qを補正可能とされており、
前記補正値として、前記バーナの停止時間に基づいて設定される第2の補正値があり、
この第2の補正値は、前記バーナの停止時間が短い場合よりも長い場合の方が、前記中和剤消費量対応値Qを大きくする値とされていることを特徴とする、温水装置。
【請求項3】
バーナと、
このバーナにより発生された燃焼ガスから熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器と、
前記熱回収に伴って発生するドレンを、中和剤を用いて中和させてから排水可能な中和器と、
前記バーナの燃焼熱量と駆動燃焼時間との積に基づいて、前記中和剤の消費量に対応する中和剤消費量対応値Qを求め、かつこれを積算した中和剤積算消費量対応値ΣQが所定の基準値に達したか否かを判断する処理を実行可能な制御手段と、
を備えている、温水装置であって、
前記制御手段は、前記バーナの駆動燃焼の継続時間、前記バーナの停止時間、および前記バーナの駆動燃焼時におけるドレン発生量もしくはこれに対応する値のうち、少なくともいずれか1つのパラメータに基づいて、前記中和剤消費量対応値Qを補正するための補正値を設定し、この補正値を用いて前記中和剤消費量対応値Qを補正可能とされており、
前記補正値として、前記ドレン発生量もしくはこれに対応する値に基づいて設定される第4の補正値があり、
この第4の補正値は、前記ドレン発生量もしくはこれに対応する値が小さい場合よりも大きい場合の方が、前記バーナの駆動燃焼開始初期の所定期間中における前記中和剤消費量対応値Qを小さくする値とされていることを特徴とする、温水装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の温水装置であって、
前記補正値として、前記バーナの駆動燃焼が実行された場合に、前記バーナの前回の駆動燃焼の終了時点から今回の駆動燃焼の開始時点までの前記バーナの停止時間と、今回の駆動燃焼の継続時間と、の双方に基づいて設定される第3の補正値があり、
前記バーナの今回の駆動燃焼における中和剤消費量対応値Qは、前記第3の補正値により補正されるように構成されている、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼働時にドレン(凝縮水)が発生し、かつこのドレンを中和するための中和器を備えたタイプの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、温水装置の具体例として、特許文献1に記載のものを先に提案している。
同文献に記載の温水装置は、バーナによって発生される燃焼ガスから熱交換器を利用して熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なう構成であるが、前記熱回収に伴って発生する強酸性のドレンを、炭酸カルシウムなどの中和剤が収容された中和器に導いて中和させるようにしている。ここで、中和剤は、ドレンの中和処理を行なうに連れて消耗する。これに対し、特許文献1においては、バーナの燃焼熱量と燃焼時間との積を、中和剤消費量対応値(中和剤の消費量の予測値)とし、この中和剤消費量対応値の積算値が所定の基準値に達すると、中和剤の使用寿命あるいは補充・交換時期が到来したものとし、その旨が報知されるように構成されている。
このような構成によれば、中和剤の使用寿命が到来した後においても、それ以前と同様に、中和器をそのまま使用し続けるといった不具合を回避することが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、バーナの燃焼熱量と燃焼時間との積の値は、中和剤の実際の消費量との関係において、概略的には相関関係があるものの、厳密には、それら両者の対応関係にはずれを生じる場合がある。たとえば、バーナが一定の燃焼火力で駆動燃焼を継続している場合であっても、バーナの駆動燃焼の開始初期とその後の中・後期とでは、中和剤の実際の消費量(単位時間当たりの消費量)は、相違したものとなる。バーナの駆動燃焼の開始初期には、ドレンが滞留している中和器内に新たなドレンが流れ込むのに対し、駆動燃焼の中・後期には、中和器内へのドレンの流れ込みが定常化するためである。また、バーナが複数回にわたって断続的に駆動燃焼される場合、1回目の駆動燃焼時から2回目の駆動燃焼までのバーナ停止時間が短い場合と、長い場合とでは、やはり中和剤の実際の消費量に差が生じる。さらに、バーナの燃焼熱量と実際のドレン発生量とは正確な対応関係にはなく、実際のドレン発生量は、熱交換器による熱回収時の熱効率によっても変動する。このように、実際のドレン発生量とバーナの燃焼熱量とのズレに起因して、中和剤の実際の消費量の予測値にも誤差が発生する。
このようなことから、従来においては、演算で求めた中和剤消費量対応値が、中和剤の実際の消費量とは正確に対応しない場合がある。これでは、中和剤の寿命あるいは補充・交換時期を適切に判断することができず、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3675225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、演算で求められる中和剤消費量対応値を、従来よりも中和剤の実際の消費量に正確に対応するものとし、中和剤の寿命あるいは補充・交換時期を適切に判断することが可能な温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される温水装置は、バーナと、このバーナにより発生された燃焼ガスから熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器と、前記熱回収に伴って発生するドレンを、中和剤を用いて中和させてから排水可能な中和器と、前記バーナの燃焼熱量と駆動燃焼時間との積に基づいて、前記中和剤の消費量に対応する中和剤消費量対応値Qを求め、かつこれを積算した中和剤積算消費量対応値ΣQが所定の基準値に達したか否かを判断する処理を実行可能な制御手段と、を備えている、温水装置であって、前記制御手段は、前記バーナの駆動燃焼の継続時間、前記バーナの停止時間、および前記バーナの駆動燃焼時におけるドレン発生量もしくはこれに対応する値のうち、少なくともいずれか1つのパラメータに基づいて、前記中和剤消費量対応値Qを補正するための補正値を設定し、この補正値を用いて前記中和剤消費量対応値Qを補正可能とされており、前記補正値として、前記バーナの駆動燃焼の継続時間に基づいて設定される第1の補正値があり、この第1の補正値は、前記バーナの駆動燃焼の開始初期よりもその後の所定時間経過時の方が、前記中和剤消費量対応値Qを小さくする値とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、中和剤消費量対応値Qを、バーナの駆動燃焼の継続時間の長さ、バーナの停止時間の長さ、またはバーナの駆動燃焼時におけるドレン発生量の多さに基づいて、中和剤の実際の消費量と大きな誤差を生じない正確な値に補正することが可能である。このため、これを積算した中和剤積算消費量対応値ΣQの値についても、中和剤の実際の積算消費量に正確に対応したものとすることができ、中和剤の寿命または補充・交換時期を、従来よりも精度よく判断し得るものとすることが可能である。その結果、中和剤の寿命が尽きているにも拘わらず、中和器をそのまま使用し続けたり、あるいは中和剤の補充・交換時期が到来していないにも拘わらず、中和剤を過度に早期に補充・交換するといったことを解消することができる。
【0011】
さらに、このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、中和剤の実際の消費量は、バーナの駆動燃焼の初期(バーナの駆動燃焼の継続時間が短い時間帯)よりも、その後の中・後期(バーナの駆動燃焼が長い時間帯)の方が、少なくなるのが一般的である。これに対し、前記第1の補正値は、そのようなことを反映するものとなっている。したがって、バーナの駆動燃焼の継続時間の長短に起因して、中和剤消費量対応値Qが中和剤の実際の消費量に対して大きくずれたものにならないようにすることが可能である。
【0012】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、バーナと、このバーナにより発生された燃焼ガスから熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器と、前記熱回収に伴って発生するドレンを、中和剤を用いて中和させてから排水可能な中和器と、前記バーナの燃焼熱量と駆動燃焼時間との積に基づいて、前記中和剤の消費量に対応する中和剤消費量対応値Qを求め、かつこれを積算した中和剤積算消費量対応値ΣQが所定の基準値に達したか否かを判断する処理を実行可能な制御手段と、を備えている、温水装置であって、前記制御手段は、前記バーナの駆動燃焼の継続時間、前記バーナの停止時間、および前記バーナの駆動燃焼時におけるドレン発生量もしくはこれに対応する値のうち、少なくともいずれか1つのパラメータに基づいて、前記中和剤消費量対応値Qを補正するための補正値を設定し、この補正値を用いて前記中和剤消費量対応値Qを補正可能とされており、前記補正値として、前記バーナの停止時間に基づいて設定される第2の補正値があり、この第2の補正値は、前記バーナの停止時間が短い場合よりも長い場合の方が、前記中和剤消費量対応値Qを大きくする値とされていることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、バーナの駆動燃焼が終了した後であっても、中和器内には先に流れ込んだドレンが滞留し、このドレンに中和剤が接触し続ける場合があるが、このような場合には、バーナが駆動燃焼を終了してからその後の停止時間が長くなるほど、中和剤の実際の消費量は多くなる。これに対し、前記第2の補正値は、そのようなことを反映している。したがって、バーナの停止時間の長短に起因して、中和剤消費量対応値Qが中和剤の実際の消
費量に対して大きくずれたものにならないようにすることが可能である。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記補正値として、前記バーナの駆動燃焼が実行された場合に、前記バーナの前回の駆動燃焼の終了時点から今回の駆動燃焼の開始時点までの前記バーナの停止時間と、今回の駆動燃焼の継続時間と、の双方に基づいて設定される第3の補正値があり、前記バーナの今回の駆動燃焼における中和剤消費量対応値Qは、前記第3の補正値により補正されるように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、バーナの前回の駆動燃焼の終了時点から今回の駆動燃焼の開始時点までのバーナの停止時間と、今回のバーナの駆動燃焼の継続時間とを考慮し(バーナの停止時間であっても、ドレンが中和剤に接触し続けるために、ドレンが消費され、その影響はその次である今回の駆動燃焼の開始時における中和剤消費量に及ぶ)、中和剤消費量対応値Qを中和剤の実際の消費量に正確に対応させ得る補正処理を、第3の補正値を用いて適切かつ簡易に図ることができる。したがって、中和剤消費量対応値Qの演算処理の簡易化、そのためのプログラムデータの簡素化などを図るのに好適である。
【0016】
本発明の第3の側面により提供される温水装置は、バーナと、このバーナにより発生された燃焼ガスから熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器と、前記熱回収に伴って発生するドレンを、中和剤を用いて中和させてから排水可能な中和器と、前記バーナの燃焼熱量と駆動燃焼時間との積に基づいて、前記中和剤の消費量に対応する中和剤消費量対応値Qを求め、かつこれを積算した中和剤積算消費量対応値ΣQが所定の基準値に達したか否かを判断する処理を実行可能な制御手段と、を備えている、温水装置であって、前記制御手段は、前記バーナの駆動燃焼の継続時間、前記バーナの停止時間、および前記バーナの駆動燃焼時におけるドレン発生量もしくはこれに対応する値のうち、少なくともいずれか1つのパラメータに基づいて、前記中和剤消費量対応値Qを補正するための補正値を設定し、この補正値を用いて前記中和剤消費量対応値Qを補正可能とされており、前記補正値として、前記ドレン発生量もしくはこれに対応する値に基づいて設定される第4の補正値があり、この第4の補正値は、前記ドレン発生量もしくはこれに対応する値が小さい場合よりも大きい場合の方が、前記バーナの駆動燃焼開始初期の所定期間中における前記中和剤消費量対応値Qを小さくする値とされていることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、すなわち、中和剤の実際の消費量は、ドレン発生量の影響を受けて変化する。具体的には、ドレン発生量が少ない場合は、多い場合よりも、ドレンの単位量当たりの中和剤消費量は多くなる。これに対し、前記第4の補正値は、そのようなことを反映するものとなっている。したがって、ドレン発生量の多さに起因して、中和剤消費量対応値Qが中和剤の実際の消費量に対して大きくずれたものにならないようにすることが可能である。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る温水装置の概略構成の一例を示す説明図である。
図2図1に示す温水装置において実行される基本的な動作制御の例を示すフローチャートである。
図3】(a)は、バーナの駆動燃焼のオン・オフの具体例を示すタイムチャートであり、(b)は、中和剤消費量対応値Qの補正に用いられる第1の補正値の例を示す表である。
図4】バーナの駆動燃焼の継続時間と中和剤消費量との関係の一例を示すグラフである。
図5】(a)は、バーナの駆動燃焼のオン・オフの具体例を示すタイムチャートであり、(b)は、中和剤消費量対応値Qの補正に用いられる第2の補正値の例を示す表である。
図6】バーナの停止時間と中和剤消費量との関係の一例を示すグラフである。
図7】(a)は、バーナの駆動燃焼のオン・オフの具体例を示すタイムチャートであり、(b)は、中和剤消費量対応値Qの補正に用いられる第3の補正値の例を示す表である。
図8】(a)は、バーナの駆動燃焼のオン・オフの具体例を示すタイムチャートであり、(b)および(c)は、バーナの駆動燃焼時間と中和剤消費量との関係の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1に示す温水装置WHは、潜熱回収型の給湯装置であり、基本的なハード構成は、従来既知のものと同様であり、簡単に述べることとする。
この温水装置WHは、缶体1内の下部に配されたバーナ2、このバーナ2に燃焼用空気を供給するためのファン3、1次および2次の熱交換器4a,4b、中和器5、および制御部6を備えている。バーナ2は、たとえば燃料ガスを燃焼させるガスバーナである。1次および2次の熱交換器4a,4bは、たとえばフィン付チューブなどの伝熱管を備えており、バーナ2により発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱をそれぞれ回収することにより、伝熱管を通過する湯水を加熱することが可能である。中和器5は、粒状の中和剤50が容器51内に収容された構成であり、2次熱交換器4bによる潜熱回収に伴って発生する強酸性のドレンは、ドレン受け部10、およびドレン用流路11を介して中和器5の導入口51aに導かれるようになっている。中和剤50は、たとえば粒状の炭酸カルシウムまたは塩化マグネシウムである。中和器5内に流入した強酸性のドレンは、中和剤50との接触によって中和されてから、中和器5の流出口51bから外部に排水される。
制御部6は、温水装置WHの各部の動作制御や各種のデータ処理を実行するものであり、本発明でいう制御手段の一例に相当する。この制御部6は、後述するように、中和剤50の寿命あるいは補充・交換時期を推定する処理、およびこれに付属する処理を実行するように構成されている。
【0022】
温水装置WHにおいては、概略的には、図2のフローチャートで示すような動作制御が実行される。まず、この点について説明する。
【0023】
すなわち、バーナ2が駆動燃焼を開始すると、後述する所定の条件に応じて補正値αが設定され、中和剤50の消費量に対応する中和剤消費量対応値Q(中和剤50の消費量の予測値)が演算される(S1:YES,S2)。この中和剤消費量対応値Qは、後述するように、基本的には、バーナ2の燃焼熱量Gと、駆動燃焼時間Taとの積であるが、本実施形態では、補正値αを用いて補正された値とされる。中和剤消費量対応値Qを求めた場合には、それまでに求めた中和剤消費量対応値Qの積算値としての中和剤積算消費量対応値ΣQを求め、かつこの中和剤積算消費量対応値ΣQを所定の基準値と比較する(S3)。
【0024】
前記の比較により、中和剤積算消費量対応値ΣQが基準値に達していると、その旨が報知される(S3:YES,S4)。この報知は、温水装置WHに具備されたリモコン(不図示)などを利用して、視覚的、聴覚的に認識し得る態様で行なわれる。このことにより、中和剤50の寿命あるいは補充・交換時期が到来したことをユーザに察知させることができる。
一方、中和剤積算消費量対応値ΣQが基準値に達していない場合において、バーナ2の駆動燃焼が継続していれば、中和剤消費量対応値Q、および中和剤積算消費量対応値ΣQの算出処理などが継続して実行される(S3:NO,S5:NO,S2)。これとは異なり、バーナ2の駆動燃焼が終了すれば、最初に戻り、以下前記したのと同様な一連の処理が繰り返される(S5:YES,S1)。
【0025】
〔第1の補正値α1を用いた処理〕
図3(a)に示すように、バーナ2が時間Taだけ継続して駆動燃焼する場合、制御部6においては、この駆動燃焼時における中和剤消費量対応値Q(Q1)が算出される。た
だし、この際には、第1の補正値α1が設定され、バーナ2の駆動燃焼の継続時間の長さに応じて中和剤50の消費量が変化することに対応する補正がなされる。
具体的には、中和剤消費量対応値Qは、次の式1で求められる。
Q=G・Ta・α1 …式1
G:燃焼熱量〔号数〕
Ta:駆動燃焼の継続時間
α1:第1の補正値(後述する)
ただし、
中和剤消費量対応値Qを実際に求める場合には、単位時間当たりの中和剤消費量対応値ΔQが繰り返し求められ、その積算値として、中和剤消費量対応値Qが求められる(この点は、後述する他の場合も同様)。ΔQは、次の式2で求められる。
ΔQ=ΔG・α1 …式2
ΔG:単位時間当たりの燃焼熱量
【0026】
図4に示すように、バーナ2の駆動燃焼時間と中和剤50の実際の消費量(単位時間当たり)との対応関係を考察すると、駆動燃焼の開始初期においては、中和剤50の消費量は徐々に減少していく。ただし、駆動燃焼の開始時からある程度の時間が経過すると、その後は中和剤50の消費量は略一定となる。
【0027】
これに対し、図3(b)に示すデータにおいては、駆動燃焼開示時からの経過時間(駆動燃焼の継続時間)tが長くなるにしたがって、第1の補正値α1の値は、たとえば「1.1」,「1.05」,「1」と順次小さくなっている。このような第1の補正値α1は、図4に示した中和剤50の消費量の変化に対して若干のズレはあるものの、中和剤50の消費量の経時的変化に概ね対応したものとなっている。このため、第1の補正値α1を用いて補正された中和剤消費量対応値Qは、中和剤50の実際の消費量の変化が考慮されたものとなり、補正が行なわれていない場合と比較すると、実際の消費量に対してより正確に対応させたものとすることができる。
なお、図3(b)に示した第1の補正値α1としての3段階の数値は、本実施形態を理解するための一例であり、これに限定されるものではない。第1の補正係数α1の数値を、よりきめ細かく多段階で設定するなどし、中和剤消費量対応値Qを中和剤50の消費量の変化に対して、より正確に対応させるようにしてもよいことは勿論である。
図3(b)に示したような第1の補正値α1のデータは、制御部6に記憶されている。なお、補正値のデータが制御部6に記憶されている点、および例示された補正値のデータは、各実施形態を理解するためのものであり、これに限定されるものでない点については、後述する他の第2ないし第4の補正値α2~α4などについても同様である。
【0028】
〔第2の補正値α2を用いた処理〕
図5(a)おいて、時刻taに、バーナ2を駆動燃焼させる場合、前回の駆動燃焼の終了時から今回の駆動燃焼の開始時刻taに至るまでのバーナ2の停止時間Tbに応じた補正処理が実行される。この補正処理は、前回の駆動燃焼によって発生したドレンが中和器5内に滞留し、停止時間Tbに、中和剤50が前記ドレンに接触し続けることによって消費されることに対応するための処理であり、たとえば図5(b)に示すような第2の補正値α2が用いられる。
前回の駆動燃焼時における中和剤消費量対応値Qは、次の式2で求められる。
Q=G・Ta・α2 …式3
なお、式3は、第1の補正値α1を含んでいないが、この第1の補正値α1を含ませたものとすることもできる。
【0029】
図6に示すように、バーナ2の駆動燃焼の停止時間と、中和剤50の消費量(ドレンの単位量当たりの中和剤消費量)との対応関係を考察すると、駆動燃焼終了後の初期または
中期においては、中和剤50の消費量は徐々に増加していく。ただし、駆動燃焼の終了時からある程度以上の時間が経過すると、その後は中和剤50の消費量は略一定となる。このような中和剤50の消費量の変化は、今回の駆動燃焼時における中和剤50の消費量に影響を及ぼす。
【0030】
これに対し、図5(b)に示すデータにおいては、バーナ2の駆動燃焼終了時からの経過時間tが長くなるにしたがって、第2の補正値α2の値は、たとえば「1」,「1.05」,「1.1」と順次大きくなっている。このような第2の補正値α2は、図6に示した中和剤50の消費量の変化に概ね対応したものとなっている。このため、第2の補正値α2を用いて補正された今回の駆動燃焼時における中和剤消費量対応値Qは、バーナ2の停止時間Tbを考慮し、中和剤50の実際の消費量に対応させたものとすることができる。
【0031】
なお、停止時間Tbにおける中和剤50の消費の仕方は、バーナ2の駆動燃焼が終了した時点における中和剤50の単位時間当たりの消費量を考慮していないが、これを考慮する補正をさらに行なってもよい。このことにより、中和剤消費量対応値Qをより適切なものとすることが可能である。
【0032】
〔第3の補正値α3を用いた処理〕
図7(a)において、時刻taにバーナ2を駆動燃焼させる場合、直前のバーナ2の停止時間Tbに加え、今回のバーナ2の駆動燃焼の継続時間Taをも同時に考慮して設定される第3の補正値α3を用いて、中和剤消費量対応値Qが求められる。この場合、中和剤消費量対応値Qは、次の式4で求められる。
Q=G・Ta・α3 …式4
【0033】
第3の補正値α3は、図7(b)に示すように、バーナ2の駆動燃焼時間Taが長いほど小さくなる一方、停止時間Tbが長いほど大きくなる値である。第1および第2の補正値α1,α2を用いた処理において説明したように、中和剤50の単位時間当たりの消費量は、バーナ2の駆動燃焼時間Taが長いほど少なくなり、停止時間Tbが長いほど多くなる。したがって、第3の補正値α3を用いた前記の式4を用いることにより、中和剤消費量対応値Qを中和剤50の実際の消費量に対応させ得ることとなる。また、図7(b)に示す第3の補正値α3に関するデータは、第1および第2の補正値α1,α2の双方をトータルしたデータと比較すると簡素である。さらに、第3の補正値α3を用いる演算処理は、第1および第2の補正値α1,α2をそれぞれ用いて個々に補正する演算処理と比較すると容易であり、プログラムデータも簡素なものとすることができる。
【0034】
〔第4の補正値α4を用いた処理〕
本処理においては、図8(a)に示すように、バーナ2が時間Taにわたって駆動燃焼する場合、中和剤消費量対応値Q、および単位時間当たりの中和剤消費量対応値ΔQは、第4の補正値α4を用いた次の式5,式6で求められる。
Q=G・Ta・α4 …式5
ΔQ=ΔG・α4 …式6
【0035】
バーナ2の駆動燃焼時におけるドレン発生量は、温水装置WHの熱効率やその他の条件によって左右される。ここで、図8(b),(c)は、ともに、バーナ2の駆動燃焼の継続時間と中和剤50の消費量(単位時間当たり)との対応関係を示しているが、同図(b)は、ドレンの発生量が30〔ml/min〕であるのに対し、同図(c)は、ドレンの発生量がそれよりも多く、90〔ml/min〕である。同図(b),(c)のいずれの場合においても、バーナ2の駆動燃焼が開始された後に、中和剤50の消費量が減少し、その後に一定化しているが、中和剤50の消費量が減少する際のグラフの傾斜θa,θb
を比較すると、θa<θbの関係にある。このため、ドレン発生量が多い方が、中和剤50の単位時間当たりの消費量が一定化するまでの時間は短く、駆動燃焼の初期において中和剤50の消費量が早期に減少する(ドレン発生量が少ない方が、中和剤50の消費量が多い状態が長く続く)。
【0036】
これに対し、第4の補正値α4は、その具体的な値の例示は省略するが、バーナ2が駆動燃焼する際のドレン発生量に対応して設定され、ドレン発生量が少ない場合よりも多い場合の方が、バーナ2の駆動燃焼開始初期の所定期間中における中和剤消費量対応値Q(単位時間当たりの中和剤消費量対応値ΔQも)を小さくする値とされている。このことにより、第4の補正値α4を用いて補正された中和剤消費量対応値Qは、ドレン発生量に起因するズレが小さく、中和剤50の実際の消費量に近いものとすることができる。
なお、ドレン発生量は、流量センサを用いて計測してもよいが、たとえば特開平10-122666号公報に記載されているような演算式、あるいはこれを簡略化した演算式により算出することが可能である。
また、ドレン発生量は、熱交換器4a,4bを利用した熱交換効率に左右されるため、ドレン発生量に対応する値として、熱交換効率を用いることもできる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0038】
上述した実施形態においては、第1ないし第4の補正値α1~α4を個別に用いた例を示したが、これらを2以上同時に用いて中和剤消費量対応値Qを求めてもよい。また既述したように、各補正値の具体的な値も限定されない。
【0039】
バーナの燃焼熱量としては、号数以外の値を用いることができる。バーナは、ガスバーナに限らず、たとえばオイルバーナなどとすることもできる。中和剤の具体的な種類も問わない。
本発明でいう温水装置は、一般給湯用に限らず、風呂給湯用、暖房給湯用、および融雪用などを含む概念である。
【符号の説明】
【0040】
WH 温水装置
Q 中和剤消費量対応値
ΣQ 中和剤積算消費量対応値
α,α1~α4 第1ないし第4の補正値(補正値)
2 バーナ
4a,4b 熱交換器
5 中和器
50 中和剤
6 制御部(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8