(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】透析装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/34 20060101AFI20221129BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61M1/34 121
A61M1/16 117
(21)【出願番号】P 2018121783
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】長尾 尋智
(72)【発明者】
【氏名】正岡 勝則
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-239860(JP,A)
【文献】特開2011-239866(JP,A)
【文献】特開2007-268257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液回路と、
前記血液回路に配置され、血液中の水分を除去可能な血液浄化手段と、
前記血液浄化手段に接続され、該血液浄化手段に透析液を導入及び導出する透析液回路と、
循環血液量の変化率を測定する測定手段と、
除水により減少する循環血液量を回復させるための補充液を前記血液回路に注入する補充液注入手段と、
前記血液回路に所定の間隔で間歇的に所定の量の補充液を注入するように前記補充液注入手段を制御する制御部と、を備える透析装置であって、
前記制御部は、前記測定手段により測定される直近の補充液の注入による循環血液量の変化率に基づいて、次回の補充液の注入による循環血液量の変化率が所定の範囲内となるように、次回の補充液の注入量及び/又は注入間隔を調整し、透析開始から終了までの間に、少なくとも前記血液回路に注入される補充液の全量に相当する水分を回収するように前記血液浄化手段の除水速度を制御する透析装置。
【請求項2】
前記補充液注入手段として前記血液浄化手段及び前記透析液回路が用いられ、前記補充液として前記血液浄化手段で逆濾過される透析液が用いられる請求項1に記載の透析装置。
【請求項3】
前記制御部は、直近の補充液の注入による循環血液量の変化率が前記所定の範囲内であれば、次回の補充液の注入量
が直近の注入量と同量と
なり、前記変化率が前記所定の範囲よりも大きければ、該変化率に応じて次回の補充液の注入量
が直近の注入量よりも少ない量と
なり、前記変化率が前記所定の範囲よりも小さければ、該変化率に応じて次回の補充液の注入量
が直近の注入量よりも多い量と
なるように調整する請求項
1又は2に記載の
透析装置。
【請求項4】
前記制御部は、直近の補充液の注入による循環血液量の変化率が前記所定の範囲内であれば、次回の補充液を注入するまでの間隔
が所定の注入間隔と
なり、前記変化率が前記所定の範囲より大きければ、該変化率に応じて次回の補充液を注入するまでの間隔
が前記所定の注入間隔よりも長く
なり、前記変化率が前記所定の値より小さければ、該変化率に応じて次回の補充液を注入するまでの間隔
が前記所定の注入間隔よりも短く
なるように調整し、直近の補充液の注入から次回の補充液の注入までの間に、直近に注入された補充液の注入量に相当する水分を回収するように、前記血液浄化手段の除水速度を制御する請求項
1又は2に記載の
透析装置。
【請求項5】
前記所定の範囲は、5~10%である請求項
1~
4のいずれかに記載の
透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置及び該透析装置を用いた補液制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析治療においては、ポンプを用いて患者の動脈側から血液を取り出してダイアライザやヘモダイアフィルタ等の血液浄化手段に送血し、老廃物や余分な水分が除去された血液が患者の動脈側へ戻すことが行われる。
一般的に透析治療では、1回の治療で4時間前後の時間をかけて血液の浄化が行われ、透析時間の経過に伴い血液が浄化されて体内の余分な水分が取り除かれて行く。この血液浄化によって患者の体内を流れる循環血液量は減少していくため、透析治療の後半において血圧低下の症状を呈する患者は珍しくない。
【0003】
循環血液量が減少した場合、正常な生体反応では、自律神経の働きにより末梢の血管を収縮させることで、中枢側の循環血液量が維持される。また、除水により血液が濃縮されると浸透圧の差により間質から血管内へ血漿成分が移動する血漿再充填が生じて、循環血液量が維持される。しかしながら患者によってそのような生体反応が正常に行われない場合があり、血圧低下により透析治療を継続することが困難となることがある。
【0004】
このような血圧低下の症状に陥った場合には、循環血液量を速やかに増加させるため、血液中に生理食塩水や清浄化された透析液を用いて補液を実施する等の処置が取られる。
また、近年では、除水に伴う循環血液量減少による血圧低下の発生を予防するため、血液透析(いわゆるHD)や血液濾過透析(いわゆるHDF)の治療において、例えば30分毎に150mL~200mLの補液を繰り返し実施し、補液相当分の水分を本来の除水量に上乗せして除水する「間歇補充型血液透析濾過法」が提案されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本透析医学会雑誌40巻9号 769~774頁「新しいHDF療法の考案とその臨床効果」
【文献】日本透析医学会雑誌42巻9号 695~703頁「逆濾過透析液を利用した自動モードによる間歇補液血液透析の考案とその臨床評価」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、透析治療中に計画的に補液を行うことにより血圧低下の発生を抑制できる反面、患者によって基礎体重、除水量等の条件が異なるため、血圧を安定させるための適正な補充液の注入量や注入間隔は異なるものと考えられる。また、同じ患者であっても血液の循環動態(循環血液量や血漿再充填の速度等)は透析治療の経過中に変化する。よって、患者の状態によらない一律な条件で補液を行うと、補液が過剰となって急激な血圧の上昇を招くおそれや、補液が過少となって急激な血圧の低下を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。
【0007】
従って、本発明は、適正な補液を実施可能な透析装置及び補液制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血液回路と、前記血液回路に配置され、血液中の水分を除去可能な血液浄化手段と、前記血液浄化手段に接続され、該血液浄化手段に透析液を導入及び導出する透析液回路と、循環血液量の変化率を測定する測定手段と、除水により減少する循環血液量を回復させるための補充液を前記血液回路に注入する補充液注入手段と、前記血液回路に所定の間隔で間歇的に所定の量の補充液を注入するように前記補充液注入手段を制御する制御部と、を備える透析装置であって、前記制御部は、前記測定手段により測定される直近の補充液の注入による循環血液量の変化率に基づいて、次回の補充液の注入による循環血液量の変化率が所定の範囲内となるように、次回の補充液の注入量及び/又は注入間隔を調整し、透析開始から終了までの間に、少なくとも前記血液回路に注入される補充液の全量に相当する水分を回収するように前記血液浄化手段の除水速度を制御する透析装置に関する。
【0009】
また、前記補充液注入手段として前記血液浄化手段及び前記透析液回路が用いられ、前記補充液として前記血液浄化手段で逆濾過される透析液が用いられることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、血液回路と、前記血液回路に配置され、血液中の水分を除去可能な血液浄化手段と、前記血液浄化手段が接続され、透析液を導入及び導出する透析液回路と、循環血液量の変化率を測定する測定手段と、除水により減少する循環血液量を回復させるための補充液を前記血液回路に注入する補充液注入手段と、前記血液回路に所定の間隔で間歇的に所定の量の補充液を注入するように前記補充液注入手段を制御する制御部と、を備える透析装置を用いた補液制御方法であって、前記測定手段で測定される変化率を用いて直近の補充液の注入による循環血液量の変化率を算出し、前記変化率に基づいて、次回の補充液の注入による循環血液量の変化率が所定の範囲内となるように、次回の補充液の注入量及び/又は注入間隔を調整し、透析開始から終了までの間に、少なくとも前記血液回路に注入される補充液の全量に相当する水分を回収するように前記血液浄化手段の除水速度を制御する補液制御方法に関する。
【0011】
また、直近の補充液の注入による循環血液量の変化率が前記所定の範囲内であれば、次回の補充液の注入量を直近の注入量と同量とし、前記変化率が前記所定の範囲よりも大きければ、該変化率に応じて次回の補充液の注入量を直近の注入量よりも少ない量とし、前記変化率が前記所定の範囲よりも小さければ、該変化率に応じて次回の補充液の注入量を直近の注入量よりも多い量とすることが好ましい。
【0012】
また、直近の補充液の注入による循環血液量の変化率が前記所定の範囲内であれば、次回の補充液を注入するまでの間隔を所定の注入間隔とし、前記変化率が前記所定の範囲より大きければ、該変化率に応じて次回の補充液を注入するまでの間隔を前記所定の注入間隔よりも長くし、前記変化率が前記所定の値より小さければ、該変化率に応じて次回の補充液を注入するまでの間隔を前記所定の注入間隔よりも短くし、直近の補充液の注入から次回の補充液の注入までの間に、直近に注入された補充液の注入量に相当する水分を補液回収分として回収するように、前記血液浄化手段の除水速度を制御することが好ましい。
【0013】
また、前記所定の範囲は、5%~10%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透析治療中の血液の循環体動に応じた適正な補液を実施できるので、急激な血圧の変動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】透析装置で実施される透析工程を示す図である。
【
図3】透析装置で実施される補液工程を示す図である。
【
図4】透析中に補液を行った場合における循環血液量の変化率を示す図である。
【
図5】本発明の補液制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における補液条件の設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】第1実施形態における補充液の注入及び回収方法を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態における補充液の注入及び回収の他の方法を説明するための図である。
【
図9】第2実施形態における補液条件の設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における補充液の注入及び回収方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の透析装置及び補液制御方法の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の補液制御方法は、血液透析(いわゆるHD)や血液濾過透析(いわゆるHDF)等の透析治療中に間歇的に補液を実施する場合に適用できる。本発明の適用例として、逆濾過された透析液を利用して間歇的に補液を行う間歇補充型血液濾過透析を行う場合について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る透析装置100の概略構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、透析装置100は、血液を流すための血液回路110と、血液浄化手段120と、透析液回路130と、血液回路110に配置される循環血液量測定手段140と、制御部150と、を備える。
【0019】
血液回路110は、動脈側ライン111と、静脈側ライン112と、薬剤ライン113と、プライミング液排出ライン114と、を有する。動脈側ライン111、静脈側ライン112、薬剤ライン113及びプライミング液排出ライン114は、いずれも液体が流通可能な可撓性を有する軟質のチューブを主体として構成される。
【0020】
動脈側ライン111は、一端側が後述する血液浄化手段120の血液導入口122aに接続される。動脈側ライン111には、動脈側接続部111a、動脈側気泡検知器111b、血液ポンプ111c及び後述の循環血液量測定手段140が配置される。
動脈側接続部111aは、動脈側ライン111の他端側に配置される。動脈側接続部111aには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
動脈側気泡検知器111bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
血液ポンプ111cは、動脈側ライン111における動脈側気泡検知器111bよりも下流側に配置される。血液ポンプ111cは、動脈側ライン111を構成するチューブをローラーでしごくことにより、動脈側ライン111の内部の血液やプライミング液等の液体を送出する。
【0021】
静脈側ライン112は、一端側が後述する血液浄化手段120の血液導出口122bに接続される。静脈側ライン112には、静脈側接続部112a、静脈側気泡検知器112b、ドリップチャンバ112c、及び静脈側クランプ112dが配置される。
静脈側接続部112aは、静脈側ラインの他端側に配置される。静脈側接続部112aには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
静脈側気泡検知器112bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
ドリップチャンバ112cは、静脈側気泡検知器112bよりも上流側に配置される。ドリップチャンバ112cは、静脈側ライン112に混入した気泡や凝固した血栓/凝血塊等を除去するため、また、静脈圧を測定するため、一定量の血液を貯留する。
静脈側クランプ112dは、静脈側気泡検知器112bよりも下流側に配置される。静脈側クランプ112dは、静脈側気泡検知器112bによる気泡の検出結果に応じて制御され、静脈側ライン112の流路を開閉する。
【0022】
薬剤ライン113は、血液透析中に必要な薬剤を動脈側ライン111に供給する。薬剤ライン113は、一端側が薬剤を送り出す薬液ポンプ113aに接続され、他端側が動脈側ライン111に接続される。また、薬剤ライン113には不図示のクランプ手段が設けられており、薬剤を注入するとき以外は、クランプ手段により流路は閉鎖された状態である。本実施形態では、薬剤ライン113の他端側は、動脈側ライン122における循環血液量測定手段140よりも上流側に接続される。
【0023】
プライミング液排出ライン114は、ドリップチャンバ112cに接続される。プライミング液排出ライン114には、プライミング液排出ライン用クランプ114aが配置される。プライミング液排出ライン114は、後述するプライミング工程でプライミング液を排液するためのラインである。
【0024】
血液浄化手段120は、筒状に形成された容器本体121と、この容器本体121の内部に収容された透析膜(図示せず)と、を備え、容器本体121の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画される(いずれも図示せず)。容器本体121には、血液回路110に連通する血液導入口122a及び血液導出口122bと、透析液回路130に連通する透析液導入口123a及び透析液導出口123bと、が形成される。
【0025】
以上の血液回路110及び血液浄化手段120によれば、対象者(透析患者)の動脈から取り出された血液は、血液ポンプ111cにより動脈側ライン111を流通して血液浄化手段120の血液側流路に導入される。血液浄化手段120に導入された血液は、透析膜を介して後述する透析液回路130を流通する透析液により浄化される。血液浄化手段120において浄化された血液は、静脈側ライン112を流通して対象者の静脈に返血される。
【0026】
透析液回路130は、本実施形態では、いわゆる密閉容量制御方式の透析液回路130により構成される。この透析液回路130は、透析液供給ライン131aと、透析液排液ライン131bと、透析液導入ライン132aと、透析液導出ライン132bと、透析液送液部133と、を備える。
【0027】
透析液送液部133は、透析液チャンバ1331と、バイパスライン1332と、除水/逆濾過ポンプ1333と、を備える。
透析液チャンバ1331は、一定容量(例えば、300ml~500ml)の透析液を収容可能な硬質の容器で構成され、この容器の内部は軟質の隔膜(ダイアフラム)により、送液収容部1331a及び排液収容部1331bに区画される。
バイパスライン1332は、透析液導出ライン132bと透析液排液ライン131bとを接続する。
【0028】
除水/逆濾過ポンプ1333は、バイパスライン1332に配置される。除水/逆濾過ポンプ1333は、バイパスライン1332の内部の透析液を透析液排液ライン131b側に流通させる方向(除水方向)及び透析液導出ライン132b側に流通させる方向(逆濾過方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。
【0029】
透析液供給ライン131aは、基端側が透析液供給装置(図示せず)に接続され、先端側が透析液チャンバ1331に接続される。透析液供給ライン131aは透析液チャンバ1331の送液収容部1331aに透析液を供給する。
【0030】
透析液導入ライン132aは、透析液チャンバ1331と血液浄化手段120の透析液導入口123aとを接続し、透析液チャンバ1331の送液収容部1331aに収容された透析液を血液浄化手段120の透析液側流路に導入する。
【0031】
透析液導出ライン132bは、血液浄化手段120の透析液導出口123bと透析液チャンバ1331とを接続し、血液浄化手段120から排出された透析液を透析液チャンバ1331の排液収容部1331bに導出する。
【0032】
透析液排液ライン131bは、基端側が透析液チャンバ1331に接続され、排液収容部1331bに収容された透析液の排液を排出する。
【0033】
以上の透析液回路130によれば、透析液チャンバ1331を構成する硬質の容器の内部を軟質の隔膜(ダイアフラム)により区画することで、透析液チャンバ1331からの透析液の導出量(送液収容部1331aへの透析液の供給量)と、透析液チャンバ1331(排液収容部1331b)に回収される排液の量と、を同量にできる。
これにより、除水/逆濾過ポンプ1333を停止させた状態では、血液浄化手段120に導入される透析液の流量と血液浄化手段120から導出される透析液(排液)の量とを同量にできる。
【0034】
また、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に送液するように駆動させた場合には、透析液チャンバ1331から排出された排液の一部がバイパスライン1332及び透析液導出ライン132bを通って再び透析液チャンバ1331に回収される。そのため、血液浄化手段120から導出される透析液の量は、透析液チャンバ1331に回収される量(即ち、透析液導入ライン132aを流通する透析液の量)から、バイパスライン1332を流通する透析液の量を減じた量となる。これにより、血液浄化手段120から導出される透析液の量は、バイパスライン1332を通って再び透析液チャンバ1331に回収される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン132aを流通する透析液の流量よりも少なくなる。即ち、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化手段120において、血液回路110に所定量の透析液が注入(逆濾過)される(
図3参照)。
【0035】
このように、本実施形態では、血液浄化手段120及び透析液回路130(除水/逆濾過ポンプ1333)は補充液注入手段として用いられ、逆濾過された透析液が補充液として用いられる。言い換えれば、補充液としての透析液は、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に駆動させることにより、透析液回路130から血液浄化手段120を介して血液回路110に注入される。なお、血液回路110に補充液ラインを接続して補充液注入手段とし、生理食塩水等を補充液として用いる構成としてもよい。また、透析液導入ライン132aから動脈側ライン111または静脈側ライン112に補充液ポンプが設けられた補充液ラインを接続して補充液注入手段とし、透析液を補充液として用いる構成としてもよい。
【0036】
一方、除水/逆濾過ポンプ1333を除水方向に送液するように駆動させた場合には、透析液導出ライン132bを流通する透析液の量は、透析液チャンバ1331に回収される透析液の量(即ち、透析液導入ライン132aを流通する透析液の量)に、バイパスライン1332を流通する透析液の量を加えた量となる。これにより、透析液導出ライン132bを流通する透析液の量は、バイパスライン1332を通って透析液排液ライン131bに排出される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン132aを流通する透析液の量よりも多くなる。即ち、除水/逆濾過ポンプ1333を除水方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化手段120において、血液から所定量の除水が行われる(
図2参照)。
【0037】
循環血液量測定手段140は、血液回路110内を流れる血液のヘマトクリット値を測定するセンサである。例えば、近赤外線を血液に照射して得られる血液の光透過度に基づいてヘマトクリット値を測定することができる。循環血液量測定手段140により経時的に測定されたヘマトクリット値に基づいて、患者の体内の循環血液量の変化率を算出することができる。
図1に示すように、循環血液量測定手段140は、血液浄化手段120による除水や補液の影響を受けにくいように、動脈側ライン111における血液ポンプ111cよりも下流側かつ血液浄化手段120の上流側に配置される。
【0038】
制御部150は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、透析装置100の動作を制御する。また、制御部150は、循環血液量測定手段140で測定されたヘマトクリット値に基づいて、循環血液量の変化率を算出する。
具体的には、制御部150は、血液回路110及び透析液回路130に配置された各種のポンプやクランプ等の動作を制御して、透析装置100により行われる各種工程、例えば、プライミング工程、脱血工程、透析工程、補液工程、返血工程等を実行する。
【0039】
各種工程について
図2及び
図3を参照して簡単に説明する。
プライミング工程では、プライミング液として逆濾過透析液を用いて血液回路110及び血液浄化手段120を洗浄して清浄化する。
脱血工程では、患者の血液を吸引して動脈側ライン111及び静脈側ライン112に血液を充填させる。脱血工程の後、血液を浄化すると伴に水分を除去する透析工程が行われる(
図2参照)。透析工程では、患者の余剰水分の除水が行われ、また、補液回収分の除水も合わせて行われる。
透析工程の途中で間歇的に補液工程が行われる(
図3参照)。透析工程終了後、患者に血液を戻す返血工程が行われる。
【0040】
以下に、透析装置100により行われる各種工程のうち、循環血液量の変化に関わる透析工程及び補液工程について、詳しく説明する。
【0041】
図2を参照して透析工程について説明する。
透析工程において、動脈側接続部111aから導入される患者の血液は、動脈側ライン111を通って血液浄化手段120で浄化され、静脈側ライン112を通って静脈側接続部112aから患者に戻される。
【0042】
透析工程では、
図2に示すように、動脈側接続部111a及び静脈側接続部112aは、それぞれ患者の血管に穿刺される針に接続された状態であり、プライミング液排出ライン用クランプ114aは閉状態、静脈側クランプ112dは開状態である。
【0043】
不図示の透析液供給装置は、透析液チャンバ1331に対して平均500ml/minの送液量で透析液を供給及び排出し、除水/逆濾過ポンプ1333を、除水方向に送液するように作動させる。除水/逆濾過ポンプ1333の送給量を一例として10ml/minとすることで、血液浄化手段120において、10ml/minの除水が行われる。
血液ポンプ111cは、透析工程開始時の40~50ml/minから例えば200ml/min程度まで流量を徐々に増加させ、動脈側接続部111a側から血液浄化手段120側に血液を送出する。
血液浄化手段120内には、血液導入口122aから200ml/minの流量で血液が流入し、10ml/minの流量で除水されて、血液導出口122bから190ml/minの流量で導出される。また、透析排液は、透析液導出口123bから導出される。
このようにして、透析工程において血液中から徐々に水分が除去され、それに伴い循環血液量も徐々に減少して行く。
【0044】
次に
図3を参照して補液工程について説明する。
補液工程は、血液回路110に逆濾過透析液を注入する工程であり、本実施形態では、除水による循環血液量の減少に起因する血圧低下を予防する等のため、所定の間隔で間歇的に行われる。
【0045】
補液工程では、
図3に示すように、透析工程と同様に動脈側接続部111a及び静脈側接続部112aは、それぞれ患者の血管に穿刺される針に接続された状態であり、プライミング液排出ライン用クランプ114aは閉状態、静脈側クランプ112dは開状態である。
【0046】
不図示の透析液供給装置は、透析液チャンバ1331に対して平均500ml/minの送液量で透析液を供給及び排出し、除水/逆濾過ポンプ1333を、逆濾過方向に送液するように作動させる。例えば、200mlの補液を行う場合には、除水/逆濾過ポンプ1333の送給量を一例として150ml/minとすることで、血液浄化手段120において、150ml/minの補液が約80秒で行われる。
血液ポンプ111cは、透析工程中の200ml/minから50ml/min程度まで流量を徐々に減少させ、動脈側接続部111a側から血液浄化手段120側に血液を送出する。
血液浄化手段120内には、血液導入口122aから50ml/minの流量で血液が流入し、逆濾過透析液が150ml/minの流量で補液されて、血液導出口122bから希釈された血液が200ml/minの流量で導出される。このようにして、補液工程において約80秒で血液中に急速に透析液が補充される。
【0047】
次に、本実施形態における具体的な補液制御方法について
図4~
図8を参照して説明する。
【0048】
まず、間歇的に補液を実施することによる効果について簡単に説明する。
透析治療中は、除水の進行に伴い血液中の水分(血漿)が取り除かれていき、循環血液量が減少していく。循環血液量が減少して血液中の蛋白濃度が上がると、血管内と血管外(間質)との浸透圧の差により、間質から血管内に水分(血漿)が徐々に移動して(血漿再充填)、循環血液量が回復して血圧が維持される。しかしながら、血漿再充填の速度が除水速度に追いつかずに、循環血液量が減少して血圧が低下してくると、自律神経の働きにより末梢血管を収縮させて血圧を維持しようとする生体反応が起こる。これが正常に働かないと、血漿再充填の速度が除水速度を大きく下回ることとなり、循環血液量の減少率が大きくなり、急激な血圧の低下を招く。
【0049】
このような急激な血圧低下を予防するため、間歇的に補液が実施される。補液を実施して血液循環量を回復させながら透析を行うことにより、血圧の低下を予防すると共に、末梢循環も改善され、血漿再充填の速度も維持される。その結果、補液を実施しない場合に比べて、同じ除水速度(補液回収分は除外)であっても、透析終了後の循環血液量の減少率を小さくすることができる。なお、補液の実施による循環血液量の増加分は、透析開始から終了までの間に、血液浄化手段120により除水される。よって、総除水量は、患者の余剰水分(体重除水分)と補液回収分とを合わせたものとなる。
本発明は、補液の実施による上述の効果を十分に得るため、適正な注入量及び注入間隔で補液を実施可能とするものである。
【0050】
次に、一般的な条件で補液を実施した場合における、循環血液量の変化について説明する。
図4は、一般的に実施されている注入量200ml、注入間隔30分の条件で、補液を実施した場合の循環血液量の変化率を示す図である。
図4で示されるように、30分毎の補液の実施により循環血液量が上昇していることが分かる。
この補液による循環血液量の上昇率は、体外からの補液分と、体内における血漿再充填による血漿の血管内への移動量に依存すると考えられる。この血漿再充填の速度は患者によって異なり、また透析中にも変化するので、適正な補充液の注入量は補液の実施毎に異なる。なお、本実施形態の場合、補充液を注入中は、血液浄化手段120による除水は行われていないので、除水による減少分は考えなくてよい。
【0051】
適正な補液の注入量について本発明者らが検討した結果、1回の補液の実施による循環血液量の変化率(上昇率)が5~10%の範囲内となることが望ましいと考えられる。この変化率が10%を超えると、循環血液量の上昇が急激となり、急激な血圧の上昇を招くおそれがある。また、心疾患を有する患者の場合には、血圧の上昇による負担が大きくなるので、変化率の上限を10%よりも低い値に設定し、補充液の1回当たりの注入量を少なくして注入回数を多くするように調整してもよい。また、補液の注入量が過剰であると、補液回収分の除水量が多くなり、患者の余剰水分と合わせて総除水量が多くなる。その結果、除水速度が大きくなってしまい、血圧低下のリスクが増大する。また、変化率が5%より小さくなると、前述した補液による効果を十分に得られないこととなる。
【0052】
そこで、補液による循環血液量の変化率が5~10%の範囲内となるように、補充液の注入量を制御する方法について説明する。
【0053】
(第1の補充液制御方法)
本実施形態では、一例として補充液の注入間隔を30分で一定とし、4時間の治療のうち、合計7回の補液を実施する場合について
図5及び
図6を参照して説明する。
【0054】
制御部150は、循環血液量測定手段140によりヘマトクリット値を測定し、この測定されたヘマトクリット値に基づいて、経時的に循環血液量の変化率を算出する。
例えば、1回目の補充液は、患者の基礎体重に応じて決めることができる。例えば、基礎体重が50kg以上の患者は、1回の補液量を200mlとし、50kg未満の患者は150mlとする等して、補充液の注入量を決めることができる。
【0055】
図5を参照して、透析治療の流れについて説明する。
透析装置100は、透析開始後、所定の速度で除水を行う(S100)。所定の時間が経過した後(S110)、所定の注入量で補液を実施する(S120)。
直近の補液が最後の補液か否かを判定し(S130)、最後の補液でない場合は、直近の循環血液量の変化率(上昇率)に基づいて次回補液条件を設定する(S140)。最後の補液である場合は、所定の除水速度で除水し(S150)、所定の透析時間が経過した後(S160)、透析治療を終了する。ここで、S150における所定の除水速度とは、透析治療により患者から取り除くべく水分量(除水量)に基づいて設定された透析治療開始時の除水速度を示す。また、S160における所定の透析時間とは、同様に、透析治療開始時の除水時間を示す。
【0056】
図6を参照して、補液条件の設定方法について説明する。
直近の補液の実施による補充液の注入開始前と注入終了後の循環血液量の変化率を算出し(S141)、補液による変化率が所定の範囲内にあるか否かを判定する(S142)。この補液による変化率が5~10%の範囲内にある場合は、補充液の注入量が適正な量であると判定して、次回30分後の補液を1回目と同じ注入量として実施する(S143)。また、補液による変化率が10%を超える場合には、注入量が過剰であると判定して、次回30分後の補液の注入量を減じた量とする(S144)。具体的には、循環血液量の変化率が大きい程、注入する補液量を少なくしてもよく、また循環血液量の変化率にかかわらず、一定の割合補液の注入量を減じてもよい。例えば、循環血液量の変化率が上限の10%に対する、実際の変化率との比率を算出し、初期の補液量200mlに算出した比率を掛けることで減じる補液量を算出する。上記例では、補液による循環血液量の変化率が所定範囲を超えた場合に、補液の注入量と注入間隔の両者を変更するように制御したが、一方を変更せず、もう一方のみを変更するように制御してもよい。
また、補液による変化率が5%より小さい場合には、注入量が過少であると判定して、次回30分後の補液の注入量を増加させた量とする(S145)。具体的には、循環血液量の変化率が小さい程、注入する補液量を多くしてもよく、また循環血液量の変化率にかかわらず一定の割合補液の注入量を増加させてもよい。例えば、循環血液量の変化率が上限の10%に対する、実際の変化率との比率を算出し、初期の補液量200mlに算出した比率を掛けることで増加させる補液量を算出する。
このようにして、制御部150は直近の補液による循環血液量の変化率に基づいて、次回の補液による循環血液量の変化率が5~10%の範囲となるように、次回の補充液の注入量を調整する。
【0057】
循環血液量の補充液増加分は、透析開始から終了までの間に除水速度を調整して回収すればよく、本実施形態では、
図7に示すように直近の補液で注入した分を、次回の補液までに患者の余剰水分(体重除水分)に加えて回収するものとした。
また、補充液増加分の回収方法について、
図8に示すように、最後の補液を実施後に補液の回収を行わずに、最後の補液の実施までに前倒しで最終補液分の回収を行ってもよい。この場合は、直近の補液による循環血液量の変化率によらず、最後の補液の注入量は所定の量に設定し、前倒しで除水を行えばよい。なお、説明を簡単にするため、補液の注入量が一定の場合を示したが、実際には、最終補液の注入量以外、補液の注入量は、直近の補液による循環血液量の変化率に基づいて変動する。
【0058】
以上説明した第1実施形態の透析装置100及び第1の補液制御方法によれば、以下の効果を奏する。
【0059】
(1)透析装置100を、血液回路110と、血液浄化手段120と、透析液回路130と、循環血液量測定手段140と、補充液を血液回路110に注入するための補充液注入手段と、血液回路110に所定の間隔で間歇的に所定の量の補充液を注入するように補充液注入手段を制御する制御部150と、を含んで構成し、制御部150は、循環血液量測定手段140により測定される直近の補充液の注入による循環血液量の変化率に基づいて、次回の補充液の注入による循環血液量の変化率が所定の範囲内となるように、次回の補充液の注入量及び注入間隔を調整し、透析開始から終了までの間に、少なくとも血液回路110に注入される補充液の全量に相当する水分を回収するように血液浄化手段120の除水速度を制御するものとした。
これにより、患者の血液の循環動態に合わせた適正な補液を実現することができるので、補液による急激な血圧の上昇を抑制し、また、除水による血圧の低下を抑制できる。よって、透析中の血圧変動を小さくすることができ、患者の負担を軽減した透析治療と行うことができる。また、補液の注入量が過剰にならないように調整することで、補液回収分の除水速度を低減し、除水速度が大きすぎることに起因する血圧低下の発生を抑制することができる。
【0060】
(2)透析装置100を用いた補液制御方法を、循環血液量測定手段140で測定される変化率を用いて直近の補充液の注入による循環血液量の変化率を算出し、直近の補充液の注入による循環血液量の変化率が所定の範囲内であれば、次回の補充液の注入量を直近の注入量と同量とし、前記変化率が所定の範囲よりも大きければ、該変化率に応じて次回の補充液の注入量を直近の注入量よりも少ない量とし、前記変化率が前記所定の範囲よりも小さければ、該変化率に応じて次回の補充液の注入量を直近の注入量よりも多い量とするものとした。
これにより、直近の補液の注入量が適性であった場合は、次回も同様に補液を行い、直近の注入量が多すぎたと場合は、次回の注入量を少なくし、直近の注入量が少なすぎた場合は、次回の補液量を多くして、患者の血液の循環動態に合わせた適正な補液を実現することができる。
【0061】
<第2実施形態>
次に、第1実施形態で説明した透析装置100を用いた第2の補液制御方法について
図9及び
図10を参照して説明する。本実施形態では、補液の注入間隔が一定ではない点で、第1の補液制御方法とは異なる。
【0062】
(第2の補液制御方法)
本実施形態では、一例として、基準となる補充液の注入間隔を30分とし、2回目以降の注入間隔は、直近の補液による循環血液量の変化率に基づいて調整する。
【0063】
透析治療の流れについては、第1実施形態で説明したものと同様であるので、説明を省略し、補液条件の設定方法について
図9を参照して説明する。
図9に示すように、直近の補液の実施による補充液の注入開始前と注入終了後の循環血液量の変化率を算出し(S141)、補液による変化率が所定の範囲内にあるか否かを判定する(S142)。この補液による変化率が5~10%の範囲内にある場合は、補充液の注入量が適正な量であると判定して、次回の補液を1回目と同じ注入量とし、次回補液までの注入間隔を基準の注入間隔(30分)として実施する。(S146)。また、補液による変化率が10%を超える場合には、注入量が過剰であると判定して、次回の補液の注入量を減じた量とすると共に、次回補液までの注入間隔を基準の注入間隔(30分)よりも長くして実施する(S147)。具体的には、循環血液量の変化率が大きい程、注入間隔をより長くしてもよく、また循環血液量の変化率にかかわらず一定の割合注入間隔を長くしてもよい。例えば、循環血液量の変化率が上限の10%に対する、実際の変化率との比率を算出し、基準の注入間隔30分に算出した比率を掛けることで注入間隔の増加時間を算出する。
また、補液による変化率が5%より小さい場合には、注入量が過少であると判定して、次回の補液の注入量を増加させた量とすると共に、次回補液までの注入間隔を基準の注入間隔(30分)よりも短くして実施する(S148)。具体的には、循環血液量の変化率が小さい程、注入間隔を短くしてもよく、また循環血液量の変化率にかかわらず一定の割合注入間隔を短くしてもよい。例えば、循環血液量の変化率が上限の10%に対する、実際の変化率との比率を算出し、基準の注入間隔30分に算出した比率を掛けることで注入間隔の減少時間を算出する。
【0064】
このようにして、制御部150は直近の補液による循環血液量の変化率に基づいて、次回の補液による循環血液量の変化率が5~10%の範囲となるように次回の補充液の注入量を調整し、次回の補液までの注入間隔を調整する。
また、
図10に示すように、最後の補液後の透析の残り時間に応じて、適宜、最終補液の注入量を増減して調整してもよい。
【0065】
循環血液量の補充液増加分は、透析開始から終了までの間に除水速度を調整して回収すればよく、本実施形態では、第1実施形態において説明した場合と同様に、直近の補液で注入した分を、次回の補液までに回収するものとした(
図10参照)。
【0066】
以上説明した第2実施形態の第2の補液制御方法によれば、上記効果(1)及び(2)に加えて、以下の効果を奏する。
【0067】
(3)透析装置100を用いた補液制御方法を、直近の補充液の注入による循環血液量の変化率が前記所定の範囲内であれば、次回の補充液を注入するまでの間隔を所定の注入間隔とし、前記変化率が所定の範囲より大きければ、該変化率に応じて次回の補充液を注入するまでの間隔を所定の注入間隔よりも長くし、前記変化率が所定の範囲より小さければ、該変化率に応じて次回の補充液を注入するまでの間隔を所定の注入間隔よりも短くし、直近の補充液の注入から次回の補充液の注入までの間に、直近に注入された補充液の注入量に相当する水分を回収するように、血液浄化手段120の除水速度を制御するものとした。
これにより、直近の補液による注入量が過剰である場合に、次回の補液までの注入間隔を長くすることで、補液回収分の除水速度を小さくすることができ、除水速度が大きすぎることに起因する血圧低下の発生を抑制することができ、また、直近の注入量が過少である場合に、次回の補液までの注入間隔を短くすることで、循環血液量の十分な回復を早めて、血圧低下の発生を抑制することができる。
【0068】
以上、本発明の透析装置及び補液制御方法の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、補充液として逆濾過された透析液を利用する場合について説明したが、補充液として生理食塩水を用いてもよいし、血液浄化手段を介さずに血液回路に直接接続された透析液ラインから透析液を補充する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 透析装置
110 血液回路
111 動脈側ライン
111c 血液ポンプ
112 静脈側ライン
120 血液浄化手段
130 透析液回路
140 循環血液量測定手段
150 制御部