(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、膜シール材、中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
C08G 18/79 20060101AFI20221129BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20221129BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08G18/79 070
B01D63/02
B01D63/00 510
(21)【出願番号】P 2018123972
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池本 満成
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516321(JP,A)
【文献】特開2017-006874(JP,A)
【文献】特開2015-142908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
B01D 63/00-63/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)と、からなるポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートの一部が式(1)で示される少なくとも1種の化合物によりカルボジイミド変性された、カルボジイミド変性ポリイソシアネート(a-1)を含み、
前記式(1)で示される化合物の含有量は、前記ポリイソシアネート成分(A)中、0.05質量%以上3質量%以下であり、
前記ポリオール成分(B)は、
アミノ基を含有しないポリオール(b-1)と、
アミノ基含有ポリオール(b-2)と、を含み、
膜シール材用であることを特徴とする、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物:
【化1】
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アリール基およびオキシアルキル基からなる群より選択されるいずれか1つの基である。
【請求項2】
ポリイソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)と、からなるポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートの一部が式(1)で示される少なくとも1種の化合物によりカルボジイミド変性された、カルボジイミド変性ポリイソシアネート(a-1)を含み、
前記式(1)で示される化合物の含有量は、前記ポリイソシアネート成分(A)中、0.05質量%以上3質量%以下であり、
中空糸膜シール材用であることを特徴とする、中空糸膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物:
【化2】
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アリール基およびオキシアルキル基からなる群より選択されるいずれか1つの基である。
【請求項3】
請求項1に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材、または、
請求項2に記載の中空糸膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む中空糸膜シール材。
【請求項4】
請求項3に記載の膜シール材により封止されていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は膜シール材用ポリウレタン形成性組成物、膜シール材、中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIともいう。)と、ポリオール成分と、からなるMDI系ポリイソシアネートは反応性が高く、取り扱いが容易である。したがって、MDI系ポリイソシアネートは、接着剤やフォーム等の分野において有用であり、広く応用されている。
また、MDI系ポリイソシアネートとポリオールとの硬化物が、中空糸膜等の膜を固定、封止する膜シール材に広く用いられている。
【0003】
ところが、MDI系ポリイソシアネートは、低温時においてMDIモノマーが結晶化することがある。そこで、特許文献1は、MDIの一部がカルボジイミド変性されたポリイソシアネートを含む注型用ポリウレタン樹脂形成性組成物を開示している。特許文献1にかかる注型用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、結晶の析出を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかる注型用ポリウレタン樹脂形成性組成物から得られたポリウレタン樹脂は、カルボジイミド変性MDIを多く含むポリイソシアネートを使用しているため、成型後の収縮が大きいという問題がある。このため、特許文献1にかかる注型用ポリウレタン樹脂形成性組成物から得られたポリウレタン樹脂を含む膜シール材が用いられた場合、中空糸膜モジュールの組み立て加工時において、膜シール材が中空糸膜とともにモジュールのケース部から剥離しやすくなるという問題がある。
さらに、カルボジイミド変性MDIを多く含むポリイソシアネートを使用したポリウレタン樹脂は、外観が濁りやすいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態は、成型後の収縮が抑制され、外観がクリアな膜シール材の形成に資する膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することに向けられている。
本発明の他の実施形態は、該膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材を提供することに向けられている。
本発明のさらに他の実施形態は、該膜シール材により封止されている中空糸膜モジュールを提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、ポリイソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)と、からなるポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートの一部が式(1)で示される少なくとも1種の化合物によりカルボジイミド変性された、カルボジイミド変性ポリイソシアネート(a-1)を含み、
前記式(1)で示される化合物の含有量は、前記ポリイソシアネート成分(A)中、0.05質量%以上3質量%以下であることを特徴とする、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物:
【0008】
【0009】
式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アリール基およびオキシアルキル基からなる群より選択されるいずれか1つの基である。
【0010】
本発明の他の実施形態にかかる膜シール材は、上記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。
本発明のさらに他の実施形態にかかる中空糸膜モジュールは、上記膜シール材により封止されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、成型後の収縮が抑制され、外観がクリアな膜シール材の形成に資する膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することができる。
本発明の他の実施形態によれば、該膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材を提供することができる。
本発明のさらに他の実施形態は、該膜シール材により封止されている中空糸膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる中空糸膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の成型後の収縮、および、ポリウレタン樹脂(膜シール材)の外観は、カルボジイミド化触媒の種類により改善できることを見出した。
【0014】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。
[膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物]
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、ポリイソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)と、からなるポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートの一部が式(1)で示される少なくとも1種の化合物によりカルボジイミド変性された、カルボジイミド変性ポリイソシアネート(a-1)を含み、
前記式(1)で示される化合物の含有量は、前記ポリイソシアネート成分(A)中、0.05質量%以上3質量%以下であることを特徴とする、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物:
【0015】
【0016】
式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アリール基およびオキシアルキル基からなる群より選択されるいずれか1つの基である。
【0017】
<ポリイソシアネート成分(A)>
ポリイソシアネート成分(A)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIともいう。)の一部が式(1)で示される少なくとも1種の化合物によりカルボジイミド変性された、カルボジイミド変性ポリイソシアネート(a-1)を含む。
カルボジイミド変性ポリイソシアネート(a-1)としては、例えばつぎの(I)~(III)が挙げられる。
(I):MDIの一部が式(1)で示される少なくとも1種の化合物によりカルボジイミド変性されたもの
(II):(I)が後述するポリオール(a-2)で変性されたプレポリマー
(III):(I)と、(II)と、の混合物
【0018】
カルボジイミド変性されるジフェニルメタンジイソシアネートとしては、市販されているいずれのMDIも使用できる。MDIの一般的な異性体比は、2,4’-MDIが0質量%以上95質量%以下、4,4’-MDIが0質量%以上95質量%以下、2,2’-MDIが0質量%以上10質量%以下である。
また、2,4’-MDIが0.5質量%以上80質量%以下、4,4’-MDIが20質量%以上90.5質量%以下、2,2’-MDIが0質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、低温でのモノマー析出抑制と反応性とのバランスが良好となる。
また、ポリイソシアネート成分(A)の粘度が許容できる範囲で、MDIと、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとを併用することができる。
【0019】
MDIの一部をカルボジイミド化させる触媒である式(1)で示される化合物の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリ-n-プロピルフォスフェート、トリ-i-プロピルフォスフェート、トリ-n-ブチルフォスフェートおよびトリフェニルフォスフェートなどが挙げられる。触媒の分子量が大きくなると触媒活性が弱くなり、添加量を多くする必要があることから、これらの中でも、分子量の小さいトリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリ-n-プロピルフォスフェート、トリ-i-プロピルフォスフェート、トリ-n-ブチルフォスフェートが好ましい。
【0020】
式(1)で示される化合物の含有量は、ポリイソシアネート成分(A)中、0.05質量%以上3質量%以下である。式(1)で示される化合物の含有量が0.05質量%未満であると反応が進まず、3質量%を超えると膜シール材とした際に水やメタノールによる抽出量が多くなり好ましくない。抽出量が多くなると、中空糸膜モジュール中を流れる流体に膜シール材の成分が溶出してしまう。
式(1)で示される化合物の含有量は、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。この範囲内であると、反応の進行がより良好となると共に、抽出量がさらに低減される。
【0021】
カルボジイミド変性したポリイソシアネート(a-1)のイソシアネート含有量は、23質量%以上31質量%以下であることが好ましい。イソシアネート含有量が23質量%以上であると粘度が低減されるため、ハンドリング性がさらに良好になる。イソシアネート含有量が31質量%以下であると残存するMDIモノマー量がさらに低減されるため、低温における結晶化を極めて高度に抑制できる。
【0022】
ポリイソシアネート成分(A)は、上述した(I)~(III)で挙げたカルボジイミド変性ポリイソシアネート(a-1)のみから構成されていてもよく、1種以上の他のポリイソシアネート成分をさらに含んでいてもよい。
ポリイソシアネート成分(A)を構成する他のポリイソシアネート成分としては、例えば、MDIをポリオール(a-2)で変性したもの、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートをポリオール(a-2)で変性したもの等が挙げられる。
【0023】
ポリオール(a-2)としては、例えば、ヒマシ油、ヒマシ油系ポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0024】
ヒマシ油系ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ポリプロピレングリコール変性ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油、重合ヒマシ油等が挙げられる。
【0025】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、水添ビスフェノールA等の炭素数2~24のポリオール、およびこれらのポリオールの1種又は2種以上の混合物を出発物質としたアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0026】
これらポリオール(a-2)の中では、ポリイソシアネート成分の粘度、および最終的に得られるポリウレタン樹脂の耐熱性と耐水性の観点から、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油または部分脱水ヒマシ油が好ましい。
【0027】
<ポリオール成分(B)>
ポリオール成分(B)としては、例えば、アミノ基を含有しないポリオール(b-1)、アミノ基含有ポリオール(b-2)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
アミノ基を含有しないポリオール(b-1)としては、例えば、ヒマシ油、ヒマシ油系ポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ヒマシ油系ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ポリプロピレングリコール変性ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油および重合ヒマシ油が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、水添ビスフェノールA等の炭素数2~24のポリオール、およびこれらのポリオールの1種又は2種以上の混合物を出発物質としたアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
これらアミノ基を含有しないポリオール(b-1)の中では、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油、重合ヒマシ油が好ましい。これらをポリオール成分(B)が含有すると、耐熱性および耐水性がさらに良好になる。
【0029】
アミノ基含有ポリオール(b-2)としては、例えば、炭素数1~24のモノアルキルアミン、炭素数2~24のアルキレンジアミン等のアミンを出発物質としたアルキレンオキシド付加物;およびこれらの混合物;等が挙げられる。
これらアミノ基含有ポリオール(b-2)の中では、炭素数4~24のモノアルキルアミンもしくはエチレンジアミンを出発物質としたアルキレンオキシド付加物、またはこれらの混合物が好ましい。これらをポリオール成分(B)が含有すると、反応性と、溶出性とがさらに良好になる。
【0030】
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、該形成性組成物を硬化させることにより膜シール材を得ることができる。この得られた膜シール材は中空糸膜モジュールの部材として好適に使用することができる。すなわち、該膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、成型後の収縮が小さく、中空糸膜モジュール組み立て加工時における中空糸膜とケースとの剥離不良を低減することができ、クリアな外観を有する膜シール材用ポリウレタン樹脂の形成に資する。
【0031】
[膜シール材、中空糸膜モジュール]
本発明の一実施形態にかかる膜シール材は、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。すなわち、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、硬化させて膜シール材として用いることができる。このとき、膜シール材は、当該膜シール材の一方の側から他方の側を目視可能な程度に透明であることが好ましい。特に医療用、工業用分離装置を構成する中空糸膜モジュール用の膜シール材においては、異物の混入を確認するために目視において濁りがないことが要求される。
【0032】
また、本発明の一実施形態にかかる中空糸膜モジュールは、中空糸膜と、中空糸膜モジュールの一部と、の隙間(特に、中空糸膜の端部と、ハウジング内壁と、の隙間)に、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を充填し、硬化させて膜シール材を形成することで隙間が封止されてなる。すなわち、本発明の一実施形態にかかる中空糸膜モジュールは、上述した膜シール材により封止されている。
【0033】
本発明の一実施形態にかかる中空糸膜モジュールについて、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる中空糸膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
図1に示す中空糸膜モジュール100は、ハウジング11を備え、その内部に複数の中空糸膜13が充填されている。例えば、透析器として用いられる中空糸膜モジュールの場合、数千~数万本の中空糸膜が充填されている。
ハウジング11は円筒状の形状を有する。ハウジング11内部の両端(
図1中の左右両端)には膜シール材19がそれぞれ設けられている。膜シール材19は、中空糸膜13同士の隙間、および、中空糸膜13とハウジング11の内壁との間の隙間を埋めて封止するとともに、複数本の中空糸膜13を結束する。
【0034】
また、ハウジング11の側面には第1の流体入口15および第1の流体出口17が設けられており、外部から第1の流体(気体または液体)が流出入する。第1の流体入口15から流入した第1の流体は、ハウジング11内に充填された複数の中空糸膜13と接触しながらその間隙(中空糸膜外部)を通過し、第1の流体出口17から排出される。なお、中空糸膜13内部には膜シール材19が存在していないため、中空糸膜13には不図示のキャップ部材に設けられた第2の流入口(一端側)および第2の流出口(他端側)を介して外部から第2の流体(気体または液体)が流出入する。そして、中空糸膜13を介して第1の流体と第2の流体とが接触することで、一方の流体中から他方の流体中への物質移動が生じる。例えば、中空糸膜型の透析器の場合、透析液と血液とが接触することで、血液中の老廃物や過剰な水分が透析液に移動する。
【0035】
なお、
図1に示す中空糸膜モジュール100は、複数の中空糸膜13を備え、それらの両端において膜シール材19が隙間を封止する構成であるが、本実施形態にかかる中空糸膜モジュールはこれに何ら限定されるものではない。例えば、膜シール材は膜の両端に設けられた構成に限られるものではなく、中空糸膜の端部以外の一部に設けられて封止する構成であってもよく、膜の一部(中空糸の一端)のみに設けられていてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態にかかる中空糸膜モジュールは、膜シール材の外観がクリアであり、膜シール材の成型後の収縮が抑制されているため、医療用、水処理用モジュールとして好適に使用することができる。中空糸膜モジュールとして具体的には、血漿分離装置、人工心肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0038】
以下の成分を実施例および比較例で使用した。
MDI1;ミリオネートMT(MDI、東ソー社製、アイソマー1.0質量%)
CAT1;トリメチルフォスフェート(東京化成工業社製)
CAT2;トリエチルフォスフェート(東京化成工業社製)
CAT3;トリブチルフォスフェート(東京化成工業社製)
CAT4;3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(東京化成工業社製)
POLY1;ヒマシ油(伊藤製油社製 商品名 ヒマシ油LAV)
アミン1;N,N,N’,N’-テトラキス(イソプロパノール)エチレンジアミン(ADEKA社製 商品名 EDP-300)
【0039】
合成例、実施例および比較例において、所定量および所定の温度とは表1~表3に記載の各組成および反応温度をいう。
【0040】
<合成例1>
1リットル容の四口フラスコにMDI1を所定量加え、窒素気流下で攪拌しながら所定の温度まで昇温し、窒素を停止後、CAT1を所定量加えた。この温度で反応を進行させ、イソシアネート含有量が30.0質量%に到達した時点で加熱を停止し、氷浴で45℃まで急冷した。冷却後、窒素通気を再開し、45℃で24時間維持し、カルボジイミド変性MDI(a-1-1)を得た。得られたカルボジイミド変性MDI(a-1-1)の組成および性状を表1に示す。
【0041】
<合成例2~5、比較合成例1>
表1に示す組成および反応温度に変更した以外は合成例1に示す方法と同様にして、カルボジイミド変性MDI(a-1-2)~(a-1-6)を得た。得られたカルボジイミド変性MDI(a-1-2)~(a-1-6)の組成および性状を表1に示す。
【0042】
<比較合成例2>
1リットル容の四口フラスコにMDI1を所定量加え、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温し、CAT4を所定量加えた。この温度で反応を進行させ、イソシアネート含有量が29.5質量%に到達した時点で塩化ベンゾイル(東京化成工業社製)0.1gを添加し、反応を停止した。反応停止後、45℃まで冷却し、45℃で24時間維持し、カルボジイミド変性MDI(a-1-7)を得た。得られたカルボジイミド変性MDI(a-1-7)の組成および性状を表1に示す。
【0043】
<比較合成例3(a-1-8)>
1リットル容の四口フラスコにMDI1を所定量加え、窒素気流下攪拌しながら80℃まで昇温し、CAT4を所定量加えたところ、内容物が数分で発泡固化し、目的とするカルボジイミド変性MDIは得られなかった。
【0044】
<比較合成例4(a-1-9)>
1リットル容の四口フラスコにMDI1を所定量加え、窒素気流下で攪拌しながら所定の温度まで昇温し、窒素を停止後、CAT1を所定量加えた。この温度で反応を進行させたが、反応の進行が極端に遅く、時間がかかりすぎて合成が充分にできなかった。
【0045】
<合成例6~10、比較合成例5~6>
1リットル容の四口フラスコにカルボジイミド変性MDI(a-1-1)~(a-1-7)をそれぞれ所定量加え、窒素気流下攪拌しながら40℃まで昇温し、ウレタン化の反応熱により内温が75℃以上にならないよう注意しながらPOLY1を所定量加えた。発熱が収まった後に内温を70℃に温調し、70℃で3時間維持し、イソシアネート成分(A-1)~(A-7)を得た。得られたイソシアネート成分(A-1)~(A-7)の組成および性状を表2に示す。
【0046】
<ポリオール成分合成例1>
1リットル容の四口フラスコにPOLY1を800g、アミン1を200g加え、窒素気流下攪拌しながら50℃に調整し、1時間維持し、ポリオール成分(B-1)を得た。得られたポリオール成分(B-1)の水酸基価は281KOHmg/gであった。
【0047】
<実施例1~5、比較例1~2>
イソシアネート成分とポリオール成分とを表3に示す割合で配合し、得られたポリウレタン樹脂の性能を評価した。結果を表3に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
各物性値の測定方法は以下のとおりである。
<外観、成型収縮率>
イソシアネート成分、ポリオール成分それぞれを25℃に調整し、500mlポリカップにイソシアネート成分、次いでポリオール成分を所定量すばやく計量し投入する。スパチュラで30秒間混合し、50mmHgで60秒間真空脱泡を行う。脱泡後、混合液をガラス板の上に置いた内径65mm厚み12mmのステンレスリングの中に流し込み、45℃で48時間養生後、硬化物である樹脂を取り出し外観を確認する。
さらに25℃で24時間養生し、成型収縮率を下式により求める。
成型収縮率(%)=(リング内径-樹脂外径)/リング内径×100
【0052】
なお、樹脂の外観は目視で確認し、以下の基準で評価した。
クリア:上記硬化物の厚み方向から見て、樹脂内部の濁りが確認できない状態
濁り :上記硬化物の厚み方向から見て、樹脂内部の濁りが容易に確認できる状態
【0053】
<メタノール抽出率>
イソシアネー成分、ポリオール成分それぞれを25℃に調整し、500mlポリカップにイソシアネート成分、次いでポリオール成分を所定量すばやく計量し投入する。スパチュラで30秒間混合し、50mmHgで60秒間真空脱泡を行う。脱泡後、混合液を離型紙上に展開し、厚さ約1mmのシート状とする。45℃で48時間養生後、10mm角にカットする。500mlサンプル瓶にカットしたサンプル20gとメタノール200gとを入れ密栓し、25℃で24時間振盪する。振盪後濾過し、抽出液を300mlナスフラスコに回収し蒸発乾固させ、下式によりメタノール抽出率を求める。
メタノール抽出率(%)={蒸発乾固後のナスフラスコ質量(g)-ナスフラスコ空質量(g)}/サンプル質量(g)×100
【符号の説明】
【0054】
11 ハウジング
13 中空糸膜
15 第1の流体入口
17 第1の流体出口
19 膜シール材
100 中空糸膜モジュール