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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/18 20060101AFI20221129BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20221129BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20221129BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B41J19/18 Z
B41J29/46 F
B41J19/18 E
B41J3/60
B41J2/01 103
B41J2/01 105
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 303
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018124191
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020001308
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】川元 健司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-284924(JP,A)
【文献】米国特許第06127793(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 19/18
B41J 29/46
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、液体を吐出するヘッドと、
前記キャリッジの速度に関する速度データを取得するための速度取得手段と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記キャリッジを移動させつつ、前記ヘッドから被記録媒体に液体を吐出させる記録パスを実行して、被記録媒体に画像を記録し、
前記記録パスにおける前記キャリッジの移動中に、前記速度取得手段により取得した前記速度データが示す速度が、所定の閾値未満か否かを判断し、
前記速度データが示す速度が前記閾値未満と判断した場合には、前記キャリッジを移動させながら、その判断時点である第1時点から所定時間後であってその記録パス中の第2時点において、前記速度取得手段により取得した前記速度データを参照して、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するか、を判断し、
さらに前記制御部は、
所定条件に応じて、前記所定時間の長さを調整することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2時点の前記速度データが示す速度が前記閾値未満の場合には、その記録パスの実行を中断し、前記第2時点の前記速度データが示す速度が前記閾値以上の場合には、その記録パスの実行を継続することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記記録パスにおける、前記キャリッジの最高速度である目標速度が速いほど、前記所定時間を長くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記画像の記録開始時から、前記第1時点までの間に前記ヘッドから吐出された液体の吐出量が多いほど、前記所定時間を短くすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
被記録媒体を前記走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送部をさらに備え、
前記搬送部は、
前記搬送方向において前記ヘッドよりも上流側に位置し、被記録媒体をニップして前記搬送方向に搬送する上流側ローラ対と、
前記搬送方向において前記ヘッドよりも下流側に位置し、前記上流側ローラ対から被記録媒体を受け取って、被記録媒体をニップして前記搬送方向に搬送する下流側ローラ対と、を有しており
前記制御部は、
前記記録パスを実行する際に、被記録媒体が前記上流側ローラ対、及び、前記下流側ローラ対の片方によってニップされているときには、両方によってニップされているときと比べて、前記所定時間を短くすることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
温度測定部をさらに備え、
前記制御部は、
前記温度測定部により測定される温度が高いほど、前記所定時間を短くすることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、
被記録媒体の両面に画像を記録することが可能であり、
被記録媒体の第1面に画像を記録させ、その後に、被記録媒体の前記第1面と反対側の第2面に画像を記録させるときには、
前記第1面に画像を記録するときと比べて、前記所定時間を短くすることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、液体を吐出するヘッドと、
前記キャリッジの速度に関する速度データを取得するための速度取得手段と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記キャリッジを移動させつつ、前記ヘッドから被記録媒体に液体を吐出させる記録パスを実行して、被記録媒体に画像を記録し、
前記記録パスにおける前記キャリッジの移動中に、前記速度取得手段により取得した前記速度データが示す速度が、所定の閾値未満か否かを判断し、
前記速度データが示す速度が前記閾値未満と判断した場合には、前記キャリッジを移動させながら、その判断時点である第1時点から所定時間後であってその記録パス中の第2時点において、前記速度取得手段により取得した前記速度データを参照して、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するか、を判断し、
さらに前記制御部は、
前記第1時点よりも後において、前記速度取得手段により取得した前記速度データが示す速度が、前記閾値よりも値が小さい別の閾値未満となった時点を前記第2時点として登録し、
前記第1時点から前記第2時点までの経過時間を取得し、前記経過時間が閾値時間以上の場合には、その記録パスの実行を中断し、前記経過時間が前記閾値時間未満の場合には、その記録パスの実行を継続することを特徴とする画像記録装置。
【請求項9】
前記第2時点は、前記第1時点から前記所定時間後で、前記記録パス中の複数の時点を含み、
前記制御部は、
前記複数の第2時点において前記速度取得手段により取得した前記速度データを参照して、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するか、を判断することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像記録装置の一例として、ヘッドが取り付けられたキャリッジを走査方向に移動させながら、ヘッドから用紙にインクを吐出させて印刷を行うシリアル式のプリンタが開示されている。ところで、この種のプリンタでは、ヘッドから吐出されたインクを吸収して用紙が変形することによって、キャリッジの移動中に用紙とヘッドとの間で擦れ(ジャム)が生じることがある。このような擦れが生じた状態で、キャリッジの移動を継続すると、ヘッドの損傷等が発生する可能性がある。
【0003】
ここで、キャリッジの移動中に、用紙とヘッドとの間で擦れが生じると、用紙とヘッドとの間の摩擦力により、キャリッジの速度は低下する。この現象を利用して、上記特許文献1のプリンタでは、キャリッジの移動中に、キャリッジの速度が予め設定した閾値よりも低下した場合に、ジャムが発生したとして、キャリッジを停止させて、印刷を中断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-137674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移動中のキャリッジの速度は、用紙とヘッドとの間の擦れ以外の別の要因によっても低下する。例えば、キャリッジの移動中において、プリンタに対して外部から一時的に振動が加わることで、キャリッジの速度が低下する場合がある。上記特許文献1のプリンタでは、このような擦れ以外の別の要因でキャリッジの速度が一時的に低下する場合、実際には擦れが生じていないにも関わらず、擦れが生じたと誤って判断し、印刷を不必要に中断する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、ヘッドが損傷する可能性を低減しつつ、画像の記録を不必要に中断する可能性を低減することが可能な画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の画像記録装置は、走査方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載され、液体を吐出するヘッドと、前記キャリッジの速度に関する速度データを取得するための速度取得手段と、制御部とを備え、前記制御部は、前記キャリッジを移動させつつ、前記ヘッドから被記録媒体に液体を吐出させる記録パスを実行して、被記録媒体に画像を記録し、前記記録パスにおける前記キャリッジの移動中に、前記速度取得手段により取得した前記速度データが示す速度が、所定の閾値未満か否かを判断し、前記速度データが示す速度が前記閾値未満と判断した場合には、前記キャリッジを移動させながら、その判断時点である第1時点から所定時間後であってその記録パス中の第2時点において、前記速度取得手段により取得した前記速度データを参照して、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するか、を判断し、さらに前記制御部は、所定条件に応じて、前記所定時間の長さを調整することを特徴とする。
また、本発明の画像記録装置は、別の観点では、走査方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載され、液体を吐出するヘッドと、前記キャリッジの速度に関する速度データを取得するための速度取得手段と、制御部とを備え、前記制御部は、前記キャリッジを移動させつつ、前記ヘッドから被記録媒体に液体を吐出させる記録パスを実行して、被記録媒体に画像を記録し、前記記録パスにおける前記キャリッジの移動中に、前記速度取得手段により取得した前記速度データが示す速度が、所定の閾値未満か否かを判断し、前記速度データが示す速度が前記閾値未満と判断した場合には、前記キャリッジを移動させながら、その判断時点である第1時点から所定時間後であってその記録パス中の第2時点において、前記速度取得手段により取得した前記速度データを参照して、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するか、を判断する。そして、さらに前記制御部は、前記第1時点よりも後において、前記速度取得手段により取得した前記速度データが示す速度が、前記閾値よりも値が小さい別の閾値未満となった時点を前記第2時点として登録し、前記第1時点から前記第2時点までの経過時間を取得し、前記経過時間が閾値時間以上の場合には、その記録パスの実行を中断し、前記経過時間が前記閾値時間未満の場合には、その記録パスの実行を継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明者は、ヘッドと被記録媒体との間の擦れによりキャリッジの速度が閾値未満となったときと、擦れ以外の別の要因によりキャリッジの速度が閾値未満になったときとでは、閾値未満になった時点以降における、キャリッジの速度の変化の態様が異なることを見出した。
そこで、本発明では、キャリッジの速度が閾値未満となったと判断した第1時点で、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するかの判断を行わずに、第1時点から所定時間後であって、その記録パス中の第2時点において速度取得手段により取得した速度データを参照して、当該判断を行う。その結果として、ヘッドが損傷する可能性を低減しつつ、画像の記録を不必要に中断する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るインクジェットプリンタの概略鉛直断面図である。
図2】インクジェットプリンタの概略平面図である。
図3】(a)はエンコーダのスケールと検出センサの配置を示す図であり、(b)は検出センサが透過領域と対向している状態を示す図であり、(c)は検出センサが非透過領域と対向している状態を示す図である。
図4】インクジェットプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図5】キャリッジ速度と閾値との関係について説明する説明図であり、(a)は正常時の図であり、(b)はジャムが発生したときの図であり、(c)は振動が発生したときの図である。
図6】インクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
図7】第1変形例に係るインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
図8】第2変形例に係るインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
図9】第3変形例に係るインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
図10】第4変形例に係るインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
図11】第5変形例に係るインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
図12】(a)は、ジャムが発生したときのキャリッジ速度が第1閾値から第2閾値に変化するまでの経過時間について説明する説明図であり、(b)は振動が発生したときのキャリッジ速度が第1閾値から第2閾値に変化するまでの経過時間について説明する説明図である。
図13】第2実施形態に係るインクジェットプリンタの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、画像記録装置として、インクジェットプリンタ1を例にして説明する。また、以下では、図1及び図2に示すように、互いに直交する、前後方向、左右方向、及び上下方向を規定して説明する。図1に示すように、プリンタ1は、給送部2、記録部3、制御装置100等を備えている。
【0011】
給送部2は、被記録媒体である用紙Pが載置される給紙トレイ51と、給紙トレイ51の上方に設けられたピックアップローラ52と、用紙Pが給送される給送路Fとを有する。給送路Fは、給紙トレイ51の後壁の上端から、上方へ向かって湾曲した後に、後述する搬送ローラ対42に至る。ピックアップローラ52は、制御装置100による制御の下、給紙モータ53(図4参照)が駆動されると、給紙トレイ51から用紙Pを1枚ずつ取り出す。ピックアップローラ52によって取り出された用紙Pは、給送路Fに沿って、記録部3に供給される。
【0012】
記録部3は、用紙Pへの画像の記録を行う。本実施形態では、記録部3は、記録モードとして、用紙Pの第1面のみに画像を記録する片面記録モードと、用紙Pの第1面、及び第1面と反対側の第2面の両方に画像を記録する両面記録モードとを有している。
【0013】
記録部3は、図2に示すように、キャリッジ4、インクジェットヘッド5(以下、ヘッド5)、搬送機構6、エンコーダ7、温度センサ8、タッチパネル9(図4参照)等を備えている。キャリッジ4は、左右方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。2本のガイドレール11,12は、前後方向に互いに間隔をあけて配置されている。ガイドレール12の上面の、左右方向における両端部には、プーリ13,14が設けられている。プーリ13,14には、ゴム材料からなる無端状のベルト15が巻き掛けられている。キャリッジ4は、ベルト15のプーリ13とプーリ14との間に位置する部分に取り付けられている。また、右側のプーリ13には、キャリッジモータ16が接続されている。そして、キャリッジモータ16を正転及び逆転させると、プーリ13、14が回転することによってベルト15が走行し、キャリッジ4が左右方向を走査方向として往復移動する。このとき、左側のプーリ14は、ベルト15の走行に伴い回転する。
【0014】
ヘッド5は、キャリッジ4に搭載されており、キャリッジ4とともに走査方向に往復移動する。このヘッド5の下面は、インクを吐出するための複数のノズル10が形成されたノズル面10a(図1参照)である。また、ヘッド5は、複数のノズル10に連通するインク流路と、インク流路内のインクに圧力を付与して複数のノズル10からそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を備えたアクチュエータとを備えている。アクチュエータは、特定の構成のものには限られないが、例えば、駆動素子として、圧電層の逆圧電効果による変形を利用してインクを加圧する圧電素子を有する、圧電アクチュエータを好適に採用できる。尚、駆動素子として、熱によってインク内に気泡を発生させるための発熱素子を採用してもよい。
【0015】
搬送機構6は、給送部2から送られてきた用紙Pを、走査方向と交差する前後方向を搬送方向として用紙Pを搬送する機構である。搬送機構6は、図1に示すように、プラテン41、第1搬送路R1、第2搬送路R2、2つの搬送ローラ対42,43、及びスイッチバックローラ対44を備えている。
【0016】
プラテン41は、キャリッジ4よりも下方、且つ、キャリッジ4と対向可能な位置に配置されている。プラテン41は、その左右方向の幅が、用紙Pの左右方向の幅よりも長く、画像記録時に用紙Pを下側から支持する。
【0017】
第1搬送路R1は、搬送ローラ対42から前方へ向かって直線状に延びている。そして、この第1搬送路R1の上流側から順に、搬送ローラ対42、搬送ローラ対43、スイッチバックローラ対44が配置されている。第2搬送路R2は、第1搬送路R1における、搬送ローラ対43及びスイッチバックローラ対44の間の位置BPと、給送路Fと、を結ぶ搬送路である。
【0018】
2つの搬送ローラ対42,43は、ヘッド5を挟むように前後に配置されている。搬送ローラ対42(本発明の「上流側ローラ対」)は、ヘッド5よりも搬送方向における上流側に配置されている。搬送ローラ対42は、上側ローラ42aと下側ローラ42bとを有し、これらのローラで、給送部2から給送された用紙Pを上下方向からニップして、第1搬送路R1に沿って用紙Pを搬送方向に搬送する。上側ローラ42aは、搬送モータ45(図4参照)によって駆動される駆動ローラである。下側ローラ42bは、上側ローラ42aの回転に連動して回転する従動ローラである。
【0019】
搬送ローラ対43(本発明の「下流側ローラ対」)は、ヘッド5よりも搬送方向における下流側に配置されている。また、搬送ローラ対43は、上側ローラ43aと下側ローラ43bとを有し、これらのローラで、搬送ローラ対42から用紙Pを受け取って、用紙Pを上下方向からニップして搬送方向にさらに搬送する。下側ローラ43bは搬送モータ45(図4参照)によって駆動される駆動ローラである。上側ローラ43aは拍車であり、下側ローラ43bの回転に連動して回転する従動ローラである。
【0020】
以上、2つの搬送ローラ対42,43は、制御装置100による制御の下、搬送モータ45により同期して回転駆動され、給送部2から送られてきた用紙Pを、第1搬送路R1に沿って搬送する。これにより、用紙Pは、プラテン41の上方の、キャリッジ4と対向可能な領域A(図1参照:以下、対向領域A)に搬送されることになる。尚、搬送ローラ対42の回転軸には、搬送ローラ対42の回転に応じたパルス信号を出力するロータリーエンコーダ40(図4参照)が設置されている。制御装置100は、このロータリーエンコーダ40のパルス信号に基づいて、用紙Pの搬送を制御する。
【0021】
また、図1に示すように、搬送ローラ対42,43よりも搬送方向上流側には、用紙センサ38が配置されている。この用紙センサ38は、第1搬送路R1における、搬送ローラ対42,43よりも搬送方向上流側位置を、検出位置として、当該検出位置に用紙Pが存在するか否かを検出する。制御装置100は、この用紙センサ38の検出結果、及び、搬送モータ45に対する制御内容に基づいて、用紙Pが対向領域Aに位置するか否かを判断する。
【0022】
そして、制御装置100は、用紙Pが対向領域Aに位置付けられている際に、キャリッジ4とともにヘッド5を左右方向に移動させつつインクを吐出させる記録パスと、2つの搬送ローラ対42,43によって用紙Pを搬送方向に搬送する搬送動作と、を交互に繰り返し行うことにより、用紙Pのヘッド5と対向する面(以下、記録面と称す)に所望の画像等を記録する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
【0023】
スイッチバックローラ対44は、上側ローラ44aと下側ローラ44bとを有し、これらのローラで、搬送ローラ対43から用紙Pを受け取って、用紙Pを上下方向からニップして搬送方向にさらに搬送可能である。下側ローラ44bは、搬送モータ45(図4参照)によって駆動される駆動ローラである。上側ローラ44aは拍車であり、下側ローラ44bの回転に連動して回転する従動ローラである。尚、搬送モータ45の回転力は、ギヤや駆動軸等からなる伝達機構46(図4参照)を介してスイッチバックローラ対44に伝達される。制御装置100は、この伝達機構46を制御することで、スイッチバックローラ対44の回転方向を、用紙Pを前方に搬送可能な正転方向と、用紙Pを後方に搬送可能な逆転方向との間で切り換え可能である。
【0024】
エンコーダ7は、透過型のリニアエンコーダであり、図2及び図3に示すように、スケール21と、検出センサ22とを有している。スケール21は、ガイドレール12の上面に配置され、キャリッジ4の移動可能範囲にわたって走査方向に延びている。また、スケール21には、図3(a)に示すように、透過領域21aと非透過領域21bとが走査方向に沿って交互に複数配置されている。透過領域21a各々の走査方向における領域幅は全て同じであり、非透過領域21b各々の走査方向における領域幅も全て同じである。つまり、スケール21上において、複数の透過領域21aは走査方向に沿って所定間隔(非透過領域21bの領域幅)毎に形成されており、複数の非透過領域21bは走査方向に沿って所定間隔(透過領域21aの領域幅)毎に形成されている。また、透過領域21aは光を透過する領域である一方、非透過領域21bは光を透過しない領域である。
【0025】
検出センサ22は、キャリッジ4に搭載されており、発光素子26と受光素子27とを有している。発光素子26と受光素子27とは、前後方向において、スケール21を挟むように配置されている。発光素子26は、受光素子27に向けて光を照射する。受光素子27は、発光素子26から照射された光を受光する。そして、検出センサ22は、この発光素子26と受光素子27とで挟まれるスケール21上の位置を検出位置として、透過領域21a及び非透過領域21bの検出を行う。
【0026】
具体的には、図3(b)に示すように、検出センサ22の検出位置が透過領域21aである場合には、発光素子26から照射された光は、透過領域21aを透過して受光素子27により受光される。一方で、図3(c)に示すように、検出センサ22の検出位置が非透過領域21bである場合には、発光素子26から照射された光は、非透過領域21bにより遮断されて、受光素子27には到達しない。このため、キャリッジ4が走査方向に移動することで、検出センサ22の検出位置が移動すると、受光素子27は、発光素子26からの光を受光する状態と、発光素子26からの光を受光しない状態とを交互に繰り返すことになる。検出センサ22は、受光素子27が発光素子26からの光を受光しないときに電位がV1となり、受光素子27が発光素子26からの光を受光するときに電位がV2(V2<V1)となるパルス信号を出力する。即ち、検出センサ22から出力されるパルス信号は、電位がV1のときは検出センサ22が非透過領域21bを検出していることを表し、電位がV2のときは検出センサ22が透過領域21aを検出していることを表している。
【0027】
制御装置100は、この検出センサ22から出力されるパルス信号に基づいて、キャリッジ4の速度(以下、キャリッジ速度Vcr)の算出等を行っている。上記キャリッジ速度Vcrについては、下記の式1により算出することができる。尚、式1中において、Wは1つの非透過領域21bの走査方向の領域幅であり、Gは発振回路104(図4参照)から出力されるクロック信号の周波数である。また、CKは、検出センサ22が1つの非透過領域21bを検出している間に、発振回路104から出力されるクロック信号のクロック数である。
Vcr=W/(CK/G)・・・・(式1)
【0028】
上記式1において、領域幅W及び周波数Gは、予め定められている固定値であるため、制御装置100は、クロック数CKを取得することでキャリッジ速度Vcrを算出することができる。尚、このクロック数CKの取得及びキャリッジ速度Vcrの算出は、検出センサ22が非透過領域21bを検出する毎に実行される。本実施形態では、キャリッジ速度Vcrが「速度データ」に相当し、エンコーダ7と制御装置100とによって「速度取得手段」が実現されている。
【0029】
温度センサ8(本発明の「温度測定部」)は、周囲温度を測定するセンサであり、搬送機構6の近傍に配置されている。タッチパネル9は、ユーザからの各種操作入力の受け付けや、各種の設定画面や動作状態等をユーザに対して表示することが可能なユーザインターフェースである。
【0030】
図4に示すように、制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、発振回路104、ASIC(application specific integrated circuit)105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。発振回路104は、予め定められた周波数のクロック信号を出力する。ASIC105には、ヘッド5、検出センサ22、キャリッジモータ16、搬送モータ45、通信インターフェース110等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。
【0031】
制御装置100は、ROM102に格納されたプログラムを実行することにより、用紙Pに画像を記録する記録処理等の各種処理を実行する。尚、以下では、CPUによって各種処理を行うものとして説明するが、ASICのみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU101とASIC105とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置100が複数のCPUを備え、複数のCPUによって処理を分担して行ってもよい。また、制御装置100が複数のASICを備え、複数のASICによって処理を分担してもよい。
【0032】
以下、記録処理について具体的に説明する。CPU101は、通信インターフェース110を介して、PC等の外部装置200から記録指示を受信したときに、記録処理を実行する。具体的には、CPU101は、記録指示を受信すると、ピックアップローラ52や搬送モータ45を制御して、給紙トレイ51から対向領域Aに向けて用紙Pを搬送する。その後、CPU101は、用紙センサ38の検知結果等に基づいて用紙Pが対向領域Aに位置しているか否かを判断する。そして、用紙Pが対向領域Aに位置していると判断したときに、CPU101は、RAM103に記憶された画像データ等に基づく、画像の記録を開始する。この画像の記録では、先に述べたように、CPU101は、記録パスと、搬送動作とを交互に行うことで、用紙Pの記録面に画像を記録する。
【0033】
尚、1回の記録パスでは、CPU101は、当該記録パスにおけるキャリッジ4の最高速度である目標速度でキャリッジ4が定速移動するよう、検出センサ22の検出結果に基づいて算出した現在のキャリッジ速度Vcrと、当該目標速度との偏差に基づくフィードバック制御により、キャリッジ4の移動を制御する。また、プリンタ1では、キャリッジ4の目標速度として、複数段の速度を設定可能にされている。CPU101は、記録指示(記録指示に含まれる、用紙Pに印刷する画像の走査方向の解像度に関する指示等)等に応じて、この複数段の速度のうちの何れか1つの速度を目標速度として設定して、記録パス中は、当該目標速度でキャリッジ4が定速移動するようキャリッジモータ16を制御する。
【0034】
ここで、片面記録モードの場合には、用紙Pの第1面への画像の記録が終了すると、CPU101は、搬送モータ45及び伝達機構46を制御して、スイッチバックローラ対44を正転させる。これにより、第1面のみに画像が記録された用紙Pは、排紙トレイ54へ排出される。
【0035】
一方で、両面記録モードの場合には、用紙Pの第1面への画像の記録が終了すると、CPU101は、搬送モータ45及び伝達機構46を制御して、画像が記録された用紙Pの後端が位置BPを超えるまでスイッチバックローラ対44を正転させた後、スイッチバックローラ対44を逆転させる。これにより、画像が記録された用紙Pは、第2搬送路R2に沿って搬送されて、その表裏が反転した状態で、対向領域Aに再度搬送されることになる。その際、用紙Pの第2面が、ヘッド5と対向する記録面となる。そして、用紙Pの第2面への画像の記録が終了すると、CPU101は、搬送モータ45及び伝達機構46を制御して、スイッチバックローラ対44を正転させる。これにより、第1面および第2面の両面に画像が記録された用紙Pは、排紙トレイ54へ排出される。
【0036】
ところで、用紙Pは、インクを吸収すると、コックリングやカール等の用紙変形が生じる。このような用紙変形が生じると、以後の記録パスの際に、キャリッジ4の移動中に用紙Pとヘッド5のノズル面10aとが接触してジャム(用紙Pの詰り)が生じることがある。このジャムが生じた状態で、キャリッジ4の移動を継続すると、ヘッド5のノズル面10aが損傷することで吐出不良が生じたり、ジャムが悪化したりする。
【0037】
そこで、この問題を解決するための方法として、キャリッジ4を移動させる際に、キャリッジ速度Vcrを逐次取得し、このキャリッジ速度Vcrと、所定の閾値とを比較することでジャムが生じたか否かを判断する方法がある。以下、図5を参照しつつ詳細に説明する。尚、図5は、キャリッジ速度Vcrを、キャリッジ4の目標速度を100%としたときの相対値で表している。
【0038】
記録パスにおいては、先に触れたように、CPU101は、キャリッジ4を目標速度で移動するように、キャリッジモータ16を制御する。この制御中においては、キャリッジ4は、モータ変動の影響等を多少受けるものの、図5(a)に示すように、大よそ目標速度で移動する。しかしながら、ジャムが生じると、図5(b)に示すように、ノズル面10aと用紙Pとの間の摩擦力により、キャリッジ速度Vcrは目標速度よりも大きく低下する。従って、記録パス中において、取得したキャリッジ速度Vcrが所定の閾値未満になったときに、ジャムが生じたと判断することができる。
【0039】
以上のようにして、CPU101が、ジャムが生じたと判断したときに、キャリッジ4を停止させて記録パスの実行を中断することで、ノズル面10aの損傷や、ジャムの悪化等を抑制することができる。ここで、ジャムが生じたか否かの判断精度を向上させるためには、上記閾値を、使用環境に応じた厳密な値にする必要がある。即ち、使用環境に関わらず、上記閾値を固定値にすると、実際にはジャムが生じていないにも関わらず、ジャムが生じたと誤って判断する可能性が生じる。以下、詳細に説明する。
【0040】
周囲の温度が変化する等、使用環境が変化すると、キャリッジ4の速度も変化する。例えば、ガイドレール11,12とキャリッジ4との間には、キャリッジ4の摺動負荷を軽減するためのグリスなどの潤滑剤が介在しているが、この潤滑剤の硬度は、周囲の温度が変化すると変わる。このため、周囲の温度が変化すると、キャリッジ4の摺動負荷が変化し、キャリッジ4の速度も変化する。また、キャリッジモータ16などのモータは、周囲温度が変化すると、出力電流やトルクが変化する。このため、周囲温度が変化すると、キャリッジ4の速度安定性が変わる。
【0041】
また、スケール21は、その一部にインク汚れ等を要因とした異常が生じることがある。例えば、ジャムが生じた場合、ユーザにより詰まった用紙を除去する除去作業が行われるが、この除去作業の過程で、インクがスケール21上に付着して汚れることがある。このように、スケール21上に汚れが付く等の異常が生じると、検出センサ22がスケール21上の非透過領域21bを正確に読み取ることが難しくなる。その結果として、検出センサ22の検出結果に基づいて取得されるキャリッジ速度Vcrが、実際の速度よりも遅くなる場合がある。
【0042】
以上の要因により、閾値を固定値とした場合、実際にはジャムが生じていないにも関わらず、検出センサ22の検出結果に基づいて取得されるキャリッジ速度Vcrが閾値を低下して、記録パスの実行が不必要に中断される可能性がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、上記閾値を、記録処理の直前に行われる閾値設定処理により設定する。具体的には、CPU101は、閾値設定処理においては、まず、対向領域Aに用紙Pが存在しない状態で、記録パスを実行する際の目標速度と同じ速度でキャリッジ4が定速移動するようにキャリッジモータ16を制御する。そして、CPU101は、このキャリッジ4の移動中においてキャリッジ速度Vcrを複数回取得する。この後、CPU101は、キャリッジ4の移動中において取得した複数のキャリッジ速度Vcrのうち、最も遅いキャリッジ速度Vcrから所定量だけ遅い値を閾値に設定する。例えば、最も遅いキャリッジ速度Vcrから数%低下した値を閾値に設定する。以上により、現在の使用環境等に応じた適切な閾値を設定することができる。
【0044】
ところで、キャリッジ速度Vcrは、上記ジャム以外の要因によっても低下する場合がある。以下では、ジャム以外の要因として、振動を一例にして説明する。プリンタ1に対して外部からの振動が一時的に加わった場合、図5(c)に示すように、キャリッジ速度Vcrは低下する。このとき、振動の種類によっては、キャリッジ速度Vcrが閾値を低下する場合がある。この場合、実際にはジャムが生じていないにも関わらず、CPU101は、ジャムが生じたと誤って判断してしまう。その結果として、記録パスが不必要に中断されることになるため、プリンタ1の使い勝手が悪くなる。
【0045】
ここで、本願発明者は、ジャムによりキャリッジ速度Vcrが閾値未満となったときと、外部からの振動によりキャリッジ速度Vcrが閾値未満になったときとでは、閾値未満になった時点以降における、キャリッジ速度Vcrの変化の態様が異なることを見出した。
【0046】
具体的には、ジャムが生じた場合、図5(b)に示すように、キャリッジ速度Vcrは、用紙Pとヘッド5との間の接触が解かれるまでの間、比較的緩やかに低下する。そして、用紙Pとヘッド5との間の接触が解かれると、キャリッジ速度Vcrは、目標速度に復帰する。このため、ジャムによりキャリッジ速度Vcrが閾値未満に低下した場合には、キャリッジ速度Vcrが当該閾値以上に復帰するまでの復帰時間は、比較的長くなる。
【0047】
一方で、外部から振動が加わった場合、図5(c)に示すように、キャリッジ速度Vcrは、比較的急激に低下した後、短時間の間に、目標速度に復帰する。このため、外部からの振動によりキャリッジ速度Vcrが閾値未満に低下した場合には、キャリッジ速度Vcrが当該閾値以上に復帰するまでの復帰時間は、比較的短くなる。
【0048】
以上の現象に着目して、本実施形態では、CPU101は、記録パス中においてキャリッジ速度Vcrが閾値未満に低下したと判断した時点(以下、第1時点と称す)で、直ちにジャムが生じたとは判断せずに、記録パスの実行を継続する。そして、CPU101は、第1時点から所定の待機時間経過した後であって、その記録パス中の第2時点におけるキャリッジ速度Vcrを参照して、ジャムが生じたか否かを判断する。具体的には、第2時点におけるキャリッジ速度Vcrが、閾値未満の場合にはジャムが生じたと判断し、閾値以上の場合にはジャムが生じていないと判断する。
【0049】
これにより、外部からの振動が加わってキャリッジ速度Vcrが閾値未満となったとしても、第2時点になるまでの間にキャリッジ速度Vcrが閾値以上となっている場合には、CPU101は、ジャムが生じていないと判断することが可能となる。その結果として、記録パスの実行が不必要に中断する可能性を低減することができる。
【0050】
ところで、キャリッジ速度Vcrが閾値未満に低下してから、閾値以上に復帰するまでの復帰時間は、プリンタ1に加わる振動の種類によって異なる。例えば、振動時間が同じ場合でも、振幅が大きい振動が加わったときには、振幅の小さい振動が加わったときと比べて、復帰時間は長くなる。このため、振動が加わったときでもジャムが生じていないと判断可能な振動の種類を増やすためには、ジャムが生じたときの想定される最小の復帰時間を上回らない範囲で、第1時点から第2時点までの待機時間を長くすることが好ましい。これにより、ジャムが生じているか否かの判断精度を向上させることができる。一方で、待機時間を長くすると、ジャムが生じたか否かの判断時期が遅くなる。その結果、ジャムが発生した時点から、記録パスの実行を中断するまでの時間が長くなり、ヘッド5の損傷やジャムの悪化等を招く虞がある。
【0051】
そこで、CPU101は、ジャムが発生しやすい条件下では待機時間を第1待機時間とし、ジャムが発生し難い条件下では待機時間を第1待機時間よりも長い第2待機時間に調整する。具体的には、周囲の温度が高いほど、インクが着弾した用紙Pは変形しやすく、その結果として、ジャムが発生しやすい。そこで、本実施形態では、温度センサ8により測定される温度が、閾値温度以上の場合には待機時間を第1待機時間とし、閾値温度未満の場合には待機時間を第2待機時間とする。
【0052】
以上により、ジャムが発生しやすい条件下では、待機時間が短いため、ジャムの判断を早期に行うことができる。その結果として、ジャムが発生した時点から、記録パスの実行を中断するまでの時間を短くすることができる。一方で、ジャムが発生し難い条件下では、待機時間が長いため、ジャムが生じたか否かの判断精度を向上させることができる。その結果として、記録パスの実行が不必要に中断される可能性を低減することができる。
【0053】
以下、プリンタ1の、一連の動作について、図6を参照しつつ説明する。尚、図6の動作フロー開始時において、給送路F及び第1搬送路R1及び第2搬送路上には用紙Pが存在しないものとする。
【0054】
図6に示すように、CPU101は、外部装置200等から記録指示を受信する(S1:YES)と、閾値の設定処理を実行する(S2)。具体的には、CPU101は、記録パスにおける目標速度と同じ速度でキャリッジ4が定速移動するようにキャリッジモータ16を制御し、このキャリッジ4の移動中における検出センサ22の検出結果に基づいてキャリッジ速度Vcrを複数回取得する。そして、CPU101は、キャリッジ4の移動中において取得した複数のキャリッジ速度Vcrのうち、最も遅いキャリッジ速度Vcrから所定量だけ遅い値を閾値に設定する。
【0055】
次に、CPU101は、ピックアップローラ52、搬送モータ45等を制御して、給紙トレイ51の用紙Pを対向領域Aまで搬送する(S3)。そして、CPU101は、1回分の記録パスを開始する(S4)。即ち、キャリッジモータ16を制御してキャリッジ4の走査方向への移動を開始させ、且つ、ヘッド5を制御してノズル10からのインクの吐出を開始する。このキャリッジモータ16の制御中においては、検出センサ22による検出結果に基づいて、キャリッジ速度Vcrの取得が逐次行われる。
【0056】
次に、CPU101は、現時点において取得したキャリッジ速度VcrがS2の処理で設定した閾値未満か否かを判断する(S5)。そして、キャリッジ速度Vcrが閾値以上であると判断した場合(S5:NO)には、CPU101は、ジャムが生じていないと判断して、記録パスの実行を継続し(S13)、S14の処理に移る。一方で、キャリッジ速度Vcrが閾値未満であると判断した場合(S5:YES)には、CPU101は、温度センサ8により測定される温度が、閾値温度以上か否かを判断する(S6)。温度が閾値温度以上であると判断した場合(S6:YES)には、CPU101は、上記S5の処理時点(第1時点)から第1待機時間経過するまで待機して(S7)、S9の処理に移る。一方で、温度が閾値温度未満であると判断した場合(S6:NO)には、CPU101は、上記S5の処理時点から第2待機時間経過するまで待機して(S8)、S9の処理に移る。尚、このS6~S9の処理の実行中においては、記録パスの実行は継続されており、キャリッジ4は走査方向へ移動している。
【0057】
S9の処理では、CPU101は、現時点(第2時点)において取得したキャリッジ速度VcrがS2の処理で設定した閾値未満か否かを判断する。キャリッジ速度Vcrが閾値未満と判断した場合(S9:YES)には、CPU101は、ジャムが生じていると判断して、キャリッジモータ16を制御してキャリッジ4を停止させて、記録パスの実行を中断する(S10)。そして、CPU101は、ジャムが発生した旨を示す画面をタッチパネル9に表示させる(S11)。この後、ユーザにより詰まった用紙の除去作業が行われる。そして、ユーザから除去作業が完了してジャムが解消した旨を示す入力を、タッチパネル9を介して受け付けると(S12:YES)、CPU101は、この除去作業中にスケール21上に新たな汚れが発生した可能性があるとして、閾値設定処理を再度実行すべく、S2の処理に戻る。
【0058】
S9の処理で、キャリッジ速度Vcrが閾値以上と判断した場合(S9:NO)には、CPU101は、ジャムが生じていないと判断して、記録パスの実行を継続し(S13)、S14の処理に移る。
【0059】
S14の処理では、CPU101は、記録パス(1パス分の画像記録)が終了したか否かを判断する。記録パスが終了していないと判断した場合(S14:NO)には、記録パスを継続すべく、S5の処理に戻る。一方で、記録パスが終了したと判断した場合(S14:YES)には、用紙Pの記録面への画像の記録が終了したか否かを判断する(S15)。記録面への画像の記録が終了していないと判断した場合(S15:NO)には、CPU101は、搬送モータ45を制御して用紙Pを所定量だけ前方へ搬送し(S16)、次の記録パスを実行すべく、S4の処理に移る。一方で、記録面への画像の記録が終了したと判断した場合(S15:YES)には、CPU101は、記録モードが、両面記録モードであるか片面記録モードであるかを判断する(S17)。両面記録モードであると判断した場合(S17:YES)には、CPU101は、用紙Pの第2面への画像の記録が終了しているか否かを判断する(S18)。第2面への画像の記録が終了していないと判断した場合(S18:NO)には、CPU101は、第2面への画像の記録を実行すべく、搬送モータ45及び伝達機構46を制御して、第1面への画像の記録が終了した用紙Pを、第2搬送路R2を介して、対向領域Aへ再び搬送し(S19)、S4の処理に移る。
【0060】
S17の処理で片面記録モードであると判断した場合(S17:NO)、又はS18の処理で第2面への画像の記録が終了していると判断した場合(S18:YES)には、CPU101は、搬送モータ45を制御して、記録した用紙Pを排紙トレイ54に排出する(S20)。この後、受信した記録指示に係る画像の記録が全て終了したか否かを判断する(S21)。画像の記録が全て終了したと判断した場合(S21:YES)には、S1の処理に戻る。一方で、画像の記録が未だ終了していないと判断した場合(S21:NO)には、次の用紙Pの画像の記録を実行すべく、S3の処理に移る。
【0061】
以上、本実施形態によると、キャリッジ速度Vcrが閾値未満となったと判断した第1時点で、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するかの判断を行わずに、その記録パス中の第2時点において取得したキャリッジ速度Vcrを参照して、当該判断を行う。これにより、ジャムが生じているか否かの判断精度を高めることができるため、ヘッド5が損傷する可能性を低減しつつ、記録パスの実行を不必要に中断する可能性を低減することができる。
【0062】
また、温度が高くジャムが発生しやすい条件下では、待機時間を短くすることでジャムの判断を早期に行うことができる。その結果として、ジャムが発生した時点から、記録パスの実行を中断するまでの時間を短くすることができるため、ヘッド5が損傷する可能性を低減することができる。一方で、温度が低いときには、待機時間を長くすることで、ジャムが生じたか否かの判断精度を向上させることができ、その結果として、記録パスの実行が不必要に中断される可能性を低減することができる。本実施形態では、温度センサ8により測定される温度が、本発明の「所定条件」に相当する。
【0063】
次に、第1実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、温度センサ8により測定される温度を「所定条件」として、待機時間を調整していたが、特にこれに限定されるものではない。以下、その変形例(第1変形例~第4変形例)について説明する。
【0064】
第1変形例では、図7に示すように、CPU101は、上述のS1~S5の処理と同様な、B1~B5の処理を実行する。そして、B5の処理で、キャリッジ速度Vcrが閾値未満と判断した場合(B5:YES)には、CPU101は、用紙Pが、搬送ローラ対42,43の両方によってニップされているか、搬送ローラ対42,43のうち片方のローラ対によってのみニップされているかを判断する(B6)。
【0065】
ここで、画像の記録時において、1回目の記録パスの際には、用紙Pが、搬送ローラ対42によってのみニップされた状態となっている。そして、この後、用紙Pは、少なくとも1回の搬送動作によって搬送されることで、搬送ローラ対42,43の両方によってニップされた状態となる。さらにこの後、用紙Pは、少なくも1回の搬送動作によって搬送されることで、搬送ローラ対43によってのみニップされた状態となる。用紙Pが上記3つの状態のいずれの状態にあるかは、例えば、用紙Pのサイズ(搬送方向の長さ)と何回目の記録パスであるかによって判断することができる。
【0066】
そして、用紙Pが搬送ローラ対42,43のうちの片方のローラ対のみによってニップされていると判断した場合(B6:YES)には、上記B5の処理時点(第1時点)から第1待機時間経過するまで待機して(B7)、B9の処理に移る。一方で、用紙Pが搬送ローラ対42,43の両方のローラ対によってニップされていると判断した場合(B6:NO)には、CPU101は、上記S5の処理時点から第2待機時間経過するまで待機して(B8)、B9の処理に移る。この後、CPU101は、S9~S21の処理と同様な、B9~B21の処理を実行する。
【0067】
以上により、第1変形例では、用紙Pが搬送ローラ対42,43のうち片方のローラ対のみによってニップされているときには、両方のローラ対によってニップされているときと比べて、待機時間は短く調整される。
【0068】
ここで、搬送ローラ対42,43のうち片方のローラ対によってのみ用紙Pがニップされている状態では、両方のローラ対によって用紙Pがニップされている状態よりも、用紙Pが変形しやすく、ジャムが生じ易い。そこで、第1変形例では、用紙Pが搬送ローラ対42,43の片方のローラ対によってのみニップされているときには、待機時間を短くする。これにより、ジャムの判断を早期に行うことができるため、ジャムが発生した時点から、記録パスの実行を中断するまでの時間を短くすることができる。一方で、用紙Pが搬送ローラ対42,43の両方のローラ対によってニップされているときには、待機時間を長くすることで、ジャムが生じたか否かの判断精度を向上させることができる。第1変形例では、用紙Pが搬送される際の搬送ローラ対42,43のニップ状態が、本発明の「所定条件」に相当する。
【0069】
次に、第2変形例について説明する。第2変形例では、図8に示すように、CPU101は、上述のS1~S5の処理と同様な、C1~C5の処理を実行する。そして、C5の処理で、キャリッジ速度Vcrが閾値未満と判断した場合(C5:YES)には、CPU101は、記録モードが、両面記録モードであるか片面記録モードであるかを判断する(C6)。両面記録モードであると判断した場合(C6:YES)には、CPU101は、現在実行中の記録パスにより記録される記録面が、用紙Pの第2面であるか否かを判断する(C7)。そして、記録面が第2面であると判断した場合(C7:YES)には、上記C5の処理時点(第1時点)から第1待機時間経過するまで待機して(C8)、C10の処理に移る。C6の処理で記録モードが片面記録モードであると判断した場合(C6:NO)、又は、C7の処理で記録面が用紙Pの第1面であると判断した場合(C7:NO)には、上記C5の処理時点から第2待機時間経過するまで待機して(C9)、C10の処理に移る。この後、CPU101は、S9~S21の処理と同様な、C10~C22の処理を実行する。
【0070】
以上により、第2変形例では、記録モードが両面記録モードであり、記録面が第2面のときには、記録モードが片面記録モードであるときや、記録面が第1面であるときよりも、待機時間は短く調整される。
【0071】
ここで、両面記録モードにおいて記録面が第2面であるときには、第1面に画像が記録されており、用紙Pにはインクが着弾した状態であるため、用紙Pが変形している可能性が高く、ジャムが生じ易い。そこで、記録モードが両面記録モードであり、用紙Pの記録面が第2面のときには、待機時間を短くする。これにより、ジャムの判断を早期に行うことができるため、ジャムが発生した時点から、記録パスの実行を中断するまでの時間を短くすることができる。一方で、記録モードが片面記録モードであるときや、記録面が第1面であるときには、待機時間を長くすることで、ジャムが生じたか否かの判断精度を向上させることができる。第2変形例では、用紙Pの記録面が、本発明の「所定条件」に相当する。
【0072】
次に、第3変形例について説明する。第3変形例では、図9に示すように、CPU101は、上述のS1~S5の処理と同様な、D1~D5の処理を実行する。そして、D5の処理で、キャリッジ速度Vcrが閾値未満と判断した場合(D5:YES)には、CPU101は、現在画像を記録中の用紙Pの記録開始時から、D5の処理時点(第1時点)までにおいて、ヘッド5から吐出されたインクの吐出量が閾値量以上か否かを判断する(D6)。尚、吐出量については、記録対象の画像データや、ヘッド5のアクチュエータの駆動条件等から算出することができる。
【0073】
そして、吐出量が閾値量以上であると判断した場合(D6:YES)には、CPU101は、上記D5の処理時点(第1時点)から第1待機時間経過するまで待機して(D7)、D9の処理に移る。一方で、吐出量が閾値量未満であると判断した場合(D6:NO)には、上記D5の処理時点から第2待機時間経過するまで待機して(D8)、D9の処理に移る。この後、CPU101は、S9~S21の処理と同様な、D9~D21の処理を実行する。
【0074】
以上により、第3変形例では、第1時点までにヘッド5から吐出された吐出量が多いほど、待機時間は短く調整される。ここで、用紙Pに着弾したインクの量が多いほど、用紙Pが変形している可能性が高く、ジャムが生じ易い。そこで、第3変形例では、D5の処理時点(第1時点)までにおいて、ヘッド5から吐出されたインクの吐出量が閾値量以上の場合には、待機時間を短くする。これによりジャムの判断を早期に行うことができるため、ジャムが発生した時点から、記録パスの実行を中断するまでの時間を短くすることができる。一方で、D5の処理時点(第1時点)までにおいて、ヘッド5から吐出されたインクの吐出量が閾値量未満の場合には、待機時間を長くすることで、ジャムが生じたか否かの判断精度を向上させることができる。第3変形例では、第1時点までにヘッド5から吐出されたインクの吐出量が、本発明の「所定条件」に相当する。
【0075】
次に、第4変形例について説明する。第4変形例では、図10に示すように、CPU101は、上述のS1~S5の処理と同様な、E1~E5の処理を実行する。そして、E5の処理で、キャリッジ速度Vcrが閾値未満と判断した場合(E5:YES)には、CPU101は、現在の記録パスにおける、キャリッジ4の目標速度が閾値速度以上か否かを判断する(E6)。目標速度が閾値速度未満と判断した場合(E6:NO)には、上記D5の処理時点(第1時点)から第1待機時間経過するまで待機して(E7)、E9の処理に移る。一方で、E6の処理で、目標速度が閾値速度以上と判断した場合(E6:YES)には、上記E5の処理時点(第1時点)から第2待機時間経過するまで待機して(E8)、E9の処理に移る。この後、CPU101は、S9~S21の処理と同様な、E9~E21の処理を実行する。
【0076】
以上により、第4変形例では、キャリッジ4の目標速度が速いほど、待機時間は長く調整される。ここで、キャリッジ4の目標速度が速いほど、振動が加わった後において、キャリッジ4の速度が、目標速度の±数%以内に収まるまでの収束時間は長くなる。具体的には、上述したように、キャリッジ4の移動制御は、検出センサ22の検出結果に基づいて算出した現在のキャリッジ速度Vcrと、当該目標速度との偏差に基づくフィードバック制御により行われている。このフィードバック制御の制御周期は、キャリッジ速度Vcrの取得周期と同じであるため、キャリッジ4の目標速度が速いほど、制御周期は短くなる。また、フィードバック制御の基本的な制御であるPID制御等では、前回の制御周期における偏差と、今回の制御周期における偏差との間の変化量が大きいほど、今回の制御周期における操作量が大きな値に設定される。従って、キャリッジ4の目標速度が速いほど、制御周期が短くなるため、操作量が大きくなり、その結果として、キャリッジ4の速度が過剰に変動し易くなる。
【0077】
ここで、キャリッジ4の目標速度が閾値速度以上の場合、及び閾値速度未満の場合のそれぞれにおいて、キャリッジ4の現在の速度を、同じ速度量だけ低下させる振動が加わったと仮定する。このとき、キャリッジ4の目標速度が閾値速度以上の場合には、閾値速度未満の場合と比べて、制御周期が短いことに起因して、キャリッジ4の速度が過剰に変動するため、上記収束時間が長くなる虞がある。このため、キャリッジ4の目標速度が閾値速度以上の場合、待機時間が短いと、プリンタ1に対して振動が加わったときに、CPU101が、ジャムが生じたと誤って判断する可能性がある。そこで、第4変形例では、キャリッジ4の目標速度が閾値速度未満の場合には、待機時間を短くする。これによりジャムの判断を早期に行うことができるため、ジャムが発生した時点から、記録パスの実行を中断するまでの時間を短くすることができる。一方で、キャリッジ4の目標速度が閾値速度以上の場合には、待機時間を長くすることで、ジャムが生じたか否かの判断精度を向上させることができる。第4変形例では、キャリッジ4の目標速度が、本発明の「所定条件」に相当する。
【0078】
以上説明したように、種々の条件に応じて、待機時間を調整してもよい。なお、上記第1実施形態、及びその第1変形例~第4変形例のそれぞれでは、温度センサ8により測定される温度、用紙Pが搬送される際の搬送ローラ対42,43のニップ状態、用紙Pの記録面、第1時点までにヘッド5から吐出されたインクの吐出量、キャリッジ4の目標速度の5つの項目のうちの何れか1つの項目に基づいて、待機時間を調整していたが、複数の項目に基づいて待機時間を調整してもよい。例えば、5つの項目のそれぞれの状態に対して所定の点数を割り当てる。そして、5つの項目それぞれについての現在の状態に対応する点数の合計値に応じて待機時間を調整してもよい。以下、その一例について説明する。
【0079】
上記温度の項目については、温度が閾値温度以上の場合には「1点」、閾値温度未満の場合には「2点」を割り当てる。上記ニップ状態の項目については、片方のローラ対によってのみ用紙Pがニップされている状態の場合は「1点」、両方のローラ対によって用紙Pがニップされている状態の場合は「2点」を割り当てる。上記記録面の項目については、記録面が第2面の場合には「1点」、第1面の場合には「2点」を割り当てる。上記インクの吐出量の項目については、吐出量が閾値量以上である場合には「1点」、閾値量未満の場合には「2点」を割り当てる。また、上記キャリッジ4の目標速度については、目標速度が閾値速度未満の場合には「1点」、閾値時間以上の場合には「2点」を割り当てる。そして、5つの項目それぞれについての現在の状態に対応する点数の合計値を算出する。この合計値が、「8点」未満の場合には待機時間を第1待機時間に調整し、「8点」以上の場合には待機時間を第2待機時間に調整してもよい。また、各項目について、重要度に応じて重みを付けた上で、合計値を算出してもよい。
【0080】
次に、第1実施形態の別の変形例である第5変形例について説明する。上述の実施形態では、キャリッジ速度Vcrが閾値未満になったと判断した第1時点から待機時間が経過した後の1つの第2時点における、キャリッジ速度Vcrを参照して、ジャムが生じたか否かを判断していたが、第5変形例では、第1時点から待機時間が経過した後の複数の第2時点におけるキャリッジ速度Vcrを参照して、ジャムが生じたか否かを判断する。
【0081】
第5変形例では、図11に示すように、CPU101は、上述のS1~S8の処理と同様な、F1~F8の処理を実行する。この後、CPU101は、所定時間経過する毎にキャリッジ速度Vcrを取得して、第1時点から待機時間が経過した後に複数の第2時点(例えば、5つの第2時点)におけるキャリッジ速度Vcrを取得する(F9)。そして、CPU101は、取得した全ての第2時点におけるキャリッジ速度Vcrが閾値未満か否かを判断する(F10)。取得した全ての第2時点におけるキャリッジ速度Vcrが閾値未満と判断した場合(F10:YES)には、CPU101は、ジャムが生じていると判断して、キャリッジモータ16を制御してキャリッジ4を停止させて、記録パスの実行を中断する(F11)。この後、CPU101は、上述のS11及びS12と同様なF12及びF13の処理を実行する。
【0082】
一方で、F10の処理で、取得した何れかの第2時点におけるキャリッジ速度Vcrが閾値以上と判断した場合(F10:NO)には、CPU101は、ジャムが生じていないと判断して、記録パスの実行を継続し(F14)。この後、CPU101は、上述のS14~S21の処理と同様なF15~F22の処理を実行する。
【0083】
以上、第5変形例では、複数の第2時点におけるキャリッジ速度Vcrを参照して、ジャムが生じたか否かを判断する。ここで、ジャムが発生したことでキャリッジ速度Vcrが閾値未満となった以降において、ノイズ等の影響により一時的にキャリッジ速度Vcrが閾値以上となる場合がある。従って、1つの第2時点におけるキャリッジ速度Vcrのみを参照した場合、実際にはジャムが生じているにも関わらず、CPU101が、ジャムが生じていないと誤って判断する可能性がある。しかしながら、第5変形例では、複数の第2時点におけるキャリッジ速度Vcrを参照しているため、ジャムが生じているか否かの判断精度を高めることができる。
【0084】
尚、本変形例では、取得した全ての第2時点におけるキャリッジ速度Vcrが閾値未満か否かを判断することで、ジャムが生じたか否かを判断していたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、取得した第2時点におけるキャリッジ速度Vcrの平均値が閾値未満か否かを判断することで、ジャムが生じたか否かを判断してもよい。
【0085】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図12及び図13を参照しつつ説明する。第2実施形態は、ジャムが生じたか否かの判断方法が、第1実施形態とは異なる。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0086】
上述したように、ジャムが生じた場合にはキャリッジ速度Vcrは比較的緩やかに低下する一方で、外部からの振動が加わった場合には、キャリッジ速度Vcrは、比較的急激に低下する。即ち、ジャムが生じたときのキャリッジ速度Vcrの単位時間当たりの速度低下率は、外部からの振動が加わったときのキャリッジ速度Vcrの単位時間当たりの速度低下率よりも小さい。
【0087】
第2実施形態では、この現象に着目して、図12に示すように、CPU101は、第1閾値と、第1閾値よりも小さい第2閾値を設定する。例えば、第1閾値を、目標速度の95%の速度値に設定する場合には、第2閾値を目標速度の90%の速度値に設定する。そして、CPU101は、記録パス中において、キャリッジ速度Vcrが第1閾値未満になったと判断した第1時点以降において、キャリッジ速度Vcrが第2閾値未満になった時点を第2時点として登録する。この第1時点から第2時点までの経過時間は、キャリッジ速度Vcrの単位時間当たりの速度低下率が小さいほど、長くなる。従って、図12に示すように、ジャムが生じたときの経過時間は、外部からの振動が加わったときの経過時間よりも長くなる。そこで、CPU101は、経過時間が閾値時間以上の場合にはジャムが生じたと判断し、経過時間が閾値時間未満の場合にはジャムは生じていないと判断する。
【0088】
以下、第2実施形態に係るプリンタ1の、一連の動作について、図13を参照しつつ説明する。
【0089】
まず、CPU101は、上述のS1~S4の処理と同様な、G1~G4の処理を実行する。ただし、G2の閾値設定処理では、第1閾値及び第2閾値の2つの閾値の設定を行う。そして、G4の処理の後、CPU101は、現在取得したキャリッジ速度VcrがG2の処理で設定した第1閾値未満か否かを判断する(G5)。キャリッジ速度Vcrが第1閾値以上であると判断した場合(G5:NO)には、CPU101は、ジャムが生じていないと判断して、記記録パスの実行を継続し(G12)、G13の処理に移る。
【0090】
一方で、キャリッジ速度Vcrが第1閾値未満であると判断した場合(G5:YES)には、CPU101は、取得するキャリッジ速度Vcrが第2閾値未満と判断するまで待機し、第2閾値未満になったと判断した時点を第2時点として登録する(G6)。このとき、キャリッジ速度Vcrが第1閾値未満であると判断した時点から、所定の時間以上経過しても、第2閾値未満まで低下しなかった場合には、G5の処理に戻ってもよい。
【0091】
次に、CPU101は、上記G5の処理時点(第1時点)から、登録した第2時までの経過時間を取得し(G7)、この経過時間が閾値時間以上か否かを判断する(G8)。経過時間が閾値時間以上であると判断した場合(G8:YES)には、CPU101は、ジャムが生じていると判断して、キャリッジモータ16を制御してキャリッジ4を停止させて、記録パスの実行を中断する(G9)。この後、CPU101は、上述のS10~S12の処理と同様な、G9~G11の処理を実行する。
【0092】
G8の処理で、経過時間が閾値時間未満であると判断した場合(G8:NO)には、CPU101は、ジャムが生じていないと判断して、記録パスの実行を継続する(G12)。この後、CPU101は、上述のS14~S21の処理と同様な、G13~G20の処理を実行する。
【0093】
以上、本実施形態によると、キャリッジ速度Vcrが第1閾値未満となったと判断した第1時点で、その記録パスの実行を中断するか、その記録パスの実行を継続するかの判断を行わずに、第1時点から、キャリッジ速度Vcrが第2閾値未満となったと判断した第2時点までの経過時間に基づいて、当該判断を行う。これにより、ジャムが生じているか否かの判断精度を高めることができるため、ヘッド5が損傷する可能性を低減しつつ、画像の記録を不必要に中断する可能性を低減することができる。
【0094】
第2実施形態の変形例として、互いに値が異なる複数の第2閾値を設定し、キャリッジ速度Vcrが各第2閾値未満になったと判断した時点それぞれを第2時点として登録する。そして、第1時点から各第2時点までの経過時間を取得し、この取得した経過時間に基づいてジャムが生じているか否かを判断してもよい。例えば、取得した経過時間の平均値が所定の閾値時間以上か否かを判断することで、ジャムが生じているか否かを判断してもよい。この変形例によると、ノイズ等の影響を低減することができるため、ジャムが生じているか否かの判断精度を高めることができる。
【0095】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の第1実施形態では、待機時間は、2段階で調整可能にされていたが、さらに細かく3段階以上で調整可能にされていてもよい。また、待機時間は、調整可能にされていなくてもよい。また、上述の第1実施形態では、キャリッジ速度Vcrと比較する、第1時点における閾値と第2時点における閾値とは同じ値であったが、同じ値である必要はない。
【0096】
上述の実施形態では、検出センサ22は、エンコーダ7の非透過領域21bを指標として検出するように構成されていたが、透過領域21aを指標として検出するように構成されていてもよい。また、エンコーダ7がいわゆる透過型のリニアエンコーダであったが、特にこれには限られるものではなく、反射型のリニアエンコーダであってもよい。さらに、エンコーダは、光学式以外のエンコーダであってもよく、例えば、磁気エンコーダを用いてもよい。この場合、上述の非透過領域21bを、磁気を帯びた領域、透過領域21aを、磁気を帯びていない領域にすればよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、「速度データ」は、キャリッジ速度Vcrであったが、キャリッジ速度Vcr自体ではなく、キャリッジ速度Vcrに関する速度パラメータ値であってもよい。例えば、「速度データ」は、クロック数CKであってもよい。また、閾値は、固定値であってもよい。
【0098】
また、温度センサ8は、温度自体を取得していたが、温度に関するパラメータ値を取得するものであってもよい。パラメータは、温度が高くなるとパラメータの値が大きくなるものであってもよいし、温度が高くなるとパラメータの値が小さくなるものであってもよい。
【0099】
記録パスの実行中にジャムが生じたと判断して記録パスの実行を中断する際には、キャリッジ4の移動を停止させていたが、これに限定されるものではなく、当該記録パスにおけるキャリッジ4の進行方向とは逆方向にキャリッジ4を移動させてもよい。ジャムが生じていると判断されるまでは、ヘッド5と用紙Pとは接触していないため、進行方向とは逆方向にキャリッジ4を移動させたとしても、ヘッド5と用紙Pとの間が接触する可能性は少ない。このため、キャリッジ4を進行方向とは逆方向に移動させたとしても、ヘッド5が損傷したり、ジャムが悪化したりする可能性は少ない。
【0100】
また、ノズルからインクを吐出して用紙に画像を記録するプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。用紙P以外の被吐出体に対して液体を吐出して画像を記録する画像記録装置に適用することも可能である。例えば、配線基板に対して、配線パターンの材料等のインク以外の液体を吐出して画像の記録を行う画像記録装置に適用することも可能である。また、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂等に対してインクを吐出して画像を記録する画像記録装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 プリンタ
4 キャリッジ
5 インクジェットヘッド
7 エンコーダ
100 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図13