(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】制御システム、モデル構築装置及びデータ生成方法
(51)【国際特許分類】
B65G 65/18 20060101AFI20221129BHJP
B65G 47/95 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B65G65/18
B65G47/95 A
(21)【出願番号】P 2018129231
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 毅
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-242322(JP,A)
【文献】特開平07-101552(JP,A)
【文献】特開2013-056759(JP,A)
【文献】特開2012-193030(JP,A)
【文献】特開平08-301453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/00-65/28
B65G 47/90-47/96
B65G 63/00-63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積物の山から堆積物を払い出すリクレーマを制御するためのシステムであって、
前記堆積物の山の三次元形状データを取得する三次元計測装置と、
払い出し作業の対象となる前記堆積物の山の三次元形状データに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援する決定支援部と、
決定された前記開始位置から払い出し作業を開始するように前記リクレーマの運転を支援する払出支援部と、
前記堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山における前記開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積するデータ蓄積部と、
前記堆積物の山の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける前記開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された前記実績データに基づく機械学習により構築するモデル構築部と、
払い出し作業の対象となる前記堆積物の山の三次元形状データの入力に応じて前記開始位置推奨モデルが出力する前記候補データを取得する候補データ取得部と、を備え
、
前記決定支援部は、前記候補データ取得部が取得した前記候補データに基づいて前記開始位置の決定を支援する、制御システム。
【請求項2】
前記データ蓄積部は、前記堆積物の山の三次元形状データ、及び当該堆積物の山における前記開始位置の前記座標データに、当該開始位置から開始された払い出し作業の効率を示す効率データを更に対応付けた前記実績データを蓄積し、
前記モデル構築部は、前記堆積物の山の三次元形状データの入力に応じて、当該三次元形状データにおいて払い出し作業の効率が高くなると予測される前記開始位置の候補を示す前記候補データを出力するように前記開始位置推奨モデルを構築する、請求項
1記載の制御システム。
【請求項3】
前記データ蓄積部は、払い出し作業の対象となる前記堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山における前記開始位置の前記座標データと、当該開始位置から開始された払い出し作業の前記効率データとを対応付けた更新用実績データを更に蓄積し、
前記モデル構築部は、蓄積された前記更新用実績データに基づく機械学習により前記開始位置推奨モデルを更新する、請求項
2記載の制御システム。
【請求項4】
前記候補データについて、前記開始位置の決定の容易性を評価する容易性評価部と、
前記開始位置の決定の容易性が予め設定されたレベルよりも低い場合に、前記候補データに基づく前記開始位置の決定を禁止し、オペレータによる前記開始位置の指定入力を取得する開始位置指令取得部と、を更に備え、
前記データ蓄積部は、払い出し作業の対象となる前記堆積物の山の三次元形状データと、前記開始位置指令取得部が取得した前記指定入力により指定された当該堆積物の山における前記開始位置の前記座標データと、当該開始位置から開始された払い出し作業の前記効率データとを対応付けたデータも前記更新用実績データとして更に蓄積する、請求項
3記載の制御システム。
【請求項5】
前記決定支援部は、払い出し作業の対象となる前記堆積物の山の三次元形状データと、前回の払い出し作業が完了した時の当該山の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達している場合に、前回の払い出し作業の完了位置に基づいて前記開始位置の決定を支援する、請求項1~
4のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項6】
複数の前記リクレーマにそれぞれ設けられた複数の前記三次元計測装置とを備え、
前記複数の三次元計測装置によりそれぞれ取得された複数の前記三次元形状データを合成し、複数の前記堆積物の山を含む堆積物ヤードの三次元マップを生成するマップ生成部を更に備える、請求項1~
5のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項7】
前記三次元マップに基づいて、移動中の前記リクレーマと前記堆積物の山との衝突を回避するように当該リクレーマの運転を支援する衝突回避支援部を更に備える、請求項
6記載の制御システム。
【請求項8】
前記リクレーマの配置位置と前記三次元マップとに基づいて、払い出し作業を行うための前記リクレーマの配置位置を再決定する配置支援部を更に備える、請求項
6又は
7記載の制御システム。
【請求項9】
前記マップ生成部は、前記リクレーマが配置位置にある状態で当該リクレーマの前記三次元計測装置により取得された前記堆積物の山の三次元形状データと、前記リクレーマが前記配置位置に移動しているときに当該リクレーマの前記三次元計測装置により取得された前記堆積物の山の三次元形状データとの両方に基づいて前記三次元マップを生成する、請求項
7又は
8記載の制御システム。
【請求項10】
堆積物の山から堆積物を払い出すリクレーマを制御するためのシステムであって、
前記堆積物の山の三次元形状データを取得する三次元計測装置と、
払い出し作業の対象となる前記堆積物の山の三次元形状データと、前回の払い出し作業が完了した時の当該山の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達している場合に、前回の払い出し作業の完了位置に基づいて払い出し作業の開始位置の決定を支援する決定支援部と、
決定された前記開始位置から払い出し作業を開始するように前記リクレーマの運転を支援する払出支援部と、を備える制御システム。
【請求項11】
堆積物の山から堆積物を払い出すリクレーマを制御するためのシステムであって、
前記堆積物の山の三次元形状データを取得する三次元計測装置と、
前記堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山における払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積したデータベースに基づく機械学習により、前記堆積物の山の三次元形状データの入力に応じ当該三次元形状データにおける前記開始位置の候補データを出力するように構築された開始位置推奨モデルに、払い出し作業の対象となる前記堆積物の山の三次元形状データを入力して前記候補データを取得する候補データ取得部と、
前記候補データ取得部が取得した前記候補データに基づいて前記開始位置の決定を支援する決定支援部と、
決定された前記開始位置から払い出し作業を開始するように前記リクレーマの運転を支援する払出支援部と、を備える制御システム。
【請求項12】
堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山におけるリクレーマによる払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積するデータ蓄積部と、
前記堆積物の山の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける前記開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された前記実績データに基づく機械学習により構築するモデル構築部と、を備えるモデル構築装置。
【請求項13】
堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山におけるリクレーマによる払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積することと、
前記堆積物の山の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける前記開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された前記実績データに基づく機械学習により構築することと、
前記開始位置推奨モデルが出力する前記候補データを前記開始位置の決定に利用可能にするためのデータを生成することと、を含むデータ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、モデル構築装置及びデータ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブームと、ブームの先端に設けられたバケットホイルとを備え、バケットホイルの回転動作及びブームの旋回動作により搬送物積山から搬送物を搬出するリクレーマの制御装置が開示されている。この制御装置は、払い出し段ごとに予め設定された寸動走行可能距離と、実際の寸動走行距離とを比較して、寸動走行距離が寸動走行可能距離以上であれば段替動作を行い、予め設定された安息角に従って旋回動作を行うようにリクレーマを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、堆積物の山から堆積物を払い出す作業の効率向上に有効なリクレーマを制御するためのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る堆積物の山から堆積物を払い出すリクレーマシステムは、堆積物の山の三次元形状データを取得する三次元計測装置と、払い出し作業の対象となる堆積物の山の三次元形状データに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援する決定支援部と、決定された開始位置から払い出し作業を開始するようにリクレーマの運転を支援する払出支援部と、を備える。
【0006】
本開示の他の側面に係る堆積物の山から堆積物を払い出すリクレーマを制御するためのシステムは、堆積物の山の三次元形状データを取得する三次元計測装置と、堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山における払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積したデータベースに基づく機械学習により、堆積物の山の三次元形状データの入力に応じ当該三次元形状データにおける開始位置の候補データを出力するように構築された開始位置推奨モデルに、払い出し作業の対象となる堆積物の山の三次元形状データを入力して候補データを取得する候補データ取得部と、候補データ取得部が取得した候補データに基づいて開始位置の決定を支援する決定支援部と、決定された開始位置から払い出し作業を開始するようにリクレーマの運転を支援する払出支援部と、を備える。
【0007】
本開示の更に他の側面に係るモデル構築装置は、堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山におけるリクレーマによる払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積するデータ蓄積部と、堆積物の山の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された実績データに基づく機械学習により構築するモデル構築部と、を備える。
【0008】
本開示の更に他の側面に係るデータ生成方法は、堆積物の山の三次元形状データと、当該堆積物の山におけるリクレーマによる払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積することと、堆積物の山の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された実績データに基づく機械学習により構築することと、開始位置推奨モデルが出力する候補データを開始位置の決定に利用可能にするためのデータを生成することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、堆積物の山から堆積物を払い出す作業の効率向上に有効なリクレーマを制御するためのシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】リクレーマシステムの構成を例示する模式図である。
【
図3】制御システムの機能上の構成を示すブロック図である。
【
図5】制御システムのハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図6】開始位置推奨モデルの構築手順を例示するフローチャートである。
【
図7】リクレーマの配置支援手順を例示するフローチャートである。
【
図8】リクレーマの運転支援手順を例示するフローチャートである。
【
図9】払い出し作業における運転支援手順を例示するフローチャートである。
【
図10】払い出し作業における運転支援手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
〔リクレーマシステム〕
本実施形態に係るリクレーマシステム1は、堆積物の山から堆積物を払い出す作業を行うためのシステムである。堆積物の具体例としては、鉄鋼の原料等が挙げられる。例えばリクレーマシステム1は、堆積物ヤード90に設けられる。堆積物ヤード90は、堆積物を保管するための敷地であり、複数の堆積エリア91を含む。それぞれの堆積エリア91には、原料等が搬入されて山93が形成される。リクレーマシステム1は、堆積エリア91同士の間を通るように敷設された複数のレール92と、レール92上に設置される複数のリクレーマ10と、制御システム100とを備える。リクレーマ10は、山93から堆積物を払い出す。
【0013】
図2に示すように、リクレーマ10は、リクレーマ本体20と、折返用センサ61と、段替用センサ62と、走行用センサ63と、計量センサ64と、GPS受信機65と、三次元計測装置66とを有する。
【0014】
リクレーマ本体20は、台車21と、ブーム22と、バケットホイル23と、コンベヤ24と、カウンタウェイト25と、俯仰駆動部31と、旋回駆動部32と、バケット駆動部33と、操作入力部41と、俯仰角度センサ51と、旋回角度センサ52とを有する。
【0015】
台車21は、レール92に沿って移動する。ブーム22は、台車21上に設けられ、鉛直方向に交差する方向に沿って台車21から両側に延びている。以下、ブーム22の説明における「前後」は、ブーム22の一端側を「前」とし、他端側を「後」とした場合の方向を意味する。台車21上において、ブーム22は、鉛直方向に沿った軸線Ax1まわりに旋回可能となり、鉛直方向及び前後方向に垂直な軸線Ax2まわりに傾動(以下、「俯仰」という。)可能となるように保持されている。軸線Ax2からブーム22の前側端部までの長さは、軸線Ax2からブーム22の後側端部までの長さよりも長い。
【0016】
バケットホイル23は、ブーム22の前側端部に設けられており、山から堆積物を切り出す。ブーム22の前側端部において、バケットホイル23は、軸線Ax2に平行な軸線Ax3まわりに回転可能となるように保持されている。バケットホイル23は、軸線Ax3を囲むように配置された複数のバケット26を有する。複数のバケット26のそれぞれは、軸線Ax3を中心とする円周に沿って移動し、堆積物を切り出す。コンベヤ24は、例えばベルトコンベヤであり、バケットホイル23により切り出された堆積物をブーム22に沿って後方に搬送する。カウンタウェイト25は、ブーム22自体の重量及びバケットホイル23の重量等によって軸線Ax2まわりに生じるモーメントを軽減するためのウェイトであり、ブーム22の後側端部に設けられている。
【0017】
俯仰駆動部31は、軸線Ax2まわりにブーム22を俯仰させる。旋回駆動部32は、軸線Ax1まわりにブーム22を旋回させる。バケット駆動部33は、軸線Ax3まわりにバケットホイル23を回転させる。俯仰駆動部31、旋回駆動部32及びバケット駆動部33は、例えば油圧又は電力を動力源とするアクチュエータである。
【0018】
俯仰角度センサ51は、軸線Ax2まわりのブーム22の俯仰角度を検出する。旋回角度センサ52は、軸線Ax1まわりのブーム22の旋回角度を検出する。俯仰角度センサ51及び旋回角度センサ52の具体例としては、ロータリーエンコーダ又はポテンショメータ等が挙げられる。
【0019】
操作入力部41は、オペレータとのインタフェース部分であり、オペレータへの情報の表示と、オペレータによる操作入力の取得とを行う。
【0020】
折返用センサ61、段替用センサ62、走行用センサ63、計量センサ64、GPS受信機65及び三次元計測装置66は、リクレーマ本体20の運転支援用の情報を検出する。折返用センサ61は、ブーム22の前側端部の下に設けられており、山93の端部(バケットホイル23により形成される山93の上面と山93の斜面との交部)を検出する。段替用センサ62は、折返用センサ61よりも後方においてブーム22の下に設けられており、山93の端部を検出する。走行用センサ63は、台車21の走行位置および寸動距離を検出する。計量センサ64は、コンベヤ24が搬送する堆積物の重量を検出する。GPS受信機65は、リクレーマ10の現在位置情報として、GPS(Global Positioning System)用の衛星信号を受信する。
【0021】
三次元計測装置66は、山93の三次元形状データを取得する。山93の三次元形状データは、例えば、山93の表面を構成する点群の三次元座標データである。三次元計測装置66の具体例としては、例えば二つのカメラの視差を利用するステレオ画像方式の計測装置、レーザ光の照射位置を走査させながら照射位置の三次元座標を算出するレーザ方式の計測装置等が挙げられる。三次元計測装置66は、リクレーマ本体20に設けられている。例えば三次元計測装置66は、ブーム22の前側端部に設けられている。すなわちリクレーマシステム1は、複数のリクレーマ10にそれぞれ設けられた複数の三次元計測装置66を備える。
【0022】
図1に戻り、制御システム100は、複数のコントローラ200と、サーバ300とを備える。複数のコントローラ200は、複数のリクレーマ10をそれぞれ制御する。コントローラ200は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援することに加え、決定された開始位置から払い出し作業を開始するようにリクレーマ10の運転を支援することも実行するように構成されている。コントローラ200は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、過去の払い出し作業における山93の三次元形状データ及び作業位置のデータとに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援するように構成されていてもよい。
【0023】
サーバ300は、複数のコントローラ200から収集したデータに様々な処理を行い、必要に応じて処理結果を各リクレーマ本体20に提供する。例えばサーバ300は、山93の三次元形状データと、当該山93におけるリクレーマ10による払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積することと、山93の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された実績データに基づく機械学習により構築することと、開始位置推奨モデルが出力する候補データを開始位置の決定に利用可能にするためのデータを生成することと、を実行するように構成されている。
【0024】
候補データを開始位置の決定に利用可能にするためのデータの具体例としては、候補データ自体の他、開始位置推奨モデルのパラメータデータ等が挙げられる。開始位置推奨モデルのパラメータデータによれば、コントローラ200に開始位置推奨モデルを複製することができる。これにより、コントローラ200の開始位置推奨モデルが出力する候補データを開始位置の決定に利用することが可能となる。
【0025】
サーバ300は、複数の三次元計測装置66によりそれぞれ取得された複数の三次元形状データを合成し、堆積物ヤード90の三次元マップを生成することを実行するように構成されていてもよい。サーバ300は、三次元マップに基づいて、払い出し作業を行うためのリクレーマ10の配置位置を決定することを更に実行するように構成されていてもよい。
【0026】
以下、コントローラ200とサーバ300の構成をより詳細に例示する。
図3に示すように、コントローラ200は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という。)として、位置データ取得部212と、形状データ取得部211と、前回データ取得部221と、候補データ取得部222と、決定支援部223と、容易性評価部224と、開始位置指令取得部225と、払出支援部226と、実績データ取得部227と、移動支援部231と、衝突回避支援部232とを有する。なお、
図3においては、便宜上一つのコントローラ200のみを図示しているが、実際には、複数のリクレーマ10をそれぞれ制御する複数のコントローラ200がサーバ300に接続される。
【0027】
位置データ取得部212は、GPS受信機65からリクレーマ10の現在位置のデータを取得する。形状データ取得部211は、三次元計測装置66から山93の三次元形状データを取得する。なお、上述のように、三次元計測装置66がリクレーマ10に設けられる場合、三次元計測装置66はリクレーマ10と共に移動することとなる。三次元計測装置66がブーム22の前側端部に設けられる場合、三次元計測装置66はブーム22の姿勢変化によっても移動することとなる。そこで、形状データ取得部211は、リクレーマ10の現在位置のデータと、ブーム22の現在姿勢のデータとに基づく座標変換により、上記三次元形状データを堆積物ヤード90に固定された座標系の三次元形状データに変換してもよい。この場合、形状データ取得部211は、例えばリクレーマ10の現在位置のデータを位置データ取得部212から取得し、ブーム22の現在姿勢のデータをリクレーマ本体20から取得する。ブーム22の現在姿勢のデータは、例えば、俯仰角度センサ51及び旋回角度センサ52の検出値である。
【0028】
前回データ取得部221は、払い出し作業の対象となる山93における前回の払い出し作業が完了した時の当該山93の三次元形状データ(以下、「前回の三次元形状データ」という。)をサーバ300から取得する。例えば前回データ取得部221は、当該データをサーバ300のデータ蓄積部313(後述)から取得する。
【0029】
候補データ取得部222は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データの入力に応じて上記開始位置推奨モデルが出力する候補データをサーバ300から取得する。例えば候補データ取得部222は、候補データをサーバ300の候補データ生成部318から取得する。候補データは、開始位置の決定の基準となり得るデータであればいかなる形式のデータであってもよい。例えば候補データは、開始位置の候補として、山93の表面の少なくとも一点の座標データを示すデータであってもよい。
【0030】
候補データは、開始位置の候補として、山93の表面の複数点の座標データを示すデータであってもよい。この場合、候補データは、上記複数点のそれぞれについて、開始位置の候補としての推奨度を示すデータを含んでいてもよい。開始位置の候補としての推奨度を示すデータの具体例としては、当該点を開始位置とした場合に予測される払い出し作業の効率を示すデータが挙げられる。払い出し作業の効率を示すデータの具体例としては、単位時間あたりの払い出し量の平均値等が挙げられる。
【0031】
候補データは、山93の表面を区分した複数のエリアのいずれかを開始位置の候補として示すデータであってもよい。候補データは、上記複数のエリアのいずれか二つ以上のエリアを開始位置の候補として示すデータであってもよい。この場合、候補データは、上記複数のエリアのそれぞれについて、開始位置の候補としての推奨度を示すデータを含んでいてもよい。
【0032】
決定支援部223は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援する。開始位置の決定支援の具体例としては、開始位置の自動決定を実行すること、オペレータによる開始位置の決定を補助するデータを表示すること等が挙げられる。
【0033】
決定支援部223は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、過去の払い出し作業における山93の三次元形状データ及び作業位置のデータとに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援するように構成されていてもよい。作業位置のデータは、山93のうち払い出し作業の対象となった位置の座標データであり、当該払い出し作業の開始位置及び完了位置を含む。
【0034】
例えば決定支援部223は、候補データ取得部222が取得した候補データに基づいて開始位置の決定を支援してもよい。以下、これを「第一方式の決定支援」という。例えば決定支援部223は、候補データにより示された点のいずれかを開始位置として決定する。候補データが上記推奨度を示すデータを含んでいる場合、決定支援部223は、推奨度が最も高い点を開始位置として決定してもよい。候補データが、開始位置の候補として複数点を含むエリアを示す場合、決定支援部223は、候補データにより示されたエリア内のいずれかの点を開始位置として決定する。候補データが上記推奨度を示すデータを含んでいる場合、決定支援部223は、推奨度が最も高いエリア内のいずれかの点を開始位置として決定してもよい。
【0035】
決定支援部223は、オペレータによる開始位置の決定を補助するデータとして、上記候補データを操作入力部41に表示してもよい。例えば決定支援部223は、山93の三次元形状の画像において、上記候補データにより示される点又はエリアを強調表示してもよい。
【0036】
上述したように、候補データは開始位置推奨モデルに基づいて取得される。開始位置推奨モデルは、蓄積された上記実績データに基づく機械学習により構築される。したがって、候補データに基づくことは、過去の払い出し作業における山93の三次元形状データ及び作業位置のデータに基づくことに相当する。
【0037】
決定支援部223は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データ(以下、「今回の三次元形状データ」という。)と、前回データ取得部221が取得する前回の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達している場合に、前回の払い出し作業の完了位置に基づいて開始位置の決定を支援してもよい。以下、これを「第二方式の決定支援」という。一致度は、例えば今回の三次元形状データと前回の三次元形状データとのずれ量の平均値(例えば単位面積あたりの平均値)として数値化することが可能である。この場合、一致度が高いほど数値は小さくなる。
【0038】
例えば決定支援部223は、前回の払い出し作業の完了位置に基づいて開始位置を決定する。決定支援部223は、前回の払い出し作業の完了位置を開始位置としてもよいし、前回の払い出し作業の完了位置から所定範囲内の位置を開始位置としてもよい。決定支援部223は、オペレータによる開始位置の決定を補助するデータとして、前回の払い出し作業の完了位置を操作入力部41に表示してもよい。決定支援部223は、前回の払い出し作業の完了位置から所定範囲内のエリアを操作入力部41に表示してもよい。なお、前回の三次元形状データ及び前回の払い出し作業の完了位置に基づくことも、過去の払い出し作業における山93の三次元形状データ及び作業位置のデータに基づくことに相当する。
【0039】
決定支援部223は、上記第一方式の決定支援と、上記第二方式の決定支援の両方を実行するように構成されていてもよい。この場合、決定支援部223は、上記一致度が予め設定されたレベルに達しているときには第一方式の決定支援を行わずに第二方式の決定支援を行い、上記一致度が予め設定されたレベルに達していないときには第二方式の決定支援を行わずに第一方式の決定支援を行ってもよい。
【0040】
容易性評価部224は、候補データ取得部222が取得する候補データについて、開始位置の決定の容易性を評価する。例えば、候補データが上記推奨度のデータを含む場合に、開始位置の決定の容易性は、例えば、推奨度が最上位の点又はエリアと、他の点又はエリアとの推奨度の差異の大きさにより評価可能である。当該差異が大きいほど、開始位置の決定の容易性は高くなる。
【0041】
開始位置指令取得部225は、容易性評価部224により評価された開始位置の決定の容易性が予め設定されたレベルよりも低い場合に、候補データに基づく開始位置の決定を禁止し、オペレータによる開始位置の指定入力を操作入力部41から取得する。開始位置指令取得部225は、形状データ取得部211から三次元形状データを取得し、これに基づいて山93の三次元形状の画像を操作入力部41に表示し、当該画像内において指定された点を開始位置の指定入力として取得してもよい。開始位置指令取得部225が開始位置の指定を取得した場合、決定支援部223は、上記第一方式の決定支援を行うのに代えて、開始位置の指定に従って開始位置を決定する。
【0042】
払出支援部226は、決定支援部223により決定された開始位置から払い出し作業を開始するようにリクレーマ10の運転を支援する。例えば払出支援部226は、上記開始位置にバケットホイル23を着床させるためのブーム22の旋回角度及び俯仰角度並びに台車21の走行位置を算出し、これに従ってブーム22を旋回及び俯仰させるようにリクレーマ10を制御する。その後払出支援部226は、堆積物の払い出し量(例えば計量センサ64による検出値の積算値)が目標量に達するまで、堆積物の払い出し作業を自動実行するようにリクレーマ10を制御する。
【0043】
例えば払出支援部226は、折返用センサ61、段替用センサ62及び走行用センサ63の検出結果に基づいて、ブーム22の旋回方向、台車21の走行方向及び寸動量、ブーム22の俯仰によるバケットホイル23の段替え方向及び段替えタイミング等を決定し、これに基づいて払い出し作業を実行するようにリクレーマ10を制御する。払い出し作業の実行中におけるリクレーマ10の詳細な制御方法は、例えば特許第3225969号公報に開示されている。
【0044】
実績データ取得部227は、リクレーマ10による払い出し作業が完了した後に、当該払い出し作業の開始位置とされた点の座標データと、当該払い出し作業の効率を示す効率データとを取得し、これらをサーバ300に送信する。効率データは、例えば単位時間あたりの払い出し量の平均値である。なお、払い出し作業の効率は、様々な要因で変動する。例えば、段替を行うときなど、払い出しが中断される期間におけるブーム22の動作量が大きい場合、払い出しの中断期間が長くなって効率が低下する。また、払い出しの途中で山93に崩落が生じると、一度バケットホイル23を山93から退避させる動作が必要となり、その分効率が低下する。
【0045】
移動支援部231は、サーバ300により決定された上記配置位置に移動するようにリクレーマ10を制御する。衝突回避支援部232は、サーバ300が生成した上記三次元マップに基づいて、配置位置まで移動中のリクレーマ10と山93との衝突を回避するように当該リクレーマ10の運転を支援する。例えば、衝突回避支援部232は、ブーム22の姿勢変更による衝突回避の可否を判定し、回避可であると判定した場合には衝突を回避する姿勢となるまで俯仰駆動部31及び旋回駆動部32によりブーム22の姿勢を変更するようにリクレーマ10を制御する。回避不可であると判定した場合、衝突回避支援部232は、配置位置までの移動を停止又は減速させるようにリクレーマ10を制御する。
【0046】
サーバ300は、機能ブロックとして、マップ生成部311と、マップデータ保持部312と、データ蓄積部313と、モデル構築部314と、モデル保持部315と、候補データ生成部318と、配置支援部316と、稼働状態データ保持部317とを有する。
【0047】
マップ生成部311は、複数の三次元計測装置66によりそれぞれ取得された複数の三次元形状データを合成して堆積物ヤード90の三次元マップを生成する。マップ生成部311は、例えば複数のコントローラ200の形状データ取得部211によりそれぞれ座標変換が施された複数の三次元形状データを合成して堆積物ヤード90の三次元マップを生成する。マップ生成部311は、三次元形状データの取得と合成を継続的に実行する。互いに異なる三次元形状データが重なった場合、マップ生成部311は最新の三次元形状データによって三次元マップを上書きする。
【0048】
マップ生成部311は、リクレーマ10が上記配置位置にある状態で当該リクレーマ10の三次元計測装置66により取得された山93の三次元形状データと、リクレーマ10が配置位置に移動しているときに当該リクレーマ10の三次元計測装置66により取得された山93の三次元形状データとの両方に基づいて三次元マップを生成してもよい。マップデータ保持部312は、マップ生成部311により生成されたマップデータを記憶する。
【0049】
データ蓄積部313は、山93の三次元形状データと、当該山93における開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積する。データ蓄積部313は、山93の三次元形状データ、及び当該山93における開始位置の座標データに、当該開始位置から開始された払い出し作業の効率を示す効率データを更に対応付けた実績データを蓄積してもよい。例えばデータ蓄積部313は、払い出し作業の開始位置の座標データ、完了位置の座標データ、及び効率データをコントローラ200の実績データ取得部227から取得し、当該払い出し作業の前及び後における山93の三次元形状データをマップ生成部311から取得し、これらを対応付けた実績データを蓄積する。
【0050】
モデル構築部314は、上記開始位置推奨モデルを、データ蓄積部313に蓄積された実績データに基づく機械学習により構築する。モデル構築部314は、堆積物の山93の三次元形状データの入力に応じて、当該三次元形状データにおいて払い出し作業の効率が高くなると予測される開始位置の候補を示す候補データを出力するように開始位置推奨モデルを構築してもよい。開始位置推奨モデルの具体例としては、ニューラルネットワークが挙げられる。
【0051】
図4は、ニューラルネットワークを例示する模式図である。ニューラルネットワークは、入力層L1と、一層又は複数層の中間層L2と、出力層L3とを有する。入力層L1は、入力ベクトル(X0,X1,X2,・・・Xm)をそのまま次の中間層L2に出力する。中間層L2は、活性化関数により総入力を出力に変換してその出力を次の中間層L2に渡す。出力層L3の直前の中間層L2は、その出力を出力層L3に渡す。出力層L3も、活性化関数により総入力を出力に変換し、その出力を出力ベクトル(Y0,Y1,Y2,・・・Yn)として出力する。
【0052】
例えばモデル構築部314は、上記三次元形状データを入力ベクトルとし、上記候補データを出力ベクトルとするニューラルネットワークに、データ蓄積部313に蓄積された実績データの三次元形状データ、開始位置の座標データ及び効率データを繰り返しあてはめ、入力ベクトルと出力ベクトルの組み合わせが実績データにおける三次元データ、開始位置の座標データ及び効率データの組み合わせに近くなるようにニューラルネットワークのパラメータ(例えば上記活性化関数の重み)を更新する機械学習にて、開始位置推奨モデルを構築する。
【0053】
データ蓄積部313及びモデル構築部314は、開始位置推奨モデルの構築後も、当該モデルの継続を更新するように構成されていてもよい。例えばデータ蓄積部313は、開始位置推奨モデルの構築後も、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、当該山93における開始位置の座標データと、当該開始位置から開始された払い出し作業の効率データとを対応付けた更新用実績データを更に蓄積し、モデル構築部314は、蓄積された更新用実績データに基づく機械学習により開始位置推奨モデルを更新する。データ蓄積部313は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、開始位置指令取得部225が取得した指定入力により指定された当該山93における開始位置の座標データと、当該開始位置から開始された払い出し作業の効率データとを対応付けたデータも更新用実績データとして更に蓄積する。モデル保持部315は、モデル構築部314により構築された開始位置推奨モデルを記憶する。例えば、モデル保持部315は、開始位置推奨モデルのパラメータ(例えば上記活性化関数のパラメータ)等を記憶する。
【0054】
候補データ取得部222は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データの入力に応じて上記開始位置推奨モデルが出力する候補データをサーバ300から取得する。候補データ生成部318は、コントローラ200の候補データ取得部222からの要求に応じて候補データを生成する。例えば候補データ生成部318は、モデル保持部315が記憶する開始位置推奨モデルに、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データを入力し、これに応じて開始位置推奨モデルが出力するデータを候補データとして生成する。
【0055】
稼働状態データ保持部317は、複数のリクレーマ10の稼働状態を示すデータを記憶する。例えば稼働状態データ保持部317は、複数のリクレーマ10のそれぞれについて、払い出し作業を実行中であるか否かを記憶する。
【0056】
配置支援部316は、上位プロセスコンピュータ等で決定されるリクレーマ10の配置位置とマップデータ保持部312に記憶された三次元マップとに基づいて、払い出し作業を行うためのリクレーマ10の配置位置を再決定する。配置支援部316は、稼働状態データ保持部317を参照して払い出し作業を実行中ではない複数のリクレーマ10を抽出し、その中から上記配置位置に最も早く到達可能なリクレーマ10を選択し、当該リクレーマ10を制御するコントローラ200の移動支援部231に配置位置を送信する。
【0057】
なお、以上の構成においては、開始位置推奨モデルがサーバ300側に保持され、サーバ300からコントローラ200には開始位置推奨モデルに基づいて生成された候補データが提供される場合を示したが、必ずしもこれに限られない。サーバ300は開始位置推奨モデルのパラメータデータをコントローラ200に提供し、コントローラ200は当該パラメータデータに基づき複製した開始位置推奨モデルを保持してもよい。この場合、コントローラ200において候補データを生成することが可能となる。
【0058】
図5は、制御システム100のハードウェア構成を例示する模式図である。
図5に示すように、コントローラ200は回路290を含み、サーバ300は回路390を含む。なお、
図5においても、便宜上一つのコントローラ200のみを図示しているが、実際には、複数のリクレーマ10をそれぞれ制御する複数のコントローラ200がサーバ300に接続される。
【0059】
回路290は、少なくとも一つのコンピュータにより構成される。回路290は、少なくとも一つのプロセッサ291と、メモリ292と、ストレージ293と、通信ポート294と、入出力ポート295とを含む。ストレージ293は、コンピュータによって読み取り可能な不揮発型の記憶媒体(例えばハードディスク又はフラッシュメモリ)である。例えばストレージ293は、上記機能ブロックを構成するためのプログラムに割り当てられる記憶領域を含む。メモリ292は、ストレージ293からロードしたプログラム及びプロセッサ291による演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ291は、メモリ292と協働して上記プログラムを実行することで、コントローラ200の各機能ブロックを構成する。通信ポート294は、プロセッサ291からの指令に応じ、ネットワークNWを介してサーバ300との間でネットワーク通信を行う。入出力ポート295は、プロセッサ291からの指令に応じて、リクレーマ本体20、操作入力部41、折返用センサ61、段替用センサ62、走行用センサ63、計量センサ64、GPS受信機65、三次元計測装置66、との間で電気信号の入出力を行う。
【0060】
回路390は、少なくとも一つのコンピュータにより構成される。回路390は、少なくとも一つのプロセッサ391と、メモリ392と、ストレージ393と、通信ポート394とを含む。ストレージ393は、コンピュータによって読み取り可能な不揮発型の記憶媒体(例えばハードディスク又はフラッシュメモリ)である。ストレージ393は、堆積物の山の三次元形状データと、当該山におけるリクレーマによる払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積することと、山の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された実績データに基づく機械学習により構築することと、開始位置推奨モデルに基づき出力される候補データを開始位置の決定に利用可能にするためのデータを生成することと、をサーバ300に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ393は、上記機能ブロックを構成するためのプログラムに割り当てられる記憶領域と、マップデータ保持部312、データ蓄積部313、モデル保持部315及び稼働状態データ保持部317に割り当てられる記憶領域とを含む。
【0061】
メモリ392は、ストレージ393からロードしたプログラム及びプロセッサ391による演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ391は、メモリ392と協働して上記プログラムを実行することで、サーバ300の各機能ブロックを構成する。通信ポート394は、プロセッサ391からの指令に応じ、ネットワークNWを介してコントローラ200との間でネットワーク通信を行う。
【0062】
なお、回路290及び回路390の構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば回路290は、複数のコンピュータにより構成されていてもよい。複数のコンピュータの具体例としては、プログラマブルロジックコントローラ及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。この場合、例えば上述の払出支援部226、実績データ取得部227、移動支援部231及び衝突回避支援部232をプログラマブルロジックコントローラにより構成し、形状データ取得部211、位置データ取得部212、前回データ取得部221、候補データ取得部222、決定支援部223、容易性評価部224及び開始位置指令取得部225をパーソナルコンピュータにより構成してもよい。
【0063】
〔制御手順〕
続いて、制御方法の一例として、制御システム100が実行する制御手順を例示する。この制御手順は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援することと、決定された開始位置から払い出し作業を開始するようにリクレーマ10の運転を支援することと、を含む。この制御手順は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、過去の払い出し作業における山93の三次元形状データ及び作業位置のデータとに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援してもよい。
【0064】
この制御手順は、山の三次元形状データと、当該山におけるリクレーマによる払い出し作業の開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積することと、山の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された実績データに基づく機械学習により構築することと、開始位置推奨モデルに基づき出力される候補データを開始位置の決定に利用可能にするためのデータを生成することと、を更に含んでもよい。この場合、この制御手順は、候補データに基づいて開始位置の決定を支援してもよい。
【0065】
以下、上記制御手順を、サーバ300における開始位置推奨モデルの構築手順と、サーバ300におけるリクレーマの配置支援手順と、コントローラ200におけるリクレーマの運転支援手順とに分けて詳細に説明する。
【0066】
(開始位置推奨モデルの構築手順)
図6に示すように、サーバ300は、まずステップS01,S02,S03を実行する。ステップS01では、マップ生成部311が、複数の形状データ取得部211のいずれかが送信する三次元形状データの受信を待機する。ステップS02では、マップ生成部311が、形状データ取得部211から取得した三次元形状データに基づいて三次元マップを生成する。マップ生成部311は、例えば、堆積物ヤード90に固定された座標系における三次元形状データを形状データ取得部211から取得し、マップデータ保持部312の三次元マップに合成する。互いに異なる三次元形状データが重なった場合、マップ生成部311は最新の三次元形状データによって三次元マップを上書きする。ステップS03では、候補データ生成部318が、候補データ取得部222から候補データの生成が要求されているか否かを確認する。ステップS03において候補データの生成が要求されていないと判定した場合、サーバ300は処理を終了する。
【0067】
ステップS03において候補データの生成が要求されていると判定した場合、サーバ300はステップS04を実行する。ステップS04では、候補データ生成部318が、構築済みの開始位置推奨モデルがモデル保持部315に記憶されているか否かを確認する。
【0068】
ステップS04において構築済みの開始位置推奨モデルがモデル保持部315に記憶されていると判定した場合、サーバ300はステップS05,S06を実行する。ステップS05では、候補データ生成部318が、モデル保持部315が記憶する開始位置推奨モデルに、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データ(例えばマップ生成部311が取得した三次元形状データ)を入力し、これに応じて開始位置推奨モデルが出力するデータを候補データとして生成する。ステップS06では、候補データ生成部318が、ステップS05にて生成した候補データを候補データ取得部222に送信する。
【0069】
ステップS04において構築済みの開始位置推奨モデルがモデル保持部315に記憶されていないと判定した場合、サーバ300はステップS07を実行する。ステップS07では、候補データ生成部318が、開始位置の候補を示さない空白データを候補データ取得部222に送信する。空白データは、例えば山93の三次元形状の全域において、上記推奨度を同じ値(例えばゼロ)にしたデータである。
【0070】
ステップS06又はステップS07の次に、サーバ300はステップS08,S09を実行する。ステップS08では、データ蓄積部313が、実績データ取得部227からの実績データの受信を待機する。ステップS09では、データ蓄積部313が実績データを蓄積する。データ蓄積部313は、例えば、払い出し作業の対象となる山93の払い出し作業前後における三次元形状データと、払い出し作業の開始位置とされた点の座標データと、当該払い出し作業の効率を示す効率データとを対応付けたデータセットを実績データとして蓄積する。
【0071】
次に、サーバ300はステップS11を実行する。ステップS11では、モデル構築部314が、データ蓄積部313に蓄積された実績データの数が学習用のデータ数(例えば、モデルの構築に適したデータ数)に達したか否かを確認する。構築済の開始位置推奨モデルがモデル保持部315に記憶されている場合、モデル構築部314は、当該モデルの構築後に蓄積した更新用実績データの数が学習用のデータ数(例えば、モデルの更新に適したデータ数)に達したか否かを確認する。学習用のデータ数は予め設定されている。
【0072】
次に、サーバ300はステップS12を実行する。ステップS12では、モデル構築部314が、上記開始位置推奨モデルを、データ蓄積部313に蓄積された実績データに基づく機械学習により構築する。モデル構築部314は、山93の三次元形状データの入力に応じて、当該三次元形状データにおいて払い出し作業の効率が高くなると予測される開始位置の候補を示す候補データを出力するように開始位置推奨モデルを構築してもよい。構築済の開始位置推奨モデルがモデル保持部315に記憶されている場合、モデル構築部314は、データ蓄積部313に蓄積された更新用実績データに基づく機械学習により開始位置推奨モデルを更新する。以上で開始位置推奨モデルの構築手順が完了する。サーバ300は、以上の手順を繰り返す。
【0073】
(リクレーマの配置支援手順)
図7に示すように、サーバ300は、まずステップS21,S22を実行する。ステップS21では、配置支援部316が、オペレータ又はより上位の装置から、払い出し作業の指令が入力されるのを待機する。払い出し作業の指令は、例えば、払い出し作業の対象となる山(以下、「作業対象の山」という)と、払い出し量(重量)とを含む。ステップS22では、配置支援部316が、マップデータ保持部312の三次元マップに基づいて、作業対象の山93に対するリクレーマ10の配置位置を決定する。配置支援部316は、例えば、作業対象の山93からの距離が所定の値となるようにリクレーマ10の配置位置を決定する。
【0074】
次に、サーバ300は、ステップS23,S24,S25を実行する。ステップS23では、配置支援部316が、稼働状態データ保持部317を参照して払い出し作業を実行中ではない複数のリクレーマ10を抽出し、その中から上記配置位置に最も早く到達可能なリクレーマ10を選択する。ステップS24では、配置支援部316が、ステップS23で選択したリクレーマ10を制御するコントローラ200の移動支援部231に対し、配置位置への移動指令を送信する。ステップS25では、配置支援部316が、ステップS23で選択したリクレーマ10の稼働状態を、稼働状態データ保持部317のデータにおいて稼働中に変更する。以上でリクレーマの配置支援手順が完了する。サーバ300は、以上の手順を繰り返す。
【0075】
(リクレーマの運転支援手順)
図8に示すように、コントローラ200は、まずステップS31,S32,S33,S34を実行する。ステップS31では、移動支援部231が、配置支援部316からの移動指令の受信を待機する。ステップS32では、移動支援部231が、移動指令が指定する配置位置への移動を開始させるようにリクレーマ10を制御する。ステップS33では、形状データ取得部211が、三次元計測装置66から山93の三次元形状データを取得する。また、ステップS33では、位置データ取得部212が、GPS受信機65からリクレーマ10の現在位置のデータを取得する。ステップS34では、形状データ取得部211が、リクレーマ10の現在位置のデータと、ブーム22の現在姿勢のデータとに基づく座標変換により、上記三次元形状データを堆積物ヤード90に固定された座標系の三次元形状データに変換する。
【0076】
次に、コントローラ200は、ステップS35,S36,S37を実行する。ステップS35では、形状データ取得部211が、変換後の三次元形状データをマップ生成部311に送信する。ステップS36では、衝突回避支援部232が、マップデータ保持部312から三次元マップを受信する。ステップS37では、衝突回避支援部232が、配置位置まで移動中のリクレーマ10と山93との衝突の可能性の有無を、受信した三次元マップに基づいて確認する。
【0077】
ステップS37において衝突の可能性があると判定した場合、コントローラ200はステップS38を実行する。ステップS38では、衝突回避支援部232が、サーバ300が生成した上記三次元マップに基づいて、配置位置まで移動中のリクレーマ10と山93との衝突を回避するように当該リクレーマ10の運転を支援する。例えば、衝突回避支援部232は、ブーム22の姿勢変更による衝突回避の可否を判定し、回避可であると判定した場合には衝突を回避する姿勢となるまで俯仰駆動部31及び旋回駆動部32によりブーム22の姿勢を変更するようにリクレーマ10を制御する。回避不可であると判定した場合、衝突回避支援部232は、配置位置までの移動を停止又は減速させるようにリクレーマ10を制御する。
【0078】
次に、コントローラ200はステップS39を実行する。ステップS37において衝突の可能性がないと判定した場合、コントローラ200はステップS38を実行することなくステップS39を実行する。ステップS39では、移動支援部231が、リクレーマ10の配置位置への到達を待機する。
【0079】
次に、コントローラ200は、ステップS41,S42を実行する。ステップS41では、移動支援部231が、配置位置への移動を停止させるようにリクレーマ10を制御する。ステップS42では、コントローラ200が、払い出し作業におけるリクレーマ10の運転支援を実行する。リクレーマ10の運転支援の具体的内容については以下で詳述する。以上でリクレーマ10の運転支援手順が完了する。コントローラ200は、以上の手順を繰り返す。
【0080】
続いて、ステップS42の運転支援の具体的内容について説明する。
図9に示すように、コントローラ200は、まずステップS51,S52,S53を実行する。ステップS51では、形状データ取得部211が、三次元計測装置66から山93の三次元形状データを取得する。また、ステップS51では、位置データ取得部212が、GPS受信機65からリクレーマ10の現在位置のデータを取得する。ステップS52では、形状データ取得部211が、リクレーマ10の現在位置のデータと、ブーム22の現在姿勢のデータとに基づく座標変換により、上記三次元形状データを堆積物ヤード90に固定された座標系の三次元形状データに変換する。ステップS53では、形状データ取得部211が、変換後の三次元形状データをマップ生成部311に送信する。
【0081】
次に、コントローラ200は、ステップS54,S55を実行する。ステップS54では、前回データ取得部221が、払い出し作業の対象となる山93における前回の払い出し作業が完了した時の当該山93の三次元形状データ(上記前回の三次元形状データ)をデータ蓄積部313から取得する。ステップS55では、決定支援部223は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データ(上記今回の三次元形状データ)と、ステップS53で取得された前回の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達しているか否かを確認する。
【0082】
ステップS55において今回の三次元形状データと前回の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達している場合、コントローラ200はステップS56を実行する。ステップS56では、決定支援部223が、前回の払い出し作業の完了位置に基づいて開始位置を決定する。決定支援部223は、前回の払い出し作業の完了位置を開始位置としてもよいし、前回の払い出し作業の完了位置から所定範囲内の位置を開始位置としてもよい。
【0083】
ステップS55において今回の三次元形状データと前回の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達していない場合、コントローラ200はステップS57,S58,S59,S61を実行する。ステップS57では、候補データ取得部222が、候補データ生成部318に上記候補データの生成を要求する。ステップS58では、候補データ取得部222が、候補データ生成部318が生成した候補データを取得する。ステップS59では、容易性評価部224が、ステップS58で取得された候補データについて、開始位置の決定の容易性を評価する。ステップS61では、決定支援部223が、ステップS59で評価された開始位置の設定の容易性が予め設定されたレベル以上であるかを確認する。
【0084】
ステップS61において開始位置の設定の容易性が予め設定されたレベル以上である場合、コントローラ200はステップS62を実行する。ステップS62では、決定支援部223が、候補データ取得部222が取得した候補データに基づいて開始位置の決定を支援する。例えば決定支援部223は、候補データにより示された点のうち、推奨度が最も高い点を開始位置として決定してもよい。複数の点の推奨度が最高値になっている場合、決定支援部223は、当該複数の点のいずれかを開始位置として選択する。例えば決定支援部223は、ブーム22の先端部の現在位置から最も近い点を開始位置として選択する。
【0085】
ステップS61において開始位置の設定の容易性が予め設定されたレベル未満である場合、コントローラ200はステップS63,S64,S65を実行する。ステップS63では、開始位置指令取得部225が、候補データに基づく開始位置の決定を禁止し、オペレータによる開始位置の指定入力の準備を行う。例えば開始位置指令取得部225は、形状データ取得部211から三次元形状データを取得し、これに基づいて山93の三次元形状の画像を操作入力部41に表示する。ステップS64では、開始位置指令取得部225が開始位置の指定入力を待機する。例えば、開始位置指令取得部225は、操作入力部41に表示した上記画像内においていずれかの点又はエリアが指定されるのを待機する。ステップS65では、決定支援部223が、操作入力部41において取得された開始位置の指定入力に従って開始位置を決定する。操作入力部41においてエリアの指定入力が取得された場合、決定支援部223は、当該エリア内のいずれかの点を開始位置として決定する。
【0086】
図10に示すように、ステップS56、ステップS62又はステップS65の後、コントローラ200はステップS71を実行する。ステップS71では、払出支援部226が、上記開始位置にバケットホイル23を着床させるようにリクレーマ10を制御する。例えば払出支援部226は、上記開始位置にバケットホイル23を着床させるためのブーム22の旋回角度及び俯仰角度を算出し、これに従ってブーム22を旋回及び俯仰させるようにリクレーマ10を制御する。
【0087】
次に、コントローラ200は、ステップS72を実行する。ステップS72では、払出支援部226が、バケット駆動部33によりバケットホイル23の回転を開始させ、堆積物の払い出しを開始するようにリクレーマ10を制御する。以後、払出支援部226は、堆積物の払い出し作業を自動実行するようにリクレーマ10を制御する。例えば払出支援部226は、折返用センサ61、段替用センサ62及び走行用センサ63の検出結果に基づいて、ブーム22の旋回方向、台車21の寸動方向及び寸動量、ブーム22の俯仰によるバケットホイル23の段替え方向及び段替えタイミング等を決定し、これに基づいて払い出し作業を実行するようにリクレーマ10を制御する。
【0088】
次に、コントローラ200は、ステップS73,S74,S75,S76を実行する。ステップS73では、払出支援部226が、堆積物の払い出し量(例えば計量センサ64による検出値の積算値)が目標量に達するまで、払い出し作業を継続するようにリクレーマ10を制御する。ステップS74では、払出支援部226が、バケット駆動部33によるバケットホイル23の回転、旋回駆動部32によるブーム22の旋回、俯仰駆動部31によるブーム22の俯仰、及び台車21の寸動を停止させ、堆積物の払い出しを停止するようにリクレーマ10を制御する。ステップS75では、実績データ取得部227が、払い出し作業の完了位置を示す情報を取得する。例えば実績データ取得部227は、払い出し作業の完了時におけるブーム22の旋回角度、ブーム22の俯仰角度、及び台車21の位置とを取得し、これらの情報に基いて、バケットホイル23が着床している位置の座標データを導出する。ステップS76では、払出支援部226が、台車21を後退させてバケットホイル23を山93から離すようにリクレーマ10を制御する。
【0089】
次に、コントローラ200は、ステップS77,S78を実行する。ステップS77では、形状データ取得部211が、三次元計測装置66から山93の三次元形状データを取得する。また、位置データ取得部212が、GPS受信機65からリクレーマ10の現在位置のデータを取得する。ステップS78では、形状データ取得部211が、リクレーマ10の現在位置のデータと、ブーム22の現在姿勢のデータとに基づく座標変換により、上記三次元形状データを堆積物ヤード90に固定された座標系の三次元形状データに変換する。
【0090】
次に、コントローラ200は、ステップS79を実行する。ステップS79では、形状データ取得部211が、変換後の三次元形状データをマップ生成部311に送信する。また、実績データ取得部227が、払い出し作業の開始位置とされた点の座標データと、当該払い出し作業の効率を示す効率データとを取得し、これらをサーバ300に送信する。例えば実績データ取得部227は、払い出し量(計量センサ64による検出値の積算値)の情報と、作業時間(払い出し作業の開始から停止までの時間)の情報とを払出支援部226から取得し、払い出し量を作業時間で除算した値を効率データとしてデータ蓄積部313に送信する。以上でステップS42の運転支援手順が完了する。
【0091】
〔本実施形態の作用効果〕
以上に説明したように、堆積物の山から堆積物を払い出すリクレーマを制御するための制御システム100は、山93の三次元形状データを取得する三次元計測装置66と、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援する決定支援部223と、決定された開始位置から払い出し作業を開始するようにリクレーマの運転を支援する払出支援部226と、を備える。
【0092】
リクレーマ10による堆積物の払い出しにおいては、山93のどの位置を払い出し作業の開始位置とするかが払い出し作業の効率に影響する。例えば不適切な開始位置から払い出し作業が開始されると、段替え作業(払い出し位置の高さを変える作業)の頻度が増えて払い出し作業の効率が低下する場合がある。段替え作業における払い出し位置の移動量が大きくなって払い出し作業の効率が低下する場合もある。払い出し作業の途中で堆積物が崩落し、これに起因して払い出し作業の効率が低下する場合もある。これに対し、本制御システム100によれば、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データを利用することで、適切な開始位置の決定を支援することができる。従って、山93から堆積物を払い出す作業の効率向上に有効である。
【0093】
決定支援部223は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、過去の払い出し作業における山93の三次元形状データ及び作業位置のデータとに基づいて、払い出し作業の開始位置の決定を支援してもよい。この場合、過去の実績を有効活用して適切な開始位置の決定を支援することができる。従って、山93から堆積物を払い出す作業の効率向上に有効である。
【0094】
制御システム100は、山93の三次元形状データと、当該山93における開始位置の座標データとを対応付けた実績データを蓄積するデータ蓄積部313と、山93の三次元形状データの入力に応じて当該三次元形状データにおける開始位置の候補データを出力する開始位置推奨モデルを、蓄積された実績データに基づく機械学習により構築するモデル構築部314と、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データの入力に応じて開始位置推奨モデルが出力する候補データを取得する候補データ取得部222と、を更に備え、決定支援部223は、候補データ取得部が取得した候補データに基づいて開始位置の決定を支援してもよい。
【0095】
適切な開始位置の見極めには、山93の形状に加えて様々なファクターを考慮することが必要であり、開始位置の見極めプロセスを定式化することが難しかった。このため、リクレーマ10を用いた作業現場において、開始位置の見極めはオペレータの経験に基づく判断に委ねられてきた。これに対し、本制御システム100によれば、山93の三次元形状データと、当該山93において払い出し作業の開始位置として選択された点の座標データとを対応付けたデータセットが蓄積され、蓄積されたデータセットに基づく機械学習により、開始位置推奨モデルが構築される。すなわち、開始位置の見極めプロセスが、機械学習によってモデル化される。これにより、オペレータの経験に基づく判断プロセスを広く活用することができる。例えば、十分な経験を積んだオペレータが不在であっても、開始位置推奨モデルの活用によって適切な開始位置の決定を支援することができる。従って、山93から堆積物を払い出す作業の効率向上に有効である。
【0096】
データ蓄積部313は、山93の三次元形状データ、及び当該山93における開始位置の座標データに、当該開始位置から開始された払い出し作業の効率を示す効率データを更に対応付けた実績データを蓄積し、モデル構築部314は、山の三次元形状データの入力に応じて、当該三次元形状データにおいて払い出し作業の効率が高くなると予測される開始位置の候補を示す候補データを出力するように開始位置推奨モデルを構築してもよい。この場合、払い出し作業の効率の実績をも考慮した機械学習により、払い出し作業の効率が高くなると予測される開始位置の候補データを出力するように開始位置推奨モデルが構築される。従って、山93から堆積物を払い出す作業の効率向上に更に有効である。
【0097】
データ蓄積部313は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、当該山93における開始位置の座標データと、当該開始位置から開始された払い出し作業の効率データとを対応付けた更新用実績データを更に蓄積し、モデル構築部314は、蓄積された更新用実績データに基づく機械学習により開始位置推奨モデルを更新してもよい。この場合、更新用データセットを用いて開始位置推奨モデルがブラッシュアップされるので、より信頼性の高い候補データの取得が可能となる。従って、山から堆積物を払い出す作業の効率向上に更に有効である。
【0098】
制御システム100は、候補データについて、開始位置の決定の容易性を評価する容易性評価部224と、開始位置の決定の容易性が予め設定されたレベルよりも低い場合に、候補データに基づく開始位置の決定を禁止し、オペレータによる開始位置の指定入力を取得する開始位置指令取得部225と、を更に備え、データ蓄積部313は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、開始位置指令取得部225が取得した指定入力により指定された当該山93における開始位置の座標データと、当該開始位置から開始された払い出し作業の効率データとを対応付けたデータも更新用実績データとして更に蓄積してもよい。この場合、候補データに基づく開始位置の決定が困難である場合には開始位置の指定がオペレータの判断に委ねられる。これにより、不適切な開始位置の決定に起因する効率低下が抑制される。オペレータの判断結果は開始位置推奨モデルのブラッシュアップに活用されるので、より信頼性の高い候補データの取得が可能となる。従って、山93から堆積物を払い出す作業の効率向上に更に有効である。
【0099】
決定支援部223は、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、前回の払い出し作業が完了した時の当該山93の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達している場合に、前回の払い出し作業の完了位置に基づいて開始位置の決定を支援してもよい。払い出し対象の山93の形状は、当該山93の前回の払い出し作業後の形状と実質的に一致する場合が少なくない。このような場合、前回の払い出し作業の完了位置に基づくことで、適切な開始位置を容易に設定することができる。このため、払い出し作業の対象となる山93の三次元形状データと、前回の払い出し作業が完了した時の当該山93の三次元形状データとの一致度が予め設定されたレベルに達している場合に、前回の払い出し作業の完了位置に基づいて開始位置を決定することで、開始位置の決定の信頼性を容易に向上させることができる。
【0100】
制御システム100は、複数のリクレーマ10を制御するためのシステムであって、複数の三次元計測装置66とを備え、複数の三次元計測装置66によりそれぞれ取得された複数の三次元形状データを合成し、複数の山93を含む堆積物ヤード90の三次元マップを生成するマップ生成部311を更に備えていてもよい。この場合、開始位置決定のために随時取得される三次元形状データを堆積物ヤード90の三次元マップの生成に活かすことで、タイムリーにアップデートされた三次元マップを生成することができる。タイムリーにアップデートされた三次元マップは、複数のリクレーマ10の効率的な運用に活かすことができる。従って、山93から堆積物を払い出す作業の効率向上に更に有効である。
【0101】
制御システム100は、リクレーマ10の配置位置と三次元マップとに基づいて、払い出し作業を行うためのリクレーマ10の配置位置を再決定する配置支援部316を更に備えていてもよい。この場合、三次元マップをリクレーマ10の配置位置の決定に活かすことで、山93から堆積物を払い出す作業の更なる効率向上を図ることができる。
【0102】
制御システム100は、三次元マップに基づいて、移動中のリクレーマ10と山93との衝突を回避するように当該リクレーマ10の運転を支援する衝突回避支援部232を更に備えていてもよい。この場合、三次元マップを移動中のリクレーマ10と山93との衝突回避に活かすことで、山93から堆積物を払い出す作業の更なる効率向上を図ることができる。
【0103】
マップ生成部311は、リクレーマ10が配置位置にある状態で当該リクレーマ10の三次元計測装置66により取得された山93の三次元形状データと、リクレーマ10が配置位置に移動しているときに当該リクレーマ10の三次元計測装置66により取得された山93の三次元形状データとの両方に基づいて三次元マップを生成してもよい。この場合、三次元マップをよりタイムリーにアップデートすることができる。
【0104】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…リクレーマシステム、10…リクレーマ、66…三次元計測装置、90…堆積物ヤード、93…山、100…制御システム、222…候補データ取得部、223…決定支援部、225…開始位置指令取得部、226…払出支援部、232…衝突回避支援部、311…マップ生成部、314…モデル構築部、316…配置支援部。