(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】検査支援システム及び検査支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20221129BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20221129BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2018137745
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 国春
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035620(JP,A)
【文献】特開2007-167915(JP,A)
【文献】特開2014-157596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に用いられる
複数の鉄筋
を接続する機械式継手の識別情報に関連付けられた前記
機械式継手の配置情報を記憶した構造物情報記憶部と、
前記
機械式継手毎に施工情報を記録する施工情報記憶部と、
前記
機械式継手毎に検査結果情報を記録する検査情報記憶部と、
記憶媒体に情報を書き込む書込装置と検査端末
とに接続された制御部とを備え、前記
機械式継手の検査を支援する検査支援システムであって、
前記制御部は、
前記記憶媒体を取り付けた機械式継手を設置した後、前記構造物情報記憶部に記録された配置情報
において、現場位置に対応する前記機械式継手の識別情報を特定し、前記特定した前記識別情報を含む書込情報を、前記書込装置を用いて前記記憶媒体に記憶させ、
前記現場位置の
機械式継手に関する施工情報を、前記
機械式継手の識別情報に関連付けて、前記施工情報記憶部に記録し、
検査端末から検査対象の
機械式継手の識別情報を取得した場合、前記識別情報に関連付けられた施工情報を前記施工情報記憶部から取得して、前記検査端末に送信し、
前記検査端末から、前記
機械式継手の検査結果情報を取得した場合、前記
機械式継手の識別情報に関連付けて前記検査情報記憶部に記録することを特徴とする検査支援システム。
【請求項2】
前記記憶媒体には、前記書込装置により前記施工情報が書き込まれ、
前記検査端末は、前記記憶媒体から情報を読み出す読取装置に接続され、
前記検査端末は、前記読取装置を介して、前記
機械式継手に設けられた前記記憶媒体から、前記施工情報を取得することを特徴とする請求項
1に記載の検査支援システム。
【請求項3】
前記制御部は、作業端末に接続されており、
前記制御部は、
前記作業端末から、撮影対象の前記
機械式継手の識別情報を取得し、
前記識別情報に関連付けられた情報を取得し、
前記取得した情報を含めた挿入画像を生成して、前記作業端末に送信し、
前記挿入画像を含めた施工画像を前記作業端末から取得して、前記
機械式継手の識別情報と関連付けて前記施工情報記憶部に記録することを特徴とする請求項
1又は2に記載の検査支援システム。
【請求項4】
構造物に用いられる
複数の鉄筋
を接続する機械式継手の識別情報に関連付けられた前記
機械式継手の配置情報を記憶した構造物情報記憶部と、
前記
機械式継手毎に施工情報を記録する施工情報記憶部と、
前記
機械式継手毎に検査結果情報を記録する検査情報記憶部と、
記憶媒体に情報を書き込む書込装置と検査端末
とに接続された制御部とを備えた検査支援システムを用いて、前記
機械式継手の検査を支援する検査支援方法であって、
前記制御部は、
前記記憶媒体を取り付けた機械式継手を設置した後、前記構造物情報記憶部に記録された配置情報
において、現場位置に対応する前記機械式継手の識別情報を特定し、前記特定した前記識別情報を含む書込情報を、前記書込装置を用いて前記記憶媒体に記憶させ、
前記現場位置の
機械式継手に関する施工情報を、前記
機械式継手の識別情報に関連付けて、前記施工情報記憶部に記録し、
検査端末から検査対象の
機械式継手の識別情報を取得した場合、前記識別情報に関連付けられた施工情報を前記施工情報記憶部から取得して、前記検査端末に送信し、
前記検査端末から、前記
機械式継手の検査結果情報を取得した場合、前記
機械式継手の識別情報に関連付けて前記検査情報記憶部に記録することを特徴とする検査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配筋に用いられる継手の検査を支援する検査支援システム及び検査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋の機械式継手は、検査のレベルによって継手の信頼度が異なる(例えば、非特許文献1参照。)。この文献に記載されているように、監督員が全数検査を行なう場合には、信頼度I種と規定されている。また、監督員が抜取り率10%以上、かつ20箇所以上の抜取り検査を行なう場合には、信頼度II種と規定されている。
【0003】
そして、検査レベルに応じた信頼度の種類によって、継手部鉄筋の引張降伏強度(静的耐力や耐震性能等)の設計値が異なる。信頼度I種では、引張降伏強度の静的耐力の低減はなく、SA級の継手における引張降伏強度の設計値(高応力繰り返し性能)にも低減はない。一方、信頼度II種では、静的耐力において、継手の集中度が1/2以下(千鳥配置)の場合には、0.9倍に低減して照査し、継手の集中度が1/2より多い(イモ継ぎ)の場合には、0.8倍に低減して照査する。更に、この信頼度II種では、引張降伏強度の設計値(高応力繰り返し性能)において、SA級の継手であっても、千鳥配置の場合には0.9倍に低減して照査し、イモ継ぎの場合には、実験・解析等による照査が必要であると規定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】石橋忠良 他6名、コンクリート工学 「土木学会『鉄筋定着・継手指針[2007年版]』の概要」、公益社団法人 日本コンクリート工学会、45(12) 2007年12月1日、pp.8-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信頼度I種を取得するために、監督員による全数検査を行なう場合、コストや工程面の負担が大きい。また、検査のタイミングによっては、継手の設置場所に人が立ち入れない状態になっていることもある。検査終了まで、継手の設置場所を立入可能な状態にしておくことも可能であるが、工事遅延が生じることもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する検査支援システムは、構造物に用いられる複数の鉄筋を接続する機械式継手の識別情報に関連付けられた前記機械式継手の配置情報を記憶した構造物情報記憶部と、前記機械式継手毎に施工情報を記録する施工情報記憶部と、前記機械式継手毎に検査結果情報を記録する検査情報記憶部と、記憶媒体に情報を書き込む書込装置と検査端末とに接続された制御部とを備え、前記機械式継手の検査を支援する検査支援システムであって、前記制御部は、前記記憶媒体を取り付けた機械式継手を設置した後、前記構造物情報記憶部に記録された配置情報において、現場位置に対応する前記機械式継手の識別情報を特定し、前記特定した前記識別情報を含む書込情報を、前記書込装置を用いて前記記憶媒体に記憶させ、前記現場位置の機械式継手に関する施工情報を、前記機械式継手の識別情報に関連付けて、前記施工情報記憶部に記録し、検査端末から検査対象の機械式継手の識別情報を取得した場合、前記識別情報に関連付けられた施工情報を前記施工情報記憶部から取得して、前記検査端末に送信し、前記検査端末から、前記機械式継手の検査結果情報を取得した場合、前記機械式継手の識別情報に関連付けて前記検査情報記憶部に記録する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、継手の検査を効率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における検査支援システムの構成を説明する説明図。
【
図2】実施形態における各記憶部に記録されたデータの構成を説明する説明図であって、(a)はCIM情報記憶部、(b)は継手管理情報記憶部。
【
図3】実施形態における検査支援処理の処理手順を説明する流れ図。
【
図4】実施形態における継手のRFIDタグへの書込処理の流れ図。
【
図5】実施形態における施工情報の登録処理の処理手順を説明する流れ図であって、(a)は施工項目情報の登録処理、(b)は施工画像の登録処理。
【
図6】実施形態における検査処理の処理手順を説明する流れ図であって、(a)は現場における検査処理、(b)は現場以外における検査処理。
【
図7】実施形態における施工画像の撮影画面の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図8を用いて、検査支援システム及び検査支援方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、鉄筋同士を接合する機械式継手についての検査を支援する。
【0010】
図1に示すように、配筋に用いた継手15について、検査支援サーバ20、作業端末30、検査端末40を用いて、検査支援を行なう。
継手15は、2つの鉄筋11の端部を挿入する貫通孔を備える。継手15は、この貫通孔に挿入した鉄筋11の周囲に注入材(グラウト)を注入して鉄筋11を固定する。各継手15には、記憶媒体としてのRFIDタグ16を取り付ける。RFIDタグ16は、通信部とメモリとを備えた記憶媒体である。このメモリは、情報のリード(読取)やライト(書込)が可能である。
【0011】
検査支援サーバ20は、作業端末30及び検査端末40に接続される。
作業端末30は、配筋や継手15の配置等の作業を行なう作業者が用いるコンピュータ端末である。検査端末40は、継手15を検査する監督員が用いるコンピュータ端末である。作業端末30及び検査端末40は、それぞれ、入出力部であるタッチパネルディスプレイ、カメラ(撮影部)を備える。
【0012】
作業端末30には、読取装置及び書込装置としてのリーダライタ18が接続される。このリーダライタ18は、通信可能範囲内の最寄りのRFIDタグとデータ通信を行なう。このリーダライタ18は、RFIDタグ16のメモリへの情報の書込及びメモリに記憶された情報の読取を行なう。
【0013】
更に、作業端末30には、各種プログラムが記録される。例えば、RFIDタグ16のメモリに情報を書き込んだり読み出したりするリードライトプログラム、施工情報を登録する登録処理を行なう施工情報登録プログラム等が記録される。
【0014】
また、検査端末40には、読取装置としてのリーダ19が接続される。このリーダ19は、通信可能範囲内の最寄りのRFIDタグとデータ通信を行ない、RFIDタグ16のメモリに記憶された情報の読取を行なう。
更に、この検査端末40には、RFIDタグ16のメモリに情報を読み出すためのリードプログラムや、検査処理を行なうための検査実行プログラムが記録される。
【0015】
検査支援サーバ20は、制御部21、CIM情報記憶部25及び継手管理情報記憶部26を備えている。
【0016】
制御部21は、制御手段(CPU、RAM、ROM等)を備え、後述する処理(タグ管理段階、施工情報登録段階及び検査管理段階の各処理)を行なう。このための検査支援プログラムを実行することにより、制御部21は、タグ管理部211、施工情報登録部212及び検査管理部213として機能する。
【0017】
タグ管理部211は、RFIDタグ16のメモリに記録された情報を管理する。
施工情報登録部212は、作業端末30から取得した施工情報を継手管理情報記憶部26に登録する。ここでは、施工情報として、後述する嵌合長さ可否やトルク可否等の画面に入力する施工項目情報と、施工画像情報とを登録する。また、施工情報登録部212は、施工画像に挿入する黒板画像を生成するための黒板テンプレートを記憶している。
【0018】
検査管理部213は、検査端末40から取得した検査結果情報を継手管理情報記憶部26に登録する。更に、継手管理情報記憶部26における検査結果の記録に応じた検査状況を管理する。
【0019】
図2(a)に示すように、CIM情報記憶部25には、構造物に関する情報が記憶される。この構造物情報は、設計が完了した場合に記録される。構造物情報には、構造物を表示するための3次元モデル250、構造物を構成する各要素に関する要素情報が含まれる。要素情報には、鉄筋に関する鉄筋情報251及び継手に関する継手情報252が含まれる。
【0020】
鉄筋情報251には、鉄筋識別子、配置情報である鉄筋座標及び鉄筋種別に関する情報が含まれる。
鉄筋識別子データ領域には、各鉄筋を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0021】
鉄筋座標データ領域には、この鉄筋を表示するための座標(3次元モデルにおける鉄筋の形状や寸法に応じた座標)に関するデータが記録される。
鉄筋種別データ領域には、この鉄筋の種別(直径や形状)に関するデータが記録される。
【0022】
継手情報252には、継手識別子、配置情報である継手座標及び接続鉄筋識別子に関するデータが記録される。
継手識別子データ領域には、各継手を特定するための識別子に関するデータが記録される。この継手識別子が、継手の識別情報として機能する。
【0023】
継手座標データ領域には、この継手を3次元画像において表示するための座標(3次元モデルにおける継手の形状や寸法に応じた座標)に関するデータが記録される。
接続鉄筋識別子データ領域には、この継手が接続する鉄筋を特定する鉄筋識別子に関するデータが記録される。
【0024】
図2(b)に示すように、継手管理情報記憶部26には、継手管理情報260が記憶される。
この継手管理情報260には、継手識別子、継手位置、施工情報及び検査結果情報が含まれる。
【0025】
継手識別子データ領域には、各継手を特定するための識別子に関するデータが記録される。
継手位置データ領域には、この継手が配置された3次元モデル上の位置を特定する座標データが記録される。
【0026】
施工情報には、施工日、施工者、施工項目情報(トルク可否、嵌合長さ可否、溢れ出し可否)、施工画像に関する情報が含まれる。
施工日データ領域及び施工者データ領域には、施工した年月日及び施工を行なった施工者を特定するためのデータが記録される。
トルク可否データ領域には、この継手に取り付けた鉄筋のトルク値と、そのトルク値が設計値を満足しているか否かとが記録される。
嵌合長さ可否データ領域には、この継手に挿入された鉄筋の嵌合長さと、その嵌合長さが設計値を満足しているか否かとが記録される。
溢れ出し可否データ領域には、この継手に注入された注入材の溢れ出し状況が十分であるか否かが記録される。
施工画像データ領域には、この継手が施工された状態を撮影した画像が記録される。
【0027】
検査結果情報には、検査日及び監督員に関する情報が記録される。
検査日データ領域及び監督員データ領域には、この継手について検査を行なった年月日及び監督員を特定するためのデータが記録される。
【0028】
次に、以上のように構成された検査支援システムを用いて実行する検査支援方法を説明する。
図3に示すように、まず、各継手15に、RFIDタグ16を個別に貼り付ける(ステップWS1)。
【0029】
そして、鉄筋11の配筋において、RFIDタグ16を貼付した継手15を設置する(ステップWS2)。この配筋は、CIM情報記憶部25に記録された構造物の設計情報に基づいて行なわれる。
【0030】
そして、継手のRFIDタグへの識別情報の書込処理(ステップWS3)、施工情報の登録処理(ステップWS4)及び検査処理(ステップWS5)を実行する。これら処理の詳細について、以下、説明する。
【0031】
(継手のRFIDタグへの識別情報の書込処理)
図4に示すように、作業端末30は、書込情報の要求処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、作業者は、作業端末30において、リードライトプログラムを起動する。この場合、作業端末30は、RFIDタグ16への書込情報の要求を検査支援サーバ20に送信する。
【0032】
検査支援サーバ20の制御部21は、施工対象の3次元モデルの送信処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、制御部21のタグ管理部211は、CIM情報記憶部25から、施工対象の3次元モデル250を取得する。この場合、この3次元モデルに含まれる継手には、各継手識別子を関連付けられている。そして、タグ管理部211は、3次元モデルを作業端末30に送信する。
【0033】
作業端末30は、3次元モデルの画面表示処理を実行する(ステップS1-3)。具体的には、作業端末30は、受信した3次元モデルをタッチパネルディスプレイに表示する。
【0034】
次に、作業端末30は、書込対象の特定処理を実行する(ステップS1-4)。具体的には、作業者は、表示された3次元モデル上で、書込対象の継手15を選択する。この場合、作業端末30は、選択された継手15の継手識別子を検査支援サーバ20に送信する。
【0035】
そして、検査支援サーバ20の制御部21は、継手識別子の記録処理を実行する(ステップS1-5)。具体的には、制御部21のタグ管理部211は、受信した継手識別子を含む継手管理情報260を生成して、継手管理情報記憶部26に記録する。次に、制御部21は、CIM情報記憶部25から、継手識別子に対応する継手情報252に記録された継手座標を取得し、継手管理情報260の継手位置データ領域に記録する。
【0036】
次に、検査支援サーバ20の制御部21は、書込情報の生成処理を実行する(ステップS1-6)。具体的には、制御部21のタグ管理部211は、継手情報252に記録された接続鉄筋識別子に対応する鉄筋識別子を含む鉄筋情報251を、CIM情報記憶部25から取得する。タグ管理部211は、書込情報を生成し、作業端末30に送信する。この書込情報には、取得した継手情報252の継手識別子と、鉄筋情報251の鉄筋種別とを含める。
【0037】
作業端末30は、RFIDタグへの書込処理を実行する(ステップS1-7)。具体的には、作業端末30は、書込対象のRFIDタグ16にリーダライタ18を近づけ、このリーダライタ18を介して、受信した書込情報をRFIDタグ16に書き込む。
以上の処理を、各継手15のRFIDタグ16に対して繰り返す。
【0038】
(施工情報の登録処理)
次に、
図5を用いて、施工情報の登録処理について説明する。ここでは、施工情報として、施工項目情報と施工画像とを登録する場合について説明する。
【0039】
まず、
図5(a)を用いて、施工項目情報の登録処理について説明する。
まず、作業端末30は、RFIDタグからの継手識別子の取得処理を実行する(ステップS2-1)。具体的には、作業端末30は、作業者の指示に応じて、施工情報登録プログラムを起動し、タッチパネルディスプレイに初期画面を表示する。この画面には、施工範囲特定情報を入力する入力欄と、送信ボタンと、RFIDタグ16の情報読取開始を指示するボタンと、撮影開始ボタンとが含まれる。
【0040】
ここで、作業者により、RFIDタグ16の情報読取開始を指示するボタンが選択された場合、作業端末30は、リードライトプログラムを起動し、リーダライタ18を介して、最寄りのRFIDタグ16のメモリに書き込まれた継手識別子を取得する。
【0041】
次に、作業端末30は、施工項目情報の取得処理を実行する(ステップS2-2)。具体的には、作業端末30は、項目入力画面を表示する。この項目入力画面には、選択された継手15の継手識別子と、施工情報の入力欄と、撮影開始ボタンとが含まれる。更に、この項目入力画面には、施工日、施工者、トルク可否、嵌合長さ可否、溢れ出し可否等の各項目入力欄が設けられている。
【0042】
そして、作業端末30は、施工項目情報の送信処理を実行する(ステップS2-3)。具体的には、各項目入力欄への入力を完了し、確定ボタンが選択された場合、作業端末30は、入力された各項目情報を、この継手15の継手識別子と関連付けて、検査支援サーバ20に送信する。
【0043】
施工情報を取得した検査支援サーバ20の制御部21は、施工項目情報の登録処理を実行する(ステップS2-4)。具体的には、制御部21の施工情報登録部212は、受信した継手識別子が記録された継手管理情報260に、受信した施工項目情報を記録する。
【0044】
一方、作業端末30は、RFIDタグへの施工項目情報の書込処理を実行する(ステップS2-5)。具体的には、作業端末30は、継手識別子を取得した最寄りのRFIDタグ16のメモリに対して、リーダライタ18を用いて、取得した施工項目情報を書き込む。
【0045】
次に、
図5(b)を用いて、施工画像の登録処理について説明する。
作業端末30は、タッチパネルディスプレイに表示された初期画面の撮影開始ボタンを選択する。なお、施工項目情報の登録処理とは別に撮影を行なう場合には、ステップS2-1を再度、実行する。
【0046】
初期画面の撮影開始ボタンの選択により、作業端末30は、撮影開始処理を実行する(ステップS3-1)。具体的には、カメラ部で撮影した撮影画像をディスプレイに表示する。
【0047】
そして、作業端末30は、挿入する黒板画像の要求処理を実行する(ステップS3-2)。作業端末30は、黒板画像要求を検査支援サーバ20に送信する。ここで、黒板画像要求には、特定した継手識別子が含まれる。
【0048】
次に、検査支援サーバ20の制御部21は、黒板画像の生成処理を実行する(ステップS3-3)。具体的には、制御部21の施工情報登録部212は、受信した継手識別子を含む継手情報252を、CIM情報記憶部25から取得し、この継手に接続された鉄筋の鉄筋情報251を取得する。更に、施工情報登録部212は、継手識別子を含む継手管理情報260を継手管理情報記憶部26から取得する。
【0049】
次に、施工情報登録部212は、黒板テンプレートに黒板記載事項を含めることにより、黒板画像を生成する。ここでは、黒板記載事項として、継手識別子、取得した鉄筋情報251の鉄筋種別、継手管理情報260の施工情報のトルク可否及び嵌合長さ可否を含める。
そして、検査支援サーバ20の制御部21は、黒板画像を作業端末30に送信する。
【0050】
作業端末30は、黒板画像の重畳処理を実行する(ステップS3-4)。具体的には、作業端末30は、ディスプレイに表示している撮影画像に、検査支援サーバ20から取得した黒板画像を重畳させる。
【0051】
例えば、
図7に示すように、撮影画像100において黒板画像105が表示される。この黒板画像105には、黒板テンプレートに黒板記載事項が含まれている。黒板記載事項として、継手識別子、継手が接続する鉄筋の鉄筋種別、この継手の嵌合長さ可否等が含まれる。また、撮影画像に複数の継手が含まれている場合には、対象となる継手を、ポインタ107を用いての指定を入力できるようにしてよい。
【0052】
そして、
図5(b)に示すように、作業端末30は、施工画像の取得処理を実行する(ステップS3-5)。具体的には、作業端末30において、撮影ボタンが選択された場合、黒板画像105を重畳(挿入)した施工画像を生成する。そして、作業端末30は、継手識別子を関連付けた施工画像を検査支援サーバ20に送信する。
【0053】
次に、検査支援サーバ20の制御部21は、施工画像の登録処理を実行する(ステップS3-6)。具体的には、制御部21の施工情報登録部212は、継手識別子が記録された継手管理情報260に施工画像を記録する。
【0054】
(検査処理)
次に、
図6を用いて、監督員が行なう検査処理を説明する。この検査処理には、建設現場で行なう場合と、建設現場以外で行なう場合とがある。
【0055】
まず、
図6(a)を用いて、建設現場で行なう場合の検査処理を説明する。
検査端末40において検査実行プログラムが起動された場合、検査端末40は、検査実行画面の表示処理を実行する(ステップS4-1)。この検査実行画面には、RFIDタグ16の読取指示ボタンと、検査範囲入力欄と、施工情報要求ボタンとが含まれる。
【0056】
検査実行画面において読取指示ボタンが選択された場合、検査端末40は、RFIDタグからの情報の取得処理を実行する(ステップS4-2)。具体的には、検査端末40は、リードプログラムを起動して、リーダ19を介して、最寄りのRFIDタグ16のメモリに記憶された情報を取得する。この情報には、RFIDタグ16が貼付されている継手15の継手識別子と、鉄筋情報251の鉄筋種別及び施工項目情報とが含まれる。
【0057】
そして、検査端末40は、タッチパネルディスプレイに検査画面を表示する。この検査画面には、RFIDタグ16のメモリから読み取った鉄筋種別や施工項目情報を表示した情報表示欄や、検査項目を入力する検査結果記入欄が含まれる。
【0058】
次に、検査端末40は、検査結果情報の送信処理を実行する(ステップS4-3)。具体的には、監督員は、検査画面の情報表示欄に表示された鉄筋種別や施工項目情報と、現場の継手の状況とを確認する。そして、全検査項目において問題なしの場合には、監督員は、検査日と氏名を、検査結果記入欄に入力する。
そして、保存ボタンが選択された場合、検査端末40は、検査画面に入力された検査結果情報を、継手識別子に関連付けて、検査支援サーバ20に送信する。
【0059】
次に、検査支援サーバ20の制御部21は、検査結果情報の登録処理を実行する(ステップS4-4)。具体的には、制御部21の検査管理部213は、検査結果情報の継手識別子を含む継手管理情報260に、取得した検査結果を追加記録する。
【0060】
次に、
図6(b)を用いて、建設現場以外で行なう場合の検査処理について説明する。
ここでは、検査端末40は、検査実行プログラムを起動し、施工情報の要求処理を実行する(ステップS5-1)。具体的には、検査実行画面において、検査範囲入力欄に検査対象の範囲(空間)を特定する情報が入力され、施工情報要求を行なうボタンが選択された場合、検査端末40は、施工情報要求を検査支援サーバ20に送信する。
【0061】
次に、検査支援サーバ20の制御部21は、検査対象範囲における検査対象情報の抽出処理を実行する(ステップS5-2)。具体的には、制御部21の検査管理部213は、CIM情報記憶部25から、検査対象範囲の3次元モデルを取得する。この3次元モデルには、各要素に対応して、それぞれの要素の識別子(鉄筋識別子や継手識別子)が関連付けられている。
【0062】
次に、検査支援サーバ20の制御部21は、検査対象範囲の3次元モデルの送信処理を実行する(ステップS5-3)。具体的には、制御部21の検査管理部213は、継手管理情報記憶部26から、検査対象範囲に含まれる継手識別子を含む継手管理情報260を取得する。検査管理部213は、取得した継手管理情報260に検査日が記録されていない継手を未検査と特定する。検査管理部213は、3次元モデルにおいて、未検査と特定した継手の座標を取得し、これら継手の色情報を、検査済の継手とは異なる色(例えば、検査済の継手が緑色の場合であれば、未検査の継手を赤色)に設定する。そして、検査管理部213は、未検査の継手を検査済の継手とは着色で区別した3次元モデルを、検査端末40のタッチパネルディスプレイに表示する。
【0063】
次に、検査端末40は、検査対象箇所の特定処理を実行する(ステップS5-4)。具体的には、検査端末40は、表示された3次元モデルに含まれる継手のうち、監督員によって選択された未検査の継手の継手識別子を特定し、検査支援サーバ20に送信する。
【0064】
そして、検査支援サーバ20の制御部21は、検査対象の施工情報の送信処理を実行する(ステップS5-5)。具体的には、制御部21の検査管理部213は、取得した継手識別子を含む継手管理情報260を継手管理情報記憶部26から取得する。そして、検査管理部213は、生成した検査画面データを検査端末40に出力する。この検査画面には、各検査項目の入力欄を含める。
【0065】
例えば、
図8に示す検査画面120が表示される。この検査画面120には、継手識別子、継手位置、施工項目情報表示欄121及び検査結果記入欄122、施工画像175が含まれる。更に、この検査画面120には、保存ボタンと、キャンセルボタンとが含まれる。
【0066】
そして、検査端末40は、検査結果情報の送信処理を実行する(ステップS5-6)。具体的には、監督員は、検査画面120において、施工項目情報表示欄121の施工項目情報や施工画像175を見ながら、検査項目において問題がない場合には、検査日と氏名を検査結果記入欄122に入力する。
そして、保存ボタンが選択された場合、検査端末40は、入力された検査結果を、継手識別子に関連付けて、検査支援サーバ20に送信する。
【0067】
検査支援サーバ20の制御部21は、ステップS4-4と同様に、検査結果情報の登録処理を実行する(ステップS5-7)。
【0068】
一方、検査端末40は、検査対象範囲の3次元モデルを再表示する。そして、未検査の継手が選択された場合、検査支援サーバ20の制御部21は、上述したステップS5-4以降の処理を実行する。
【0069】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、検査支援サーバ20の制御部21は、作業端末30から受信した施工情報の登録処理及び検査処理を実行する(ステップWS4,WS5)。検査処理において、制御部21は、検査対象の施工情報の送信処理及び検査結果情報の登録処理を実行する(ステップS5-5,S5-7)。これにより、監督員は、作業員により登録された施工情報を用いて、継手15の検査を効率的に行なうことができる。
【0070】
(2)本実施形態では、RFIDタグ16を貼付した継手15を設置し(ステップWS2)、継手のRFIDタグへの識別情報の書込処理を実行する(ステップWS3)。これにより、継手15の配置後に、継手15の識別情報(継手識別子)を書き込むので、継手15を効率的に配置することができる。
【0071】
(3)本実施形態では、作業端末30は、施工項目情報の取得処理及びRFIDタグへの施工項目情報の書込処理を実行し(ステップS2-2,S2-5)、検査処理において、RFIDタグ16からの情報の取得処理を実行する(ステップS4-2)。これにより、現場において、RFIDタグ16のメモリに記録された情報を用いて、継手15の施工状況を確認しながら、効率的に検査を行なうことができる。
【0072】
(4)本実施形態では、検査支援サーバ20の制御部21は、検査対象範囲の3次元モデルの送信処理(ステップS5-3)において、3次元モデルにおいて、未検査と特定した継手15を、検査済の継手15とは異なる色に設定する。これにより、監督員は、未検査の継手15を効率的に把握することができる。
【0073】
(5)本実施形態では、検査支援サーバ20は、黒板画像の生成処理を実行し(ステップS3-3)、作業端末30は、黒板画像の重畳処理を実行する(ステップS3-4)。これにより、作業者の黒板を準備する手間を省くことができる。
【0074】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、作業端末30は、施工情報を関連付ける継手識別子を、RFIDタグ16から取得する。施工情報と関連付ける継手識別子の特定方法は、これに限らない。例えば、3次モデルを用いて特定してもよい。この場合、作業端末30は、初期画面に、施工範囲特定情報を入力し、施工範囲特定情報を検査支援サーバ20に送信する。
【0075】
検査支援サーバ20の制御部21は、施工範囲特定情報に対応する3次元モデルを、CIM情報記憶部25から取得して、作業端末30に送信する。
この場合、施工情報が登録されていない未登録の継手を、施工情報が登録された登録済の継手とは異なる色に着色した状態で、送信するようにしてもよい。具体的には、制御部21は、取得した3次元モデルに含まれる継手識別子に関連付けられた継手管理情報260を取得する。そして、制御部21は、取得した継手管理情報260において、予め定められた施工項目が記録されていない継手管理情報260の継手を、施工情報未登録と特定する。そして、制御部21は、3次元モデルにおいて、施工情報未登録と特定した継手の座標を取得し、これら継手の色情報を、登録済の継手とは異なる色(例えば、検査済の継手が緑色の場合、未検査の継手を、検査済の緑色より目立つ赤色)に設定する。
作業端末30は、受信した3次元モデルを、タッチパネルディスプレイに表示する。3次元モデル上で、書込対象の継手15が選択された場合、作業端末30は、この継手15の継手識別子を特定して、ステップS2-2以降の処理を実行する。
【0076】
・上記実施形態においては、作業端末30は、継手のRFIDタグへの識別情報の書込処理(WS3)において、情報を書き込む継手15を、3次元モデル上において選択された継手の継手識別子を用いて特定した。書込対象の特定処理においては、1つの継手識別子を特定した後には、作業端末30が、次の書込対象のRFIDタグ16の継手15を特定してもよい。例えば、作業端末30に、加速度センサやGPSセンサ等の位置情報取得部を設ける。位置情報取得部の測定値を用いて、施工情報の登録を行なった継手15の位置から、作業端末30の移動距離及び方向を算出して、移動先の位置を特定する。そして、作業端末30は、移動先の位置近傍の継手15を、次の書込対象として特定する。これにより、多数の継手15のRFIDタグ16との書込処理を効率的に行なうことができる。
また、同様に、現場における検査処理において、検査端末40は、位置情報取得部の測定値を用いて、1つの継手識別子を特定した後に、次の検査対象のRFIDタグ16の継手15を特定してもよい。
【0077】
・上記実施形態においては、作業端末30は、RFIDタグへの書込処理(ステップS1-7)において、継手識別子と、鉄筋情報251の鉄筋種別とを含めた書込情報をRFIDタグ16のメモリに記録した。また、作業端末30は、RFIDタグへの施工情報の書込処理(ステップS2-5)において、施工情報をRFIDタグ16のメモリに記録した。RFIDタグ16のメモリに記録する情報は、検査時に参照する情報であればよい。例えば、鉄筋種別及び施工情報の一部や、他の情報を記憶してもよい。更に、RFIDタグ16に施工画像も記憶するようにしてもよい。
【0078】
・上記実施形態においては、検査支援サーバ20は、RFIDタグ16に記録した継手識別子に関連付けて施工情報を記憶した。3次元モデルの位置に対応する現場位置の継手に関する施工情報は、継手識別子と直接、関連付けて記憶する場合に限られない。例えば、RFIDタグ16のメモリに予め記憶されている記憶媒体識別子を用いてもよい。この場合、継手管理情報260に記憶媒体識別子データ領域を設ける。更に、作業端末30は、RFIDタグ16のメモリの記憶媒体識別子を読取装置により読み取り、この記録媒体識別子と、書込対象の特定処理(ステップS1-4)において特定した継手識別子とを関連付けて、検査支援サーバ20に送信する。検査支援サーバ20の制御部21は、継手識別子と記憶媒体識別子とを関連付けて、継手管理情報記憶部26に記憶する。これにより、記憶媒体識別子を用いて継手識別子を特定できるので、RFIDタグ16に継手識別子を記録しなくても、継手の施工情報を管理することができる。
・上記実施形態においては、作業端末30と検査端末40とを別々として説明した。作業端末30と検査端末40とを同一端末としてもよい。この場合には、端末に、リーダライタ18を接続する。更に、端末に、リードライトプログラム、施工情報登録プログラム、検査実行プログラム等を記憶させる。
【符号の説明】
【0079】
11…鉄筋、15…継手、16…RFIDタグ、18…リーダライタ、19…リーダ、20…検査支援サーバ、21…制御部、25…CIM情報記憶部、26…継手管理情報記憶部、30…作業端末、40…検査端末、100…撮影画像、105…黒板画像、107…ポインタ、120…検査画面、121…施工項目情報表示欄、122…検査結果記入欄、175…施工画像、211…タグ管理部、212…施工情報登録部、213…検査管理部、250…3次元モデル、251…鉄筋情報、252…継手情報、260…継手管理情報。