(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】印刷装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 11/70 20060101AFI20221129BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B41J11/70
B41J3/36 T
(21)【出願番号】P 2018137777
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 健夫
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-179882(JP,A)
【文献】特開2007-176052(JP,A)
【文献】特開2006-007561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/70
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、
前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記テープ部材をカットするカット部と、
前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し
た後、前記カット部によ
り実行されるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによ
り実行される印刷処理と、を
少なくとも行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも
2つの何れかの処理の実行中に
、実行中の処理が中断されたかを検出し、
前記検出された中断時に実行中の処理に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記
テープ部材の搬送量を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記実行中の処理が中断されたと判断すると、前記
カット処理の開始時点から
前記実行中の処理が中断された時点
までに前記
テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送した搬送量を
第1の搬送量として前記記憶部に記憶させ、前記実行中の処理が中断された後に行われる処理において、前記記憶部に記憶された前記
第1の搬送量に基づいて前記テープ部材の搬送を制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記カット部は、前記テープ部材にハーフカットを行うハーフカッターを備え、
前記制御部は、前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記ハーフカッターによるハーフカット処理と、前記ハーフカット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記ハーフカッターを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ハーフカット処理によるハーフカット前に処理が中断した場合、
前記制御部は、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材におけるハーフカット位置が前記ハーフカッターの位置になるように前記順方向に搬送し、前記ハーフカット処理を実行することを特徴とする請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記逆搬送処理による前記逆方向への搬送中に処理が中断した場合、
前記制御部は、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは前記逆方向に搬送することを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項6】
前記カット部は、前記テープ部材にフルカットを行うフルカッターを更に備え、
前記逆搬送処理の終了後、前記印刷処理における前記順方向への搬送中に処理が中断した場合、
前記制御部は、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材を、少なくとも前記印刷ヘッドと前記フルカッターの間の距離だけ前記順方向へ搬送させ、前記フルカッターによるフルカット処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記実行中の処理が正常に終了した場合に前記テープ部材が前記順方向とは逆方向へ搬送される搬送量である第2の搬送量を記憶し、
前記カット処理の実行中に中断された場合、前記第1の搬送量=0となり、
前記逆搬送処理の実行中に中断された場合、0<前記第1の搬送量<前記第2の搬送量となり、
前記印刷処理の実行中に中断された場合、前記第1の搬送量=前記第2の搬送量となる、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置の制御方法であって、
前記印刷ヘッドによ
る印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し
た後、前記カット部によ
り実行されるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによ
り実行される印刷処理と、を
少なくとも行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御し、
前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも
2つの何れかの処理の実行中に
、実行中の処理が中断されたかを検出し、
前記検出された中断時に実行中の処理に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置のコンピュータに、
前記印刷ヘッドによ
る印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し
た後、前記カット部によ
り実行されるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによ
り実行される印刷処理と、を
少なくとも行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御し、
前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも
2つの何れかの処理の実行中に
、実行中の処理が中断されたかを検出し、
前記検出された中断時に実行中の処理に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御する、処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、
前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記テープ部材にハーフカットを行うハーフカッターと、
前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記ハーフカッターによるハーフカット処理と、前記ハーフカット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記ハーフカッターを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ハーフカット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも1つ以上の何れかの処理の実行中に中断されたかを検出し、
前記ハーフカット処理によるハーフカット前に処理が中断した場合、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材におけるハーフカット位置が前記ハーフカッターの位置になるように前記順方向に搬送し、前記ハーフカット処理を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材にハーフカットを行うハーフカッターとを備えた印刷装置の制御方法であって、
前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記ハーフカッターによるハーフカット処理と、前記ハーフカット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記ハーフカッターを制御し、
前記ハーフカット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも1つ以上の何れかの処理の実行中に中断されたかを検出し、
前記ハーフカット処理によるハーフカット前に処理が中断した場合、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材におけるハーフカット位置が前記ハーフカッターの位置になるように前記順方向に搬送し、前記ハーフカット処理を実行する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材にハーフカットを行うハーフカッターとを備えた印刷装置のコンピュータに、
前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記ハーフカッターによるハーフカット処理と、前記ハーフカット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記ハーフカッターを制御し、
前記ハーフカット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも1つ以上の何れかの処理の実行中に中断されたかを検出し、
前記ハーフカット処理によるハーフカット前に処理が中断した場合、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材におけるハーフカット位置が前記ハーフカッターの位置になるように前記順方向に搬送し、前記ハーフカット処理を実行する、処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、
前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記テープ部材をカットするカット部と、
前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記カット部によるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも1つ以上の何れか
の処理の実行中に中断されたかを検出し、
前記逆搬送処理による前記逆方向への搬送中に処理が中断した場合、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは前記逆方向に搬送することを特徴とする印刷装置。
【請求項14】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置の制御方法であって、
前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記カット部によるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御し、
前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも1つ以上の何れかの処理の実行中に中断されたかを検出し、
前記逆搬送処理による前記逆方向への搬送中に処理が中断した場合、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは前記逆方向に搬送する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置のコンピュータに、
前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記カット部によるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御し、
前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも1つ以上の何れか
の処理の実行中に中断されたかを検出し、
前記逆搬送処理による前記逆方向への搬送中に処理が中断した場合、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは前記逆方向に搬送する、処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、
前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記テープ部材をカットするカット部と、
前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前回の印刷処理が正常に終了した後から前記カット部によるカットが実行される直前までの期間である第1期間と、前記カット部によるカットの完了直後から前記印刷ヘッドによる印刷処理が実行される前までに、前記搬送ローラにより前記テープ部材を排出口に向かう順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理の期間である第2期間と、及び前記印刷処理が実行される期間である第3期間と、のうち少なくとも2つの期間中に、何れかの処理が中断されたかを検出し、
前記検出された中断時が含まれる期間に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項17】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置の制御方法であって、
前回の印刷処理が正常に終了した後から前記カット部によるカットが実行される直前までの期間である第1期間と、前記カット部によるカットの完了直後から前記印刷ヘッドによる印刷処理が実行される前までに、前記搬送ローラにより前記テープ部材を排出口に向かう順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理の期間である第2期間と、及び前記印刷処理が実行される期間である第3期間と、のうち少なくとも2つの期間中に、何れかの処理が中断されたかを検出し、
前記検出された中断時が含まれる期間に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項18】
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置のコンピュータに、
前回の印刷処理が正常に終了した後から前記カット部によるカットが実行される直前までの期間である第1期間と、前記カット部によるカットの完了直後から前記印刷ヘッドによる印刷処理が実行される前までに、前記搬送ローラにより前記テープ部材を排出口に向かう順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理の期間である第2期間と、及び前記印刷処理が実行される期間である第3期間と、のうち少なくとも2つの期間中に、何れかの処理が中断されたかを検出し、
前記検出された中断時が含まれる期間に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御する、処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、印刷装置、制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、長尺状の被印刷媒体に文字、図形等を印刷し、印刷済みの被印刷媒体を切断装置によりカットすることでラベルを作成するラベルプリンタが知られている。
【0003】
ラベルプリンタでは、印刷ヘッドと切断装置はいずれも被印刷媒体の搬送路上に設けられるが、空間的な制約から、切断装置は、印刷ヘッドよりも搬送方向の下流で印刷ヘッドからある程度離れた位置に配置される。このため、プラテンローラが順方向にのみ回転する場合には、ラベルプリンタ内における印刷位置と切断位置との違いに起因して、被印刷媒体の先端に、印刷位置と切断位置の間の距離に応じた大きさの無駄な余白が生じてしまう。
【0004】
このような課題に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のラベルプリンタは、印刷ヘッドによる印刷開始前にプラテンローラを逆方向に回転させ被印刷媒体を逆搬送することができるため、無駄な余白を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ラベルプリンタでは、ユーザ操作等により処理が強制的に中断されることがある。例えば、被印刷媒体の逆搬送中に処理が強制的に中断されると、次回の処理において、被印刷媒体が印刷開始前に正常位置よりも搬送方向上流側の位置にまで搬送され得る。被印刷媒体が必要以上に上流側まで搬送されてしまうと、その後の印刷が正常に行われないといった事態が生じる可能性があり、望ましくない。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、強制中断後において、被印刷媒体が印刷開始前に正常位置よりも搬送方向上流側の位置にまで搬送されることを防止する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る印刷装置は、テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部と、前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送した後、前記カット部により実行されるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドにより実行される印刷処理と、を少なくとも行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも2つの何れかの処理の実行中に、実行中の処理が中断されたかを検出し、前記検出された中断時に実行中の処理に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御する。
【0009】
本発明の一態様に係る印刷装置の制御方法は、テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置の制御方法であって、前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送した後、前記カット部により実行されるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドにより実行される印刷処理と、を少なくとも行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御し、前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも2つの何れかの処理の実行中に、実行中の処理が中断されたかを検出し、前記検出された中断時に実行中の処理に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御する。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材をカットするカット部とを備えた印刷装置のコンピュータに、前記印刷ヘッドによる印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送した後、前記カット部により実行されるカット処理と、前記カット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドにより実行される印刷処理と、を少なくとも行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記カット部を制御し、前記カット処理、前記逆搬送処理及び前記印刷処理のうち少なくとも2つの何れかの処理の実行中に、実行中の処理が中断されたかを検出し、前記検出された中断時に実行中の処理に応じて、前記中断後の前記テープ部材の搬送を制御する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、強制中断後において、被印刷媒体が印刷開始前に正常位置よりも搬送方向上流側の位置にまで搬送されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】蓋4を閉じた状態における印刷装置1の平面図である。
【
図2】蓋4を開けた状態における印刷装置1の平面図である。
【
図4】被印刷媒体40の構成を説明するための図である。
【
図5】感熱テープ42の構成を説明するための図である。
【
図6】印刷装置1のハードウェア構造を示すブロック図である。
【
図7】印刷装置1が行う処理のフローチャートの一例である。
【
図8】前回の処理が正常に終了した後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
【
図9】逆搬送開始前に中断された前回の処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
【
図10】前回の処理が逆搬送開始前に中断された場合における、中断後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
【
図11】逆搬送中に中断された前回の処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
【
図12】前回の処理が逆搬送中に中断された場合における、中断後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
【
図13】印刷処理中に中断された前回の処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
【
図14】前回の処理が印刷処理中に中断された場合における、中断後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、蓋4を閉じた状態における印刷装置1の平面図である。
図2は、蓋4を開けた状態における印刷装置1の平面図である。以下、
図1及び
図2を参照しながら、印刷装置1の構成について説明する。
【0014】
印刷装置1は、被印刷媒体40が有する感熱テープ42に印刷を行うラベルプリンタである。以降では、感熱テープ42を使用する感熱方式のラベルプリンタを例にして説明するが、印刷方式は特に限定しない。印刷装置1は、インクリボンを使用する熱転写方式のラベルプリンタであってもよい。また、印刷装置1は、インクジェットプリンタ、レーザプリンタなどであってもよい。また、印刷装置1は、シングルパス(ワンパス)方式で印刷を行ってもよく、マルチパス(スキャン)方式で印刷を行ってもよい。
【0015】
印刷装置1は、
図1に示すように、装置筐体2と、入力部3と、開閉自在な蓋4と、窓5と、表示部6と、を備えている。また、図示しないが、装置筐体2には、電源コード接続端子、外部機器接続端子、記憶媒体挿入口等が設けられている。
【0016】
入力部3は、装置筐体2の上面に設けられている。入力部3は、入力キー、十字キー、変換キー、決定キーなどの種々のキーを備える。蓋4は、装置筐体2上に配置されている。利用者は、ボタン4aを押下してロック機構を解除することで、
図2に示すように、蓋4を開けることができる。蓋4には、蓋4が閉じた状態でも印刷装置1に被印刷媒体40が収容されているか否かを目視で確認可能とするために、窓5が形成されている。また、蓋4は、表示部6を有している。
【0017】
表示部6は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(electro-luminescence)ディスプレイなどである。表示部6は、入力部3からの入力に対応する文字等、各種設定のための選択メニュー、各種処理に関するメッセージ等、を表示する。なお、表示部6はタッチパネル付きのディスプレイであってもよく、入力部3の一部として機能しても良い。
【0018】
装置筐体2は、
図2に示すように、蓋4の下方に、媒体アダプタ収容部2aと、プラテンローラ7と、サーマルヘッド8を備えている。媒体アダプタ収容部2aには、被印刷媒体40を収容した媒体アダプタ20が収容される。また、装置筐体2は、さらに、感熱テープ42が排出される排出口2bとサーマルヘッド8の間に、フルカッター9と、ハーフカッター10と、フォトセンサ11を備えている。ハーフカッター10、フルカッター9、フォトセンサ11は、排出口2b側から、この順番で配設されている。なお、媒体アダプタ20及び被印刷媒体40については、後述する。
【0019】
プラテンローラ7は、感熱テープ42を搬送する搬送ローラである。プラテンローラ7は、搬送用モータ32(
図6参照)の回転により回転する。搬送用モータ32は、例えば、ステッピングモータ、直流(DC)モータなどである。プラテンローラ7は、媒体アダプタ20から繰り出された感熱テープ42をサーマルヘッド8との間に狭持しながら回転することで、感熱テープ42を搬送方向に搬送する。
【0020】
サーマルヘッド8は、感熱テープ42に印刷を行う印刷ヘッドである。サーマルヘッド8は、感熱テープ42の搬送方向に直交する主走査方向に配列された複数の発熱素子8a(
図6参照)を有し、発熱素子8aで感熱テープ42を加熱することにより一ラインずつ印刷を行う。
【0021】
フルカッター9は、感熱テープ42を切断する第1の切断装置であり、感熱テープ42にフルカットを行うことでテープ片を作成する。なお、フルカットとは、感熱テープ42を構成する層の全てを感熱テープ42の幅方向に沿って切断する動作のことである。
【0022】
ハーフカッター10は、感熱テープ42を切断する第2の切断装置であり、感熱テープ42にハーフカットを行うことで感熱テープ42に切れ目を入れる。なお、ハーフカットとは、感熱テープ42のうちの後述するセパレータL1(
図5参照)以外の層を幅方向に沿って切断する動作のことである。
【0023】
フォトセンサ11は、感熱テープ42の先端を検出するために、感熱テープ42の搬送路上に配置されたセンサである。フォトセンサ11は、例えば、発光素子と受光素子を備えている。発光素子は、例えば、発光ダイオードであり、受光素子は、例えば、フォトダイオードである。フォトセンサ11は、発光素子から出射した光の反射光を受光素子で検出し、後述する制御回路12(
図6参照)へ信号を出力する。制御回路12は、例えば、受光素子で検出した反射光量の変化に基づいて、感熱テープ42の先端を検出する。なお、フォトセンサ11は発光素子から出射した光の反射光を検出するフォトリフレクタに限らない。フォトセンサ11は、発光素子と受光素子が対向して配置されたフォトインタラプタであってもよい。
【0024】
図3は、媒体アダプタ20の斜視図である。
図4は、被印刷媒体40の構成を説明するための図である。
図5は、感熱テープ42の構成を説明するための図である。以下、
図3から
図5を参照しながら、媒体アダプタ20及び被印刷媒体40の構成について説明する。
【0025】
媒体アダプタ20は、被印刷媒体40を収容するための媒体アダプタであり、利用者が被印刷媒体40を交換できるように、被印刷媒体40を収容する。つまり、媒体アダプタ20は、利用者が媒体アダプタ20に対して被印刷媒体40を出し入れすることを前提に設計されている。
【0026】
媒体アダプタ20は、
図3に示すように、アダプタ本体21と、アダプタ本体21に対して開閉自在に取り付けられたアダプタ蓋22と、を備えている。被印刷媒体40は、アダプタ本体21とアダプタ蓋22とで区画された媒体アダプタ20の内部空間内に収容される。
【0027】
また、媒体アダプタ20は、被印刷媒体40が有する感熱テープ42のテープ幅に合わせて設計されている。媒体アダプタ20が収容すべき感熱テープ42のテープ幅は、アダプタ本体21の領域21aに表示されている。この例では、媒体アダプタ20は、テープ幅6mmのテープ用の媒体アダプタである。
【0028】
印刷装置1では、被印刷媒体40を収容した媒体アダプタ20が印刷装置1に収容されることで、被印刷媒体40が印刷装置1に収容される。なお、印刷装置1は、異なるテープ幅に対応した媒体アダプタを収容することができる。印刷装置1は、具体的には、例えば、
図3に示す6mmのテープ用の媒体アダプタ20の他に、9mmのテープ用の媒体アダプタ、12mmのテープ用の媒体アダプタ、18mmのテープ用の媒体アダプタなどを収容することができる。
【0029】
被印刷媒体40は、
図4に示すように、紙管41と、感熱テープ42と、バラけ防止シート43と、アテンションシート44を備えている。
【0030】
紙管41は、感熱テープ42が巻きつけられた円筒部材であり、中空部分41aを有している。感熱テープ42は、長手方向に巻かれて円筒形状を有した印刷用のテープ部材であり、中空部分42aを有するように巻かれている。バラけ防止シート43は、感熱テープ42の円環形状の側面の一方(側面42c)に貼り付けられた粘着シートである。アテンションシート44は、感熱テープ42の円環形状の側面の他方(側面42b)に貼り付けられた粘着シートである。
【0031】
紙管41は、感熱テープ42の中空部分42aに設けられる。紙管41は、円筒部材であり、被印刷媒体40が媒体アダプタ20に収容された状態では、紙管41の中空部分41aに、アダプタ本体21の底面に形成された突出部が挿通される。紙管41は、感熱テープ42がプラテンローラ7により搬送されているときに、被印刷媒体40を傷めることなく、被印刷媒体40を媒体アダプタ20の内部でスムーズに回転させるのに有用である。
【0032】
感熱テープ42は、例えば、
図5に示すような5層構造を有している。即ち、セパレータL1と、粘着層L2と、基材L3と、発色層L4と、保護層L5とがこの順に積層されている。セパレータL1は粘着層L2を覆うように剥離可能に基材L3に貼り付けられている。セパレータL1の材料は、例えば、紙であるが、紙に限らず、PET(ポリエチレンテレフタレート)であってもよい。粘着層L2は、基材L3に塗布された粘着材である。基材L3の材料は、例えば、有色のPETである。発色層L4は、熱エネルギーの加熱により発色する感熱発色層である。保護層L5の材料は、例えば、透明なPETである。
【0033】
感熱テープ42の構成は、
図5に示す構成に限らない。例えば、感熱テープ42は、保護層L5を有さず、発色層L4が露出したものであってもよい。
【0034】
感熱テープ42は、紙管41に巻きつけられた状態では、紙管41に応じた形状を有する。つまり、感熱テープ42は円筒形状を有し、両側面(側面42b、側面42c)は円環形状を有する。
【0035】
バラけ防止シート43は、感熱テープ42の形状を維持するための粘着シートである。感熱テープ42は湿度変化により膨張することがある。しかしながら、バラけ防止シート43を感熱テープ42の側面42cに貼り付けることで、膨張に伴う感熱テープ42の形状変化、つまり、感熱テープ42がバラけしてしまうこと、を抑制することができる。また、バラけ防止シート43は、被印刷媒体40の落下等により感熱テープ42に衝撃が加わった場合にも、形状変化を抑制することができる。
【0036】
バラけ防止シート43は、開口部43aと、粘着面43bと、を有している。開口部43aは、紙管41の中空部分41aと同じ大きさであるか、又は、紙管41の中空部分41aよりも大きい。バラけ防止シート43は、開口部43aが感熱テープ42の中空部分42aに対向するように側面42cに貼り付けられる。また、バラけ防止シート43は、感熱テープ42の側面42cを覆うような大きさを有することが望ましい。つまり、バラけ防止シート43は、側面42cよりも大きいことが望ましい。これにより、感熱テープ42全体を粘着面で保持することができるため、形状をより確実に維持することができる。
【0037】
また、バラけ防止シート43の形状は、側面42cの形状に近似した形状であることが望ましい。つまり、側面42cが円環形状であれば、バラけ防止シート43も円環形状を有することが望ましい。これにより、感熱テープ42の形状維持に貢献しない領域を小さくすることができるため、バラけ防止シート43の大きさを小さくすることができる。また、粘着面の露出も少なくなるため、バラけ防止シート43への塵、埃などの付着も抑えることができる。
【0038】
アテンションシート44は、被印刷媒体40の種類(より厳密には、感熱テープ42の種類)を示す粘着シートである。感熱テープ42には、テープ幅、及び、被印刷面の色の違いにより、様々な種類が存在する。アテンションシート44には、種類を特定するための情報が含まれているため、アテンションシート44を感熱テープ42の側面42bに貼り付けることで、利用者は被印刷媒体40の種類を容易に特定することが可能となる。
【0039】
アテンションシート44は、開口部44aと、粘着面44bと、を有している。開口部44aは、感熱テープ42の中空部分42aよりも小さく、さらに、紙管41の中空部分41aよりも小さい。アテンションシート44は、開口部44aが感熱テープ42の中空部分42aに対向するように側面42bに貼り付けられる。また、アテンションシート44は、例えば、被印刷媒体40の販売時など、少なくとも被印刷媒体40の使用が開始される前においては、感熱テープ42の側面42bよりも小さいことが望ましい。より詳細には、アテンションシート44の面積は、感熱テープ42の側面42bの面積よりも小さいことが望ましい。これにより、感熱テープ42の側面42bのうちアテンションシート44に覆われる領域が小さくなるため、感熱テープ42の残量の確認が容易になる。
【0040】
紙管41、バラけ防止シート43、アテンションシート44の材料は、紙に限らない。ただし、これらの部材が紙製であれば、感熱テープ42を使い切った使用済みの被印刷媒体40を可燃ゴミとして捨てることができる。このため、紙管41、バラけ防止シート43、アテンションシート44の材料は、紙であることが望ましい。
【0041】
図6は、印刷装置1のハードウェア構造を示すブロック図である。印刷装置1は、上述した構成要素に加えて、
図6に示すように、制御回路12、ROM(Read Only Memory)13、RAM(Random Access Memory)14、表示駆動回路15、ヘッド駆動回路16、サーミスタ17、搬送用モータ駆動回路31、搬送用モータ32、エンコーダ33、カッターモータ駆動回路34、カッターモータ35、テープ幅検出スイッチ36を備える。
【0042】
制御回路12は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含む制御部である。制御回路12は、ROM13に格納されているプログラムをRAM14に展開し実行することで、印刷装置1の各部(例えば、プラテンローラ7、サーマルヘッド8)を制御する。
【0043】
ROM13には、後述する
図7に示す処理を行うためのプログラム、プログラムの実行に必要な各種データ(例えば、フォント等)が格納されている。RAM14は、プログラムの実行に用いられるワークメモリである。なお、印刷装置1での処理に用いられるプログラム及びデータを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体には、ROM13、RAM14のような、物理的な(非一時的な)記録媒体が含まれる。
【0044】
表示駆動回路15は、液晶表示ドライバ回路、有機EL表示ドライバ回路である。表示駆動回路15は、RAM14に格納されている表示データに基づいて表示部6を制御する。
【0045】
ヘッド駆動回路16は、制御回路12の制御下において、印刷データと制御信号に基づいてサーマルヘッド8が有する発熱素子8aへの通電を制御する。サーマルヘッド8は、主走査方向に配列された複数の発熱素子8aを有する印刷ヘッドである。サーマルヘッド8は、発熱素子8aで感熱テープ42を加熱することにより感熱テープ42に一ラインずつ印刷を行う。つまり、印刷装置1において、制御回路12は、ヘッド駆動回路16を介して発熱素子8aへの通電を制御することで、サーマルヘッド8を制御する制御部である。
【0046】
サーミスタ17は、サーマルヘッド8に埋め込まれている。サーミスタ17は、サーマルヘッド8の温度を測定する。
【0047】
搬送用モータ駆動回路31は、制御回路12の制御下で、搬送用モータ32を駆動する。搬送用モータ32は、例えばステッピングモータであってもよく、直流(DC)モータであってもよい。搬送用モータ32は、プラテンローラ7を回転させる。なお、搬送用モータ32は、搬送用モータ駆動回路31の制御下で、感熱テープ42を繰り出す方向である順方向だけではなく、感熱テープ42を巻戻す方向である逆方向にも回転する。
【0048】
プラテンローラ7は、搬送用モータ32の駆動力によって回転し、感熱テープ42の長手方向(副走査方向、搬送方向)に沿って、感熱テープ42を搬送する搬送ローラである。プラテンローラ7は、搬送用モータ32が順方向に回転しているときには、媒体アダプタ20から感熱テープ42を繰り出して、感熱テープ42を順方向へ搬送する。また、プラテンローラ7は、搬送用モータ32が逆方向に回転しているときには、媒体アダプタ20から繰り出されている感熱テープ42を巻戻して、感熱テープ42を逆方向へ搬送する。
【0049】
つまり、印刷装置1において、制御回路12は、搬送用モータ駆動回路31を介して搬送用モータ32を制御することで、プラテンローラ7を制御する制御部である。
【0050】
エンコーダ33は、搬送用モータ32又はプラテンローラ7の駆動量(回転量)に応じて信号を制御回路12へ出力する。エンコーダ33は、搬送用モータ32の回転軸に設けられていてもよく、プラテンローラ7の回転軸に設けられていてもよい。制御回路12は、エンコーダ33からの信号に基づいて感熱テープ42の搬送量を特定することができる。
【0051】
なお、搬送用モータ32がステッピングモータである場合には、制御回路12は、搬送用モータ32を駆動する搬送用モータ駆動回路31へ入力した信号(入力パルス数)に基づいて搬送量を特定してもよい。従って、搬送用モータ32がステッピングモータである場合には、エンコーダ33は省略されてもよく、制御回路12は、搬送用モータ駆動回路31へ入力した信号(入力パルス数)に基づいて搬送量を特定してもよい。
【0052】
カッターモータ駆動回路34は、制御回路12の制御下において、カッターモータ35を駆動する。フルカッター9は、カッターモータ35の動力によって動作し、感熱テープ42の全ての層を切断し、テープ片を作成する。ハーフカッター10は、カッターモータ35の動力によって動作し、感熱テープ42のうちのセパレータL1以外の層(L2-L5)を切断する。
【0053】
テープ幅検出スイッチ36は、媒体アダプタ20の形状に基づいて媒体アダプタ20に収容されている感熱テープ42の幅を検出するためのスイッチであり、媒体アダプタ収容部2aに設けられている。テープ幅検出スイッチ36は、媒体アダプタ収容部2aに複数設けられている。異なるテープ幅に対応する媒体アダプタ20は、複数のテープ幅検出スイッチ36をそれぞれ異なる組み合わせで押下するように構成されている。これにより、制御回路12が、押下されたテープ幅検出スイッチ36の組み合わせから、媒体アダプタ20の種類を特定し、媒体アダプタ20に収容されている感熱テープ42の幅(テープ幅)を検出する。
【0054】
以上のように構成された印刷装置1では、印刷開始前にプラテンローラ7を逆方向に回転させて感熱テープ42を逆搬送することができる。このため、感熱テープ42の先端に生じる無駄な余白を減らすことができる。また、印刷装置1では、ユーザが印刷装置1の処理を強制的に中断する操作を行うと、制御回路12は、処理の中断時点までに感熱テープ42を排出口2bへ向かう方向とは逆方向に搬送した搬送量R1(第1の搬送量)を、ROM13に不揮発的に格納してから処理を中断する。そして、中断後に行われる新たに処理において、制御回路12は、搬送量R1に基づいて、印刷開始位置まで感熱テープ42を搬送する。これにより、強制的な中断が生じた場合であっても、その後に行われる新たな処理において、正常に印刷を行うことができる。この点について、
図7を参照しながら、具体的に説明する。
【0055】
図7は、印刷装置1が行う処理のフローチャートの一例であり、プログラムの実行により行われる印刷装置1の制御方法を示している。
図8は、前回の処理が正常に終了した後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。まず、前回の処理が正常に終了した場合の印刷装置1の動作について、説明する。
【0056】
印刷装置1では、前回の処理が正常に終了した後に印刷命令が入力されると、制御回路12は
図7に示す処理を開始する。制御回路12は、まず、前回の処理が正常に終了しているか否かを判定する(ステップS1)。なお、前回の処理が正常に終了しているか否かは、例えば、ROM13に格納されているフラグによって判定されてもよい。このフラグは、処理の終了時及び中断時に書き換えられる。
【0057】
ステップS1において正常に終了していると判定されると、制御回路12は、順方向への搬送量Cと逆方向への搬送量Rに、それぞれ搬送量C2、搬送量R2を設定する(ステップS2)。
図8(a)は、ステップS2の搬送量設定時における感熱テープ42の状態を示している。
図8(a)では、感熱テープ42の先端42Tはフルカッター位置に位置している。
【0058】
搬送量C2は、例えば、フルカッター位置とハーフカッター位置との間の距離に、感熱テープ42の先端42Tに設けるハーフカット用の余白の長さを加えた距離である。また、搬送量R2は、例えば、ヘッド位置とハーフカッター位置の間の距離から、印刷開始領域とハーフカット対象領域の間の余白の長さを引いた距離である。なお、搬送量R2は、処理が正常に終了した場合に感熱テープ42が逆方向へ搬送される搬送量であり、逆方向への搬送量の基準値である。搬送量R2は、印刷装置1の第2の搬送量の一例である。
【0059】
フルカッター位置とは、印刷装置1内におけるフルカッター9の位置である。ハーフカッター位置とは、印刷装置1内におけるハーフカッター10の位置である。ヘッド位置とは、印刷装置1内におけるサーマルヘッド8の位置である。印刷開始領域とは、感熱テープ42の印刷領域のうち、感熱テープ42の先端42Tに最も近い領域のことである。また、印刷領域とは、感熱テープ42の領域のうちサーマルヘッド8により印刷が行われる領域のことである。印刷開始領域と感熱テープ42の先端42Tの間の領域は、印刷が行われない領域であり、ハーフカット用の余白はこの領域に含まれる。
【0060】
搬送量が設定されると、制御回路12は、搬送用モータ32に順方向の回転を開始させる(ステップS3)。そして、制御回路12は、プラテンローラ7に、ステップS2で設定された搬送量C2だけ、即ち、感熱テープ42のハーフカット対象領域(ハーフカット位置ともいう。)がハーフカッター位置に到達するまで、感熱テープ42を順方向に搬送させる(ステップS4)。
図8(b)は、ステップS4の搬送終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0061】
搬送が終了すると、制御回路12は、ハーフカッター10が感熱テープ42にハーフカットを行うように、カッターモータ駆動回路34を制御する(ステップS5)。
図8(c)は、ステップS5のハーフカット終了時における感熱テープ42の状態を示している。なお、ステップS3からステップS5の一連の処理は、サーマルヘッド8による印刷開始前に感熱テープ42を排出口に向かう順方向へ搬送し、ハーフカッター10によるハーフカットを行う、ハーフカット処理の一例である。
【0062】
ハーフカットが行われると、その後、制御回路12は、搬送用モータ32に逆方向の回転を開始させる(ステップS6)。そして、制御回路12は、プラテンローラ7に、ステップS2で設定された搬送量R2だけ、即ち、感熱テープ42の印刷開始領域がヘッド位置に到達するまで、感熱テープ42を逆方向に搬送させる(ステップS7)。
図8(d)は、ステップS7の搬送終了時における感熱テープ42の状態を示している。なお、ステップS6からステップS7の一連の処理は、ハーフカット処理を実行した後、感熱テープ42における印刷開始位置がサーマルヘッド8の位置になるように感熱テープ42を逆方向に搬送する、逆搬送処理の一例である。
【0063】
搬送が終了すると、制御回路12は、印刷処理を行う(ステップS22)。ここでは、制御回路12は、プラテンローラ7が順回転して感熱テープ42を順方向に搬送しながら、サーマルヘッド8が印刷データに基づいて印刷を行うように、搬送用モータ駆動回路31とヘッド駆動回路16を制御する。
図8(e)は、ステップS22の印刷処理終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0064】
印刷処理が終了すると、その後、制御回路12は、感熱テープ42のフルカット対象領域がフルカッター位置に到達するまで、プラテンローラ7に感熱テープ42を順方向に搬送させる(ステップS23)。フルカット対象領域(フルカット位置ともいう)とは、感熱テープ42の領域のうちフルカットが行われる領域のことをいう。フルカット対象領域は、例えば、印刷領域の後端からラベルの後ろ余白の長さだけ離れた領域である。
図8(f)は、ステップS23の搬送終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0065】
搬送が終了すると、制御回路12は、フルカッター9が感熱テープ42にフルカットを行うように、カッターモータ駆動回路34を制御し(ステップS24)、
図7に示す処理を終了する。これにより、感熱テープ42が切断され、連続媒体である感熱テープ42から分離したテープ片が作成される。
図8(g)は、ステップS24のフルカット終了時における感熱テープ42の状態を示している。
図8(g)には、印刷長PL1のラベルを有するテープ片が生成された様子が示されている。
【0066】
以上のように、印刷装置1によれば、印刷を行う前に逆方向へ感熱テープ42が搬送されることで、感熱テープ42の先端に生じる無駄な余白を減らすことができる。また、印刷を行う前にハーフカットが先に行われるため、印刷の途中で搬送を停止することなく印刷を行うことができる。このため、ハーフカットに起因する印刷品位の低下を防止することができる。
【0067】
次に、前回の処理が正常終了後の状態(
図9(a))から開始され、逆搬送開始前に、即ち、ステップS6の処理が開始される前に、中断された場合について説明する。
図9は、逆搬送開始前に中断された前回の処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
図9(a)は、前回の処理の開始時の感熱テープ42の状態を示している。
図9(b)は、前回の処理の中断時における感熱テープ42の状態を示している。
図9(b)では、感熱テープ42の先端42Tは、フルカッター位置とハーフカッター位置の間に位置している。
【0068】
図10は、前回の処理が逆搬送開始前に中断された場合における、中断後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。印刷装置1では、中断後に印刷命令が入力されると、制御回路12は、
図10(a)に示す状態から、
図7に示す処理を開始する。
【0069】
制御回路12は、まず、前回の処理が正常に終了しているか否かを判定し(ステップS1)、正常に終了していない場合には、中断時点までに感熱テープ42を排出口2bに向かう方向とは逆方向へ搬送した搬送量である搬送量R1を取得する(ステップS8)。具体的には、制御回路12は、記憶部であるROM13から搬送量R1を読み出してRAM14に格納する。この例では、前回の処理は逆搬送開始前に終了しているため、搬送量R1=0である。この場合、制御回路12は、順方向への搬送量Cと逆方向への搬送量Rに、それぞれ搬送量C2、搬送量R2を設定する(ステップS16)。なお、搬送量R1=0であるので、ステップS16で設定される搬送量Rは、搬送量R2-搬送量R1でもある。
【0070】
搬送量が設定されると、制御回路12は、搬送用モータ32に順方向の回転を開始させる(ステップS17)。そして、制御回路12は、プラテンローラ7に、ステップS16で設定された搬送量C2だけ、感熱テープ42を順方向に搬送させる(ステップS18)。
図10(b)は、ステップS18の搬送終了時における感熱テープ42の状態を示している。なお、中断時点における順方向への搬送量をROM13に格納している場合には、ROM13からRAM14にその搬送量を読み出してもよい。その場合、ステップS18では、搬送量C2と読み出した搬送量の差分だけ、感熱テープ42を順方向に搬送させてもよい。つまり、感熱テープ42における予め決められたハーフカット位置がハーフカッター位置になるように順方向に搬送させてもよい。
【0071】
搬送が終了すると、制御回路12は、ハーフカッター10が感熱テープ42にハーフカットを行うように、カッターモータ駆動回路34を制御する(ステップS19)。つまり、制御回路12は、ハーフカッター10に感熱テープ42をハーフカットさせる。
図10(c)は、ステップS19のハーフカット終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0072】
ハーフカットが行われると、その後、制御回路12は、搬送用モータ32に逆方向の回転を開始させる(ステップS20)。そして、制御回路12は、プラテンローラ7に、ステップS16で設定された搬送量R2だけ、感熱テープ42を逆方向に搬送させる(ステップS21)。なお、搬送量R1=0であるので、換言すると、ステップS21では、制御回路12は、搬送量R2-搬送量R1だけ、プラテンローラ7に、感熱テープ42を逆方向に搬送させている。
図10(d)は、ステップS21の搬送終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0073】
搬送が終了すると、制御回路12は、印刷処理を行う(ステップS22)。その後、制御回路12は、感熱テープ42のフルカット対象領域がフルカッター位置に到達するまで、プラテンローラ7に感熱テープ42を順方向に搬送させる(ステップS23)。最後に、制御回路12は、フルカッター9が感熱テープ42にフルカットを行うように、カッターモータ駆動回路34を制御し(ステップS24)、
図7に示す処理を終了する。
図10(e)、(f)、(g)は、それぞれ、ステップS22の印刷処理終了時、ステップS23の搬送処理終了時、ステップS24のフルカット終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0074】
以上のように、印刷装置1によれば、前回の処理が逆搬送開始前に中断された場合であっても、中断後に行われる新たな処理において、正常に印刷を行うことが可能であり、
図10(g)に示すように、印刷長PL1のラベルを有するテープ片を生成することができる。
【0075】
次に、前回の処理が正常終了後の状態(
図11(a))から開始され、逆搬送中に、即ち、ステップS7の処理中に、中断された場合について説明する。
図11は、逆搬送中に中断された前回の処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
図11(a)、
図11(b)、
図11(c)、
図11(d)は、それぞれ、前回の処理の開始時、ステップS4の搬送終了時、ステップS5のハーフカット終了時、前回の処理の中断時における感熱テープ42の状態を示している。
【0076】
図12は、前回の処理が逆搬送中に中断された場合における、中断後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。印刷装置1では、中断後に印刷命令が入力されると、制御回路12は、
図12(a)に示す状態から、
図7に示す処理を開始する。
【0077】
制御回路12は、まず、前回の処理が正常に終了しているか否かを判定し(ステップS1)、正常に終了していない場合には、中断時点における逆搬送量である搬送量R1をROM13から読み出してRAM14に格納する(ステップS8)。この例では、前回の処理は逆搬送中に中断しているため、搬送量R1は0より大きく且つ搬送量R2未満である(0<R1<R2)。この場合、制御回路12は、逆方向への搬送量Rに、搬送量R2-R1(=R3)を設定する(ステップS13)。つまり、前回の処理で既に行われた逆搬送量だけ搬送量Rを短く設定する。なお、搬送量R2-R1は、印刷装置1の第3の搬送量の一例である。
【0078】
搬送量が設定されると、制御回路12は、搬送用モータ32に逆方向の回転を開始させる(ステップS14)。そして、制御回路12は、プラテンローラ7に、ステップS13で設定された搬送量R2-R1だけ、感熱テープ42を逆方向に搬送させる(ステップS15)。
図12(b)は、ステップS15の搬送終了時における感熱テープ42の状態を示している。つまり、感熱テープ42における印刷開始位置がヘッド位置になるように感熱テープ42を逆方向に搬送する。
【0079】
搬送が終了すると、制御回路12は、印刷処理を行う(ステップS22)。その後、制御回路12は、感熱テープ42のフルカット対象領域がフルカッター位置に到達するまで、プラテンローラ7に感熱テープ42を順方向に搬送させる(ステップS23)。最後に、制御回路12は、フルカッター9が感熱テープ42にフルカットを行うように、カッターモータ駆動回路34を制御し(ステップS24)、
図7に示す処理を終了する。
図12(c)、(d)、(e)は、それぞれ、ステップS22の印刷処理終了時、ステップS23の搬送処理終了時、ステップS24のフルカット終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0080】
以上のように、印刷装置1によれば、前回の処理が逆搬送中に中断された場合であっても、中断後に行われる新たな処理において、正常に印刷を行うことが可能であり、
図12(e)に示すように、印刷長PL1のラベルを有するテープ片を生成することができる。また、新たな処理では、搬送量R1だけ逆方向への搬送量が短く設定されるため、感熱テープ42が必要以上に上流まで搬送されることを防止することができる。このため、過剰な逆搬送による不具合の発生を避けることができる。
【0081】
次に、前回の処理が正常終了後の状態(
図13(a))から開始され、印刷処理中に、即ち、ステップS22の処理中に、中断された場合について説明する。
図13は、印刷処理中に中断された前回の処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。
図13(a)、
図13(b)、
図13(c)、
図13(d)、
図13(e)は、それぞれ、前回の処理の開始時、ステップS4の搬送終了時、ステップS5のハーフカット終了時、ステップS7の搬送終了時、前回の処理の中断時における感熱テープ42の状態を示している。
【0082】
図14は、前回の処理が印刷処理中に中断された場合における、中断後に行われた新たな処理での感熱テープ42の状態を説明するための図である。印刷装置1では、中断後に印刷命令が入力されると、制御回路12は、
図14(a)に示す状態から、
図7に示す処理を開始する。
【0083】
制御回路12は、まず、前回の処理が正常に終了しているか否かを判定し(ステップS1)、正常に終了していない場合には、中断時点における逆搬送量である搬送量R1をROM13から読み出してRAM14に格納する(ステップS8)。この例では、前回の処理は印刷処理中に中断しているため、搬送量R1はR2である。つまり、第1の搬送量は、第2の搬送量に達している。この場合、制御回路12は、順方向への搬送量Cに、搬送量C3を設定する(ステップS9)。搬送量C3は、例えば、少なくともヘッド位置とフルカッター位置の間の距離である。
【0084】
搬送量が設定されると、制御回路12は、搬送用モータ32に順方向の回転を開始させる(ステップS10)。そして、制御回路12は、プラテンローラ7に、ステップS9で設定された搬送量C3だけ、感熱テープ42を順方向に搬送させる(ステップS11)。
図14(b)は、ステップS11の搬送終了時における感熱テープ42の状態を示している。
【0085】
搬送が終了すると、制御回路12は、フルカッター9が感熱テープ42にフルカットを行うように、カッターモータ駆動回路34を制御する(ステップS12)。つまり、制御回路12は、フルカッター9によるフルカット処理を行い、フルカッター9に感熱テープ42を切断させる。
図14(c)は、ステップS12のフルカット終了時における感熱テープ42の状態を示している。なお、この状態は、正常終了時と同じ状態である。
【0086】
その後、制御回路12は、前回の処理が正常に終了していると判定した場合と同様の処理を行う。即ち、ステップS2からステップS7、及び、ステップS22からステップS24を行う。
【0087】
以上のように、印刷装置1によれば、前回の処理が印刷処理中に中断された場合であっても、中断後に行われる新たな処理において、既に印刷済みの領域がフルカットにより除去される。このため、正常に印刷を行うことが可能である。
【0088】
上述したように、印刷装置1では、処理が強制的に中断された場合であっても、中断前に格納された搬送量R1を用いることで、新たな処理において適切なリカバリーが行われ、リカバリー後に印刷が行われる。具体的には、制御回路12は、ハーフカット処理、逆搬送処理、印刷処理のどの処理中に中断されたかに応じて、感熱テープ42の搬送を制御する。より具体的には、搬送量R1(第1の搬送量)が搬送量R2(第2の搬送量)未満の場合には、新たな処理において、感熱テープ42を印刷前に、搬送量R2-搬送量R1(第3の搬送量)だけ逆方向に搬送し、搬送量R1(第1の搬送量)が搬送量R2(第2の搬送量)に達している場合には、搬送量R2だけ逆方向に搬送する。これにより、中断後に行われる新たな処理で正常に印刷を行うことができる。
【0089】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。印刷装置、制御方法、及び、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0090】
上述した実施形態では、入力部3と表示部6を有する印刷装置1を例示したが、印刷装置は、入力部や表示部を有しなくてもよく、印刷データや印刷命令を印刷装置とは別の電子機器から受信してもよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、ハーフカットを行ってから印刷を行う例を示したが、印刷の途中でハーフカットを行ってもよい。この場合、印刷前に行う順方向への搬送を省略することができるため、素早く印刷を開始することができる。
【0092】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
テープ部材を搬送する搬送ローラと、
前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記テープ部材にハーフカットを行うハーフカッターと、
前記印刷ヘッドにより印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記ハーフカッターによるハーフカット処理と、前記ハーフカット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理と、を行うように前記搬送ローラ、前記印刷ヘッド、及び前記ハーフカッターを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記ハーフカット処理、前記逆搬送処理、前記印刷処理のどの処理中に中断されたかに応じて、前記テープ部材の搬送を制御することを特徴とする印刷装置。
【0093】
[付記2]
前記ハーフカット処理によるハーフカット前に処理が中断した場合、
前記制御部は、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材におけるハーフカット位置が前記ハーフカッターの位置になるように前記順方向に搬送し、前記ハーフカット処理を実行する
ことを特徴とする付記1記載の印刷装置。
【0094】
[付記3]
前記逆搬送処理による前記逆方向への搬送中に処理が中断した場合、
前記制御部は、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは前記逆方向に搬送することを特徴とする付記1又は2記載の印刷装置。
【0095】
[付記4]
前記テープ部材にフルカットを行うフルカッターを更に備え、
前記逆搬送処理の終了後、前記印刷処理における前記順方向への搬送中に処理が中断した場合、
前記制御部は、
前記処理が中断された後に行われる新たな処理において、
前記テープ部材を、少なくとも前記印刷ヘッドと前記フルカッターの間の距離だけ前記順方向へ搬送させ、前記フルカッターによるフルカット処理を行うことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1つに記載の印刷装置。
【0096】
[付記5]
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材にハーフカットを行うハーフカッターとを備えた印刷装置の制御方法であって、
処理が中断された後に行われる新たな処理において、前記印刷ヘッドにより印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記ハーフカッターによるハーフカット処理と、前記ハーフカット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理のうちどの処理中に中断されたかに応じて、前記テープ部材の搬送を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【0097】
[付記6]
テープ部材を搬送する搬送ローラと、前記テープ部材に印刷を行う印刷ヘッドと、前記テープ部材にハーフカットを行うハーフカッターとを備えた印刷装置のコンピュータに、
処理が中断された後に行われる新たな処理において、前記印刷ヘッドにより印刷開始前に前記テープ部材を排出口に向かう順方向へ搬送し、前記ハーフカッターによるハーフカット処理と、前記ハーフカット処理を実行した後、前記テープ部材における印刷開始位置が前記印刷ヘッドの位置になるように前記テープ部材を前記順方向とは逆方向に搬送する逆搬送処理と、前記逆搬送処理が終了すると、前記テープ部材を前記順方向に搬送しながら前記印刷ヘッドによる印刷処理のうちどの処理中に中断されたかに応じて、前記テープ部材の搬送を制御する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0098】
1 印刷装置
2b 排出口
7 プラテンローラ
8 サーマルヘッド
9 フルカッター
10 ハーフカッター
12 制御回路
13 ROM
14 RAM
16 ヘッド駆動回路
31 搬送用モータ駆動回路
32 搬送用モータ
33 エンコーダ
34 カッターモータ駆動回路
35 カッターモータ
40 被記録媒体
42 感熱テープ
42T 先端