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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/15 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A61B3/15
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018146330
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020018713
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐二
(72)【発明者】
【氏名】藤生 賢士朗
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-087548(JP,A)
【文献】特開2018-061621(JP,A)
【文献】特開2000-157493(JP,A)
【文献】特開2014-045863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を被検眼の眼底へ照射すると共に、前記照明光の眼底からの戻り光に基づいて眼底画像を撮影する撮影光学系と
記撮影光学系における撮影範囲のうち有効に眼底からの戻り光が得られる有効範囲であって、被検眼における瞳孔の状態,開瞼状態,および,被検者の顔面形状のうち、少なくともいずれかに応じた有効範囲を検出する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記有効範囲の基準値を被検眼毎に事前に設定して、被検眼毎の前記基準値と前記有効範囲の検出値と、を比較する、眼底撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記基準値を、予め定められた検出期間における前記有効範囲の検出結果に基づいて被検眼毎に設定し、
前記基準値が設定された後に検出される前記有効範囲を、前記基準値と比較する、請求項1記載の眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼底撮影装置として、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、光干渉断層計(OCT)等の種々の装置が知られている。
【0003】
眼底画像を得るうえで、虹彩、瞼、および、まつ毛による、ケラレ或いはノイズ光の混入を、回避することが望ましい。例えば、特許文献1には、アライメント完了状態で得られる前眼部観察画像を解析することで、瞳孔、瞼、および、まつ毛の状態を検出する技術が開示されている。特許文献1では、更に、上記のケラレおよびノイズ光が生じるか否かが検出結果に基づいてモニタ上に表示される。
【0004】
また、近年、より広い画角(視野角)で眼底を撮影する無散瞳型の撮影装置に、注目が集まっている。例えば、特許文献1には、90°程度、または、それ以上の画角で眼底を撮影する走査型レーザー検眼鏡が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009‐112665号公報
【文献】特開2016‐123467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自然散瞳時の瞳孔径と、瞼およびまつ毛の撮影光路への被さりやすさとには、それぞれ個人差がある。このため、例えば、検者が特許文献1の上記表示を参考にして、装置と被検眼との位置関係(すなわち、アライメント状態)を変更したとしても、虹彩、瞼、および、まつ毛による、ケラレ或いはノイズ光の混入を、回避することが難しい場合がある。また、所要瞳孔径が一定であれば画角が大きいほどアライメント許容範囲は狭くなるので、画角が大きくなるほど、上記のケラレ或いはノイズ光の混入が一層回避し難くなると共に、アライメント調整に要する時間が長引きやすくなると考えられる。
【0007】
本開示は、従来技術の問題点の少なくとも1つを解決し、装置と被検眼とのアライメント調整を速やかに完了しつつ、良好な眼底画像を撮影できる眼底撮影装置を提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様に係る眼底撮影装置は、照明光を被検眼の眼底へ照射すると共に、前記照明光の眼底からの戻り光に基づいて眼底画像を撮影する撮影光学系と、前記撮影光学系における撮影範囲のうち有効に眼底からの戻り光が得られる有効範囲であって、被検眼における瞳孔の状態,開瞼状態,および,被検者の顔面形状のうち、少なくともいずれかに応じた有効範囲を検出する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記有効範囲の基準値を被検眼毎に事前に設定して、被検眼毎の前記基準値と前記有効範囲の検出値と、を比較する、を比較する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、装置と被検眼とのアライメント調整を速やかに完了しつつ、良好な眼底画像を撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る眼底撮影装置の外観を示す図である。
図2】実施例に係る撮影光学系を示した図である。
図3】広角アタッチメントが装着された状態の撮影光学系を示した図である。
図4】実施例に係るSLOの制御系を示す図である。
図5】眼底画像の一例を示した図である。
図6】ケラレが生じた眼底画像を示した図である。
図7】作動距離に応じた有効領域の変化を説明するための図である。
図8】実施例に係る装置の動作を示したフローチャートである。
図9】変形例に係る前眼部観察光学系と、被検眼との位置関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「概要」
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を説明する。
【0013】
実施形態に係る眼底撮影装置は、被検眼の眼底撮影に利用される(図1参照)。眼底撮影装置は、撮影光学系(例えば、図2図3参照)と、制御部(例えば、図4参照)と、を少なくとも有する。眼科撮影装置は、追加的に、駆動部(「アライメント調整部」ともいう、図1参照)、観察光学系、画角切換部、モニタ、および、スピーカのうち少なくともいずれかを有していてもよい。
【0014】
<制御部>
制御部は、眼底撮影装置における各部の制御処理と、演算処理とを行う処理装置(プロセッサ)である。例えば、制御部は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。本実施形態において、制御部は画像処理部を兼ねていてもよい。画像処理部は、眼底画像(例えば、図5参照)の生成、および、眼底画像に対する各種画像処理のうち少なくともいずれかを実行する。
【0015】
<撮影光学系>
撮影光学系は、照明光を被検眼の眼底へ照射する。また、照明光の眼底からの戻り光に基づいて眼底画像を撮影する。
【0016】
撮影光学系は、眼底画像として、眼底の正面画像を撮影してもよい。必ずしもこれに限られるものでは無く、撮影光学系は、眼底の正面画像を撮影する正面撮影光学系(図2,3参照)を含んでいてもよい。また、撮影光学系は、戻り光と参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて眼底のOCTデータを取得するOCT光学系(図示せず)を含んでいてもよい。或いは、正面撮影光学系とOCT光学系との両方を、撮影光学系は含んでいてもよい。
【0017】
撮影光学系は、照射光学系、および、受光光学系を有してもよい(図2図3参照)。照射光学系は、被検眼の眼底へ照明光を照射する。追加的に、照射光学系は、照明光を発する光源(照明光源)を有してもよい。受光光学系は、照明光の眼底反射光を受光する受光素子を有してもよい。この場合、受光素子からの信号が画像処理部へ入力され、その結果として被検眼の眼底画像が取得(生成)される。
【0018】
撮影光学系が正面撮影光学系である場合、撮影光学系は、眼底上で照明光をスキャンすることによって撮影を行う、走査型の光学系であってもよい。また、この場合、撮影光学系は、非走査型の光学系であってもよい。走査型の光学系の一例として、スポットスキャンタイプの光学系と、ラインスキャンタイプの光学系とが挙げられる。スポットスキャンタイプの光学系では、眼底上でスポット状の照明光が、2次元的にスキャンされる。ラインスキャンタイプの光学系では、ライン状の照明光が一方向にスキャンされる。ライン状の照明光は、例えば、眼底上で直線的にスキャンされてもよいし、眼底上で回転スキャンされてもよい。回転スキャンの場合、回転中心は、撮影光学系の光軸であってもよい。走査型の光学系では、点受光素子、ラインセンサ、2次元受光素子(撮影素子)等の中からいずれかを、受光素子として適宜採用し得る。また、非走査型の光学系の一例としては、一般的な眼底カメラの光学系等が挙げられる。
【0019】
撮影光学系がOCT光学系である場合、眼底へ照射した光と参照光との光干渉に基づいてOCTデータが取得される。OCT光学系は、FD-OCTであってもよい。FD-OCTとしては、SD-OCT、および、SS-OCT等が知られている。以下では、特に断りが無い限り、SD-OCTを用いて説明を行う。しかし、必ずしもこれに限られるものでは無く、各方式のOCT光学系を撮影光学系の一部または全部として採用可能である。
【0020】
<観察光学系>
眼底撮影装置は、観察光学系を有してもよい。観察光学系によって、前眼部が観察されてもよいし、眼底が観察されてもよい。観察画像は、所定の方向から観察される前眼部または眼底の正面画像であってもよい。観察光学系を介して取得される観察画像を利用して、各種の撮影条件が調整されてもよい。各種の撮影条件の中の1つには、アライメント状態が含まれていてもよい。本実施形態において、観察光学系は、一部または全部が、撮影光学系と共用されていてもよい。また、観察光学系は、撮影光学系とは完全に独立した光学系であってもよい。眼底撮影装置は、観察光学系として、前眼部観察光学系と眼底観察光学系との一方だけでは無く、両方を有していてもよい。
【0021】
<駆動部(アライメント調整部)>
駆動部は、被検眼と撮影光学系との位置関係(アライメント状態)を変更(調整)する機構である。本実施形態では、照明光および戻り光の通過範囲と、被検眼の瞳孔、瞼、およびまつ毛との位置関係が、アライメント状態に応じて変更される。なお、観察光学系を有している場合、観察光学系は撮影光学系と一体的に、被検眼との位置関係が変更される。
【0022】
駆動部は、被検眼と撮影光学系との位置関係を制御部からの信号に基づいて変更するアクチュエータを有していてもよい。また、駆動部は、被検眼と撮影光学系との位置関係を検者から与えられる力に応じて変更するメカニカルな機構であってもよい。
【0023】
駆動部は、例えば、撮影光学系(および観察光学系)を含む撮影ユニットを、変位させるものであってもよいし、被検者の顔を支持する顔支持ユニット(例えば、顎受け台)を変位させるものであってもよいし、両者を組み合わせたものであってもよい。
【0024】
例えば、アライメント調整の典型的な手法では、先に、上下左右方向(XY方向ともいう)の位置関係が調整され、その後、前後方向(作動距離方向、Z方向ともいう)の位置関係が調整される。上下左右方向の調整では、例えば、撮影光学系の光軸を被検眼の視軸に対して一致させるように調整される。また、前後方向の調整では、被検眼に対する撮影光学系の距離が、予め定められた作動距離となるように調整される。アライメント調整において、各種のアライメント指標が利用されてもよい。この場合、本実施形態の眼底撮影装置は、アライメント指標を被検眼に投影する指標投影光学系を有していてもよい。
【0025】
眼科撮影装置は、自動アライメントによって被検眼と撮影光学系の位置関係を調整してもよい。この場合、制御部は、観察画像に基づいて駆動部を駆動することで、アライメント状態を調整してもよい。
【0026】
また、本実施形態の眼科撮影装置は、アライメントを調整するうえで、必ずしも駆動部を有していなくてもよい。例えば、位置が固定された撮影光学系に対して、器具を用いずに被検者の顔の位置を調整することで、アライメントが調整されてもよい。
【0027】
<撮影アシスト>
本実施形態では、装置と被検眼とのアライメント調整を速やかに完了しつつ、良好な眼底画像を撮影するために、以下に例示する撮影アシストが実行される。より詳細には、装置の撮影範囲の一部において眼底が良好に撮影できない領域が存在していても、該領域が許容されるべき程度であれば、アライメント調整が完了され、撮影が進んでいく。このとき、良好に撮影できない領域を許容すべきか否かは、例えば、被検眼における瞳孔の状態,開瞼状態のうち、少なくともいずれかが考慮されてもよい。代替的に、又は、追加的に、被検者の顔面形状が考慮されてもよい(詳細は、後述の<変形例>において説明する)。撮影アシストが実行される場合、主に眼底画像の周辺部に、ケラレ等の影響が生じる場合があり得る。その場合において、観察・診断に利用できる領域(有効範囲)は、例えば、装置の撮影範囲の80%以上であること好ましい。また、画角90°以上の装置において、本実施形態の撮影アシストが適用されることが好ましい。周辺部の一部にケラレ等の影響が生じたとしても、十分に広い範囲を観察・診断することができる。特に、画角100°以上の超広角撮影装置では、眼底画像の一部にケラレ等の影響が生じたとしても、従来の眼底画像によるパノラマ画像(画角90°相当)の有効範囲を確保し得る。よって、画角100°以上の超広角撮影装置では、撮影アシストが利用されたとしても、観察・診断を、眼底の中心部のみならず、周辺部についても良好に行うことができ、より好適である。なお、例えば、図6(a)に示すように、まつ毛によるケラレの場合、眼底画像には、まつ毛のカゲが画像の上端から、又は、下端から生じる。また、図6(b)に示すように、虹彩によるケラレの場合、周辺部にカゲが生じる。
【0028】
(1)有効範囲の検出
例えば、駆動部が駆動されることによって、アライメント状態が変化される。このとき、本実施形態では、随時、制御部によって有効範囲が検出される。ここでいう有効範囲とは、撮影光学系における撮影範囲(つまり、画角全体)のうち、有効に眼底からの戻り光が得られる範囲である。例えば、撮影範囲の一部に虹彩等によるケラレが生じている場合、その一部を除いた範囲が、有効範囲となる。また、まつ毛等での反射によるノイズが生じる領域についても、有効範囲から除外されてもよい。有効範囲は、被検眼における瞳孔の状態と、開瞼状態との、少なくとも一方に応じて変化していく。また、有効範囲は、アライメント状態に応じても変化する。一例として、図7に、Z方向のアライメント状態が変化したときの有効範囲の変化を示す。図7に示すように、適正作動距離である場合に対し、作動距離が短すぎ、および、長すぎる場合は、それぞれ、周辺部に(図7では虹彩による)ケラレが生じる。
【0029】
有効範囲は、前眼部または眼底の観察画像に基づいて検出されてもよい。一例として、眼底の観察画像に基づいて有効範囲を検出する場合では、観察画像のうち、虹彩、瞼、および、まつ毛によって投受光が遮られた領域、および、まつ毛等での反射によるノイズが生じる領域のうち、少なくともいずれかを画像処理によって検出し、残りの領域を有効範囲として検出してもよい。
【0030】
制御部は、有効範囲の検出結果に基づいて、有効範囲の大きさを示す情報を、リアルタイムに検者へ報知してもよい。例えば、有効範囲の大きさを数値(例えば、画角値、撮影範囲に対する割合等)で示すインジケータが表示されてもよい。また、インジケータは、数値に限定されるものでは無く、例えば、有効範囲の大きさに応じて色が変化するものであってもよい。
【0031】
(2)有効範囲の基準値設定
制御部は、有効範囲の基準値を、被検眼毎に設定してもよい。基準値は、アライメント状態が変化される期間における有効範囲の検出結果に基づいて設定される。基準値は、撮影時に確保されるべき有効範囲の大きさを示す。基準値には、装置の撮影範囲を示す値を上限として、瞳孔の状態と開瞼状態との少なくともいずれかが考慮された値が設定される。
【0032】
例えば、以下に列挙するいずれかが、被検眼毎の基準値として採用されてもよい。勿論、列挙したもの以外の値が、基準値として設定されてもよい。
a.検出期間中における有効範囲の最大値
b.上記a.の最大値に対して所定量小さな値
c. 時間軸に対して有効範囲をプロットしたグラフにおいて複数の極大値が見られるときは、複数の極大値の全部または一部による平均値、或いは、中央値等。
d.装置の撮影範囲を基準として予め設定された候補値(例えば、撮影範囲の100%,90%相当の値、80%相当の値、・・・)のうち、上記a.~c.の値の近似値。
【0033】
基準値が設定された場合、制御部は、基準値を示す情報を、検者または被検者に対して報知してもよい。例えば、眼底観察画像において、撮影範囲のうち基準値と対応する範囲の外側に、電子的なマスクを重畳させてもよい。
【0034】
基準値が設定されるまでの有効範囲の検出期間の長さは、予め定められていてもよい。例えば、観察開始のタイミング、XY方向のアライメント調整が完了したタイミング、および、一旦、XYZのアライメント調整が行われ、更に、フォーカス調整が完了したタイミング、のうちいずれかを基準に、検出期間の終期が少なくとも設定されてもよい。例えば、いずれかのタイミングから一定期間経過した時点が、検出期間の終期として設定されてもよい。XY方向のアライメント調整が完了している場合は、Z方向にアライメント状態が変化されることで、変化の間に被検眼における略最大の有効範囲が検出できる。そこで、XY方向のアライメント調整が完了したタイミング、および、一旦、XYZのアライメント調整が行われ、更に、フォーカス調整が完了したタイミング、のうちいずれかを基準として、検出期間の終期が設定されることが望ましい。
【0035】
また、制御部は、撮影範囲において生じるケラレが、瞼およびまつ毛のうち少なくともいずれかによるものであるか否かを、有効領域を検出する間に随時判定してもよい。観察画像に基づいて判定されてもよい。例えば、眼底観察画像を用いる場合は、観察画像中に生じるケラレの位置、形状、又はその両方に基づいて、瞼およびまつ毛のうち少なくともいずれかによるものであるか否かが判定されてもよい。例えば、観察画像における上下方向の端部だけにケラレが生じ、左右方向の端部には生じていない場合に、瞼およびまつ毛のうち少なくともいずれかによるケラレが生じているものと判定されてもよい。また、図6(b)に示すように、縞状のケラレが生じる場合に、まつ毛によるケラレが生じているものと判定されてもよい。
【0036】
ケラレが、瞼およびまつ毛のうち少なくともいずれかであると判定される場合には、開瞼を促すためのガイド情報を出力してもよい。ガイド情報は、例えば、「開瞼して下さい」等の音声が、ガイド情報として出力されてもよい。また、ガイド情報は、モニタ80への表示される、テキスト、又は、グラフィカルな情報であってもよい。
【0037】
検出期間中に瞼およびまつ毛のうち少なくともいずれかによるケラレが生じた場合、制御部は、開瞼を促すためのガイド情報を出力し、その後に、基準値を設定してもよい。
【0038】
(3)基準値と、有効範囲の検出値と、の比較処理
基準値が設定された後に、制御部は有効範囲を検出する。検出される有効範囲は、基準値と比較されてもよい(比較処理)。有効範囲が基準値以上となるまで、検出および比較は、それぞれ繰り返し実行されてもよい。基準値以上の有効範囲が検出されることは、例えば、以下の「(4)自動撮影」および、「(5)撮影操作のガイド」に例示する動作のトリガとして利用されてもよい。このとき、一定時間継続的に基準値以上の有効範囲が検出されることが、トリガの条件であってもよい。また、自動アライメントが行われる場合には、基準値以上の有効範囲を検出した段階で、アライメント制御が停止(完了)されてもよい。
【0039】
なお、基準値が設定されてから所定時間を経過しても基準値以上の有効範囲が検出されない場合は、エラーとして、検者または被検者に報知してもよい。この場合、上記「(1)有効範囲の検出」に戻って、アライメント調整がやり直されてもよい。
【0040】
また、検出期間中において事前に上述の開瞼を促すガイド情報が出力されている場合は、基準値設定後に、再度、ガイド情報を出力し開瞼を促してもよい。これにより、基準値以上の有効範囲が速やかに確保されやすくなると考えられる。その結果、アライメントをより速やかに完了して撮影に進むことができる。
【0041】
(4)自動撮影
例えば、比較処理の結果、有効範囲が基準値以上である場合(換言すれば、基準値以上の有効範囲が検出される場合)に、制御部は、眼底画像を自動的に撮影してもよい。検者による撮影操作(例えば、撮影ボタンの押下)を必要とせずに眼底画像が撮影される。
【0042】
制御部は、基準値以上の有効範囲が検出された直後に、眼底画像を撮影してもよい。このような撮影は、例えば、撮影が比較的短時間で完了する場合、および、不可視光(例えば、赤外光)を照明光として撮影する場合等の、撮影による被検者の負担が比較的少ない場合に有用である。詳細には、より大きな有効範囲をスムーズに撮影できる。
【0043】
但し、必ずしもこれに限られるものでは無い。例えば、基準値以上の有効範囲が検出された直後では無く、しばらく時間を空けて、眼底画像が撮影されてもよい。
【0044】
この場合、例えば、制御部は、検者および被検者の少なくともいずれかに対して撮影の予告を行い、予告の後に眼底画像を撮影してもよい。例えば、撮影が比較的長時間に及ぶ場合、および、可視光を照明光として撮影する場合等の、被検者への比較的大きな負担が想定される場合に、予告を行ってから撮影することが有用である。予告によって、例えば、開瞼の維持を被検者に促すことができる。
【0045】
また、制御部は、基準値以上の有効範囲が検出された後に、更に、瞬き検出を行い、瞬きが検出された後に、眼底を撮影してもよい。瞬きは、前眼部または眼底の観察画像に基づいて検出されてもよい。瞬きが検出された後に眼底が撮影される場合、撮影時において基準値以上の有効範囲が確保されやすくなるうえ、瞬きによる撮影エラーが低減される。但し、撮影は、瞬き検出の直後では無く、0.5秒程度の時間を空けて実行されることが好ましい。瞬きの直後は、固視が安定し難いので、撮影時に被検眼が動いてしまい撮影画像においてノイズ(フレアー等)が発生しやすい。これに対し、上記のように、瞬き検出の直後から少し時間を空けて撮影が行われることで、ノイズの発生が抑制される。瞬き検出のタイミングから撮影のタイミングまでの時間は、固定値であってもよい。但し、必ずしもこれに限られるものでは無く、制御部は更に固視検出を行い、瞬き検出後に固視の安定が更に検出されたタイミングで、眼底画像を撮影してもよい。固視の状態は、例えば、前眼部観察画像に基づいて検出できる。
【0046】
瞬きの検出結果に基づいて撮影が行われる場合、撮影の予告として、被検者に瞬きを促すためのガイド情報を出力してもよい。例えば、音声によるガイド情報として、「瞬きを行って、大きく瞼を開いて下さい」等のメッセージをスピーカから出力してもよい。
【0047】
このような撮影アシストが行われることで、被検眼毎により広い有効範囲が確保された眼底画像が、より速やかに撮影される。その結果として、撮影伴う検者および被検者の負担が低減される。
【0048】
(5)撮影操作のガイド
例えば、比較処理の結果、有効範囲が基準値以上である場合に、制御部は、眼底画像の撮影を誘導してもよい。この場合、例えば、撮影操作を行うべきタイミングが報知されてもよい。より具体的には、モニタ上に、撮影タイミングが到来したことを示す情報が表示されてもよい。検者による撮影操作(例えば、撮影ボタンの押下)が、上記の報知に基づいて行われることで、基準値以上の有効範囲を持つ眼底画像が、容易に撮影される。
上記「(4)自動撮影」において自動的に撮影が行われる各タイミングは、報知開始のタイミングに適宜置き換えて適用可能である。
【0049】
(6)検出期間の調整
撮影範囲の100%に相当する有効視野が検出された場合、残りの検出期間の長さに関わらず、直ちに検出期間を終了させてもよい。この場合、基準値として、撮影範囲の100%に相当する値が設定されてもよい。
【0050】
また、撮影範囲の100%に相当する有効視野が検出された場合に、基準値の設定と、その後の有効範囲の検出処理とは、必ずしも必要とされない。例えば、この場合は、基準値を設定する前後いずれかに関わらず、「(4)自動撮影」および、「(5)撮影操作のガイド」、のうちいずれかが、直ちに実行されてもよい。
【0051】
また、検出期間の長さは、検出期間中の有効視野の変化に応じて調整されてもよい。
【0052】
<撮影アシストの第1の変容形態>
また、アライメント調整の際に、駆動部(アライメント調整部)は、観察画像に基づいて駆動制御されてもよい。この場合、Z方向に関しては、少なくとも予め定められた範囲において被検眼と撮影光学系との位置関係を変更させつつ、各位置関係での有効範囲が検出されてもよい。このようなZ方向に関するアライメント調整は、前述の通り、XY方向に関するアライメント調整の後に開始されることが好ましい。その後、Z方向に関するアライメント調整の間において有効範囲が最大となった位置関係となるように、被検眼と撮影光学系との位置関係が制御部によって更に調整されたうえで、自動的に、又は、手動で、撮影が実行されてもよい。
【0053】
この場合、「(2)有効範囲の基準値設定」、および、「(3)基準値を設定した後に検出される有効範囲と基準値との比較処理」の各動作については実行されてもよいが、必ずしも必要では無い。また、自動的に、又は、手動で、撮影する場合には、上記「(4)自動撮影」、および、「(5)撮影操作のガイド」の記載内容の一部を適宜適用できる。
【0054】
<撮影アシストの第2の変容形態>
上記説明では、有効範囲の基準値は、アライメント状態が変化する期間の有効範囲の検出結果に基づいて被検眼毎に設定される。但し、必ずしもこれに限られるものでは無い。例えば、基準値は、各被検眼の有効範囲の検出結果に依存しない固定値であってもよい。
【0055】
この場合、基準値は、例えば、撮影範囲の90%相当の値、80%相当の値、・・・ の予め定められた値のうち、いずれかであってもよい。また、これらの値の中から、検者によって事前に選択された値であってもよい。基準値をアライメント調整に基づいて被験者毎に設定する場合と比べ、固定値である場合の方が、アライメントに要する時間をより短縮できると考えられる。
【0056】
<撮影モードの切換>
制御部は、装置の撮影モードを切換えてもよい。例えば、上記の<撮影アシスト>が行われない「第1撮影モード」と、<撮影アシスト>が行われる「第2撮影モード」と、の間で、撮影モードが切換えられてもよい。「第1撮影モード」では、少なくとも有効範囲が制御部によって検出されない。また、互いに異なる撮影モードの間では、装置の撮影範囲(画角)が互いに異なっていてもよい。撮影範囲として、第1画角と、第2画角と、が少なくとも選択可能であってもよい。ここでは、より狭い撮影範囲を「第1画角」、より広い方の撮影範囲を「第2画角」、と称す。例えば、第1画角は、90°未満であり、第2画角は、90°以上であってもよい。例えば、第1画角は、45°~60°程度であり、第2画角は90°~150°程度であってもよい。ここで、アライメント許容範囲は、所要瞳孔径が一定であれば画角が大きいほど狭くなり、虹彩、瞼、および、まつ毛によるケラレ、まつ毛等での反射によるノイズ等を、アライメント調整によって避けることがより困難になる。そこで、<撮影アシスト>が行われる第2撮影モードは、「第2画角」の場合に選択されてもよい。つまり、この場合、画角の切換と連動して、制御部は撮影モードを選択してもよい。
【0057】
<画角切換部>
眼底撮影装置は、追加的に、画角切換部を有してもよい。画角切換部は、撮影光学系における画角を切換える。換言すれば、画角切換部は、撮影光学系を変倍させる。
【0058】
画角切換部は、例えば、撮影光学系における対物光学系の構成(例えば、レンズ構成、又は、ミラー構成)を切換えることで、画角を切換えるものであってもよい。一例として、レンズアタッチメントのようなアタッチメント光学系(図3参照)の着脱(挿脱)によって、装置の画角は、予め定められた2つのいずれかへ選択的に切換えられてもよい。
【0059】
但し、撮影光学系の画角を切換える手法は、アタッチメント光学系の着脱(挿脱)に限られるものでは無い。例えば、対物光学系の一部または全部を交換することで、画角が切換えられてもよい。また、対物光学系内の光学素子の配置を切換えるズーム機構によって、画角が切換えられてもよい。
【0060】
「実施例」
以下、本発明の典型的な一実施例について、図面を参照して説明する。まず、図1から図3を参照して、眼底撮影装置1の全体構成について説明する。
【0061】
<外観構成>
図1に示すように、本実施形態において、装置本体は、撮影部4、位置あわせ機構5、基台6、および、顔支持ユニット7を有する。撮影部4には、被検眼Eを撮像するための光学系が格納されている。この光学系については、図2,3を参照して後述する。
【0062】
位置あわせ機構5(本実施例における「アライメント調整部」)は、装置を被検眼Eに対して位置あわせするために用いられる。本実施例において、位置あわせ機構5は、基台6に対して撮影部4を3次元的に移動させる。撮影部4は、Y方向(上下方向)、X方向(左右方向:)、及び、Z方向(前後方向)の各方向に移動可能であってもよい。特に断りが無い限り、以下の説明において、位置合わせ機構5は、ジョイスティック8等への操作に基づいて、手動で駆動されるものとする。
【0063】
顔支持ユニット7は、図1に示すように、被検眼Eを撮影部4に対向させた状態で被験者の顔を支持する。なお、本実施形態において、顔支持ユニット7は、基台6に対して固定されている。
【0064】
<SLO光学系>
本実施例において、眼底撮影装置1は、眼底の正面画像を撮影する正面撮影光学系200(図2,3参照)を有する。本実施例において、正面撮影光学系は、SLO(Scanning Laser Opthalmoscope:SLO)光学系である。また、本実施例では、正面撮影光学系200が固視光学系を兼用している。SLO光学系200は、レーザー光を眼底Er上で走査し、眼底Erからのレーザー光の戻り光を受光することによって、眼底Erの正面画像を取得する。
【0065】
なお、以下の説明において、眼底撮影装置1は、観察面上でスポット上に集光されるレーザー光を、走査部(光スキャナ)の動作に基づき,2次元的に走査することで眼底画像を得る。但し、必ずしもこれに限られるものでは無く、SLO光学系200は、いわゆるラインスキャンタイプの光学系であってもよい。この場合、観察面上で、ライン状の光束が走査される。また、本実施例のように走査型の光学系では無く、非走査型の光学系が、正面画像撮影光学系として利用されてもよい。
【0066】
SLO光学系200は、照射光学系10と、受光光学系20と、を含む。
【0067】
まず、図2を参照して、撮影画角が第1画角である場合の光学系を説明する。本実施例では、アタッチメント光学系3(図3参照)が未装着の場合に、撮影画角が第1画角に設定される。
【0068】
照射光学系10は、走査部16と、対物光学系17と、を含む。本実施例の対物光学系17は、少なくとも1つのレンズを含む。また、図2に示すように、照射光学系10は、更に、レーザー光源11、穴開きミラー13、レンズ14(本実施形態において、視度補正部40の一部)、および、レンズ15を有する。
【0069】
レーザー光源11は、照射光学系10の光源である。本実施形態では、レーザー光源11からのレーザー光が、撮影光として利用される。本実施形態のレーザー光源11は、複数色の光を、同時に、又は選択的に出射可能である。一例として、本実施形態では、レーザー光源11は、青,緑,赤の可視域の3色と、赤外域の1色と、の計4色の光を出射する。各色の光は、任意の組合せで同時に出射可能であってもよい。本実施例において、レーザー光源11から出射される各色の光は、眼底の撮影に利用される。なお、眼底反射光に基づいて撮影される眼底画像を反射画像、眼底Erに存在する蛍光物質からの蛍光に基づいて撮影される眼底画像を、蛍光画像と称する場合がある。
【0070】
反射画像として、赤外画像、カラー画像、レッドフリー画像、および、単色可視画像等のいずれか、または全てが撮影されてもよい。また、蛍光画像として、造影蛍光画像、および、自発蛍光画像のいずれかまたは全てが撮影されてもよい。造影蛍光画像は、眼底Erに静注された造影剤の蛍光発光による画像であってもよく、例えば、FA画像(フルオレセイン造影撮影画像)であってもよいし、ICGA画像(インドシアニングリーン造影撮影画像)であってもよい。また、自発蛍光画像は、眼底Erに蓄積された蛍光物質の蛍光発光による画像であってもよく、例えば、リポフスチンの蛍光発光による画像であってもよい。
【0071】
本実施形態において、レーザー光源11からのレーザー光は、穴開きミラー13に形成された開口部を通り、レンズ14およびレンズ15を介した後、走査部16に向かう。走査部16によって反射されたレーザー光は、ダイクロイックミラー51を通過し、対物光学系17を通過した後、被検眼Eの眼底Erに照射される。その結果、レーザー光は、眼底Erで反射・散乱される、或いは、眼底Erに存在する蛍光物質を励起させ、眼底からの蛍光を生じさせる。これらの光(つまり、反射・散乱光および蛍光等)が、レーザー光の照射に伴う被検眼からの光(戻り光)として、瞳孔から出射される。
【0072】
走査部16(「光スキャナ」ともいう)は、レーザー光源11から発せられたレーザー光を、眼底Er上で走査するためのユニットである。以下の説明では、特に断りが無い限り、走査部16は、レーザー光の走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含むものとする。即ち、主走査用(例えば、X方向への走査用)の光スキャナ16aと、副走査用(例えば、Y方向への走査用)の光スキャナ16bと、を含む。以下では、主走査用の光スキャナ16aはレゾナントスキャナであり、副走査用の光スキャナ216bはガルバノミラーであるものとして説明する。但し、各光スキャナ16a,16bには、他の光スキャナが適用されてもよい。例えば、各光スキャナ16a,16bに対し、他の反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ、および、MEMS等)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が適用されてもよい。
【0073】
対物光学系17は、眼底撮影装置1の対物光学系である。対物光学系17は、走査部16によって走査されるレーザー光を、被検眼Eに照射させ、眼底Erに導くために利用される。そのために、対物光学系17は、走査部16を経たレーザー光が旋回される旋回点Pを形成する。旋回点Pは、照射光学系10の基準光軸L1上であって、対物光学系17に関して走査部16と光学的に共役な位置に形成される。なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものでは無く、「略共役」を含むものとする。即ち、眼底画像の利用目的(例えば、観察、解析等)との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からずれて配置される場合も、本開示における「共役」に含まれる。本実施例では、眼底撮影装置1の対物光学系17がレンズだけで実現されているが、必ずしもこれに限られるものでは無く、レンズとミラーの組合せによって実現されてもよい。
【0074】
走査部16を経たレーザー光は、対物光学系17を通過することによって、旋回点Pを経て、眼底Erに照射される。このため、対物光学系17を通過したレーザー光は、走査部16の動作に伴って旋回点Pを中心に旋回される。その結果として、本実施形態では、眼底Er上でレーザー光が2次元的に走査される。眼底Erに照射されたレーザー光は、集光位置(例えば、網膜表面)で集光される。
【0075】
次に、受光光学系20について説明する。受光光学系20は、1つ又は複数の受光素子を持つ。例えば、図2に示すように、受光光学系20は、複数の受光素子25,27,29を有してもよい。この場合、照射光学系10によって照射されたレーザー光による眼底Erからの光は、受光素子25,27,29の少なくともいずれかによって受光される。
【0076】
図2に示すように、本実施形態における受光光学系20は、対物光学系17から穴開きミラー13までに配置された各部材を、照射光学系10と共用してもよい。この場合、眼底Erからの光は、照射光学系10の光路を遡って、穴開きミラー13まで導かれる。穴開きミラー13は、被検眼Eの角膜,および,装置内部の光学系(例えば対物レンズ系のレンズ面等)での反射によるノイズ光の少なくとも一部を取り除きつつ、眼底Erからの光を、受光光学系20の独立光路へ導く。
【0077】
なお、照射光学系10と受光光学系20とを分岐させる光路分岐部材は、穴開きミラー13に限られるものでは無く、その他の光学部材(例えばハーフミラー等)が利用されてもよい。
【0078】
本実施形態の受光光学系20は、穴開きミラー13の反射光路に、レンズ21、ピンホール板23、および、光分離部(光分離ユニット)23を有する。
【0079】
ピンホール板23は、眼底共役面に配置されており、眼底撮影装置1における共焦点絞りとして機能する。すなわち、視度補正部40によって視度が適正に補正される場合において、レンズ21を通過した眼底Erからの光は、ピンホール板23の開口において焦点を結ぶ。ピンホール板23によって、眼底Erの集光点(あるいは、焦点面)以外の位置からの光が取り除かれ、残り(集光点からの光)が受光素子25,27,29の少なくともいずれかへ導かれる。
【0080】
光分離部23は、眼底Erからの光を分離させる。本実施形態では、光分離部23によって、眼底Erからの光が波長選択的に光分離される。また、光分離部23は、受光光学系20の光路を分岐させる光分岐部を兼用していてもよい。例えば、図2に示すように、光分離部23は、光分離特性(波長分離特性)が互いに異なる2つのダイクロイックミラー(ダイクロイックフィルター)31,32を含んでいてもよい。受光光学系20の光路は、2つのダイクロイックミラー31,32によって、3つに分岐される。また、それぞれの分岐光路の先には、受光素子25,27,29の1つがそれぞれ配置される。
【0081】
例えば、光分離部23は、眼底Erからの光の波長を分離させ、3つの受光素子25,27,29に、互いに異なる波長域の光を受光させる。例えば、青,緑,赤の3色の光を、受光素子25,27,29に1色ずつ受光させてもよい。この場合、各受光素子25,27,29の受光結果から、カラー画像を取得してもよい。
【0082】
また、光分離部23は、眼底自発蛍光と、観察光の眼底反射光である赤外光とを、互いに異なる受光素子に受光させてもよい。これにより、蛍光画像と同時に、赤外画像を撮影可能であってもよい。本実施形態では、レーザー光源11から照射される青色の光が、自発蛍光の励起光として利用される。
【0083】
制御部70は、例えば、受光素子25,27,29から出力される受光信号を基に眼底画像を形成する。より詳細には、制御部70は、走査部16による光走査と同期して眼底画像を形成する。例えば、制御部70は、副走査用の光スキャナ16bがn回(nは、1以上の整数)往復する度に、少なくとも1フレーム(換言すれば、1枚)の眼底画像を、(受光素子毎に)形成する。なお、以下では、特段の断りが無い限り、便宜上、副走査用の光スキャナ16bの1往復につき、その1往復に基づく1フレームの眼底画像が形成されるものとする。本実施形態では、3つの受光素子25,27,29が設けられているので、制御部70は、それぞれの受光素子25,27,29からの信号に基づく最大3種類の画像を、副走査用の光スキャナ16bが1往復する度に生成する。
【0084】
制御部70は、上記のような装置の動作に基づいて逐次形成される複数フレームの眼底画像を、観察画像として時系列にモニタ80へ表示させてもよい。観察画像は、略リアルタイムに取得された眼底画像からなる動画像である。また、制御部70は、逐次形成される複数の眼底画像のうち一部を、撮影画像(キャプチャ画像)として取り込む(キャプチャする)。その際、撮影画像は記憶媒体に記憶される。撮影画像が記憶される記憶媒体は、不揮発性の記憶媒体(例えば、ハードディスク,フラッシュメモリ等)であってもよい。本実施形態では、例えば、トリガ信号(例えば、レリーズ操作信号等)の出力後、所定のタイミング(又は,期間)に形成される眼底画像がキャプチャされる。
【0085】
次に、アライメント光学系50について説明する。本実施形態のアライメント光学系50は、一例として、ダイクロイックミラー51、アライメント光源52、および受光素子55を有する。また、一例として、本実施例では、アライメント指標の倍率補正用の光学素子として、レンズ53をアライメント光学系50は備えていてもよい。
【0086】
アライメント光源52から出射されたアライメント光は、ダイクロイックミラー51によって反射され、対物光学系を介して被検眼Eに向けて照射される。被検眼Eの角膜によって反射されたアライメント光は、対物光学系を経て、ダイクロイックミラー51によって反射され、レンズ53を介して受光素子55によって受光される。受光素子55は、受光結果に基づいて、対物光学系に対する被検眼Eのアライメント状態が検出される。受光素子55から出力された信号は、制御部70(図4参照)に入力される。制御部70は、入力された信号に基づいて、被検眼Eのアライメント状態を示す画像(以下、「アライメント画像」ともいう)を生成してもよい。アライメント画像は、例えば、被検眼Eの角膜によって反射されたアライメント光を示すアライメント指標像を含む画像等であってもよい。
【0087】
ここで、レンズ53は、光軸に沿って移動可能であって、これにより、アライメント光学系の焦点距離を変更し、アライメント指標像の倍率を切換える。眼底撮影装置1には、レンズ53を移動させる駆動部53aが設けられていてもよい。レンズ53は、アタッチメント光学系3の着脱(挿脱)に応じて(つまり、画角切換に応じて)変位される。
【0088】
なお、本実施例では、眼底撮影装置1が前眼部観察光学系を有していない。しかしながら、勿論、前眼部観察光学系が眼科撮影装置1に設けられていてもよい。この場合、アライメント光学系50の一部が、前眼部観察系であってもよい。
【0089】
次に、図3を参照して、撮影画角がより広画角な第2画角である場合の光学構成を示す。本実施形態では、対物光学系17と被検眼Eとの間に、アタッチメント光学系3が配置されることで、第2画角で撮影を行うための対物光学系18が構成される。本実施形態のアタッチメント光学系3は、少なくとも1つのレンズを有する。図3に示すように、アタッチメント光学系3は、複数のレンズを有していてもよい。
【0090】
<アタッチメント光学系>
アタッチメント光学系3を含むレンズアタッチメントが、撮影部4の筐体面に対して着脱(挿脱)されることで、装置本体側の対物レンズ17と被検眼Eとの間において、アタッチメント光学系3の挿脱が行われる。
【0091】
第1旋回点P1を通過した測定光を少なくともレンズ332が光軸L1に向けて折り曲げることで、アタッチメント光学系3および対物光学系17に関して光スキャナ16と共役な位置に第2旋回点P2が形成される。つまり、アタッチメント光学系3は、旋回点P1を旋回点P2へリレーする光学系である。
【0092】
本実施例において、第2旋回点P2における測定光の旋回量は、第1旋回点P1における旋回量に比べて大きくなる。本実施例では、旋回量によって装置の画角が規定される。本実施例では、退避状態(第1モード)において60°程度の画角(旋回量)となり、挿入状態(第2モード)では、100°程度の画角(旋回量)となる。
【0093】
<制御系>
図4に示すように、眼底撮影装置1は、また、演算制御器(演算制御部)70を含む。その他、眼底撮影装置1は、メモリ71、モニタ80、操作部75等が設けられてもよい。また、演算制御器(以下、制御部)70は、レーザ光源11、正面撮影光学系200等に接続されている。操作部75は、タッチパネル、マウス、および、キーボード等であってもよい。操作部75は、眼底撮影装置1とは別体のデバイスであってもよい。制御部70は、操作部75から出力される操作信号に基づいて、各部を制御してもよい。操作部75には、例えば、撮影モードを選択するための操作、レリーズのための操作等のいずれかが入力されてもよい。
【0094】
<動作>
次に、図8のフローチャートを参照して、眼底撮影装置1の動作を説明する。
【0095】
まず、制御部70は、マニュアルモードとアシストモードとの少なくとも2つの撮影モードの中から、撮影モードを選択する(S1)。マニュアルモードは本実施例における「第1撮影モード」であり、アシストモードは本実施例における「第2撮影モード」である。
【0096】
撮影モードの設定後、制御部70は、観察画像の取得を開始させる(S2)。本実施例において、取得された観察画像は、モニタ80に逐次表示される。本実施例では、マニュアルモードとアシストモードとのいずれにおいても、装置と被検眼とのアライメントは、手動で調整される。手動でのアライメントにおいて、観察画像が利用される。
【0097】
次に、制御部70は、内部固視灯を点灯する(S3)。制御部70は、例えば、撮影光学系を制御して、所定の呈示位置へレーザーが走査されるタイミングで可視光を一時的に点灯させる。これにより、内部固視灯が形成されると共に、被検眼に対して呈示される。
【0098】
以降では、予め設定された撮影モードに応じて異なる動作が実行される。
【0099】
<アシストモード>
先に、アシストモードが設定されている場合について説明する(S4:アシストモード)。本実施例のアシストモードでは、被検眼毎に適正な広さの有効範囲が確保された段階で、眼底画像が自動的に撮影される。アシストモードでは、観察画像を利用してアライメントが調整されると共に、調整時の観察画像に基づいて有効範囲の基準値(Vt)が設定される(S5、S6)。また、制御部70は、視度補正部40を制御して、フォーカスを調整する(S7)。
【0100】
本実施例では、アライメントにおいて、まず、検者は、モニタ80上に前眼部が映し出されるように、撮影部4を被検者から離れた位置に配置する。検者は、前眼部像の瞳孔中心とモニタ80の画面中心とが重なるように、XY方向に関する被検眼Eと撮影光学系との位置関係を調節する。
【0101】
その後、検者は、観察画像を観察しながら、撮影部4を被検眼Eへ近付ける。モニタ80上では瞳像が表示され、やがて眼底像が映し出されるようになる。この場合、適正な作動距離付近まで被検眼Eに装置を近付けると、眼底像と共に、アライメント指標像が、モニタ80上に映し出される。検者は、このアライメント指標像を参考にして被検眼Eへのアライメントを行うことができる。例えば、アライメント指標像がアライメント画像の画像中心に表示されるように、上下左右方向に関するアライメント状態が調整される。また、アライメント指標像の結像状態を参考にして撮影部4と被検眼Eとの間隔(つまり、前後方向に関するアライメント状態)が調節される。このとき、アライメント指標像のピントがあうように、撮影部4が前後に移動されてもよい。
【0102】
また、本実施例において、制御部70は、観察画像として眼底像が取得され、映し出されるようになってから、有効範囲の検出を開始する。例えば、受光素子55からの信号に基づくアライメント画像において、アライメント指標像の有無を検出し、アライメント指標像が検出された場合に、有効範囲の検出を開始してもよい。これに代えて、被検眼Eからの撮影部4までの距離を検出する検出部を有していてもよい。検出部としては、例えば、基台6上における撮影部4(又は位置合わせ機構5)の位置を検出する図示無きセンサが利用されてもよい。
【0103】
制御部70は、予め定められた期間においてアライメント調整に伴い変化する、有効範囲を逐次検出する。例えば、検出開始から数秒間で検出される有効範囲に基づいて、基準値(Vt)を設定する。本実施例では、一例として、検出開始から数秒の間に検出される有効範囲の最大値が基準値(Vt)として設定される。なお、有効範囲および基準値の単位は、例えば、画素数であってもよいし、面積であってもよいし、装置の撮影範囲に対する割合(無次元量)であってもよいし、その他の単位であってもよい。
【0104】
引き続き、有効範囲の検出は継続されると共に、基準値と比較される(S8)。有効範囲が基準値を下回る場合は(S8:No)、検者によってアライメント状態が再調整される(S9)。また、現在の有効範囲と基準値との比較が、有効範囲が基準値以上となるまで繰り返される。
【0105】
本実施例では、アライメント状態の調整の結果、現在の有効範囲が基準値以上となったことをトリガとして、撮影が予告され(S10)、更には、眼底画像が撮影される(S11)。本実施例では、一例として、照明光(撮影光)として、可視光が複数秒間照射され、複数枚の眼底画像が連続的に撮影される。
【0106】
各種処理(S12)では、例えば、撮影された眼底画像がメモリ71へ保存され、また、モニタ80に表示される。このとき、複数枚の眼底画像による加算平均画像を生成し、加算平均画像が保存または表示されてもよい。
【0107】
本実施例のアシストモードでは、アライメント調整については検者が担当するものの、撮影のタイミングについては装置側が担当するので、検者の操作負担が軽減される。また、撮影範囲の全体を撮影することが難しい被検眼の場合に、より有効範囲の広い画像を、速やかに撮影しやすい。
【0108】
<マニュアルモード>
S4に戻って、マニュアルモードが設定されている場合について説明する(S4:マニュアルモード)。
【0109】
本実施例のマニュアルモードでは、まず、観察画像を利用してアライメントと、フォーカスが調整される(S13、S14)。また、制御部70は、視度補正部40を制御して、フォーカスを調整する(S7)。本実施例のマニュアルモードでは、検者による撮影操作(撮影スイッチの押下)に基づいて、眼底画像が撮影される(S15⇒S11)。その後、アシストモードと同様に、各種処理(S12)が実行される。マニュアルモードでは、検者の好みのアライメント状態で、眼底画像が撮影される。
【0110】
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示は、上記実施形態に限定されるものでは無い。
【0111】
<変形例>
以上、実施形態および実施例に基づいて本開示を説明したが、本開示は上記実施形態および実施例に限定されるものでは無く、いわゆる当業者の通常の知識に基づいて、種々の変形が許容される。
【0112】
例えば、上記実施例では、眼底の観察画像に基づいて有効領域が検出された。しかし、前述した通り、有効領域は、例えば、前眼部の観察画像に基づいて検出できる。この場合、観察光学系の光軸は、顔の正面方向に対して交差していることが、より画角が大きい場合において、開瞼状態を検出するうえで有効である。即ち、まつ毛および瞼は、眼球表面よりも装置側に飛び出ているので、前眼部を顔の正面方向から見たときの観察画像では、ケラレの程度を適正に評価することが難しい。一方、観察光学系の光軸が、顔の正面方向に対して交差していると、まつ毛および瞼によるケラレの程度を適正に把握しやすくなる。一例として、図9に示すように、照明光の照射範囲における上側の縁に沿って観察光学系400の光軸が配置される場合、観察光学系400の光軸との位置関係に基づいて、上瞼、および、上側のまつ毛によるケラレを適正に把握できる。また、被検者の顔に対して横方向から前眼部を観察するような観察光学系400であっても、開瞼状態を適正に検出できる。ここでいう横方向には、斜め方向を含む。
【0113】
また、例えば、上記実施形態および実施例では、被検眼の開瞼状態、および、瞳孔状態のうち少なくともいずれかに応じた有効範囲が検出され、更には、開瞼状態、および、瞳孔状態のうち少なくともいずれかに応じた基準値が設定された。但し、必ずしもこれに限られるものでは無い。開瞼状態および瞳孔状態に対して、代替的に、又は、追加的に、被検者の顔面形状に応じた有効範囲が検出されてもよい。また、被検者の顔面形状に応じて有効範囲の基準値が設定されてもよい。
【0114】
すなわち、有効範囲は、被検者の顔面形状によって制限される場合があると考えられる。例えば、顔の彫が深ければ、装置の先端部(例えば、鏡筒先端部)が被検者の鼻および頬等に接触してしまうことで、(特に作動距離方向に関して)適正なアライメント状態へ調整できない場合が考えられる。この場合、被検眼の開瞼状態および瞳孔状態が適正であっても、ケラレが生じ得る。
【0115】
そこで、被検者の顔面形状に応じた有効範囲を検出するためには、例えば、横方向から被検者の顔を観察する観察光学系が有効である。この観察光学系は、前眼部観察光学系を兼用してもよい。勿論、この他の方法によって、被検者の顔面形状に関する情報を取得してもよい。
【0116】
この場合、被検者の顔面形状に応じて許容される被検者毎のアライメントの調整可能範囲を、横方向からの観察画像における被検者の顔形状と装置先端部の形状情報と、に基づいて解析してもよい。装置の先端部の形状情報は既知の情報であってもよい。例えば、装置の適正作動距離が10mmであるところ、上記の解析結果に基づく作動距離の限界値(被検者の顔面形状に応じた値)が12mmであれば、作動距離12mmに応じた有効範囲が推測可能である。推測された有効範囲が、検出値として利用されてもよいし、検出値と比較される基準値として利用されてもよい。また、眼底の観察画像から検出される有効範囲に基づいて基準値を設定する場合において、基準値を絞り込むための情報として、被検者の顔形状から推測される有効範囲が利用されてもよい。
【0117】
また、例えば、上記実施形態においては、制御部によって有効領域が検出される期間(検出期間)および基準値の設定条件は、予め定められている。この検出期間は、検者における撮影操作の習熟に従って、変更されてもよい。例えば、制御部は、マニュアルモードでの撮影の際に、観察中の最大の有効範囲、撮影時の有効範囲、および、観察開始から撮影までの時間等を学習し、学習データに基づいて、アシストモードにおける検出期間および基準値の設定条件が変更されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 眼底撮影装置
70 制御部
200 正面撮影光学系
E 被検眼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9