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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両用フロントドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20221129BHJP
   B60R 1/06 20060101ALI20221129BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B60R1/06 D
B60J5/04 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018151401
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026195
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正義
(72)【発明者】
【氏名】大角 拓矢
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-154848(JP,A)
【文献】実開平01-067121(JP,U)
【文献】実開昭57-029444(JP,U)
【文献】特開2003-205741(JP,A)
【文献】特開2005-162092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60R 1/06
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部の外面を構成するドアアウタパネルと、該ドアアウタパネルの車内側に配置されるドアインナパネルとを含む車両用フロントドアにおいて、
前記ドアインナパネルは、
車両前方にゆくほど下降しベルトラインに到達して車両前方に先細りな形状のドアガラス用開口を形成する窓枠部と、
前記ベルトラインの下側に位置し前記窓枠部に連続する本体部と、
前記窓枠部と前記ベルトラインとの間に配置され前記ドアガラス用開口の前端を形成する開口前端部とを有し、
当該車両用フロントドアはさらに、前記ドアインナパネルと前記ドアアウタパネルとの間で前記開口前端部と前記本体部とを跨いでいて該ドアインナパネルに接合されるドアリンフォースを含み、
前記ドアリンフォースは、車両前後に離間した前側ビードおよび後側ビードを有し、
前記前側ビードおよび後側ビードはいずれも、前記開口前端部と前記本体部とを跨いで車両上下方向に延びていて、前記ドアインナパネルとともに閉断面を形成していて、
前記ドアリンフォースは、前記前側ビードと前記後側ビードとの間に位置し前記ドアインナパネルに接合された接合座面を有し、
当該車両用フロントドアはさらに、前記接合座面に接合されドアミラーを支持するミラーリンフォースを含み、
前記ミラーリンフォースは、前記ドアミラーを支持するベース面と、該ベース面の上縁から前記ドアリンフォースの前記接合座面に向かって屈曲し該接合座面に接合される脚部とを有することを特徴とする車両用フロントドア。
【請求項2】
前記ドアリンフォースは、車両前後方向に延びて前記前側ビードと前記後側ビードとをつなぐ連結部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用フロントドア。
【請求項3】
前記ドアリンフォースは、前記後側ビードから前記ベルトラインに沿って後方に延びる後方延長部を有し、
当該車両用フロントドアはさらに、前記ベルトラインに沿って延び前記後方延長部に車両後方から接合されるインナリンフォースを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用フロントドア。
【請求項4】
該車両用フロントドアはさらに、前記ベルトラインに沿って延び前記ミラーリンフォースの車外側に配置され前記ドアインナパネルの前縁に車両後方から接合され前記ドアインナパネルの後縁に車両前方から接合されるアウタリンフォースを含み、
前記アウタリンフォースは、側面視で前記ミラーリンフォースに重なっていて該ミラーリンフォースとともに前記ドアミラーを支持する支持座面を有し、該支持座面の上端部が、前記ミラーリンフォースの前記ベース面の上縁に接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用フロントドア。
【請求項5】
前記ドアリンフォースは、前記後側ビードから下方に延びる下方延長部を有し、
当該車両用フロントドアはさらに、上下方向に延びドアガラスの昇降を案内し前記下方延長部に下方から接合されるサッシュガイドを含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両用フロントドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フロントドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両側部には、車両用フロントドアが設けられている。車両用フロントドアは、車両側部の外面を構成するドアアウタパネルと、ドアアウタパネルの車内側に配置されるドアインナパネルとを含む。
【0003】
車両用フロントドアには、ドアガラス用開口の下端のラインすなわちベルトライン付近にドアミラーが取り付けられる場合がある。ドアミラーは、ドアアウタパネルよりも車幅方向外側に設置された重量物であり、ドア開閉時などに慣性によって車幅方向に揺れることがある。このため、車両用フロントドアのうちドアミラーが取り付けられたベルトライン付近は、ドア開閉時などにドアミラーの揺れに伴う衝撃を受け易く、したがって剛性を高める必要がある。
【0004】
特許文献1に記載のドア構造は、アウタパネルの車外側に配置されたドアミラーと、アウタパネルを挟んでドアミラーの車内側に配置されたベース部材とを備えている。ベース部材は、ドアミラーが取り付けられる部材であり、インナパネルに接合されている。
【0005】
特許文献1では、ドアミラーが接合されるベース部材がインナパネルに取り付けられているため、車幅方向に対して広い範囲に伸ばしてベース部材の接合部を配設できる、としている。なおベース部材の接合部とは、ベース部材とその周辺部材との接合点とされている。さらに特許文献1では、ベース部材のドアに対する取付剛性を高くできるので、高い取付剛性をもってドアミラーを支持できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-154718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1のドア構造は、車両用フロントドアのベルトラインの下側にベース部材を配置して、ドアミラーの取付剛性を高めるものに過ぎず、ベルトラインよりも上側に位置する部位の剛性を高めることについては対策が講じられていない。すなわちベルトラインよりも上側に位置し、さらに側面視でドアミラーと重なる部位は、ドア開閉時などにドアミラーの揺れに伴う衝撃がベルトラインの下側から伝達され変形する事態があり得る。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、ベルトライン付近の剛性を高め、ドア開閉時などにベルトライン付近の変形を抑制できる車両用フロントドアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用フロントドアの代表的な構成は、車両側部の外面を構成するドアアウタパネルと、ドアアウタパネルの車内側に配置されるドアインナパネルとを含む車両用フロントドアにおいて、ドアインナパネルは、車両前方にゆくほど下降しベルトラインに到達して車両前方に先細りな形状のドアガラス用開口を形成する窓枠部と、ベルトラインの下側に位置し窓枠部に連続する本体部と、窓枠部とベルトラインとの間に配置されドアガラス用開口の前端を形成する開口前端部とを有し、車両用フロントドアはさらに、ドアインナパネルとドアアウタパネルとの間で開口前端部と本体部とを跨いでいてドアインナパネルに接合されるドアリンフォースを含み、ドアリンフォースは、車両前後に離間した前側ビードおよび後側ビードを有し、前側ビードおよび後側ビードはいずれも、開口前端部と本体部とを跨いで車両上下方向に延びていて、ドアインナパネルとともに閉断面を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベルトライン付近の剛性を高め、ドア開閉時などにベルトライン付近の変形を抑制できる車両用フロントドアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る車両用フロントドアを概略的に示す図である。
図2図1(a)の車両用フロントドアからドアアウタパネルおよびドアミラーを省略して示す図である。
図3図1(b)のドアインナパネルにドアリンフォース、インナリンフォースおよびサッシュガイドを取り付けた状態を示す図である。
図4図3の車両用フロントドアのドアリンフォースを示す図である。
図5図3の車両用フロントドアのA-A断面図である。
図6図3の車両用フロントドアにミラーリンフォースを取り付けた状態を示す図である。
図7図6の車両用フロントドアにアウタリンフォースを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用フロントドアの代表的な構成は、車両側部の外面を構成するドアアウタパネルと、ドアアウタパネルの車内側に配置されるドアインナパネルとを含む車両用フロントドアにおいて、ドアインナパネルは、車両前方にゆくほど下降しベルトラインに到達して車両前方に先細りな形状のドアガラス用開口を形成する窓枠部と、ベルトラインの下側に位置し窓枠部に連続する本体部と、窓枠部とベルトラインとの間に配置されドアガラス用開口の前端を形成する開口前端部とを有し、車両用フロントドアはさらに、ドアインナパネルとドアアウタパネルとの間で開口前端部と本体部とを跨いでいてドアインナパネルに接合されるドアリンフォースを含み、ドアリンフォースは、車両前後に離間した前側ビードおよび後側ビードを有し、前側ビードおよび後側ビードはいずれも、開口前端部と本体部とを跨いで車両上下方向に延びていて、ドアインナパネルとともに閉断面を形成していることを特徴とする。
【0013】
ここで車両用フロントドアのうち、ドアミラーなどの重量物が設置されたベルトライン付近は、ドア開閉時などにドアミラーが慣性により揺れると車幅方向の衝撃を受け易い。特に、ベルトラインよりも上側に位置しドアガラス用開口の前端を形成する開口前端部は、側面視でドアミラーと重なる位置にあるため、ドア開閉時などにドアミラーの揺れに伴う衝撃が伝達され変形し易い部位となる。
【0014】
そこで本発明では、ドアインナパネルの開口前端部と本体部とを跨ぐように、すなわちベルトラインを跨ぐようにドアリンフォースをドアインナパネルに接合した。またドアリンフォースには、開口前端部と本体部とを跨いで車両上下方向に延びる前側ビードと後側ビードとを形成した。さらに前側ビードと後側ビードは、ドアインナパネルとともに閉断面を形成している。
【0015】
このため、車両用フロントドアの開閉時にドアが受ける車幅方向の衝撃は、ドアリンフォースに伝達される。そしてドアリンフォースは、伝達された衝撃を前側ビードと後側ビードで受け止め、さらに開口前端部から本体部まで分散させ吸収できる。したがって上記構成によれば、車両用フロントドアのベルトライン付近の剛性を高め、ドア開閉時などにベルトライン付近の変形を抑制できる。
【0016】
上記のドアリンフォースは、車両前後方向に延びて前側ビードと後側ビードとをつなぐ連結部を有するとよい。このように、前側ビードと後側ビードとが連結部によって車両前後にわたって連結されているので、ドアリンフォースの剛性を高くすることができる。
【0017】
上記のドアリンフォースは、後側ビードからベルトラインに沿って後方に延びる後方延長部を有し、車両用フロントドアはさらに、ベルトラインに沿って延び後方延長部に車両後方から接合されるインナリンフォースを含むとよい。これによりドアリンフォースが受けた衝撃は、後方延長部を介してインナリンフォースにまで伝達される。このため、ドアリンフォースの剛性をより高めることができる。
【0018】
上記のドアリンフォースは、前側ビードと後側ビードとの間に位置しドアインナパネルに接合された接合座面を有し、車両用フロントドアはさらに、接合座面に接合されドアミラーを支持するミラーリンフォースを含むとよい。
【0019】
このように、ドアリンフォースの接合座面は、ドアインナパネルに接合されているため、剛性が高い。そしてドアミラーを支持するミラーリンフォースは、剛性の高い接合座面に接合されている。このため、ドアミラー取付け時、ドア開閉時や走行時にドアミラーが揺れた場合であっても、ミラーリンフォースがドアミラーを十分に支持でき、ベルトライン付近の変形も抑制できる。
【0020】
上記のミラーリンフォースは、ドアミラーを支持するベース面と、ベース面の上縁からドアリンフォースの接合座面に向かって屈曲し接合座面に接合される脚部とを有し、車両用フロントドアはさらに、ベルトラインに沿って延びミラーリンフォースの車外側に配置されドアインナパネルの前縁に車両後方から接合されドアインナパネルの後縁に車両前方から接合されるアウタリンフォースを含み、アウタリンフォースは、側面視でミラーリンフォースに重なっていてミラーリンフォースとともにドアミラーを支持する支持座面を有し、支持座面の上端部が、ミラーリンフォースのベース面の上縁に接合されているとよい。
【0021】
このように、アウタリンフォースは、前端部および後端部がそれぞれドアインナパネルの前縁および後縁にそれぞれ接合され、さらにドアミラーを支持する支持座面の上端部がミラーリンフォースのベース面の上縁すなわち脚部の根元に接合されている。このため、アウタリンフォースの支持座面は、剛性が高くなり衝撃を受けても変形し難くなる。したがって、剛性の高いアウタリンフォースおよびミラーリンフォースによってドアミラーを支持できる。
【0022】
上記のドアリンフォースは、後側ビードから下方に延びる下方延長部を有し、車両用フロントドアはさらに、上下方向に延びドアガラスの昇降を案内し下方延長部に下方から接合されるサッシュガイドを含むとよい。
【0023】
このように、サッシュガイドの上端部が、下方延長部を介して剛性の高いドアリンフォースに接合されている。このため、サッシュガイドは、変形し難くなり、ドアガラスの昇降を安定して案内できる。
【実施例
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施例に係る車両用フロントドアを概略的に示す図である。図1(a)は、車両側部に配置された車両用フロントドアを車外側から見た状態を示している。なお以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Fr、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0026】
車両用フロントドア100は、図1(a)に示す車両側部の外面を構成するドアアウタパネル102と、ドアアウタパネル102の車内側に配置されるドアインナパネル104とを含んで構成される。図1(a)ではドアインナパネル104はドアアウタパネル102に隠れていて見えていない。車両用フロントドア100のうち、ドアガラス用開口106の下端のラインすなわちベルトライン108に、ドアミラー110が取り付けられている。
【0027】
ドアミラー110は、ドアアウタパネル102よりも車幅方向外側に設置された重量物であり、ドア開閉時などに慣性によって揺れることがある。なおドアミラー110は、ドア開閉時に限らず、走行時やドアミラー110の取付け時にも揺れる場合がある。このため、車両用フロントドア100では、ドアミラー110が取り付けられたベルトライン108付近において、ドアミラー110の揺れに伴う車幅方向の衝撃を受け易い。
【0028】
そこで車両用フロントドア100では、ベルトライン108付近の剛性を高め、ドア開閉時などにベルトライン108付近の変形を抑制する構成を採用した。図1(b)は、図1(a)の車両用フロントドア100のドアアウタパネル102およびドアミラー110を除外し、ドアインナパネル104の一部を拡大して示している。図1(b)では、図示の便宜上、ドアインナパネル104のみを単独で示していて、ドアインナパネル104とドアアウタパネル102との間に存在する要素は図示を省略している。図1(b)に示すように、ドアインナパネル104は、窓枠部112と、本体部114と、開口前端部116とを有する。なお図1(b)では、ドアガラス用開口106の下端から車両前側に延長したベルトライン108を点線で示している。
【0029】
窓枠部112は、図1(a)に示すように車両前方にゆくほど下降しベルトライン108に到達して、車両前方に先細りな形状のドアガラス用開口106を形成する。図1(b)に示す本体部114は、ベルトライン108の下側に位置し窓枠部112に連続する。開口前端部116は、窓枠部112とベルトライン108との間に配置され、ドアガラス用開口106の前端118を形成する。開口前端部116は、ベルトライン108の上側に位置していて、さらに側面視でドアミラー110と重なっている。ここでドアミラー110が取り付けられたベルトライン108付近とは、ドアインナパネル104のうちベルトライン108の上側に位置する開口前端部116と、開口前端部116に連続しベルトライン108の下側に位置する本体部114とを含む。
【0030】
図2は、図1(a)の車両用フロントドア100からドアアウタパネル102およびドアミラー110を省略して示す図である。車両用フロントドア100はさらに、ドアリンフォース120と、インナリンフォース122(図3参照)と、サッシュガイド124と、ミラーリンフォース126と、アウタリンフォース128とを有する。これらの各部材はドアインナパネル104とドアアウタパネル102との間に配置されている。以下これら各部材について説明する。
【0031】
図3は、図1(b)のドアインナパネル104にドアリンフォース120、インナリンフォース122およびサッシュガイド124を取り付けた状態を示す図である。図4は、図3の車両用フロントドア100のドアリンフォース120を示す図である。図4(a)は、図3のドアリンフォース120を拡大して示す図である。図4(b)は、図4(a)のB矢視図である。図5は、図3の車両用フロントドア100のA-A断面図である。
【0032】
図3に示すように、ドアリンフォース120は、ドアインナパネル104の開口前端部116と本体部114とを跨ぐように、すなわち図中点線で示すベルトライン108を跨いでドアインナパネル104に接合されている。図4に示すように、ドアリンフォース120は、車両前後に離間した前側ビード130および後側ビード132と、連結部134と、後方延長部136と、下方延長部138と、接合座面140とを有する。
【0033】
図3に示すように、前側ビード130および後側ビード132はいずれも、開口前端部116と本体部114とを跨いで車両上下方向に延びている。そして図5に示すように、前側ビード130および後側ビード132は、ドアインナパネル104とともに閉断面142、144をそれぞれ形成し、剛性が高められている。
【0034】
このため、車両用フロントドア100によれば、ドア開閉時にドアミラー110(図1参照)が揺れることでベルトライン108付近が受ける車幅方向の衝撃は、ドアリンフォース120に伝達される。ドアリンフォース120は、伝達された衝撃を前側ビード130と後側ビード132で受け止め、さらに開口前端部116から本体部114まで分散させ吸収できる。したがって車両用フロントドア100によれば、ベルトライン108付近の剛性を高め、ドア開閉時などにベルトライン108付近の変形を抑制できる。
【0035】
ドアリンフォース120の連結部134は、車両前後方向に延びて前側ビード130と後側ビード132とをつないでいる。このように、ドアリンフォース120は、前側ビード130と後側ビード132とが連結部134によって車両前後にわたって連結されているので、剛性を高くできる。
【0036】
ドアリンフォース120の後方延長部136は、後側ビード132からベルトライン108に沿って後方に延びる部位である。図3に示すようにインナリンフォース122は、ベルトライン108に沿って延びていて、後方延長部136に車両後方から接合(ここではスポット溶接)されている。すなわちインナリンフォース122の前端部146は、後方延長部136に車外側から重なって接合されている。このようにすれば、ドアリンフォース120が受けた衝撃は、後方延長部130を介してインナリンフォース122にまで伝達される。このため、ドアリンフォース120の剛性をより高めることができる。
【0037】
ドアリンフォース120の下方延長部138は、後側ビード132から下方に延びる部位である。サッシュガイド124は、上下方向に延びドアガラスの昇降を案内する部材であり、下方延長部138に下方から接合されている。すなわちサッシュガイド124の上端部148は、下方延長部138に車外側から重なって接合されている。このようにすれば、サッシュガイド124は、下方延長部138を介して剛性の高いドアリンフォース120に接合されるため、剛性が高くなり変形し難くなり、ドアガラスの昇降を安定して案内できる。
【0038】
なおドアリンフォース120は、図4(a)に示す複数(ここでは4つ)の接合点150a~150dにより、ドアインナパネル104にスポット溶接されている。またドアリンフォース120は、接合点150aでインナリンフォース122の前端部146にも接合されている。さらに接合点150a~150dは、ドアリンフォース120の四隅に設定されている。このようにすれば、ドアリンフォース120の面全体の剛性が向上するため、ドア開閉時にドアインナパネル104の開口前端部116が揺れて亀裂が発生するなどの事態を回避できる。
【0039】
ドアリンフォース120の前側ビード130と後側ビード132は、これら接合点150a~150dの内側に位置している。そして接合座面140は、前側ビード130と後側ビード132との間に位置し、さらには連結部134によって囲まれている。また接合座面140は、図5に示すようにドアインナパネル104に接合されていて、剛性が高められている。さらにドアリンフォース120の接合座面140には、ミラーリンフォース126が接合されている(図6参照)。
【0040】
図6は、図3の車両用フロントドア100にミラーリンフォース126を取り付けた状態を示す図である。ミラーリンフォース126は、ドアミラー110を支持する部材であって、ベース面152と脚部154とを含む。ベース面152は、ドアミラー110を支持する。脚部154は、ベース面152の上縁156からドアリンフォース120の接合座面140に向かって屈曲し、さらに接合座面140に接合されている。なおベース面152の上縁156は、脚部154の根元となる。
【0041】
車両用フロントドア100では、ドアミラー110を支持するミラーリンフォース126が脚部154を介して、剛性の高いドアリンフォース120の接合座面140に接合されている。このようにして、ミラーリンフォース126の剛性を高めることができる。したがって、ドアミラー110の取付け時、ドア開閉時や走行時にドアミラー110が揺れた場合であっても、ミラーリンフォース126は、ドアミラー110を十分に支持でき、ベルトライン108付近の変形も抑制できる。さらにミラーリンフォース126の車外側には、アウタリンフォース128が配置されている(図7参照)。
【0042】
図7は、図6の車両用フロントドア100にアウタリンフォース128を取り付けた状態を示す図である。すなわち図7は、図2の車両用フロントドア100の一部を拡大して示す図である。
【0043】
アウタリンフォース128は、図2に示すようにベルトライン108に沿って延び、ミラーリンフォース126の車外側に配置されている。またアウタリンフォース128は、ドアインナパネル104の前縁158に車両後方から接合され、さらにドアインナパネル104の後縁160に車両前方から接合されている。なお前縁158および後縁160は、上下方向に延びる溝形状となっていて剛性が高められている。
【0044】
すなわちアウタリンフォース128は、前端部162および後端部164がそれぞれドアインナパネル104の剛性の高い前縁158および後縁160にそれぞれ接合されている。さらにアウタリンフォース128は、図7に示す支持座面166を有する。支持座面166は、側面視でミラーリンフォース126のベース面152に重なっていて、ミラーリンフォース126とともにドアミラー100を支持する。
【0045】
さらに支持座面166の上端部168は、剛性の高いミラーリンフォース126のベース面152の上縁156すなわち脚部154の根元に接合されている。このため、アウタリンフォース128の支持座面166は、剛性が高くなり衝撃を受けても変形し難くなる。したがって車両用フロントドア100では、剛性の高いアウタリンフォース128およびミラーリンフォース126によってドアミラーを十分に支持でき、ベルトライン108付近の変形も抑制できる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両用フロントドアに利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100…車両用フロントドア、102…ドアアウタパネル、104…ドアインナパネル、106…ドアガラス用開口、108…ベルトライン、110…ドアミラー、112…窓枠部、114…本体部、116…開口前端部、118…ドアガラス用開口の前端、120…ドアリンフォース、122…インナリンフォース、124…サッシュガイド、126…ミラーリンフォース、128…アウタリンフォース、130…前側ビード、132…後側ビード、134…連結部、136…後方延長部、138…下方延長部、140…接合座面、142、144…閉断面、146…インナリンフォースの前端部、148…サッシュガイドの上端部、150a、150b、150c、150d…接合点、152…ベース面、154…脚部、156…ベース面の上縁、158…ドアインナパネルの前縁、160…ドアインナパネルの後縁、162…アウタリンフォースの前端部、164…アウタリンフォースの後端部、166…支持座面、168…支持座面の上端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7