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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】チェーン設備監視システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20221129BHJP
   B65G 17/38 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
B65G17/38 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018162663
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033164
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】柴山 智成
(72)【発明者】
【氏名】関野 祐司
(72)【発明者】
【氏名】森川 明文
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/065203(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/179903(WO,A1)
【文献】特開平05-056629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/02
B65G 17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクを繋げた無端状チェーン及びその駆動装置を含むチェーン設備の複数と、
前記チェーン設備ごとに設けた設備情報取得手段と、
複数の前記設備情報取得手段にネットワークを介して繋がるサーバ装置と、
を備え、
前記設備情報取得手段は、
前記チェーン設備から、
前記チェーン設備それぞれを稼働させる稼働条件に関する情報を含む設備稼働情報と、
前記リンクに固有の情報であるリンク固有情報と、
前記無端状チェーンが一巡する、前記チェーン設備それぞれに固有の期間であるチェーン循環期間、及び/又は前記チェーン循環期間より長い期間である所定測定期間において、前記無端状チェーンにおける全ての前記リンクそれぞれの状態を示す情報であるリンク状態情報と、
を取得し、
前記サーバ装置は、記憶手段、交換判定手段、及び交換判定予測手段を有し、
前記記憶手段は、
前記チェーン設備ごとの前記設備稼働情報、
前記リンクごとの前記リンク固有情報、及び
前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態情報を記憶し、
前記交換判定手段は、
前記記憶手段に記憶された、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、前記リンクを交換すべきか否かを判定し、
前記交換判定予測手段は、
前記記憶手段に記憶された、前記設備稼働情報、前記リンク固有情報、及び前記リンク状態情報から、前記チェーン設備それぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段により前記リンクを交換すべきと判定され得る時期を予測し、
前記記憶手段は、さらに、
前記交換判定手段により交換すべきと判定された前記リンクにおける当該チェーン設備での最初の使用から前記交換判定手段により交換すべきと判定されるまでの期間であるリンク寿命期間と、
当該リンク寿命期間における当該リンクを含む当該チェーン設備の前記設備稼働情報、及び当該リンクの前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態情報に関するリンク経過情報とを記憶し、
前記交換判定予測手段は、さらに、
前記記憶手段に記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報から、前記稼働条件に応じた修正値を決定し、
前記将来稼働条件に対応する前記修正値に係る情報である修正値情報と、前記記憶手段に記憶された、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、前記チェーン設備それぞれにおいて、当該将来稼働条件に応じた前記リンクを交換すべきと判定される時期を予測する
チェーン設備監視システム。
【請求項2】
前記交換判定予測手段は、
前記記憶手段に新たに前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報が記憶されると、
当該新たに記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報と、以前までに記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報とから、前記稼働条件に応じた前記修正値を新たに決定する、
請求項に記載のチェーン設備監視システム。
【請求項3】
前記設備稼働情報は、前記チェーン設備それぞれを稼働している環境である稼働環境に関する情報をさらに含む、
請求項1又は2に記載のチェーン設備監視システム。
【請求項4】
前記設備稼働情報は、前記無端状チェーンの長さ、前記チェーン設備の1日の稼働時間、及び搬送物の重量を稼働条件として含む
請求項1~の何れか1項に記載のチェーン設備監視システム。
【請求項5】
前記無端状チェーンは、
垂直方向に貫通するピン孔を前後端部に有する長円環状部材又は棒状部材からなるセンターリンクと、
垂直方向に貫通するピン孔を前後端部に有する板状部材からなる上下一対のサイドリンクと、
前記センターリンク及び前記上下一対のサイドリンクを連結する連結ピンと、
からなり、
前記リンク状態情報は、先行する前記センターリンクの前端部と、これに続く前記センターリンクの前端部との距離に関する情報である、
請求項1~の何れか1項に記載のチェーン設備監視システム。
【請求項6】
前記サーバ装置は、
前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間において取得された前記リンク状態情報と、その一つ前の前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間において取得された前記リンク状態情報との差分を示す情報であるリンク状態差分情報を算出する差分情報算出手段をさらに備え、
前記交換判定手段は、前記リンク固有情報及び前記リンク状態差分情報から、前記リンクを交換すべきか否かを判定し、
前記記憶手段は、前記リンクごとに前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態差分情報をさらに記憶し、
前記交換判定予測手段は、前記リンク状態情報を前記リンク状態差分情報に替えて、前記チェーン設備それぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段により前記リンクを交換すべきと判定され得る時期を予測する、
請求項1~の何れか1項に記載のチェーン設備監視システム。
【請求項7】
前記リンク状態情報は、前記リンクの間隔に係る情報であるリンク間隔情報を含み、
前記リンク状態差分情報は、前記リンクそれぞれの、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとに測定される前記リンクの間隔の差分の情報である、
請求項に記載のチェーン設備監視システム。
【請求項8】
前記チェーン設備は、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとに算出される前記リンク状態差分情報の変化率が所定値以上となったときに、前記無端状チェーンに給油する自動給油手段をさらに備える、
請求項又はに記載のチェーン設備監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリンクを繋げた無端状チェーン及びその駆動装置を含むチェーン設備を監視する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場における製造ライン等において、複数のリンクを繋げた無端状チェーン及びその駆動装置を含むチェーン設備が広く用いられている。
このようなチェーン設備では、駆動スプロケットやホイールターン等に架け渡された無端状チェーンが循環しており、張力が作用した状態で無端状チェーンが繰り返し屈曲するため、無端状チェーンは次第に摩耗する。
【0003】
無端状チェーンの摩耗が進むと、チェーン設備の運転に支障が生じたり、無端状チェーンが破断して運転が停止したりすることになるので、無端状チェーンの摩耗状態を監視する必要がある。
無端状チェーンの摩耗状態の監視は、従来の多くは、設備メーカが測定装置をチェーン設備へ定期的に持ち込んで無端状チェーンの摩耗による伸びを測定しており、測定の準備や段取りに時間が掛かるため、非効率であった。
一方、無端状チェーンの摩耗による伸びを自動測定することにより、無端状チェーンの摩耗状態の監視を行うものもある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1では、光源5から無端状チェーンCに向けて光LHを発し、光LHを受けた光学式読取器Vが各リンク間の相互間隔を読み取り、コンピュータ4が光学式読取器Vから出力されたデータ信号を処理して2つのセンターリンク間の隙間(リンク隙間)の長さを算出する。
そして、コンピュータ4は、リンク隙間の長さが危険長以上伸びた場合には「危険リンク」と判定し、リンク隙間の長さが危険長未満で注意長以上伸びた場合には「注意リンク」と判定し、リンク隙間の長さが注意長未満である場合には「安全リンク」と判定し、それらのリンク番号をディスプレイ7、プリンタ9等に出力表示する。
【0005】
特許文献2における第2発明の方法では、1個の非接触式レーザー変位計3により、無端状チェーン2の上面までの離間距離を連続的に計測し、演算手段であるCPU11が非接触式レーザー変位計3による計測時間と無端状チェーン2の移動速度から各リンクチェーン間の摩耗伸び量を演算する。
そして、CPU11は、求められた実際の摩耗伸び量が予め定めた閾値を超える場合、例えば警報を発する。
【0006】
特許文献1及び2のような無端状チェーンの摩耗による伸びを自動測定して行う監視は、各チェーン設備で個別に行っているのが現状である。
他方、多くの箇所に設置された機械設備や産業用装置の状態を把握してメンテナンス等を行うものがある(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0007】
特許文献3の機械設備の管理システムAは、統括管理センタ1、プラント拠点21,22,…、及びユーザPC3等を備える。
管理システムAは、各プラント拠点21,22,…に設置されている圧縮機の時々刻々の稼働情報を、ネットワークN1を介して統括管理センタ1へ送信し、統括管理センタ1の稼動情報記憶手段104に、圧縮機の識別情報と対応付けて格納し、統括管理センタ1の情報処理手段109が、稼動情報記憶手段104から読み出される稼動情報に基づいて、所定期間における圧縮機の運転傾向を解析する。
【0008】
例えば、情報処理手段109は、所定期間における圧縮機の運転傾向として、無負荷運転の占める割合が所定値以上であるか否かを判定し、無負荷運転の占める割合が所定値以上である場合、無負荷運転の占める割合を前記所定値よりも小さくする設定値を前記稼動情報の解析に基づいて決定し、ネットワークN2を介して圧縮機に対応するユーザのコンピュータPC3に送信する。設定値を受信したユーザが圧縮機の設定値を適切な値に変更することにより、圧縮機の運転効率を高めることができる。
【0009】
特許文献4のメンテナンス支援システム1は、工業炉又は工業用ボイラ等である装置30に付随して設けたデータ収集モジュール10と部品寿命管理サーバ20とをネットワームNを介して接続したものである。
データ収集モジュール10は、装置30から得られる制御データCを用いて、装置30で用いられている部品の使用状況を示すデータを生成する生成部12と、生成部12で生成されたデータをネットワークNに送信する送信部13とを有する。
部品寿命管理サーバ20は、装置30で用いられている部品の交換又は点検が必要であるか否かを規定する閾値を格納するデータベース22と、ネットワークNを介して送信されてくるデータ収集モジュール10からのデータとデータベース22に格納された閾値とを比較して装置30のメンテナンスを行う必要があるか否かを判定する判定部23とを有する。
【0010】
データ収集モジュール10により、装置30で用いられている部品の使用状況を示すデータを生成してネットワークNに送信し、部品寿命管理サーバ20により、ネットワークNを介して送信されてくるデータと部品の交換又は点検が必要であるか否かを規定する閾値とを比較して装置30のメンテナンスを行う必要があるか否かを判定するようにしているので、メンテナンス支援システム1を低コストで実現できるとともに、各種装置のメンテナンスが適切に行われるよう支援できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】実開平01-014722号公報
【文献】特開平11-325829号公報
【文献】特許第5887217号公報
【文献】特許第6123361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
無端状チェーンの摩耗による伸びを測定して摩耗状態を監視する従来の方法では、各チェーン設備で個別に行った測定結果を用いて個別に判定を行っているので、過去の測定データとの比較や他のチェーン設備との比較検証に多大な時間を要している。
そこで本願の発明者らは、複数の拠点に設置したチェーン設備における無端状チェーンの摩耗状態の監視を各チェーン設備で個別に行うのではなく、複数の拠点に設置したチェーン設備を特許文献3及び4のようにネットワークを介して繋ぎながら、前記無端状チェーンの摩耗状態の監視を効率的に行うことを考えた。
【0013】
本発明は、複数の拠点に設置したチェーン設備の監視を効率的に行うことができるチェーン設備監視システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の発明者らは、複数の拠点に設置したチェーン設備の情報をサーバ装置に集約し、サーバ装置側で無端状チェーンのリンクを交換すべきが否かを判定するとともに、サーバ装置側で前記リンクの交換時期を予測できるようにすることを想到し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕複数のリンクを繋げた無端状チェーン及びその駆動装置を含むチェーン設備の複数と、
前記チェーン設備ごとに設けた設備情報取得手段と、
複数の前記設備情報取得手段にネットワークを介して繋がるサーバ装置と、
を備え、
前記設備情報取得手段は、
前記チェーン設備から、
前記チェーン設備それぞれを稼働させる稼働条件に関する情報を含む設備稼働情報と、
前記リンクに固有の情報であるリンク固有情報と、
前記無端状チェーンが一巡する、前記チェーン設備それぞれに固有の期間であるチェーン循環期間、及び/又は前記チェーン循環期間より長い期間である所定測定期間において、前記無端状チェーンにおける全ての前記リンクそれぞれの状態を示す情報であるリンク状態情報と、
を取得し、
前記サーバ装置は、記憶手段、交換判定手段、及び交換判定予測手段を有し、
前記記憶手段は、
前記チェーン設備ごとの前記設備稼働情報、
前記リンクごとの前記リンク固有情報、及び
前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態情報を記憶し、
前記交換判定手段は、
前記記憶手段に記憶された、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、前記リンクを交換すべきか否かを判定し、
前記交換判定予測手段は、
前記記憶手段に記憶された、前記設備稼働情報、前記リンク固有情報、及び前記リンク状態情報から、前記チェーン設備それぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段により前記リンクを交換すべきと判定され得る時期を予測し、
前記記憶手段は、さらに、
前記交換判定手段により交換すべきと判定された前記リンクにおける当該チェーン設備での最初の使用から前記交換判定手段により交換すべきと判定されるまでの期間であるリンク寿命期間と、
当該リンク寿命期間における当該リンクを含む当該チェーン設備の前記設備稼働情報、及び当該リンクの前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態情報に関するリンク経過情報とを記憶し、
前記交換判定予測手段は、さらに、
前記記憶手段に記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報から、前記稼働条件に応じた修正値を決定し、
前記将来稼働条件に対応する前記修正値に係る情報である修正値情報と、前記記憶手段に記憶された、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、前記チェーン設備それぞれにおいて、当該将来稼働条件に応じた前記リンクを交換すべきと判定される時期を予測する
チェーン設備監視システム。
【0017】
〕前記交換判定予測手段は、
前記記憶手段に新たに前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報が記憶されると、
当該新たに記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報と、以前までに記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報とから、前記稼働条件に応じた前記修正値を新たに決定する、
前記〔〕に記載のチェーン設備監視システム。
【0018】
〕前記設備稼働情報は、前記チェーン設備それぞれを稼働している環境である稼働環境に関する情報をさらに含む、
前記〔1〕又は前記〔記載のチェーン設備監視システム。
【0019】
〕前記設備稼働情報は、前記無端状チェーンの長さ、前記チェーン設備の1日の稼働時間、及び搬送物の重量を稼働条件として含む
前記〔1〕~前記〔〕の何れかに記載のチェーン設備監視システム。
【0020】
〕前記無端状チェーンは、
垂直方向に貫通するピン孔を前後端部に有する長円環状部材又は棒状部材からなるセンターリンクと、
垂直方向に貫通するピン孔を前後端部に有する板状部材からなる上下一対のサイドリンクと、
前記センターリンク及び前記上下一対のサイドリンクを連結する連結ピンと、
からなり、
前記リンク状態情報は、先行する前記センターリンクの前端部と、これに続く前記センターリンクの前端部との距離に関する情報である、
前記〔1〕~前記〔〕の何れかに記載のチェーン設備監視システム。
【0021】
〕前記サーバ装置は、
前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間において取得された前記リンク状態情報と、その一つ前の前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間において取得された前記リンク状態情報との差分を示す情報であるリンク状態差分情報を算出する差分情報算出手段をさらに備え、
前記交換判定手段は、前記リンク固有情報及び前記リンク状態差分情報から、前記リンクを交換すべきか否かを判定し、
前記記憶手段は、前記リンクごとに前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態差分情報をさらに記憶し、
前記交換判定予測手段は、前記リンク状態情報を前記リンク状態差分情報に替えて、前記チェーン設備それぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段により前記リンクを交換すべきと判定され得る時期を予測する、
前記〔1〕~前記〔〕の何れかに記載のチェーン設備監視システム。
【0022】
〕前記リンク状態情報は、前記リンクの間隔に係る情報であるリンク間隔情報を含み、
前記リンク状態差分情報は、前記リンクそれぞれの、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとに測定される前記リンクの間隔の差分の情報である、
前記〔〕に記載のチェーン設備監視システム。
【0023】
〕前記チェーン設備は、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとに算出される前記リンク状態差分情報の変化率が所定値以上となったときに、前記無端状チェーンに給油する自動給油手段をさらに備える、
前記〔〕又は前記〔〕に記載のチェーン設備監視システム。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るチェーン設備監視システムによれば、主に以下のような作用効果を奏する。
(1)複数のリンクを繋げた無端状チェーン及びその駆動装置を含むチェーン設備の複数において、チェーン設備ごとに設けた設備情報取得手段により、複数のチェーン設備から、設備稼働情報、リンク固有情報、及びリンク状態情報を取得して、それらの情報をサーバ装置に集約する。
(2)サーバ装置の交換判定手段が、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、前記リンクを交換すべきか否かを判定する。
(3)サーバ装置の交換判定予測手段が、前記設備稼働情報、前記リンク固有情報、及び前記リンク状態情報から、複数のチェーン設備それぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段により前記リンクを交換すべきと判定され得る時期を予測する。
(4)複数の設備情報取得手段の測定結果をサーバ装置に集約することにより、ある特定の無端状チェーンだけではなく、複数個所の無端状チェーンの測定結果を合わせて分析できるため、精度の高い予測が可能になる。
(5)前記交換判定手段による判定結果、及び前記交換判定予測手段による予測結果をユーザ装置へ伝達することにより、前記結果をユーザ装置側で活用できるので、複数のチェーン設備の監視を非常に効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係るチェーン設備監視システムのネットワークを示す概略図である。
図2】同チェーン設備監視システムのシステム概要を示すブロック図である。
図3】主な信号及びデータの流れを示す概略図である。
図4】設備情報取得手段であるチェーン摩耗測定装置で測定した無端状チェーンの各リンク番号ごとのリンク長さを示すグラフである。
図5】設備情報取得手段の制御部の動作を示すフローチャートである。
図6】遷移図・予測線図の例を示しており、(a)は現在の使用条件で使い続ける場合の予測線図を、(b)は今後の使用条件に合わせた予測線図を示している。
図7】サーバ装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
図8】同制御部の交換判定予測の動作を示すフローチャートである。
図9】チェーン設備における設備情報取得手段であるチェーン摩耗測定装置の配置例を示す概略平面図である。
図10】無端状チェーンの分解斜視図である。
図11】チェーン摩耗測定装置の斜視図である。
図12】チェーン摩耗測定装置の部分縦断面図である。
図13】チェーン摩耗測定装置のセンサを示す正面斜視図である。
図14】チェーン摩耗測定装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の実施形態において、無端状チェーンの進行方向を前、その反対方向を後とし、前方に向かって左右を定義し、左方から見た図を正面図とする。
【0027】
<チェーン設備監視システム>
図1のネットワークを示す概略図、図2のシステム概要を示すブロック図、並びに図3の主な信号及びデータの流れを示す概略図に示すように、本発明に係る実施形態に係るチェーン設備監視システム1は、複数のチェーン設備2,2,…である、第1チェーン設備、第2チェーン設備、…第nチェーン設備にネットワークNを介して繋がるサーバ装置3と、ネットワークNに繋がるユーザ装置4とを備える。
チェーン設備2は、複数のリンクを繋げた無端状チェーン10及びその駆動装置を含み、チェーン設備2ごとに設備情報取得手段5を設ける。
【0028】
ネットワークNは、例えばインターネットと同じ接続形態のWAN(Wide Area Network)であり、設備情報取得手段5、サーバ装置3、及びユーザ装置4は、独立してネットワークNに接続される。
ユーザ装置4は、各チェーン設備2ごとにあってもよく、サーバ装置3の近くにあってもよく、管理センタ等の別の場所にあってもよい。
【0029】
サーバ装置3は、送受信部3A、制御部3B、及び記憶手段3Cを備え、ユーザ装置4は、送受信部4A、制御部4B、及び表示手段4Cを備え、設備情報取得手段5は、送受信部5A、制御部5B、及び記憶手段5Cを備え、図3のように信号及びデータを送受信する。
設備情報取得手段5は、取得したデータの解析は行わず、取得したデータをサーバ装置3へ送信する。
【0030】
サーバ装置3は、例えば既存のクラウドサービスを使用しており、設備情報取得手段5,5,…から複数のチェーン設備2,2,…で集められたデータを取得する。それにより、複数のチェーン設備2,2,…の情報をサーバ装置3に集約してデータを解析し、サーバ装置3側で無端状チェーン10のリンクを交換すべきか否かを判定するとともに、前記リンクの交換時期を予測する。
サーバ装置3は、ユーザ装置4に表示させるためのデータ加工(グラフ化処理等)も行い、その結果を、ユーザ装置4からの任意の要求に応じて、ユーザ装置4へ送信する。
サーバ装置3は、データ解析により、無端状チェーン10のリンクを交換すべき判定した場合、ユーザ装置4へ「リンク交換指示」を送信する。
【0031】
ユーザ装置4は、サーバ装置3で収集されたデータ、及びサーバ装置3で生成されたグラフ等を表示する。
ユーザ装置4は、サーバ装置3から「リンク交換指示」を受信した場合、その無端状チェーン10の交換すべきリンク番号等を表示する。
【0032】
<設備情報取得手段>
設備情報取得手段5は、チェーン設備2から、チェーン設備2それぞれを稼働させる稼働条件に関する情報を含む設備稼働情報、及び無端状チェーン10のリンクに固有の情報であるリンク固有情報を取得する。
ここで、前記稼動条件は、例えば、チェーン設備2の1日の稼働時間、搬送物の重量、無端状チェーン10の循環経路における屈曲部の数及び曲率半径、搬送速度等であり、前記リンク固有情報は、リンクの型番、及びリンク番号ごとの初期リンク長さ等である。
前記設備稼働情報は、チェーン設備2それぞれを稼働している環境である、温度及び湿度等の稼働環境に関する情報をさらに含むのが好ましい実施態様である。
【0033】
また、設備情報取得手段5は、チェーン設備2から、無端状チェーン10が一巡する、チェーン設備2それぞれに固有の期間であるチェーン循環期間、及び/又は前記チェーン循環期間より長い期間である所定測定期間において、無端状チェーン10における全てのリンクそれぞれの状態を示す情報であるリンク状態情報を取得する。
ここで、前記チェーン循環期間は、無端状チェーン10が循環経路を一周する時間であり、前記所定測定期間は、無端状チェーン10が循環経路を一周する時間である前記チェーン循環期間より長い期間であればよく、例えば、1時間、1日、1週間などの時間の単位としてもよく、無端状チェーン10が循環経路を所定数周回する時間としてもよい。
また、前記リンク状態情報は、リンク長さ(例えば、センターリンクの測定基準位置から後続のセンターリンクの測定基準位置までの距離)等であるリンクの状態に関する情報である。
【0034】
(設備情報取得手段による測定データの例)
図4は設備情報取得手段5である、詳細は後述するチェーン摩耗測定装置で測定した無端状チェーン10の各リンク番号ごとのリンク長さを示すグラフの一例である。
無端状チェーン10の個々のリンク長さを定期的に測定することにより、特に摩耗が進んだリンクの特定や、突発的に発生するリンクの破断を検知することができる。
【0035】
(設備情報取得手段の制御部の動作)
図5のフローチャートを参照して説明する。
ここでは、設備情報取得手段5によるリンク状態情報の取得が、所定測定期間ごとに実施される場合を例として説明する。
設備情報取得手段5の制御部5Bは、先ず、チェーン設備2の稼働状態を判定し(S11)、稼働中でなければ処理を終える。
【0036】
制御部5Bは、チェーン設備2が稼働中であり、フラグFが1であれば、リンク状態情報の取得中であり、続いて全リンクのリンク状態情報を取得したか否かを判定する(S12~S13)。
制御部5Bは、全リンクのリンク状態情報を取得していなければ、S11に戻る。
制御部5Bは、全リンクのリンク状態情報を取得していれば、全リンクのリンク状態情報を、設備稼働情報及びリンク固有情報とともに、送受信部5Aからサーバ装置3へ送信し(S14)、フラグFを0にして待機状態に戻す(S15)。
【0037】
チェーン設備2が稼働中であり、フラグFが0であれば、待機状態であり、制御部5Bは、続いて時間の経過状態を判定する(S16)。すなわち、制御部5Bは、チェーン設備2ごとに固有のタイマtで所定測定期間T(例えば、1日、1週間など)の経過を判定する(S16)。
制御部5Bは所定測定期間Tが経過したと判定した場合、リンク番号ごとのリンク状態情報、並びに設備稼働情報及びリンク固有情報のチェーン設備2からの取得を開始するとともに(S17)、タイマtをリセットしたうえで計時を開始し(S18)、待機状態を解除し、フラグFを1にしてリンク状態情報の取得中であることを示し(S19)、S11に戻る。
なお、設備情報取得手段5によるリンク状態情報の取得が、前記チェーン循環期間ごとに実施される場合、制御部5Bは、フラグFによる待機状態の管理(S12、S15、S19)や、タイマtによる時間経過の管理(S16、S18)をせず、全リンクのリンク状態情報を取得したか否かを判定すること(S13)によって、全リンクのリンク状態情報を設備稼働情報及びリンク固有情報とともに送受信部5Aからサーバ装置3への送信(S14)や、リンク番号ごとのリンク状態情報、並びに設備稼働情報及びリンク固有情報のチェーン設備2からの取得開始(S17)を実施するようにしてもよい。
【0038】
<サーバ装置>
設備情報取得手段5の送受信部5Aからサーバ装置3の送受信部3Aが受信した、チェーン設備2ごとの前記設備稼働情報、無端状チェーン10のリンク番号ごとの前記リンク固有情報、並びに前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態情報は、サーバ装置3の記憶手段3Cが記憶する。
【0039】
サーバ装置3の制御部3Bは、交換判定手段、及び交換判定予測手段を有する。
前記交換判定手段は、記憶手段3Cに記憶された、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、リンクを交換すべきか否かを判定する。
前記交換判定予測手段は、記憶手段3Cに記憶された、前記設備稼働情報、前記リンク固有情報、及び前記リンク状態情報から、チェーン設備2それぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段によりリンクを交換すべきと判定され得る時期を予測する。
【0040】
サーバ装置3の記憶手段3Cは、前記交換判定手段により交換すべきと判定されたリンクにおける当該チェーン設備2での最初の使用から前記交換判定手段により交換すべきと判定されるまでの期間であるリンク寿命期間と、当該リンク寿命期間における当該リンクを含む当該チェーン設備2の前記設備稼働情報、及び当該リンクの前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態情報に関するリンク経過情報とを記憶するのが好ましい。
そして、前記交換判定予測手段が、記憶手段3Cに記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報から、前記稼働条件に応じた修正値を決定し、前記将来稼働条件に対応する前記修正値に係る情報である修正値情報と、記憶手段3Cに記憶された、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、前記チェーン設備2それぞれにおいて、当該将来稼働条件に応じた前記リンクを交換すべきと判定される時期を予測するのが好ましい実施態様である。
【0041】
また、前記交換判定予測手段は、記憶手段3Cに新たに前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報が記憶されると、当該新たに記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報と、以前までに記憶された、前記リンク寿命期間及び前記リンク経過情報とから、前記稼働条件に応じた前記修正値を新たに決定するのがより好ましい実施態様である。
【0042】
サーバ装置3は、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間において取得された前記リンク状態情報と、その一つ前の前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間において取得された前記リンク状態情報との差分を示す情報であるリンク状態差分情報を算出する差分情報算出手段をさらに備えるのがより好ましい実施態様である。
その場合、前記交換判定手段は、前記リンク固有情報及び前記リンク状態差分情報から、前記リンクを交換すべきか否かを判定し、記憶手段3Cは、前記リンクごとに前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとの前記リンク状態差分情報をさらに記憶し、前記交換判定予測手段は、前記リンク状態情報を前記リンク状態差分情報に替えて、チェーン設備2それぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段により前記リンクを交換すべきと判定され得る時期を予測する。
また、前記リンク状態情報は、前記リンクの間隔に係る情報であるリンク間隔情報を含み、前記リンク状態差分情報は、前記リンクそれぞれの、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとに測定される前記リンクの間隔の差分の情報であるのが、一層好ましい実施態様である。
【0043】
(サーバ装置で作成した遷移図・予測線図の例)
図6(a)は、チェーン設備2における無端状チェーン10の摩耗量の遷移図、及び現在の使用条件で使い続ける場合の予測線図の一例を示しており、図6(b)は、チェーン設備2における無端状チェーン10の摩耗量の遷移図、及び今後の使用条件(例えば、使用条件A及び使用条件B)に合わせた予測線図の一例を示している。
サーバ装置3の制御部3Bの交換判定予測手段により、前記のとおり前記将来稼働条件に応じた摩耗限界に至る時期を予測することができる。
図6(a)及び図6(b)における摩耗量は、例示として、チェーン設備2の無端状チェーン10の初期の長さに対する摩耗量が示されており、サーバ装置3で作成する遷移図・予測線図の各軸のパラメータとしては、後述の通り、例えば、全リンクのリンク単位の測定期間ごとにおける初期のリンク長さに対する摩耗量の平均値や、リンク長さの平均値の遷移図・予測線図であってもよい。
【0044】
(サーバ装置の制御部の動作)
図7のフローチャートを参照してメインルーチンについて説明する。
サーバ装置3の制御部3Bは、チェーン設備2の設備情報取得手段5からの情報を送受信部3Aが受信したか否かを判定し(S1)、設備情報取得手段5からの情報を受信した場合は、当該情報を記憶手段3Cに格納する(S2)。
制御部3Bの交換判定手段は、受信した情報を基にリンクを交換すべきか否かを判定する(S3)。前記交換判定手段は、例えば、リンク長さが所定の長さよりも大きい場合に、リンクを交換すべきであると判定する。
【0045】
前記交換判定手段がリンクを交換すべきと判定した場合、リンクを交換すべき旨の指示を、送受信部3Aからユーザ装置4へ送信する(S4)。
前記交換判定手段がリンクを交換すべきと判定しなかった場合、各チェーン設備2におけるリンク状態情報の遷移図を更新する(S5)。
【0046】
具体的には、遷移図において、リンク状態情報はリンク長さであって、チェーン設備2の無端状チェーン10における全リンクのリンク長さの平均値として、測定期間単位のリンク長さが示される。
実際には、これに限らず、ユーザ装置4のリクエストに応じて様々な遷移図が作成可能であり、例えば、リンク単位の測定期間ごとのリンク長さの遷移や、測定期間ごとの摩耗量遷移なども作成できる。
つまり、「リンク状態情報の遷移図更新」処理(S5)においては、ユーザ装置4のリクエストに応じて適宜変更され得るものであり、ユーザ装置4からリクエストがあった場合だけ遷移図を作成(更新)するというものであってもよい。
次に、制御部3Bは、モデル関数を生成・修正し(S6)、このモデル関数を用いて交換判定予測を行う(S7)。
【0047】
(モデル関数)
モデル関数は、先の「リンク状態情報の遷移図更新」処理(S5)の遷移図に合う形(単位や形式を合わせる)で生成される。
モデル関数は、チェーン設備2の稼働条件(例えば、無端状チェーン10の長さや1日あたりの稼働時間と搬送物の重量)を特定することで、リンクの摩耗限界に達するまでの期間を予測できるものとなる。一方で、定数等は「リンク状態情報の遷移図」によって変わる。このため、モデル関数は、ユーザ装置4のリクエストに応じて適宜調整され得るものとなっている。
【0048】
(機械学習によるモデル関数の修正)
例えば、チェーン設備2の設備情報取得手段5より送信された情報をサーバ装置3が受信するたび、モデル関数の修正を行う。具体的には、ディープニューラルネットワークによる機械学習を用いるのが好ましく、より具体的にはRNN(Recurrent Neural Networks)等の時系列データなどのパターンを認識するように設計されたものが好ましい。この中でも、より長期間の機械学習に好適なLSTM(Long Short Term Memory)による機械学習がさらに好ましい。
【0049】
次に、図8のフローチャートを参照してサブルーチンについて説明する。
サーバ装置3の制御部3Bは、チェーン設備2の設備情報取得手段5からの情報受信により、新たにモデル関数を生成するため、全設備ごとの予測線図も新たに作成する(S71)。
制御部3Bは、チェーン設備2ごとに稼働条件を管理し、予測線図の作成には、将来に適用される稼働条件を用いる(S72)。
制御部3Bは、メインルーチンで更新した「リンク状態情報の遷移図」に合う形(単位や形式を合わせる)で予測線図を作成(更新)する(S73)。
【0050】
<設備情報取得手段の例>
設備情報取得手段5の一例であるチェーン摩耗測定装置20について説明する。
図9の概略平面図に示すチェーン設備2では、駆動装置14のスプロケット15、ホイールターン16,16,…、及びローラーターン17,17,…に無端状チェーン10が掛け渡され、テンショナ18で張力を付与している。無端状チェーン10は、図中矢印の方向へ進行して所定の循環経路Cを循環する。
このようなチェーン設備2では、前記のとおり、張力が作用した状態で無端状チェーン10が繰り返し屈曲するため、無端状チェーン10は次第に摩耗する。
そこで無端状チェーン10の摩耗を測定するために、図9の概略平面図に示すように、無端状チェーン10の循環経路Cの適宜箇所に、設備情報取得手段5であるチェーン摩耗測定装置20を配置する。
【0051】
(無端状チェーン)
図10の分解斜視図に示すように、無端状チェーン10は、例えば、センターリンク11、上下一対のサイドリンク12,12、及び連結ピン13,13により構成される。
センターリンク11は、垂直方向に貫通するピン孔11Aを前後端部に有する長円環状部材からなる。センターリンク11は、垂直方向に貫通するピン孔11Aを前後端部に有する棒状部材であってもよい。
サイドリンク12は、垂直方向に貫通するピン孔12Aを前後端部に有する板状部材からなる。
一方のサイドリンク12のピン孔12A、センターリンク11のピン孔11A、他方のサイドリンク12のピン孔12Aに、連結ピン13を挿通して90°回動することにより、センターリンク11と上下一対のサイドリンク12,12とを連結する。
【0052】
図11の斜視図、及び図14の正面図に示すように、無端状チェーン10にはトロリ8,8,…が取り付けられており、トロリ8の左右の走行ローラー9,9が、ヨーク6に支持されたガイドレール7,7により支持される。
図11の斜視図、及び図12の部分縦断面図に示すように、ガイドレール7,7は、互いに左右方向に間隔をおいて開口同士を対向させてなる左右一対の断面略コ字状の溝形鋼であるが、I形鋼からなる一つのガイドレールとして、その左右に走行ローラーを係合させるようにしてもよい。
【0053】
(チェーン摩耗測定装置の構成)
図11の斜視図、図12の部分縦断面図、及び図14の正面図に示すように、チェーン摩耗測定装置20は、支持部材24により支持され、無端状チェーン10の循環経路Cの適宜箇所に配置されており、測定開始位置検出手段である反射型光電センサ21、基準位置検出手段である透過型光電センサ22、及び距離測定手段であるレーザー式CCD測長センサ23、並びにこれらのセンサのアンプ等を含むセンサコントローラ25を備える。
【0054】
反射型光電センサ21は、検出物体に光L1(図13参照)を投射し、反射光を受光することにより検出物体を検出する。
透過型光電センサ22は、対向配置された投光器22A及び受光器22Bを備え、投光器22Aから受光器22Bへ光L2(図13参照)を投射し、投光器22A及び受光器22B間を通過する物体による光L2の遮断を検出する。
レーザー式CCD測長センサ23は、投光器23A及び受光器23Bを備え、投光器23Aから受光器23Bへ、測定幅Wの光L3(図13参照)を投射し、所定のタイミングで投光器23A及び受光器23B間を通過する物体が光L3を遮った際における、前記物体の進行方向の位置を検出する。
【0055】
図13の正面斜視図、及び図14の正面図に示すように、測定開始位置検出手段である反射型光電センサ21は第1所定位置P1に配置され、基準位置検出手段である透過型光電センサ22は、第1所定位置P1よりも下流側の第2所定位置P2に配置される。
距離測定手段であるレーザー式CCD測長センサ23は、その測定幅Wの中央が、例えば、無端状チェーン10をチェーン設備2に最初に設置した際における、初期リンク長さ(センターリンク11の測定基準位置RPから後続のセンターリンク11の測定基準位置RPまでの距離)D0(図14参照)分、第2所定位置P2よりも上流側に位置するように配置する。
第2所定位置P2に対して所定距離D0を隔てたレーザー式CCD測長センサ23の配置は、その距離を定めた基準プレート等により予め位置決めしておく。
【0056】
(チェーン摩耗測定装置の動作)
無端状チェーン10には、測定開始位置を定める反射板19が取り付けてある。測定開始位置検出手段である反射型光電センサ21から光L1を投射し、反射板19からの反射光を受光して反射板19を検出した際のセンターリンク11のリンク番号を1とする。
基準位置検出手段である透過型光電センサ22から光L2を投射し、センターリンク11の前端部である測定基準位置RPにより光L2の遮断を検出したタイミングを、距離測定手段であるレーザー式CCD測長センサ23のトリガーとする。
図13に示すように、前記タイミングで、レーザー式CCD測長センサ23が、後続のセンターリンク11の前端部である測定基準位置RPが光L3を遮った際における、後続のセンターリンク11の測定基準位置RPの位置を検出することにより、測定基準位置RPから後続の測定基準位置RPまでの距離D、すなわちリンク長さを、リンク番号1,2,3,…と、リンク番号ごとに順次測定することができる。
その後、反射型光電センサ21により無端状チェーン10の反射板19を検出した際に、無端状チェーン10の全てのリンクのリンク長さの測定が完了しているので、測定を終了する。
【0057】
このような設備情報取得手段5であるチェーン摩耗測定装置20により、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとに前記リンク間隔情報である前記リンク長さを例えば定期的に測定してサーバ装置3へ送信する。
サーバ装置3では、前記リンク状態差分情報として、無端状チェーン10の全てのリンクについて、リンク番号1,2,3,…ごとの差分を容易に得ることができる。それにより、サーバ装置3で、特に摩耗が進んだリンクの特定や、突発的に発生するリンクの破断を検知することができる。
【0058】
また、チェーン設備2において、前記チェーン循環期間、及び/又は前記所定測定期間ごとに算出される前記リンク状態差分情報の変化率が所定値以上となったときに、無端状チェーン10に給油する自動給油手段を備えるのが好ましい実施態様である。
無端状チェーン10の摩耗は、リンク同士の摺動によって生じるので、摺動部の摩擦係数が大きくなると無端状チェーン10の摩耗量も大きくなる。それにより、前記リンク状態差分情報の変化率が大きくなる。
摺動部の摩擦係数は、チェーンの給油状態に大きく左右されるため、例えば、前記リンク状態差分情報の変化率が所定値以上となった際に、前記自動給油手段により無端状チェーン10に給油することにより、前記リンク状態差分情報の変化率を略一定に保つことができる。
【0059】
以上のような本発明の実施の形態に係るチェーン設備監視システム1は、複数のリンクを繋げた無端状チェーン10及びその駆動装置14を含む、チェーン設備の複数2,2,…にネットワークNを介して繋がるサーバ装置3と、ネットワークNに繋がるユーザ装置4とを備え、チェーン設備2ごとに設けた設備情報取得手段5により、複数のチェーン設備2,2,…から、設備稼働情報、リンク固有情報、及びリンク状態情報を取得して、それらの情報をサーバ装置3に集約する。
【0060】
そして、サーバ装置3の交換判定手段が、前記リンク固有情報及び前記リンク状態情報から、前記リンクを交換すべきか否かを判定する。
また、サーバ装置3の交換判定予測手段が、前記設備稼働情報、前記リンク固有情報、及び前記リンク状態情報から、複数のチェーン設備2,2,…のそれぞれにおいて、将来に適用が予想される稼働条件である将来稼働条件に応じた、前記交換判定手段により前記リンクを交換すべきと判定され得る時期を予測する。
その上、複数の設備情報取得手段5,5,…の測定結果をサーバ装置3に集約することにより、ある特定の無端状チェーン10だけではなく、複数個所の無端状チェーン10,10,…の測定結果を合わせて分析できるため、精度の高い予測が可能になる。
前記交換判定手段による判定結果、及び前記交換判定予測手段による予測結果をユーザ装置4へ伝達することにより、前記結果をユーザ装置4側で活用できるので、複数のチェーン設備2,2,…の監視を非常に効率的に行うことができる。
【0061】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 チェーン設備監視システム
2 チェーン設備
3 サーバ装置
3A 送受信部
3B 制御部
3C 記憶手段
4 ユーザ装置
4A 送受信部
4B 制御部
4C 表示手段
5 設備情報取得手段
5A 送受信部
5B 制御部
5C 記憶手段
6 ヨーク
7 ガイドレール
8 トロリ
9 走行ローラー
10 無端状チェーン
11 センターリンク
11A ピン孔
12 サイドリンク
12A ピン孔
13 連結ピン
14 駆動装置
15 駆動スプロケット
16 ホイールターン
17 ローラーターン
18 テンショナ
19 反射板
20 チェーン摩耗測定装置
21 反射型光電センサ(測定開始位置検出手段)
22 透過型光電センサ(基準位置検出手段)
22A 投光器
22B 受光器
23 レーザー式CCD測長センサ(距離測定手段)
23A 投光器
23B 受光器
24 支持部材
25 センサコントローラ
C 循環経路
D0 基準長さ
D 測定基準位置から後続の測定基準位置までの距離
L1,L2,L3 光
N ネットワーク
P1 第1所定位置
P2 第2所定位置
RP 測定基準位置
W 測定幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14