(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ボイラの化学洗浄方法
(51)【国際特許分類】
F22B 37/52 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
F22B37/52 B
(21)【出願番号】P 2018166127
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2017208291
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】森井 隼
(72)【発明者】
【氏名】田附 匡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和香子
(72)【発明者】
【氏名】豆成 吉高
(72)【発明者】
【氏名】財津 昭則
(72)【発明者】
【氏名】清滝 一宏
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230150(JP,A)
【文献】特開昭60-002900(JP,A)
【文献】特開2013-148234(JP,A)
【文献】特開2016-017659(JP,A)
【文献】特開昭60-223998(JP,A)
【文献】実開平04-003286(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管によって給水が導入される節炭器と、
該節炭器からの水が導入される壁管を有し、該壁管の一部がノーズ壁管もしくは側面視形状がノーズ形となるように曲成されており、火炉内方へ張り出している壁管である火炉と、
該壁管が連なる汽水分離器と、
汽水分離器からの蒸気を過熱する過熱器と、
汽水分離器からの水を受け入れるドレンタンクと、
該ドレンタンク内の水を前記給水管に循環させるポンプ及び配管と
を有するボイラを化学洗浄する方法であって、
該汽水分離器、ドレンタンク、節炭器及び壁管に洗浄水循環用の仮設配管を設け、該仮設配管に循環ポンプを設けて洗浄水を循環させるボイラの化学洗浄方法において、
該循環ポンプよりも下流側の仮設配管をノーズ壁管入口管寄せに連通させる第1追加仮設配管と、
該循環ポンプよりも上流側の仮設配管をノーズ壁管出口管寄せに連通させる第2追加仮設配管をそれぞれ設け、循環ポンプからの洗浄水の一部を該第1及び第2の追加仮設配管を介して該ノーズ壁管に循環させることを特徴とするボイラの化学洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1追加仮設配管の下流側は、
2本以上に分岐しており、ノーズ壁管入口壁管の長手方向の中央部と両端側との少なくとも
2箇所にそれぞれ連通することを特徴とするボイラの化学洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第2追加仮設配管の上流部は、
2本以上に分岐しており、ノーズ壁管出口壁管の長手方向の中央部と両端側との少なくとも
2箇所にそれぞれ連通することを特徴とするボイラの化学洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラの化学洗浄方法に係り、特に並列された壁管を満遍なく化学洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電ボイラの蒸気系の概略的な構成を
図3に示す。バーナ151により火炉152で燃料を燃焼させることにより発生した蒸気は、蒸気ドラム153、飽和蒸気管154、過熱器155、主蒸気管156、主蒸気止弁156aを通って高圧タービン157に供給される。そして、高圧タービン157で仕事をした蒸気は、低温再熱蒸気管158を通って再熱器159に送られて加熱され、高温再熱蒸気管160を通って中圧タービン161及び低圧タービン162に供給されて仕事を行う。また、低圧タービン162で仕事をした蒸気は復水器163で復水された後、脱気管164、ボイラ給水ポンプ165、節炭器166を通って再び火炉152に戻される。
【0003】
なお、主蒸気管156にはドレン弁を有したドレン管156bが接続されている。
【0004】
火炉壁管上部の出口側にノーズ壁管105が設けられている。ノーズ壁管105は、
図4,5に示すように、側面視形状がノーズ形(く字形)となるように曲成されており、火炉内方へ張り出している。ノーズ壁管105は、燃焼ガスが火炉出口へ短絡的に流れることを防止するためのものである(特許文献1)。
【0005】
このような火力発電ボイラの蒸気系において、蒸発管、蒸気ドラム、降水管、集合管寄せなどに洗浄薬液を循環させて化学洗浄する方法が知られている(特許文献2,3)。
【0006】
事業用および一般産業用のボイラにおいて、水冷壁蒸発管の内面に付着生成する鉄酸化物等のスケールを化学洗浄で除去する際に、ボイラ構造によって化学洗浄液の通液バランスが蒸発管毎に不均等になり、流速が低下した蒸発管では放熱により所定の温度が維持できなくなる等の障害が発生し、スケールが除去できずに残留する懸念がある。
【0007】
特に、大型の超臨界圧ボイラではボイラ蒸発管の構成や構造が複雑であり、蒸発管の管路の途中で中部側壁管とノーズ壁管や、上部水冷壁管とノーズ壁管に缶水が分流される構造のものがある。
【0008】
化学洗浄の際にはボイラ運転中よりも洗浄設備の制約から小流量で循環洗浄を行っており、ボイラに送り込む流量は管理するものの、分流後の各々の蒸発管に流れる流量のバランスが把握できず、ボイラ構造からノーズ壁管より圧力損失の少ない中部側壁管や上部水冷壁管に化学洗浄液が多く通液する懸念がある。
【0009】
ノーズ壁管は、屈曲構造のため、洗浄液の通液が阻害され易く、一部の管で流速低下を起こして放熱し、所定の温度が維持できずスケールが残留する可能性がある。
【0010】
また、
図4に示すように、流速低下によりノーズ壁管内に未溶解スケールの剥離粒子(スラッジ)が排出されずに堆積し、スケール表面と洗浄液との接触を遮られてスケールの溶解が進まず残留する事も考えられる。また、洗浄液を通液する前に混入していた空気や、洗浄液の分解で生じる炭酸ガス、洗浄液とボイラ管材の接触で生じる水素ガスがノーズ壁管の水平部に滞留して洗浄液の通液を阻害する懸念もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2004/023037号公報
【文献】特開2006-322672号公報
【文献】特開2015-230150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の超臨界圧ボイラの化学洗浄では、化学洗浄液はノーズ壁管と中部側壁管に分流して流れ、各々の蒸発管の流量が把握できず通液の確認もされていなかった。
【0013】
さらにノーズ壁管は1本の管寄におよそ500本前後の蒸発管が一列に並んで配置されており、化学洗浄液がノーズ壁管入口管寄の両端より供給されるが、管寄の左右と中央部では均一の流量で蒸発管に流れるか否かが把握できておらず、
図6に示すように流量が不均一になるおそれがある。
【0014】
本発明は、ボイラ全体に送り込む洗浄流量とは別に、流速が低下する可能性のあるノーズ壁管の入口管寄および出口管寄に仮設洗浄配管を接続してノーズ壁管内の流速を上げる事により、放熱による温度低下、ガス溜まりによる通液阻害、未溶解スケールの剥離粒子による洗浄液との接触阻害を防止しながら化学洗浄することができるボイラの化学洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のボイラの化学洗浄方法は、給水管によって給水が導入される節炭器と、該節炭器からの水が導入される壁管を有し、該壁管の一部がノーズ壁管もしくは側面視形状がノーズ形となるように曲成されており、火炉内方へ張り出している壁管である火炉と、該壁管が連なる汽水分離器と、汽水分離器からの蒸気を過熱する過熱器と、汽水分離器からの水を受け入れるドレンタンクと、該ドレンタンク内の水を前記給水管に循環させるポンプ及び配管とを有するボイラを化学洗浄する方法であって、該汽水分離器、ドレンタンク、節炭器及び壁管に洗浄水循環用の仮設配管を設け、該仮設配管に循環ポンプを設けて洗浄水を循環させるボイラの化学洗浄方法において、該循環ポンプよりも下流側の仮設配管をノーズ壁管入口管寄せに連通させる第1追加仮設配管と、該循環ポンプよりも上流側の仮設配管をノーズ壁管出口管寄せに連通させる第2追加仮設配管をそれぞれ設け、循環ポンプからの洗浄水の一部を該第1及び第2の追加仮設配管を介して該ノーズ壁管に循環させることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様では、前記第1追加仮設配管の下流側は、2本以上に分岐しており、ノーズ壁管入口壁管の長手方向の中央部と両端側との少なくとも2箇所にそれぞれ連通する。また、前記第2追加仮設配管の上流部は、2本以上に分岐しており、ノーズ壁管出口壁管の長手方向の中央部と両端側との少なくとも2箇所にそれぞれ連通する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のボイラの化学洗浄方法では、ボイラ全体に送り込む洗浄流量とは別に、流速が低下する可能性のあるノーズ壁管の入口管寄および出口管寄に追加仮設洗浄配管を接続してノーズ壁管内の流速を上げる事により、放熱による温度低下、ガス溜まりによる通液阻害、未溶解スケールの剥離粒子による洗浄液との接触阻害を防止しながら化学洗浄することができる。
【0018】
本発明によると、化学洗浄中の通液の不均一を予め予測し、当該部位のノーズ壁管の管寄に追加仮設配管を接続して通液する事で、放熱による温度低下、ガス溜まり、スラッジ堆積を回避してスケールの取り残しが防止されるので、ボイラプラントの長期安全運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係るボイラの化学洗浄方法を説明する系統図である。
【
図2】実施の形態に係るボイラの化学洗浄方法を説明する、ボイラの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る洗浄方法が適用されるボイラの構成図を
図2に示す。また、このボイラにおける水及び蒸気の流れ系統図を
図1に示す。
【0021】
このボイラは、火炉9と、下流側排ガス流路(後部煙道)と、火炉9の上部と下流側排ガス流路とを接続する上流側排ガス流路を備えている。
【0022】
火炉9の下部に設けられた複数のバーナ80から発生した高温の燃焼ガスは、火炉9内を上昇し、後部煙道出口93から低温の排ガスとしてボイラ外部に排出される。火炉9には、火炉下部壁管10と、上部水冷壁管12と、ノーズ壁管105等が設けられている。火炉下部壁管10は、螺旋状に火炉9下部から上方に伸びている。複数の管からなっている上部水冷壁管12は、それぞれ火炉9上部に向かって鉛直に伸びている。ノーズ壁管105は、前記
図5の通り、複数の管からなっている。
【0023】
後部煙道は複数の管からなる後部伝熱壁管33などによって画定されている。後部煙道は排ガスの流れに沿って伸びる分割壁管120によって、2つのガス流路に分割されている。分割壁管120も複数の管よりなる。
【0024】
後部煙道の一方の分割ガス流路には再熱器71が配設されている。他方の分割ガス流路には一次過熱器40と節炭器2とが配設されている。また、必要に応じて分割ガス流路に蒸発器を設けても良い。
【0025】
後部煙道は複数の管からなる天井壁30と側壁などによって画定されている。上流側排ガス流路には二次過熱器50および三次過熱器60が配設されている。さらに四次過熱器が設置されてもよい。
【0026】
次に、このボイラの給水系について説明する。ボイラへの給水は、まず、給水弁1aを有した給水管1から節炭器2に供給される。節炭器2では節炭器入口管寄せ100から供給された水が、節炭器2内を通る間に排ガス流から熱吸収を行った後、節炭器出口管寄せ101から水冷壁下降管3に供給される。水冷壁下降管3を経た水は、火炉壁管入口マニホールド103a(
図1)を介して火炉壁管入口管寄せ103に分配され、火炉9を螺旋状に囲む火炉下部壁管10を火炉9内の熱を吸収しながら上昇する。水は飽和温度近くまで加熱される。
【0027】
火炉下部壁管10を昇り詰めた高温水は、火炉9中間管寄せ11に流入して、ここで、その温度が均一化された後、火炉9の上部に設けられた火炉上部壁管12、火炉壁管出口管寄せ12a、火炉ノーズ壁管入口マニホールド105aを経て火炉出口壁管106(
図1)またはノーズ壁管105に、各々の入口管寄せ105A,106Aを介して流入する。該高温水が各壁管105,106を上昇する間に火炉9内の熱を吸収し、液相の高温水と気相の蒸気の混合流体となる。この混合流体は、各壁管105,106出口管寄せ105B,106Bを介して汽水分離器入口マニホールド13に流入して、流体温度の均一化が行われた後、汽水分離器20に流入し、蒸気と水に分離される。このうち分離された水は、ドレンタンク21からボイラ循環ポンプ24及び弁23,25を有した循環配管22を介して、再度、給水管1に循環される。また、汽水分離器20で分離された蒸気は、天井壁入口管寄せ107(
図2)に供給される。
【0028】
図2の通り、前記天井壁入口管寄せ107に供給された蒸気は、火炉9の上部から下流側排ガス流路上部に亙って設けられた天井壁30を構成する天井壁管を経て、天井壁出口管寄せ108に至る間に、熱吸収により加熱されて過熱蒸気になる。
【0029】
天井壁出口管寄せ108に集まった過熱蒸気は、後部伝熱壁下降管31、後部伝熱壁入口連絡管109を経て、後部伝熱壁入口管寄せ110に分配され、さらに後部伝熱壁33で加熱された後、後部伝熱壁出口管寄せ111および後部伝熱壁出口連絡管112を介して、または後部伝熱壁33から後部伝熱壁後壁出口管寄せ34に集まる。
【0030】
後部伝熱壁後壁出口管寄せ34に集まった過熱蒸気は、一次過熱器連絡管35を介して、後部煙道内に設置された一次過熱器40に流入し、その後、火炉9上部に設けた二次過熱器50及び三次過熱器60を順に経て過熱された後、主蒸気管61及び主蒸気止弁62を介して高圧タービンに送られる。
【0031】
高圧蒸気タービンで仕事をした排気蒸気は、図示していない低温再熱蒸気管により、後部煙道に設置された再熱器71に導かれ、所定の温度の再熱蒸気温度に加熱された後、中圧タービンに送られる。後部煙道の出口にはガス分配ダンパ90が設けられ、通過するガス流量を調整することにより、再熱器71での全熱吸収量が調整され、所定の再熱蒸気温度に制御できる。
【0032】
このボイラの各壁管及び節炭器2等を化学洗浄するに際しては、ボイラの運転を停止した後、
図1,2にも示すように、循環配管22のうち循環ポンプ24及び弁23,25を迂回するように仮設配管26を設け、仮設配管26に仮設循環ポンプ27を設ける。
【0033】
仮設配管26の上流端は循環配管22の該循環ポンプ24の上流側に接続されている。仮設配管26の下流端は、給水配管1のうち給水弁1aよりも下流側に接続されている。仮設配管26には、加温用蒸気の注入部201、洗浄薬品(薬品水溶液)の注入部202及び仮設循環ポンプ27が、上流側から下流側へこの順に設けられている。
【0034】
また、仮設配管26のうち、該加温用蒸気注入部201よりも上流側をノーズ壁管出口管寄せ105Bと連通する第2の追加仮設配管210を設ける。さらに、仮設配管26のうち仮設循環ポンプ27よりも下流側をノーズ壁管入口管寄せ105A及びそれへの流入配管に連通させるように第1の追加仮設配管210を設ける。
【0035】
追加仮設配管210の上流側は、3本に分岐し、ノーズ壁管出口管寄せ105Bの長手方向の中間付近及び両端付近に接続されているが、さらに多数箇所に接続されてもよい。追加仮設配管211の下流側は、3本に分岐し、ノーズ壁管入口管寄せ105Aの長手方向の中間付近と、該管寄せ105Aの両端の各流入配管に接続されている。追加仮設配管211も、ノーズ壁管入口管寄せ105Aの長手方向の複数個所に接続されてもよい。
【0036】
また、汽水分離器20から仮設配管26の適宜の箇所に、洗浄水(純水などの清水)の仮設供給管(図示略)を接続する。さらに、
図2の通り、給水弁1aよりも下流側の給水管1に弁1bを有した仮設排水管1cを接続する。
【0037】
ボイラの運転停止後、仮設供給管を介して水張りし、仮設循環ポンプ27を作動させると共に、加温用蒸気及び洗浄薬液を注入する。洗浄水は、仮設配管26、給水管1、節炭器2、火炉9の下部壁管10及び上部壁管12と、火炉出口壁管106又はノーズ壁管105、マニホールド13、汽水分離器20及びドレンタンク21に循環され、この間の汽水分離器20、ドレンタンク21、節炭器2、壁管10,12,105,106及び各管寄せが化学洗浄される。
【0038】
さらに、この実施の形態では、仮設循環ポンプ27からの洗浄液の一部は、ノーズ壁管下部管寄せ105Aに対し、その中央部及び両端側からも追加仮設配管211を介して供給される。ノーズ壁管上部管寄せ105Bからは、その両端部及び中央部からも、追加仮設配管210を介して洗浄液が仮設配管26へ返送される。これにより、ノーズ壁管105においては、ノーズ壁管105の壁管配列方向の中央部と両端側との洗浄液流量が均等化されるようになり、各壁管が満遍なく洗浄される。また、配列方向中央付近の壁管においても、管内の流速を上げる事により、放熱による温度低下、ガス溜まりによる通液阻害、未溶解スケールの剥離粒子による洗浄液との接触阻害を防止することができる。
【0039】
所定時間この化学洗浄を継続した後、仮設循環ポンプ27を停止し、洗浄水を排水管1cへ流出させる。また、清水を供給し、汽水分離器20、ドレンタンク21、節炭器2、壁管10,12,105,106及び各管寄せを水洗し、排水管1cから流出させる。
【0040】
系内に残留していた洗浄薬液の押出しが終了した後は、防錆及びブローを行った後、仮設配管を撤去し、通常の水洗及び起動操作を行ってボイラの運転を再開する。
【0041】
この洗浄方法によると、ボイラ全体に送り込む洗浄流量とは別に、流速が低下する可能性のあるノーズ壁管の入口管寄および出口管寄に仮設洗浄配管を接続してノーズ壁管内の流速を上げる事により、放熱による温度低下、ガス溜まりによる通液阻害、未溶解スケールの剥離粒子による洗浄液との接触阻害を防止しながら化学洗浄することができる。
【0042】
なお、
図1,2のボイラにおいて、ボイラ全体の循環流量(およそ洗浄液1容量を時間当たり2サイクルさせる流量)の他に、例えば循環ポンプ吐出量の余裕の範囲で100~300m
3/hr程度の流量の洗浄液をノーズ壁管の入口管寄211に注入する。
【0043】
こうする事でボイラ全体の循環流量に加えて、ノーズ壁管入口管寄から注入した流量が加算されてノーズ壁管105内を通液し、従来よりも早い流速での化学洗浄が可能となった。
【0044】
例えば、
図1,2の洗浄系統でボイラ全体の循環流量を700m
3/hとし、1,000m3/hの吐出量の循環ポンプを使用して、余剰の300m
3/hをノーズ壁管入口管寄に注入する事で、
図7の通り、ノーズ壁管内の流速を増大させる事ができる。
【0045】
なお、
図7は、従来例及び本発明例におけるノーズ壁管内の流速分布の解析結果の一例を示すものである。
【0046】
上記実施の形態では、ボイラ全体の洗浄を行うものとしているが、本発明方法は、ボイラ全体を洗浄する事なく、ノーズ壁管のみを選択的に化学洗浄する事も可能となる。
【0047】
スケールを溶解除去する洗浄剤としては、無機酸では塩酸、フッ酸、スルファミン酸、有機酸ではクエン酸、グリコール酸、ギ酸、シュウ酸、グルコン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、酢酸などを用いる事ができ、キレート系洗浄剤ではエチレンジアミン四酢酸やその塩類などを用い、これらに還元剤としてアスコルビン酸、エリソルビン酸、ヒドラジン、腐食抑制剤などの助剤を混合して使用する。以上のどの薬品を用いるかは本発明方法を制約するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 給水管
2 節炭器
9 火炉
10 火炉下部壁管
12 火炉上部壁管
20 汽水分離器
21 ドレンタンク
24 再循環ポンプ
26 仮設配管
27 仮設再循環ポンプ
40,50,60 過熱器
105 ノーズ壁管
106 火炉出口壁管
210,211 追加仮設配管