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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B62D55/253 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018169889
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020040544
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 良輔
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-160141(JP,U)
【文献】特開平03-042383(JP,A)
【文献】特開2017-222296(JP,A)
【文献】特開2016-215871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/00-55/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラであって、
弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、
前記クローラ本体に、クローラ周方向に間隔を空けて埋設され、かつ、前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、
前記クローラ本体の外周面からクローラ外周側に突出するラグとを含み、
前記ラグには、クローラ周方向に対して傾斜した方向に延びる少なくとも1本の溝が形成され、
前記ラグは、クローラ幅方向の中心に対して、一方側に設けられた第1ラグと他方側に設けられた第2ラグとを含み、
前記第1ラグ及び前記第2ラグは、それぞれ、クローラ幅方向に延びる接地面を有し、
前記溝は、前記第1ラグの前記接地面をクローラ周方向に横断する第1主溝と、前記第2ラグの前記接地面をクローラ周方向に横断する第2主溝とを含み、
前記第1主溝と前記第2主溝とは、クローラ周方向に対する傾斜方向が互いに異なり、
前記第1ラグの前記接地面及び前記第2ラグの前記接地面は、それぞれ、クローラ幅方向の内側の内端と、クローラ幅方向の外側の外端とを含み、
前記外端のクローラ周方向の長さは、前記内端のクローラ周方向の長さよりも小さい、
弾性クローラ。
【請求項2】
前記溝は、クローラ周方向に対して10~45°の角度で延びる、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記芯材は、クローラ幅方向に延びる翼部を有し、
前記第1主溝及び前記第2主溝は、それぞれ、前記翼部のクローラ幅方向の端部とクローラ厚さ方向で重なる位置に形成されている、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記溝は、前記第1ラグで前記第1主溝よりもクローラ幅方向の内側に形成された第1副溝と、前記第2ラグで前記第2主溝よりもクローラ幅方向の内側に形成された第2副溝とを含む、請求項3に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記第1副溝は、クローラ周方向に対して、前記第1主溝と同じ方向に異なる角度で傾斜し、
前記第2副溝は、クローラ周方向に対して、前記第2主溝と同じ方向に異なる角度で傾斜する、請求項4に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記溝は、クローラ周方向に対して、前記第1ラグで前記第1主溝と異なる方向に傾斜する第1副溝と、前記第2ラグで前記第2主溝と異なる方向に傾斜する第2副溝とを含む、請求項3に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
前記第1副溝及び前記第2副溝の長さは、それぞれ、前記第1主溝及び前記第2主溝の長さよりも大きい、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項8】
前記溝は、溝底が円弧状に形成される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項9】
前記溝は、溝幅が5~10mmであり、溝深さが5~10mmである、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状の弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性体からなるクローラ本体と、クローラ本体にクローラ周方向に間隔を空けて埋設されかつ弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、クローラ本体の外周面からクローラ厚さ方向に突出してクローラ幅方向に延びるラグとを含んだ弾性クローラが知られている。
【0003】
図6は、従来のクローラ式走行装置A1を示す模式図である。図6に示されるように、従来のクローラ式走行装置A1は、本機A2と一対の弾性クローラA3とを含んでいる。クローラ式走行装置A1は、作業上、例えば、弾性クローラA3が縁石S等の段差部に斜めに乗り上げることがある。
【0004】
弾性クローラA3は、例えば、その長手方向と縁石Sの角部Seのなす角度αが10~45°程度で縁石Sに接触した場合、縁石Sの角部Seにより曲げられ、また、縁石Sから滑り落ちることにより、弾性クローラA3の一部がカットされ破損することがある。なお、本明細書において、角度は絶対値として、その方向によらず正の値で表示される。
【0005】
ここで、角度αが10°よりも小さいと、弾性クローラA3は、縁石Sに乗り上げ難く、縁石Sの角部Seによるカットも起こりにくい。一方、角度αが45°よりも大きいと、弾性クローラA3は、芯材による剛性が確保され、縁石Sの角部Seによるカットが起こりにくい。
【0006】
例えば、下記特許文献1は、ラグの外端側部分の接地面の幅を広くすることにより、弾性クローラが縁石に斜めに乗り上げた際にも、ラグが湾曲し難く、縁石の角部によるカットを防止する弾性クローラを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-089366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の弾性クローラは、外端部付近のゴムの厚さを大きくすることで、縁石の角部によるカットを防止しようとしていた。しかしながら、縁石の角部によるカットは、ゴムの厚さを大きくした弾性クローラでも発生しており、特許文献1の弾性クローラにおいても、更なる改善が求められていた。
【0009】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ラグに溝を形成することを基本として、縁石に乗り上げた際に、縁石の角部によるカットを防止し得る弾性クローラを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、弾性クローラであって、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、前記クローラ本体に、クローラ周方向に間隔を空けて埋設され、かつ、前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、前記クローラ本体の外周面からクローラ外周側に突出するラグとを含み、前記ラグには、クローラ周方向に対して傾斜した方向に延びる少なくとも1本の溝が形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の弾性クローラにおいて、前記溝は、クローラ周方向に対して10~45°の角度で延びるのが望ましい。
【0012】
本発明の弾性クローラにおいて、前記芯材は、クローラ幅方向に延びる翼部を有し、前記溝は、前記翼部のクローラ幅方向の端部とクローラ厚さ方向で重なる位置に形成された主溝を含むのが望ましい。
【0013】
本発明の弾性クローラにおいて、前記溝は、前記主溝よりもクローラ幅方向の内側に形成された副溝を含むのが望ましい。
【0014】
本発明の弾性クローラにおいて、前記副溝は、クローラ周方向に対して、前記主溝と同じ方向に異なる角度で傾斜するのが望ましい。
【0015】
本発明の弾性クローラにおいて、前記溝は、クローラ周方向に対して、前記主溝と異なる方向に傾斜する副溝を含むのが望ましい。
【0016】
本発明の弾性クローラにおいて、前記副溝の長さは、前記主溝の長さよりも大きいのが望ましい。
【0017】
本発明の弾性クローラにおいて、前記ラグは、クローラ幅方向の中心に対して、一方側に設けられた第1ラグと他方側に設けられた第2ラグとを含み、前記主溝は、前記第1ラグに形成された第1主溝と、前記第2ラグに形成された第2主溝とを含み、前記第1主溝と前記第2主溝とは、クローラ周方向に対する傾斜方向が互いに異なるのが望ましい。
【0018】
本発明の弾性クローラにおいて、前記溝は、溝底が円弧状に形成されるのが望ましい。
【0019】
本発明の弾性クローラにおいて、前記溝は、溝幅が5~10mmであり、溝深さが5~10mmであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の弾性クローラにおいて、ラグには、クローラ周方向に対して傾斜した方向に延びる少なくとも1本の溝が形成されている。このような弾性クローラは、縁石に乗り上げた際に曲げ方向に対する応力が溝により緩和され、縁石の角部によるカットを防止することができる。また、この溝は、縁石の角部に引っ掛かり、縁石から滑り落ちることが抑止されるので、カットをより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の弾性クローラの一実施形態を示す平面図である。
図2】ラグの拡大斜視図である。
図3】第2の実施形態の弾性クローラを示す平面図である。
図4】第3の実施形態の弾性クローラを示す平面図である。
図5】第4の実施形態の弾性クローラを示す平面図である。
図6】従来のクローラ式走行装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の弾性クローラ1を示す平面図である。図1に示されるように、本実施形態の弾性クローラ1は、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体2と、弾性体よりも硬質の材料からなる芯材3と、クローラ本体2からクローラ外周側coに突出するラグ4とを含んでいる。このような弾性クローラ1は、クローラ式走行装置、例えば、建設機械用車両(図示省略)に好適に用いられる。
【0023】
本明細書において、クローラ周方向aは、弾性クローラ1の回転方向である。また、クローラ幅方向bは、弾性クローラ1が車両に装着されるときの駆動輪(図示省略)の軸方向である。さらに、クローラ厚さ方向cは、クローラ周方向a及びクローラ幅方向bに直交する方向である(図2に示す)。
【0024】
クローラ周方向aのうち、正転方向は前進afとされ、逆転方向は後進abとされる。また、クローラ厚さ方向cのうち、無端帯状の弾性クローラ1の内側は、クローラ内周側ciとされ、無端帯状の弾性クローラ1の外側は、クローラ外周側coとされる(図2に示す)。
【0025】
クローラ本体2は、例えば、クローラ周方向aに連続して延びるゴム等の弾性体からなる。本実施形態のクローラ本体2は、クローラ外周側coの外周面2oとクローラ内周側ciの内周面2iとを有している。
【0026】
芯材3は、クローラ本体2に、クローラ周方向aに間隔を空けて埋設されるのが望ましい。芯材3は、例えば、鋼、鋳鉄等の金属材料により形成されている。芯材3は、硬質樹脂により形成されていてもよい。このような芯材3は、クローラ本体2の剛性を確保し、クローラ本体2の形状を保持することができる。
【0027】
ラグ4は、クローラ本体2の外周面2oからクローラ外周側coに突出するのが望ましい。本実施形態のラグ4には、クローラ周方向aに対して傾斜した方向に延びる少なくとも1本の溝5が形成されている。このような弾性クローラ1は、縁石S(図6に示す)に乗り上げた際に曲げ方向に対する応力が溝5により緩和され、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを防止することができる。また、この溝5は、縁石Sの角部Seに引っ掛かり、縁石Sから滑り落ちることが抑止されるので、カットをより効果的に防止することができる。
【0028】
より好ましい態様として、弾性クローラ1は、クローラ周方向aに延びる抗張体(図示省略)を含んでいてもよい。抗張体は、クローラ本体2の芯材3よりもクローラ外周側coに、芯材3に隣接して埋設されるのが望ましい。抗張体は、例えば、クローラ周方向aに延びる複数の金属コードがクローラ幅方向bに並べられた金属コード層を含んでいる。
【0029】
芯材3は、クローラ幅方向bに延びる一対の翼部6を有するのが望ましい。翼部6は、例えば、平面視で略矩形状に形成されている。翼部6は、クローラ幅方向bの外側に位置する略直線状の端部6eを含むのが望ましい。
【0030】
図2は、ラグ4の拡大斜視図である。図1及び図2に示されるように、ラグ4は、クローラ幅方向bに延びる接地面4aを有するのが望ましい。ラグ4の接地面4aは、例えば、クローラ幅方向bの内側を略直線状に延びる内端4bと外側を略直線状に延びる外端4cとを含んでいる。ラグ4の外端4cのクローラ周方向aの長さL2は、ラグ4の内端4bのクローラ周方向aの長さL1よりも小さいのが望ましい。
【0031】
本実施形態のラグ4の接地面4aは、略クローラ幅方向bに延びる第1端4dと、第1端4dに対向した位置でクローラ幅方向bに対して傾斜して延びる第2端4eとを含んでいる。ラグ4の接地面4aは、例えば、略台形形状に形成されている。このようなラグ4は、大きい接地面4aを確保しつつ、排土性に優れている。
【0032】
本実施形態のラグ4は、接地面4aの外端4c側に溝5が形成されている。溝5は、溝底5aが円弧状に形成されるのが望ましい。溝5は、好ましくは、溝幅wが5~10mmである。また、溝5は、好ましくは、溝深さdが5~10mmである。このような溝5は、ラグ4の剛性を過度に低減させることなく、縁石S(図6に示す)に乗り上げた際の曲げ方向に対する応力を緩和することができる。
【0033】
図1に示されるように、溝5は、好ましくは、クローラ周方向aに対して10~45°の角度θ1で延びている。このような溝5は、弾性クローラ1が、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットが起こりやすい10~45°の角度α(図6に示す)で縁石Sへ乗り上げた際に、その曲げ方向に対する応力を緩和するのに適している。
【0034】
溝5は、芯材3の翼部6のクローラ幅方向bの端部6eとクローラ厚さ方向cで重なる位置に形成された主溝7を含むのが望ましい。本実施形態の溝5は、主溝7のみから構成されている。主溝7は、例えば、ラグ4の第2端4eの傾斜方向とは逆方向に傾斜している。このような主溝7は、芯材3の端部6eへの応力集中を緩和でき、前進af時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを効果的に防止することができる。
【0035】
本実施形態の弾性クローラ1は、ラグ4の第2端4eに隣接してラグ4よりも突出高さの小さい隆起部8が形成されている。このような隆起部8は、芯材3の翼部6の全体を覆うことができ、翼部6の端部6eを起点とする破損を防止することができる。
【0036】
翼部6は、クローラ幅方向bの中心Cに対して、一方側に設けられた第1翼部6Aと他方側に設けられた第2翼部6Bとを含むのが望ましい。本実施形態の翼部6は、第1翼部6Aと第2翼部6Bとがクローラ幅方向bの中心Cに対して線対称に形成されている。このような翼部6は、クローラ幅方向bにバランスよく、クローラ本体2を補強することができる。
【0037】
ラグ4は、クローラ幅方向bの中心Cに対して、一方側に設けられた第1ラグ4Aと他方側に設けられた第2ラグ4Bとを含むのが望ましい。本実施形態のラグ4は、第1ラグ4Aと第2ラグ4Bとがクローラ周方向aにずれた位置に交互に配されている。このようなラグ4は、振動及び騒音が低減され、また、排土性にも優れている。
【0038】
本実施形態の主溝7は、第1ラグ4Aに形成された第1主溝7Aと、第2ラグ4Bに形成された第2主溝7Bとを含んでいる。第1主溝7Aと第2主溝7Bとは、クローラ周方向aに対する傾斜方向が互いに異なるのが望ましい。このような主溝7は、弾性クローラ1が縁石S(図6に示す)にクローラ幅方向bのいずれの方向から乗り上げたとしても、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを防止することができる。
【0039】
図3は、第2の実施形態の弾性クローラ11を示す平面図である。上述の実施形態と共通の構成要素は、共通の符号が付され、その説明が省略される。図3に示されるように、第2の実施形態の弾性クローラ11は、上述の実施形態と同様、クローラ本体2と芯材3とラグ4とを含んでいる。
【0040】
第2の実施形態のラグ4には、クローラ周方向aに対して傾斜した方向に延びる少なくとも1本の溝15が形成されている。溝15は、芯材3の翼部6のクローラ幅方向bの端部6eとクローラ厚さ方向cで重なる位置に形成された主溝17を含むのが望ましい。第2の実施形態の溝15は、主溝17のみから構成されている。
【0041】
主溝17は、例えば、ラグ4の第2端4eの傾斜方向と同じ方向に傾斜している。すなわち、第2の実施形態の主溝17は、上述の実施形態の主溝7とは逆方向に傾斜している。このような主溝17は、芯材3の端部6eへの応力集中を緩和でき、後進ab時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを効果的に防止することができる。
【0042】
主溝17は、好ましくは、クローラ周方向aに対して10~45°の角度θ2で延びている。このような主溝17は、弾性クローラ11が、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットが起こりやすい10~45°の角度α(図6に示す)で縁石Sへ乗り上げた際に、その曲げ方向に対する応力を緩和するのに適している。
【0043】
第2の実施形態の主溝17は、第1ラグ4Aに形成された第1主溝17Aと、第2ラグ4Bに形成された第2主溝17Bとを含んでいる。第1主溝17Aと第2主溝17Bとは、クローラ周方向aに対する傾斜方向が互いに異なるのが望ましい。このような主溝17は、弾性クローラ1が縁石S(図6に示す)にクローラ幅方向bのいずれの方向から乗り上げたとしても、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを防止することができる。
【0044】
図4は、第3の実施形態の弾性クローラ21を示す平面図である。上述の実施形態と共通の構成要素は、共通の符号が付され、その説明が省略される。図4に示されるように、第3の実施形態の弾性クローラ21は、上述の実施形態と同様、クローラ本体2と芯材3とラグ4とを含んでいる。
【0045】
第3の実施形態のラグ4には、クローラ周方向aに対して傾斜した方向に延びる少なくとも1本の溝25が形成されている。溝25は、芯材3の翼部6のクローラ幅方向bの端部6eとクローラ厚さ方向cで重なる位置に形成された主溝27と、主溝27よりもクローラ幅方向bの内側に形成された副溝29とを含むのが望ましい。
【0046】
主溝27は、例えば、ラグ4の第2端4eの傾斜方向とは逆方向に傾斜している。このような主溝27は、芯材3の端部6eへの応力集中を緩和でき、前進af時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを効果的に防止することができる。
【0047】
副溝29は、例えば、ラグ4の第2端4eの傾斜方向とは逆方向に傾斜している。第3の実施形態の副溝29は、クローラ周方向aに対して、主溝27と同じ方向に異なる角度で傾斜している。このような副溝29は、主溝27による応力の緩和を補完し、前進af時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットをより効果的に防止することができる。
【0048】
主溝27は、好ましくは、クローラ周方向aに対して10~45°の角度θ3で延びている。同様に、副溝29は、好ましくは、クローラ周方向aに対して10~45°の角度θ4で延びている。第3の実施形態の副溝29の角度θ4は、主溝27の角度θ3よりも小さい。このような主溝27及び副溝29は、弾性クローラ11が、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットが起こりやすい10~45°の角度α(図6に示す)で縁石Sへ乗り上げた際に、その曲げ方向に対する応力を緩和するのに適している。
【0049】
第3の実施形態の副溝29の長さL4は、主溝27の長さL3よりも大きい。このような主溝27及び副溝29は、ラグ4の剛性を過度に低減させることなく、縁石S(図6に示す)に乗り上げた際の曲げ方向に対する応力を効果的に緩和することができる。
【0050】
第3の実施形態の主溝27は、第1ラグ4Aに形成された第1主溝27Aと、第2ラグ4Bに形成された第2主溝27Bとを含んでいる。第1主溝27Aと第2主溝27Bとは、クローラ周方向aに対する傾斜方向が互いに異なるのが望ましい。このような主溝27は、弾性クローラ1が縁石S(図6に示す)にクローラ幅方向bのいずれの方向から乗り上げたとしても、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを防止することができる。
【0051】
同様に、第3の実施形態の副溝29は、第1ラグ4Aに形成された第1副溝29Aと、第2ラグ4Bに形成された第2副溝29Bとを含んでいる。第1副溝29Aと第2副溝29Bとは、クローラ周方向aに対する傾斜方向が互いに異なるのが望ましい。このような副溝29は、弾性クローラ1が縁石S(図6に示す)にクローラ幅方向bのいずれの方向から乗り上げたとしても、主溝27による応力の緩和を補完することができる。
図5は、第4の実施形態の弾性クローラ31を示す平面図である。上述の実施形態と共通の構成要素は、共通の符号が付され、その説明が省略される。図5に示されるように、第4の実施形態の弾性クローラ31は、上述の実施形態と同様、クローラ本体2と芯材3とラグ4とを含んでいる。
【0052】
第4の実施形態のラグ4には、クローラ周方向aに対して傾斜した方向に延びる少なくとも1本の溝35が形成されている。溝35は、芯材3の翼部6のクローラ幅方向bの端部6eとクローラ厚さ方向cで重なる位置に形成された主溝37と、主溝37よりもクローラ幅方向bの内側に形成された副溝39とを含むのが望ましい。
【0053】
主溝37は、例えば、ラグ4の第2端4eの傾斜方向とは逆方向に傾斜している。このような主溝37は、芯材3の端部6eへの応力集中を緩和でき、前進af時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを効果的に防止することができる。
【0054】
副溝39は、例えば、ラグ4の第2端4eの傾斜方向と同じ方向に傾斜している。第4の実施形態の副溝39は、クローラ周方向aに対して、主溝37と異なる方向に傾斜している。このような副溝39は、後進ab時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを効果的に防止することができる。
【0055】
主溝37は、好ましくは、クローラ周方向aに対して10~45°の角度θ5で延びている。同様に、副溝39は、好ましくは、クローラ周方向aに対して10~45°の角度θ6で延びている。第4の実施形態の副溝29の角度θ6は、主溝37の角度θ5に略等しい。このような主溝37及び副溝39は、弾性クローラ11が、縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットが起こりやすい10~45°の角度α(図6に示す)で縁石Sへ乗り上げた際に、その曲げ方向に対する応力を緩和するのに適している。
【0056】
第4の実施形態の副溝39の長さL6は、主溝37の長さL5よりも大きい。このような主溝37及び副溝39は、ラグ4の剛性を過度に低減させることなく、縁石S(図6に示す)に乗り上げた際の曲げ方向に対する応力を効果的に緩和することができる。
【0057】
第4の実施形態の主溝37は、第1ラグ4Aに形成された第1主溝37Aと、第2ラグ4Bに形成された第2主溝37Bとを含んでいる。第1主溝37Aと第2主溝37Bとは、クローラ周方向aに対する傾斜方向が互いに異なるのが望ましい。このような主溝37は、弾性クローラ1が縁石S(図6に示す)にクローラ幅方向bのいずれの方向から乗り上げたとしても、前進af時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを防止することができる。
【0058】
同様に、第4の実施形態の副溝39は、第1ラグ4Aに形成された第1副溝39Aと、第2ラグ4Bに形成された第2副溝39Bとを含んでいる。第1副溝39Aと第2副溝39Bとは、クローラ周方向aに対する傾斜方向が互いに異なるのが望ましい。このような副溝39は、弾性クローラ1が縁石S(図6に示す)にクローラ幅方向bのいずれの方向から乗り上げたとしても、後進ab時の縁石Sの角部Se(図6に示す)によるカットを防止することができる。
【0059】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例
【0060】
表1に示された各図に基づく弾性クローラが、実施例1~4として試作された。形成された溝の溝幅は、いずれも5mmであり、溝深さは、いずれも5mmである。また、ラグに溝が形成されていない弾性クローラが、比較例1として試作された。これら試作された弾性クローラがテスト車両に装着され、弾性クローラが破損するまでの耐久性が計測された。テスト方法は、以下のとおりである。
【0061】
<耐久性>
試作された弾性クローラが装着されたテスト車両で、縁石に30°の角度で前進方向又は後進方向に繰り返し乗り上げた。ときに、弾性クローラが破損するまでの耐久性が計測された。結果は、優、良、可、不可の4段階で評価され、優が最も耐久性に優れていることを示す。
【0062】
テストの結果が表1に示される。
【表1】
【0063】
テストの結果、実施例の弾性クローラは、比較例に対して、前進方向及び後進方向の両方において、耐久性が良好であることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1 弾性クローラ
2 クローラ本体
2o 外周面
3 芯材
4 ラグ
5 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6